JP3899555B2 - 高純度鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は純鉄等の不純物の含有量が少ない高純度鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉法と転炉法を組み合わせた銑鋼一貫製造工程を用いて高純度鋼を製造する場合は、炭素、珪素、マンガン、燐、硫黄、酸素、アルミニウム等の不純物を各工程でできるだけ低減する必要がある。これらの不純物元素のうち炭素、珪素、マンガン、燐、硫黄は高炉での鉄鉱石の還元過程において主として混入し、酸素及びアルミニウムは転炉での酸素吹錬および脱酸過程において混入する。このうち珪素、マンガン、燐は、溶銑での脱燐処理と転炉精錬とにより容易に目標値以下にすることができ、また、酸素も脱酸剤であるアルミニウムを添加することで目標の範囲まで低減することが可能である。一方、炭素および硫黄は、転炉精錬後に、更に炉外精錬法などの二次精錬で除去されることが一般的である。
【0003】
転炉精錬後の二次精錬において極低硫・極低炭素鋼を溶製する場合に、脱硫反応は還元反応であり、又、脱炭反応は酸化反応であるため、同時に脱硫反応と脱炭反応を進行させることは不可能である。よって、極低硫・極低炭素鋼の製造方法は、例えば、特開平5−331524号公報に開示されているように、転炉にて脱酸剤を添加せずに出鋼し、脱ガス設備にて溶鋼中の酸素と炭素を反応させ脱炭を行い、ついで溶鋼を脱酸剤を添加することにより脱酸して溶鋼中の溶解酸素を数ppm以下として、その後、還元状態で脱硫を行う方法が一般的である。
【0004】
さらに、上記の特開平5−331524号公報の方法では、取鍋内の脱硫剤と溶鋼をガスインジェクションによって撹拌して脱硫する場合に、脱硫処理中の炭素のピックアップを防止するため、脱炭処理前にスラグ−メタル界面を強撹拌し、脱硫剤となるスラグ中の炭素分をあらかじめ分解または除去しておくことがなされている。
【0005】
また、最近では特開昭61−130413号公報等にはRH脱ガス工程に脱硫機能を付加する技術が開示されている。この技術によれば、RH脱ガス工程にて脱炭、脱酸、脱硫の全ての工程を行い、極低硫・極低炭素鋼を製造することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の方法では極低炭素と極低硫黄は達成されるが、脱硫の前に脱酸剤であるアルミニウムの添加が必須であり、無視できない量のアルミニウムが溶鋼中に残存してしまうので、純鉄等の極低硫・極低炭素・低アルミニウムの高純度鋼には適用することができない。
【0007】
また、例えば脱硫後に溶鋼中に酸素を吹き込み、酸素によってアルミニウム等の脱酸用元素を燃焼させて除去する方法をとった場合に、これら元素の酸化物が介在物として鋼中に残留して品質上有害である。また、酸素を添加することにより、取鍋内の脱硫用スラグからの復硫がおこるので、酸素添加前に脱硫用スラグを取鍋から除滓することが必要となり、プロセスが煩雑になる。
【0008】
本発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、精錬プロセスを煩雑化することなく、酸可溶性アルミニウム量が少ない極低硫・極低炭素・低アルミニウムの高純度鋼を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る高純度鋼の製造方法は、転炉出鋼後の溶鋼をRH真空脱ガス槽内で脱酸処理後、引き続き脱硫処理を行う工程において、前記溶鋼を前記RH真空脱ガス槽内に還流させて脱炭処理し、次いでアルミニウム脱酸することにより脱硫前の鋼中の酸可溶性アルミニウム[sol.Al]濃度を0.050質量%以上から0.10質量%以下までの範囲に調整したのち、脱硫前の鋼中の酸可溶性アルミニウム量を[質量%sol.Alin]とした場合に、溶鋼1トン当たりのCaF2 純分で{3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin])}kg以上に相当するCaF2 を含む脱硫剤を前記溶鋼に添加して脱硫後の鋼中の酸可溶性アルミニウム[sol.Al]濃度を0.010質量%以下にすることを特徴とする高純度鋼の製造方法。
【0010】
脱硫前における鋼中の酸可溶性アルミニウム[sol.Al]濃度を0.050質量%以上に規定する理由は、脱硫反応が下式(1)の反応により進行するので、脱硫反応前[sol.Al]を確保し、鋼中の溶解酸素[O]を低減して右辺への反応の駆動力を高めるためである。
【0011】
一方、[sol.Al]を0.20質量%以下に規定する理由は、これ以上の量を添加したとしても、[sol.Al]による鋼中の溶解酸素の低減化効果は飽和してしまうので、アルミニウム及びCaF2 の添加量が増加すること、更にはRH脱ガス設備での精錬時間が延長され、製造コストが増加するためである。
【0012】
CaO+[S]=CaS+[O] …(1)
この時、RH脱ガス装置での減圧下での処理であるため、鋼中のアルミニウムは脱硫剤に含まれるCaF2 と反応し、弗素化合物(AlF3 )となって蒸発して、脱アルミニウムが脱硫と共に進行する。
【0013】
この際に、脱硫開始前の[sol.Alin]に対して(3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]))kg/トン以上のCaF2 純分量を吹き込めば、脱硫後の鋼中の[sol.Al]を0.010質量%以下まで脱アルミニウムすることが可能であり、低アルミニウム含有量の鋼種にも適用できることを見いだした。これは以下の理由による。
【0014】
図4は、横軸に[sol.Al](質量%)をとり、縦軸に[sol.Al]の減少速度(×10-3)をとって、1分間にCaF2 純分当たりで20kgを250トンの溶鋼に添加した時の、溶鋼中の[sol.Al]濃度と[sol.Al]の減少速度を調査した結果を示すグラフ図である。この結果より、溶鋼の脱アルミニウム速度は下式(2)で表わせることが判明した。
【0015】
d[sol.Al]/dt=−0.1×[sol.Al] …(2)
ここで、[sol.Al]が減少して、脱硫前の鋼中の[sol.Alin]から0.010質量%になるまでの時間(t)は、上式(2)を積分して下式(3)のように得られる。
【0016】
t=46.1+10×ln([質量%sol.Alin])) …(3)
この時のCaF2 純分当たりの添加量は0.08kg/トンであるので、溶鋼中の[sol.Al]が0.010質量%以下となるに必要なCaF2 純分の添加量は下式(4)によって求まる。
【0017】
CaF2 の必要量(kg/トン)
=0.08×t
=3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]) …(4)
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。高炉出銑後、溶銑予備処理で脱硫、脱燐処理した溶銑を用いて転炉にて精錬し、未脱酸状態で取鍋2に出鋼後の溶鋼3を、図1に示すようなRH脱ガス設備1にて、真空槽4の内部を排気装置にて排気しつつ、上昇側浸漬管10から環流用Arガスを導入管9を介して導入して、溶鋼3を真空槽4内に環流して真空脱炭を行い、溶鋼の炭素量を15ppmまで低下させた。次いで、アルミニウムを合金投入孔8より溶鋼3に添加して、溶鋼の[sol.Al]が0.050質量%以上で0.10質量%以下の範囲となるように脱酸した。
【0019】
その後、取鍋底部に設置した粉体吹き込みノズル6より上昇側浸漬管10内にArガスをキャリアガスとして、CaO−CaF2 系の脱硫剤を脱硫前の鋼中[sol.Alin]に対して、CaF2 純分で(3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]))kg/トン以上吹き込み、脱硫と脱アルミニウムを行った。その後、この溶鋼を連続鋳造設備等で鋳造し鋳片を得た。
【0020】
この際に、脱炭中に真空槽4内に酸素ガス、鉄鉱石等の酸素含有物質を添加して、脱炭反応の酸素源とすることも可能であり、また、脱硫剤を上昇側浸漬管10の側壁からキャリアガスと共に添加することや真空槽上部からランスノズル等を通して吹き付けるなど種々の方法が可能である。
【0021】
実施例として、転炉から出鋼された250トン未脱酸溶鋼を、RH脱ガス設備にて真空脱炭し、その後アルミニウムを添加して脱酸し、更に、粉体の脱硫剤を取鍋底よりキャリアガスとしてアルゴンガスインジェクションにて脱硫を行い、その後連続鋳造機にて鋳造した。その条件及び結果を以下に示す。
【0022】
使用したCaO−CaF2 系の脱硫剤のCaF2 含有量は20〜60質量%である。溶鋼の成分分析試料は、RH脱ガス設備でのアルミニウム脱酸後であって、脱硫処理前の時点と、RH脱ガス設備での精錬終了時点とで取鍋から、又、連続鋳造におけるタンディッシュ内から採取し、炭素濃度、硫黄濃度、[sol.Al]を分析した。最終成分値はタンディッシュ内の試料で判断した。
【0023】
脱硫処理前の時点の[sol.Al]を[sol.Alin]として、(3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]))を算出し、算出値以上のCaF2純分となるように、CaO−CaF2 系の脱硫剤を吹き込んだ。
【0024】
一方、比較例として、脱硫処理前の[sol.Alin]が0.050質量%以下、あるいは脱硫剤のCaF2 純分が、(3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]))kg/トン以下の場合のテストも行った。
【0025】
これらのテスト結果を表1に示す。表中にて試料No.1〜10は実施例を、試料No.11〜20は脱硫処理前の[sol.Alin]が0.050質量%以下の比較例を、試料No.21〜30は脱硫剤のCaF2 純分の吹き込み量が(3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]))kg/トン以下の比較例をそれぞれ示す。
【0026】
その結果、実施例のNo.1〜10ではいずれの場合も、タンディッシュ内成分値で、炭素濃度が20ppm以下、硫黄濃度が10ppm以下、[sol.Al]が0.010質量%以下が安定的に得られた。これに対して比較例のNo.11〜20では脱硫前の[sol.Al]が低すぎ、硫黄濃度の10ppm以下が得られなかった。また、比較例のNo.21〜30ではCaF2 量が足りず、[sol.Al]の0.010質量%以下が得られなかった。
【0027】
図2は、上記の全実施例、比較例について、横軸に脱硫前の[sol.Alin]をとり、縦軸に吹き込みCaF2 量をとったグラフ図である。図中にて黒丸はタンディッシュ内の成分値で[sol.Al]が0.010質量%以下に低下したものに相当し、白丸は0.010質量%以下には低下しなかったものに相当する。図中の曲線Aは式(3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]))をかきこんだものである。テストのプロット位置が曲線Aより上であれば、タンディッシュ内の成分値で[sol.Al]は0.010質量%以下まで除去できることが判明した。
【0028】
図3は、上記の全実施例、全比較例について、横軸にCaF2 の必要吹き込み量である(3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]))と実吹き込み量との差分をとり、縦軸にタンディッシュ内での[sol.Al]をとったグラフ図である。必要吹き込み量以下では、[sol.Al]の0.010質量%以下が得られなかった。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、所定の炭素レベルまで脱炭後、アルミニウムで脱酸し、その後上昇側浸漬管内にCaF2 を含む脱硫剤を[sol.Alin]に対して(3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin]))kg/トン以上吹き込むことにより、脱硫を促進しつつ、鋼中の[sol.Al]をAlF3 として除去することができるよう構成したので、その結果、[sol.Al]が0.010質量%以下の極低硫・極低炭素かつ低アルミニウムの高純度鋼を得ることができる。
【0030】
【表1】
Figure 0003899555

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施したRH脱ガス装置の概略図である。
【図2】 本発明の効果を確認するためのテスト結果の一例で、[sol.Al]≦0.010質量%が得られたものと得られなかったものの、脱硫前の[sol.Al]とCaF2 純分原単位との相関の差を示したグラフ図である。
【図3】本発明の効果を確認するためのテスト結果の一例で、必要CaF2 量と実吹き込み量の差分と最終[sol.Al]値との相関関係である。
【図4】1分間にCaF2 純分当たり20kgを含有する脱硫剤を250トンの溶鋼に添加した時の、溶鋼中の[sol.Al]と[sol.Al]の減少速度の関係を示す図である。
【符号の説明】
2…取鍋、3…溶鋼、4…真空脱ガス槽、
5…脱硫剤、6…吹込ノズル、7…スラグ、8…合金投入孔、9…Arガス導入管、10,11…浸漬管、13…排気通路。

Claims (1)

  1. 転炉出鋼後の溶鋼をRH真空脱ガス槽内で脱酸処理後、引き続き脱硫処理を行う工程において、前記溶鋼を前記RH真空脱ガス槽内に還流させて脱炭処理し、次いでアルミニウム脱酸することにより脱硫前の鋼中の酸可溶性アルミニウム[sol.Al]濃度を0.050質量%以上から0.10質量%以下までの範囲に調整したのち、脱硫前の鋼中の酸可溶性アルミニウム量を[質量%sol.Alin]とした場合に、溶鋼1トン当たりのCaF2 純分で{3.7+0.8×ln([質量%sol.Alin])}kg以上に相当するCaF2 を含む脱硫剤を前記溶鋼に添加して脱硫後の鋼中の酸可溶性アルミニウム[sol.Al]濃度を0.010質量%以下にすることを特徴とする高純度鋼の製造方法。
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