JP3904868B2 - 非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材とその製造方法 - Google Patents

非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材とその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は果汁やコーヒー、紅茶の如く炭酸を含まない飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性、特にリベット成形性やスコアー加工性に優れたアルミニウム合金缶蓋材と、良好な生産性を併せ持つその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金缶蓋材の場合は、内容物の種類や用途によって合金やプロセスを変えて製造するのが一般的である。例えば、炭酸飲料用にはJIS5182合金が、炭酸を含まない飲料用、食缶用さらに日用雑貨用の缶蓋材にはJIS5052合金や、最近ではその合金の主要元素の1つであるCrをMnに置き換えた合金が主に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
最近の蓋材の動向は板厚の薄肉化であるが、薄肉化すると材料への負荷が大きくなるため成形性が低下してしまうという問題があり、このため従来材以上のリベット成形性やスコア加工性などの成形性が要求されている。
また、従来の製造方法は、一般的に熱間圧延→冷間圧延→トリミング・中間焼鈍→最終冷間圧延という工程が採用されているが、工程を省略して生産性をあげ、低コスト化をはかることも望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者らが種々実験、検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、Mg1.85〜3.00%、Mn0.05〜0.60%、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を必須成分として含み、不純物元素であるTiを0.04%以下に規制し、残部がAl及び不可避的不純物からなる成分を有し、製品板の板厚表面で集合組織を測定した場合に圧延集合組織に属するCu方位、S方位、Brass方位の何れかの方位成分がランダム方位の6倍以上、且つ、最大長さ5μm以上の金属間化合物数を板厚表面で測定した場合に1mm2あたり30個以上、480個以下であることを特徴とする非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材である。
また第二発明は、さらにCu0.01〜0.20%、Cr0.01〜0.30%のうちから選ばれた1種以上を含有する合金を用いることを特徴とするものである。
また第3発明は上記の合金成分を有するAl合金鋳塊を、均質化処理を兼ねた加熱処理を施した後、(1)〜(3)の条件を満たす熱間圧延をシングルリバース方式の熱間仕上げ圧延機を用いて行い、
(1)最終パスの圧延率:40〜63%
(2)熱間圧延上り板厚:2.0〜3.7mm
(3)熱間圧延板の再結晶率:85%以上
引き続き、冷間圧延の途中では中間焼鈍は行わず、また冷間圧延途中でのトリミングは0〜1回として、
(4)総冷間圧延率:85〜93.5%
(5)最終パスの圧延率:15〜60%
(6)最終パスの圧延速度:300m/分以上
の条件を満たす冷間圧延を行い、製品板の板厚表面で集合組織を測定した場合に圧延集合組織に属するCu方位、S方位、Brass方位の何れかの方位成分がランダム方位の6倍以上、且つ、最大長さ5μm以上の金属間化合物数を板厚表面で測定した場合に1mm2あたり30個以上、480個以下であることを特徴とする非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材の製造方法である。
さらに第4発明は上記の合金成分を有するAl合金鋳塊を、均質化処理を兼ねた加熱処理を施した後、(1')〜(3')の条件を満たす熱間圧延をタンデム方式の熱間仕上げ圧延機を用いて行い、
(1')最終パスの圧延率:35〜61%
(2')熱間圧延上り板厚:1.8〜3.4mm
(3')熱間圧延板の再結晶率:85%以上
引き続き、冷間圧延の途中では中間焼鈍は行わず、また冷間圧延途中でのトリミングは0〜1回として、
(4')総冷間圧延率:85〜93%
(5')最終パスの圧延率:15〜60%
(6')最終パスの圧延速度:300m/分以上
の条件を満たす冷間圧延を行い、製品板の板厚表面で集合組織を測定した場合に圧延集合組織に属するCu方位、S方位、Brass方位の何れかの方位成分がランダム方位の6倍以上、且つ、最大長さ5μm以上の金属間化合物数を板厚表面で測定した場合に1mm2あたり30個以上、480個以下であることを特徴とする非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材の製造方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各要素の限定理由について説明する。
先ず、この発明における合金成分の限定理由について説明する。
【0006】
Mg:Mgの添加はMgそれ自体の固溶による強度向上があり、また転位との相互作用が大きいために加工硬化による強度向上が期待でき、缶蓋材として必要な強度を得るためには不可欠な元素である。但し、Mg量が1.85%未満では非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用の缶蓋材としての十分な強度を得ることができない。一方、3.00%を超えると強度が過剰となる。そのため、Mg添加量を1.85〜3.00%の範囲とした。
【0007】
Mn:Mnの添加は引き裂き性を向上させるAl−Mn−(Si)、Al−Fe−Mn−(Si)系金属間化合物の生成および強度向上に大きな効果を及ぼすが、添加量が0.05%未満では効果が現れないか、若しくはその効果が小さすぎる。一方、0.60%を超えれば引き裂き性はより一層向上するが、最大長さ5μm以上の金属間化合物数が本願発明の規定値を満たさなくなる。そのため、Mn添加量を0.05〜0.60%の範囲とした。
【0008】
Fe:Feの添加は開缶性を向上させるAl−Fe−Mn−(Si)系金属間化合物の生成に効果を及ぼす。しかし、添加量が0.10%未満では効果が現れないか、若しくは効果が小さすぎる。一方、添加量が0.50%を超えると引き裂き性はより一層向上するが、最大長さ5μm以上の金属間化合物数が本願発明の規定値を満たさなくなる。そのため、Fe添加量を0.10〜0.50%の範囲とした。
【0009】
Si:Si添加によって形成する金属間化合物Mg2Siは、Al−Mn−(Si)系やAl−Fe−Mn−(Si)系の金属間化合物と同じように開缶性を向上させる効果がある。しかし、Siの添加量が0.05%未満ならばその効果は現れない。また、0.40%を越えると引き裂き性はより一層向上するが、最大長さ5μm以上の金属間化合物数が本願発明の規定値を満たさなくなる。そのため、Si添加量は0.05〜0.40%の範囲とした。
【0010】
Cu:Cuの添加は強度向上に対して効果的である。しかし、添加量が0.01%未満では、その効果は現れない。一方、0.20%を超える場合には、非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用としての缶蓋材として強度過剰となる。更に、製造プロセスによってはCuを含む析出物が析出してリベット成形性やスコアー加工性を阻害してしまう。そのため、Cu添加量を0.01〜0.20%の範囲とした。
【0011】
Cr:Crの添加は強度向上に対して効果的である。しかし、添加量が0.01%未満では、その効果は現れない。一方、0.30%を越えると、Al−Cr系の粗大な金属間化合物が増えて、引き裂き性はより一層向上するものの、最大長さ5μm以上の金属間化合物数が本願発明の規定値を満たさなくなる。そのため、Cr添加量を0.01〜0.30%の範囲とした。
【0012】
Ti:Tiは結晶粒の微細化に有効な元素であるが、添加量が多いと鋳塊組織を羽毛状晶になり難くし、粒状晶を生成しやすくする。粒状晶の場合には、羽毛状晶の場合よりも粒界に晶出する金属間化合物を粗大化させたり、それ自体、粗大金属間化合物を生成してしまい、開缶性に問題が生じる。従って、Ti量を0.04%以下に規制した。
【0013】
次に、製品板の板厚表面で集合組織を測定した場合に圧延集合組織に属するCu方位、S方位、Brass方位の何れかの方位成分がランダム方位の6倍以上である理由について説明する。
Cu方位、S方位、Brass方位の何れかの方位成分がランダム方位の6倍以上であれば、製品板における同一方位成分の占める割合が多くなり、リベット成形やスコアー加工などの過酷な成形を行っても、不均一な応力集中が起こり難くなり、成形時のマイクロクラックの発生が抑えられ、成形性向上に寄与する。また、圧延集合組織の分布を板厚表面と規定した理由は、リベット成形やスコアー加工時に発生するマイクロクラックは板厚表面で発生し、板厚内部へと進展して大きな割れへと成長して成形性を極端に低下させる。そのため、本発明では特に板厚表面での圧延集合組織を規定した。
尚、本発明で定義した圧延集合組織成分の方位密度は、X線回折によって(200)、(220)、(111)の不完全極点図から方位分布関数(ODF)を計算して求め、Bungeの表示法でのψ:45、65、90°断面で現れるCu、S、Brass方位の方位密度を測定した。
【0014】
次に、最大長さ5μm以上の金属間化合物数を板厚表面で測定した場合に1mm2あたり30個以上、480個以下である理由について説明する。
冷間圧延によって粗大な金属間化合物周りには転位密度が高い領域、すなわちディフォメーションゾーンと呼ばれる強加工領域が発達する。転位密度が高い領域は非常に大きな残留応力が蓄積された状態にあり、缶蓋のように冷間圧延板を塗装焼付け処理しても、焼付け条件によってはこの影響が残存する。従って、引き裂き時には非常に大きな残留応力に耐えきれず粗大な金属間化合物自体が割れ、その割れは材料内部に進展する。更には、粗大な金属間化合物とアルミニウムマトリックスとの延性の違いによって、その界面には剥離が生じる。引き裂き性は、これらの重畳効果によって向上する。
しかし、このような粗大な金属間化合物の特性は開缶時の引き裂き性は向上するものの、缶蓋に成形する際のリベット成形やスコアー加工の時にも同様な現象が現れてしまい、成形性が極端に低下してしまうという問題もある。
また、粗大な金属間化合物の分布と集合組織とは密接な関係がある。それは、粗大な金属間化合物の周りに形成されるディフォメーションゾーンは、圧延集合組織の発達を抑える働きがある。先にも説明したように、圧延集合組織に属するCu、S、Brassを発達させなければ、リベット成形性やスコアー加工性は向上しない。以上のことから、集合組織と同じように板厚表面での金属間化合物の分布を制御することは非常に重要である。
最大長さ5μm以上の金属間化合物が1mmあたり30個未満とすると、リベット成形性やスコアー加工性は良好であるが、合金成分の規制を厳しくしなければならず、製造コストが高くなってしまい、更には、缶蓋に要求される引き裂き性を阻害してしまう。
一方、480個を超えると、引き裂き性は向上するが、リベット成形性やスコアー加工性が低下する。さらに粗大な金属間化合物が480個を超えて多数存在すると、冷間圧延途中でのエッジ割れを引き起こす要因ともなる。
そのため、最大長さ5μm以上の金属間化合物数を板厚表面で測定した場合に1mm2あたり30個以上、480個以下と規定した。
【0015】
次に本発明の製造プロセスについて説明する。
まず熱間圧延条件の規定について説明する。
【0016】
(1)最終パスの圧延率:
40〜63%(シングルリバース方式の熱間仕上げ圧延機)
35〜61%(タンデム方式の熱間仕上げ圧延機)
シングルリバース方式とタンデム方式で、熱間仕上げ圧延での最終パスの圧延率が異なるのは、シングルリバース方式の場合には、1パスごとに熱延板がコイル状に巻き取られ、この時、熱延で導入された転位は消滅してしまい、タンデム方式のようには転位を蓄積することができない。また、コイル状に巻き取られる時には板の温度低下も生じる。板の温度低下は板厚が薄くなるにつれ大きくなる。一方、タンデム方式の場合には、熱延板がコイル状に巻き取られるのは、最終パス完了後だけである。これらにより、シングルリバース方式の方がタンデム方式よりも再結晶が起こり難い。従って、シングルリバース方式とタンデム方式では、最終パスの最適圧延率は異なる。しかし、両者のプロセスとも圧延率の上限を上回ると、熱延コーティングや熱延中に板切れが発生して、製品としての価値を失う。
また圧延率の下限を下回ると熱間圧延板での再結晶率が85%を満たさなくなるという問題点がある。従って、最終パスの圧延率を上記の範囲とした。
【0017】
(2)熱間圧延上り板厚:
2.0〜3.7mm(シングルリバース方式の熱間仕上げ圧延機)
1.8〜3.4mm(タンデム方式の熱間仕上げ圧延機)
熱間圧延の上り板厚がシングルリバース方式とタンデム方式で異なるのは、先にも説明したように、タンデム方式の方が熱延上り板厚が薄くても熱間圧延板の再結晶率85%以上を確保するのは容易であり、冷延中の板のエッジ割れ懸念が少ないためである。
また本発明の製造方法では冷間圧延途中の中間焼鈍を省略するため、焼鈍による延性の回復が望めず、従って熱間圧延上り板厚がそのままエッジ割れの発生、すなわち冷間圧延途中での板端部のトリミング工程の有無を決める。しかし上記の範囲内であるならば冷間圧延の途中で板のエッジ割れの懸念が少なく、従って冷間圧延中のトリミングは省略することができる。
【0018】
(3)熱間圧延板の再結晶率85%以上
粗大な金属間化合物の周りは優先的な再結晶の核生成サイトであるが、再結晶率が85%未満では、その領域には転位密度が高い状態に維持されたままである。従って、後で説明する総冷間圧延率が本発明の規定以内でも、冷間圧延によってディフォメーションゾーンの発達が著しくなる。そのため、圧延集合組織の発達が抑えられ、リベット成形性やスコアー加工性は向上しない。
また、再結晶率が85%以上無ければ、冷間圧延の途中でエッジ割れが発生しやすくなり、製品板の板厚まで冷間圧延する間には少なくとも2回以上の板端部のトリミングが必須となる。
以上のことから、板の再結晶率を85%以上と規定した。尚、再結晶率の測定は熱延板のL断面で組織観察を行い、板厚方向に対する再結晶粒と加工組織の割合を定量解析して求めた。
【0019】
次に冷間圧延条件について説明する。
【0020】
(4)総冷間圧延率:
85〜93.5%(シングルリバース方式の熱間仕上げ圧延機を用いた場合)
85〜93%(タンデム方式の熱間仕上げ圧延機を用いた場合)
総冷間圧延率がシングルリバース方式とタンデム方式で異なるのは、先にも説明したように熱間上り板厚がそれぞれの圧延機によって異なるため、両者の方式では総冷間圧延率に違いが生じる。
また、この上限を上回る圧延率では、熱延板の再結晶率が85%以上であっても冷間圧延の途中で板端部に割れが発生しやすくなり、最終製品板厚とするまでには2回以上のトリミングを行わなければならなくなる。更に、ディフォメーションゾーンの形成を助長してしまい、リベット成形性やスコアー加工性が低下する。
以上のことから、総冷間圧延率を上記の範囲とした。
【0021】
(5)最終パスの圧延率が15〜60%
需要家の要求によっては、製品コイル長さが10000mを超える場合がある。そのため、最終パスの圧延率が15%未満では圧延時間が長くなるため、生産性の低下は避けられない。一方、60%を超える圧延率では、高圧下圧延のためヘリンボーンなどの板表面不良が生じたり、時には圧延中に板切れが発生する。更には、板とロールとの剪断作用が大きくなり過ぎて集合組織がランダムになってしまい、圧延集合組織が発達しない。そのため、リベット成形性やスコアー加工性の向上は認められない。以上のことから、最終冷間圧延率を上記の範囲にした。尚、タンデム冷延機を使用する場合には、各スタンドを通過するごとに1パスと数える。
【0022】
(6)最終パスの圧延速度300m/分以上
最終パスの圧延速度が300m/分未満では圧延時間が長くなるため生産性の低下は避けられない。そこで、最終パスの圧延速度を上記の如く規定した。
【0023】
・冷間圧延の途中の中間焼鈍は行わない
通常の製造方法では冷間圧延の途中で中間焼鈍を行うが、本発明においては上記の条件で熱間圧延および冷間圧延を行い、冷間圧延の途中での中間焼鈍は行わないこととする。
これにより所定の圧延集合組織が得られ、また金属間化合物数も規定の範囲内とすることができ、リベット成形性ならびにスコアー加工性の良好な材料を得ることができる。
また、中間焼鈍を行わないことにより、焼鈍に要する時間が不用であるばかりでなく焼鈍後の冷却時間も省略でき、また加熱のための熱エネルギーを節約でき、生産性向上、省エネルギーの効果もある。
【0024】
・冷間圧延の途中でのトリミングは0〜1回
上記の成分組成ならびに熱間圧延条件、冷間圧延条件を満たす場合には冷間圧延途中での板端部のエッジ割れが抑制でき、冷間圧延の途中で板端部のトリミングを行わずに製品板の板厚まで圧延できる。
そこで本発明では冷間圧延途中ではトリミングは行わないこととする。但し、生産性向上の極限を狙って冷延パス数を削減して1回の冷間圧延率を大きくした場合などには、冷延中の板切れの懸念を少なくするために、一度だけ板端部のトリミングを行っても良い。
このようにトリミングを0〜1回とすることにより、工程を省略できることから省エネルギー、時間短縮など生産性を向上させることができる。
【0025】
【実施例】
表1に示す種々の化学成分のAl合金鋳塊を、表2で記載したプロセスで製造し最終板厚0.23mmに仕上げて塗装し、250℃×24sで焼き付け処理した。
【0026】
【表1】
Figure 0003904868
【0027】
【表2】
Figure 0003904868
【0028】
その後、板厚表層部をバフ研磨後、電解研磨を施してX線回折による集合組織を測定した。また、5μm以上の粗大な金属間化合物は、集合組織を測定した板を用いて画像解析処理装置を使用して定量解析した。
またリベット成形性とスコアー加工性の評価は蓋を200個作製し、目視で割れの有無を調査した。一個でも割れが認めれらたものは不合格とした。これら一連の結果を表3に示す。
【0029】
【表3】
Figure 0003904868
【0030】
表3に示すように、発明例であるNo.1およびNo.4はいずれも良好なリベット成形性、スコアー加工性を示した。
これに対してNo.2は熱間圧延条件が外れていることから、エッジ割れが発生してトリミングが必要となり、また圧延集合組織が適正でなく、そのためリベット成形性やスコアー加工性が悪くなっている。
またNo.3は熱延上り板厚が厚いため、総冷間圧延率を大きくしなければならず、このためトリミングが必要となり、また圧延集合組織が適正でなく、そのためリベット成形性やスコアー加工性が悪くなっている。
No.5は発明例No4と同じ合金を用いてNo3と同様の条件で製造したものであるが、熱間圧延条件が外れていることから、エッジ割れが発生してトリミングが必要となり、また圧延集合組織が適正でなく、リベット成形性やスコアー加工性が悪くなっている。
No.6は最終冷間圧延率が大きなもので、圧延途中で板切れが発生してしまっている。またリベット成形性やスコアー加工性も悪くなっている。
No.7〜9は合金組成が外れているもので、金属間化合物の分布条件が本発明から外れてしまい、リベット成形性やスコアー加工性が悪くなっている。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば非炭酸飲料用、食缶用、日用雑貨用などの用途に使用する缶蓋材として、リベット成形性やスコア加工性に優れたものを提供することが可能となる。
また冷間圧延途中での中間焼鈍を行わず、またトリミング回数を少なく、あるいはトリミングせずにすませられることにより、生産性を向上させることができる製造方法を提供することができる。

Claims (4)

  1. Mg1.85〜3.00%(質量%、以下同様)、Mn0.05〜0.60%、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を必須成分として含み、不純物元素であるTiを0.04%以下に規制し、残部がAl及び不可避的不純物からなる成分を有し、製品板の板厚表面で集合組織を測定した場合に圧延集合組織に属するCu方位、S方位、Brass方位の何れかの方位成分がランダム方位の6倍以上、且つ、最大長さ5μm以上の金属間化合物数を板厚表面で測定した場合に1mm2あたり30個以上、480個以下であることを特徴とする非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材。
  2. 請求項1記載のアルミニウム合金缶蓋材において、さらにCu0.01〜0.20%、Cr0.01〜0.30%のうちから選ばれた1種以上を含有する合金を用いることを特徴とする非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材。
  3. 請求項1または2記載の合金成分を有するAl合金鋳塊を、均質化処理を兼ねた加熱処理を施した後、(1)〜(3)の条件を満たす熱間圧延をシングルリバース方式の熱間仕上げ圧延機を用いて行い、
    (1)最終パスの圧延率:40〜63%
    (2)熱間圧延上り板厚:2.0〜3.7mm
    (3)熱間圧延板の再結晶率:85%以上
    引き続き、冷間圧延の途中では中間焼鈍は行わず、また冷間圧延途中でのトリミングは0〜1回として、
    (4)総冷間圧延率:85〜93.5%
    (5)最終パスの圧延率:15〜60%
    (6)最終パスの圧延速度:300m/分以上
    の条件を満たす冷間圧延を行い、製品板の板厚表面で集合組織を測定した場合に圧延集合組織に属するCu方位、S方位、Brass方位の何れかの方位成分がランダム方位の6倍以上、且つ、最大長さ5μm以上の金属間化合物数を板厚表面で測定した場合に1mm2あたり30個以上、480個以下であることを特徴とする非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材の製造方法。
  4. 請求項1または2記載の合金成分を有するAl合金鋳塊を、均質化処理を兼ねた加熱処理を施した後、(1')〜(3')の条件を満たす熱間圧延をタンデム方式の熱間仕上げ圧延機を用いて行い、
    (1')最終パスの圧延率:35〜61%
    (2')熱間圧延上り板厚:1.8〜3.4mm
    (3')熱間圧延板の再結晶率:85%以上
    引き続き、冷間圧延の途中では中間焼鈍は行わず、また冷間圧延途中でのトリミングは0〜1回として、
    (4')総冷間圧延率:85〜93%
    (5')最終パスの圧延率:15〜60%
    (6')最終パスの圧延速度:300m/分以上
    の条件を満たす冷間圧延を行い、製品板の板厚表面で集合組織を測定した場合に圧延集合組織に属するCu方位、S方位、Brass方位の何れかの方位成分がランダム方位の6倍以上、且つ、最大長さ5μm以上の金属間化合物数を板厚表面で測定した場合に1mm2あたり30個以上、480個以下であることを特徴とする非炭酸飲料用、食缶用さらに日用雑貨用に使用する成形性に優れたアルミニウム合金缶蓋材の製造方法。
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