JP3902865B2 - 架橋ポリエチレン管の製造方法 - Google Patents

架橋ポリエチレン管の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、架橋ポリエチレン管の製造方法の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼管に代えて架橋ポリエチレン管が、給湯システムや暖房システムの給湯管として用いられている。その架橋ポリエチレン管には、鞘管内への挿入性の向上等の施工者の負担を軽くするための「常温時の柔軟性」、給湯時に必要な「高温時の強度(降伏強さ、クリープ特性等)」が求められている。
【0003】
しかし、常温時の柔軟性は、一般に、高温時の強度低下を招くため、従来の架橋ポリエチレン管の製造技術においては、常温時の柔軟性と、高温時の強度とを両立させることは容易ではないという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、特開平2−253076号公報が提案されている。この提案方法においては、ポリエチレンの物性を密度0.932〜0.940g/cm3 として、「常温時の柔軟性」を維持し、、メルトインンデックス0.1〜0.4g/10minとして、「高温時の強度(降伏強さ、クリープ特性等)」を向上させている。そして、製造方法として、シラン化合物をグラフトし未架橋の状態の粒状コンパウンドを成形し(一段目)、このコンパウンドを架橋を防ぎながら管状に成形し(二段目)、成形後シラノール縮合触媒および/または水放出物質と反応させることが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に記載の二段成形法で用いられるポリエチレンは、メルトインンデックスが低い(0.1〜0.4g/10min)ため、押出成形時に背圧が必要以上に上昇し、押出成形モーター等に過剰な負荷がかかって成形が困難である。
そのため、メルトインンデックスを低くする代わりに、重合触媒としてメタロセン化合物を用いて重合された重量平均分子量4万以上9万以下、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)2.0以上4.0未満のポリエチレン系樹脂を使用することにより、「高温時の強度」を向上させることができる。
上記公報に記載の二段成形法で用いられるポリエチレンは、チーグラー触媒を用いて重合されたポリエチレン(以下、チーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂という)と思われ、チーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂は、分子量分布が広いことにより低分子量成分が多く含まれることからポリマーの溶融粘度が低くなっているものである。このため、二段目にグラフトポリエチレンを押し出すときに、バレル内での加熱により多少架橋反応が進行しても押出成形が可能である。
しかし、分子量4万以上9万以下、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)2.0以上4.0未満のメタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂を用いた場合には、分子量分布が狭いため低分子量成分が少なくなり、低分子量成分による粘度低下の寄与が少なくなるため、チーグラー触媒を用いて重合された樹脂よりも可塑化した樹脂の粘度が高くなり、それに加えて、グラフトさせてシラン変成させることにより、更に粘度上昇が起こるため、チーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂のような二段成形が非常に難しくなる。
【0006】
本発明はそのような事情に鑑みてなされたもので、「常温時の柔軟性」と、より優れた「高温時の強度」を兼ね備えた架橋ポリエチレン管の製造方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に記載の発明(本発明1)は、重合触媒としてメタロセン化合物を用いて重合された密度0.932〜0.940g/cm3 、重量平均分子量4万以上9万以下、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)2.0以上4.0未満、HMI(ハイウエートメルトインデックス)が45以上85以下のポリエチレン系樹脂を押出機に供給した後、押出機内においてポリエチレン系樹脂を、ラジカル発生剤の存在下でシラン化合物をグラフトさせてシラン変成させるとともに、シラノール縮合触媒の存在下でシラノール化促進させつつ、管状に押出成形して一段成形する工程と、水雰囲気下に晒してゲル分率65%以上に架橋させる工程とを包含することを特徴とする架橋ポリエチレン管の製造方法である。
【0008】
本願の請求項2に記載の発明(本発明2)は、前記ラジカル発生剤として、1分半減期温度が165℃以上190℃以下であるものを用いて、押出機の樹脂温度を前記ラジカル発生剤の1分半減期温度より35℃を超えない温度に設定して押出成形することを特徴とする請求項1記載の架橋ポリエチレン管の製造方法である。
【0009】
本発明の製造方法として、二段成形法ではなく、一段成形法により製造する。つまり、二段成形法のように、管状に成形(二段目)する前に、シラン化合物をグラフトし未架橋の状態の粒状コンパウンドを成形(一段目)するのではなく、管状に押出成形する押出機内において、シラン化合物をグラフトするシラン変成とシラノール化促進とをして一段で成形法により製造する。そのため、ポリエチレン系樹脂の押出機内での粘度上昇が発生せず、押出成形することができる。
【0010】
上記したメタロセン化合物の性質等について、以下に説明する。
一般に、メタロセン化合物とは、遷移金属を、π電子系の不飽和化合物で挟んだ構造の化合物であり、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、白金等の四価の遷移金属に、1つ又は2つ以上のシクロペンタジエン環又はその類縁体がリガンドに(配位子)として存在する化合物である。
【0011】
上記リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素一置換メタロイド基により置換されたシクロペンタジエニル環及びインデニル環、シクロペンタジエニルオリゴマー環等が挙げられる。
【0012】
これらのπ電子系の不飽和化合物以外に、例えば、塩素、臭素等の一価のアニオン又は二価のアニオンキレート、炭化水素基、アルコキシド、アミド、ホスフィド、アリールアルコシキド、アリールアミド、アリールホスフィド、アリールオキシド等が遷移金属に配位結合されていてもよい。
【0013】
上記シクロペンタジエニル環およびインデニル環と置換される炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、セチル、フェニル等が挙げられる。
【0014】
このようなメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドハフニウムジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジ−n−プロピルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)等が挙げられる。
【0015】
これらのメタロセン化合物は、金属の種類や配位子の構造を変え、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、エチレン等のオレフィンの重合の際に触媒として働く。具体的には、重合は、メタロセン化合物に共触媒としてメチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素化合物等を添加した系で行われる。メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜1,000,000モル倍、好ましくは50〜5,000モル倍である。
【0016】
上記重合条件については特に制限はなく、例えば、不活性媒体を用いる溶液重合法、実質的に不活性媒体の存在しない塊状重合法、気相重合法等が利用できる。通常、重合温度は−100〜300°C、重合圧力は常圧〜100kg/cm2 であるのが一般的である。
【0017】
また、上記したポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体等が挙げられる。
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。
【0018】
実際に、重合触媒にメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂(以下、「メタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂」という)としては、例えば、ダウ・ケミカル社のHF、エクソン・ケミカル社のEXACT等が市販されている。
【0019】
このような構造のメタロセン触媒(化合物)は、各活性点の性質が均一であるという特徴を有している。つまり、各活性点の活性度が等しいので、合成するポリマーの分子量、分子量分布、組成、組成分布の均一性が高まる。従って、ポリエチレン系樹脂の製造時にメタロセン触媒を用いることにより、従来のチーグラー触媒を用いた場合に比して狭い分子量分布を有するポリエチレン系樹脂を得ることができる。またL−LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)に対しては、ブテン,ヘキセン,オクテン等の高級オレフィン類との共重合が一般に行われているが、メタロセン触媒を用いることにより、高級オレフィン類がポリエチレン鎖に均等に付加され、これにより、均質な構造の共重合体を得ることができる。
【0020】
従って、メタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂は、均一な厚さを持ったラメラ層で構成されることとなり、ラメラ層の各層を互いに結合する分子(タイ分子)の量が、従来のチーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂よりも増加し、これによって、より優れた破壊特性を持つ樹脂を得ることができる。
【0021】
本発明において使用されるシラン化合物は、オレフィン系不飽和結合、および、加水分解可能な有機基を持つシラン化合物である。このような特徴を備え、本発明に用いるに好ましいシラン化合物としては、例えば、ビニルトリスアルコキシランがあり、中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランが好ましい。また、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン等でもよい。
【0022】
シラン化合物のオレフィン系不飽和結合部位は、ポリエチレン系樹脂中に発生した遊離ラジカル部位と反応する。そのラジカルを発生させ、しかも本発明に好ましいラジカル発生剤としては、例えば、有機ペルオキシド、有機ペルエステル等があり、中でも、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、tert−ブチルペルジエチルアセテート等が好ましく、その他にも、アゾ化合物があり、例えば、アゾビス−イソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
【0023】
ラジカル発生剤としては、1分半減期温度が165℃以上190℃以下であるものを用いるのが好ましい。1分半減期温度が165℃未満であと、ラジカル発生量が反応初期段階で著しく増加するため、反応の制御が制御がむずかしくなり安定した成形条件を設定しにくくなるばかりか、ラジカル発生剤によるポリマー架橋反応から一般的にスコーチと呼ばれる見た目が透明球状のゲル化物が製品中に発生し、製品の外観悪化及び強度低下等の問題を引き起こし易い。又、190℃を超えると、可塑化した樹脂をシラン変成させる際にシラン化合物のグラフト量が少なくなるため、ゲル分率が65%以上にならず、成形品のクリープ特性が劣る。
【0024】
本発明に用いられるシラノール縮合触媒は、シラノール間の脱水縮合を促進する触媒として一般的に用いられる任意の化合物であればよく、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン等の化合物、硫酸、塩酸等の無機塩、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられるが、中でもジブチル錫ジラウレートがより好適に用いられる。
【0025】
一般に、従来のチーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂に対して架橋処理を行うと、架橋分子の存在によってクリープ特性,降伏強さ等が向上する。しかしその一方で、結晶構造は架橋分子により乱されるため、固体構造内に脆弱部分が生じて応力集中が起こり、顕著な強度向上が望めない。
【0026】
一方、メタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂は、上述したように、その各重合成分が重合体中に均一に分布しているため、架橋による結晶構造の乱れは最小限に抑えることができる。従って、より優れた強度を得ることができる。
【0027】
これらのことを表1を用いて説明する。この表には、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した結晶融解データ(メタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂,チーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂の架橋前,架橋後の各データ)が示されている。
【0028】
【表1】
Figure 0003902865
【0029】
ここで、DSCpeak半値幅とは、結晶融解ピーク高さの半分の高さにおける温度幅を指す。
この表において、半値幅を比べてみると、架橋前では、チーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂に対し、メタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂の方が、0.9(°C)狭く、架橋後では、前者に対し後者の方が、4.8(°C)狭くなっている。
【0030】
これは、チーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂に対し、メタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂が、より均一な成分分布であるとともにラメラ層の厚みがより均一にそろっていることを表し、また、前者の架橋体に対して後者の架橋体が、より均一に分布していることを表している。そして、ラメラ層が均一な厚さをもっていることが、架橋処理を経ることで、より顕著な効果をもたらすことも表している。
【0031】
このような理由により、メタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂は、シラン化合物の付加に際し均一架橋を呈するため、架橋剤の分散分配を充分に行うことによって、均一な結晶分布を有する架橋ポリエチレン管を作成することができる(この結晶分布についてはX線小角散乱等の分析手段により証明が可能)。
【0032】
従って、応力印加時に脆弱部分へ応力が集中するのを回避することができ、結晶分布が不均一な従来の架橋ポリエチレン管より優れた高温強度(降伏強さ,クリープ特性)を持たせることができる。
【0033】
本発明に用いられるメタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂としては、原料ポリエチレン系樹脂の分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn、ここにMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)2.0以上4.0未満のものである。
分子量分布が2.0未満であると、可塑化した樹脂の粘度が高くなるので、成形が難しくなり、4.0以上であると成形品のクリープ特性が低下する。
【0034】
分子量分布が上記の範囲内にあると、低分子量成分が少なくなり、分子量が比較的そろうことから、低分子量成分による粘度低下の寄与が少なくなるため、チーグラー触媒を用いて重合された樹脂よりも可塑化した樹脂の粘度が高くなる。それに加えて、グラフトさせてシラン変成させることにより、更に粘度上昇が起こるため、チーグラー触媒使用ポリエチレン系樹脂のような二段成形が非常に難しくなる。
【0035】
又、本発明で用いられるメタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂は、低分子量成分が少ないことから架橋効率が非常によく、一定以上の架橋点の形成により一気にゲル分が発現するため、二段成形法を採用することができない。
【0036】
本発明に用いられるメタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂としては、原料ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量は、4万以上9万以下である。
分子量が4万未満であると、架橋効率が悪くなり、また、粘度が高くなるので、成形が難しくなり、9万以上であると、押出成形時の背圧が上昇して押出期の駆動モーター等に過剰な負荷がかかって成形が困難になる。
【0037】
又、本発明で用いられるメタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂は、原料ポリエチレン系樹脂として、HMI(ハイウエートメルトインデックス)が45以上85以下である。
なお、通常よく測定されるMI(メルトインデックス)は、MIが高くても、高剪断状態では、押出負荷が高いという問題があり、的確な粘度を表すことができない。よって、本発明では、HMI(ハイウエートメルトインデックス)で粘度を表した。MIは、2.15kgの荷重をかけたときの10分間の押出量であるが、HMIは、21.5kgの荷重をかけたときの10分間の押出量である。HMIが45未満であると、押出成形時の背圧が上昇して押出期の駆動モーター等に過剰な負荷がかかって成形が困難になる。HMIが85以上であると、溶融粘度が不足して管状に成形することが困難である。
【0038】
なお、本発明においては、シラン変性ポリエチレン管を、ゲル分率65%以上となるように架橋し、好ましくは70%以上となるように架橋する。ゲル分率が65%に達していないと、密度および粘度平均分子量が好適な値のポリエチレンを用いても、成形品のクリープ特性が劣る。
【0039】
以下に、ゲル分率の測定方法を説明する。
架橋ポリエチレンのサンプルを、キシレンを溶媒として用いたソクスレー抽出器で10時間沸点温度にて抽出し、抽出残の重量を計量して以下の式に従って得られる。
【0040】
【数1】
Figure 0003902865
【0041】
本発明の架橋ポリエチレン管の製造方法では、押出機の樹脂温度を、前記ラジカル発生剤の1分半減期温度より35℃を超えないように設定するのが好ましい。バレル内の樹脂温度が、ラジカル発生剤の1分半減期温度より35℃を超えると、押出機内で樹脂の架橋反応が進み、一般的にスコーチと呼ばれる見た目が透明球状のゲル化物が製品中に発生し、製品の外観悪化及び強度低下等の問題が生じる原因となり易い。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の架橋ポリエチレン管の製造方法に用いられる押出機を示す模式図である。
【0043】
図1に示すように、押出機1は、ポリエチレン系樹脂を供給するホッパー11と、可塑化した樹脂中より水分を除去する第1の真空ベンド孔12と、可塑化した樹脂中にシラン化合物とラジカル発生剤を注入する第1の注入口13と、シラン変成された樹脂中より未反応のシラン化合物を除去する第2の真空ベンド孔14と、シラン変成された樹脂中にシラノール縮合触媒を注入する第2の注入口15と、樹脂を管状に押し出す金型16とを具備している。
【0044】
本発明においては、メタロセン触媒使用ポリエチレン系樹脂をホッパー11より押出機1に供給して、可塑化した樹脂をラジカル発生剤の存在下でシラン化合物をグラフトさせてシラン変成させる工程を有する。
【0045】
本発明においては、シラン変成に先立って、押出機1内の可塑化した樹脂中より水分を除去する工程を包含するのが好ましい。水分が存在すると、未反応のシラン化合物が押出機1内で単独縮合を起こし、一般的にスコーチと呼ばれる見た目が透明球状ゲル化物が成形体に発生し、成形体の外観の悪化及び強度低下等の問題が生じ易い。そこで、押出機1の、ポリエチレン系樹脂を供給するホッパー11とシラン化合物とラジカル発生剤を供給する第1の注入口13までの部分に第1の真空ベンド孔12を設けて、水分を除去するのが好ましい。尚、ポリエチレン系樹脂を供給するホッパー11にも水抜き孔を設けて、水分を除去するのが好ましい。又、供給されるシラン化合物とラジカル発生剤からも、モレキュラーシープ等を用いて水分を極力除去すると更に成形が良好になるので好ましい。
【0046】
本発明においては、押出機1内のシラン変成された樹脂中に第2の注入口15よりシラノール縮合触媒を注入して、シラン変成された樹脂をシラノール縮合触媒の存在下でシラノール化促進させる工程を有する。
【0047】
本発明においては、押出成形前に、可塑化した樹脂中より、第2の真空ベンド孔14を経て、未反応のシラン化合物を除去する工程を包含するのが好ましい。この工程が存在すると、ビニルシラン化合物の単独縮合体の生成を抑制し、外観良好で品質特性に優れた成形体を得ることができる。
【0048】
本発明においては、金型16より管状に押出成形する工程を有する。
本発明においては、押出成形した管を水雰囲気下に晒してゲル分率65%以上に架橋させる工程を有する。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の架橋ポリエチレン管の製造方法を実施例により説明する。
実施例1
図1に示す押出機1を用いて、架橋ポリエチレン管の製造を行った。
重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレン系樹脂〔ダウ・ケミカル社製、商品名「HF1030」、重量平均分子量53600、密度0.935g/cm3 、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)2.5、HMI70g/10min〕100重量部を、ホッパー11から押出機1に供給して可塑化するとともに、可塑化した樹脂中より、第1の真空ベンド孔12から水分を除去した。
【0050】
押出機1内の可塑化した樹脂中に、第1の注入孔13から、樹脂100重量部に対して、ビニルエトキシシラン3重量部とジクミルパーオキサイド(1分半減期温度173℃)0.12重量部との混合物を注入して、樹脂温度185℃に設定した押出機内にて、ラジカル発生剤の存在下でシラン化合物をグラフトさせてシラン変成させた。
次いで、シラン変成した樹脂中より、第2の真空ベンド孔14から残存モノマーを除去した。
【0051】
その後、押出機1内のシラン変成した樹脂中に、第2の注入孔15から、ジブチル錫ジラウレートを樹脂100重量部に対して0.0135重量部を注入して、シラノール化を促進させた。
次に、金型より管状に押出成形した後、水雰囲気下に晒してゲル分率65%以上に架橋させて架橋ポリエチレン管を得た。
【0052】
実施例2
ポリエチレン系樹脂として、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレン系樹脂〔旭化成社製試作品、密度0.938g/cm3 、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)3.49,重量平均分子量72000、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)3.49、HMI60g/10min〕を用いたこと以外は実施例1と同様にして架橋ポリエチレン管を得た。
【0053】
比較例1
ポリエチレン系樹脂として、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレン系樹脂〔ダウ・ケミカル社製試作品、重量平均分子量85000、密度0.940g/cm3 、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)2.8、HMI30g/10min〕を用いたこと以外は実施例と同様にして、架橋ポリエチレン管を得た。
比較例2
ポリエチレン系樹脂として、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレン系樹脂〔旭化成社製試作品、密度0.934g/cm3 、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)3.65,重量平均分子量78000、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)3.65、HMI42g/10min〕を用いたこと以外は実施例1と同様にして架橋ポリエチレン管を得た。
【0054】
比較例3
ポリエチレン系樹脂として、重合触媒としてチグラー触媒を用いて得られたポリエチレン系樹脂〔ダウ・ケミカル社製試作品、重量平均分子量85000、密度0.940g/cm3 、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)2.8、HMI75g/10min〕を用いたこと以外は実施例と同様にして、架橋ポリエチレン管を得た。
比較例4
ポリエチレン系樹脂として、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られたポリエチレン系樹脂〔ダウ・ケミカル社製試作品、重量平均分子量60000、密度0.942g/cm3 、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)2.8、HMI65g/10min〕を用いたこと以外は実施例と同様にして、架橋ポリエチレン管を得た。
【0055】
実施例1,2及び比較例1乃至4で得られた架橋ポリエチレン管について、以下に示す項目をそれぞれの方法に従って特定した。その結果を表1に示す。
(1)引張弾性率測定(管の柔軟性)
JIS−K−7113に準じて行った。
(2)95℃熱間内圧クリープ特定(管の強度)
95℃の温水中で管に4.8MPaの円周応力を印加し、1時間の間に割れ、漏れが生じるか否かを確認するもので、JIS−K−6769に準じて行った。1時間の間に割れ、漏れが生じないものを○として、生じたものを×として示した。
【0056】
【表2】
Figure 0003902865
【0057】
表2からも明らかなように、実施例1,2の場合には、引張弾性率及び内圧クリープについてバランスがよいことがわかる。
しかし、比較例のものは強度が弱くて高温下での高い水圧に耐えられない。
【0058】
【発明の効果】
本発明の架橋ポリエチレン管の製造方法は、上記のとおりとされているので、「常温時の柔軟性」と、より優れた「高温時の強度」を兼ね備えた架橋ポリエチレン管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の架橋ポリエチレン管の製造方法に用いられる押出機を示す模式図である。
【符号の説明】
1 押出機
11 ホッパー
12 第1の真空ベンド孔
13 第1の注入口
14 第2の真空ベンド孔
15 第2の注入口
16 金型

Claims (2)

  1. 重合触媒としてメタロセン化合物を用いて重合された密度0.932〜0.940g/cm3 、重量平均分子量4万以上9万以下、分子量分布(クロマトグラフィー法:Mw/Mn)2.0以上4.0未満、HMI(ハイウエートメルトインデックス)が45以上85以下のポリエチレン系樹脂を押出機に供給した後、押出機内においてポリエチレン系樹脂を、ラジカル発生剤の存在下でシラン化合物をグラフトさせてシラン変成させるとともに、シラノール縮合触媒の存在下でシラノール化促進させつつ、管状に押出成形して一段成形する工程と、水雰囲気下に晒してゲル分率65%以上に架橋させる工程とを包含することを特徴とする架橋ポリエチレン管の製造方法。
  2. 前記ラジカル発生剤として、1分半減期温度が165℃以上190℃以下であるものを用いて、押出機の樹脂温度を前記ラジカル発生剤の1分半減期温度より35℃を超えない温度に設定して押出成形することを特徴とする請求項1記載の架橋ポリエチレン管の製造方法。
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