JP5994916B1 - 耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材 - Google Patents

耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材 Download PDF

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Abstract

【課題】無水アルコール環境のみならず、厳しい孔食環境である含水アルコール、特に含水バイオエタノール環境でも使用可能な、耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材を提供すること。【解決手段】組成として、質量%で、C:0.03%以上0.3%以下、Si:0.01%以上0.8%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.008%以下、Al:0.005%以上0.08%以下、N:0.001%以上0.010%以下、Cr:0.050%未満を含有し、さらに、Cu:0.03%以上1.0%以下、Ni:0.010%以上1.0以下およびSn:0.010%以上0.2%以下のうちから選んだ2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。【選択図】なし

Description

本発明は、アルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け素材として好適な、耐食鋼材に関するものである。
特に本発明は、バイオアルコールを貯蔵するタンクやバイオアルコールの輸送を目的とした船舶内タンク、自動車用タンクに用いられる鋼材、あるいはパイプライン輸送に使用される鋼材等、バイオアルコールと直接接触する部位に適用して好適なアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け素材として好適な、耐食鋼材に関する。
バイオエタノール等のバイオアルコールは、アルコールにおける一カテゴリーである。バイオアルコールのうち、例えばバイオエタノールは、主にとうもろこしや小麦などの糖分を分解・精製して造られる。通常、バイオエタノールは燃料級エタノール用途として用いられ、試薬級エタノールに比べて不純物を多く含んでおり、例えば0.1〜1mmol/L程度の有機酸(主に酢酸)を含む。
バイオエタノールは、商業的には、蒸留により得られたままの水分を5vol%ほど含む含水バイオエタノールと、含水バイオエタノールから水分を除去した無水バイオエタノールとに区分される。
バイオエタノールをガソリンに混合する場合には、水分をほとんど含まない無水バイオエタノールが使われる。一方、エタノールのみで燃料として使用する場合には含水バイオエタノールが使用される。
近年では、石油(ガソリン)の代替燃料として、バイオエタノールは世界中で広く使用されており、その使用量は年々増加する傾向にある。例えばブラジルではエタノール燃料に対応した自動車の普及が2000年より次第に拡大し、含水バイオエタノールの消費が著しく拡大している。
しかしながら、バイオエタノールを取り扱う設備には種々腐食問題が発生している。例えば無水バイオエタノールでは孔食と応力腐食割れ(SCC)が発生している。一方、含水バイオエタノールは液中の水分がSCCのインヒビターとして働くためSCCは問題とならない。反面、含水バイオエタノールは無水バイオエタノールよりも腐食性が強くなっており、孔食が多発する。孔食は、鋼材を減肉させ、設備へダメージをもたらす。また、孔食に伴って生じた腐食生成物は、バイオエタノールに溶け込みやすいため、エタノール燃料の品質を低下させ、大きな問題となっている。
なお、無水エタノールに関しても、エタノールそれ自体が高い吸湿性を有するため、保存中、流通中における含水量の増加は完全に避けることはできず、重篤な孔食被害を受ける可能性がある。
そのため、耐孔食用の措置を施した設備、例えば耐エタノール腐食性に優れた有機被覆材や腐食インヒビター、ステンレス鋼、ステンレスクラッド鋼を適用した設備でしかエタノールを安全安心に扱えないという欠点がある。このように、エタノールを扱う設備は、腐食を抑制するために、多大な費用を必要とするところに問題を残している。
特許文献1には、バイオ燃料に対して、そのタンク用鋼材を製造するためNiを5〜25質量%含有する亜鉛−ニッケルめっきを施したり、このめっき上に6価クロムを含有しない化成処理を施す方法が提案されている。
特許文献2には、バイオエタノールなどの燃料蒸気に対して、鋼板表面に「めっき層中におけるZnに対するCoの組成割合が0.2〜4.0at%であるZn−Co−Moめっき」を施した耐食性に優れたパイプ用鋼板が提案されている。
特許文献3には,鋼中に0.03〜1.0mass%のWまたは/及びMoを加えた上で、Sn、Sb、Nbのうち2種類以上の元素を組み合わせることでバイオアルコール環境での耐孔食性と耐SCC性を向上させる技術が提案されている。
さらに、非特許文献1では、炭素鋼材表面のプラズマ窒化浸炭と後酸化による耐食性への影響を、含水バイオエタノール模擬液中での77日間の浸漬試験により調査している。プラズマ窒化浸炭と480℃90分の後酸化を組み合わせることで、耐孔食性が大きく向上することが報告されている。
特開2011−26669号公報 特開2011−231358号公報 国際公開2014/087628号公報
R.Boniatti,et.al., The influence of surface microstructure and chemical composition on corrosion behaviour in fuel−grade bio−ethanol of low−alloy steel modified by plasma nitro−carburizing and post−oxidizing,Applied Surface Science 280(2013) 156−163
特許文献1に開示された亜鉛−ニッケルめっきは、耐食性の向上に有効であると考えられる。しかし、かかるZn−Niめっきは電気めっきによる処理が必要なため、小型の例えば自動車用燃料タンク等には問題ないとしても、大型構造物、例えば1000kL以上の貯蔵タンクやラインパイプなどの厚肉鋼材には、処理コストが膨大になるため、適用することができない。また、めっき不良等が生じた場合には、その部分でかえって腐食が選択的に生じてしまうため、耐孔食性は十分とは言えない。
特許文献2に開示されたZn−Co−Moめっきについても、電気めっきによる処理が必要なため、特許文献1と同様の理由により、大型構造物の厚肉鋼材に対しては適用することができない。また、特許文献1と同様の理由により、耐孔食性は十分とは言えない。
特許文献3に開示された鋼材については、確かにバイオアルコール環境での孔食とSCCを抑制するものと考えられる。しかし、腐食環境として無水アルコールを想定しているため、含水アルコール環境の場合や、吸湿により無水アルコールの含水量が増加し、孔食性が増大した場合に、鋼材の耐孔食性を担保できるとは言い難い。また、合金価格の高いW、Mo添加を必須とするため、製造コストの点からも不利である。
非特許文献1に記載の技術では、プラズマ浸炭処理+後酸化処理は確かに孔食性の高い含水バイオエタノール環境での腐食を緩和している。しかし、非特許文献1に開示の技術は、特許文献1、2同様に大型構造物に対しては適用することができず、加えて表面処理不良部が生じた場合には局部腐食促進のリスクがある。また、後酸化処理まで一連の操作完了に要する時間、工数負荷は多大であり、実用的とは言いがたい。
以上のように、めっき、表面品質改善による防食方法は、大型構造物に適さず、また耐孔食性ついてはその効果が十分ではない。従って、大型構造物への適用には、鋼材そのもののアルコール環境での耐孔食性の改善がコストの点からも有利である。しかしながら、耐食鋼材に関する技術については、従来技術では、厳しい孔食環境である含水アルコールに対して対応できておらず、不十分である。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、無水アルコール環境のみならず、厳しい孔食環境である含水アルコール、特に含水バイオエタノール環境でも使用可能な、耐孔食性に優れた耐食鋼材を提供することを目的とする。
本発明でいう「含水アルコール」とは、水を2.0〜10.0vol%含むアルコールを意味する。本発明でいう「無水アルコール」とは水の含有量が2.0vol%未満のアルコールを意味する。本発明でいうアルコールは、炭素数1〜5の1価アルコールであり、特にエタノールである。本発明において、貯蔵や輸送の対象となるアルコールは0.1〜1mmol/L程度の有機酸(主に酢酸)を含んでもよい。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、含水アルコール環境において、優れた耐孔食性を示す貯蔵用及び輸送用設備部材向け耐食鋼材の開発に向けて鋭意研究を重ねた。その結果、厳しい孔食環境である含水アルコール環境での腐食抑制には、鋼材においてCu、Sn、Niから選んだ2種以上の含有が有効であり、またこのCu、Ni、Snの含有に加えて、さらにAl量を特定の範囲内にすることが効果的であるとわかった。また更にN、S、Crの含有量を低減することにより顕著に耐孔食性が向上することを見出した。本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えた末に完成されたもので、その要旨は次の通りである。
[1]組成として、質量%で、C:0.03%以上0.3%以下、Si:0.01%以上0.8%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.008%以下、Al:0.005%以上0.08%以下、N:0.001%以上0.010%以下、Cr:0.050%未満を含有し、さらに、Cu:0.03%以上1.0%以下、Ni:0.010%以上1.0以下およびSn:0.010%以上0.2%以下のうちから選んだ2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。
[2]前記組成に加えて、さらに質量%で、Ca:0.0001%以上0.01%以下、Mg:0.0001%以上0.02%以下、およびREM:0.001%以上0.2%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する[1]に記載の耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。
[3]前記組成に加えて、さらに質量%で、Ti:0.005%以上0.05%以下、Zr:0.005%以上0.05%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下、およびV:0.005%以上0.05%以下のうちから選んだ1種または2種以上を含有する[1]または[2]に記載の耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。
[4]前記組成に加えて、さらに質量%で、Co:0.01%以上0.5%以下を含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。
本発明において「耐孔食性に優れた」とは、後述の実施例に記載の試験により、ベース鋼との対比における最大孔食深さが70%以下であることを意味する。
本発明によれば、無水及び含水アルコール(特にバイオエタノール)の貯蔵用タンク、輸送用タンク、パイプライン構造用鋼等として使用した場合に、従来に比較してより長期間にわたる構造物の使用が可能になり、またアルコールへの腐食生成物の溶け込みによるアルコール品質低下を大幅に軽減することができ、さらにはこれらの諸設備を安価に提供することができ、産業上極めて有用である。
以下に、本発明を具体的に説明する。
本発明において、鋼材の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、鋼材の成分組成における元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であるが、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
C:0.03%以上0.3%以下
Cは、鋼の強度確保に必要な元素であり、本発明で目標とする強度(TS:400MPa以上)を確保するため少なくとも0.03%を含有するものとする。一方、含有量は0.3%を超えると溶接性が低下し、溶接の際に制限が加わるため、0.3%を上限とした。好ましくは0.03%以上0.25%以下の範囲である。
Si:0.01%以上0.8%以下
Siは、脱酸のため添加するが、含有量が0.01%未満では脱酸効果に乏しい。よって、Si含有量の下限は0.01%とし、好ましくは0.03%、より好ましくは0.05%である。一方、含有量が0.8%を超えると靭性や溶接性を劣化させる。このため、Si含有量の上限は0.8%とし、好ましくは0.7%、より好ましくは0.5%である。
Mn:0.1%以上2.0%以下
Mnは、強度、靭性を改善するために添加するが、0.1%未満ではその効果が十分でない。よって、Mn含有量の下限は0.1%とし、好ましくは0.3%である。一方、含有量が2.0%を超えると溶接性が劣化する。このため、Mn含有量の上限は2.0%とし、好ましくは1.6%である。
P:0.03%以下
Pは、不可避的に含有されるが、靭性及び溶接性を劣化させるため、P含有量は0.03%以下に抑制するものとした。なお、好ましくは0.025%以下である。
S:0.008%以下
Sは本発明の鋼材において耐食性に悪影響を及ぼす元素である。Sは、不可避的に含有され、含有量が多くなると靱性及び溶接性が低下するだけでなく、MnSなどの腐食起点となる介在物が増加して、孔食が促進される。そのため含有量を極力低減することが望ましく、0.008%以下であれば許容できる。なお、S含有量は好ましくは0.005%以下である。
Al:0.005%以上0.08%以下
Alは、脱酸剤として添加するが、0.005%未満の含有量では脱酸不足により、靱性が低下する。一方、Alの過剰添加は、溶接金属部の靭性を低下させる。
また、Alは後述するSn、Cuの耐孔食性向上効果をさらに高める働きを有する。すなわち、母材のアノード溶解に伴って溶出したAl3+イオンはアルコール中に存在する水と加水分解反応を起こすため、アノードサイトでのpHが低下し、後述Sn酸化物やCu酸化物の形成が促進される。そのため、Al含有量の下限は0.005%とし、好ましくは0.010%である。しかしながら、含水アルコール環境は、加水分解反応が無水アルコール環境よりも生じやすい環境であり、0.08%を超えるAl含有ではアノードサイトでの過剰なpH低下を引き起こし、孔食がかえって促進される。そのため、含有量の上限は0.08%とし、好ましくは0.070%である。
N:0.001%以上0.010%以下
Nは本発明の鋼材において耐食性に悪影響を及ぼす元素であり、不可避的に含有される。0.010%を超える含有では、粗大なAlNの形成を促進することとなり、前述Alによる耐孔食性向上効果が十分に得られなくなるとともに、粗大AlNが腐食起点として作用するため、耐孔食性が劣化する。このため、N含有量は0.010%以下に限定した。なお、N含有量は好ましくは0.007%以下である。一方、N含有量0.001%未満への低減は、脱ガスの能力上困難であるので、その含有量の下限を0.001%とする。
Cr:0.050%未満
Crは、本発明の鋼材において、大きく耐孔食性に影響を及ぼす元素である。Crは鋼材表面の酸化被膜を強化する働きがあるため、無水アルコール環境では鋼材の耐孔食性を向上させる。しかしながら腐食性の強い含水アルコール環境では、介在物近傍等からひとたび孔食が始まった場合、孔食部における選択腐食性が増強される。結果として孔食が促進する。従って、Crは鋼中で低減させるのが好ましい。そのため、Cr含有量は0.050%未満とした。なお、Cr含有量は好ましくは0.03%未満である。本発明において、Cr含有量は0%でもよい。
Cu:0.03%以上1.0%以下、Ni:0.010%以上1.0以下およびSn:0.010%以上0.2%以下のうちから選んだ2種以上
Cu:0.03%以上1.0%以下
Cuは、本発明の鋼材において重要な耐孔食性向上元素である。Cuは母材のアノード溶解に伴ってその酸化物がアノードサイトに生成する。含水アルコール環境にあってもCu酸化物は溶解することなく、残留・濃化する。これによりアノード部が保護され、溶解反応の進展が著しく抑制され、耐孔食性が向上する。しかしながら、含有量が0.03%未満ではその効果に乏しいため、含有量の下限は0.03%とし、好ましくは0.05%であり、より好ましくは0.1%である。一方、含有量が1.0%を超えると鋼材製造上の面から制約が生じるので、含有量の上限は1.0%とし、好ましくは0.8%であり、より好ましくは0.5%である。
Ni:0.010%以上1.0以下
Niも、耐孔食性を改善するのに有効な元素である。また、Cu含有による連続鋳造工程や熱間圧延工程で熱間脆性による割れ発生を抑制する効果をNiは持つ。しかし、Ni含有量が0.010%未満では、耐孔食性向上効果が発現せず、またCu含有起因の割れを抑制する効果にも乏しい。よって、Ni含有量の下限は0.010%とし、好ましくは0.03%である。一方、Niの過剰含有は、コストの観点で不利になるので、Ni含有量の上限は1.0%とし、好ましくは0.5%である。
Sn:0.010%以上0.2%以下
Snは、本発明の鋼材において重要な耐孔食性向上元素である。Snは母材のアノード溶解に伴ってその酸化物がアノードサイトに生成する。含水アルコール環境にあってもSn酸化物は溶解することなく、残留・濃化する。これによりアノード部が保護され、溶解反応の進展が著しく抑制され、耐孔食性が向上する。しかしながら、含有量が0.010%未満ではその効果に乏しい。よってSn含有量の下限は0.010%とし、好ましくは0.02%である。一方、Sn含有量が0.2%を超えると鋼材製造上の面から制約が生じるので、Sn含有量の上限は0.2%とし、好ましくは0.15%である。
上述した各成分のうち、本発明では、特にCu、Ni及びSnから選んだ2種以上を含有することが重要であり、それらに適切なAl量を共存させたうえで、腐食基点となり得るNとS、孔食成長を促進するCrを低減することで、優れた耐孔食性を得ることができる。また、優れた耐孔食性を実現するとともに、アルコール品質低下も軽減できる。
以上、基本成分について説明したが、本発明では、その他にも、以下に述べる成分を必要に応じて適宜含有させることができる。
Ca:0.0001%以上0.01%以下、Mg:0.0001%以上0.02%以下、およびREM:0.001%以上0.2%以下のうちから選んだ1種または2種以上
前述のようにMnSは孔食の起点として有害であり、これを低減する観点、また、鋼中硫化物の形態・分散制御の観点からCa、Mg、REMは有効な元素である。この効果は、含有量が少ない場合には十分には得られない。一方、含有量が多い場合には逆にCa、Mg、REM自体が粗大な介在物として、孔食と腐食疲労の起点となってしまう。そのため、Ca含有量は0.0001%以上0.01%以下、Mg含有量は0.0001%以上0.02%以下、REM含有量は0.001%以上0.2%以下の範囲とする。
Ti:0.005%以上0.05%以下、Zr:0.005%以上0.05%以下、Nb:0.005%以上0.05%以下、およびV:0.005%以上0.05%以下のうちから選んだ1種または2種以上
鋼の機械的特性を向上させるために、Ti、Zr、Ni及びVのうちから選んだ1種または2種以上を含有させることもできる。これらの元素はいずれも、含有量が0.005%未満ではその添加効果に乏しく、一方、含有量が0.05%を超えると溶接部の機械的特性が低下するため、含有量は0.005%以上0.05%以下の範囲とした。なお、各元素の含有量は好ましくは0.005%以上0.04%以下の範囲である。
Co:0.01%以上0.5%以下
Coは、鋼材の強度を高める元素であり、必要に応じて含有させることができる。この効果を得るためには、Coは0.01%以上含有させることが好ましいが、0.5%を超えて含有させると靱性や溶接性が劣化するため、上記の範囲で含有させることが好ましい。なお、Co含有量はより好ましくは0.01%以上0.2%以下の範囲である。
本発明の鋼材において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明において、アルコール貯蔵用及び輸送用設備とは、アルコールの貯蔵用及び/又は輸送に用いられる設備であれば特に限定されない。例えば、アルコールの、貯蔵用タンク、輸送タンク、自動車用タンク、ラインパイプ、配管、ノズル、バルブ等がある。
次に、本発明鋼材の好適製造方法について説明する。
上記した成分組成になる溶鋼を、転炉や電気炉等の公知の炉で溶製し、連続鋳造法や造塊法等の公知の方法でスラブやビレット等の鋼素材とする。なお、溶製に際して、真空脱ガス精錬等を実施しても良い。溶鋼の成分調整方法は、公知の鋼製錬方法に従えばよい。
ついで、上記の鋼素材を所望の寸法形状に熱間圧延する際には、表面温度で1000〜1350℃の温度に加熱する。加熱温度が1000℃未満では変形抵抗が大きく、熱間圧延が難しくなる。一方、1350℃を超える加熱は、表面痕の発生原因となったり、スケールロスや燃料原単位が増加したりする。加熱温度は好ましくは1050〜1300℃の範囲である。なお、鋼素材の温度が、もともと1000〜1350℃の範囲内の場合には、加熱せずに、そのまま熱間圧延に供してもよい。
なお、熱間圧延では、熱間仕上圧延終了温度を適正化することが好ましく、表面温度で600℃〜850℃とすることが好ましい。熱間仕上圧延終了温度が600℃未満では、変形抵抗の増大により圧延荷重が増加する。一方、850℃超だと所望の強度を得られないことがある。熱間仕上圧延終了後の冷却は、空冷または冷却速度:150℃/s以下の加速冷却とすることが好ましい。加速冷却する場合の冷却停止温度は300〜750℃の範囲とすることが好ましい。なお、冷却後、再加熱処理を施してもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
表1に示す成分組成になる溶鋼を、真空溶解炉で溶製後または転炉溶製後、連続鋳造によりスラブとした。ついで、1230℃に加熱後、仕上圧延終了温度:850℃として熱間圧延を行い、その後、冷却停止温度:550℃、冷却速度:15℃/sの条件で加速冷却を実施して、15mm厚の鋼板とした。
上記鋼板から、10mm×25mm×3.5mmt(tは厚さを意味する)に切り出し、両面を番手2000の研磨面で仕上げ、アセトン中で超音波脱脂を5分間行い、風乾して試験材とした。エタノール:941mlに対して、水:49ml、メタノール:10ml、酢酸:30mg、NaCl:1.32mgを添加した溶液をバイオエタノール模擬液として使用した。
このバイオエタノール模擬液30mlを試験管に入れ、室温にて試験材を浸漬した。50日間浸漬を行った後に、試験材を取り出し、表面に付着したさびをスポンジ等で洗い流したのち、インヒビターを添加した酸中で腐食生成物を除去した。ついで、純水で洗浄したのち、エタノール中で洗浄し、風乾した。その後、試験材の表面の孔食深さを後述の条件で3次元レーザー顕微鏡により測定し、最大孔食深さを評価した。また、試験後に、試験に使用したバイオエタノール模擬液を回収し、原子吸光分光法によりバイオエタノール模擬液に溶け込んだFeイオン濃度を算出し、溶解量を評価した。
最大孔食深さ測定条件:レーザー波長658nm、測定ピッチ0.5μm。
なお、この最大孔食深さ及びFeイオン濃度をベース鋼(比較例1)に対する比率として算出し、以下の基準で評価した。
−最大孔食深さ:ベース鋼は115μm−
○:70%以下(合格)
△:70%超100%未満
×:100%以上
−Feイオン濃度:ベース鋼0.20mmol/L−
○:70%以下(合格)
△:70%超100%未満
×:100%以上
得られた結果を表2に記載する。
Figure 0005994916
Figure 0005994916
表2から明らかなように、発明例はいずれも、バイオエタノール模擬液中での孔食が抑制され、Feイオン濃度も低い。これに対し、成分組成が発明範囲から外れた比較例はいずれも、腐食がそれほど抑制されず、大きな改善は見られなかった。発明例と比較例の対比から、本発明の改善効果は明らかである。
[参考試験:無水アルコール条件での孔食について]
表1ベース鋼(比較例1)について、バイオエタノール模擬液の組成をエタノール:985mlに対して、水:10ml、メタノール:5ml、酢酸:30mg、NaCl:1.32mgに変更した点以外は、上記実施例と同様に腐食試験を行った。その結果、ベース鋼の最大孔食深さは10.5μmであった。即ち、上記実施例はバイオエタノール模擬液の水分量が多く、孔食が促進される条件である。

Claims (4)

  1. 組成として、質量%で、
    C:0.03%以上0.3%以下、
    Si:0.01%以上0.8%以下、
    Mn:0.1%以上2.0%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.008%以下、
    Al:0.005%以上0.08%以下、
    N:0.001%以上0.010%以下、
    Cr:0.050%未満
    を含有し、さらに、
    Cu:0.03%以上1.0%以下、
    Ni:0.010%以上1.0以下および
    Sn:0.010%以上0.2%以下
    のうちから選んだ2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。
  2. 前記組成に加えて、さらに質量%で、
    Ca:0.0001%以上0.01%以下、
    Mg:0.0001%以上0.02%以下、および
    REM:0.001%以上0.2%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する請求項1に記載の耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。
  3. 前記組成に加えて、さらに質量%で、
    Ti:0.005%以上0.05%以下、
    Zr:0.005%以上0.05%以下、
    Nb:0.005%以上0.05%以下、および
    V:0.005%以上0.05%以下
    のうちから選んだ1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載の耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。
  4. 前記組成に加えて、さらに質量%で、
    Co:0.01%以上0.5%以下
    を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の耐孔食性に優れたアルコール貯蔵用及び輸送用設備部材向け鋼材。
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