JP3899044B2 - アクティブ消音システムを備えた防音壁 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、防音壁の頂部に、アクティブ消音システム、即ちアクティブ・ノイズ・コントロール(ANCシステム)を備えた防音壁の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
近年、防音壁の頂部に、アクティブ消音システムを備えた防音壁が種々開示されている。例えば、
【0003】
(i)特許文献1には、防音壁の支柱の上端側面に、エンクロージャに格納されたスピーカ及びマイクロフォン並びに演算部から成る能動遮音ユニットが溶接等の手段で設置された防音壁が開示されている。
【0004】
(ii)特許文献2及び特許文献3には、防音壁の頂部に、複数個のアクティブ減音(消音)装置が防音壁の長手方向に連続的に設置された防音壁が開示されている。具体的には、前記アクティブ減音装置は、そのケーシング内に複数個のアクティブ減音セルが長手方向に並列に配置されていると共に、吸音材が充填されている。前記アクティブ減音セルと吸音材の上面が耐候性シートとパンチングメタルカバーで覆われ保護されている。
特に、特許文献2に開示された防音壁は、上記アクティブ減音装置がユニット化され、その下部に形成された嵌合部が防音壁の頂部に嵌め込まれて支持された構成とされている。
【0005】
(iii)防音装置の取付構造の技術としては、以下の技術が開示されている。
特許文献4及び特許文献5には、防音壁の頂部にレール部材(横架材)が設置されており、そのレール部材に沿って移動可能な固定部材に防音装置を設置する防音装置の取付構造が開示されている。
【0006】
(iv)防音装置を保護する技術としては、以下の技術が開示されている。
特許文献6には、多数の通孔が全面に設けられた複数枚の無機質板状体を相互に孔位置をずらして積層し、吸音材の表面を覆うように配置することにより、該吸音材を保護する技術が開示されている。
【0007】
(v)特許文献7には、ケーシング内にスピーカを収納すると共に、マイクロフォンの前面を覆う薄膜を配置することにより、アクティブ消音システムのマイクロフォンとスピーカを保護する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−172925号公報
【特許文献2】
特開2002−356816号公報
【特許文献3】
特開2002−356817号公報
【特許文献4】
特開2000−110119号公報
【特許文献5】
特開2000−144650号公報
【特許文献6】
特開平10−245908号公報
【特許文献7】
特開平9−34471号公報
【0009】
【本発明が解決しようとする課題】
上記(i)の防音壁は、能動遮音ユニットを溶接等の手段で設置するので、設置作業が煩雑である。また、電源装置からのケーブルが外部に露出して意匠性が良好でない。しかも、スピーカやマイクロフォンが保護されていないので、太陽光や雨風並びにいたずら等によって破損、劣化する可能性が大きい。
【0010】
上記(ii)の特許文献2の防音壁は、アクティブ減音装置の下部に嵌合部が形成され、その嵌合部を防音壁の頂部に嵌め込んで支持した構成であることを注目できる。また、電源装置からのケーブルは、特許文献2の図4に示すようにアクティブ減音装置の内部に通され、極力外部に露出しない構成とされている。しかし、アクティブ減音装置内にケーブルを通すには、現場にてアクティブ減音装置を組み立てる必要があり、組立作業が煩雑である。しかも、アクティブ減音セル等が耐候性シートとパンチングメタルカバーで覆われ保護されているが、スピーカから投射される信号波への影響が考慮されていない。そのため、消音性能が低下する問題点がある。
上記の問題点は、特許文献3の防音壁も同様である。
【0011】
上記(iii)の防音装置の取付構造は、横架材を用いた点を注目できる。しかし、防音壁の支柱に取付け用のブラケットを設ける必要があり、煩雑である。
【0012】
上記(iv)の防音装置の保護方法は吸音材を保護する技術であり、アクティブ消音システムのマイクロフォンやスピーカを保護する技術ではない。
【0013】
上記(v)のアクティブ消音システムの保護方法は、ケーシング内でスピーカから投射される信号波が干渉して、消音性能が低下する問題点がある。
【0014】
本発明の目的は、防音壁の頂部にアクティブ消音システムを簡単に設置することができ、しかも、意匠性が良好で、現場でのアクティブ消音システムの組立作業が殆ど必要ないアクティブ消音システムを備えた防音壁を提供することである。
【0015】
本発明の次の目的は、マイクロフォンの騒音の受音、及び2次音源スピーカから投射される信号波へ悪影響を及ぼすことなく、太陽光や雨風並びにいたずら等からマイクロフォンと2次音源スピーカを保護したアクティブ消音システムを備えた防音壁を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁は、
防音壁の頂部にアクティブ消音システムが設置されており、前記アクティブ消音システムは、ケーシング内に、マイクロフォン及び2次音源スピーカの対を備えた複数のセルと制御機構とを有するアクティブ消音器を組み込んだ構成とされているアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
防音壁の頂部にH型鋼等による横架材の下側の溝部が嵌め込まれ、同横架材は防音壁の支柱に固定されていること、
前記横架材の上にアクティブ消音システムが設置されており、該アクティブ消音システムのケーシング下部に形成された嵌合部が横架材の上部に嵌め込まれ固定されていること、
前記横架材の上側の溝部に電源装置とアクティブ消音器を接続するケーブルが設置されていること、
上記ケーシングの車道側の側面にマイクロフォンが設けられ、上面に前記マイクロフォンと同一中心線上の配置で2次音源スピーカが設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁おいて、
2次音源スピーカの上面が水平面に対し15°〜30°の傾斜角度で車道側へ下り勾配に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
アクティブ消音システムのケーシングには、2次音源スピーカの上面を一定の間隔を開けて覆う開口率が略30〜50%の第1の多孔板と、更に該第1の多孔板の上面を一定の間隔を開けて覆う同じく開口率が略30〜50%の第2の多孔板とが配置されており、前記第1と第2の多孔板の孔は相互にずらした位置に配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
アクティブ消音システムのケーシングには、マイクロフォンの前面を一定の間隔を開けて覆う開口率が略5〜15%の第3の多孔板が配置され、該マイクロフォンと多孔板との間に風除室が形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
多孔板には長孔が千鳥状に配置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
第1の多孔板は、ケーシングの上面に設けた2次音源スピーカ、及び前記ケーシングの車道側の側面に設けたマイクロフォンを連続して覆う形状とされ、前記マイクロフォンを覆った第3の多孔板の前面に重ねられていること、
前記第1と第3の多孔板の長孔は相互に略直交する位置に配置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
電源装置は防音パネルに格納され、その防音パネルと共に防音壁中に組み込まれており、該電源装置からのケーブルは支柱の縦溝及び、横架材の上溝を通じて、アクティブ消音器と接続されていることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施形態及び実施例】
以下に、請求項1〜7記載の発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁の実施形態を、図1〜図10に基づいて説明する。
【0024】
防音壁1の頂部には、図1及び図2に示すように、アクティブ消音システム2が設置されている。前記アクティブ消音システム2は、ケーシング3内に、マイクロフォン4及び2次音源スピーカ5の対を備えた複数のセル6と制御機構7とを有するアクティブ消音器を組み込んだ構成とされている。つまり、複数のマイクロフォン4…で受音した騒音を、制御機構7で同振幅で逆位相を示す信号波に変換し、該信号波を複数の2次音源スピーカ5…から投射して騒音を軽減する構成とされている。
【0025】
前記防音壁1は、防音パネル8を、道路等の路肩に沿って設けた複数本のH型鋼より成る支柱9…のうち隣り合う2本の支柱9、9の縦溝9a、9aに嵌め込んで、その間に固定した構成である。
【0026】
前記防音壁1の頂部には、H型鋼等による横架材10の下側の溝部10aが連続的に嵌め込まれ、同横架材10が支柱9にボルト等の手段で固定されている。
【0027】
その横架材10の上部に、アクティブ消音システム2のケーシング3の下部に形成された嵌合部11が嵌め込まれ固定されている。具体的には、前記ケーシング3は、図2に示すようにケーシング本体12と、該ケーシング本体12を下方から密閉するチャンネル材13とで構成されており、前記ケーシング本体12の下端部に、溝部13aを下方に向けたチャンネル材13が嵌め込まれ固定されている。すなわち、前記溝部13aがアクティブ消音システム2の嵌合部11として形成され、該溝部13aを防音壁頂部の横架材10の上部に嵌め込みボルト等の手段で固定すると、アクティブ消音システム2を防音壁1の頂部へ簡単に設置することができる。
【0028】
前記ケーシング本体12の側面形状は倒立台形状に形成されている。その上面は、詳細は後述するが水平面Xに対し傾斜角度θ(15°〜30°(26.2×10−2〜52.4×10−2rad)の範囲、図1を参照)で車道側へ下り勾配の傾斜面に形成されている。また、前記ケーシング本体12の平面形状は、その厚さTが防音壁1から突出しないように、防音壁1の厚さと略同じ厚さ(一例として150mm)とされ、横幅Lは複数個のセル6…を組み込むのに十分な長さ(1000mm程度)とされている(図1を参照)。なお、前記ケーシング本体12及びチャンネル材13はアルミニウムやプラスチック等の非磁性材料で構成されている。
【0029】
前記ケーシング本体12の上面の傾斜角度θを15°〜30°の範囲とする理由は、ケーシング本体12の上面(傾斜面)に設けられる2次音源スピーカ5に雨水が溜まりにくく、且つ消音性能に悪影響を与えないためである。以下、2次音源スピーカ5の傾斜角度にも、ケーシング本体12の上面の傾斜角度と同じ符号θを用いる。
【0030】
前記2次音源スピーカ5に採用される動電型スピーカは、図3に示すように、コーン5aを振動させて音を放射する方式であり、道路騒音の周波数範囲である100Hz〜4000Hz領域の音をフラットな特性で忠実に放射でき、アクティブ消音システムには効果的である。
【0031】
しかし、動電型スピーカを2次音源スピーカ5に採用した場合、降雨時に当該2次音源スピーカ5のコーン5aに雨水が溜まってスピーカの音響特性が変化し、消音性能が劣化する欠点を有している。
【0032】
従って、2次音源スピーカ5のコーン5aに雨水が溜まりにくい構造とすることが要求される。一方で前記2次音源スピーカ5の上面の傾斜角度θは消音性能に影響を与えるので、適当な角度に設定することが重要である。つまり、傾斜角度θを大きくすると、図1に示す2次音源スピーカ5の正面軸Oから防音壁1のエッジPまでの距離Qが長くなり効率の良い消音性能を発揮できなくなるため、傾斜角度θは、できるだけ小さいほうが消音性能にとっては良い。
【0033】
2次音源スピーカ5のコーン5aの開き角度ηとの兼ね合いとなるが、前記2次音源スピーカ5の傾斜角度θを15°以上に設定すると、降雨時に雨水が溜まりにくく、2次音源スピーカ5の音響特性が変化せずに、消音性能が劣化しない。また、前記2次音源スピーカ5の傾斜角度θを30°以下に設定すると、2次音源スピーカ5の正面軸Oから防音壁1のエッジPまでの距離Qが長くなりすぎず、効率の良い消音性能を発揮できる。
【0034】
そこで、本発明は2次音源スピーカ5の上面を15°〜30°の範囲で傾斜させるべく、ケーシング本体12の上面を15°〜30°の範囲で傾斜させ、常に健全な状態で、効率の良い消音性能を発揮できる構成としている(請求項2記載の発明)。なお、前記2次音源スピーカ5のコーン5aの中央部には、上面より見て凹面体のダストチャップ5bが取り付けられ、より雨水が溜まらないようにされている。
【0035】
前記ケーシング本体12内には、上述のように複数個(一例として6個)のセル6…が組み込まれ、車道側の側面に各セル6のマイクロフォン4が一定の間隔Wで設けられている(図1を参照)。また、その上面はバッフル材として構成され、前記マイクロフォン4と同一中心線N上の配置で2次音源スピーカ5が設けられている。ちなみに、上記の間隔Wは、隣接する2次音源スピーカ5、5から投射される信号波が干渉しないように、消音対象周波数領域の最大周波数の1/2程度とされ、一例として170mmとされる。
【0036】
上記セル6は、図4に示すように、ケーシング本体12の内部を複数枚(一例として5枚)の仕切板14…で区切ることにより形成され、2次音源スピーカ5のコーン5aを好適に振動できる容積が確保されている。前記セル6の側面の内周には、隣接する2次音源スピーカ5、5から投射される信号波それぞれが、隣接するセル6、6内で干渉しないように吸音材15が配置されている。なお、上記仕切板14もアルミニウムやプラスチック等の非磁性材料で構成されている。
【0037】
前記セル6の下面(即ち、チャンネル材13の上面)には、3個のセル6‥に対して1個の割合で制御機構7が設けられている。その隣のセル6の下面には、前記制御機構7へ電源装置16(図5を参照)からのケーブル17(図2を参照)を接続するためのコネクター18が設置されている。つまり、工場などでケーシング本体12内にセル6を組み込みチャンネル材13で密閉して組立が完了した状態のアクティブ消音システム2を、現場に搬入し、前記アクティブ消音システム2の下部のコネクター18に電源装置16からのケーブル17を接続して、防音壁頂部の横架材10の上部に嵌め込み固定するだけでアクティブ消音システム2の設置作業は完了する。そのため、現場でのアクティブ消音システム2の組立作業が殆ど必要なく施工の簡便化に寄与する。
【0038】
前記電源装置16は、図5及び図6に示すように防音パネル8内に格納されている。具体的には、ケース19内に電源装置16が格納されており、そのケース19が防音パネル8に組み込まれ、その防音パネル8と共に防音壁1中に組み込まれている。前記ケース19の下面(但し、これに限らない。)には、電源装置16とアクティブ消音システム2へ延びるケーブル17とを接続するためのコネクター20が設けられている。前記コネクター20へ接続されたケーブル17は支柱9の縦溝9aを通り、更に横架材10の上溝10b(図2を参照)を通って、アクティブ消音器の制御機構7のコネクター18に接続される(請求項7記載の発明)。すなわち、上記支柱9の縦溝9a及び横架材10の上溝10bは、電源装置16からのケーブル17の通路とされ、該ケーブル17が外部に露出することはない。そのため、意匠性が良好な防音壁を構成することができる。
【0039】
前記アクティブ消音システム2のケーシング3には、図1及び図2に示すように、6個の2次音源スピーカ5…の上面を一定の間隔(一例として5mm)を開けて連続的に覆う開口率が略30〜50%の第1の多孔板21と、更に該第1の多孔板21の上面を一定の間隔(5mm〜10mm程度)を開けて連続的に覆う同じく開口率が略30〜50%の第2の多孔板22とが配置されている。具体的には、前記2枚の多孔板21、22は、ケーシング本体12の上方で好適に積層できるように、大きさの異なる断面アーチ形状とされ、それらの両端部がケーシング本体12の上端部に嵌め込まれ固定されている。前記多孔板21、22それぞれには、多数の長孔21a…、22a…が千鳥状に配置されており、該長孔21a…と22a…は図7に示すように、相互にずらした位置に配置されている(請求項3及び5記載の発明)。
【0040】
前記多孔板21、22の開口率を略30〜50%とした理由は、例えば開口率を略50%以上とすると、2枚の多孔板21と22の孔位置をずらして積層しても、開口面積が大きくなる。また、紫外線や赤外線が直接スピーカに当たるのを防いだり、細かい落下物が直接スピーカを直撃することがないようにするものであり、開口率を略30%以下とすると、信号波の反射面積が大きくなり、位相ズレなど音響的な影響が無視できなくなるからである。前記多孔板21と22の間隔を5mm〜10mmとした理由は、間隔を10mm以上とすると、やはり針金等が入り易くなりいたずらされる可能性があり、間隔を5mm以下とすると、上記開口率を低下させた場合と同様の不具合が生じるからである。適切な開口率の2枚の多孔板21と22を一定の間隔を開けて、2次音源スピーカ5の上方で積層することによって、該2次音源スピーカ5から投射される信号波に悪影響を及ぼすことなく、太陽光や雨風並びにいたずら等から確実に2次音源スピーカ5を保護することができる。
【0041】
上記アクティブ消音システム2のケーシング3には、図1及び図2に示すように、6個のマイクロフォン4…の前面を一定の間隔(一例として25mm)を開けて連続的に覆う開口率が略5〜15%の第3の多孔板23が配置されている。前記第3の多孔板23は断面コ字形状に形成され、その前面に多数の孔23a…が設けられている。前記多孔板23がマイクロフォン4を覆うように配置され、その上下端部の取付け片23b、23bがケーシング本体12の車道側の側面に固定されると、当該マイクロフォン4と多孔板23との間に風除室24が形成され、防音壁1の脇を車両等が走行したときに発生する虚音を、マイクロフォン4が受音することを防ぎ、消音すべき騒音のみを受音する構成となる(請求項4記載の発明)。したがって、精度の高い消音性能が期待できる。
【0042】
また、前記マイクロフォン4が第3の多孔板23で保護されるので、車両等が跳ね飛ばした石等がマイクロフォン4に接触することがなく、破損防止にも寄与する。
【0043】
ちなみに、上記多孔板21〜23に親水性塗膜を形成すると、多孔板に付着したホコリや油脂は、雨水で洗い落とされ、長孔の目づまりを防ぐと共に、アクティブ消音システム2の見た目を常に美しく保つことができる。
【0044】
図8は、アクティブ消音システムを備えた防音壁の異なる実施形態を示している。図8に示すアクティブ消音システム25は、図1等に示したアクティブ消音システム2と略同様の構成とされているが、第1の多孔板の形状等が異なる。
【0045】
即ち、前記第1の多孔板26は、ケーシング本体27の上面に設けた2次音源スピーカ5、及び前記ケーシング本体27の車道側の側面に設けたマイクロフォン4を連続して覆う形状とされている(請求項6記載の発明)。具体的には、前記第1の多孔板26は、図1等に示した第1の多孔板21の車道側の端部がケーシング本体27の下端部まで鉛直下方に延長された形状とされ、上記マイクロフォン4を覆った第3の多孔板28の前面に重ねられている。そのため、ケーシング本体27の車道側の側面形状は、マイクロフォン4と第3の多孔板28との間に風除室24を形成できるように、内側に一定の幅寸(一例として25mm)で凹んだ形状とされている。前記凹んだ箇所にマイクロフォン4が設けられ、その凹んだ箇所に蓋をするように第3の多孔板28が配置されると、前記マイクロフォン4と多孔板28との間に風除室24が形成されることになる。
【0046】
前記第1の多孔板26の多数の長孔26a…と第3の多孔板28の多数の長孔28a…は、図9及び図10に示すように、相互に略直交する位置に配置されている。この場合、第1の多孔板26と第3の多孔板28とは、開口率が略30〜50%の同一の板材から製造され、マイクロフォン4を覆う箇所での開口率が略5〜15%となるように、多孔板26と28が積層される。したがって、第1〜第3の多孔板の全てを同一の板材から製造することができ、コストの削減に寄与できる。
【0047】
以上に実施形態を説明したが、本発明は、これらの実施例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常行う設計変更(例えば、マイクロフォン4、4の間隔W等)の範囲を含むことを念のため言及する。
【0048】
【本発明の奏する効果】
請求項1〜7に記載した発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁は、工場などで組立が完了したアクティブ消音システムを現場に搬入してケーブルを接続し、該アクティブ消音システムの嵌合部を防音壁頂部の横架材に嵌め込み固定するだけで、簡単にアクティブ消音システムの設置作業を完了させることができる。また、アクティブ消音システムの現場での組立作業が殆ど必要なく施工の簡便化に寄与する。
【0049】
防音壁頂部に設置した横架材の上溝及び支柱の縦溝が、電源装置からのケーブルの通路とされ、該ケーブルが外部に露出することがない。そのため、意匠性が良好な防音壁を構成することができる。しかも、電源装置を防音パネル内に収納することで、更に意匠性が良好となると共に、防音壁から電源装置がはみ出さず、境界の侵犯を防ぐことができる。
【0050】
適切な開口率の多孔板を一定の間隔を開けて、2次音源スピーカの上方で積層させることによって、該2次音源スピーカから投射される信号波に悪影響を与えることなく、太陽光や雨風並びにいたずら等から確実に2次音源スピーカを保護することができる。
【0051】
マイクロフォンを保護する多孔板が配置され、該マイクロフォンと多孔板との間に風除室が形成されているので、防音壁の脇を車両等が走行したときに発生する虚音を、マイクロフォンが受音することを防ぎ、消音すべき騒音のみを受音する構成となる。したがって、精度の高い消音性能が期待できる。また、マイクロフォンが多孔板で保護されているので、車両等が跳ね飛ばす石等がマイクロフォンに接触することがなく、破損防止に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1〜5に記載した発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁の実施形態を概念的に示した斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】2次音源スピーカ周辺の断面拡大図である。
【図4】図2のA−A矢視断面図である。
【図5】電源装置が格納されたケースを概念的に示した斜視図である。
【図6】電源装置が格納されたケースが組み込まれた防音パネルを示した斜視図である。
【図7】第1と第2の多孔板の孔の位置関係を示した図である。
【図8】請求項1〜6に記載した発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁の実施形態を示した縦断面図である。
【図9】図8のアクティブ消音システムを概略的に示した平面図である。
【図10】第1と第3の多孔板の孔の位置関係を示した図である。
【符号の説明】
1 防音壁
2、25 アクティブ消音システム
3 ケーシング
4 マイクロフォン
5 2次音源スピーカ
6 セル
7 制御機構
10 横架材
11 嵌合部
16 電源装置
21、26 第1の多孔板
22 第2の多孔板
23、28 第3の多孔板
24 風除室
N マイクロフォンと2次音源スピーカの中心線
X 水平面
【発明の属する技術分野】
この発明は、防音壁の頂部に、アクティブ消音システム、即ちアクティブ・ノイズ・コントロール(ANCシステム)を備えた防音壁の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
近年、防音壁の頂部に、アクティブ消音システムを備えた防音壁が種々開示されている。例えば、
【0003】
(i)特許文献1には、防音壁の支柱の上端側面に、エンクロージャに格納されたスピーカ及びマイクロフォン並びに演算部から成る能動遮音ユニットが溶接等の手段で設置された防音壁が開示されている。
【0004】
(ii)特許文献2及び特許文献3には、防音壁の頂部に、複数個のアクティブ減音(消音)装置が防音壁の長手方向に連続的に設置された防音壁が開示されている。具体的には、前記アクティブ減音装置は、そのケーシング内に複数個のアクティブ減音セルが長手方向に並列に配置されていると共に、吸音材が充填されている。前記アクティブ減音セルと吸音材の上面が耐候性シートとパンチングメタルカバーで覆われ保護されている。
特に、特許文献2に開示された防音壁は、上記アクティブ減音装置がユニット化され、その下部に形成された嵌合部が防音壁の頂部に嵌め込まれて支持された構成とされている。
【0005】
(iii)防音装置の取付構造の技術としては、以下の技術が開示されている。
特許文献4及び特許文献5には、防音壁の頂部にレール部材(横架材)が設置されており、そのレール部材に沿って移動可能な固定部材に防音装置を設置する防音装置の取付構造が開示されている。
【0006】
(iv)防音装置を保護する技術としては、以下の技術が開示されている。
特許文献6には、多数の通孔が全面に設けられた複数枚の無機質板状体を相互に孔位置をずらして積層し、吸音材の表面を覆うように配置することにより、該吸音材を保護する技術が開示されている。
【0007】
(v)特許文献7には、ケーシング内にスピーカを収納すると共に、マイクロフォンの前面を覆う薄膜を配置することにより、アクティブ消音システムのマイクロフォンとスピーカを保護する技術が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−172925号公報
【特許文献2】
特開2002−356816号公報
【特許文献3】
特開2002−356817号公報
【特許文献4】
特開2000−110119号公報
【特許文献5】
特開2000−144650号公報
【特許文献6】
特開平10−245908号公報
【特許文献7】
特開平9−34471号公報
【0009】
【本発明が解決しようとする課題】
上記(i)の防音壁は、能動遮音ユニットを溶接等の手段で設置するので、設置作業が煩雑である。また、電源装置からのケーブルが外部に露出して意匠性が良好でない。しかも、スピーカやマイクロフォンが保護されていないので、太陽光や雨風並びにいたずら等によって破損、劣化する可能性が大きい。
【0010】
上記(ii)の特許文献2の防音壁は、アクティブ減音装置の下部に嵌合部が形成され、その嵌合部を防音壁の頂部に嵌め込んで支持した構成であることを注目できる。また、電源装置からのケーブルは、特許文献2の図4に示すようにアクティブ減音装置の内部に通され、極力外部に露出しない構成とされている。しかし、アクティブ減音装置内にケーブルを通すには、現場にてアクティブ減音装置を組み立てる必要があり、組立作業が煩雑である。しかも、アクティブ減音セル等が耐候性シートとパンチングメタルカバーで覆われ保護されているが、スピーカから投射される信号波への影響が考慮されていない。そのため、消音性能が低下する問題点がある。
上記の問題点は、特許文献3の防音壁も同様である。
【0011】
上記(iii)の防音装置の取付構造は、横架材を用いた点を注目できる。しかし、防音壁の支柱に取付け用のブラケットを設ける必要があり、煩雑である。
【0012】
上記(iv)の防音装置の保護方法は吸音材を保護する技術であり、アクティブ消音システムのマイクロフォンやスピーカを保護する技術ではない。
【0013】
上記(v)のアクティブ消音システムの保護方法は、ケーシング内でスピーカから投射される信号波が干渉して、消音性能が低下する問題点がある。
【0014】
本発明の目的は、防音壁の頂部にアクティブ消音システムを簡単に設置することができ、しかも、意匠性が良好で、現場でのアクティブ消音システムの組立作業が殆ど必要ないアクティブ消音システムを備えた防音壁を提供することである。
【0015】
本発明の次の目的は、マイクロフォンの騒音の受音、及び2次音源スピーカから投射される信号波へ悪影響を及ぼすことなく、太陽光や雨風並びにいたずら等からマイクロフォンと2次音源スピーカを保護したアクティブ消音システムを備えた防音壁を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁は、
防音壁の頂部にアクティブ消音システムが設置されており、前記アクティブ消音システムは、ケーシング内に、マイクロフォン及び2次音源スピーカの対を備えた複数のセルと制御機構とを有するアクティブ消音器を組み込んだ構成とされているアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
防音壁の頂部にH型鋼等による横架材の下側の溝部が嵌め込まれ、同横架材は防音壁の支柱に固定されていること、
前記横架材の上にアクティブ消音システムが設置されており、該アクティブ消音システムのケーシング下部に形成された嵌合部が横架材の上部に嵌め込まれ固定されていること、
前記横架材の上側の溝部に電源装置とアクティブ消音器を接続するケーブルが設置されていること、
上記ケーシングの車道側の側面にマイクロフォンが設けられ、上面に前記マイクロフォンと同一中心線上の配置で2次音源スピーカが設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁おいて、
2次音源スピーカの上面が水平面に対し15°〜30°の傾斜角度で車道側へ下り勾配に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
アクティブ消音システムのケーシングには、2次音源スピーカの上面を一定の間隔を開けて覆う開口率が略30〜50%の第1の多孔板と、更に該第1の多孔板の上面を一定の間隔を開けて覆う同じく開口率が略30〜50%の第2の多孔板とが配置されており、前記第1と第2の多孔板の孔は相互にずらした位置に配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
アクティブ消音システムのケーシングには、マイクロフォンの前面を一定の間隔を開けて覆う開口率が略5〜15%の第3の多孔板が配置され、該マイクロフォンと多孔板との間に風除室が形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
多孔板には長孔が千鳥状に配置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項3〜5のいずれか一に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
第1の多孔板は、ケーシングの上面に設けた2次音源スピーカ、及び前記ケーシングの車道側の側面に設けたマイクロフォンを連続して覆う形状とされ、前記マイクロフォンを覆った第3の多孔板の前面に重ねられていること、
前記第1と第3の多孔板の長孔は相互に略直交する位置に配置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
電源装置は防音パネルに格納され、その防音パネルと共に防音壁中に組み込まれており、該電源装置からのケーブルは支柱の縦溝及び、横架材の上溝を通じて、アクティブ消音器と接続されていることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施形態及び実施例】
以下に、請求項1〜7記載の発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁の実施形態を、図1〜図10に基づいて説明する。
【0024】
防音壁1の頂部には、図1及び図2に示すように、アクティブ消音システム2が設置されている。前記アクティブ消音システム2は、ケーシング3内に、マイクロフォン4及び2次音源スピーカ5の対を備えた複数のセル6と制御機構7とを有するアクティブ消音器を組み込んだ構成とされている。つまり、複数のマイクロフォン4…で受音した騒音を、制御機構7で同振幅で逆位相を示す信号波に変換し、該信号波を複数の2次音源スピーカ5…から投射して騒音を軽減する構成とされている。
【0025】
前記防音壁1は、防音パネル8を、道路等の路肩に沿って設けた複数本のH型鋼より成る支柱9…のうち隣り合う2本の支柱9、9の縦溝9a、9aに嵌め込んで、その間に固定した構成である。
【0026】
前記防音壁1の頂部には、H型鋼等による横架材10の下側の溝部10aが連続的に嵌め込まれ、同横架材10が支柱9にボルト等の手段で固定されている。
【0027】
その横架材10の上部に、アクティブ消音システム2のケーシング3の下部に形成された嵌合部11が嵌め込まれ固定されている。具体的には、前記ケーシング3は、図2に示すようにケーシング本体12と、該ケーシング本体12を下方から密閉するチャンネル材13とで構成されており、前記ケーシング本体12の下端部に、溝部13aを下方に向けたチャンネル材13が嵌め込まれ固定されている。すなわち、前記溝部13aがアクティブ消音システム2の嵌合部11として形成され、該溝部13aを防音壁頂部の横架材10の上部に嵌め込みボルト等の手段で固定すると、アクティブ消音システム2を防音壁1の頂部へ簡単に設置することができる。
【0028】
前記ケーシング本体12の側面形状は倒立台形状に形成されている。その上面は、詳細は後述するが水平面Xに対し傾斜角度θ(15°〜30°(26.2×10−2〜52.4×10−2rad)の範囲、図1を参照)で車道側へ下り勾配の傾斜面に形成されている。また、前記ケーシング本体12の平面形状は、その厚さTが防音壁1から突出しないように、防音壁1の厚さと略同じ厚さ(一例として150mm)とされ、横幅Lは複数個のセル6…を組み込むのに十分な長さ(1000mm程度)とされている(図1を参照)。なお、前記ケーシング本体12及びチャンネル材13はアルミニウムやプラスチック等の非磁性材料で構成されている。
【0029】
前記ケーシング本体12の上面の傾斜角度θを15°〜30°の範囲とする理由は、ケーシング本体12の上面(傾斜面)に設けられる2次音源スピーカ5に雨水が溜まりにくく、且つ消音性能に悪影響を与えないためである。以下、2次音源スピーカ5の傾斜角度にも、ケーシング本体12の上面の傾斜角度と同じ符号θを用いる。
【0030】
前記2次音源スピーカ5に採用される動電型スピーカは、図3に示すように、コーン5aを振動させて音を放射する方式であり、道路騒音の周波数範囲である100Hz〜4000Hz領域の音をフラットな特性で忠実に放射でき、アクティブ消音システムには効果的である。
【0031】
しかし、動電型スピーカを2次音源スピーカ5に採用した場合、降雨時に当該2次音源スピーカ5のコーン5aに雨水が溜まってスピーカの音響特性が変化し、消音性能が劣化する欠点を有している。
【0032】
従って、2次音源スピーカ5のコーン5aに雨水が溜まりにくい構造とすることが要求される。一方で前記2次音源スピーカ5の上面の傾斜角度θは消音性能に影響を与えるので、適当な角度に設定することが重要である。つまり、傾斜角度θを大きくすると、図1に示す2次音源スピーカ5の正面軸Oから防音壁1のエッジPまでの距離Qが長くなり効率の良い消音性能を発揮できなくなるため、傾斜角度θは、できるだけ小さいほうが消音性能にとっては良い。
【0033】
2次音源スピーカ5のコーン5aの開き角度ηとの兼ね合いとなるが、前記2次音源スピーカ5の傾斜角度θを15°以上に設定すると、降雨時に雨水が溜まりにくく、2次音源スピーカ5の音響特性が変化せずに、消音性能が劣化しない。また、前記2次音源スピーカ5の傾斜角度θを30°以下に設定すると、2次音源スピーカ5の正面軸Oから防音壁1のエッジPまでの距離Qが長くなりすぎず、効率の良い消音性能を発揮できる。
【0034】
そこで、本発明は2次音源スピーカ5の上面を15°〜30°の範囲で傾斜させるべく、ケーシング本体12の上面を15°〜30°の範囲で傾斜させ、常に健全な状態で、効率の良い消音性能を発揮できる構成としている(請求項2記載の発明)。なお、前記2次音源スピーカ5のコーン5aの中央部には、上面より見て凹面体のダストチャップ5bが取り付けられ、より雨水が溜まらないようにされている。
【0035】
前記ケーシング本体12内には、上述のように複数個(一例として6個)のセル6…が組み込まれ、車道側の側面に各セル6のマイクロフォン4が一定の間隔Wで設けられている(図1を参照)。また、その上面はバッフル材として構成され、前記マイクロフォン4と同一中心線N上の配置で2次音源スピーカ5が設けられている。ちなみに、上記の間隔Wは、隣接する2次音源スピーカ5、5から投射される信号波が干渉しないように、消音対象周波数領域の最大周波数の1/2程度とされ、一例として170mmとされる。
【0036】
上記セル6は、図4に示すように、ケーシング本体12の内部を複数枚(一例として5枚)の仕切板14…で区切ることにより形成され、2次音源スピーカ5のコーン5aを好適に振動できる容積が確保されている。前記セル6の側面の内周には、隣接する2次音源スピーカ5、5から投射される信号波それぞれが、隣接するセル6、6内で干渉しないように吸音材15が配置されている。なお、上記仕切板14もアルミニウムやプラスチック等の非磁性材料で構成されている。
【0037】
前記セル6の下面(即ち、チャンネル材13の上面)には、3個のセル6‥に対して1個の割合で制御機構7が設けられている。その隣のセル6の下面には、前記制御機構7へ電源装置16(図5を参照)からのケーブル17(図2を参照)を接続するためのコネクター18が設置されている。つまり、工場などでケーシング本体12内にセル6を組み込みチャンネル材13で密閉して組立が完了した状態のアクティブ消音システム2を、現場に搬入し、前記アクティブ消音システム2の下部のコネクター18に電源装置16からのケーブル17を接続して、防音壁頂部の横架材10の上部に嵌め込み固定するだけでアクティブ消音システム2の設置作業は完了する。そのため、現場でのアクティブ消音システム2の組立作業が殆ど必要なく施工の簡便化に寄与する。
【0038】
前記電源装置16は、図5及び図6に示すように防音パネル8内に格納されている。具体的には、ケース19内に電源装置16が格納されており、そのケース19が防音パネル8に組み込まれ、その防音パネル8と共に防音壁1中に組み込まれている。前記ケース19の下面(但し、これに限らない。)には、電源装置16とアクティブ消音システム2へ延びるケーブル17とを接続するためのコネクター20が設けられている。前記コネクター20へ接続されたケーブル17は支柱9の縦溝9aを通り、更に横架材10の上溝10b(図2を参照)を通って、アクティブ消音器の制御機構7のコネクター18に接続される(請求項7記載の発明)。すなわち、上記支柱9の縦溝9a及び横架材10の上溝10bは、電源装置16からのケーブル17の通路とされ、該ケーブル17が外部に露出することはない。そのため、意匠性が良好な防音壁を構成することができる。
【0039】
前記アクティブ消音システム2のケーシング3には、図1及び図2に示すように、6個の2次音源スピーカ5…の上面を一定の間隔(一例として5mm)を開けて連続的に覆う開口率が略30〜50%の第1の多孔板21と、更に該第1の多孔板21の上面を一定の間隔(5mm〜10mm程度)を開けて連続的に覆う同じく開口率が略30〜50%の第2の多孔板22とが配置されている。具体的には、前記2枚の多孔板21、22は、ケーシング本体12の上方で好適に積層できるように、大きさの異なる断面アーチ形状とされ、それらの両端部がケーシング本体12の上端部に嵌め込まれ固定されている。前記多孔板21、22それぞれには、多数の長孔21a…、22a…が千鳥状に配置されており、該長孔21a…と22a…は図7に示すように、相互にずらした位置に配置されている(請求項3及び5記載の発明)。
【0040】
前記多孔板21、22の開口率を略30〜50%とした理由は、例えば開口率を略50%以上とすると、2枚の多孔板21と22の孔位置をずらして積層しても、開口面積が大きくなる。また、紫外線や赤外線が直接スピーカに当たるのを防いだり、細かい落下物が直接スピーカを直撃することがないようにするものであり、開口率を略30%以下とすると、信号波の反射面積が大きくなり、位相ズレなど音響的な影響が無視できなくなるからである。前記多孔板21と22の間隔を5mm〜10mmとした理由は、間隔を10mm以上とすると、やはり針金等が入り易くなりいたずらされる可能性があり、間隔を5mm以下とすると、上記開口率を低下させた場合と同様の不具合が生じるからである。適切な開口率の2枚の多孔板21と22を一定の間隔を開けて、2次音源スピーカ5の上方で積層することによって、該2次音源スピーカ5から投射される信号波に悪影響を及ぼすことなく、太陽光や雨風並びにいたずら等から確実に2次音源スピーカ5を保護することができる。
【0041】
上記アクティブ消音システム2のケーシング3には、図1及び図2に示すように、6個のマイクロフォン4…の前面を一定の間隔(一例として25mm)を開けて連続的に覆う開口率が略5〜15%の第3の多孔板23が配置されている。前記第3の多孔板23は断面コ字形状に形成され、その前面に多数の孔23a…が設けられている。前記多孔板23がマイクロフォン4を覆うように配置され、その上下端部の取付け片23b、23bがケーシング本体12の車道側の側面に固定されると、当該マイクロフォン4と多孔板23との間に風除室24が形成され、防音壁1の脇を車両等が走行したときに発生する虚音を、マイクロフォン4が受音することを防ぎ、消音すべき騒音のみを受音する構成となる(請求項4記載の発明)。したがって、精度の高い消音性能が期待できる。
【0042】
また、前記マイクロフォン4が第3の多孔板23で保護されるので、車両等が跳ね飛ばした石等がマイクロフォン4に接触することがなく、破損防止にも寄与する。
【0043】
ちなみに、上記多孔板21〜23に親水性塗膜を形成すると、多孔板に付着したホコリや油脂は、雨水で洗い落とされ、長孔の目づまりを防ぐと共に、アクティブ消音システム2の見た目を常に美しく保つことができる。
【0044】
図8は、アクティブ消音システムを備えた防音壁の異なる実施形態を示している。図8に示すアクティブ消音システム25は、図1等に示したアクティブ消音システム2と略同様の構成とされているが、第1の多孔板の形状等が異なる。
【0045】
即ち、前記第1の多孔板26は、ケーシング本体27の上面に設けた2次音源スピーカ5、及び前記ケーシング本体27の車道側の側面に設けたマイクロフォン4を連続して覆う形状とされている(請求項6記載の発明)。具体的には、前記第1の多孔板26は、図1等に示した第1の多孔板21の車道側の端部がケーシング本体27の下端部まで鉛直下方に延長された形状とされ、上記マイクロフォン4を覆った第3の多孔板28の前面に重ねられている。そのため、ケーシング本体27の車道側の側面形状は、マイクロフォン4と第3の多孔板28との間に風除室24を形成できるように、内側に一定の幅寸(一例として25mm)で凹んだ形状とされている。前記凹んだ箇所にマイクロフォン4が設けられ、その凹んだ箇所に蓋をするように第3の多孔板28が配置されると、前記マイクロフォン4と多孔板28との間に風除室24が形成されることになる。
【0046】
前記第1の多孔板26の多数の長孔26a…と第3の多孔板28の多数の長孔28a…は、図9及び図10に示すように、相互に略直交する位置に配置されている。この場合、第1の多孔板26と第3の多孔板28とは、開口率が略30〜50%の同一の板材から製造され、マイクロフォン4を覆う箇所での開口率が略5〜15%となるように、多孔板26と28が積層される。したがって、第1〜第3の多孔板の全てを同一の板材から製造することができ、コストの削減に寄与できる。
【0047】
以上に実施形態を説明したが、本発明は、これらの実施例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常行う設計変更(例えば、マイクロフォン4、4の間隔W等)の範囲を含むことを念のため言及する。
【0048】
【本発明の奏する効果】
請求項1〜7に記載した発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁は、工場などで組立が完了したアクティブ消音システムを現場に搬入してケーブルを接続し、該アクティブ消音システムの嵌合部を防音壁頂部の横架材に嵌め込み固定するだけで、簡単にアクティブ消音システムの設置作業を完了させることができる。また、アクティブ消音システムの現場での組立作業が殆ど必要なく施工の簡便化に寄与する。
【0049】
防音壁頂部に設置した横架材の上溝及び支柱の縦溝が、電源装置からのケーブルの通路とされ、該ケーブルが外部に露出することがない。そのため、意匠性が良好な防音壁を構成することができる。しかも、電源装置を防音パネル内に収納することで、更に意匠性が良好となると共に、防音壁から電源装置がはみ出さず、境界の侵犯を防ぐことができる。
【0050】
適切な開口率の多孔板を一定の間隔を開けて、2次音源スピーカの上方で積層させることによって、該2次音源スピーカから投射される信号波に悪影響を与えることなく、太陽光や雨風並びにいたずら等から確実に2次音源スピーカを保護することができる。
【0051】
マイクロフォンを保護する多孔板が配置され、該マイクロフォンと多孔板との間に風除室が形成されているので、防音壁の脇を車両等が走行したときに発生する虚音を、マイクロフォンが受音することを防ぎ、消音すべき騒音のみを受音する構成となる。したがって、精度の高い消音性能が期待できる。また、マイクロフォンが多孔板で保護されているので、車両等が跳ね飛ばす石等がマイクロフォンに接触することがなく、破損防止に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1〜5に記載した発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁の実施形態を概念的に示した斜視図である。
【図2】図1の縦断面図である。
【図3】2次音源スピーカ周辺の断面拡大図である。
【図4】図2のA−A矢視断面図である。
【図5】電源装置が格納されたケースを概念的に示した斜視図である。
【図6】電源装置が格納されたケースが組み込まれた防音パネルを示した斜視図である。
【図7】第1と第2の多孔板の孔の位置関係を示した図である。
【図8】請求項1〜6に記載した発明に係るアクティブ消音システムを備えた防音壁の実施形態を示した縦断面図である。
【図9】図8のアクティブ消音システムを概略的に示した平面図である。
【図10】第1と第3の多孔板の孔の位置関係を示した図である。
【符号の説明】
1 防音壁
2、25 アクティブ消音システム
3 ケーシング
4 マイクロフォン
5 2次音源スピーカ
6 セル
7 制御機構
10 横架材
11 嵌合部
16 電源装置
21、26 第1の多孔板
22 第2の多孔板
23、28 第3の多孔板
24 風除室
N マイクロフォンと2次音源スピーカの中心線
X 水平面
Claims (7)
- 防音壁の頂部にアクティブ消音システムが設置されており、前記アクティブ消音システムは、ケーシング内に、マイクロフォン及び2次音源スピーカの対を備えた複数のセルと制御機構とを有するアクティブ消音器を組み込んだ構成とされているアクティブ消音システムを備えた防音壁において、
防音壁の頂部にH型鋼等による横架材の下側の溝部が嵌め込まれ、同横架材は防音壁の支柱に固定されていること、
前記横架材の上にアクティブ消音システムが設置されており、該アクティブ消音システムのケーシング下部に形成された嵌合部が横架材の上部に嵌め込まれ固定されていること、
前記横架材の上側の溝部に電源装置とアクティブ消音器を接続するケーブルが設置されていること、
上記ケーシングの車道側の側面にマイクロフォンが設けられ、上面に前記マイクロフォンと同一中心線上の配置で2次音源スピーカが設けられていることを特徴とする、アクティブ消音システムを備えた防音壁。 - 2次音源スピーカの上面が水平面に対し15°〜30°の傾斜角度で車道側へ下り勾配に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁。
- アクティブ消音システムのケーシングには、2次音源スピーカの上面を一定の間隔を開けて覆う開口率が略30〜50%の第1の多孔板と、更に該第1の多孔板の上面を一定の間隔を開けて覆う同じく開口率が略30〜50%の第2の多孔板とが配置されており、前記第1と第2の多孔板の孔は相互にずらした位置に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁。
- アクティブ消音システムのケーシングには、マイクロフォンの前面を一定の間隔を開けて覆う開口率が略5〜15%の第3の多孔板が配置され、該マイクロフォンと多孔板との間に風除室が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁。
- 多孔板には長孔が千鳥状に配置されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁。
- 第1の多孔板は、ケーシングの上面に設けた2次音源スピーカ、及び前記ケーシングの車道側の側面に設けたマイクロフォンを連続して覆う形状とされ、前記マイクロフォンを覆った第3の多孔板の前面に重ねられていること、
前記第1と第3の多孔板の長孔は相互に略直交する位置に配置されていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか一に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁。 - 電源装置は防音パネルに格納され、その防音パネルと共に防音壁中に組み込まれており、該電源装置からのケーブルは支柱の縦溝及び、横架材の上溝を通じて、アクティブ消音器と接続されていることを特徴とする、請求項1に記載したアクティブ消音システムを備えた防音壁。
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