JP3899771B2 - 化学増幅型ポジ型レジスト組成物及びスルホニウム塩 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体の微細加工に用いられる化学増幅型のポジ型レジスト組成物及びそれの酸発生剤として有用な新規な化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体の微細加工には通常、レジスト組成物を用いたリソグラフィプロセスが採用されており、リソグラフィにおいては、レイリー (Rayleigh) の回折限界の式で表されるように、原理的には露光波長が短いほど解像度を上げることが可能である。半導体の製造に用いられるリソグラフィ用露光光源は、波長436nmのg線、波長365nmのi線、波長248nmのKrFエキシマレーザーと、年々短波長になってきており、次世代の露光光源として、波長193nmのArFエキシマレーザーが有望視され、かかるArFエキシマレーザー露光用レジストが一部で実用化されつつある。
【0003】
ArFエキシマレーザー露光機に用いられるレンズは、従来の露光光源用のものに比べて寿命が短いので、ArFエキシマレーザー光に曝される時間はできるだけ短いことが望ましい。そのためには、レジストの感度を高める必要があることから、露光により発生する酸の触媒作用を利用し、その酸により解裂する基を有する樹脂を含有するいわゆる化学増幅型レジストが用いられる。
【0004】
ArFエキシマレーザー露光用のレジストに用いる樹脂は、レジストの透過率を確保するために芳香環を持たず、またドライエッチング耐性を持たせるために芳香環の代わりに脂環式環を有するものがよいことが知られている。このような樹脂として、D. C. Hofer, J. Photopolym. Sci. Technol., Vol.9, No.3, 387-398 (1996) に記載されるような各種の樹脂が知られている。また、S. Takechi et al., J. Photopolym. Sci. Technol., Vol.9, No.3, 475-487 (1996) や特開平 9-73173号公報には、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルの重合体又は共重合体を化学増幅型レジストの樹脂として用いた場合には、2−メチル−2−アダマンチルが酸の作用により解裂してポジ型に作用するとともに、高いドライエッチング耐性、高解像性及び基板への良好な接着性が得られることが報告されている。さらに、特開平 10-274852号公報には、化学増幅型ポジ型レジスト組成物を構成する樹脂として、重合単位の一部にブチロラクトン残基を有するものを用いることにより、基板への接着性が改良されることが報告されており、特開平 10-319595号公報には、γ−ブチロラクトン−3−イル残基をカルボキシル基の保護基とする樹脂を用いたレジスト組成物が記載されている。
【0005】
ところで、化学増幅型レジストは、酸の作用を利用するものであるため、基板が塩基性の場合には、酸が失活してプロファイルが裾引き形状になるという問題がある。この問題を解決するには、塩基性のクェンチャー物質を多く添加すればよいことが知られている。しかしながら、クェンチャー物質を多く添加すると、レジストの感度が低下する。さらに、ArF露光においては、有機や無機の反射防止膜のような反射率の低い基板上にレジストが適用されることが多い。このような低反射率基板を用いると、寸法の均一性を向上するのに効果があるものの、一般的にいって、光吸収が原因でレジストのプロファイルがテーパー形状になって悪化する。
【0006】
光吸収を少なくするために、レジスト組成物中の酸発生剤の量を減らすことが考えられるが、この場合は一般的に感度が遅くなる。光吸収を少なくする別の方法としては、特開平 7-25846号公報、特開平 7-28237号公報、特開平 7-92675号公報及び特開平 8-27102号公報に記載されるような透明性の高い脂肪族スルホニウム塩を用いることが考えられる。しかしながら、これら公知の脂肪族スルホニウム塩では、充分な解像度が得られないとともに、塩基性基板上でのプロファイルが裾引き形状になるという問題は解消されない。このように、従来公知の酸発生剤を用いた化学増幅型レジストには、基板の種類によって、性能、特にプロファイルが変化するという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の一つは、樹脂成分と酸発生剤を含有し、ArFやKrFなどのエキシマレーザーリソグラフィ、特に220nm以下の波長の光、例えばArFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィに適した化学増幅型のポジ型レジスト組成物であって、感度や解像度、基板への接着性などの各種レジスト性能が良好であるとともに、塩基性基板や低反射率基板に適用する場合でも基板依存性が小さく、いずれの基板に対しても良好なプロファイルを与えるものを提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、このような化学増幅型ポジ型レジスト組成物の酸発生剤として有用な化合物を提供することにある。
【0009】
本発明者らは、ある種の酸発生剤を組み合わせて用いることにより、あるいはその酸発生剤のなかでも特定の構造を有するものを用いることにより、解像度が改良され、また塩基性基板や低反射率基板におけるプロファイルも改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、第一の見地から、酸発生剤として、下式(I)
【0011】
【0012】
(式中、Q1はアルキルを表し、Q2はアルキル又は脂環式炭化水素残基を表し、mは1〜8の整数を表す)
で示される脂肪族スルホニウム塩と、下式(IIa)で示されるトリフェニルスルホニユム塩及び下式(IIb)で示されるジフェニルヨードニユム塩
【0013】
【0014】
(式中、Q3、Q4、Q5、Q6及びQ7は互いに独立に、水素、水酸基、炭素数1〜6のアルキル又は炭素数1〜6のアルコキシを表し、q及びpは4〜8の整数を表す)
のうち式( II a)で示されるオニウム塩とを含む酸発生剤並びに、酸に不安定な基を持つ重合単位を有し、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用でアルカリに可溶となる樹脂を含有し、全固形分量を基準に、樹脂を80〜99.9重量%、そして酸発生剤を0.1〜20重量%の範囲で含有することを特徴とする化学増幅型ポジ型レジスト組成物を提供するものである。
【0015】
上記式(I)で示される脂肪族スルホニウム塩のなかでも、スルホネート陰イオン部分のmが4〜8と炭素数の多いものは、解像度及びプロファイルの向上効果が顕著であり、酸発生剤としてこの化合物を単独で用いた場合でも、優れた解像度及びプロファイルを与える。したがって本発明はまた、第二の見地から、酸発生剤として、下式(Ia)
【0016】
【0017】
(式中、Q1及びQ2は先に定義したとおりであり、nは4〜8の整数を表す)で示される脂肪族スルホニウム塩を含有し、さらに、酸に不安定な基を持つ重合単位を有し、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用でアルカリに可溶となる樹脂を含有し、全固形分量を基準に、樹脂を80〜99.9重量%、そして酸発生剤を0.1〜20重量%の範囲で含有してなる化学増幅型ポジ型レジスト組成物をも提供するものである。もちろん、スルホネート陰イオン部分の炭素数の多い式(Ia)で示される脂肪族スルホニウム塩を用いた場合でも、前記式(IIa)及び(IIb)から選ばれる少なくとも1種のオニウム塩を併用することは一層有効である。
【0018】
スルホネート陰イオン部分の炭素数の多い前記式(Ia)で示される脂肪族スルホニウム塩は、文献未記載の化合物である。したがって本発明はさらに、第三の見地から、前記式(Ia)で示されるスルホニウム塩をも提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】
化学増幅型のレジスト組成物に用いられる酸発生剤は、その物質自体に、あるいはその物質を含むレジスト組成物に、光や電子線などの放射線を作用させることにより、その物質が分解して酸を発生するものである。本発明において第一の見地から特定する組成物では、かかる酸発生剤として、前記式(I)で示される脂肪族スルホニウム塩と、前記式(IIa)で示されるトリフェニルスルホニウム塩及び前記式(IIb)で示されるジフェニルヨードニユム塩から選ばれる少なくとも1種のオニウム塩とを併用し、また第二の見地から特定する組成物では、スルホネート陰イオン部分の炭素数が多い前記式(Ia)で示される脂肪族スルホニウム塩を用いる。
【0020】
式(I)及び(Ia)において、Q1 はアルキルであり、Q2 はアルキル又は脂環式炭化水素残基である。この場合のアルキルは、例えば、炭素数1〜8程度であることができ、炭素数3以上の場合は、直鎖でも分岐していてもよい。具体的なアルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。一方、Q2 で表される脂環式炭化水素残基は、例えば、炭素数5〜16程度であることができ、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチルのような単環のシクロアルキルのほか、ノルボルニル、イソボルニル及びアダマンチルのような架橋多環の基であってもよい。また式(I)において、パーフルオロアルカンスルホネート陰イオンを構成するアルカン部分の炭素数を表すmは1〜8の整数である。式(I)中のパーフルオロアルカンスルホネート陰イオンに該当する具体例としては、トリフルオロメタンスルホネートイオン、パーフルオロブタンスルホネートイオン、パーフルオロオクタンスルホネートイオンなどが挙げられる。
【0021】
式(I)で示される脂肪族スルホニウム塩は、スルホニウム陽イオンを構成する各基が非芳香族であることから、波長220nm以下の光、例えば、波長193nmのArFエキシマレーザー光に対して透過率が高い。したがって、このような脂肪族スルホニウム塩を酸発生剤として用いることにより、それを含むレジスト組成物は、上記のような短波長の露光光を吸収する割合が少なくなり、プロファイルがテーパー形状になるのを防ぐことができる。
【0022】
ただ、式(I)において、パーフルオロアルカンスルホネート陰イオン部分の炭素数が少ない場合、例えばトリフルオロメタンスルホネート陰イオンの場合、それを単独で酸発生剤としたレジスト組成物では、充分な解像度が得られにくいとともに、特に塩基性基板上では、良好なプロファイルが得られにくくなる。そこで、本発明において第一の見地から特定するレジスト組成物では、酸発生剤として、かかる式(I)の脂肪族スルホニウム塩とともに、式(IIa)及び(IIb)から選ばれる少なくとも1種のオニウム塩が併用される。かかるスルホニウム塩系酸発生剤を併用することにより、式(I)の脂肪族スルホニウム塩系酸発生剤を単独で用いた場合に比べ、基板依存性を損なわずに解像度を上げることができ、また式(IIa)及び(IIb)から選ばれる少なくとも1種のオニウム塩系酸発生剤を単独で用いた場合に比べ、基板依存性を損なわずに感度を上げることができる。
【0023】
一方、式(I)において、パーフルオロアルカンスルホネート陰イオン部分の炭素数が多くなり、具体的には同式中のmが4以上になると、これを単独で酸発生剤とした場合でも、レジストの解像度が改良され、さらに塩基性基板や低反射率基板上でのプロファイルも改良されるようになる。そこで、本発明において第二の見地から特定するレジスト組成物では、酸発生剤として、前記式(I)中のmが4以上である化合物、換言すれば前記式(Ia)で示される脂肪族スルホニウム塩を用いる。このような炭素数の多いパーフルオロアルカンスルホネート陰イオンを有するスルホニウム塩がレジストの解像度の改良及び塩基性基板や低反射率基板上でのプロファイルの改良に効果を発揮する理由は、必ずしも定かでないが、陰イオンが嵩高くなることで、生じる酸のレジスト内での拡散距離が短くなり、光学像に一層忠実な酸の分布が達成されることから、解像度が向上したり、低反射率基板上でのプロファイルが改良されるものと推定される。またレジスト内での酸の拡散距離が短くなるため、塩基性基板からの塩基の拡散も抑えられ、塩基性基板上でも裾引きの少ないプロファイルが得られるものと考えられる。
【0024】
式(I)で示される脂肪族スルホニウム塩は、市販品があればそれをそのまま用いることができるほか、公知の方法に準じて製造することも可能である。例えば、D. N. Kevill et al., J. Am. Chem. Soc., Vol.108, 1579-1585 (1986) に記載の方法を応用して、次の反応スキームに従って製造することができる。
【0025】
【0026】
式中、Q1 、Q2 及びmは先に定義したとおりであり、Xは臭素や沃素のようなハロゲンを表す。
【0027】
すなわち、上記式(A1)に相当するスルフィド化合物に式Q1−X に相当するハロゲン化炭化水素を作用させるか、又は上記式(A2)に相当するスルフィド化合物に式Q2−X に相当するハロゲン化炭化水素を作用させて、上記式(B)に相当するスルホニウムハライドを生成させ、さらに式CmF2m+1SO3Ag に相当するパーフルオロアルカンスルホン酸銀を作用させることにより、式(I)で示される脂肪族スルホニウム塩を得ることができる。これらの反応は、適当な溶媒中、例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、酢酸エチルなどの溶媒中で行われる。式Q1−X 又は式Q2−X に相当するハロゲン化炭化水素は、式(A1)又は式(A2)のスルフィド化合物に対して過剰に、例えば3〜20モル倍程度用いるのが好ましく、また、式CmF2m+1SO3Ag に相当するパーフルオロアルカンスルホン酸銀は、式(B)のスルホニウムハライド生成のために用いた式(A1)又は式(A2)のスルフィド化合物に対して、ほぼ等モル量用いればよい。反応終了後は、生成したハロゲン化銀を濾過等により除去し、次いで濃縮や再結晶等の後処理を施すことにより、式(I)の脂肪族スルホニウム塩を得ることができる。式(Ia)で示される化合物ももちろん、上記反応スキーム中のmをnと置き換えて、同様に製造することができる。
【0028】
式(I)で示される脂肪族スルホニウム塩の具体的な例としては、次のような化合物を挙げることができ、これらの例示化合物中、末尾に(Ia)と表示したものは、前記式(Ia)に相当するスルホネート陰イオン部分の炭素数の多い化合物でもある。
【0029】
シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(式(I)中、Q1 =メチル、Q2 =シクロヘキシル、m=1の化合物)、
1−アダマンチルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(式(I)中、Q1 =メチル、Q2 =1−アダマンチル、m=1の化合物)、
メチル(2−ノルボルニル)(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(式(I)中、Q1 =メチル、Q2 =2−ノルボルニル、m=1の化合物)、
ジメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(式(I)中、Q1 =Q2 =メチル、m=1の化合物)、
メチル(2−オキソシクロヘキシル)プロピルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(式(I)中、Q1 =プロピル、Q2 =メチル、m=1の化合物)、
【0030】
シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート(式(I)中、Q1 =メチル、Q2 =シクロヘキシル、m=4の化合物)(Ia)、
1−アダマンチルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート(式(I)中、Q1 =メチル、Q2 =1−アダマンチル、m=4の化合物)(Ia)、
メチル(2−ノルボルニル)(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート(式(I)中、Q1 =メチル、Q2 =2−ノルボルニル、m=4の化合物)(Ia)、
ジメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート(式(I)中、Q1 =Q2 =メチル、m=4の化合物)(Ia)、
メチル(2−オキソシクロヘキシル)プロピルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート(式(I)中、Q1 =プロピル、Q2 =メチル、m=4の化合物)(Ia)、
【0031】
シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート(式(I)中、Q1=メチル、Q2=シクロヘキシル、m=8の化合物)(Ia)、
1−アダマンチルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート(式(I)中、Q1 =メチル、Q2 =1−アダマンチル、m=8の化合物)(Ia)、
メチル(2−ノルボルニル)(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート(式(I)中、Q1 =メチル、Q2 =2−ノルボルニル、m=8の化合物)(Ia)、
ジメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート(式(I)中、Q1 =Q2 =メチル、m=8の化合物)(Ia)、
メチル(2−オキソシクロヘキシル)プロピルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート(式(I)中、Q1 =プロピル、Q2 =メチル、m=8の化合物)(Ia)など。
【0032】
次に、本発明において第一の見地から特定する組成物で必須の成分となるトリフェニルスルホニウム塩及びジフェニルヨードニユム塩から選ばれる少なくとも1種のオニウム塩を表す式(IIa)及び(IIb)において、Q3、Q4、Q5、Q6及びQ7はそれぞれ、水素、水酸基、炭素数1〜6のアルキル又は炭素数1〜6のアルコキシであり、アルキル及びアルコキシは、炭素数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。具体的なアルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられ、アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどが挙げられる。また式(IIa)及び(IIb)において、パーフルオロアルカンスルホネート陰イオンを構成するアルカン部分の炭素数を表すp及びqは4〜8の整数である。このような炭素数の多いパーフルオロアルカンスルホネート陰イオンを有するトリフェニルスルホニウム塩は、前記式(Ia)で示される脂肪族スルホニウム塩と同様、解像度の改良、さらには塩基性基板や低反射率基板上でのプロファイルの改良にとって有利である。
【0033】
式(IIa)で示されるトリフェニルスルホニウム塩、式(IIb)で示されるジフェニルヨードニユム塩は、市販品があれば、それをそのまま用いることができるほか、常法に従って製造することも可能である。トリフェニルスルホニウム塩(IIa)の製法としては、例えば、相当するトリフェニルスルホニウムブロマイドをパーフルオロアルカンスルホン酸銀と反応させる方法や、 Chem. Pharm. Bull., Vol.29, 3753 (1981) の記載に準じて、相当するジフェニルスルホキシドとベンゼン系化合物とパーフルオロアルカンスルホン酸とを、トリフルオロ酢酸無水物の存在下で反応させる方法、特開平 8-311018 号公報の記載に準じて、相当するアリールグリニヤ試薬を塩化チオニルと反応させ、次いでトリオルガノシリルハライドと反応させてトリアリールスルホニウムハライドとした後、パーフルオロアルカンスルホン酸銀と反応させる方法などにより、製造できる。また、式(IIa)中のQ3 、Q4 及び/又はQ5 が水酸基である化合物は、上記特開平 8-311018 号公報の記載に準じて、ベンゼン環上にtert−ブトキシ基を有するトリフェニルスルホニウム塩を、その化合物の陰イオンと同じスルホン酸で処理してtert−ブチル基を脱離させることにより、製造できる。
【0034】
また、ジフェニルヨードニウム塩(IIb)の製法としては、例えば、J. Am. Chem. Soc., vol.81, 342 (1959) の記載に準じて、ヨージル硫酸と相当するアリール化合物を反応させた後、パーフルオロアルカンスルホン酸を加える方法や、相当するアリール化合物と無水酢酸、ヨウ素酸カリウムの混合物に濃硫酸を滴下して反応させた後、パーフルオロアルカンスルホン酸を加える方法、あるいは、無水酢酸と発煙硝酸の混合液中にヨウ素とトリフルオロ酢酸を加えて得られる反応生成物と相当するアリール化合物を反応させた後、パーフルオロアルカンスルホン酸を加える方法などにより製造できる。
【0035】
式(IIa)、(IIb)に相当するトリフェニルスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウム塩の具体例としては、次のような化合物を挙げることができる。
【0036】
トリフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート
トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート
ジフェニルヨードニウム パーフルオロブタンスルホネート、
ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウム パーフルオロオクタンスルホネート
ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム パーフルオロオクタンスルホネートなど。
【0037】
次に、本発明のレジスト組成物を構成する樹脂成分について説明する。この樹脂は、酸に不安定な基を持つ重合単位を有する。化学増幅型ポジ型レジスト用の樹脂は一般に、それ自体ではアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用により一部の基が解裂し、解裂後はアルカリ可溶性となるものである。本発明における酸に不安定な基も、このように従来から知られている各種のものであることができる。酸に不安定な基として具体的には、カルボン酸の各種エステル、例えば、メチルエステル及びtert−ブチルエステルに代表されるアルキルエステル、メトキシメチルエステル、エトキシメチルエステル、1−エトキシエチルエステル、1−イソブトキシエチルエステル、1−イソプロポキシエチルエステル、1−エトキシプロピルエステル、1−(2−メトキシエトキシ)エチルエステル、1−(2−アセトキシエトキシ)エチルエステル、1−〔2−(1−アダマンチルオキシ)エトキシ〕エチルエステル、1−〔2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)エトキシ〕エチルエステル、テトラヒドロ−2−フリルエステル及びテトラヒドロ−2−ピラニルエステルのようなアセタール型エステル、イソボルニルエステル及び2−アルキル−2−アダマンチルエステルのような脂環式エステルなどが挙げられる。このようなカルボン酸エステルを有する重合単位へ導くモノマーは、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステルのような(メタ)アクリル系のものでもよいし、ノルボルネンカルボン酸エステル、トリシクロデセンカルボン酸エステル、テトラシクロデセンカルボン酸エステルのように、カルボン酸エステル基が脂環式モノマーに結合したものでもよい。
【0038】
このような酸に不安定な基を持つ重合単位のなかでも、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位を有する樹脂は、それを含むレジストの解像度の点で好ましい。この重合単位は、アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル又はメタクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルにおける(メタ)アクリル酸部分の二重結合が開いて形成されるものであり、具体的には下式(III) で表すことができる。
【0039】
【0040】
式中、R1 は水素又はメチルを表し、R2 はアルキルを表す。
【0041】
式(III) で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位は、脂環式環であるアダマンタン環の存在により、レジストの透過率を確保し、またドライエッチング耐性の向上に寄与する。さらにこの単位中の2−アルキル−2−アダマンチルは、酸の作用により解裂するので、この単位は、レジスト膜の露光後のアルカリ溶解性を高めるのに寄与する。式(III) 中のR2 はアルキルであり、このアルキルは例えば、炭素数1〜8程度であることができ、通常は直鎖であるのが有利であるが、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。具体的なR2 としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどが挙げられる。なかでも、R2 がメチル又はエチルであるものは、レジストと基板との接着性や解像度の向上にとって好都合である。
【0042】
式(III) で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位に導くためのモノマーとして、具体的には例えば、アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルは通常、2−アルキル−2−アダマンタノール又はその金属塩とアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとの反応により製造できる。
【0043】
本発明で規定する樹脂は、上記のような酸に不安定な基を有する重合単位の他に、酸の作用により解裂しないか又は解裂しにくい他の重合単位を含有することも、もちろん可能である。含有しうる他の重合単位としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸のような遊離のカルボン酸基を有するモノマーの重合単位、無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位、2−ノルボルネンの重合単位、(メタ)アクリロニトリルの重合単位、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンのような各種(メタ)アクリル酸エステル類の重合単位などを挙げることができる。
【0044】
特に(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位や、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位は、レジストの基板への接着性の点で好ましく用いられる。ここでいう(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位とは、対応する(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルにおける(メタ)アクリル酸部分の二重結合が開いて形成される単位を意味し、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位とは、無置換の又はラクトン環にアルキルが置換したα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンにおける(メタ)アクリル酸部分の二重結合が開いて形成される単位又はラクトン環がアルキルで置換されていてもよいβ無置換の又はラクトン環にアルキルが置換したβ−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンにおける(メタ)アクリル酸部分の二重結合が開いて形成される単位を意味し、それぞれ下式(IV)、(V)及び(VI)で表すことができる。
【0045】
【0046】
式中、R3 及びR4 は互いに独立に水素又はメチルを表し、R5 、R6 及びR7 は互いに独立に、水素又はアルキルを表しR8は水素又は水酸基を表す。
【0047】
式(IV)の単位に導くための(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル類は市販されているが、例えば対応するヒドロキシアダマンタンを(メタ)アクリル酸又はそのハライドと反応させることにより、製造することもできる。また、式(V)又は式(VI)の単位に導くためのα−又はβ−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンは、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−若しくはβ−ブロモ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸若しくはメタクリル酸を反応させるか、又はラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−若しくはβ−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸ハライド若しくはメタクリル酸ハライドを反応させることにより、製造できる。
【0048】
式(IV)で示される(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位、式(V)で示されるα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位及び式(VI)で示されるβ−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位は、いずれも極性が高く、それらのいずれかを樹脂中に存在させることにより、それを含むレジストの基板への接着性が向上する。これらの重合単位はまた、レジストの解像性の向上にも寄与する。さらに、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位は、レジストのドライエッチング耐性の向上にも寄与する。また、β−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位は、レジストの透過率向上にも寄与する。
【0049】
式(IV)で示される(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位に導くためのモノマーは、アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル及びメタクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル等が挙げられる。また、式(V)及び式(VI)中、R5 、R6 及びR7 はそれぞれ、水素又はアルキルであり、このアルキルは炭素数1〜6程度であることができ、炭素数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。R5 、R6 及びR7 で表されるアルキルの具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどが挙げられる。式(V)で示されるα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位に導くためのモノマーとしては、例えば、α−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。また、式(VI)で示されるβ−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位に導くためのモノマーとしては、例えば、β−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0050】
また2−ノルボルネンの重合単位を含む樹脂は、その主鎖に直接脂環基を有するために頑丈な構造となり、ドライエッチング耐性に優れるという特性を示す。
2−ノルボルネンの重合単位は、例えば対応する2−ノルボルネンの他に無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物を併用したラジカル重合により主鎖へ導入し得る。したがって、2−ノルボルネンの重合単位は、その二重結合が開いて形成されるものであり式(VII)で表すことができる。また脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位である無水マレイン酸の重合単位、無水イタコン酸の重合単位は、それらの二重結合が開いて形成されるものであり、それぞれ式(VIII)及び(IX)で表すことができる。
【0051】
【0052】
ここで、式(VII)中のR9及びR10は互いに独立に、水素、炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、カルボキシル、シアノ若しくは基−COOZ(Zはアルコール残基である)を表すか、又はR9とR10が一緒になって、-C(=O)OC(=O)- で示されるカルボン酸無水物残基を形成することもできる。R9及び/又はR10がアルキルである場合の具体例としては、メチル、エチル、プロピルなどが挙げられ、同じくヒドロキシアルキルである場合の具体例としては、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。R9及び/又はR10が基−COOZである場合は、カルボキシルがエステルとなったものであり、Zに相当するアルコール残基としては、例えば、置換されていてもよい炭素数1〜8程度のアルキル、2−オキソオキソラン−3−又は−4−イルなどを挙げることができ、ここにアルキルの置換基としては、水酸基や脂環式炭化水素残基などが挙げられる。そこで、R9及び/又はR10が−COOZで示されるカルボン酸エステル残基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、2−オキソオキソラン−3−イルオキシカルボニル、2−オキソオキソラン−4−イルオキシカルボニル、1,1,2−トリメチルプロポキシカルボニル、1−シクロヘキシル−1−メチルエトキシカルボニル、1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエトキシカルボニル、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエトキシカルボニルなどが挙げられる。
【0053】
また式(VI)で示される2−ノルボルネンの重合単位に導くためのモノマーとして、具体的には例えば、次のような化合物を挙げることができる。
【0054】
2−ノルボルネン
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン
5−ノルボルネン−2−カルボン酸
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル
5−ノルボルネン−2−カルボン酸−t−ブチル
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、
5−ノルボルネン−2−メタノール、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物など。
【0055】
本発明で用いる樹脂は、パターニング露光用の放射線の種類や酸に不安定な基の種類などによっても変動するが、一般には、酸に不安定な基を持つ重合単位を10〜80モル%の範囲で含有するのが好ましい。そして、酸に不安定な基として特に、式(III) で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位を用いる場合は、この単位が樹脂全体のうち15モル%以上となるようにするのが有利である。また、酸に不安定な基を持つ重合単位に加えて、酸の作用で解裂しにくい他の重合単位、例えば、式(IV)で示される(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位、式(V)で示されるα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位、式(VI)で示されるβ−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位、式(VII)で示される2−ノルボルネンの重合単位、脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位である式(VIII)で示される無水マレイン酸の重合単位、式(IX)で示される無水イタコン酸の重合単位などを存在させる場合は、それらの合計が、樹脂全体のうち20〜90モル%の範囲となるようにするのが好ましい。
【0056】
そこで、式(III) で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの単位を含む酸に不安定な基を持つ重合単位とともに、式(IV)で示される(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位及び/又は式(V)で示されるα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位、並びに式(VII)で示される2−ノルボルネンの重合単位及び式(VIII)、(IX)で示される脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位を有する共重合体とする場合は、酸に不安定な基を持つモノマーを10〜80モル%、特に式(III) の単位へ導くための(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルを15モル%以上、そして式(IV)の単位へ導くための(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル及び/又は式(V)の単位へ導くためのラクトン環にアルキルが置換していてもよいα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン並びに式(VII)の単位に導くための2−ノルボルネン類及び脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位に導くためのモノマーを合計20〜90モル%含むモノマー混合物を共重合させるのが通常である。尚、2−ノルボルネン類及び脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物を共重合モノマーとする場合には、これらは重合しにくい傾向があるので、この点を考慮し、これらは過剰に使用することが好ましい。酸に不安定な基を持つ重合単位とともに式(VI)で示されるβ−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位を有する共重合体とする場合も同様に、酸に不安定な基を持つモノマーを10〜80モル%、そして式(VI)の単位へ導くためのラクトン環にアルキルが置換していてもよいβ−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを20〜90モル%含むモノマー混合物を共重合させるのが有利である。
【0057】
また、一般に化学増幅型のポジ型レジスト組成物においては、塩基性化合物、特に塩基性含窒素有機化合物、例えばアミン類を、クェンチャーとして添加することにより、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良できることが知られており、本発明においても、このような塩基性化合物を配合するのが好ましい。クェンチャーに用いられる塩基性化合物の具体的な例としては、以下の各式で示されるようなものが挙げられる。
【0058】
【0059】
式中、R11、R12、R13、R14及びR15は互いに独立に、水素、水酸基で置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリール又はアルコキシを表し、Aはアルキレン、カルボニル又はイミノを表す。ここで、R11〜R15で表されるアルキル及びアルコキシは、炭素数1〜6程度であることができ、シクロアルキルは、炭素数5〜10程度であることができ、そしてアリールは、炭素数6〜10程度であることができる。また、Aで表されるアルキレンは、炭素数1〜6程度であることができ、直鎖でも分岐していてもよい。このような塩基性化合物のなかでも、下式 (X)で示される2,6−ジアルキルピリジン化合物は、レジストの経時安定性を向上させるのに効果的である。
【0060】
【0061】
式中、R21及びR22は互いに独立に、炭素数1〜4のアルキルを表す。2,6−ジアルキルピリジン化合物の具体例としては、2,6−ルチジン、2−エチル−6−メチルピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジンなどが挙げられる。この2,6−ジアルキルピリジン化合物は、単独でクェンチャーとすることができるほか、所望により他の塩基性化合物と組み合わせて用いることもできる。
【0062】
本発明のレジスト組成物は、その全固形分量を基準に、樹脂を80〜99.9重量%程度、そして酸発生剤を0.1〜20重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。本発明において第一の見地から特定する組成物のように、式(I)の脂肪族スルホニウム塩と式(II)のトリフェニルスルホニウム塩を酸発生剤として併用する場合、両者は通常、9:1〜1:9程度、さらには8:2〜2:8程度の重量割合で用いるのが好ましい。また、クェンチャーとしての塩基性化合物を用いる場合は、レジスト組成物の全固形分量を基準に、0.01〜1重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。この組成物はまた、必要に応じて、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など、各種の添加物を少量含有することもできる。
【0063】
本発明のレジスト組成物は通常、上記の各成分が溶剤に溶解された状態でレジスト液とされ、シリコンウェハーなどの基体上に、スピンコーティングなどの常法に従って塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で一般に用いられている溶剤が使用しうる。例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0064】
基体上に塗布され、乾燥されたレジスト膜には、パターニングのための露光処理が施され、次いで脱保護基反応を促進するための加熱処理を行った後、アルカリ現像液で現像される。ここで用いるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であることができるが、一般には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液が用いられることが多い。
【0065】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミェーションクロマトグラフィーにより求めた値である。
【0066】
モノマー合成例1:メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルの合成
2−メチル−2−アダマンタノール83.1部とトリエチルアミン101部を仕込み、200部のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに、メタクリル酸クロリド78.4部(2−メチル−2−アダマンタノールに対して1.5モル倍)を滴下し、その後、室温で約10時間攪拌した。濾過後、有機層を5%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、続いて水洗を2回行った。有機層を濃縮した後、減圧蒸留して、次式で示されるメタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルを得た。
【0067】
【0068】
モノマー合成例2:メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルの合成
2−アダマンタノン31.1部にジエチルエーテル50部を加えて溶液とし、この溶液の温度が10℃を越えないように維持しながら、そこにエチルリチウムを1.14モル/L濃度で含むジエチルエーテル溶液200mlを滴下した。そのまま0℃で2時間攪拌した後、10℃を越えないように維持しながらメタクリル酸クロリド26.2部(2−アダマンタノンに対して1.2モル倍)を滴下した。滴下終了後、室温で12時間攪拌した。その後、析出した無機塩を濾別し、有機層を5%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、続いて水洗を2回行った。有機層を濃縮した後、減圧蒸留して、次式で示されるメタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルを得た。
【0069】
【0070】
モノマー合成例3:α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの合成
α−ブロモ−γ−ブチロラクトン100部とメタクリル酸104.4部(α−ブロモ−γ−ブチロラクトンに対して2.0モル倍)を仕込み、α−ブロモ−γ−ブチロラクトンに対して3重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこにトリエチルアミン183.6部(α−ブロモ−γ−ブチロラクトンに対して3.0モル倍)を滴下し、その後、室温で約10時間攪拌した。濾過後、有機層を5%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、続いて水洗を2回行った。有機層を濃縮して、次式で示されるα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを得た。
【0071】
【0072】
樹脂合成例1:樹脂A1の合成
メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルとα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを5:5のモル比(15.0部:11.7部)で仕込み、全モノマーに対して2重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて、溶液とした。そこに、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマー量に対して2モル%添加し、80℃で約8時間加熱した。その後、反応液を大量のヘプタンに注いで沈殿させる操作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が約 10,000 の共重合体を得た。この共重合体は、次式の各重合単位を有するものであり、これを樹脂A1とする。
【0073】
【0074】
樹脂合成例2:樹脂A2の合成
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、及びα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを、5:2.5:2.5のモル比(20.0部:9.5部:7.3部)で仕込んだほかは、樹脂合成例1と同様に操作した。その結果、重量平均分子量が約 9,200の共重合体を得た。この共重合体は、次式で示される各単位を有するものであり、これを樹脂A2とする。
【0075】
【0076】
樹脂合成例3:樹脂A3の合成
メタクリル酸2−アダマンチル−2−エチル、アクリル酸1−アダマンチル−3−ヒドロキシ、ノルボルネン及び無水マレイン酸を2:2:3:3のモル比(10.0部:9.0部:5.7部:5.9部)で仕込み、全モノマーの2重量倍のメチルイソブチルケトンを加えた後、窒素雰囲気で80℃に昇温した。そこに、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマー量に対して3モル%添加し、80℃で約15時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールに注いで沈殿させる操作を3回行って、重量平均分子量が約 12160、分散が1.90の共重合体(17.1部)を得た。この共重合体は、次式で示される各単位を有するものであり、これを樹脂A3とする。
【0077】
【0078】
酸発生剤合成例1:シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネートの合成
四つ口フラスコに2−(シクロヘキシルチオ)シクロヘキサノン3.2部とニトロメタン10.0部を仕込み、15℃まで冷却した。そこに沃化メチル19.2部を仕込み、同温度で2時間撹拌した。次いで、パーフルオロブタンスルホン酸銀6.10部をニトロメタン200部に溶解したものを徐々に滴下して加えた。
同温度で6時間攪拌した後、析出した沃化銀を濾別し、この沃化銀をニトロメタン32部で洗浄した。濾液と洗液を一緒にして8.4部まで濃縮し、ジエチルエーテル260部中に加えた。析出した結晶を濾過し、ジエチルエーテル30部で洗浄し、目的物を1.35部得た。収率17.1%。この化合物が次式で示されるシクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネートであることを、 1H−NMR(日本電子製“GX-270”)で確認した。
【0079】
【0080】
融点 86〜88℃
1H−NMR(CDCl3、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)
1.15-2.32 (m, 15H); 2.52-2.83 (m, 3H);
2.83 (s, 1.5H); 2.96 (s, 1.5H);
3.57 (tt, 0.5H); 3.85 (tt, 0.5H);
5.36(dd, 0.5H); 5.50 (dd, 0.5H).
【0081】
酸発生剤合成例2:シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネートの合成
四つ口フラスコに、2−(シクロヘキシルチオ)シクロヘキサノン4.25部とニトロメタン13.0部を仕込み、15℃まで冷却した。 そこに沃化メチル25.5部を仕込み、同温度で2時間撹拌した。次いで、パーフルオロオクタンスルホン酸銀12.14部をニトロメタン750部に溶解させたものを徐々に滴下して加えた。同温度で18時間攪拌した後、析出した沃化銀を濾別し、この沃化銀をニトロメタン40部で洗浄した。濾液と洗液を一緒にして15.1部まで濃縮し、ジエチルエーテル600部中に加えた。析出した結晶を濾過し、ジエチルエーテル50部で洗浄し、目的物を6.22部得た。収率42.8%。この化合物が次式で示されるシクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネートであることを、 1H−NMRで確認した。
【0082】
【0083】
1H−NMR(CDCl3、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)
1.15-2.32 (m, 15H); 2.52-2.83 (m, 3H);
2.83 (s, 1.5H); 2.95 (s, 1.5H);
3.58 (tt, 0.5H); 3.86 (tt, 0.5H);
5.38 (dd, 0.5H); 5.51 (dd, 0.5H).
【0084】
酸発生剤合成例3:4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネートの合成
四つ口フラスコに、ジフェニルスルホキシド8.0部とトルエン80.0部を仕込み、2℃まで冷却した。次いで、トリフルオロ酢酸無水物16.6部とパーフルオロオクタンスルホン酸19.8部を仕込み、同温度で30分間撹拌した。静置後、下層を濃縮し、クロロホルム340部で希釈した。得られたクロロホルム溶液をイオン交換水85部で6回洗浄した後、濃縮して、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート27.7部を得た。
【0085】
次に、以下の酸発生剤B1〜B3、C1及びC2を用いてレジスト組成物を調製し、評価した例を示す。
【0086】
酸発生剤B1: シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロメタンスルホネート(みどり化学社製“CMS-105”)
酸発生剤B2: シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート(酸発生剤合成例1による生成物)
酸発生剤B3: シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート(酸発生剤合成例2による生成物)
酸発生剤C1: 4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート(酸発生剤合成例3による生成物)
酸発生剤C2: 4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロメタンスルホネート(みどり化学社製“MDS-205”)
【0087】
実施例1
以下に示す各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過してレジスト液を調製した。
【0088】
【0089】
Brewer社製の“DUV-30”を塗布し、215℃、60秒の条件でベークして厚さ1,600Åの有機反射防止膜を形成させたシリコンウェハーに、上記のレジスト液を乾燥後の膜厚が0.39μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて100℃で60秒間プリベークした。
こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、ArFエキシマ露光機〔(株)ニコン製の“NSR ArF”、NA=0.55、σ=0.6〕を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて115℃で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、実効感度及び解像度を以下の方法で調べたところ、実効感度は22mJ/cm2 、解像度は0.16μmであった。
【0090】
実効感度: 0.18μmのラインアンドスペースパターンが1:1となる最少露光量で表示した。
【0091】
解像度: 実効感度の露光量で分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法で表示した。
【0092】
また、石英ガラスウェハー上に、上記のレジスト液を塗布して、上記と同様の条件でプリベークを行った後の膜厚が0.39μmとなるようにレジスト膜を形成させ、このレジスト膜の193nmにおける透過率を分光光度計で測定した。その結果、透過率は62%であった。以上のとおり、このレジストは、高い透過率を示すとともに、感度及び解像度も良好であった。
【0093】
実施例2〜7及び比較例1〜2
表1に示す酸発生剤を、以下に示す各成分と混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過してレジスト液を調製した。
【0094】
【0095】
Brewer社製の“DUV-30”を塗布し、215℃、60秒の条件でベークして厚さ1,600Åの有機反射防止膜を形成させたシリコンウェハーに、上記のレジスト液を乾燥後の膜厚が0.39μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて120℃で60秒間プリベークした。こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、実施例1と同様にしてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて120℃で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、実効感度及び解像度を実施例1と同様の方法で調べた。尚、実施例7においては、“DUV-30”の代わりに“DUV-30J”を用い、ベーク温度は115℃で実施した。また、石英ガラスウェハー上に、上記のレジスト液を塗布して、上記と同様の条件でプリベークを行った後の膜厚が0.39μmとなるようにレジスト膜を形成させ、このレジスト膜の193nmにおける透過率を測定した。これらの結果をまとめて表1に示した。
【0096】
【表1】
【0097】
実施例1の結果及び表1の結果から明らかなように、同程度の透過率で比較すると、実施例のレジストは、感度及び解像度に優れている。また、シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネートを単独で酸発生剤とした実施例2のレジストは、当該酸発生剤の量が多くなっても、193nmにおける透過率が高く、したがって、露光に用いるArFエキシマレーザー光を吸収しにくいため、プロファイルの改良に有効であることがわかる。
【0098】
実施例8
厚さ1,800Åの窒化シリコン膜が設けられたウェハー(塩基性基板)を常法によりヘキサメチルジシラザンで表面処理した後、このウェハーに、実施例3及び5で調製した各レジスト液を、それぞれの実施例と同様の方法で乾燥後の膜厚が0.5μmとなるように塗布してレジスト膜を形成し、パターニングした後、パターンの断面形状を走査型電子顕微鏡で観察して基板依存性を評価した。その結果、これらのパターンはいずれも裾引きのない良好なプロファイルを示した。
【0099】
以上のとおり、実施例のレジストは、4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロメタンスルホネートを酸発生剤とした比較例のレジストに比べて解像度が改良され、低反射率基板に適用した場合でも、良好なプロファイルを与える。さらに、これらの実施例で調製したレジストは、塩基性基板での裾引きプロファイルも起こしにくい。
【0100】
実施例9〜11
以下に示す各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過してレジスト液を調製した。
【0101】
【0102】
* 樹脂A4: メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルとβ−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンとのモル比47.7/52.3の共重合体であって、重量平均分子量約 8,400の樹脂。
【0103】
これらのうち実施例9及び実施例10のレジスト液については、それらを二分して、一方は60℃で24時間保存した後1時間かけて23℃に戻し、もう一方はその間23℃で保存した。そして、それぞれのレジスト液について以下の試験を行った。なお、実施例11のレジスト液は、そのまま以下の試験に供した。
【0104】
Brewer社製の“DUV-30”を塗布し、215℃、60秒の条件でベークして厚さ1,600Åの有機反射防止膜を形成させたシリコンウェハーに、上記のレジスト液を乾燥後の膜厚が0.39μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて110℃で60秒間プリベークした。こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、実施例1と同様にしてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて115℃で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、実効感度及び解像度を実施例1と同様の方法で調べた。また、石英ガラスウェハー上に、上記のレジスト液を塗布して、上記と同様の条件でプリベークを行った後の膜厚が0.39μmとなるようにレジスト膜を形成させ、このレジスト膜の193nmにおける透過率を測定した。これらの結果をまとめて表2に示した。
【0105】
【表2】
【0106】
これらの結果から明らかなように、実施例9〜11のレジストは、感度、解像度及び透過率とも良好である。特に、クェンチャーとして2,6−ルチジンを用いた実施例10では、60℃で24時間の経時変化加速試験後においても、感度及び透過率の変化が小さく、経時安定性が向上している。また、樹脂A4を用いた実施例11のレジストは、さらに感度が早く、193nmにおける透過率が高い。
【0107】
【発明の効果】
本発明によって、特定の酸発生剤を用いたレジスト組成物は、解像度が良好であり、また、220nm以下の波長の光、例えば、ArFエキシマレーザー光を用いた露光などにおいて、塩基性基板や低反射率基板に適用した場合でも、良好なプロファイルを与え、基板依存性が小さいという効果を奏する。
Claims (14)
- 下式(I)
(式中、Q1はアルキルを表し、Q2はアルキル又は脂環式炭化水素残基を表し、mは1〜8の整数を表す)
で示される脂肪族スルホニウム塩と、下式( IIa )で示されるトリフェニルスルホニユム塩
(式中、Q3、Q4 及びQ 5 は互いに独立に、水素、水酸基、炭素数1〜6のアルキル又は炭素数1〜6のアルコキシを表し、qは4〜8の整数を表す)
とを含む酸発生剤並びに、酸に不安定な基を持つ重合単位を有し、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用でアルカリに可溶となる樹脂を含有し、全固形分量を基準に、樹脂を80〜99.9重量%、そして酸発生剤を0.1〜20重量%の範囲で含有することを特徴とする化学増幅型ポジ型レジスト組成物。 - 式(I)中のmが4〜8の整数である請求項1記載の組成物。
- 式(I)の脂肪族スルホニウム塩と、式( IIa )のトリフェニルスルホニウム塩が、9:1〜1:9の重量割合で存在する請求項1又は2記載の組成物。
- 樹脂中の酸に不安定な基を持つ重合単位の含有率が、10〜80モル%である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
- 酸に不安定な基を持つ重合単位が、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位である請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
- (メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルが、メタクリル酸−2−メチル−2−アダマンチル及びメタクリル酸−2−エチル−2−アダマンチルから選ばれる請求項6記載の組成物。
- 該樹脂がさらに、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位及びラクトン環がアルキルで置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位から選ばれる単位を有する請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
- 該樹脂が実質的に、酸に不安定な基を持つ重合単位並びに、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位及びラクトン環がアルキルで置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位から選ばれる単位からなる二元共重合体である請求項8記載の組成物。
- 該樹脂が、酸に不安定な基を持つ重合単位、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位及びラクトン環がアルキルで置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位を含む少なくとも三元の共重合体である請求項8記載の組成物。
- ラクトン環がアルキルで置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位が、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位及びラクトン環がアルキルで置換されていてもよいβ−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位から選ばれる少なくとも1種である請求項8〜10のいずれかに記載の組成物。
- 該樹脂がさらに、2−ノルボルネンの重合単位と脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位とを有する請求項8記載の組成物。
- さらに、アミン類をクェンチャーとして含有し、クェンチャーをレジスト組成物の全固形分量を基準に、0.01〜1重量%の範囲で含有する請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
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