JP3900860B2 - 金属複合酸化物粉末用組成物及び金属複合酸化物粉末の製造方法 - Google Patents
金属複合酸化物粉末用組成物及び金属複合酸化物粉末の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金属酸化物粉末の製造方法に関し、特に2種以上の金属元素を含有する金属複合酸化物粉末を容易に得ることができる製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、電子材料として利用されるセラミックスは、多成分系の複合酸化物が多く、特に精密な組成の制御が要求される。セラミックスの製造方法として、沈殿反応を利用した方法が一般に用いられている。この方法ではまず構成元素を酸に溶解し、目的とする組成の金属イオン水溶液とする。次に沈殿剤を加え、沈殿反応により水酸化物などの難溶性の塩からなる沈殿物とする。そして得られた沈殿物を焼成し、金属複合酸化物とする。
【0003】
この沈殿反応を利用した方法では、組成の均質な金属複合酸化物が得られる特徴がある。しかし生成した水酸化物などの塩は、溶解度積に応じて一部が水溶液に溶解するため、仕込んだ金属イオンを全て沈殿物として取り出すことができない。特に溶解度積は金属イオンの種類によって異なるため、生成した沈殿物の組成は、仕込んだ金属イオンの水溶液の組成とずれてしまう問題があった。
【0004】
このため、あらかじめ予備試験を行い、仕込量と沈殿物の組成とのずれを算出し、仕込量を調整する必要があった。特にアルカリ土類金属の水酸化物などの塩は他の金属塩に比べて溶解度積が大きい。このため沈殿法を用いた場合、組成のずれが生じやすく、目的とする組成の金属複合酸化物を製造することが難しかった。
【0005】
近年、錯体重合法やゾル・ゲル法などのように有機物を利用した金属複合酸化物粉末の製造方法が提案されている。錯体重合法では水溶性ポリマ−などを金属塩水溶液に溶解し、撹拌、乳化分散する。これを濃縮後、焼成することで金属酸化物の微粒子が得られる。またゾル・ゲル法では金属アルコキシドを原料として用い、加水分解、重合反応により金属酸化物又は水酸化物の微粒子が分散したゾルとし、さらに反応を進行させゲルとした後、焼成して金属酸化物の微粒子が得られる。
【0006】
しかしこれらの方法はコストと性能の両面から見た場合、一長一短があり完璧な方法ではない。例えば錯体重合法では、水中からの金属酸化物の分離に問題がある。またゾル・ゲル法では前駆体が不安定であり、取り扱いが難しい問題がある。さらに前記した有機物を利用した製造方法では、有機化合物中の金属濃度が低く、焼成して得られる金属酸化物の収量が低いという問題がある。例えば錯体重合法にて高分子錯体を合成し、焼成する方法は、金属酸化物の含有量が5〜6%と非常に低く、生産性が低い。
【0007】
また沈殿反応を用いた方法と同様に、金属化合物の溶解度、化学反応性、蒸気圧、昇華性などの違いにより組成にばらつきが生じやすく、目的とする組成で、かつ均質な金属複合酸化物粉末を得るのが困難である。特にアルカリ土類金属を十分に捕捉し、組成のずれを抑える方法がないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記したように、生産性に優れ、かつ目的とする組成の金属複合酸化物を製造する技術は、十分に確立されておらず、まだ実用化レベルに達していないのが現状である。従って本発明は、組成制御が容易にでき、かつ生産性に優れた金属複合酸化物粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記した問題を解決するために、金属複合酸化物粉末の製造方法について鋭意研究した結果、高分子共重合体配位子を金属イオンに配位させた高分子金属錯体を乾燥、焼成することで課題が解決できることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明の目的は、下記(1)〜(4)の構成によって達成することができる。
(1)エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレンから選ばれた少なくとも1種の不飽和炭化水素と無水マレイン酸とを重合させた高分子共重合体配位子を溶媒に溶解する工程と、前記高分子共重合体配位子を溶解した溶媒に、アルカリ土類金属(但し、アルカリ土類金属は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを含む)を含む少なくとも2種の金属イオンの溶解液を混合することによって高分子金属錯体を形成する工程と、前記高分子金属錯体を乾燥、焼成する工程と、を有することを特徴とする金属複合酸化物粉末の製造方法。
【0011】
(2)前記高分子金属錯体を形成する工程において、前記高分子共重合体配位子を溶解した溶媒と前記アルカリ土類金属を含む少なくとも2種の金属イオンの溶解液とを含有した混合溶液のpHが8以上になるまで、前記混合溶液にアルカリ源を添加することを特徴とする前記(1)に記載の金属複合酸化物粉末の製造方法。
【0012】
(3) 前記アルカリ源は、アンモニア水であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の金属複合酸化物粉末の製造方法。
【0013】
(4)エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレンから選ばれた少なくとも1種の不飽和炭化水素と無水マレイン酸とを重合させた高分子共重合体配位子と、アルカリ土類金属(但し、アルカリ土類金属は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを含む)を含む少なくとも2種の金属イオンと、溶媒とを含有することを特徴とする金属複合酸化物粉末用組成物。
【0014】
本発明の製造方法によれば、2種以上の金属元素を任意の組成で含む金属複合酸化物粉末を容易に製造できる。すなわち各金属元素が原子の状態で、しかも添加する量比のままに高分子金属錯体に取り込まれ、原子状態で分散できる。
【0015】
このとき前記(2)に記載したように、高分子共重合体配位子と金属イオンとを含有した溶液のpHを規格化することが好ましい。ここで溶液のpHは一般的なpHメーターによって測定できる。例えば、指示電極としてガラス電極、参照電極として標準水素電極、カロメル電極、銀−塩化銀電極、銀−銀イオン電極などを用いたpHメーターが使用できる。金属イオン種、溶媒の種類に応じて適切なpHメーターを使用することによって溶液のpHを測定できる。
【0016】
次にこの高分子金属錯体を乾燥、焼成することにより、目的とする組成であり且つ均一な金属複合酸化物粉末が容易に得られる。特に前記(4)及び(1)に記載したように、アルカリ土類金属を用いても組成のずれを生じることなく、ほぼ完全に金属イオンを捕捉でき、目的とする組成の金属複合酸化物粉末を製造できる。
【0017】
また本発明の方法で得られる金属酸化物複合体微粒子の収量は、焼成前の高分子金属錯体の10〜50重量%にも及び、従来の有機物を利用した方法に比べて非常に効率の良い方法である。さらに従来の無機の水酸化物を焼成する場合と比較すると、低い温度にて焼成できるため作業性が良い。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。本発明は高分子共重合体配位子が金属に配位されてなる高分子金属錯体粉末を焼成する金属複合酸化物粉末の製造方法である。特に本発明では、不飽和炭化水素と無水マレイン酸とを重合させた高分子共重合体を用いる。
【0019】
不飽和炭化水素としてはエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブテン、イソブテン、ジメチルブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンなどのアルケン、ブタジエンなどのジエン系化合物、スチレンなどの芳香族化合物が挙げられ、目的に応じて1種以上を選択できる。例えばスチレンと無水マレイン酸との高分子共重合体は、ATOFINA CHEMICALS INC.社製などから市販されており、本発明にて高分子共重合体配位子として使用できる。
【0020】
また本発明で使用できる高分子共重合体配位子は、使用するモノマーや反応機構に応じた重合開始剤を適宜用い、重合反応を行うことによって、容易に得られる。重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチルなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ型化合物、過硫酸カリウムなどが使用できる。モノマーの濃度比、試剤の種類、反応温度などの条件を適宜決定することによって、目的とする構造の高分子共重合体配位子を容易に得ることができる。
【0021】
高分子共重合体配位子の分子量は1000〜1000000が好ましく、さらに好ましくは1500〜500000である。また本発明では目的に応じて、2種以上の高分子共重合体配位子を混合して使用しても構わない。
【0022】
本発明で使用する高分子共重合体配位子は溶媒中で水和し、さらに水溶液のpHがアルカリ性のとき解離し、陰イオンとなる。このとき金属イオンが存在すると、一般式(I)のように金属イオンとキレート環を形成する。このためキレート効果によって金属イオンを安定的に捕捉できる。この金属イオンを捕捉する能力には金属イオン種による選択性がなく、全ての金属イオンを安定的に捕捉することができる。これにより金属イオン種に関わらず、安定的に高分子金属錯体を形成できる。さらに2種以上の金属を容易に配位させることができるため、組成のずれを生じることがない。
【0023】
【化1】
一般式(I)
(式中、Mは金属イオン、nは金属イオンの価数を表す。)
【0024】
本発明で使用できる金属化合物としては周期律表のIB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII族金属の陰イオンの塩、酸化物などが用いられる。特に好ましくは、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB族金属および希土類金属の陰イオンの塩を水溶液の状態で使用する。好ましい金属元素の具体例としてはCu、Ag、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、希土類金属、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Ptが挙げられる。陰イオンとしては−Cl、−Br、−I、−NO3、−SO4、−CO3、−OOCCH3などが用いられる。前記した金属化合物は特に限定されず、目的、使用条件に応じて適宜使用される。また金属化合物は2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
本発明ではまず一種以上の高分子共重合体配位子と金属化合物とをそれぞれ水及び/又は有機溶媒に溶解し、次に双方を混合して混合溶液とする。使用する金属イオンと高分子共重合体配位子とのモル比は、特に限定されないが、金属イオンの価数、高分子共重合体配位子の分子中のカルボン酸基の数などを考慮し、適宜決定することが好ましい。
【0026】
高分子共重合体配位子溶液を調整する際、溶媒は高分子共重合体配位子溶液が溶解できれば特に限定されず使用でき、例えばアセトン、テトラヒドロフラン、トルエンなどが使用できる。ここで高分子共重合体配位子溶液にアンモニアなどのアルカリ源を添加し、溶液のpHをアルカリ性として、高分子共重合体配位子が解離した状態としても構わない。このように目的、使用条件に応じて高分子共重合体配位子溶液のpHを調整しても構わない。
【0027】
使用する金属化合物を溶媒に溶解して金属イオン混合溶液とし、そして高分子共重合体配位子溶液と混合する。ここで各金属イオンと高分子共重合体配位子との反応性を考慮し、各金属元素毎に金属イオン溶液を作製し、順次高分子共重合体配位子溶液に添加し、混合しても構わない。各溶液の温度は特に限定されないが、金属イオンを含有する溶液と高分子共重合体配位子溶液とを混合する際に発熱するときは、溶液を室温以下に冷却することが好ましい。
【0028】
次に金属化合物と高分子共重合体配位子との混合溶液に、アルカリ性の水溶液を添加し、溶液のpHをアルカリ性にする。このときの溶液のpHは8以上が好ましい。これにより高分子共重合体配位子が完全に解離し、金属イオンとキレート環を形成する。さらに水酸化物イオン(OH−)、水分子(H2O)も配位し、難溶性の沈殿物となる。使用するアルカリ性の水溶液は特に限定されないが、不純物の混入を避けるためにアンモニア水が好ましい。ここで金属イオンを含有する溶液と高分子共重合体配位子溶液とを混合したとき、溶液のpHがアルカリ性となり、高分子金属錯体が形成され、難溶性の沈殿物として得られる場合、このアルカリ性の水溶液を添加する工程を省略しても構わない。次に得られた沈殿物を分離、乾燥させて高分子金属錯体粉末とする。
【0029】
本発明の製造方法によれば、前述したように高分子共重合体配位子のキレート効果によって金属イオンは全て高分子共重合体配位子と錯形成し、高分子金属錯体となる。実施例に見られるように、各金属イオンが添加する量比のままに高分子共重合体配位子に取り込まれ、かつ原子レベルで分散される。更にこの高分子金属錯体は、金属イオンを配位したまま難溶性の沈殿物として得られる。このためこの沈殿物を乾燥させた高分子金属錯体粉末を焼成することにより、組成が仕込量と同一で明確であり、且つ均一な金属複合酸化物粉末が容易に得られる。
【0030】
従来技術でも述べたように、アルカリ土類金属は水酸化物塩の溶解度が大きいため、従来より金属イオンを水酸化物の沈殿物として得る沈殿法は一般に使用されていない。また比較例1に示したように、本発明とは異なる高分子共重合剤を用いた場合、完全に金属イオンを捕捉することができず、組成のずれが生じることが分かる。しかし本発明では実施例1,2に示したように、アルカリ土類金属のうち少なくとも1種とアルカリ土類金属以外の金属元素とを共に使用しても、水溶液中の全ての金属イオンを捕捉することができ、組成のずれが生じないことが分かる。
【0031】
次に得られた高分子金属錯体粉末を所定の条件で焼成する。焼成温度は用いる高分子金属錯体の金属元素や高分子共重合体配位子の種類、組成により異なるが、300〜2000℃が好ましく、さらに好ましくは300〜1800℃である。 焼成時間は1〜50時間、好ましくは2〜30時間の範囲で焼成される。また焼成時の雰囲気は大気中で充分であるが、窒素ガス又は酸素ガスを炉内に供給し、目的に応じて雰囲気を適宜調整しても構わない。特に焼成の初期には窒素ガス又は酸素ガスの組成を高くして高分子金属錯体を熱分解した後、高酸素雰囲気下で焼成し、目的の金属酸化物とする方法が好ましい。本発明の方法により製造された金属複合酸化物は微粉末状で得られるため、蛍光体、超伝導体粉末、強誘電体、セラミックス等に利用できる。
【0032】
特に本発明は2段階で焼成することが好ましい。まず1回目の焼成を300〜600℃の低温度で行い、有機物成分を分解除去し、次に2回目の焼成を800〜1800℃で行い、十分に結晶成長させることが好ましい。1回目の焼成では有機物成分の分解除去を効率良く行うために、大気、窒素ガス、酸素ガスなどを炉内に供給しても構わない。2回目の焼成も目的とする金属複合酸化物によって、焼成時の炉内雰囲気を適宜選択できる。例えば水素ガスなどの還元性ガス雰囲気中で行うことで、組成中の酸素量を調整した金属複合酸化物を製造できる。また1回目の焼成後に硫黄化合物を添加したり、硫化物ガス中で2回目の焼成を行うことで、組成式中の酸素の一部を硫黄で置換した組成の金属複合酸化物を製造できる。更に大気又は酸素ガスを炉内に供給して2回目の焼成を行い、結晶性の優れた金属複合酸化物粉末とすることもできる。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
<BaTiO3の製造>
攪拌機を備えた300mlの三口フラスコにスチレン−無水マレイン酸共重合体(ATOFINA CHEMICALS INC.社製、分子量2610±195、以下SMAと略する。)6.07g(0.03mol)を入れ、撹拌しながらアセトン50mlに溶解させた。Ba(NO3)24.85g(0.015mol)を純水30mlに溶解させ、前記SMAのアセトン溶液に滴下した。滴下終了後、得られた混合溶液を5℃以下に冷却した。
【0035】
混合溶液の温度を5℃以下に保ったまま、TiCl4溶液1.59ml(0.015mol)を混合溶液に滴下した。その後、5℃以下に保ったまま、混合溶液を数時間放置した。
【0036】
次に混合溶液を室温まで加温した後、アンモニア水溶液を添加して混合溶液のpHをアルカリ性とし、沈殿物を生成させた。得られた沈殿物を分離、乾燥させた。乾燥させた沈殿物をまず低温度で焼成し、含有する有機物を分解させ、次に1200℃で焼成し、BaTiO3の複合酸化物粉末とした。
【0037】
乾燥させた沈殿物に対する複合酸化物粉末の重量比は約28.1%であった。走査型電子顕微鏡(以下SEMと略記する。)にて、得られた複合酸化物粉末の写真を撮影し、平均粒子径を算出したところ、平均粒子径はおよそ0.6μmであった。さらにプラズマ発光分光(以下ICPと示す)分析法の結果、元素分析値は下記のとおりであった。なお理論値は原料として用いた金属化合物が全て沈殿物となったと仮定して算出した。Ba/Tiのモル比は1.00であり、組成がずれることなく、目的とする金属複合酸化物が得られたことが分かる。
【0038】
【表1】
【0039】
[実施例2]
<SrTiO3;Pr,Alの製造>
攪拌機を備えた300mlの三口フラスコにSMA6.8g(0.0336mol)を入れ、撹拌しながらアセトン50mlに溶解させた。SrCl2・6H2O4g(0.015mol)、PrCl3・7H2O0.148g(0.000396mol)、Al(NO3)3・6H2O1.22g(0.00325mol)を純水30mlに溶解させ、前記SMAのアセトン溶液に滴下した。滴下終了後、得られた混合溶液を5℃以下に冷却した。
【0040】
以下実施例1と同様にして、TiCl4溶液1.59ml(0.015mol)を混合溶液に滴下し、5℃以下に保ったまま数時間放置した。混合溶液中の金属イオンのモル比は、Sr:Ti:Pr:Al=1:1:0.026:0.22であった。次に室温にてアンモニア水溶液を添加し、沈殿物を生成させた。得られた沈殿物を分離、乾燥させ、まず低温度で焼成し、次に1200℃で焼成し、SrTiO3;Pr,Alの複合酸化物粉末とした。
【0041】
乾燥させた沈殿物に対する複合酸化物粉末の重量比は22.3%であった。得られた複合酸化物粉末のSEM写真を撮影し、平均粒子径を算出したところ、平均粒子径はおよそ0.55μmであった。また4kVの電子線で励起したとき、強い赤色の蛍光を発した。このときの色調はx=0.665、y=0.331であった。またICP分析の結果を表2に示す。SrTiPr0.026Al0.22O3であり、組成がずれることなく、目的とする金属複合酸化物が得られたことが分かる。
【0042】
【表2】
【0043】
[参考例3]
<Y3Al5O12;Tbの製造>攪拌機を備えた300mlの三口フラスコにSMA6.25g(0.0309mol)を入れ、撹拌しながらアセトン50mlに溶解させた。YCl3・6H2O3.41g(0.011125mol)、TbCl3・6H2O0.34g(0.0009225mol)、Al(NO3)3・6H2O7.03g(0.01875mol)を純水40mlに溶解させ、前記SMAのアセトン溶液に滴下した。滴下終了後、得られた混合溶液を室温で数時間放置した。混合溶液中の金属イオンのモル比は、Y:Al:Tb=3:5:0.25であった。
【0044】
以下実施例1と同様にして、アンモニア水溶液を添加し、沈殿物を生成させた。得られた沈殿物を分離、乾燥させ、まず低温度で焼成し、次に1200℃で焼成し、Y3Al5O12;Tbの複合酸化物粉末とした。
【0045】
乾燥させた沈殿物に対する複合酸化物粉末の重量比は17.5%であった。得られた複合酸化物粉末のSEM写真を撮影し、平均粒子径を算出したところ、平均粒子径はおよそ0.65μmであった。また7kVの電子線で励起したとき、強い緑色の蛍光を発した。このときの色調はx=0.356、y=0.555であった。さらにICP分析の結果を表3に示す。Y3Al5Tb0.25O12であり、組成がずれることなく、目的とする金属複合酸化物が得られたことが分かる。
【0046】
【表3】
【0047】
[参考例4]
<Y2SiO5;Tbの製造>攪拌機を備えた300mlの三口フラスコにSMA6.37g(0.0315mol)を入れ、撹拌しながらアセトン50mlに溶解させた。YCl3・6H2O6.07g(0.02mol)、TbCl3・6H2O0.538g(0.00144mol)を純水40mlに溶解させ、前記SMAのアセトン溶液に滴下した。滴下終了後、得られた混合溶液を5℃以下に冷却した。
【0048】
混合溶液の温度を5℃以下に保ったまま、SiCl4溶液1.15ml(0.01mol)を混合溶液に滴下した。その後、5℃以下に保ったまま、混合溶液を数時間放置した。混合溶液中の金属イオンのモル比は、Y:Si:Tb=2:1:0.14であった。
【0049】
以下、実施例1と同様にして、室温にてアンモニア水溶液を添加し、沈殿物を生成させた。得られた沈殿物を分離、乾燥させ、まず低温度で焼成し、次に1200℃で焼成し、Y2SiO5;Tbの複合酸化物粉末とした。
【0050】
乾燥させた沈殿物に対する複合酸化物粉末の重量比は19.7%であった。得られた複合酸化物粉末のSEM写真を撮影し、平均粒子径を算出したところ、平均粒子径はおよそ0.45μmであった。また7kVの電子線で励起したとき、強い緑色の蛍光を発した。このときの色調はx=0.341、y=0.578であった。さらに元素分析を行った結果、元素分析値は表4のとおりであった。なおYは滴定法、他の元素はICP分析法により測定した。Y2SiTb0.14O5であり、組成がずれることなく、目的とする金属複合酸化物が得られたことが分かる。
【0051】
【表4】
【0052】
[比較例1]
<SrTiO3;Pr,Alの製造>
ポリアリルアミン(日東紡製、PAA−10C、分子量約1万、50重量%水溶液)32mlを純水100mlに希釈し、サリチルアルデヒド21gを溶解したメタノール溶液500mlと混合し、高分子重合体(以下PAA・Salと示す。)を作製した。
【0053】
攪拌機を備えた300mlの三口フラスコにPAA・Sal5.4g(0.0337mol)、純水350ml、濃塩酸1mlを入れ、撹拌しながら溶解させた。更に8−キノリノール9.6g(0.0672mol)をメタノール100mlに溶解して加えた。実施例2と同様にして作製したSr、Pr、Al混合水溶液を前記PAA・Salと8−キノリノールとの混合溶液に滴下した。次にTiCl4水溶液1.59ml(0.015mol)を混合溶液に滴下した。
【0054】
室温にてアンモニア水溶液を添加し、沈殿物を生成させた。得られた沈殿物を分離、乾燥させ、まず低温度で焼成し、次に1200℃で焼成し、SrTiO3;Pr,Alの複合酸化物粉末とした。
【0055】
X線回折散乱法により結晶相の同定を行った結果、不純相として酸化チタンの結晶相の特性ピークが見られた。ICP分析の結果を表5に示す。アルカリ土類金属であるSr含有量が理論値に比べて少なく、Srが完全に捕捉されなかったことが分かる。得られた複合酸化物粉末の組成はSrTi1.18Pr0.032Al0.29O3であった。Sr量が少ないため、化学量論組成比に対してTi量が多くなり、酸化チタンの不純相が生成したと考えられる。
【0056】
【表5】
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法によって金属イオンを高分子共重合体配位子に配位させ、高分子金属錯体粉末とし、この高分子金属錯体粉末を焼成することで、目的とする組成でしかも均質な金属複合酸化物粉末を容易に得ることができる。特に従来では組成制御が困難であったアルカリ土類金属についても他の金属イオンと同様に、添加する量比のままに高分子金属錯体に取り込まれるため、組成のずれを生じることなく目的とする組成の金属複合酸化物粉末を容易に製造することができる。更に従来の有機物を用いた製造法に比べて収率が高く、効率よく金属複合酸化物粉末を製造できる。このように本発明では従来困難であった精密な組成制御が可能となり、優れた高機能性セラミックス粉末を効率よく作製でき、様々な分野への応用が期待できる。
Claims (4)
- エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレンから選ばれた少なくとも1種の不飽和炭化水素と無水マレイン酸とを重合させた高分子共重合体配位子を溶媒に溶解する工程と、
前記高分子共重合体配位子を溶解した溶媒に、アルカリ土類金属(但し、アルカリ土類金属は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを含む)を含む少なくとも2種の金属イオンの溶解液を混合することによって高分子金属錯体を形成する工程と、
前記高分子金属錯体を乾燥、焼成する工程と、
を有することを特徴とする金属複合酸化物粉末の製造方法。 - 前記高分子金属錯体を形成する工程において、前記高分子共重合体配位子を溶解した溶媒と前記アルカリ土類金属を含む少なくとも2種の金属イオンの溶解液とを含有した混合溶液のpHが8以上になるまで、前記混合溶液にアルカリ源を添加することを特徴とする請求項1に記載の金属複合酸化物粉末の製造方法。
- 前記アルカリ源は、アンモニア水であることを特徴とする請求項1乃至2に記載の金属複合酸化物粉末の製造方法。
- エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレンから選ばれた少なくとも1種の不飽和炭化水素と無水マレイン酸とを重合させた高分子共重合体配位子と、アルカリ土類金属(但し、アルカリ土類金属は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを含む)を含む少なくとも2種の金属イオンと、溶媒とを含有することを特徴とする金属複合酸化物粉末用組成物。
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