JP3900639B2 - 深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池缶用鋼板およびその製造方法に関し、特に多段の深絞り加工により成形される2ピース電池缶用鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルカリマンガン乾電池やリチウム電池等の一次電池、Ni−Cd電池やNi−MH電池等の二次電池には、素材となる鋼板をプレス成形により円筒状に加工した、いわゆる2ピース電池缶が使われている。これらの2ピース缶は成形方法により、さらにDI缶と絞り缶に大別される。
【0003】
DI缶は、0.4mm程度の鋼板を円形ブランクに打ち抜くとともに円筒状に深絞り成形する工程と、該円筒パーツを複数のしごきダイによってしごき加工する工程とからなる、いわゆるDI成形によって製缶される電池缶である。DI缶は、缶壁のしごき加工により、素材となる鋼板板厚よりも缶壁厚を薄くすることが可能であり、最終的な缶壁の厚みは0.15mm程度まで薄くなる。このようなDI成形により製造される電池に関する従来技術として、例えば、特公平7−99686号公報に開示された技術がある。
【0004】
一方、絞り缶は、ファーストカッピング後、さらに5〜10工程程度の多段の絞り成形により製缶される電池缶であり、DI缶のように缶壁厚を薄くすることは難しく、一般的には缶壁厚は鋼板板厚と同程度である。また、電池缶には電池内容物のアルカリ性に耐え得る優れた耐食性が要求されることから、Niメッキが施されているものが一般的であるが、絞り缶には、プレス成形後にNiめっきを行なう後めっき法(いわゆるバレルめっき)とNiめっき鋼板をプレス成形するプレめっき法の両者が用いられている。このような絞り成形により製缶される電池缶に関する従来技術として、例えば、特開昭55−131959号公報、特開昭58−176861号公報に開示された技術がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、上記のような一次電池、二次電池等の小型電池の寿命向上に対するニーズが一段と高まり、そのための対策の一つとして、電池缶の缶壁薄肉化をはかり、充填剤容量を増加させて電池容量を高めることが試行されている。DI缶の場合には前述のように缶壁薄肉化をはかることは比較的容易であるが、絞り缶の場合には、通常の絞り成形では缶底に比べ缶壁板厚は若干厚くなるため、成形により缶壁の薄肉化をはかるのは困難である。そのため、絞り缶用鋼板については、成形前の鋼板そのもののゲージダウンが強く求められている。
【0006】
しかし、鋼板をゲージダウンした場合には、缶壁厚が薄くなり電池容量を増加させることはできるが、封口部板厚も当然薄くなるため、封口部のかしめ強度が弱まり内容物の液漏れの危険性が大きくなるという新たな問題が発生する。現状では、このような課題に対する根本的な解決策は未だ見出されていない。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、ゲージダウンした場合にも優れた封口部密封性を有し、特に多段絞りにより成形される場合に有効な、深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
封口部の密封性を高めるためには封口部の強度上昇をはかり、かしめ強度を高める必要があるが、絞り缶はDI缶と異なり、製缶加工時の加工硬化が小さいため、鋼板強度そのものを高める必要がある。しかし、単に鋼板を高強度化しただけでは、深絞り性が低下し多段の絞り成形過程で割れ等の成形不良が発生しやすくなる。また、面内異方性が劣化し、缶端部の耳が大きくなりトリム代が大きくなるとともに、封口部の円周方向の板厚分布が不均一になり、かしめ強度の不均一をもをたらし液漏れの危険性が大きくなる。
【0009】
そこで、本発明者らは、深絞り性、面内異方性を劣化させずに、かしめ強度の高い封口部密封性の優れた2ピース電池缶用鋼板を得るという上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、極低C鋼を焼鈍後の二次圧延により加工硬化させておくことにより上記課題を解決することができることを見出した。さらに、Bを添加することにより、封口部密封性が一段と向上することを見出した。
【0010】
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、第1発明は、重量%で、C≦0.005%、0.02%≦sol.Al≦0.15%、N≦0.0035%、0.001%≦B≦0.0035%、Si≦0.02%、0.1%≦Mn≦1.0%、P≦0.02%、S≦0.02%、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼組成を有し、焼鈍後の二次圧延により加工硬化していることを特徴とする深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板を提供する。
【0012】
第2発明は、第1発明の鋼板の両面に、少なくともNiめっき層またはFe‐Ni合金化めっき層を有することを特徴とする深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板を提供する。
【0014】
第3発明は、重量%で、C≦0.005%、0.02%≦sol.Al≦0.15%、N≦0.0035%、0.001%≦B≦0.0035%、Si≦0.02%、0.1%≦Mn≦1.0%、P≦0.02%、S≦0.02%、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼組成を有する熱延鋼板を冷間圧延後、連続焼鈍し、その後10〜30%の圧下率の二次圧延を行なうことを特徴とする深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板の製造方法を提供する。
【0015】
第4発明は、第3発明において製造された鋼板の両面に、少なくともNiめっき層またはFe−Ni合金化めっき層を形成することを特徴とする絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板の製造方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を完成するに至った経緯と本発明の詳細および限定理由について説明する。
本発明者らは、電池缶の封口部のかしめ強度上昇をはかり、封口部密封性を高めるためには鋼板の高強度化が必要であると考え、鋼板の高強度化の効果について検討した。その際、DI缶では製缶時のしごき加工により封口部に相当する部位も加工硬化していることに着目し、成形前の鋼板を二次圧延により加工硬化させ高強度化することを検討した。
【0017】
表1に示す低C鋼、極低C鋼、極低C−B添加鋼の3種の鋼板を同表に示す条件で製造し、これら鋼板の降伏強度、耳率、多段絞り成形性、製缶後の封口部密封性について調査した。引張試験により鋼板の降伏強度を測定するとともに、直径45mmφの円形ブランクを打ち抜き、絞り比1.67で深絞り成形し耳率を測定した。耳率は円周方向各位置の成形高さを測定し、成形高さの最大値と最小値の差を高さ最小値で割った百分率で表わした。さらに、直径55mmφの円形ブランクを打ち抜き、10工程の多段絞り加工により最終直径13.85mmの単3型電池缶相当の絞り缶を作製した。これらの缶の缶端部をトリムした後、図1に示すように開口部に絶縁パッキン封口蓋を装着し、かしめ加工により封口した。さらに缶底に穴を開け増圧したエアーを封入し、封口部からのエアーの漏れが始まる瞬間の内圧を求め、かしめ強度を評価した。
【0018】
これらの結果を表2に示す。従来の低C鋼は二次圧延を行なわない場合(A1)には、鋼板降伏強度が低いため、かしめ強度、すなわち封口部密封性が劣っている。一方、二次圧延を行なった場合(A2)には、鋼板降伏強度は高いが耳率(面内異方性)が劣っており、結果として、鋼板強度のわりにはかしめ強度が充分向上していない。さらに、多段絞り成形時に一部割れが発生しており、絞り成形性も劣ることがわかる。
【0019】
これに対し、極低C鋼は二次圧延を行なわない場合(B1)には低C鋼と同様に強度が低く密封性が劣るが、二次圧延により加工硬化している場合(B2)には、耳率、多段絞り成形性、かしめ強度のいずれもが良好なレベルにある。極低C−B添加鋼(C1,2)についても、鋼板降伏強度は極低C鋼とほぼ同様な結果を示している。ただし、かしめ強度はさらに向上している。これは、強度因子以外の要因、すなわち、B添加により極わずかな表面肌荒れも抑制され、かしめ部の微小な起伏も低減したことによるものと考えられる。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
次に本発明における成分組成について説明する。
本発明の鋼板は、重量%で、C≦0.005%、0.02%≦sol.Al≦0.15%、N≦0.0035%、0.001%≦B≦0.0035%、Si≦0.02%、0.1%≦Mn≦1.0%、P≦0.02%、S≦0.02%、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼組成を有している。以下、このように組成を限定した理由について説明する。
【0023】
C: Cは深絞り性、面内異方性を劣化さぜずに優れた封口部密封性をを確保するために極めて重要な元素である。C含有量が0.005%を超えると、深絞り性が急激に劣化し、多段の絞り成形過程で割れ等の成形不良が発生しやすくなるとともに、面内異方性が劣化し、結果として封口部密封性が低下する。従来の低C鋼を焼鈍後に二次圧延した鋼板は、焼鈍後に1.5%程度の調圧を施した鋼板に比べ、深絞り性、面内異方性が劣る領向にあり、特に鋼板板厚を薄くした、すなわちゲージダウンした鋼板ではそれが顕著となる。このような二次圧延した場合の特性劣化を回避するためには、C量を0.005%以下にする必要があり、したがって本発明ではC量を0.005%以下とする。この範囲の中でも特に0.001%以上、0.003%以下の範囲がより望ましい。C含有量は少ないほうが望ましいが、極端にC量が少ない場合には結晶粒が大きくなり、成形時に肌荒れが起きやすくなるため0.001%以上が望ましい。しかし、0.001%未満であっても、本発明の効果を大きく損なうものではなく、また後述するB添加により結晶粒が細粒化し肌荒れ発生は回避することができる。
【0024】
sol.Al: sol.Alは後述するN量とともに、二次圧延した鋼板の深絞り性、面内異方性を良好に保つために重要な元素である。so1.Alは脱酸のため、およびNをAlNとして析出させ固溶N量を低減するために0.02%以上の添加を必要とする。一方、0.15%を超える多量のAlを添加しても、これらの効果は飽和し、かつ微細なアルミナ系介在物が残留しやすくなり、介在物起因の割れ等の成形不良が発生しやすくなる。そこで、本発明においては、sol.Al量を0.02%以上、0.15%以下とする。
【0025】
N: Nは極力少なくすることが望ましい。Nが多い場合には、0.02%以上のAlを添加しても固溶Nが残留しやすくなり、二次圧延後の鋼板の深絞り性、面内異方性を良好に保つことが困難となる。そこで、本発明においては、これらの悪影響を回避するために、N量を0.0035%以下とする。さらに、0.0025%以下とすることがより一層望ましい。
【0026】
B: Bは封口部密封性をさらに向上させるために添加する元素である。Bは結晶粒を細粒化させ、成形時の肌荒れを抑制する作用を有し、封口部鋼板表面の肌荒れによる密封性の低下を抑制する。図2にかしめ強度に対するB添加の影響を示す。特に、C≦0.002%のようにC量が少ない場合に、B添加効果が大きい。また、BはNをBNとして析出させ固溶Nを低減する作用も有しており、二次圧延材の深絞り性、面内異方性の向上にも有効である。これらのB添加効果を発揮させるためには、0.0005%以上の添加が必要であり、一方、0.005%を超える過剰な添加を行なってもこれらの効果は飽和し、逆に固溶Bの残留による深校り性の低下などの悪影響が顕在化してくる。そして、その範囲内でB添加効果を顕著に発揮させるために、0.001%以上、0.0035%以下とする。
【0028】
Si: Siは意図的な添加を行わない場合にも、不純物成分として鋼中に残留し鋼板の耐食性およびNiめっきの密着性を劣化させる元素であり、良好な耐食性を確保するためには、その含有量を0.02%以下とすることが望ましい。
【0029】
Mn: Mnは鋼中SをMnSとして析出させることによってスラブの熱間割れを防止する。Sを析出固定するためには0.1%以上添加することが望ましい。また、Mnは鋼板の高強度化、細粒化に効果的な元素であり、必要に応じて適量添加してもよい。しかし、Mnを過度に添加すると鋼板の耐食性およびNiめっきの密着性を劣化させるため、添加するにしてもその量を1.0%以下とすることが好ましい。
【0030】
P: Pはフェライト粒界に偏析して粒界を脆化させ、絞り成形時の加工性を低下させる。また、Niめっきの密着性を低下させる元素であり、その含有量は極力少ないほうが好ましく、0.02%以下とすることが望ましい。
【0031】
S: Sはスラブの熱間割れ防止の観点から極力少ないほうが好ましく、0.02%以下とすることが望ましい。
【0032】
本発明の鋼板は、上記のような鋼組成を有し、焼鈍後の二次圧延により加工硬化していることを特徴とする。多段の絞り成形により製缶される電池缶用鋼板をゲージダウンした場合にも、かしめ強度向上をはかり充分な封口部密封性を確保するために、本発明においては、焼鈍後の鋼板を二次圧延して加工硬化させ、鋼板の高強度化をはかる。しかし、単に従来の低炭素鋼板を二次圧延により高強度化した場合には、前述のように深絞り性や面内異方性が劣化し、成形不良やかしめ強度の不均一による密封性の低下をもたらすため、極低C鋼を素材として用いる必要がある。
【0033】
鋼板の高強度化をはかる手段としては、加工硬化以外にも、析出強化、変態組織強化、細粒化強化、固溶強化などの種々の方法がある。しかし、析出強化では、充分な強度を確保するためには、Nb等の炭窒化物形成元素を添加し、多量の炭窒化物を分散析出させる必要があり、これらの炭窒化物が耐食性を劣化させ、めっきの密着性も劣化させる。さらに鋼板の深絞り性も劣化するという問題点を有している。また、変態組織強化をはかるためには、焼鈍時に高温焼純、急速冷却する必要があり、0.2mm程度の極薄ゲージダウン材を製造することは困難である。すなわち、連続焼純時にCAL内での絞りや蛇行、破断が発生しやすく、工業的に安定して極薄材の高強度化をはかることが困難となる。さらに、細粒化強化はその強化能が小さく、充分な強度を得ることができない。さらにまた、固溶強化は、上記のような問題点は比較的少ないが、充分な強度を得るために、強化能の大きいC、Nを多量に添加した場合には深絞り性や面内異方性が劣化し、P、Siを多量に添加した場合にはめっき密着性や深絞り性が大きく劣化する。Mnは比較的悪影響が小さいが、強化能が小さいためMnのみでは充分な強度を確保することができない。また、Mnも1%を超えるほど多量に添加した場合には、P、Siと同様な悪影響が顕著となってくる。
【0034】
これらに対し、極低C鋼の二次圧延による加工硬化の場合には上記のような問題がなく、また、絞り成形時に時効によるストレッチャーストレインの発生が抑制されるという副次的効果も発揮される。
以上のことから、本発明においては、極低C鋼を焼純後の二次圧延により加工硬化させることを必須とする。
【0035】
次に本発明の鋼板の製造方法について説明する。
転炉溶製後、連続鋳造して得られたスラブを粗圧延を経て、あるいは粗圧延を省略し直接熱間仕上圧延機に挿入し、熱間圧延を行う。スラブ加熱温度は、通常行われている範囲内の1050〜1250℃程度とすることができる。熱延仕上温度はAr3変態点以上とすることが望ましい。熱延仕上げ温度がAr3変態点より低くなると、熱延板に集合組織が形成されるとともに、表層結晶粒が粗大化したり加工組織が残存する場合があり、二次圧延後鋼板の深絞り性が劣化し、さらに鋼板板厚の不均一が生じやすく、結果として電池缶封口部の円周方向板厚不均一による密封性の低下をもたらすことになる。巻取温度は500〜700℃程度とすることができるが、Bを添加しない場合には固溶Nを低減するために600℃以上とすることが望ましい。
【0036】
さらに熱延鋼板を酸洗し、冷間圧延した後、連続焼鈍を行う。面内異方性を小さくするために、一次冷圧率は80〜90%程度が望ましく、後述する二次圧延も含めた全冷圧率は85〜95%程度が望ましい。ここで、全冷圧率とは、(熱延仕上厚−二次圧延後の板厚)/熱延仕上厚を表わしている。連続焼鈍の焼鈍温度は、未再結晶組織の残存による加工性の低下および過度の粒成長による粗粒化に起因した肌荒れを抑制するため、再結晶温度以上、750℃以下程度とすることが望ましい。
【0037】
焼純後に、さらに二次圧延を行なう。二次圧延は鋼板の高強度化をはかり、電池缶に成形後の封口部のかしめ強度を高め、封口部密封性を向上させるために必要な工程である。図3にかしめ強度に対する二次圧延の圧下率の影響を示す。同図から二次圧延の圧下率が5%未満では充分なかしめ強度が得られないことがわかる。また、二次圧延の圧下率が35%を超えるとかしめ強度が低下する傾向がある。35%を超える高圧下率圧延を行なうと、鋼板の降伏強度が高くなりすぎて封口部のかしめ加工後のスブリングバックが大きくなり、逆にかしめ強度が低下し内容物の液漏れの危険性が大きくなる。また、この場合には、極低C化し、全圧下率を85〜95%程度にしても、面内異方性を充分に小さくすることが困難となり、封口部の円周方向板厚分布の不均一による密封性の低下が顕在化してくる。さらに、深絞り性が劣化し、多段絞り成形時に割れ発生等の成形不良が顕在化してくる。これらのことから、二次圧延の圧下率を10〜30%とする。
【0038】
通常、電池用鋼板の両面には、製缶後の良好な耐食性を確保するためのめっき層および/または合金化めっき層等の耐食被覆層が形成されている。適用されるめっき層、合金化めっき層としては、耐食性を確保できるものであればその種類に特別な制約はなく、単層または複層のめっき層および/またはこのめっき層を熱拡散して得られた合金化めっき層を鋼板の両面に形成させればよい。ただし、電池内容物のアルカリに対する優れた耐食性を得るためには、少なくともNiめっき層またはFe−Ni合金化めっき層を設けることが望ましい。このFe−Ni合金化めっき層はNiめっき層を熱拡散処理して得られるもので、Niめっき層の全部を合金化(Fe−Ni)させたものでもよいし、下地鋼板とNiめっき層の界面のみを合金化させたものでもよい。このような合金層を生成させることにより、耐食性はさらに向上する。
【0039】
前述のように、多段絞り成形により製缶される電池缶には、プレス成形後にNiめっきを行なう後めっき法とNiめっき鋼板をプレス成形するプレめっき法の2種類があるが、本発明鋼板は両者のいずれにも適用することができ、同様の効果を発揮することができる。
【0040】
特に、後者の場合で優れた耐食性を確保するためには、鋼板両面にそれぞれ、少なくとも1層のNiめっき層および/またはFe−Ni合金化めっき層を設けることが望ましい。また、Niめっき層および/またはFe−Ni合金化めっき層の上層にSnめっき層を設け、さらに耐食性を高めることもできる。Niめっき厚は特に限定するものではないが、両面ともに1〜5μm程度の厚さとするのが望ましく、両面等厚めっき、差厚めっきのいずれもでもよい。また、Niめっき層を熱拡散処理する際の加熱条件も特に限定するものではないが、600〜750℃で30秒から3分程度とすることが好ましい。また、熱拡散処理後に、さらに0.5〜2%程度の調圧を行い表面粗さを調整することが望ましい。さらに、この調圧後に再度Niめっきを行うことにより、耐食性は一段と向上する。
【0041】
【実施例】
表3に示す組成の鋼を転炉溶製した後、連続鋳造によりスラブとし、加熱温度:1200〜1230℃、仕上温度:860〜900℃、巻取温度:600〜640℃で熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延し、さらに表4に示す条件で連続焼鈍、二次圧延または調質圧延を行い、0.25、0.20、0.18mmの板厚に仕上げ、鋼板の両面に厚さ4μmのNiめっきを施した。全冷圧率は88〜92%とした。一部の鋼板については、Niめっき後に650℃で1分の熱拡散処理を施し、Fe−Ni合金化めっき層を形成させた。
【0042】
これらの鋼板の引張試験を行い降伏強度を測定するとともに、直径45mmφの円形ブランクを打ち抜き、絞り比1.67で深絞り成形し耳率を測定した。耳率は円周方向各位置の成形高さを測定し、成形高さの最大値と最小値の差を高さ最小値で割った百分率で表わした。さらに、直径55mmφの円形ブランクを打ち抜き、10工程の多段絞り加工により最終直径13.85mmの単3型電池缶相当の絞り缶を作製した。
【0043】
これらの缶の缶端部をトリムした後、図1に示したように開口部に絶縁パッキンと封口蓋を装着し、かしめ加工により封口した後、缶底に穴を開けて増圧したエアーを封入し、封口部からのエアーの漏れが始まる内圧を求め、かしめ強度を評価した。また、上記の単3型電池缶相当の絞り缶に疑似充填剤としてアルカリ電解液を封入し、絶縁パッキンと封口蓋を装着し、かしめ加工により封口した後、温度38℃、湿度90%の雰囲気で40日間貯蔵(恒温恒湿処理)し、封口部からの液漏れの有無を判定した。これらの結果を表5に示す。
【0044】
表5に示すように、本発明の鋼板は、かしめ強度が高く、液漏れが皆無であり、比較例に比べ、封口部密封性、多段絞り性、面内異方性のいずれにおいても優れていることがわかる。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、封口部密封性の優れた2ピース電池缶用鋼板およびその製造方法を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電池用絞り缶を示す断面図。
【図2】かしめ強度に対するB添加の影響を示す図。
【図3】かしめ強度に対する二次圧延圧下率の影響を示す図。
【符号の説明】
1……電池用絞り缶
2……封口蓋
3……絶縁パッキン
4……封口部
5……エアー封入口
Claims (4)
- 重量%で、C≦0.005%、0.02%≦sol.Al≦0.15%、N≦0.0035%、0.001%≦B≦0.0035%、Si≦0.02%、0.1%≦Mn≦1.0%、P≦0.02%、S≦0.02%、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼組成を有し、焼鈍後の二次圧延により加工硬化していることを特徴とする深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板。
- 請求項1に記載の鋼板の両面に、少なくともNiめっき層またはFe‐Ni合金化めっき層を有することを特徴とする深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板。
- 重量%で、C≦0.005%、0.02%≦sol.Al≦0.15%、N≦0.0035%、0.001%≦B≦0.0035%、Si≦0.02%、0.1%≦Mn≦1.0%、P≦0.02%、S≦0.02%、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼組成を有する熱延鋼板を冷間圧延後、連続焼鈍し、その後10〜30%の圧下率の二次圧延を行なうことを特徴とする深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板の製造方法。
- 請求項3に記載の製造方法により製造された鋼板の両面に、少なくともNiめっき層またはFe−Ni合金化めっき層を形成することを特徴とする深絞り加工によって形成される2ピース電池缶用鋼板の製造方法。
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