JP3898909B2 - 成形性及びバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法 - Google Patents

成形性及びバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はUOE製造法で成形する高強度鋼管において、成形性とバースト特性を改善するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
UOE方式による鋼管の製造工程は、一般的に図1に示すように鋼板のC成形(プレス)、U成形(プレス)、O成形(プレス)、シーム溶接、拡管の各工程からなる。C成形工程では、鋼板の両縁部に開先加工が施した後、鋼板縁部近傍に曲げ加工を加える。この曲げ加工は、プレス成形で行う場合が多いが、特開昭61−279313号公報等で開示されるようにロール成形により鋼板縁部近傍に曲がり部を形成させることも可能である。C成形された板材は、さらにU成形工程で「U字状」に成形され、その後、さらにO成形工程で管形状に成形される。その後、管形状に成形された板材の開先同士が相対する関係にある両縁部をシーム溶接工程でシーム溶接する。この段階で初めて周方向に閉じた管が形成されることになるが、さらに良好な管形状、即ち管の真円度を向上させるため、その後、拡管工程において、エキスパンダーと呼ばれる拡管装置により拡管を行う。拡管方法には、管内面から外側方向に強制的な変位を加えるメカニカル拡管法と管内面に水圧を加える水圧拡管法があるが、現在では前者が主流となっている。なお、管の真円度を向上させるために、上記拡管法とは逆に管外面を縮径させる方法も考えられるが、係る方式はUOE方式とは区別される。
【0003】
従来、上記UOE方式による製管法において、C成形、U成形、O成形、拡管の各成形工程の成形条件を特定することで、真円度等の成形性向上、現設備の能力向上、厚肉管の成形性向上等を実現させる発明が多数なされてきた。
例えば、Cプレスの成形方法では、特願平8−294724号公報でCプレス、Oプレスの能力を増強させることなく、C成形における加工長さ、板材降伏強度、板厚を特定の関係に規定することでピーキング(溶接部における同心円との正の偏差)を減少させ、厚板材、高強度材での成形を可能する方法が開示されている。
【0004】
また、特開平9−239447号公報、特開平10−211520号公報では、C成形時の曲げ領域長さを板厚の3.5倍以上とするか、あるいは、残留する直線部長さを板厚の1.5倍以下として、ピーキング(当該技術においては、突き合わせ部のとがり)を2mm以下にすることにより、現有設備能力で形状不良を軽減できることが開示されている。また、特許第1135933号では、Cプレス時の曲率半径(Oプレスする前の曲率半径)と鋼管曲率半径の比を0.8〜1.2とすることでピーキングを低下させ、鋼管形状を改善できることが開示されている。このようなCプレスでの加工条件に着目した技術として、他にも、特開昭55−14724号公報、特開昭59−199117号公報、特開昭60−92015号公報等に提案された技術が開示されている。
【0005】
また、Oプレスにより成形性を向上させた技術としては、特許第1258977号公報に開示されているダイスカリバー中央長手方向に異形部を形成し、ピーキングを減少させるものもある。その他に特開平9−94611号公報、特開昭53−112260号公報で提案されたOプレスの改善技術がある。
また、拡管工程を工夫して真円度、曲がりを強制する方法としては、特開平03−94936号公報に記載されたようなカリバーと被加工物の相対位置を変化させ、複数回プレスするものがある。その他、特開昭57−94434号、特開昭61−147930号などで提案された拡管に関連した真円度向上技術がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、原油・天然ガスの長距離輸送方法としてラインパイプの重要性がますます高まっており、特に(1)高圧化による輸送効率の向上や(2)ラインパイプの外径・重量の低減による現地施工能率の向上のため、今ではX100(引張強さ760 N/mm2以上)を超える高強度のラインパイプに対するニーズが強くなってきた。そして、こうしたニーズに応えるべく、近年では、従来、困難であった引張強さ760N/mm2 を超える鋼板に対してもTMCPにより製造する技術が開発されてきた(特開平8−199292号公報)。
【0007】
一方で、ラインパイプの高強度化に伴い、従来の引張強さ700N/mm2 程度の中低強度材の潜弧溶接などの溶接では、ほとんど問題にされなかった熱影響部(HAZ部)の軟化が、引張強さ760N/mm2 を超える高強度材では大きくなり、板材加工時の延性亀裂が発生するまでの限界塑性歪みは小さくなることが判った。したがって、引張強さ760N/mm2 を超えるようなラインパイプを成形する場合には、従来の中低強度の鋼管の製造時には、顕在化しなかった、特にシーム溶接後の拡管工程時の溶接部割れ・破断及び得られた鋼管製品の内圧負荷時のシーム溶接部脆性破断(バースト)という新たな課題が生じるようになった。
【0008】
上述の従来技術は、せいぜい、700N/mm2 程度の低中強度の汎用的なラインパイプ用鋼板を用いて鋼管を製造する際の板材の成形及び拡管方法であり、このような低中強度のラインパイプを製造する際には、十分な成形性が保たれてきた。しかしながら、引張強度が850N/mm2 を超えるような高強度ラインパイプの製造時には、拡管工程時の溶接部割れ・破断や鋼管製品のシーム溶接部脆性破断(バースト)のなどの問題を生じ、このような高強度ラインパイプの製造方法の開発が望まれている。
【0009】
以上の従来技術の問題点に鑑みて、本発明は、引張強度が850N/mm2 を超えるような高強度ラインパイプ用鋼管を製造する際に、拡管工程時の溶接部割れ・破断がない成形性に優れるとともに、鋼管使用時の内圧負荷に対してもシーム溶接部からの脆性破断がないバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その要旨とするところは、以下の通りである。
)引張強度が850N/mmを超える高強度鋼管をUOE方式により製造する高強度鋼管の製造方法において、拡管工程における拡管前の鋼管の溶接部を含む周方向120mm範囲での平均曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(r)との比(R/r)が0.90〜2.0であることを特徴とする成形性及びバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法。
管時の溶接止端部から4mm点の周方向歪みが2.5%以下であることを特徴とする(1)記載の成形性及びバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法
(3)引張強度が850N/mmを超える高強度鋼管をUOE方式により製造する高強度鋼管の製造方法において、拡管工程における拡管前の鋼管の溶接部を含む周方向120 mm 範囲での平均曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(r)との比(R/r)が0.65〜2.0であり、拡管時の溶接止端部から4mm点の周方向歪みが4%以下であることを特徴とする成形性に優れた高強度鋼管の製造方法。
)引張強度が850N/mmを超える高強度鋼管をUOE方式により製造する高強度鋼管の製造方法において、拡管前のピーキング量が式(1)の関係を満たし、内面溶接金属の余盛り高さが2.0mm以下であり、拡管前後でのピーキング量の変化が式(2)の関係を満たすことを特徴とする成形性及びバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法
−1.5mm≦ピーキング量(mm)≦16/管肉厚(mm)−−−(1)
−1.5mm≦ピーキング変化量(mm)≦1.0mm−−−(2)
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明らは、先ず、引張強度が850N/mm2 を超える高強度鋼管をUOE方式で成形する場合に、拡管工程で発生するシーム溶接部の割れ、破断のメカニズムを究明するために、管曲率を種々変化させた鋼管を製造し、拡管率が1%の条件で拡管した場合の溶接部からの破断の有無を調査した。その結果、拡管時の溶接部からの破断の有無は、拡管前の溶接部近傍の曲率半径及び拡管後の鋼管半径に関係することが判った。図2は、拡管前(Oプレス、シーム溶接後)の鋼管の溶接部を中心とする周方向120mm範囲での平均曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(平均円相当径)(r)との比(R/r)と拡管時の溶接部からの破断の有無(拡管破断なし(◇)、拡管時破断(●))との関係を示す。なお、拡管後の鋼管半径(r)は、Cプレスの曲率、及びOプレスでのアプセット量を適宜調整することで変化させた。
【0012】
図2からR/rが0.65未満、2.0を超えると拡管時に溶接部からの破断が発生し、R/rがこの範囲では、破断は起こらないことがわかった。
また、拡管時の拡管率を増大した場合の溶接部の歪み集中は、拡管前の鋼管溶接部近傍の平均曲率半径(R)や拡管後の鋼管半径(r)等に比べてその影響は、はるかに小さく、実質上、曲率比(R/r)のみに拡管時の溶接部の割れ性は支配されていることがわかった。
【0013】
図3に、上記の拡管時の溶接部破断が発生しないR/rの下限値(0.65)と上限値(2.0)の範囲内である場合の拡管後の鋼管半径(r)と拡管前の溶接部を中心とする周方向120mm範囲での平均曲率半径(R)の位置関係の模式図を示す。
破断面の観察結果からR/rの上限値:2.0より大きい場合には、拡管時に溶接部の外面側が破断の起点となり、R/rの下限値:0.65より小さい場合には、溶接部の内面側が破断の起点となって、それぞれ割れ、破断が発生することがわかった。
【0014】
したがって、本発明では、鋼管を製造する際の拡管時の溶接部割れ、破断を抑制するために、拡管前(Oプレス、シーム溶接後)の鋼管の溶接部を中心とする周方向120mm範囲での平均曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(平均円相当径)(r)との比(R/r)を0.65から2.0に規定する。これにより、引張強度が850N/mm2 を超える高強度鋼管をUOE方式で成形する際の拡管工程で発生するシーム溶接部の割れや破断を抑制でき、高強度鋼管の成形性及び生産効率を向上できる。
【0015】
ラインパイプ等の内圧が負荷される環境で使用する鋼管は、溶接部の割れや破断がないとともに、使用時の内圧負荷環境下でも溶接部からの破断がないことが好ましく、この目安として、鋼管バースト試験時に溶接部からの破断がなく、管体(母材)破断が達成することが好ましい。
さらに、発明者らは、上記R/rが0.65から2.0の条件を満足した拡管時の溶接部割れや破断がなく、良好な成形性を有する鋼管製品を用いて、水圧バースト試験を実施した。
【0016】
図5は、拡管前(Oプレス、シーム溶接後)の鋼管の溶接部を中心とする周方向120mm範囲での平均曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(平均円相当径)(r)との比(R/r)と得られた鋼管製品の水圧バースト試験でのバースト状況(管体破断(◇)、溶接部破断(脆性)(●)、溶接部破断(延性)(★))の関係を示す。図5からR/rが1より小さくなると溶接部からのバースト(破断)が起こり、R/rが1以上の場合では、管体(母材)からバースト(破断)することが判った。
【0017】
図4には、拡管時の拡管用セグメント(曲率半径が鋼管半径(r)相当)と拡管前の溶接部を中心とする周方向120mm範囲での平均曲率半径(R)との位置関係、及びその時の拡管時の歪み発生状況を示す。図4から、R/r<1の条件では、拡管時の曲げによる引張歪みが鋼管の内面側に集中し、R/r≧1の条件では、拡管時の曲げによる引張歪みが鋼管の外面側に集中することが理解できる。
【0018】
なお、発明者らの有限要素法による数値解析の結果、R/rが1より小さい条件では、拡管時の曲げ負荷によって管内面の溶接止端部に過大な塑性歪みが残留し、その塑性歪み量は、25%を超えることがわかった。したがって、鋼管の溶接部からのバーストのメカニズムは、鋼管成形時にR/rが1より小さい条件で拡管した場合に、鋼管の溶接部に過大な塑性歪みが残留し、その残留歪み量に、鋼管使用時の管圧負荷による引張歪み量が加わって限界破断歪みに達し、溶接止端部からバースト(破断)するものと考えれる。一方、R/rが1以上では、拡管時の曲げによる溶接部の残留歪みは圧縮側に作用し、拡管後の溶接部内面側の溶接止端部に残留する歪みは、圧縮雰囲気、または引張雰囲気の場合でもその値は低くなるから、さらにこれに鋼管使用時の管圧(内圧)負荷による引張歪み量が作用しても塑性歪み量は、鋼管成形時にR/rが1より小さい条件で拡管した鋼管に比べて圧倒的に小さくなり、鋼管使用時の溶接部の内面からのバースト(破断)は抑制される。なお、この場合、鋼管溶接部の外面からの破断は起きやすくなるわけであるが、鋼管使用時の管圧(内圧)負荷時の鋼管の応力状態は、外面側の方が内面側に比較して緩和されるため、溶接部全体としての破断強度は向上することとなる。
【0019】
以上のように鋼管の製造時において、拡管時のR/rの条件を調整することにより、拡管時の鋼管内外面の溶接止端部に発生する歪み量(残留歪み量)とその歪みの極性を制御し、鋼管使用時の内圧負荷により生じる限界破断塑性歪み量を低減して、溶接部のバーストを抑制(管体バーストの達成)することができる。また、水圧バースト試験で溶接部からバーストした試験材の破断面を観察したところ、R/rが0.9以上1.0未満の試験材では破断面が延性を呈し、R/rが0.9より小さい試験材は、脆性面を呈していた。
【0020】
ラインパイプ用鋼管では、溶接部からの割れのなかでも、特に、破断形態として、脆性破断は亀裂伝播速度が速く、亀裂伝播停止性が低く、ラインパイプの大きな破損をもたらす要因になるため、避けなければならない。この理由から、本発明では、ラインパイプの使用環境での鋼管の溶接部の脆性破断を抑制するために、拡管前(Oプレス、シーム溶接後)の鋼管の溶接部を中心とする周方向120mm範囲での平均曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(平均円相当径)(r)との比(R/r)を0.9から2.0に規定する。さらに好ましくは、ラインパイプの使用環境での鋼管の溶接部からの破断を完全に避けるために、R/rを1.0から2.0に規定する必要がある。また、本発明においては、拡管時の拡管割れ、シームバースト時の発生起点が溶接内面止端部からであること、角変形がバースト特性に影響を及ぼしているという知見に基づき、図6に示すように鋼管内面溶接止端部から4mmの位置に歪みゲージを貼付し、拡管時の周方向歪みを測定した。歪みは拡管時に連続的に最大拡管率に達するまで、あるいは拡管割れを起こすまで測定された。R/rが1以下の場合は総じて歪みは引張方向に単純増加を示し、1以上の場合には一端圧縮になった後、引張方向に転じる。ここで拡管工程での歪みの移動量と破断形態を比較した。係る歪みは実質上の相当塑性歪み量を意味する。その結果、引張歪みが4%を超えると溶接部より拡管割れが発生するサンプルが多発した。一方、所定の拡管が可能であったサンプルで歪み量が4%を上回るものはなかった。したがって、止端部から4mmの歪みを4%以内に制御することで拡管割れが防止できる技術を発明した。拡管に成功した鋼管のうち、いくつかを水圧バースト試験に供し、拡管時に測定された歪みとバースト破断形態を比較した。その結果、拡管歪みが2.5%を超えるとシーム溶接部からのバーストが多発することがわかった。一方、2.5%以下ではすべて管体よりバーストが起こった。したがって、止端部から4mm点の歪みを4%以内に制御したことで、内圧バーストに対するシーム溶接破断が防止できる鋼管を供給することができる。歪み制御位置を内面止端部から4mm位置とした理由について板端面近傍ではCプレス、Uプレス、Oプレスの影響を受けず、延性亀裂発生の指標となる限界相当塑性歪み量が他の製造工程に影響をされないこと、止端部近傍のマクロ的な歪み量を代表できること、HAZ軟化幅が止端部より2〜3mm存在し、歪みゲージ貼付による測定では誤差を生じやすいなどがあげられる。歪み指標の位置を4mm点よりさらに止端部から離れた個所に設定することも精度は劣るが可能であり、その場合は止端部からの距離に逆比例した歪みを制御してやればよい。発明者らは、溶接形状、母材強度、溶接金属強度、HAZ強度、HAZ幅が溶接継手強度の及ぼす影響を調査するため、有限要素法(以下FEM)による数値解析シミュレーションを試みた。表1に解析条件を示し、図7にFEMに使用した溶接継手の1/4モデルを示し、計算結果を図8に示す。
【表1】
Figure 0003898909
図8は相当塑性歪みが限界値に達したときに継手は破断する。同じ変位に対して歪み量が大きいほど歪みが集中していることを意味する。これより同じ開先形状であっても溶接金属余盛り高さが高いほど歪み集中は大きく、同じ溶接金属高さであっても開先角度が大きいほど歪み集中は小さいことがわかる。ケース毎に限界歪み量がわずかに異なるのは三軸応力度の影響である。ケース2のみが限界歪みに達し、ケース1とケース3では溶接止端部が限界歪みに達する以前に母材部に歪みが集中し、実際には溶接部破断が起こらないことがわかった。そこで溶接部の内面溶着金属の余盛り高さを変えて外径914mm、肉厚16mmの高強度鋼管について内圧バースト試験を行ったところ、必ずしも溶着金属余盛り高さに依存した破断形態とはならなかった。ここでいう、溶接金属余盛り高さとは図9で示す管内面を基準にした高さをいう。溶接部から破断したサンプルの破断面を観察したところ、ほとんどサンプルで内面が起点となり、脆性、あるいは延性破断しており、内圧力と時間の関係を示したグラフでは圧力は上昇過程にある段階でバーストしていることがわかった。これは溶接鋼管の耐圧力が本来母材が有する圧力以下(管体圧力以下)であることを意味する。前述したように拡管前に正のピーキングがあると拡管時に内面の溶接止端部に塑性歪みが集中するため、破断しやすくなるものと予測し、ピーキング量と内面溶接高さの関係で示したものを図10に示す。ここでピーキング量は図11の定義によるものとする。すなわち、いずれかの溶接止端部から60mmスパンでの管公称外径との相差を意味する。これより内面金属高さが2.0mm以下であってもピーキング量が1.0mmを超えるとバースト圧力は管体以下であることがわかった。一方、内面金属高さが2.0mm以下であってピーキング量が1.0mm以下のサンプルの水圧バースト試験ではポンプによる昇圧にもかかわらず、時間経過に伴う圧力増分は観察されず、そのまま破断するか、あるいはやや圧力が降下してから破断した。これは母材が引張強度に達したことを意味し、実使用上、問題のない耐圧力であり、管体同等の耐圧力があることを意味する。したがって、内面溶接金属高さを2.0mm以下にし、拡管前のピーキング量を1.0mm以下にすることで管体同等のバースト強度が達成できることを発見した。ピーキング量が−1.5mmを超えた場合は内面溶接金属高さが本発明範囲であっても管体圧力以下でバーストを生じた。破断面を調査したところ、破断の起点は溶接金属部外面からであった。したがって、ピーキング量が−1.5mmを超えた場合は本発明の効果は発揮されない。一般的にピーキング量が負になるほどOプレス時の開先安定性は悪化し、ピーキング量が−2.0mmを超えるとパックリングが起こりやすくなり、大量生産における安定した成形は困難となる。次に本発明範囲が他の肉厚、外径のパイプに対しても適用できるかを検討した。図12に内面の余盛り高さが2.0mm以下のバースト試験結果を示す。限界のピーキング量は肉厚が厚くなるほど小さくなり、管体同等の耐圧力を発揮できる正のピーキング量は16/管肉厚(mm)で決まる。大量生産においても安定的に生産するにはピーキング量を0≦16/管肉厚(mm)−−−(2)
の範囲に制御することが望ましい。拡管前に正ピーキング値を有していたサンプルのシーム溶接部の破断起点は内面であり、負ピーキング値を有していたサンプルの破断起点が外面であった。バーストに対する溶接部の破断抵抗は止端部、HAZ部への塑性歪み集中に起因し、さらにその絶対量は主に拡管前後でのピーキングの変化量に依存すると考えた。そこで拡管前後でのピーキング値を測定し、拡管前のピーキング量と拡管後の変化量で表したものを図13に示す。これより拡管前のピーキングは拡管により狙い曲率である管公称径に近づいてはいるものの矯正しすぎる方向(図13では管公称径よりピーキング変化量が大きい側)への分散が大きいことがわかった。この中より内面溶接の余盛り高さが2.0mm以下のサンプルを抽出し、バースト試験を行った結果を図14に示す。耐圧力、破断形態の関係から、耐圧力が管体以下でシームバーストを起こすもの、耐圧力が管体同等でシームバーストを起こすもの、耐圧力が管体同等で管体部からバーストを起こすものに分類した。これより拡管前ピーキング量が−1.5mm〜1.0mmであっても拡管時のピーキング変化量が1mmを超えるものはシームバーストを起こしたが、1mm以下、−1.5mm以上であれば管体からバーストした。拡管前後でのピーキング変化量が小さいほどバースト特性が向上する理由としてピーキング変化量が溶接部への歪み集中にもっとも影響を与えるためである。ピーキング許容量が負側で大きい理由は角変形による圧縮歪みが周方向引張歪みと相殺されるため、結果として相当塑性歪み量が小さくなるからである。ピーキング値以外にも溶接部への歪み集中を招く、成形指標に拡管率があげられるが、管全体の真円度確保のためには拡管率を低下させることはできず、米国石油協会規定による真円度を公称外径の±1%にするためには0.7%以上の拡管率が必要となり、通常、0.8%〜1.2%の拡管率が適用される。拡管率による歪み増分よりもピーキングを矯正するための角変形の方が止端部、HAZ部への歪み集中はるかに大きくなり、実質上、ピーキングにより溶接部強度が支配されていると言ってよい。
【0021】
【実施例】
以下に実施例について説明する。
<実施例1>
この実施例においては、本発明例および比較例について、表2に示す鋼管仕様として鋼板強度、成形後外径、肉厚を様々の仕様に変え、更に、鋼管の成形条件として、拡管前の溶接部を中心とした120mm範囲の曲率:R、特定の拡管率で拡管した後の鋼管半径:r、R/r比の各条件を変更して成形した鋼管について、拡管時のシーム溶接部での破断状態、また一部鋼管については水圧バースト試験における破断状態、破断部位および破面状況について観察した結果を併せて表2に示した。また、外径914.4mm、711.2mm肉厚16mm、12mm、20mm、14mmの鋼管についての水圧バースト試験におけるピーキング値、内溶接金属面余盛り高さ、破断強度および破断形態について観察した結果を表3に示した。
【0022】
【表2】
Figure 0003898909
【表3】
Figure 0003898909
【0023】
表2、表3から分かるように、本発明例である1、3、5、7〜12、14〜18の各鋼管については何れも拡管時にシーム溶接部から破断するものはなかったが、水圧バースト試験では一部の鋼管においてシーム溶接部或いは管体部から破断したものの、破断面は延性断面であった。一方、比較例である1〜5の各鋼管については何れも拡管時にシーム溶接部から破断し、鋼管成形が不可能であった。また、比較例である6〜9の各鋼管については何れも拡管時にシーム溶接部から破断したものはなかったが、水圧バースト試験では一部の鋼管においてシーム何れも拡管時にシーム溶接部から破断し、破断面は脆性断面であった。
【0024】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、引張強度が850N/mm2 を超える高強度鋼管のUOE方式による製造方法において、拡管時のシーム溶接部割れ、破断がなく成形性及び生産効率を向上できるとともに、得られる鋼管の使用時の内圧負荷環境下での溶接部からの脆性破断などの大きな破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】UOE方式による鋼管の製造工程の概略図。
【図2】拡管前の溶接近傍部の曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(r)との比(R/r)と、拡管時のシーム溶接部の破断有無の関係を示す図。
【図3】拡管後の鋼管半径(r)と拡管前の溶接近傍部の曲率半径(R)の位置関係を示す図。
【図4】拡管時の拡管用セグメントと拡管前の溶接近傍部の曲率半径(R)との位置関係、及びその時の拡管時の歪み(極性)発生状況を示す。
【図5】拡管前の溶接近傍部の曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(r)との比(R/r)と、水圧バースト試験時の破断形態の関係を示す図。
【図6】拡管時の歪測定方法を示す図。
【図7】有限要素法に使用した溶接継手モデルを示す図。
【図8】引張時の歪み解析結果を示す図。
【図9】内面溶接金属余盛り高さを示す模式図。
【図10】バースト特性に及ぼすピーキング量と内面溶接金属高さの影響を示す図。
【図11】ピーキング量の定義を示す図。
【図12】管肉厚と限界ピーキング量の関係を示す図。
【図13】拡管前のピーキング量と拡管後の増減値を示す図。
【図14】拡管前後でのピーキング変化量とバースト破断形態の関係を示す図。

Claims (4)

  1. 引張強度が850N/mmを超える高強度鋼管をUOE方式により製造する高強度鋼管の製造方法において、拡管工程における拡管前の鋼管の溶接部を含む周方向120mm範囲での平均曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(r)との比(R/r)が0.90〜2.0であることを特徴とする成形性及びバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法。
  2. 管時の溶接止端部から4mm点の周方向歪みが2.5%以下であることを特徴とする請求項1記載の成形性及びバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法
  3. 引張強度が850N/mmを超える高強度鋼管をUOE方式により製造する高強度鋼管の製造方法において、拡管工程における拡管前の鋼管の溶接部を含む周方向120 mm 範囲での平均曲率半径(R)と拡管後の鋼管半径(r)との比(R/r)が0.65〜2.0であり、拡管時の溶接止端部から4mm点の周方向歪みが4%以下であることを特徴とする成形性に優れた高強度鋼管の製造方法。
  4. 引張強度が850N/mmを超える高強度鋼管をUOE方式により製造する高強度鋼管の製造方法において、拡管前のピーキング量が式(1)の関係を満たし、内面溶接金属の余盛り高さが2.0mm以下であり、拡管前後でのピーキング量の変化が式(2)の関係を満たすことを特徴とする成形性及びバースト特性に優れた高強度鋼管の製造方法
    −1.5mm≦ピーキング量(mm)≦16/管肉厚(mm)−−−(1)
    −1.5mm≦ピーキング変化量(mm)≦1.0mm −−−(2)
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