JP3900556B2 - 前照灯用リフレクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばヘッドランプやフォグランプ等の前照灯の光源バルブから出射してリフレクタで反射された光束が、レンズによって調光されるまでもなく、ほぼ所望の配光パターンを形成し得るように改良した前照灯用リフレクタに係り、特に、反射面のうち左右非対称部を有するリフレクタであっても左右対称の配光パターンが得られる前照灯用リフレクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の前照灯の基本的な構造は、回転放物面状(若しくは回転楕円面状)のリフレクタの焦点付近に配設した光源バルブからの出射光を上記回転放物面状リフレクタによって光軸(回転放物面の回転軸)と平行な方向に反射させ、この反射光束を前面レンズで左右方向に拡散させるなど適宜に調光して所望の配光パターンを得るようになっていた。
最近、リフレクタを単純な回転放物面状に構成せず、上記回転放物面を基準形状としつつ、その反射面を設計的に上下左右について複数個(複数の部分)に区画し、各部分ごとに焦点距離を僅かに変えたり光軸方向を僅かに傾けたりすることによって複合反射面を構成する技術が研究されている。このような複合反射面を有するリフレクタの反射光束は、レンズを通して調光するまでもなくほぼ所望の配光パターンになっているので、素通しのレンズを通して灯具前方に投光しても前照灯としての光学的機能を果たすことができる。
ただし、上述のような複合反射面よりなるリフレクタを用いる場合も、レンズの外観を整えるため投光光束が通過しない部分(ダミー部)にプリズムを設けた例もあり、また、投光光束が通過する部分に配光パターン修正用のプリズムを設けた例もある。本明細書において素通しのレンズとは、投光光束の通過する部分が素通し若しくは素通しに近いレンズを言うものとする。
【0003】
図7乃至図17は複合反射面と素通しレンズとを備えた前照灯の概要を示す。この例では、リフレクタ可動タイプのヘッドランプであって、4灯式のヘッドランプのうち走行用のヘッドランプ(所謂ユニットタイプ1)について説明する。なお、図示のヘッドランプは自動車の左側(ドライバー側から前方を見た場合の左側であって、自動車の正面側から見た場合は右側となる)に装備されているものであり、自動車の右側(ドライバー側から前方を見た場合の右側であって、自動車の正面側から見た場合は左側となる)にもこれとほぼ左右対称のヘッドランプが装備されている。
なお、本明細書及び本図面において、符号「L」はドライバー側から前方を見た場合の左側のことを示し、また符号「R」はドライバー側から前方を見た場合の右側のことを示し、さらに符号「U」はドライバー側から前方を見た場合の上側のことを示し、さらにまた符号「D」はドライバー側から前方を見た場合の下側のことを示す。また、符号「H−H」は水平線のことを示し、符号「V−V」は垂直線のことを示す。
また、図面中、ハッチングは図面の読解上省略してある。
【0004】
図において、1はランプハウジングであって、その前面開口部を覆って素通しのレンズ2が装着されている。3は後に詳述する複合反射面を備えたリフレクタである。複合反射面には厳密な意味での単一の焦点を有していないが、該複合反射面を形成している複数の回転放物面相互の焦点距離の差異は僅少であり、ほぼ同一の焦点を共有しているので、これを疑似焦点として取扱うことができる。同様に、図8及び図9に示した光軸Z−Zは厳密に言えば疑似光軸であるが、本明細書においてはこれを光軸と呼ぶことにする。上記の疑似焦点Fの付近にフィラメントが位置するように光源バルブ4が設置される。5は主として前照灯の外観を整えるためのインナパネルである。6は曇り止めのための仕切板である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
自動車における前照灯は、走行路上の前方を照明するための重要な光学的機能を果たす機器であるが、その半面においては自動車の意匠を構成するためにも重要な要素である。このため、光学的機能向上のためではなく意匠的考慮に基づいて変形したデザインが実用される場合が少なくない。上述の図7乃至図17の例においても、リフレクタ3の形状は光軸Z−Zを含む垂直面(紙面と直角)に関して左右対称ではなく、図8に示す寸法L1が寸法L2に比して大きく設定されている。すなわち、レンズ2面が左右にスラントしている。
図10及び図11は自動車の左側前方に装備される上述の前照灯を構成する左側用のリフレクタ3を模式的に示した正面図及び背面図である。なお、図示していないが、自動車の右側前方に装備される前照灯を構成する右側用のリフレクタは、この左側用のリフレクタ3に対してほぼ左右対称である。従って、この左側用のリフレクタ3を例として詳しく考察すると次のとおりである。
光軸を通る水平線HL−HRに関して上下にはほぼ対称形になっている。
光軸を通る垂直線VU−VDに関して左右は非対称形である。
このリフレクタ3の反射面は、3×5=15の部分に区画されている。説明の便宜上、それぞれの区画反射面に01、02、03、04、05、11、12、13、14、15、21、22、23、24、25のように符号を付して名付ける。
区画反射面04、14、24は垂直線VU−VDに対して対称である。
また、区画反射面13、23と区画反射面15、25とは垂直線VU−VDに対して対称である。
さらに、区画反射面03と区画反射面05とは、不完全であるが近似的に対称と見做すことができる。このため、図に示した部分3Aはほぼ左右対称であり、これを左右対称部と呼ぶ。そして、左右非対称部3Bと呼ぶ図示した部分の区画反射面01、02、11、12、21、22は上下にはほぼ対称であるが、前記の垂直線VU−VDに関しては非対称である。すなわち、この垂直線VU−VDに対して、上述の右側の区画反射面01、02、11、12、21、22に対応する左側の部分が無い。
図12は、上掲の図11におけるXII−XII線断面図である。この図12から、区画反射14は垂直線VU−VDに対して対称であり、また区画反射面13と区画反射面15とは垂直線VU−VDに対して対称であり、区画反射面11及び12は垂直線VU−VDに対してこれに対応する区画反射面が無く非対称になっていることが理解される。
【0006】
以上に述べたように、リフレクタ3の反射面に左右非対称部3Bを有していることに因り、次に述べるように配光パターンが左右非対称にあるという問題を生じる。すなわち、上述のリフレクタ3の区画反射面うちの図13に示す左右対称部3Aによって形成される配光パターンは、図14に示すように、上下,左右ともにほぼ対称となる。一方、上述のフレクタ3の区画反射面うちの図15に示す左右非対称部3Bによって形成される配光パターンは、図16に示すように上下にほぼ対称となるが左右に非対称(左側に偏る)となる。この結果、左右対称部3Aによる左右対称の配光パターン(図14に示す)に、左右非対称部3Bによる左右非対称の配光パターン(図16に示す)を、合成(重畳)すると、図17に示すように、リフレクタ3全体の区画反射面によって形成される配光パターンは左右非対称となる。
【0007】
本発明は、反射面のうち左右非対称部を有するリフレクタであっても左右対称の配光パターンが得られる前照灯用リフレクタを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するために、リフレクタの区画反射面のうち、左右非対称部を、反射光束を主に左側に拡散させる第1の区画反射面グループと、反射光束を主に右側に拡散させる第2の区画反射面グループと、から構成し、この左右非対称部において、全体としてほぼ左右対称な配光パターンが形成されるように構成したことを特徴とする。
【0009】
この結果、本発明の前照灯用リフレクタは、左右対称部による左右対称の配光パターンに、左右非対称部による左右対称の配光パターンが、合成(重畳)されることとなるので、リフレクタ全体の区画反射面によって左右対称の配光パターンが形成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の前照灯用リフレクタの一実施の形態を図1乃至図6を参照して説明する。この例は、リフレクタ可動タイプのヘッドランプであって、4灯式のヘッドランプのうち走行用のヘッドランプ(所謂ユニットタイプ1)について説明する。図中、図7乃至図17と同符号は同一のものを示す。なお、図面中、ハッチングは図面の読解上省略してある。
【0011】
この実施の形態における本発明の前照灯用リフレクタは、自動車の左側に装備される前照灯を構成するリフレクタ3(自動車の右側に装備される前照灯を構成するリフレクタはこの例のものと左右対称となる)であって、左右非対称部3Bの区画反射面02、12、22を、図1(A)及び(B)及び図2に示すように、反射光束を主に左側に拡散させる第1の区画反射面グループとし、また区画反射面01、11、21を図3(A)及び(B)及び図4に示すように、反射光束を主に右側に拡散させる第2の区画反射面グループとする。
【0012】
上述の第1の区画反射面グループ02、12、22は、図1(A)及び(B)に示すように、オープン拡散となるような反射面から構成されている。すなわち、この第1の区画反射面グループ02、12、22は、光軸Z−Zに区画反射面の中心を合せて配置させた場合、図1(A)中の実線矢印に示すように、光源4からの光束のうち、左側の反射面(3L)に入射した光束を左側に、また右側の反射面(3R)に入射した光束を右側に、それぞれ開いた状態で拡散反射させるものである。
実際には、この第1の区画反射面グループ02、12、22は、図1(B)に示すように、光軸Z−Zに対して右側に偏っているので、光源バルブ4からの光束は、図1(B)中の実線矢印に示すように、大部分が左側に偏る。この配光パターンを図2に示す。
【0013】
また、上述の第2の区画反射面グループ01、11、21は、図3(A)及び(B)に示すように、クロス拡散となるような反射面から構成されている。すなわち、この第2の区画反射面グループ01、11、21は、光軸Z−Zに区画反射面の中心を合せて配置させた場合、図2(A)中の実線矢印に示すように、光源4からの光束のうち、左側の反射面(3L)に入射した光束を右側に、また右側の反射面(3R)に入射した光束を左側に、それぞれ交差した状態で拡散反射させるものである。
実際には、この第2の区画反射面グループ01、11、21は、図3(B)に示すように、光軸Z−Zに対して右側に偏っているので、光源バルブ4からの光束は、図3(B)中の実線矢印に示すように、大部分が右側に偏る。この配光パターンを図4に示す。
【0014】
そして、このリフレクタ3のうち左右非対称部3Bにおいて、図2に示す第1の区画反射面グループ02、12、22による配光パターンと、図4に示す第2の区画反射面グループ01、11、21による配光パターンとを重畳すると、図5に示すように、ほぼ左右対称の配光パターンが得られる。この結果、リフレクタ3のうち左右対称3Aにおける左右対称の配光パターン(上述の図14を参照)に、上述の本発明のリフレクタ3のうち左右非対称3Bにおける左右対称の配光パターン(上述の図5を参照)を重畳すれば、図6に示す、左右対称の配光パターンが得られる。
【0015】
なお、上述の実施の形態は、自動車の左側前方に装備される前照灯を構成する左側用のリフレクタ3について説明したが、自動車の右側前方に装備される前照灯を構成する右側用のリフレクタは、この実施の形態の左側用のリフレクタ3に対してほぼ左右対称であるので、この右側用のリフレクタの説明は省略する。
【0016】
また、上述の実施の形態は、リフレクタ可動タイプのヘッドランプであって、4灯式のヘッドランプのうち走行用のヘッドランプ(所謂ユニットタイプ1)について説明したが、本発明の前照灯用リフレクタは、その他の前照灯にも使用できる。
【0017】
さらに、上述の実施の形態は、左右非対称部3Bの区画反射面02、12、22を反射光束を主に左側に拡散させる第1の区画反射面グループとし、また区画反射面01、11、21を反射光束を主に右側に拡散させる第2の区画反射面グループとしたが、その逆に区画反射面02、12、22を反射光束を主に右側に拡散させる第2の区画反射面グループとし、また区画反射面01、11、21を反射光束を主に左側に拡散させる第1の区画反射面グループとしても良い。
すなわち、上述の実施の形態は、第1の区画反射面グループ02、12、22がオープン拡散となるような反射面から構成されており、また第2の区画反射面グループ01、11、21がクロス拡散となるような反射面から構成されているが、その逆に第1の区画反射面グループ02、12、22がクロス拡散となるような反射面から構成されており、また第2の区画反射面グループ01、11、21がオープン拡散となるような反射面から構成されていても良い。
【0018】
さらにまた、上述の実施の形態は、第1の区画反射面グループと第2の区画反射面グループとを左右に分割して設けたが、上下に分割して設けたり又は左右上下に(格子状に)設けても良い。
【0019】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明の前照灯用リフレクタは、リフレクタの区画反射面のうち、左右非対称部を、反射光束を主に左側に拡散させる第1の区画反射面グループと、反射光束を主に右側に拡散させる第2の区画反射面グループと、から構成し、この左右非対称部において、全体としてほぼ左右対称な配光パターンが形成されるように構成したものであるから、左右対称部による左右対称の配光パターンに、左右非対称部による左右対称の配光パターンが、合成(重畳)されることとなるので、リフレクタ全体の区画反射面によって左右対称の配光パターンが形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示し、(A)はオープン拡散反射面の反射光束の説明図、(B)は実際の第1の区画反射面グループの反射光束の説明図である。
【図2】図1における第1の区画反射面グループの反射光束による配光パターンの図である。
【図3】(A)はクロス拡散反射面の反射光束の説明図、(B)は実際の第2の区画反射面グループの反射光束の説明図である。
【図4】図3における第2の区画反射面グループの反射光束による配光パターンの図である。
【図5】図1における第1の区画反射面グループの反射光束による配光パターンと、図3における第2の区画反射面グループの反射光束による配光パターンとを重畳した状態の配光パターンの図である。
【図6】図5におけるリフレクタの左右非対称部による配光パターンと、図14におけるリフレクタの左右対称部による配光パターンとを重畳した状態の配光パターンの図である。
【図7】従来の前照灯用リフレクタを使用したヘッドランプの正面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7におけるIX−IX線断面図である。
【図10】前照灯用リフレクタの正面図である。
【図11】前照灯用リフレクタの背面図である。
【図12】図11けるXII−XII線断面図である。
【図13】リフレクタの左右対称部の正面図である。
【図14】リフレクタの左右対称部による配光パターンの図である。
【図15】リフレクタの左右非対称部の正面図である。
【図16】リフレクタの左右非対称部による配光パターンの図である。
【図17】図14のリフレクタの左右対称部による配光パターンと図16のリフレクタの左右非対称部による配光パターンとを重畳した状態の配光パターンの図である。
【符号の説明】
1…ランプハウジング、2…レンズ、3…リフレクタ、3A…左右対称部、3B…左右非対称部、4…光源バルブ、5…インナパネル、6…仕切板、01〜05、11〜15、21〜25…区画反射面。
Claims (1)
- 光源バルブから射出された光束を反射し、レンズを通して灯具前方に投光する前照灯用リフレクタであって、反射面が上下左右について複数個に区画されており、かつその複数個に区画された反射面が光軸を含む垂直面に関してほぼ左右対称な部分と、光軸を含む垂直面に関して左右対称でない部分とを有しているリフレクタにおいて、
上記の左右対称でない部分は、反射光束を主に前記光軸を含む垂直面の左側に拡散させる第1の区画反射面グループと、反射光束を主に前記光軸を含む垂直面の右側に拡散させる第2の区画反射面グループと、から構成されており、全体として前記光軸を含む垂直面に関してほぼ左右対称な配光パターンが形成され、
前記左右対称でない部分において、第1の区画反射面グループはオープン拡散となるような反射面又はクロス拡散となるような反射面から構成されており、第2の区画反射面グループはクロス拡散となるような反射面又はオープン拡散となるような反射面から構成されていることを特徴とする前照灯用リフレクタ。
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