JP4433527B2 - 化学増幅型ポジ型レジスト組成物及びスルホニウム塩 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体の微細加工に用いられる化学増幅型のポジ型レジスト組成物及びそれの酸発生剤として有用な新規な化合物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体の微細加工には通常、レジスト組成物を用いたリソグラフィプロセスが採用されており、リソグラフィにおいては、レイリー (Rayleigh) の回折限界の式で表されるように、原理的には露光波長が短いほど解像度を上げることが可能である。半導体の製造に用いられるリソグラフィ用露光光源は、波長436nmのg線、波長365nmのi線、波長248nmのKrFエキシマレーザーと、年々短波長になってきており、次世代の露光光源として、波長193nmのArFエキシマレーザーが有望視され、かかるArFエキシマレーザー露光用レジストが一部で実用化されつつある。
【0003】
ArFエキシマレーザー露光機に用いられるレンズは、従来の露光光源用のものに比べて寿命が短いので、ArFエキシマレーザー光に曝される時間はできるだけ短いことが望ましい。そのためには、レジストの感度を高める必要があることから、露光により発生する酸の触媒作用を利用し、その酸により解裂する基を有する樹脂を含有するいわゆる化学増幅型レジストが用いられる。
【0004】
ArFエキシマレーザー露光用のレジストに用いる樹脂は、レジストの透過率を確保するために芳香環を持たず、またドライエッチング耐性を持たせるために芳香環の代わりに脂環式環を有するものがよいことが知られている。このような樹脂として、D. C. Hofer, J. Photopolym. Sci. Technol., Vol.9, No.3, 387-398 (1996) に記載されるような各種の樹脂が知られている。また、S. Takechi et al., J. Photopolym. Sci. Technol., Vol.9, No.3, 475-487 (1996) や特開平 9-73173号公報には、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチルの重合体又は共重合体を化学増幅型レジストの樹脂として用いた場合には、2−メチル−2−アダマンチルが酸の作用により解裂してポジ型に作用するとともに、高いドライエッチング耐性、高解像性及び基板への良好な接着性が得られることが報告されている。さらに特開平 10-274852号公報には、化学増幅型ポジ型レジスト組成物を構成する樹脂として、重合単位の一部にブチロラクトン残基を有するものを用いることにより、基板への接着性が改良されることが報告されている。
【0005】
一方、化学増幅型のレジスト、特にArFエキシマレーザー露光用レジストの酸発生剤としては、トリフェニルスルホニウム塩やジフェニルヨードニウム塩のようなアリールオニウム塩を用いる例が多い。しかしこのような酸発生剤を用いたレジストでは、充分な解像度及び感度が得られていない。特開平 7-25846号公報、特開平 7-28237号公報、特開平 7-92675号公報及び特開平 8-27102号公報に記載されるような透明性の高い脂肪族スルホニウム塩を用いることにより、感度を上げることはできるものの、解像度が充分とはいえない。このように、従来公知の酸発生剤を用いた化学増幅型レジストでは、感度と解像度のバランスをとるのに限界があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の一つは、樹脂成分と酸発生剤を含有し、ArFやKrFなどのエキシマレーザーリソグラフィ、特に220nm以下の波長の光、例えばArFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィに適した化学増幅型のポジ型レジスト組成物であって、感度や解像度などの各種レジスト性能が良好であるものを提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、このような化学増幅型ポジ型レジスト組成物の酸発生剤として有用な化合物を提供することにある。
【0008】
本発明者らは、ある種の樹脂とともに、ある特定の構造を有する酸発生剤を用いることにより、解像度が改良され、感度も改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、酸発生剤として、下式(I)
【0010】
【0011】
(式中、Rはアルキルを表し、Q1 及びQ2 は互いに独立に、水素、水酸基、炭素数1〜6のアルキル又は炭素数1〜6のアルコキシを表し、mは1〜8の整数を表す)
で示されるジフェニルアルキルスルホニウム塩を含有し、さらに、酸に不安定な基を持つ重合単位を有し、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用でアルカリに可溶となる重合体を主体とする樹脂を含有してなる化学増幅型ポジ型レジスト組成物を提供するものである。
【0012】
上記式(I)で示されるジフェニルアルキルスルホニウム塩のなかでも、スルホネート陰イオン部分のmが4〜8と炭素数の多いものは、解像度及びプロファイルの向上効果が顕著である。このようなスルホネート陰イオン部分の炭素数の多いジフェニルアルキルスルホニウム塩は、文献未記載の化合物である。したがって本発明はまた、下式(Ia)で示されるスルホニウム塩をも提供する。
【0013】
【0014】
式中、R、Q1及びQ2は先に定義したとおりであり、nは4〜8の整数を表す。
【0015】
【発明の実施の形態】
化学増幅型のレジスト組成物に用いられる酸発生剤は、その物質自体に、あるいはその物質を含むレジスト組成物に、光や電子線などの放射線を作用させることにより、その物質が分解して酸を発生するものである。本発明においては、かかる酸発生剤として、前記式(I)で示されるジフェニルアルキルスルホニウム塩を用いる。このスルホニウム塩は、好ましくは前記式(Ia)で示される。
【0016】
式(I)及び(Ia)において、Rはアルキルであり、このアルキルの炭素数は例えば1〜6程度でありうるが、一般には低級アルキル、例えば炭素数1〜4程度のものでよく、特にメチル又はエチルが適当である。このアルキルが炭素数3以上の場合は、直鎖でも分岐していてもよい。Q1 及びQ2 は互いに独立に、水素、水酸基、炭素数1〜6のアルキル又は炭素数1〜6のアルコキシである。これらアルキル及びアルコキシも、炭素数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。具体的なアルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられ、アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどが挙げられる。
【0017】
また式(I)において、パーフルオロアルカンスルホネート陰イオンを構成するアルカン部分の炭素数を表すmは1〜8の整数である。式(I)中のパーフルオロアルカンスルホネート陰イオンに該当する具体例としては、トリフルオロメタンスルホネートイオン、パーフルオロブタンスルホネートイオン、パーフルオロオクタンスルホネートイオンなどが挙げられる。
【0018】
式(I)において、パーフルオロアルカンスルホネート陰イオン部分の炭素数が多くなって、具体的には同式中のmが4以上になると、レジストの解像度が改良され、さらに塩基性基板や低反射率基板上でのプロファイルも改良されるようになる。このような炭素数の多いパーフルオロアルカンスルホネート陰イオンを有するスルホニウム塩が、レジストの解像度の改良及び塩基性基板や低反射率基板上でのプロファイルの改良に効果を発揮する理由は必ずしも定かでないが、陰イオンが嵩高くなることで、生じる酸のレジスト内での拡散距離が短くなり、光学像に一層忠実な酸の分布が達成されることから、解像度が向上したり、低反射率基板上でのプロファイルが改良されるものと推定される。また、レジスト内での酸の拡散距離が短くなるため、塩基性基板からの塩基の拡散も抑えられ、塩基性基板上でも裾引きの少ないプロファイルが得られるものと考えられる。
【0019】
式(I)で示されるジフェニルアルキルスルホニウム塩は、公知の方法に準じて製造することができる。例えば、 D. N. Kevill et al, J. Am. Chem. Soc., Vol.108, 1579-1585 (1986) に記載の方法を応用し、次の反応スキームに従って製造することができる。
【0020】
【0021】
式中、R、Q1 、Q2 及びmは先に定義したとおりであり、Xは臭素や沃素のようなハロゲンを表す。
【0022】
すなわち、上記式(A)に相当するスルフィド化合物に、式R−Xに相当するハロゲン化アルキルを作用させて、上記式(B)に相当するスルホニウムハライドを生成させ、さらに式CmF2m+1SO3Ag に相当するパーフルオロアルカンスルホン酸銀を作用させることにより、式(I)で示されるジフェニルアルキルスルホニウム塩を得ることができる。これらの反応は、適当な溶媒中、例えば、アセトニトリルやニトロメタン溶媒中で行われる。式R−Xに相当するハロゲン化アルキルは、式(A)のスルフィド化合物に対して1〜20モル倍程度用いるのが好ましく、また、式CmF2m+1SO3Ag に相当するパーフルオロアルカンスルホン酸銀は、式(B)のスルホニウムハライド生成のために用いた式(A)のスルフィド化合物に対してほぼ等モル用いればよい。反応終了後は、生成したハロゲン化銀を濾過等により除去した後、濃縮、再結晶、カラム精製等の後処理を施すことにより、式(I)のジフェニルアルキルスルホニウム塩を取り出すことができる。
【0023】
また別法として、例えば、 E. Vedejs et al, J. Org. Chem., Vol.42, 3109-3113 (1977) に記載の方法を応用し、次の反応スキームに従って、式(I)で示されるジフェニルアルキルスルホニウム塩を製造することもできる。
【0024】
【0025】
式中、R、Q1 、Q2 及びmは先に定義したとおりである。
【0026】
すなわち、上記式(A)に相当するスルフィド化合物に、式CmF2m+1SO3Rに相当するパーフルオロアルカンスルホン酸エステルを作用させることにより、式(I)で示されるジフェニルアルキルスルホニウム塩を得ることができる。この反応は、適当な溶媒中、例えば、アセトニトリル溶媒中で行われる。この反応において、式CmF2m+1SO3Rに相当するパーフルオロアルカンスルホン酸エステルは、式(A)のスルフィド化合物に対してほぼ等モル用いればよい。反応終了後は、濃縮、再結晶、カラム精製等の後処理を施すことにより、式(I)のジフェニルアルキルスルホニウム塩を取り出すことができる。
【0027】
式(Ia)で示される化合物ももちろん、上に示した各スキームにおけるmをnと置き換えて、同様に製造できる。なお、式(I)又は(Ia)中のQ1 及び/又はQ2 が水酸基である化合物は、Q1 及び/又はQ2 がtert−ブトキシである化合物を合成したのち、その化合物の陰イオンと同じスルホン酸で処理してtert−ブチル基を脱離させることにより、製造できる。
【0028】
式(I)に相当するジフェニルアルキルスルホニウム塩の具体例としては、次のような化合物を挙げることができる。
【0029】
ジフェニルメチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−メチルフェニル)メチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−メトキシフェニル)メチルスルホニル トリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−tert−ブトキシフェニル)メチルスルホニル トリフルオロメタンスルホネート、
ジフェニルエチルスルホニル トリフルオロメタンスルホネート、
ジフェニルメチルスルホニル パーフルオロブタンスルホネート、
ジフェニルメチルスルホニル パーフルオロオクタンスルホネートなど。
【0030】
本発明のレジスト組成物は、酸発生剤として、式(I)で示されるジフェニルアルキルスルホニウム塩を用いることを要件とするものであるが、この化合物とともに、他の酸発生剤を組み合わせて用いることもできる。併用される酸発生剤としては、例えば、式(I)以外のオニウム塩化合物、有機ハロゲン化合物、スルホン化合物、スルホネート化合物などがある。具体的には、次のような化合物を挙げることができる。
【0031】
ジフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、
【0032】
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム パーフルオロブタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート
トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート、
【0033】
2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
【0034】
1−ベンゾイル−1−フェニルメチル p−トルエンスルホネート(通称ベンゾイントシレート)、
2−ベンゾイル−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル p−トルエンスルホネート(通称α−メチロールベンゾイントシレート)、
1,2,3−ベンゼントリイル トリスメタンスルホネート、
2,6−ジニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
4−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、
【0035】
ジフェニル ジスルホン、
ジ−p−トリル ジスルホン、
ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
(ベンゾイル)(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
【0036】
N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフタルイミドなど。
【0037】
次に、本発明のレジスト組成物を構成する樹脂成分について説明する。本発明のレジスト組成物は、エキシマレーザーリソグラフィ、特に220nm以下の波長の光、例えばArFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィに適用することを主として意図したものであり、このような短波長の露光光源にさらすためには、芳香環を持たず、脂環式環を有する重合体を樹脂成分とするのが有利である。
【0038】
またこの樹脂は、酸に不安定な基を持つ重合単位を有する。化学増幅型ポジ型レジスト用の樹脂は一般に、それ自体ではアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用により一部の基が解裂し、解裂後はアルカリ可溶性となるものである。本発明における酸に不安定な基も、このように従来から知られている各種のものであることができる。酸に不安定な基として具体的には、カルボン酸の各種エステル、例えば、メチルエステル及びtert−ブチルエステルに代表されるアルキルエステル、メトキシメチルエステル、エトキシメチルエステル、1−エトキシエチルエステル、1−イソブトキシエチルエステル、1−イソプロポキシエチルエステル、1−エトキシプロピルエステル、1−(2−メトキシエトキシ)エチルエステル、1−(2−アセトキシエトキシ)エチルエステル、1−〔2−(1−アダマンチルオキシ)エトキシ〕エチルエステル、1−〔2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)エトキシ〕エチルエステル、テトラヒドロ−2−フリルエステル及びテトラヒドロ−2−ピラニルエステルのようなアセタール型エステル、イソボルニルエステル及び2−アルキル−2−アダマンチルのような脂環式エステルなどが挙げられる。このようなカルボン酸エステルを有する重合単位へ導くモノマーは、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステルのような(メタ)アクリル系のものでもよいし、ノルボルネンカルボン酸エステル、トリシクロデセンカルボン酸エステル、テトラシクロデセンカルボン酸エステルのように、カルボン酸エステル基が脂環式モノマーに結合したものでもよい。
【0039】
これらの酸に不安定な基を持つ重合単位のなかでも、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位を有する樹脂は、それを含むレジストの解像度の点で好ましい。この重合単位は、アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル又はメタクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルにおける(メタ)アクリル酸部分の二重結合が開いて形成されるものであり、具体的には下式(II)で表すことができる。
【0040】
【0041】
式中、R1 は水素又はメチルを表し、R2 はアルキルを表す。
【0042】
式(II)で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位は、脂環式環であるアダマンタン環の存在により、レジストの透過率を確保し、またドライエッチング耐性の向上に寄与する。さらにこの単位中の2−アルキル−2−アダマンチルは、酸の作用により解裂するので、この単位は、レジスト膜の露光後のアルカリ溶解性を高めるのに寄与する。式(II)中のR2 はアルキルであり、このアルキルは例えば、炭素数1〜8程度であることができ、通常は直鎖であるのが有利であるが、炭素数3以上の場合は分岐していてもよい。具体的なR2 としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルなどが挙げられる。なかでも、R2 がメチル又はエチルであるものは、レジストと基板との接着性や解像度の向上にとって好都合である。
【0043】
式(II)で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位に導くためのモノマーとして、具体的には例えば、アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルは通常、2−アルキル−2−アダマンタノール又はその金属塩とアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとの反応により製造できる。
【0044】
本発明で規定する樹脂は、上記のような酸に不安定な基を持つ重合単位のほかに、酸の作用で解裂する基を持たない他の重合単位を有することも、もちろん可能である。含有しうる他の重合単位としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸のような不飽和カルボン酸の重合単位、無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物の重合単位、ノルボルネンやトリシクロデセン、テトラシクロドデセン、ノルボルネンカルボン酸又はそのエステル、トリシクロデセンカルボン酸又はそのエステル、テトラシクロドデセンカルボン酸又はそのエステルのような重合性環状不飽和化合物の重合単位、(メタ)アクリロニトリルの重合単位、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルや(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンのような各種(メタ)アクリル酸エステル類の重合単位などを挙げることができる。
【0045】
特に、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位や、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位は、レジストの基板への接着性の点で、好ましく用いられる。ここでいう(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位とは、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルにおける(メタ)アクリル酸部分の二重結合が開いて形成される単位を意味し、また、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位とは、無置換の又はラクトン環にアルキルが置換したα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンにおける(メタ)アクリル酸部分の二重結合が開いて形成される単位を意味し、それぞれ下式(III) 及び(IV)で表すことができる。
【0046】
【0047】
式中、R3 及びR4 は互いに独立に水素又はメチルを表し、R5 、R6 及びR7 は互いに独立に、水素又はアルキルを表す。
【0048】
式(III) の単位に導くための(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルは市販されているが、1,3−ジブロモアダマンタンを加水分解してアダマンタン−1,3−ジオールとし、これを(メタ)アクリル酸又はそのハライドと反応させることにより、製造することもできる。また、式(IV)の単位に導くためのα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンは、ラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−ブロモ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸又はメタクリル酸を反応させるか、又はラクトン環がアルキルで置換されていてもよいα−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドを反応させることにより、製造できる。
【0049】
式(III) で示される(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位、及び式(IV)で示されるα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位は、いずれも極性が高く、それらのいずれかを樹脂中に存在させることにより、それを含むレジストの基板への接着性が向上する。また、これらの重合単位は、レジストの解像性の向上にも寄与する。さらに、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位は、レジストのドライエッチング耐性の向上にも寄与する。
【0050】
式(III) で示される(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位に導くためのモノマーは、アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル又はメタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルである。また、式(IV)中、R5 、R6 及びR7 はそれぞれ、水素又はアルキルであり、このアルキルは炭素数1〜6程度であることができ、炭素数3以上の場合は直鎖でも分岐していてもよい。R5 、R6 及びR7 で表されるアルキルの具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどが挙げられる。式(IV)で示されるα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位に導くためのモノマーとしては、例えば、α−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0051】
本発明で用いる樹脂は、パターニング露光用の放射線の種類や酸に不安定な基の種類などによっても変動するが、一般には、酸に不安定な基を持つ重合単位を30〜80モル%の範囲で含有するのが好ましい。そして、酸に不安定な基として特に、式(II)で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの重合単位を用いる場合は、この単位が樹脂全体のうち20モル%以上となるようにするのが有利である。また、酸に不安定な基を持つ重合単位に加えて、酸の作用で解裂しない他の重合単位、例えば、式(III) で示される(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位及び/又は式(IV)で示されるα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位を存在させる場合は、それらの合計が、樹脂全体のうち20〜70モル%の範囲となるようにするのが好ましい。
【0052】
そこで、式(II)で示される(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルの単位を含む酸に不安定な基を持つ重合単位とともに、式(III) で示される(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルの重合単位及び/又は式(IV)で示されるα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンの重合単位を有する共重合体とする場合は、酸に不安定な基を持つモノマーを30〜80モル%、特に式(II)の単位へ導くための(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルを20モル%以上、そして式(III) の単位へ導くための(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル及び/又は式(IV)の単位へ導くためのラクトン環にアルキルが置換していてもよいα−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを合計20〜70モル%含むモノマー混合物を共重合させるのが有利である。
【0053】
本発明のレジスト組成物を構成する樹脂は、以上説明したような、酸に不安定な基を持つ重合単位を有し、それ自身はアルカリに不溶又は難溶であるが、酸の作用でアルカリに可溶となる重合体を主体とするものであるが、その性能に悪影響を及ぼさない範囲で、他の重合体ないしは樹脂を少量含有していても差し支えない。
【0054】
また、一般に化学増幅型のポジ型レジスト組成物においては、塩基性化合物、特に塩基性含窒素有機化合物、例えばアミン類を、クェンチャーとして添加することにより、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良できることが知られており、本発明においても、このような塩基性化合物を配合するのが好ましい。クェンチャーに用いられる塩基性化合物の具体的な例としては、以下の各式で示されるようなものが挙げられる。
【0055】
【0056】
式中、R11、R12、R13、R14及びR15は互いに独立に、水素、水酸基で置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリール又はアルコキシを表し、Aはアルキレン、カルボニル又はイミノを表す。ここで、R11〜R15で表されるアルキル及びアルコキシは、炭素数1〜6程度であることができ、シクロアルキルは、炭素数5〜10程度であることができ、そしてアリールは、炭素数6〜10程度であることができる。また、Aで表されるアルキレンは、炭素数1〜6程度であることができ、直鎖でも分岐していてもよい。このような塩基性化合物のなかでも、下式(V)で示される2,6−ジアルキルピリジン化合物は、レジストの経時安定性を向上させるのに効果的である。
【0057】
【0058】
式中、R21及びR22は互いに独立に、炭素数1〜4のアルキルを表す。2,6−ジアルキルピリジン化合物の具体例としては、2,6−ルチジン、2−エチル−6−メチルピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジンなどが挙げられる。この2,6−ジアルキルピリジン化合物は、単独でクェンチャーとすることができるほか、所望により他の塩基性化合物と組み合わせて用いることもできる。
【0059】
本発明のレジスト組成物は、その全固形分量を基準に、樹脂を80〜99.9重量%程度、そして酸発生剤を0.1〜20重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。クェンチャーとしての塩基性化合物を用いる場合は、レジスト組成物の全固形分量を基準に、0.01〜1重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。さらに、この組成物は必要に応じて、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など、各種の添加物を少量含有することもできる。
【0060】
本発明のレジスト組成物は通常、上記の各成分が溶剤に溶解された状態でレジスト液とされ、シリコンウェハーなどの基体上に、スピンコーティングなどの常法に従って塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で一般に用いられている溶剤が使用しうる。例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0061】
基体上に塗布され、乾燥されたレジスト膜には、パターニングのための露光処理が施され、次いで脱保護基反応を促進するための加熱処理を行った後、アルカリ現像液で現像される。ここで用いるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であることができるが、一般には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液が用いられることが多い。
【0062】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミェーションクロマトグラフィーにより求めた値である。
【0063】
樹脂合成例1: 樹脂A1の合成
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル及びα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを、約5:2.5:2.5のモル比(20.0部:9.5部:7.3部)で仕込み、全モノマーに対して2重量倍のメチルイソブチルケトンを加えて溶液とした。そこに、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマー量に対して2モル%添加し、80℃で約8時間加熱した。その後、反応液を大量のヘプタンに注いで沈殿させる操作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が約 9,200の共重合体を得た。この共重合体は、次式で示される各単位を有するものであり、これを樹脂A1とする。
【0064】
【0065】
樹脂合成例2: 樹脂A2の合成
アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、ノルボルネン及び無水マレイン酸を、約4:3:3のモル比(20.0部:6.9部:7.2部)で仕込み、60部のテトラヒドロフランを加えて溶液とした。そこに、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを全モノマー量に対して3モル%添加し、65℃で約8時間加熱した。その後、反応液を大量のメタノールに注いで沈殿させる操作を3回行い、精製した。その結果、重量平均分子量が約 3,000の共重合体を得た。この共重合体は、次式で示される各単位を有するものであり、これを樹脂A2とする。
【0066】
【0067】
酸発生剤合成例1: ジフェニルメチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートの合成
四つ口フラスコにジフェニルスルフィド8.0部とアセトニトリル26.8部を仕込んでから、トリフルオロメタンスルホン酸メチル7.4部を仕込み、50℃で7時間攪拌した。反応液を16.4部まで濃縮し、その濃縮物にジエチルエーテル50部を加えて、析出した結晶を濾過した。この結晶をクロロホルム30部に溶解し、純水20部での洗浄を3回繰り返した後、クロロホルム層を濃縮し、ジエチルエーテル30部に滴下して、析出した結晶を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄して、目的物を得た。この化合物が次式で示されるジフェニルメチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネートであることを、 1H−NMR〔日本電子(株)製の“GX-270”〕で確認した。
【0068】
【0069】
1H−NMR(重ジメチルスルホキシド、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)
3.83 (s, 3H); 7.68-7.80 (m, 6H); 8.02-8.06 (m, 4H).
【0070】
酸発生剤合成例2: ジフェニルメチルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネートの合成
四つ口フラスコにジフェニルスルフィド5.6部とアセトニトリル16.8部を仕込んでから、沃化メチル4.3部を仕込み、20℃で16時間撹拌した。次いで、パーフルオロブタンスルホン酸銀12.2部をアセトニトリル30部に溶解した溶液を0.5時間で滴下した。20℃で72時間攪拌した後、析出した沃化銀を濾別し、この沃化銀をアセトニトリル30部で洗浄した。濾液と洗液を一緒にして15.2部まで濃縮し、その濃縮物をクロロホルム75部に溶解し、この溶液について純水40部での洗浄を5回繰り返した後、クロロホルム層を濃縮した。濃縮物を、酢酸エチル、さらにはエタノールを展開溶媒としてシリカゲルカラム精製した。エタノールによる流出層を濃縮することで、目的物を得た。この化合物が次式で示されるジフェニルメチルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネートであることを、 1H−NMRで確認した。
【0071】
【0072】
1H−NMR(重ジメチルスルホキシド、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)
3.83 (s, 3H); 7.68-7.80 (m, 6H); 8.03-8.07 (m, 4H).
【0073】
酸発生剤合成例3: ジフェニルメチルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネートの合成
四つ口フラスコにジフェニルスルフィド5.6部とアセトニトリル16.8部を仕込んでから、沃化メチル4.3部を仕込み、20℃で16時間撹拌した。次いで、パーフルオロオクタンスルホン酸銀18.2部をアセトニトリル32部に溶解した溶液を0.5時間で滴下した。20℃で72時間攪拌した後、析出した沃化銀を濾別し、この沃化銀をアセトニトリル30部で洗浄した。濾液と洗液を一緒にして20.2部まで濃縮し、その濃縮物をクロロホルム250部に溶解し、この溶液について純水100部での洗浄を6回繰り返した後、クロロホルム層を15.1部まで濃縮した。そこにアセトン4.5部を加えて溶解させ、この溶液をtert−ブチルメチルエーテル60部に5℃で滴下した。析出した結晶を濾過し、tert−ブチルメチルエーテル20部で洗浄して、目的物を得た。この化合物が次式で示されるジフェニルメチルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネートであることを、 1H−NMRで確認した。
【0074】
【0075】
1H−NMR(重クロロホルム、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)
3.71 (s, 3H); 7.60-7.72 (m, 6H); 7.90-7.95 (m, 4H).
【0076】
実施例1〜4並びに比較例1及び2
先の樹脂合成例で得られた樹脂A1及び樹脂A2、並びに以下に示す酸発生剤を用いてレジストを調製し、評価した例を示す。
【0077】
酸発生剤B1: ジフェニルメチルスルホニウム パーフルオロメタンスルホネート〔酸発生剤合成例1による生成物〕、
酸発生剤B2: ジフェニルメチルスルホニウム パーフルオロブタンスルホネート〔酸発生剤合成例2による生成物〕、
酸発生剤B3: ジフェニルメチルスルホニウム パーフルオロオクタンスルホネート〔酸発生剤合成例3による生成物〕、
酸発生剤BX: 4−メチルフェニルジフェニルスルホニウム パーフルオロメタンスルホネート〔みどり化学(株)製の“MDS-205”〕。
【0078】
以下に示す各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過してレジスト液を調製した。
【0079】
【0080】
Brewer社製の“DUV-30”を塗布し、215℃、60秒の条件でベークして厚さ1,600Åの有機反射防止膜を形成させたシリコンウェハーに、上記のレジスト液を乾燥後の膜厚が0.39μmとなるようにスピンコートした。レジスト液塗布後は、ダイレクトホットプレート上にて、表1の「PB」の欄に示した温度で60秒間プリベークした。こうしてレジスト膜を形成したウェハーに、ArFエキシマ露光機〔(株)ニコン製の“NSR ArF”、NA=0.55、σ=0.6〕を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて、表1の「PEB」の欄に示した温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、実効感度及び解像度を以下の方法で調べた。
【0081】
実効感度: 0.18μmのラインアンドスペースパターンが1:1となる最少露光量で表示した。
【0082】
解像度: 実効感度の露光量で分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法で表示した。
【0083】
また、石英ガラスウェハー上に、上記のレジスト液を塗布し、上記と同様の条件でプリベークを行った後の膜厚が0.39μmとなるようにレジスト膜を形成させ、このレジスト膜の193nmにおける透過率を分光光度計で測定した。
【0084】
【表1】
【0085】
表1の結果から明らかなように、同程度の透過率で比較すると、実施例のレジストは、比較例のものよりも解像度に優れており、また感度についても、比較例と同程度か又はより改良されている。
【0086】
実施例5〜8
これらの例では、経時安定性の試験を行った。実施例3の組成をベースに、以下に示す各成分を混合し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過してレジスト液を調製した。
【0087】
【0088】
それぞれのレジスト液を、23℃で20時間及び60℃で20時間の2種類の条件で保存し、60℃で保存したものはその後23℃に戻してから、実施例3と同様の評価を行った。なお、プリベーク温度及びポストエキスポジャーベーク温度も、実施例3と同じそれぞれ110℃及び115℃である。評価結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
表2の結果から明らかなように、実施例5の組成物(実施例3と同じ)を60℃で20時間保存した実施例6では、感度及び透過率が多少変化しているが、この組成物に2,6−ルチジンを添加した実施例7及び実施例8の組成物は、20℃で保存した場合(実施例7)と60℃で保存した場合(実施例8)とで、感度及び透過率の変化が見られず、2,6−ルチジンの添加により経時安定性が一層向上している。
【0091】
【発明の効果】
本発明によって、ある種の樹脂とともに特定の酸発生剤を用いたレジスト組成物は、特に220nm以下の波長の光、例えば、ArFエキシマレーザー光を用いた露光などにおいて、解像度が改良され、また感度も良好である。
Claims (6)
- 式(I)中のmが4〜8の整数である請求項1記載の組成物。
- 該重合体が芳香環を持たず、脂環式環を有する請求項1又は2記載の組成物。
- 該重合体が、酸に不安定な基を持つ重合単位のほかに、不飽和カルボン酸、脂肪族不飽和カルボン酸無水物、重合性環状不飽和化合物、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリル酸エステル類から選ばれ、酸の作用で解裂する基を持たないモノマーの重合単位を有する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
- さらに、アミン類をクェンチャーとして含有する請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
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