JP3899571B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
熱硬化性樹脂組成物 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3899571B2 JP3899571B2 JP00640297A JP640297A JP3899571B2 JP 3899571 B2 JP3899571 B2 JP 3899571B2 JP 00640297 A JP00640297 A JP 00640297A JP 640297 A JP640297 A JP 640297A JP 3899571 B2 JP3899571 B2 JP 3899571B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ring
- thermosetting resin
- resin
- dihydrobenzoxazine
- resin composition
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリプレグ、金属張積層板、封止材、配線基板等の製造原料として好適に用いられるジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の組成物、その硬化物、該熱硬化性樹脂を含有する複合成形材料並びにこれを用いた積層板及び配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、銅張積層板用樹脂に代表される電気、電子用熱硬化性樹脂材料には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が用いられているが、近年、電気、電子部品の高密度化、高信頼性化が更に要求され、安価でガラス転移温度が高く、低吸水率の樹脂組成物の開発が急務となっている。
【0003】
これまで用いられてきたフェノール樹脂は、ガラス転移温度、吸水率とも満足せず、高ガラス転移温度を示すエポキシ樹脂は吸水率が高く、吸水後の耐ハンダ性に十分でない。また、ポリイミド樹脂を用いた場合は、高ガラス転移温度を示し、吸水率も比較的低いが、高価なため広く用いられていない。
【0004】
また、特開昭49−47378号公報、特開昭61−78824号公報、特開平2−69567号公報、特開平4−227922号公報に記載されているジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂は、低吸水率で、耐熱性、機械的強度に優れた硬化物を与えることが知られているが、ガラス転移温度をより高くする変性方法はいまだ知られていない。
【0005】
しかし、電気、電子部品の高密度化、高信頼性化に伴い、高ガラス転移温度化、低吸水率化を達成することは、吸湿時の信頼性を高め、部品搭載後の配線基板の熱による変形を抑えるために、必要不可欠なことである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガラス転移温度が高く、吸水率が低く、難燃性に優れたジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物、該熱硬化性樹脂組成物を含有する複合成形材料並びにこれを用いた積層板及び配線基板に関する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂にイソシアヌル環を有するエポキシ樹脂を配合することにより、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の低い吸水率を維持したまま、イソシアヌル環を有するエポキシ樹脂がもつ高ガラス転移温度、難燃性に優れる等の性質を付与できること、また、難燃性を向上させるためにハロゲン化難燃剤を使用する場合には、その量を低減でき、環境上も利点があることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも1種のジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、イソシアヌル環を有するエポキシ樹脂及びジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進する作用のあるフェノール性水酸基を有する化合物を必須成分として含有し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とイソシアヌル環を有するエポキシ樹脂の合計量100重量部に対して、該エポキシ樹脂を3〜40重量部配合し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂及びジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進することができる化合物の合計量100重量部に対して、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進することができる化合物を3〜50重量部配合することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において用いられるジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂としては、ジヒドロベンゾオキサジン環を有し、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環重合反応により硬化する樹脂であれば特に限定されない。具体的には、例えば、下記反応式に示されるように、フェノール性水酸基を有する化合物、1級アミン及びホルムアルデヒドから合成することができる。
【0011】
【化1】
(式中のRはメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基又は少なくとも1つの炭素数1〜3のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基である。)
この樹脂は、米国特許第5152939号明細書に示されるように加熱により開環重合反応を起こし、揮発分を発生させることなくフェノール性水酸基を生成しながら優れた特性を有する架橋構造を形成する。またこの樹脂の特長としては、特開平7−188364号公報に示されているように、開環反応により架橋硬化するため、硬化物中にボイドが残留しにくい点、硬化物が低吸水率、比較的高いガラス転移温度、高強度を示し、難燃性に優れている点が挙げられる。
【0012】
この樹脂は、上記反応式に示されるように、フェノール性水酸基を有する化合物と1級アミンとの混合物を、ホルマリン等のホルムアルデヒド類中に添加して、70〜110℃、好ましくは、90〜100℃で、20〜120分反応させ、その後、120℃以下の温度で減圧乾燥することによって合成することができる。
【0013】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、フェノール変性キシレン樹脂(キシリレン変性フェノール樹脂)、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、ポリブタジエン変性フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、p,p′−イソプロピリデンビフェノール(ビスフェノールA)、テトラフルオロビスフェノールA、2,2−ビス[4−(4′−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスフェノール化合物、4,4′−ビフェノールなどのビフェノール化合物、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのトリスフェノール化合物、テトラフェノール化合物等が挙げられる。これらは特に限定するものではないが架橋点となるヒドロキシル基のオルト位が無置換であるものが硬化特性の点で望ましい。
【0014】
1級アミンとしては具体的にはメチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、アニシジンなどの置換アニリン等が挙げられる。脂肪族アミンであると、得られた熱硬化性樹脂は硬化は速いが耐熱性に劣る。アニリンのような芳香族アミンであると、得られた熱硬化性樹脂を硬化させた硬化物の耐熱性はよいが硬化が遅くなる。
【0015】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂のうちで、好ましくは、1分子中に下記式(A)で表される構造単位(A)及び下記式(B)で表される構造単位(B)を有し、各構造単位は直接に又は有機の基を介して結合しており、(A)/(B)のモル比が1/0.25〜1/9であり、1分子中の構造単位(A)の数をm、構造単位(B)の数をnとするとき、m≧1、n≧1かつ10≧m+n≧2である熱硬化性樹脂が用いられる。
【0016】
【化2】
(式中のRはメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基又は少なくとも1つの炭素数1〜3のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基であり、(A)及び(B)の芳香環の水素は(A)のヒドロキシル基のオルト位の一つを除き、炭素数1〜3のアルキル基若しくはアルコキシル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
m、nが前記の範囲内にあり、構造単位(A)、(B)間があらかじめ適切な鎖長の基を介して安定な結合によって結合されていると硬化物の特性が良好となる。
【0017】
構造単位(A)と構造単位(B)とは直接に又は有機の基を介して結合している。有機の基としてはアルキレン基、2価の芳香族基が挙げられる。アルキレン基の例としては、炭素数5以上のアルキレン基、−CR′H−(式中、R′は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基又は置換フェニル基である。)で表されるアルキリデン基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としてはメチル基、メトキシ基、カルボキシル基が挙げられる。また、2価の芳香族基としてはフェニレン基、キシリレン基、トリレン基が挙げられる。上記の有機の基は各構造単位の間に2つ以上挿入されていてもよい。
【0018】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂は、(A)/(B)のモル比が好ましくは、1/0.25〜1/9、更に好ましくは1/0.67〜1/9である。この範囲外であると、硬化性、機械強度、耐熱性が低下することがある。
【0019】
本発明において用いられるイソシアヌル環を有するエポキシ樹脂は分子中に2以上のエポキシ基とイソシアヌル環を有するものであれば特に限定されない。例えば、イソシアヌル酸の水素をグリシジル基で置換したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0020】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とイソシアヌル環を有するエポキシ樹脂の配合割合は、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とイソシアヌル環を有するエポキシ樹脂の合計量100重量部に対して、該エポキシ樹脂を3〜40重量部配合することが好ましい。3重量部未満ではガラス転移温度向上の効果が小さく、40重量部を超えると硬化物の架橋密度が低下するためにガラス転移温度の向上が望めなくなる。
【0021】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進することができる化合物並びにエポキシ基とジヒドロベンゾオキサジン環が開環して生じた水酸基の反応を促進することができる、従来から知られているエポキシ樹脂用触媒を配合することができる。
【0022】
ジヒドロベンゾオキサジン環の開環を促進することができる化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物、1級アミンを挙げることができる。フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、キシレン変性フェノール樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂が挙げられる。
【0023】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進することができる化合物の配合割合は、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂と該化合物の合計量100重量部に対して、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進することができる化合物を3〜50重量部配合することが好ましい。3重量部未満では開環反応の促進が顕著ではなく、50重量部を超えると、架橋密度の低下によりガラス転移温度の低下及びジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の特長である吸水性等の特性を損ねることになる。
【0024】
また、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の硬化物は、従来の熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂、フェノール樹脂の硬化物に比べ、吸水率が低いという特長がある。この現象は、フェノール性水酸基が窒素原子との相互作用により固定化されるためと考えられる。このため、硬化物中のフェノール性水酸基と熱硬化性樹脂のジヒドロベンゾオキサジン環に由来する窒素原子のモル比(フェノール性水酸基/窒素原子)、OH/N比を1.5以下、好ましくは0.3〜1.5とすることが望ましい。
【0025】
エポキシ樹脂用触媒としては、ベンジルメチルアミンのようなアミン化合物、イミダゾール及びその誘導体、リン系化合物、三フッ化ホウ素アミンコンプレックス、ジシアンジアミドを挙げることができる。これらは2種以上併用して使用することができる。
【0026】
エポキシ樹脂用触媒の配合割合はエポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部とすることが好ましい。
【0027】
ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進することができる化合物とエポキシ樹脂用触媒とを併用することもできる。
【0028】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じてエポキシ樹脂あるいはハロゲン化エポキシ樹脂を配合することができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ポリフェノール系エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられ、ハロゲン化エポキシ樹脂としては、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノールAあるいはテトラブロモビスフェノールF等のハロゲン化ビスフェノールFのグリシジルエーテルや臭素化ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは2種以上併用して使用することができる。
【0029】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、充填剤として通常の無機充填剤、有機充填剤、繊維強化材等の強化材を配合することができる。これらは単独であるいは2種以上混合して用いられる。
【0030】
有機充填剤としては、綿フロック、α−セルロース、パルプ、木粉等が挙げられる。無機充填剤としては、ジルコン粉末、石英ガラス粉末、タルク粉末、炭酸カルシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末、マグネシア粉末、ケイ酸カルシウム粉末、シリカ粉、ゼオライト、クレイ、マイカ等が挙げられる。また、繊維強化材としては、ステープルファイバー、糸、綿布、ガラスクロス、ガラス不織布、ガラス繊維、炭素繊維、石英繊維、有機繊維不織布、紙等が挙げられる。これらの強化剤の配合割合は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、好ましくは10〜300重量部である。
【0031】
また、上記組成物には必要に応じて、離型剤、着色剤等を添加することもできる。
【0032】
無機充填材と繊維強化材を必須成分とする複合成形材料は難燃性に優れている。
【0033】
繊維強化材がガラスクロス、ガラス不織布、有機繊維クロス、有機繊維不織布又は紙である上記熱硬化性樹脂組成物からなる複合成形材料を積層し、加熱加工して得られる積層板、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物をマトリックスとし、無機充填材と繊維強化材を含有する基板の内部又は表面に配線パターンを設けた配線基板も難燃性に優れている。
【0034】
ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂組成物の混合に関しては、方法、順序等特に限定されない。
【0035】
また、これらの樹脂組成物を基材に含浸させる方法についても、特に限定されないが、通常は、これら樹脂組成物を有機溶剤を用いることにより溶液化し、次いで基材に塗工、乾燥して得られるプリプレグを重ね合わせ、その両側に銅箔を重ね、プレスすることにより、銅張積層板を製造することができる。
【0036】
このようにして製造された銅張積層板は、高いガラス転移温度、低吸水率を示し、吸水時、高温時の信頼性を大幅に改善することが可能である。また、熱膨張係数が小さいため部品搭載時の基板のそりが極めて小さく、BGA等の実装にも適している。
【0037】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を加熱ロール等により混練し、然る後に180〜220℃、成形圧20〜70kgf/cm2で3〜10分間圧縮成形又は移送成形することにより硬化し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂の特性を生かした機械特性が良好で低吸湿性の硬化物を得ることができる。
【0038】
また、この硬化物を更に180〜220℃で5〜120分間後硬化させることにより、より良好な特性を有する硬化物が得られる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化時に揮発性副生成物の発生がないため、臭気等がなく作業環境の悪化を招くことがない。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
次に示す方法により4種類のジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を合成した。
[樹脂A]
(1)フェノールノボラック樹脂の合成
フェノール1.9kg、ホルマリン(37%水溶液)1.0kg、しゅう酸4gを5リットルフラスコに仕込み、還流温度で6時間反応させた。引き続き、内部を6666.1Pa以下に減圧して未反応のフェノール及び水を除去した。得られた樹脂は軟化点84℃(環球法)、3〜多核体/2核体比82/18(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるピーク面積比)であった。
【0041】
(2)ジヒドロベンゾオキサジン環の導入
上記により合成したフェノールノボラック樹脂1.70kg(ヒドロキシル基16mol相当)をアニリン0.93kg(10mol相当)と混合し80℃で5時間撹拌し、均一な混合溶液を調製した。5リットルフラスコ中に、ホルマリン1.62kgを仕込み90℃に加熱し、ここへフェノールノボラック樹脂/アニリン混合溶液を30分間かけて少しずつ添加した。添加終了後30分間、還流温度に保ち、然る後に100℃で2時間6666.1Pa以下に減圧して縮合水を除去し、反応し得るヒドロキシル基の71%がジヒドロベンゾオキサジン化された熱硬化性樹脂を得た。
【0042】
上記(1)により合成したフェノールノボラック樹脂1.70kg(ヒドロキシル基16mol相当)をアニリン1.4kg(16mol相当)、ホルマリン(37%水溶液)2.59kgと同様に反応させ、反応し得るヒドロキシル基の全てにジヒドロベンゾオキサジン環が導入された熱硬化性樹脂を合成した。過剰のアニリンやホルマリンは乾燥中に除かれ、この熱硬化性樹脂の収量は3.34kgであった。これは、フェノールノボラック樹脂のヒドロキシル基のうち14molが反応し、ジヒドロベンゾオキサジン化したことを示している。
【0043】
これから、先に得られた熱硬化性樹脂は、反応し得るヒドロキシル基の14molのうち10mol(=71%)がジヒドロベンゾオキサジン化したものであると推定される。
[樹脂B]
(1)フェノールノボラック樹脂の合成
フェノール1.90kg、ホルマリン(37%水溶液)1.15kg、しゅう酸4gを5リットルフラスコに仕込み、実施例1と同様にしてフェノールノボラック樹脂を合成した。得られた樹脂は軟化点89℃(環球法)、3〜多核体/2核体比89/11(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるピーク面積比)であった。
【0044】
(2)ジヒドロベンゾオキサジン環の導入
以下、実施例1と同様にしてジヒドロベンゾオキサジン環を導入した。得られた熱硬化性樹脂はフェノールノボラック樹脂の反応し得るヒドロキシル基の75%にジヒドロベンゾオキサジン環が導入されたものであった。
[樹脂C]
[樹脂A]の合成の(2)において、フェノールノボラック樹脂に代えてキシリレン変性フェノール樹脂(三井東圧化学(株)製商品名ミレックスXL−225−3L)1.70kg(ヒドロキシル基10mol相当)、アニリン0.52kg(5.6mol)、ホルマリン0.91kgを用いた他は同様にして、ジヒドロベンゾオキサジン環が導入された熱硬化性樹脂を得た。
【0045】
キシリレン変性フェノール樹脂について、反応し得るヒドロキシル基量は、次の通りにして算出した。
【0046】
キシリレン変性フェノール樹脂1.70kg(ヒドロキシル基10mol相当)、アニリン0.93kg(10mol相当)、ホルマリン1.62kgの配合でジヒドロベンゾオキサジン環が導入された熱硬化性樹脂2.62kgを得た。過剰のアニリンやホルマリンは乾燥中に除かれた。この収量から反応し得るヒドロキシル基量は7.9molと求められる。これから、得られた熱硬化性樹脂は、反応し得るヒドロキシル基の7.9molのうち5.6mol(=71%)がジヒドロベンゾオキサジン化したものであると推定される。
[樹脂D]
[樹脂A]の合成の(2)において、アニリンに代えて、アニリン0.70kgとトルイジン0.27kgの混合物を用いた他は同様にして、ジヒドロベンゾオキサジン環が導入された熱硬化性樹脂を得た。得られた熱硬化性樹脂はフェノールノボラック樹脂の反応し得るヒドロキシル基の71%にジヒドロベンゾオキサジン環が導入されたものであった。
【0047】
実施例1〜5、比較例1〜5(但し、実施例5は参考例である。)
表1に示す配合(数字は重量部を示す)の樹脂組成物を180℃で30分硬化させて得られた硬化物を評価した。
【0048】
【表1】
HP−850N:日立化成工業(株)製、フェノールノボラック樹脂
TEPIC:日産化学工業(株)製、イソシアヌル環含有エポキシ樹脂、エポキシ当量100
【0049】
【表2】
ガラス転移温度は示差走査熱量計を用いて測定した。吸水率は、PCT10時間処理後の値を測定した。
【0050】
実施例6〜10、比較例6〜10(但し、実施例10は参考例である。)
表1の実施例1〜5、比較例1〜5の配合の樹脂組成物にブロム化エポキシ樹脂(東都化成(株)製YDB−400T)20重量部を加え、メチルエチルケトンを溶剤として用い、65重量%溶液のワニスとした。このワニスをガラスクロスに塗工した。塗工条件は、塗工温度、時間を次の条件、すなわち、140℃で1.5分、170℃で2分、150℃で1分で行った。得られた塗工布8枚の両側に銅箔を配置し、圧力30kg/cm2で、温度を室温から185℃まで30分かけて上昇させ、185℃で30分、加熱加圧積層を行い、銅張積層板を得た。
【0051】
得られた銅張積層板は、プレッシャークッカーテスト(PCT)法により10時間吸水処理を行い、その後、はんだ槽に浸漬してふくれが発生する時間を測定し、耐湿耐熱性を評価した。また。ガラス転移温度をTMAにより測定した。吸水率はPCT3時間処理後の値を測定した。測定結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
また、実施例1と比較例1の樹脂組成物にハロゲン化エポキシ樹脂(東都化成(株)製YDB−400T)の部数を変えて配合し、UL燃焼試験におけるV−0達成に必要なハロゲン化エポキシ樹脂量を測定した。
【0053】
この結果、比較例1では最低14重量部必要であったが、イソシアヌル環を有するエポキシ樹脂を使用した実施例1の樹脂組成物では、最低10重量部の添加でUL試験における難燃性V−0を達成することができた。
【0054】
【発明の効果】
本発明のジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物、複合成形材料、積層板及び配線基板は、高いガラス転移温度と優れた難燃性を有しており、また、良好な機械特性、低吸湿性を備えており、電気、電子用途として用いる場合、高い信頼性を確保することができる。
Claims (6)
- 少なくとも1種のジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂、イソシアヌル環を有するエポキシ樹脂及びジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進する作用のあるフェノール性水酸基を有する化合物を必須成分として含有し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂とイソシアヌル環を有するエポキシ樹脂の合計量100重量部に対して、該エポキシ樹脂を3〜40重量部配合し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂及びジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進することができる化合物の合計量100重量部に対して、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応を促進することができる化合物を3〜50重量部配合することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
- 硬化物中のフェノール性水酸基と熱硬化性樹脂のジヒドロベンゾオキサジン環に由来する窒素原子のモル比(フェノール性水酸基/窒素原子)が1.5以下である請求項2記載の硬化物。
- 請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物と無機充填材と繊維強化材を必須成分として含有することを特徴とする複合成形材料。
- 繊維強化材がガラスクロス、ガラス不織布、有機繊維クロス、有機繊維不織布又は紙である請求項4記載の複合成形材料を積層し、加熱加工して得られる積層板。
- 請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物をマトリックスとし、無機充填剤と繊維強化材を含有する基板の内部又は表面に配線パターンを設けた配線基板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00640297A JP3899571B2 (ja) | 1997-01-17 | 1997-01-17 | 熱硬化性樹脂組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00640297A JP3899571B2 (ja) | 1997-01-17 | 1997-01-17 | 熱硬化性樹脂組成物 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10204255A JPH10204255A (ja) | 1998-08-04 |
JP3899571B2 true JP3899571B2 (ja) | 2007-03-28 |
Family
ID=11637385
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP00640297A Expired - Fee Related JP3899571B2 (ja) | 1997-01-17 | 1997-01-17 | 熱硬化性樹脂組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3899571B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6207786B1 (en) * | 1998-11-10 | 2001-03-27 | Edison Polymer Innovation Corporation | Ternary systems of benzoxazine, epoxy, and phenolic resins |
JP4538873B2 (ja) * | 1999-10-28 | 2010-09-08 | 日立化成工業株式会社 | 熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、電気配線板用積層板 |
EP1149867B1 (en) | 2000-04-27 | 2010-06-16 | JSR Corporation | Crosslinked rubber particles and rubber compositions |
JP5307041B2 (ja) * | 2010-01-15 | 2013-10-02 | 日立化成株式会社 | 熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、電気配線板用積層板 |
-
1997
- 1997-01-17 JP JP00640297A patent/JP3899571B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10204255A (ja) | 1998-08-04 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5499544B2 (ja) | 熱硬化性絶縁樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ、樹脂付フィルム、積層板、及び多層プリント配線板 | |
WO2007142140A1 (ja) | 酸性置換基と不飽和マレイミド基を有する硬化剤の製造法並びに熱硬化性樹脂組成物、プリプレグ及び積層板 | |
JP2003286320A (ja) | アリル基含有熱硬化性樹脂及び硬化物 | |
JP2003064180A (ja) | ジヒドロベンゾキサジン環構造を有する硬化性樹脂及び耐熱性硬化樹脂 | |
JPH04227922A (ja) | 硬化して難燃性及び耐熱性のポリマー樹脂を形成し得る樹脂、その製造方法及び使用 | |
JPH10259248A (ja) | 熱硬化性組成物及びその硬化物 | |
JP3371916B2 (ja) | エポキシ樹脂組成物 | |
JP3899571B2 (ja) | 熱硬化性樹脂組成物 | |
JP3664124B2 (ja) | 難燃性樹脂組成物、それを用いたプリプレグ、積層板、金属張積層板、印刷配線板及び多層印刷配線板 | |
JP4784116B2 (ja) | シアノ基含有熱硬化性ベンゾオキサジン樹脂、熱硬化性樹脂組成物及びその用途 | |
JP4171084B2 (ja) | 熱硬化性樹脂組成物 | |
JP3965786B2 (ja) | 熱硬化性樹脂組成物及びプリプレグ、プリント配線板用積層板 | |
JPH10251380A (ja) | 熱硬化性樹脂組成物 | |
JP3724047B2 (ja) | プリント配線板用積層板 | |
JPH11158352A (ja) | エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂プリプレグ及びエポキシ樹脂積層板 | |
JP2004217941A (ja) | 熱硬化性組成物及びその硬化物 | |
JP2009120696A (ja) | プリプレグ及び金属張り積層板 | |
JPH11158349A (ja) | 熱硬化性樹脂組成物および該組成物を用いた成形品 | |
JP2000017146A (ja) | 熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物 | |
JPH111604A (ja) | 熱硬化性樹脂組成物 | |
JP2004189970A (ja) | 難燃性樹脂組成物及びプリント配線板用プリプレグ及び積層板 | |
JP4055049B2 (ja) | 非ハロゲン系プリント配線板用プリプレグ及びその用途 | |
RU2756360C1 (ru) | Антипирен-катализатор для получения полимерных материалов на основе полибензоксазинов, композиции с его использованием | |
JP7061944B2 (ja) | ワニスおよびその製造方法 | |
JP2006045546A (ja) | 熱硬化性樹脂組成物、ホウ酸変性トリアジン構造含有ノボラック樹脂、およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040115 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050829 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060606 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060803 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060829 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061030 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20061205 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20061218 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100112 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110112 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110112 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120112 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130112 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130112 Year of fee payment: 6 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140112 Year of fee payment: 7 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |