JP2017170490A - 溶接鋼管及び給油管 - Google Patents

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【課題】70%以上という高い拡管率で拡管しても加工割れが生じるのを抑えることの可能な溶接鋼管を提供する。【解決手段】本発明の溶接鋼管1は、母材が鋼からなり、ビードカットされた溶接部2を含む。そして、母材は、溶接部2に隣接する熱影響部3と、熱影響部3の外側に位置する母材部4とを含む。溶接部2、熱影響部3及び母材部4において測定された板厚(単位mm)とビッカース硬さ(単位HV)との積をその測定位置での破壊強度であるとしたとき、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和を、溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D)で除した評価値(F)は、0以上25未満である。溶接鋼管1は、一端1Aが他端1Bに比べて70%以上拡管された給油管として好適に用いられる。【選択図】図1

Description

本発明は、拡管加工性に優れる溶接鋼管に関する。また、本発明は、車両の燃料タンクに接続される給油管に関する。
給油管10は、一端10Aが給油口として拡管され、他端10Bが燃料タンク11に接続された状態で車両に搭載される(図20)。気密性に劣る給油管を使用すると、気化した燃料が大気中に散逸し、地球環境に影響を及ぼす一因となり得る。そこで、給油管には、高い気密性が求められる。
従来、給油管の素材として、気密性に優れる溶接鋼管(電縫鋼管)が使用されている。溶接鋼管とは、肉厚が一定な圧延鋼板を管状に丸め、その継目が溶接された鋼製の管をいう。鋼管の素材は、加工性に優れる普通鋼が従来から使用されている。また、長期間にわたって良好な気密性を維持するため、耐食性に優れるステンレス溶接鋼管を用いることが提案されている。ステンレス鋼は、めっき、塗装によることなく錆発生を防止できる点で優れた機能性を有している。
ところで、車両の軽量化に伴い、給油管においても素管の小径化が進められており、近年、素管の外径は、25.4mmや28.6mmが主流になりつつある。しかしながら、給油口の内径は、給油スタンドの給油ノズル径に合わせて、従来どおり50mm程度の大きさである。素管の一端は、給油口の形状に成形するため、70%以上の大きな拡管率で拡管加工することが必要であり、給油管用の素材には、高い加工性が求められる。
しかしながら、ステンレス鋼は、普通鋼に比べて硬質で加工硬化し易い素材である。そのため、ステンレス鋼の溶接鋼管を大きな拡管率で拡管加工すると、普通鋼の溶接鋼管に比べて、加工割れが生じ易く、所定の形状精度で成形することが困難である(特許文献1参照)。
溶接鋼管を拡管加工する際の加工割れを防止する手法としては、鋼帯の両端部を溶接して形成された溶接部にビードカットを行い、造管前の鋼帯の板厚を基準として溶接部の肉厚を86%以上にし、溶接部から180度離れた反対側母材部の肉厚を98%以上にすることが提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2に記載の手法は、普通鋼の溶接鋼管について、溶接部及び母材部における肉厚と硬さとのバランス化を図ったものである。しかしながら、その手法は、溶接部中央と、この溶接部中央から180度離れた反対側母材部と2箇所における肉厚を検討したものであり、溶融鋼管の全体について検討されたものではない。溶接鋼管は、溶接部に隣接する母材には、溶接入熱の影響を受けた熱影響部が形成され、それに伴って材料特性も変化する。そこで、普通鋼の溶接鋼管や、普通鋼に比べて加工割れが生じ易いステンレス鋼管については、溶接鋼管全体の材料特性を検討することで、さらなる改良が求められている。
一般的に、鋼材を溶接すると、組織変化により、溶接部の硬さは、鋼材の硬さに比べて大きくなるので、溶接鋼管の溶接部は、鋼管の母材に比べて硬い。溶接鋼管における硬さと引張強さとは、比例する傾向にあるので、溶接鋼管の溶接部は、母材に比べて、引張強さが大きく、延性が低いという性質を示す。溶接鋼管に拡管加工が施されると、管材が管周方向へ拡張する変形が生じる一方で、管軸方向には、管周方向の変形量を補償するように縮減する変形が生じる。溶接部の硬さが高く、硬化領域幅の広い溶接鋼管である場合は、拡管する際に、溶接部と母材とで変形しやすさが異なり、溶接部の管軸方向の縮み量が母材の管軸方向の縮み量に比べて小さく、溶接部が管周方向に伸びにくい。このように、溶接部が母材に比べて塑性変形しにくい場合、溶接入熱の影響を受けなかった母材部のうち、溶接部近傍の母材領域において、拡管成形による管周方向の引張応力が集中するとともに、管軸方向のせん断応力も加わり、溶接鋼管の加工割れが生じ易いと考えられる。
一方、溶接部の硬さが低く、硬化領域幅の狭い溶接鋼管である場合は、溶接部の硬さが母材の硬さに近いので、拡管する際、溶接部の管軸方向の縮み量は、母材の管軸方向の縮み量と同程度である。このような溶接鋼管では、溶接入熱の影響を受けた熱影響部において硬さの低い部分が形成されることがあるので、熱影響部付近では加工割れが生じ易い傾向にある。ここで、加工性と関係する指標として、板厚と硬さとの積で表される数値を「破壊強度」と称することにする。また、熱影響部の外側に位置する母材の領域を母材部ということにする。加工割れは、溶接部の破壊強度が母材部の平均破壊強度を下回る箇所において生じ易い傾向にある。したがって、溶接鋼管の拡管加工においては、溶接部付近の破壊強度が母材部の平均破壊強度以上である溶接鋼管が望ましいとされている(非特許文献1を参照)。
特開2005−271040号公報 特開2000−246332号公報
大塚雅人、「普通鋼給油管の拡管成形性におよぼす素管特性および加工条件の影響」、日新製鋼技報No.89(2008)
非特許文献1によると、溶接鋼管の拡管加工においては、溶接部の破壊強度(板厚×硬さ)が母材部の破壊強度を上回ることが望ましいといえる。母材部の破壊強度より溶接部の破壊強度を高くすると、拡管加工する際に、溶接部の変形が小さくなるため、溶接鋼管の周方向の歪みが抑制されて溶接鋼管の加工割れを防止することができる。
しかしながら、溶接部の破壊強度が高くなりすぎると、溶接部の変形が困難になるため、溶接部近傍の母材部に歪みが過度に集中し、母材部で割れが生じる恐れがある。拡管加工の際に溶接鋼管の加工割れを防止する対策としては、硬化領域である溶接部の板厚を減じることにより、溶接部の破壊強度が大きくなり過ぎないように制御することが挙げられる。ただ、その場合でも、溶接部内において母材部よりも破壊強度が下回る箇所が存在すると、その箇所で加工割れが発生することがあるので、留意する必要がある。
本発明は、以上のような課題を解決するために案出されたものであり、70%以上という高い拡管率で拡管しても、加工割れの発生を抑えることができる溶接鋼管を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、溶接部の中心位置から熱影響部の領域に至るまでのビードカット構造を、破壊強度が一定の範囲に収まる形状となるように形成することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明は、母材が鋼からなり、ビードカットされた溶接部を含む溶接鋼管であって、前記母材は、前記溶接部に隣接する熱影響部と、前記熱影響部の外側に位置する母材部とを含み、前記溶接部、前記熱影響部及び前記母材部において測定された板厚(単位mm)とビッカース硬さ(単位HV)との積をその測定位置での破壊強度であるとして0.3mm間隔おきに破壊強度を測定したとき、前記溶接部及び前記熱影響部の破壊強度(Fs)と前記母材部の破壊強度(Fm)との差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和を、前記溶接部および前記熱影響部における管周方向の距離(D)で除した評価値(F)は、0以上50未満である、拡管加工性に優れる溶接鋼管である。
(2)また、本発明は、前記母材がステンレス鋼からなり、前記評価値が0以上10未満である、(1)に記載の拡管加工性に優れる溶接鋼管である。
(3)また、本発明は、前記母材が普通鋼からなり、前記評価値が0以上25未満である、(1)に記載の拡管加工性に優れる溶接鋼管である。
(4)また、本発明は、前記熱影響部の破壊強度が前記母材部の破壊強度よりも大きい、(1)〜(3)のいずれかに記載の拡管加工性に優れる溶接鋼管である。
(5)また、本発明は、前記熱影響部の少なくとも一部がビードカットされている、(1)〜(4)のいずれかに記載の拡管加工性に優れる溶接鋼管である。
(6)また、本発明は、(1)〜(5)のいずれかに記載の溶接鋼管を含み、前記溶接鋼管の一端の内径は、前記溶接鋼管の他端の内径に比べて70%以上大きく、前記一端には、給油口が設けられ、前記他端には、給油タンクが接続される、給油管である。
本発明によると、70%以上という高い拡管率で拡管しても、加工割れの発生を抑えることが可能な溶接鋼管を提供できる。
本実施形態の溶接鋼管を説明する図である。 本実施形態の溶接鋼管において、破壊強度を測定する位置を説明する第1の図である。 本実施形態の溶接鋼管において、破壊強度を測定する位置を説明する第2の図である。 本実施形態の溶接鋼管において、溶接部の中央からの距離と、その距離での母材部との破壊強度差との関係を示す図である。 本実施形態の溶接鋼管を用いた給油管の一例を示す図である。 試験例1−1〜1−4の溶接ステンレス鋼管の形状を説明する図である。 母材部のビッカース硬さを測定するにあたり、ビッカース硬さを測定する位置を説明する図である。 試験例1−1の溶接ステンレス鋼管について、溶接部の中央からの距離とビッカース硬さとの関係を示す図である。 試験例1−1〜1−4の溶接ステンレス鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での板厚との関係を示す図である。 試験例1−1の溶接ステンレス鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での破壊強度及び母材部に対する破壊強度差との関係を示す図である。 試験例1−2の溶接ステンレス鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での破壊強度及び母材部に対する破壊強度差との関係を示す図である。 試験例1−3の溶接ステンレス鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での破壊強度及び母材部に対する破壊強度差との関係を示す図である。 試験例1−4の溶接ステンレス鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での破壊強度及び母材部に対する破壊強度差との関係を示す図である。 試験例1−1〜1−4の溶接ステンレス鋼管を拡管する際に使用したポンチの形状を示す図である。 試験例2−1の溶接普通鋼管について、溶接部の中央からの距離とビッカース硬さとの関係を示す図である。 試験例2−1の溶接普通鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での破壊強度及び母材部に対する破壊強度差との関係を示す図である。 試験例2−2の溶接普通鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での破壊強度及び母材部に対する破壊強度差との関係を示す図である。 試験例2−3の溶接普通鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での破壊強度及び母材部に対する破壊強度差との関係を示す図である。 試験例2−4の溶接普通鋼管について、溶接部の中央からの距離と、その距離での破壊強度及び母材部に対する破壊強度差との関係を示す図である。 従来使用される給油管の一例を示す図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<拡管加工性に優れる溶接鋼管1>
図1の(A)は、本発明に係る拡管加工性に優れる溶接鋼管1の概略模式図であり、図1の(B)は、図1の(A)における領域Rを左側面視したときの拡大図である。溶接鋼管1は、肉厚が一定な圧延鋼板を管状に丸め、その継目が溶接された鋼製の管であり、電縫鋼管とも呼ばれる。
溶接鋼管1は、母材が鋼からなり、ビードカットされた溶接部2を含む。そして、母材は、溶接部2に隣接する熱影響部3と、熱影響部3の外側に位置する母材部4とを含む。
〔母材〕
母材の材質は、鋼からなるものであれば、特に限定されず、普通鋼であってもよいし、ステンレス鋼であってもよい。中でも、めっき、塗装によることなく錆発生を防止でき、長期間にわたって良好な気密性を維持できることから、母材の材質は、ステンレス鋼であることが好ましい。
ステンレス鋼として、フェライト系、オーステナイト系、マルテンサイト系等が知られている。ステンレス鋼の種類は、特に限定されず、フェライト系であってもよいし、オーステナイト系であってもよいし、マルテンサイト系であってもよい。
〔溶接部〕
溶接部2には、ビードカットが施されている。このビードカットにより、溶接部2の厚さが調整され、溶接部2の破壊強度が適度な範囲内に調整されている。
溶接鋼管は、通常、肉厚が一定な圧延鋼板を管状に丸め、その継目を溶接して接合することにより作製される。この接合には公知の溶接法が適用される。例えば、高周波溶接、抵抗溶接、プラズマ溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接などを用いて、突き合わせた継ぎ目を接合する溶接法、TIG、MIG等の溶接棒を用いて、継ぎ目を溶接金属で埋める溶接法が使用される。
溶接後、溶接部の表面には、余盛り、オーバーラップ、アンダーカット等の凹凸状の形状不良が生じるときは、この凹凸を除いて平滑化するための切削加工(ビードカット)が施される。このビードカットを行う際、母材の厚みを下回るまで溶接部表面を多く切削すると、溶接部の肉厚不足に起因して加工割れの原因になると従来考えられていた。
しかしながら、本発明者らは、ビードカットにより溶接部表面を平滑にした溶接鋼管であっても、拡管加工に施すと、母材の領域で加工割れが生じる可能性があることに着目した。本実施形態は、ビードカットを行う際、母材部4の肉厚に比べ、あえて一定程度で多く切削することにより、加工割れの発生を抑制したことに技術的意義を有する。
好適なビードカットの範囲については、後に詳しく説明する。
〔熱影響部及び母材部〕
通常、溶接部2に隣接する母材の領域には、溶接入熱の影響を受けた熱影響部3が形成される。母材は、熱影響部3と、その外側に位置する溶接入熱の影響を受けていない母材部4とを含む。
本明細書においては、熱影響部3と母材部4との境界は、溶接部2の中央Oから、管周方向Cへ向けてほぼ一定間隔でビッカース硬さを測定したときに、母材のビッカース硬さ(Vm)より2HV大きい硬さ(Vm+2HV)を示す位置であるとする。ビッカース硬さの測定法については、後に説明する。
一般に、鋼材を溶接すると、熱影響部3の硬さは、その外側に位置する母材部4の硬さより高くなる傾向にある。この傾向について、板厚と硬さとの積で表される破壊強度の観点から評価すると、熱影響部3の破壊強度と母材部4の破壊強度との差が大きいと、溶接鋼管1を拡管する際、熱影響部3の管軸方向Lの縮み量が母材部4の管軸方向Lの縮み量に比べて小さく、熱影響部3が管周方向Cに伸びにくい性質を示す。このように、熱影響部3が母材部4に比べて塑性変形しにくい場合、熱影響部3のうち、母材部4に近い箇所において、拡管成形による管周方向Cの引張応力が集中するとともに、管軸方向Lのせん断応力も加わり、溶接鋼管1の加工割れが生じ易くなる。
そこで、熱影響部3の破壊強度と母材部4の破壊強度との差を小さくするため、熱影響部3の少なくとも一部にビードカットが施されていることが好ましい。
〔好適なビードカットの範囲〕
以下、好適なビードカットの範囲について説明する。好適なビードカットの範囲は、評価値(F)を用いて規定される。
本実施形態では、溶接部2及び熱影響部3の各々の測定位置における破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)に、測定位置の間隔である0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和を、溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D)で除した値を評価値(F)としている。
本実施形態に記載の発明において、評価値(F)は、0以上25未満である。
母材がステンレス鋼からなる場合、評価値(F)は、0以上10未満であることが好ましく、1以上10未満であることがより好ましい。
そして、母材が普通鋼からなる場合、評価値(F)は、0以上25未満であり、1以上25未満であることが好ましい。
一般に、溶接部2は、母材部4に比べて硬化した領域であるから、溶接部2の破壊強度は、母材部4の破壊強度を上回ることが多い。このような硬化領域は、溶接部を中心にして両側の熱影響部まで分布する。この硬化領域の破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)が大きいと、この硬化領域は、母材部4に比べて塑性変形しにくいので、溶接部に隣接する熱影響部付近で加工割れが生じ易い。このような加工割れを抑制する観点から、破壊強度の差(ΔF)が一定程度以下であることが望ましい。
破壊強度の差(ΔF)は、溶接部中心からの距離(d)に応じて変化する。そこで、破壊強度差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)を総和することにより、硬化領域と母材部4との加工性に関する差を明確に評価できる。具体的には、縦軸を距離(d)の測定箇所における破壊強度差(ΔF)とし、横軸を距離(d)とした分布図において、それに示された分布面積に相当する値を求めることにより、評価が可能となる。
言い換えると、溶接部2及び熱影響部3の各々の測定位置における破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和が、それに相当する。
ここで、破壊強度差(ΔF)の算出範囲は、造管の際に溶接入熱の影響を受ける範囲、すなわち、溶接部2及び熱影響部3としている。しかしながら、溶接部2の中央Oから、熱影響部3と母材部4との境界までの管周方向の距離(D)は、溶接条件に依存し、その結果、ΔF×0.3の総和も変化する。
そこで、本実施形態では、評価値(F)を溶接条件に依存しないパラメータとするため、破壊強度差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和を、溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D)で除した値を評価値(F)としている。
上記距離(D)は、管周方向に沿った距離としている。ただ、溶接部等の大きさは、管曲率半径に比べて相当に小さいので、当該距離(D)は、溶接部2及び熱影響部3との境界である2つの位置を結んだ直線距離にほぼ等しい。また、ビードカット幅についても、管周方向に沿った距離は、直線で結んだ距離にほぼ等しい。
硬化領域である溶接部2及び熱影響部3の破壊強度と母材部4の破壊強度との差が大きいほど、評価値(F)が大きくなる。評価値(F)が大きすぎると、母材部4に歪みが集中し、加工割れが生じやすくなる。このような加工割れを抑制する観点で、評価値(F)は、50未満が好ましい。
その一方で、母材部4の破壊強度を下回る箇所においても加工割れが発生することがある。このような加工割れを抑制する観点から、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度は、母材部4の破壊強度以上であることが望ましい。そのため、破壊強度差に関する評価値(F)は、0以上が好ましい。
本実施形態では、一例として、溶接部2や熱影響部3の内面側にビードカット(アンダービードカット)が施された溶接鋼管を説明している。評価値(F)が適正な範囲内にあれば、これに限るものではない。溶接部2及び熱影響部3の外面側にビードカット(オーバービードカット)が施されていてもよいし、内面側と外面側の両方にビードカットが施されていてもよい。
[破壊強度の測定]
図2及び図3を参照しながら、本実施形態における破壊強度を求める測定法について説明する。
本実施形態において、破壊強度は、各々の測定位置での板厚(単位:mm)とビッカース硬さ(単位:HV)との積により求められるパラメータである。板厚の測定法は、JIS G0589:2013にしたがうものとする。ビッカース硬さの測定法は、JIS Z2244:2009にしたがうものとする。その際、ビッカース荷重は、0.1kgとする。
図2の(A)は、溶接鋼管1の左側面図であり、図2の(B)は、図2の(A)のA−A断面図である。
溶接部2の中央Oは、次のように定めるものとする。溶接部2を研磨した後、エッチングする。エッチングされた溶接部2の組織を光学顕微鏡で観察すると、柱状晶組織を呈する領域が観察される。その領域の幅の二等分線上を溶接部2の中央Oとする。
また、図2の(B)に示すとおり、破壊強度の測定は、溶接鋼管1の一端から長手方向に10mm離れた箇所において行うものとする。
測定位置の間隔は、ビッカース硬さを測定する際にできる圧痕3個分以上の間隔であり、上記評価値の精度が保たれる間隔であれば、特に限定されるものでない。上記評価値の精度と、測定の手間とを考慮して任意に設定すればよい。本発明は、図3に示すように、測定位置の間隔を、溶接部2の中央Oから0.3mm間隔であるものとする。また、板厚方向のほぼ中央付近で管周方向に沿って測定されている。
溶接部2及び熱影響部3の各々の測定位置における破壊強度をFsとする。
また、母材部4の破壊強度をFmとする。図2に示すように、母材部4の破壊強度(Fm)は、溶接部2の中央Oから管周方向Cの時計回りに+90°離れた位置Pと、溶接部2の中央Oから管周方向Cの時計回りに−90°離れた位置(溶接部2の中央Oから管周方向Cの反時計回りに90°離れた位置)Pとの2箇所における破壊強度の平均値であるものとする。
そして、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差をΔFとする。
[ΔF×dの総和の求め方]
図4を参照しながら、ΔFと、溶接部2の中央Oから測定位置までの管周方向Cの距離(d)との積(ΔF×d)の総和の求め方を説明する。
図4は、溶接部2の中央Oから測定位置までの管周方向Cの距離(d)と、その測定位置での破壊強度差(ΔF)との関係を示す図である。
横軸は、溶接部2の中央Oから測定位置までの管周方向Cの距離(d)を示している。単位は、mmである。溶接部2の中央Oが「0」であり、溶接部2の中央Oから管周方向Cの時計回りの方向を正(プラス)とし、溶接部2の中央Oから管周方向Cの反時計回りの方向を負(マイナス)としている。
横軸の範囲は、溶接部2及び熱影響部3に相当する範囲である。熱影響部3とそれ以外の母材部4との境界は、溶接部2の中央Oから、管周方向Cへ向けて0.3mm間隔でビッカース硬さを測定したときに、母材のビッカース硬さ(Vm)より2HV大きい硬さ(Vm+2HV)を示す位置である。それぞれの位置は、図3において、−d、+dで示されている。
縦軸は、横軸の測定位置における破壊強度差(ΔF)を示している。上述したように、破壊強度は、破壊強度の測定位置での板厚(単位:mm)とビッカース硬さ(単位:HV)との積で求められる。この破壊強度差(ΔF)は、その測定位置での溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)と、母材部4の破壊強度(Fm)との差であり、前者(Fs)から後者(Fm)を差し引くことで求められる値である。
図4に示すように、破壊強度の測定結果から得られた破壊強度の差(ΔF)がプロットされる。プロットされた点を結ぶことで、距離(d)に応じた破壊強度差(ΔF)の変化が表わされる。この変化する線と横軸とで囲まれる領域の面積Sが、破壊強度差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和に相当する。
したがって、上記総和は、図4に示すプロットから求めることができる。本実施形態では、上述したように0.3mm間隔でビッカース硬さ(単位HV)と板厚(単位mm)を測定するから、破壊強度差をプロットする点は、図4のように、0.3mm間隔でプロットされる。プロットされた点を直線で結んで囲まれた領域の面積に相当する数値を求めることができる。その面積を、溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D)で除することにより、評価用の数値(F)を得ている。
<給油管10>
本実施形態に記載の溶接鋼管1の用途は、特に限定されるものでないが、気密性及び加工性に優れる点で、給油管として用いられることが好ましい。
図5は、本実施形態に記載の溶接鋼管1を給油管として用いた場合の模式図である。溶接鋼管1の一端1Aの内径は、溶接鋼管1の他端1Bの内径に比べて70%以上大きい。また、溶接鋼管1の一端1Aの内径は、溶接鋼管1の他端1Bの内径に比べて100%以上大きくすることもできる。そして、一端1A(内径が大きい方の端部)は、給油口として機能し、他端1B(内径が小さい方の端部)には、給油タンク11が接続される。
溶接鋼管1の径は、特に限定されるものではない。溶接鋼管1を給油管として用いる場合、溶接鋼管1の外径は、給油タンク11の排出口の外径と略同じであることが好ましい。特に、溶接鋼管1の外径を30mm以下にすることが好ましく、28.6mmにすることがより好ましく、25.4mmにすることがさらに好ましい。溶接鋼管1の外径が小さいほど、本実施形態に記載の溶接鋼管1を給油管として搭載した車両の軽量化に寄与できる。
溶接鋼管1を拡管する手法は、特に限定されないが、生産性に優れ、多段拡管成形を行うことで拡管率100%以上の高拡管成形も可能な点で、ポンチ拡管によって拡管することが好ましい。ポンチ拡管は、ポンチを溶接鋼管1の一端(内径を大きくしようとする方の端部)に圧入し、拡管する手法である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
<試験例1> ステンレス鋼での検討
図6に示すとおり、ビードカットの形状がそれぞれ異なる4種類の溶接鋼管1について、溶接鋼管を拡管加工したときの溶接鋼管1の加工割れの程度を評価した。
〔素管の作製〕
供試材は、外径が25.4mmであり、板厚が0.8mmであるステンレス鋼レーザー溶接鋼管である。厚さ一定のステンレス鋼板を管状に丸め、その継目をレーザー溶接した。レーザー溶接後の溶接部2の幅は、2mmとした。
続いて、溶接部2を研磨した後にエッチングを行い、溶接部2の組織を光学顕微鏡で観察した。柱状晶組織の領域が認められ、その領域幅の二等分線上を溶接部2の中央Oとした。
試験例1−1の溶接鋼管1は、ビードカット(アンダービードカット)を施していない素管である。
〔熱影響部3と母材部4との境界の確定〕
[母材部4のビッカース硬さの測定]
試験例1−1について、図7に示すように、溶接部2の中央Oから管周方向Cの時計回りに+90°離れた位置Pと、溶接部2の中央Oから管周方向Cの時計回りに−90°離れた位置(溶接部2の中央Oから管周方向Cの反時計回りに90°離れた位置)Pとの2箇所でビッカース硬さを測定した。ビッカース硬さの測定法は、JIS Z2244:2009にしたがい、ビッカース荷重は、0.1kgとした。その結果、P及びPでのビッカース硬さの平均値は、157HVであった。このビッカース硬さを、母材部4のビッカース硬さとした。
[溶接部2の中央Oの周囲のビッカース硬さの測定]
試験例1−1について、溶接部2の中央Oから0.3mm間隔でビッカース硬さを測定した。結果を図8に示す。
図8の横軸は、溶接部2の中央Oから測定位置までの管周方向Cの距離(d)を示している。単位は、mmである。溶接部2の中央Oが「0」であり、溶接部2の中央Oから管周方向Cの時計回りの方向を正(プラス)とし、溶接部2の中央Oから管周方向Cの反時計回りの方向を負(マイナス)としている。
図8の縦軸は、横軸の測定位置におけるビッカース硬さ(単位:HV)を示している。
[境界の確定]
溶接部2の中央Oのビッカース硬さは、202HVであり、溶接部2のビッカース硬さは、母材部4のビッカース硬さに対して1.29倍であった。
そして、溶接部2の中央Oから離れるにつれて、ビッカース硬さは低くなり、溶接部2の中央Oから3mm以上離れた箇所では、母材部4のビッカース硬さとの差が2HV以内に収束していた。その結果、熱影響部3と母材部4との境界は、溶接部2の中央Oから3mm離れた位置であることが確認された。
〔試験体の作製〕
図6に戻る。素管(試験例1−1)の内面側に、図5の(B)〜(D)に示す形状のビードカット(アンダービードカット)を施し、試験例1−2〜1−4の溶接鋼管1を得た。
試験例1−1は、素管のままであり、ビードカットが施されていない。
試験例1−2は、素管の内面側に、ビードカット幅の長さ(溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D))が2mm、溶接部2の中央Oでの深さが0.15mmになるようにビードカットが施されている。試験例1−2では、溶接部2の略全体にわたってビードカットが施されている一方、母材部4にはビードカットが施されていない。
試験例1−3は、素管の内面側に、ビードカット幅の長さ(溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D))が3mm、溶接部2の中央Oでの深さが0.1mmになるようにビードカットが施されている。試験例1−3では、溶接部2に加え、熱影響部3の略全体にわたってビードカットが施されている。一方、母材部4にはビードカットが施されていない。
試験例1−4は、素管の内面側に、ビードカット幅の長さ(溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D))が6mm、溶接部2の中央Oでの深さが0.1m7mになるようにビードカットが施されている。試験例1−4では、溶接部2に加え、熱影響部3の略全体、及び母材部4の一部にわたってビードカットが施されている。
〔拡管加工性に関する評価値の算出〕
試験例1−1〜1−4について、溶接部2及び熱影響部3における破壊強度を比較するため、試験例1−1〜1−4のそれぞれについて、溶接部2及び熱影響部3の板厚及びビッカース硬さを測定した。結果を図9〜図13に示す。
図9は、試験例1−1〜1−4のそれぞれにおける、溶接部2及び熱影響部3の板厚の測定結果である。
図9の横軸のパラメータは、図8の横軸と同様に、溶接部2の中央Oから測定位置までの管周方向Cの距離(d)を示している(単位mm)。「0」、正(プラス)、負(マイナス)についても同様である。
図9の縦軸は、横軸に相当する測定位置での板厚(単位:mm)である。
図9において、正方形は、試験例1−1の測定結果を示し、ひし形は、試験例1−2の測定結果を示す。また、三角形は、試験例1−3の測定結果を示し、丸は、試験例1−4の測定結果を示す。
図10〜図13は、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)の測定結果を示すグラフである。また、図10〜図13は、それぞれの測定位置での破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)を示すグラフでもある。
図10は、試験例1−1について図示したものであり、図11は、試験例1−2について図示したものである。また、図12は、試験例1−3について図示したものであり、図13は、試験例1−4について図示したものである。
特に、図13は、各測定位置における破壊強度(Fs)と破壊強度(Fm)との差(ΔF)が小さい。そのため、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)の測定結果を示すグラフと、各測定位置における破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)を示すグラフとを2つの図に分けている。図12の(A)は、前者を示し、図12の(B)は、後者を示す。
図10〜図13の横軸は、図8の横軸と同様に、溶接部2の中央Oから測定位置までの管周方向Cの距離(d)を示している(単位mm)。「0」、正(プラス)、負(マイナス)についても同様である。
図10〜図13の縦軸は、横軸の測定位置における破壊強度(Fs)(単位:mm×HV)、あるいは、その測定位置での破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)(単位:mm×HV)を示している。
図10〜図13において、正方形は、横軸に相当する測定位置での破壊強度(Fs)を示す。また、ひし形は、その測定位置での破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)を示す。
図10〜図13を用いて、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和が求められる。
試験例1−1における総和は、図10の領域S1−1の面積であり、120である。試験例1−2における総和は、図11の領域S1−2の面積であり、60である。試験例1−3における総和は、図12の領域S1−3の面積であり、30である。試験例1−4における総和は、図13の(B)の領域S1−4の面積であり、6である。
また、これらの総和を、溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D)で除することで、評価値(F)が求められる。試験例1では、溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D)は、6mmである。そのため、評価値(F)を求めるにあたっては、領域S1−1〜S1−4の面積を、それぞれ6で割ればよい。
結果、試験例1−1における評価値(F)は、20である。試験例1−2における評価値(F)は、10である。試験例1−3における評価値(F)は、5である。試験例1−4における評価値(F)は、1である。
〔拡管加工性の評価〕
試験例1−1〜1−4の溶接鋼管1をそれぞれ10本ずつ準備した。そして、それぞれの溶接鋼管1について、図14に示す寸法のポンチ20を溶接鋼管1の一端に圧入し、溶接鋼管1を拡管し、加工割れの状態を確認した。拡管するにあたり、潤滑油としてプレス油を用いた。
図14に示す寸法のポンチ10を用いると、拡管後の溶接鋼管1の一端(径が大きい方)の外径は、50.8mm(=ポンチ10の大径+管厚×2)である。拡管前の溶接鋼管1の外径は、25.4mmであるため、拡管率(拡管後の外径/拡管前の外径×100)は、100%である。
加工割れの状態を表1に示す。
Figure 2017170490
表1より、母材がステンレス鋼からなる場合、評価値が10未満になるようにビードカットを付けることで、拡管率100%で拡管しても、加工割れを抑制できることが確認された。
<試験例2> 普通鋼での検討
試験例1での供試材は、外径が25.4mmであり、板厚が0.8mmであるステンレス鋼レーザー溶接鋼管であった。試験例2では、供試材を、外径が25.4mmであり、板厚が0.8mmである機械構造用炭素鋼高周波溶接鋼管として、試験例1と同様の評価を行った。
〔素管の作製〕
厚さ一定の機械構造用炭素鋼板を管状に丸め、その継目を高周波溶接した。高周波溶接後の溶接部2の幅は、2mmとした。
続いて、試験例1と同様の手法にて溶接部2の中央Oを定めた。
試験例2−1の溶接鋼管1は、ビードカット(アンダービードカット)を施していない素管である。
〔熱影響部3と母材部4との境界の確定〕
[母材部4のビッカース硬さの測定]
試験例2−1について、試験例1と同様の手法にて母材部4のビッカース硬さを測定した。その結果、P及びPでのビッカース硬さの平均値は、112HVであった。このビッカース硬さを、母材部4のビッカース硬さとした。
[溶接部2の中央Oの周囲のビッカース硬さの測定]
試験例2−1について、溶接部2の中央Oから0.3mm間隔でビッカース硬さを測定した。結果を図15に示す。
[境界の確定]
溶接部2の中央Oのビッカース硬さは、HV201であり、溶接部2のビッカース硬さは、母材部4のビッカース硬さに対して1.79倍であった。
そして、溶接部2の中央Oから離れるにつれて、ビッカース硬さは低くなり、溶接部2の中央Oから3mm以上離れた箇所では、母材部4のビッカース硬さとの差が2HV以内に収束していた。
その結果、母材部4と熱影響部3との境界は、溶接部2の中央Oから3mm離れた位置であることが確認された。
〔試験体の作製〕
試験例1と同様、素管(試験例2−1)の内面側に、図6の(B)〜(D)に示す形状のビードカット(アンダービードカット)を施し、試験例2−2〜2−4の溶接鋼管1を得た。試験例2−1〜2−4の板厚(mm)と管周方向Cの距離(d)との関係は、図9と同様であった。
〔拡管加工性の評価値の算出〕
試験例2−1〜2−4について、試験例1と同様の手法にて溶接部2及び熱影響部3のビッカース硬さを測定した。そして、図9で示した板厚と、ビッカース硬さの測定結果とを用いて、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)を計算した。結果を図16〜図19に示す。
図16〜図19は、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)の測定結果を示すグラフである。また、図16〜図19は、各々の測定位置での破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)を示すグラフでもある。
図16は、試験例2−1について図示したものであり、図17は、試験例2−2について図示したものである。また、図18は、試験例2−3について図示したものであり、図19は、試験例2−4について図示したものである。
図19は、図13と同様、2つのグラフに分けている。図19の(A)は、溶接部2及び熱影響部3の破壊強度(Fs)の測定結果を示すグラフであり、図19の(B)は、各々の測定位置での破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)を示すグラフである。
図16〜図19を用いると、溶接部2及び熱影響部3における各々の測定位置での破壊強度(Fs)と母材部4の破壊強度(Fm)との差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和を、試験例1と同様の手法によって求められる。
試験例2−1における総和は、図16の領域S2−1の面積であり、210である。試験例2−2における総和は、図17の領域S2−2の面積であり、150である。試験例2−3における総和は、図18の領域S2−3の面積であり、120である。試験例2−4における総和は、図19の(B)の領域S2−4の面積であり、6である。
また、これらの総和を、溶接部2および熱影響部3における管周方向の距離(D)で除することで、評価値(F)が求められる。試験例2においても、距離(D)は、6mmである。そのため、評価値(F)を求めるにあたっては、領域S2−1〜S2−4の面積を、それぞれ6で割ればよい。
結果、試験例2−1における評価値(F)は、35である。試験例2−2における評価値(F)は、25である。試験例2−3における評価値(F)は、20である。試験例2−4における評価値(F)は、1である。
〔拡管加工性の評価〕
試験例2−1〜2−4の溶接鋼管1をそれぞれ10本ずつ準備した。そして、試験例1と同様の手法にて溶接鋼管1を拡管し、加工割れの状態を確認した。結果を表2に示す。
Figure 2017170490
表2より、母材部4が普通鋼からなる場合、評価値が25未満になるようにビードカットを付けることで、拡管率100%で拡管しても、加工割れを抑制できることが分かる。
以上のことから、評価値(F)が一定の範囲内になるようにビードカット処理を行うことで、溶接鋼管を拡管率100%で拡管加工しても、加工割れが生じないことが確認された。また、この溶接鋼管は、高い拡管率が求められる点で、車両の燃料タンクに接続される給油管に有効である。
1 溶接鋼管
2 溶接部
3 熱影響部
4 母材部

Claims (6)

  1. 母材が鋼からなり、ビードカットされた溶接部を含む溶接鋼管であって、
    前記母材は、前記溶接部に隣接する熱影響部と、前記熱影響部の外側に位置する母材部とを含み、
    前記溶接部、前記熱影響部及び前記母材部において測定された板厚(単位mm)とビッカース硬さ(単位HV)との積をその測定位置での破壊強度であるとして0.3mm間隔おきに破壊強度を測定したとき、
    前記溶接部及び前記熱影響部の破壊強度(Fs)と前記母材部の破壊強度(Fm)との差(ΔF)に0.3mmを掛けた積(ΔF×0.3)の総和を、前記溶接部および前記熱影響部における管周方向の距離(D)で除した評価値(F)は、0以上25未満である、拡管加工性に優れる溶接鋼管。
  2. 前記母材がステンレス鋼からなり、前記評価値が0以上10未満である、請求項1に記載の拡管加工性に優れる溶接鋼管。
  3. 前記母材が普通鋼からなり、前記評価値が0以上25未満である、請求項1に記載の拡管加工性に優れる溶接鋼管。
  4. 前記熱影響部の破壊強度が前記母材部の破壊強度よりも大きい、請求項1〜3のいずれかに記載の拡管加工性に優れる溶接鋼管。
  5. 前記熱影響部の少なくとも一部がビードカットされている、請求項1〜4のいずれかに記載の拡管加工性に優れる溶接鋼管。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の溶接鋼管を含み、
    前記溶接鋼管の一端の内径は、前記溶接鋼管の他端の内径に比べて70%以上大きく、
    前記一端には、給油口が設けられ、
    前記他端には、給油タンクが接続される、給油管。
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