JP3959753B2 - 耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板 - Google Patents

耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DI(「Draw and Ironing」以下同様)成形に好適な2ピース電池缶用鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、電池缶の分野では缶体の軽量化、製造工程の簡略化、素材および製造コスト低減、さらには側胴部の薄肉化による充填剤の容量増加等の観点から、電池のプラス端と側胴部を一体成形した所謂2ピース電池缶が開発され(特公平7−99686号公報)、既に実用化されている。この2ピース電池缶の製缶は、板厚0.4〜0.5mm程度の鋼板を円形にブランクした後、円筒状に深絞り成形する工程と、この円筒パーツを複数のしごきダイによってしごき加工する工程とによって、側胴部の胴長を稼ぐと同時に缶壁厚を薄くするもので、側胴部の缶壁は最終的に0.15mm以下の厚さまで薄肉化される。
【0003】
したがって、この2ピース電池缶用鋼板には、しごき加工による薄肉化に耐えうる良好な成形加工性が要求される。また、2ピース電池缶は端子部等が腐食し易いことから素材鋼板には優れた耐食性も要求され、このため2ピース電池缶用鋼板には耐食性を確保するためにNiめっきが施されるのが一般的である。
従来、2ピース電池缶に使用される鋼板に関して次のような提案がなされている。
【0004】
▲1▼ 電池特性および耐食性を考慮して、DI成形時に缶体表面に形成される微小な割れが電池性能に有効であるとする技術(特開平5−21044号公報)
▲2▼ 鋼板の面内異方性とコイル幅方向の均質性を改善するために、熱延および冷延工程での温度の均質化と伸び率の均一化を図り、最終的な鋼板のr値とΔr値を規定した技術(特開平6−344003号公報)
▲3▼ 2ピース電池缶用途の鋼板を連続焼鈍で製造するために、鋼中炭素量を0.009wt%以下(実質的には0.002〜0.003wt%)にする技術(特開平6−346150号公報)
▲4▼ DI成形時の型寿命を延ばすために鋼板の表面粗さを規定した技術(特開平6−346282号公報)
▲5▼ 電池缶の耐食性の観点から、Niめっき層の膜厚および形態を制御する技術(特開平6−346284号公報)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来技術は、先に述べた特公平7−99686号公報が開示する2ピース電池缶に供される鋼板およびその製造法について規定したものであるが、いずれの提案にも、しごき加工による薄肉化に耐え得る成形加工性や缶体に要求される缶体強度及び優れた耐食性が得られるような最適な鋼成分条件について明確な指針は示されておらず、缶側胴部の薄肉化に対応した下地鋼板の製造技術を示すものではない。特に、今後缶体側胴部の更なる薄肉化が進んだ場合、製缶工程での材料起因の割れやしわ発生という問題に加えて、製鋼性介在物に対する管理が益々厳しくなることが予想され、上述した従来技術はこのような課題に十分に対応できるものではない。
【0006】
したがって、本発明の目的は上記した従来技術の問題を解決し、DI成形によって2ピース電池缶に製缶される際に、缶体側胴部の薄肉化に対応できる優れた成形加工性と製缶後の優れた耐食性が得られる鋼板、とりわけ薄肉化率70%以上という側胴部の薄肉化を伴うDI成形を受けた場合でもフランジ割れやしごき割れを生じることがなく、しかも製缶後の高度の缶体強度と優れた耐食性を得ることができる2ピース電池缶用鋼板を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するため、本発明の特徴とする構成は以下のとおりである。
(1)冷間圧延後に連続焼鈍を経て製造される鋼板であって、C:0.03wt%以下、Si:0.03wt%以下、Mn:0.1〜0.3wt%、P:0.02wt%以下、sol.Al:0.01〜0.10wt%、N:0.004wt%以下を含有するとともに、Cr:0.03〜0.10wt%、Ni:0.01〜0.10wt%の1種または2種を合計で0.10wt%以下の範囲で含有し、さらに、SとO(但し、O:全酸素含有量)をS:0.005〜0.015wt%、O:0〜0.0025wt%、[S/10+O]≦0.0035wt%を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
2 )冷間圧延後に箱焼鈍を経て製造される鋼板であって、C:0.06wt%以下、Si:0.03wt%以下、Mn:0.1〜0.3wt%、P:0.02wt%以下、sol.Al:0.01〜0.10wt%、N:0.004wt%以下を含有するとともに、Cr:0.03〜0.10wt%、Ni:0.01〜0.10wt%の1種または2種を合計で0.10wt%以下の範囲で含有し、さらに、SとO(但し、O:全酸素含有量)をS:0.005〜0.015wt%、O:0〜0.0025wt%、[S/10+O]≦0.0035wt%を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
【0008】
3 )上記( 1 )または( 2 )の2ピース電池缶用鋼板において、SとO(但し、O:全酸素含有量)をS:0.005〜0.012wt%、O:0〜0.0025wt%、[S/10+O]≦0.0030wt%を満足する範囲で含有することを特徴とする耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
4 )上記( 1 )〜( 3 )のいずれかの2ピース電池缶用鋼板において、Cr:0.05〜0.10wt%、Ni:0.03〜0.10wt%の1種または2種を合計で0.10wt%以下の範囲で含有することを特徴とする耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
5 )上記( 1 )〜( 4 )のいずれかの鋼板の両面に、少なくともNiめっき層またはFe−Ni合金化めっき層を有することを特徴とする耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に至った経緯と本発明の詳細及び限定理由について説明する。
本発明者らは、上述した諸特性を兼ね備えた2ピース電池缶用鋼板を得るために、板厚0.4mmの電池缶用冷延鋼板について鋼中に分布する微細介在物の構造を解析し、その解析結果と鋼板を2ピース電池缶相当の円筒成形缶にDI成形した時のアイアニング割れ発生状況との関係を調査した。その結果、アイアニング割れを引き起こす主因が、製鋼性の酸化物系非金属介在物と熱延工程以降の固相反応によって鋼中に析出したMnSであること、とりわけ鋼中に存在する僅かな酸化物系または硫化物系非金属介在物が、DI成形時の缶体側胴部やフランジ部の割れを引き起こす原因となっていることが判明した。
【0010】
本発明はこのような事実に基づき、酸化物系非金属介在物と硫化物系非金属介在物の制御が2ピース電池缶の缶体側胴部の更なる薄肉化に重要であるという観点から、これら介在物の絶対量を支配する鋼中のOとSの含有量の最適範囲を規定した。さらに本発明では、DI成形された2ピース電池缶は製缶時に缶体側胴部や端子部周辺の曲げ加工部に形成される微小な割れが地鉄に伝播することにより外面耐食性が劣化するが、地鉄(下地鋼板)に適量のCr、Niを単独若しくは複合添加することにより、そのような外面耐食性の劣化を抑制できることを見出し、かかる知見に基づき鋼板中に適量のCrおよび/またはNiを添加するものである。
【0011】
以下、本発明の詳細と限定理由について述べる。
まず本発明では、2ピース電池缶用鋼板に求められるしごき加工時の耐しごき割れ性の観点から鋼中のS量とO量(但し、O:全酸素含有量、以下同様)を規定する。図1は、S量とO量が異なる鋼板(BAF:箱焼鈍材、CAL:連続焼鈍材であり、“C”は各焼鈍材のC量を表わす。以下同様)を素材として、DI成形により2ピース電池缶相当の円筒成形缶を製缶し、その際の限界しごき率(しごき加工においてアイアニング割れが発生しないしごき率の上限)に及ぼすS量とO量の影響を示したものである。
【0012】
図1によれば、0.005wt%≦S≦0.015wt%、O≦0.0025wt%、[S/10+O]≦0.0035wt%の範囲において70%以上の限界しごき率が、さらに0.005wt%≦S≦0.012wt%、O≦0.0025wt%、[S/10+O]≦0.0030wt%の範囲において75%以上の高い限界しごき率が得られることが判る。なお、S量が0.005wt%未満の領域で耐しごき割れ性が劣るのは、熱間圧延時のスケール剥離性の劣化に起因したスケール性表面欠陥がアイアニング時の割れを誘起するためである。
以上の結果から本発明では、鋼板中のS量とO量を0.005wt%≦S≦0.015wt%、O≦0.0025wt%(0%の場合を含む)、[S/10+O]≦0.0035wt%の範囲、より好ましくは0.005wt%≦S≦0.012wt%、O≦0.0025wt%(0%の場合を含む)、[S/10+O]≦0.0030wt%の範囲に規定する。
【0013】
一般に2ピース電池缶用鋼板はNiめっきが施され、めっきままの状態または熱拡散処理によりめっき層の一部または全部をFe−Ni合金層とした状態でDI成形に供される。このようなDI成形において、しごき率:75%以上というような特に厳しいしごき加工が行われた場合、鋼板表層のNiめっき層やFe−Ni合金層が破壊されるとともに、缶体としごきダイとの潤滑状態が劣化してめっき層に微小な毛割れが生じるようになる。このような状態に至ってはNiめっき層またはFe−Ni合金層による耐食性の向上効果が十分に発揮できなくなる。本発明では、このように高いしごき率でしごき加工を行う際に不可避的に発生していた微小な毛割れ、すなわち地鉄の結晶粒界または結晶粒と炭化物等の第二相との界面を起点として発生する微小な毛割れと上述しためっき層の破壊とが、単に缶体の外面腐食を促進させるだけでなく、端子部の接触抵抗の増加を促進させることによって缶体の耐食性を劣化させていることに着目し、このようなDI成形時の鋼板表層部のダメージに起因する耐食性の劣化を下地鋼板に適量のCrおよび/またはNiを添加によって抑止するものである。
【0014】
2ピース電池缶用鋼板におけるNi、Crの添加が耐食性に及ぼす影響を調べるため、S量、O量が本発明範囲(S:0.008〜0.012wt%、O:0.0010〜0.0018wt%、[S/10+O]≦0.0035wt%)に調整された鋼にNi、Crをそれぞれ単独で且つ添加量を種々変化させて添加した鋼板を下地鋼板として、これにめっき厚が2μm、4μmのNiめっきを施し、この鋼板を素材としてDI成形により2ピース電池缶相当の円筒成形缶を製缶し、この円筒成形缶を32℃、85%RHの環境に100時間保持したときの端子部の接触抵抗の増加の度合いを調べ、端子部の耐食性を評価した。図2は、端子部の接触抵抗値の増加の度合いと鋼板のNi,Crの各添加量との関係を示したもので、0.03wt%以上(より好ましくは0.05wt%以上)のCrまたは0.01wt%以上(より好ましくは0.03wt%以上)のNiを添加することにより、端子部の外面耐食性が効果的に改善されることが判る。
【0015】
しかし、Crを0.10wt%を超えて添加すると下地鋼板の極表層部にCrの緻密な酸化皮膜が形成され、これがNiめっき等のめっき性を劣化させて耐食性の劣化を招く。また、Niを0.10wt%を超えて添加すると地鉄の強度が上昇し、しごき加工時の面圧が上昇して型かじりを起こしやすくなる。
以上の理由から、Cr、Niの添加量は、それぞれCr:0.03〜0.10wt%好ましくは0.05〜0.10wt%、Ni:0.01〜0.10wt%好ましくは0.03〜0.10wt%とする。
さらに、NiとCrの合計添加量が0.10wt%を超えると下地鋼板の強度が上昇し、しごき成形時の面圧が上昇して型かじり等の製缶不良が発生する場合があり、このためNi+Cr量は0.10wt%を上限とする。
【0016】
本発明鋼板は、DI成形性等の観点からは必要以上に強度レベルが高かったり或いは固溶Cが残留しているような状態は好ましくなく、良好な2ピース電池缶の製造に支障をきたすおそれがある。このため、鋼中の主要元素に関しては以下のような範囲とすることが好ましい。
【0017】
C: Cは2ピース電池缶に要求される、耐圧強度、パネル強度、座屈強度等の強度レベルを確保する上で極めて重要な元素である。しかし、Cは0.02wt%を超える分については圧延方向に展伸した群落状のセメンタイトとして析出し、また0.02wt%以下の分については、焼鈍中にフェライト粒界或いはフェライト粒内にセメンタイト(FeC)として析出するため、これらの炭化物と母相の界面が割れの起点となり易い。特に連続焼鈍法で製造される鋼板は、通常の低炭素鋼では固溶Cが残留し易く、歪時効性が問題となる。また、箱焼鈍法によって鋼中の固溶Cを完全に析出させた場合でも、過剰なCはセメンタイトやパーライトの体積率の増加をもたらし、素材の強度レベルを上昇させる。したがって、本発明の効果を最大限に発揮するためには上記の観点からC量の上限を定めることが好しく、C量の上限は下地鋼板が連続焼鈍材の場合には0.03wt%、また、下地鋼板が箱焼鈍材の場合には0.06wt%とすることが好ましい。
【0018】
Si: Siが鋼板中に過剰に添加されるとNiめっき性が阻害されるため、Siは0.03wt%以下(0%の場合を含む)とすることが好ましい。
Mn: Mnは、鋼中のSをMnSとして析出させることによってスラブの熱間割れを防止する効果があり、このような観点からは鋼中に不可欠な元素である。しかし、Mnは鋼の耐食性には必ずしも好ましい元素ではなく、特に電池缶の耐食性を確保するという観点からは極力少ない方が好ましい。このためMnは、Sを析出固定するために最低限必要な0.1wt%を下限とし、一方、耐食性およびNiめっき等のめっき性を確保するという観点から0.3wt%を上限とすることが好ましい。
【0019】
P: PはNiめっき等のめっき性の観点からは極力少ない方が好ましいが、0.02wt%以下の範囲であれば実用上の影響はなく、このためPは0.02wt%以下(0%の場合を含む)とすることが好ましい。
S,O: 先に述べたようにS及びOは2ピース電池缶用鋼板の組成において規制が必要とされる特に重要な元素である。これらのうちSはMnSとして鋼中に存在し、2ピース電池缶の製缶時におけるしごき割れの起点になり易い。また、Oは鋼中で主としてAl23系介在物として存在し(稀にCaO,MnO系介在物として残留することがある)、こうした酸化物系介在物はMnSとともにDI製缶時の割れを助長する。このため本発明では、図1の結果に基づきS量及びO量を先に述べた範囲に規定する。
【0020】
sol.Al: sol.Alは鋼中NをAlNとして析出させることで、固溶Cと同じく動的歪時効現象によって鋼板の局部延性を低下させる固溶Nによる弊害を軽減する。しかし、sol.Al量を高めるために多量のAl添加を行うと微小なAl23介在物が残留し易くなり、この介在物の存在によりDI製缶時の割れが助長される結果となる。このためsol.Al量は、鋼中NをAlNとして析出させるために最低限必要な0.01wt%を下限とし、一方、2ピース電池缶の製缶性を阻害しないため0.10wt%を上限とすることが好ましい。N: NはAlN、BNとして析出して無害化される傾向にあるが、その含有量は製鋼技術上可能な限り少ない方が好ましく、通常、0.004wt%以下(0%の場合を含む)とすることが好ましい。
【0021】
本発明鋼板は2ピース電池缶に製缶した後の耐食性を確保するため、通常、鋼板の両面にめっき層および/または合金化めっき層等の耐食被覆層を形成して使用される。適用されるめっき層、合金化めっき層としては、耐食性を確保できるものであればその種類に特別な制約はなく、単層または複層のめっき層および/またはこのめっき層を熱拡散処理して得られた合金化めっき層を鋼板の両面に形成すればよい。
【0022】
但し、特に優れた耐食性を得るためには、少なくともNiめっき層またはFe−Ni合金化めっき層を設けることが好ましい。Fe−Ni合金化めっき層はNiめっき層を熱拡散処理して得られるもので、Niめっき層の全部を合金化(Fe−Ni)させたものでもよいし、Niめっき層の下層側のみを合金化させたものでもよい。また、Fe−Ni合金化めっき層の上層にさらにNiめっき層を形成した複層構造としてもよい。いずれにしても、本発明の鋼板(下地鋼板)により付与される耐食性と複合化させることで特に優れた耐食性を確保するためには、鋼板両面にそれぞれ、少なくとも1層のNiめっき層および/またはFe−Ni合金化めっき層を設けることが好ましい。また、Niめっき層および/またはFe−Ni合金化めっき層の上層にSnめっき層を設け、さらに耐食性を高めることもできる。
また、2ピース電池缶用鋼板である本発明鋼板はDI成形用途に限定されるものではなく、絞り成形用途にも適用することができる。
【0023】
【実施例】
〔実施例1〕
表1に示すNo.1〜No.15の鋼を溶製後、連続鋳造し、得られた鋳片を1200℃に加熱後、仕上温度:870℃、巻取温度:560℃で熱間圧延して2.3mm厚の熱延鋼板とした。この熱延鋼板を酸洗後、板厚0.5mmまで冷間圧延し、引き続き箱焼鈍炉にて650℃で再結晶焼鈍を行なった。焼鈍後の鋼板に調質圧延を行った後、Niめっき処理を施し、次いで650℃で熱拡散処理を行った。これらの鋼板から円形ブランクを採取して円筒状に深絞り成形した後、しごき加工によって側胴部の肉厚が0.18〜0.08mmである2ピース電池缶相当の円筒成形缶を製缶し、これら円筒成形缶について限界しごき率と端子部の耐食性を調べた。その結果を表2に示す。
【0024】
なお、端子部の耐食性は、円筒成形缶を32℃、85%RHの環境に100時間保持したときの端子部の接触抵抗値の増加の度合いにより評価した。
表2によれば、S、Oを所定の範囲に規制し、且つCrおよび/またはNiを適量添加した本発明例は、限界しごき率が高く、しかも端子部の接触抵抗値の増加の度合いが小さく、耐食性の劣化が効果的に抑えられていることが判る。
【0025】
【表1】
Figure 0003959753
【0026】
【表2】
Figure 0003959753
【0027】
〔実施例2〕
表3に示すNo.16〜No.25の鋼を溶製後、連続鋳造し、得られた鋳片を1200℃に加熱後、仕上温度:890℃、巻取温度:640℃で熱間圧延して2.3mm厚の熱延鋼板とした。この熱延鋼板を酸洗後、板厚0.4mmまで冷間圧延し、引き続き連続焼鈍炉にて720℃で再結晶焼鈍を行なった。焼鈍後の鋼板に調質圧延を行った後、Niめっき処理を施し、次いで650℃で熱拡散処理を行った。これらの鋼板から円形ブランクを採取して円筒状に深絞り成形した後、しごき加工によって側胴部の肉厚が0.18〜0.08mmの2ピース電池缶相当の円筒成形缶を製缶し、これら円筒成形缶について限界しごき率と端子部の耐食性を調べた。その結果を表4に示す。
なお、端子部の耐食性は実施例1と同様に評価した。
表4によれば、S、Oを所定の範囲に規制し、且つCrおよび/またはNiを適量添加した本発明例は、限界しごき率が高く、しかも端子部の接触抵抗値の増加の度合いが小さく、耐食性の劣化が効果的に抑えられていることが判る。
【0028】
【表3】
Figure 0003959753
【0029】
【表4】
Figure 0003959753
【0030】
【発明の効果】
以上述べた本発明の2ピース電池缶用鋼板によれば、DI成形によって2ピース電池缶に製缶する際に、側胴部の薄肉化に耐え得る良好な成形加工性を有するとともに、製缶後の優れた耐食性を有している。特に、薄肉化率70%以上という側胴部の薄肉化を伴うDI成形を受けた場合でもフランジ割れやしごき割れを生じることがなく、しかも製缶後の高度の缶体強度と優れた耐食性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2ピース電池缶用鋼板をDI成形した際の、しごき加工における限界しごき率と鋼板のS量及びO量との関係を示すグラフ
【図2】2ピース電池缶用鋼板をDI成形して製造された円筒成形缶について、接触抵抗値の増加の度合いより評価される端子部の耐食性と鋼板中のNi,Cr添加量との関係を示すグラフ

Claims (5)

  1. 冷間圧延後に連続焼鈍を経て製造される鋼板であって、C:0.03wt%以下、Si:0.03wt%以下、Mn:0.1〜0.3wt%、P:0.02wt%以下、sol.Al:0.01〜0.10wt%、N:0.004wt%以下を含有するとともに、Cr:0.03〜0.10wt%、Ni:0.01〜0.10wt%の1種または2種を合計で0.10wt%以下の範囲で含有し、さらに、SとO(但し、O:全酸素含有量)をS:0.005〜0.015wt%、O:0〜0.0025wt%、[S/10+O]≦0.0035wt%を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
  2. 冷間圧延後に箱焼鈍を経て製造される鋼板であって、C:0.06wt%以下、Si:0.03wt%以下、Mn:0.1〜0.3wt%、P:0.02wt%以下、sol.Al:0.01〜0.10wt%、N:0.004wt%以下を含有するとともに、Cr:0.03〜0.10wt%、Ni:0.01〜0.10wt%の1種または2種を合計で0.10wt%以下の範囲で含有し、さらに、SとO(但し、O:全酸素含有量)をS:0.005〜0.015wt%、O:0〜0.0025wt%、[S/10+O]≦0.0035wt%を満足する範囲で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
  3. SとO(但し、O:全酸素含有量)をS:0.005〜0.012wt%、O:0〜0.0025wt%、[S/10+O]≦0.0030wt%を満足する範囲で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
  4. Cr:0.05〜0.10wt%、Ni:0.03〜0.10wt%の1種または2種を合計で0.10wt%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼板の両面に、少なくともNiめっき層またはFe−Ni合金化めっき層を有することを特徴とする耐食性の優れた2ピース電池缶用鋼板。
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