JP3897987B2 - 水田作業機 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、走行機体に作業装置をアクチュエータにより昇降自在なリンク機構を介して連結し、作業装置をアクチュエータにより所定高さまで上昇させる上昇制御、及び作業装置をアクチュエータにより作業高さまで下降させる下降制御を行うように構成された水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
前述のように構成された水田作業機として、特開平6−237612号公報に開示されたものがある。前記公報の構造では、ステアリングハンドルの近傍位置に配置された揺動レバー式の昇降操作スイッチの操作により、作業装置としての苗植付装置を最大上昇位置まで強制上昇させる状態、及び苗植付装置を接地下降させる状態に切換自在に構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術では、運転座席の側部位置の昇降レバーの操作により苗植付装置の昇降が行えるように構成されると共に、苗植付装置の強制上昇及び接地下降を行う専用の昇降操作スイッチが備えられている。これにより、枕地での旋回開始時に、昇降操作スイッチのワンタッチ操作により苗植付装置の強制上昇を開始しながら、ステアリング操作が可能になり、枕地での旋回終了時に、昇降操作スイッチのワンタッチ操作により苗植付装置の接地下降を開始しながら、ステアリング操作が可能になる。従って、苗植付装置の昇降を行う際に、昇降レバーのように決まったストロークの操作を行わなくてもよく、操作が単純で作業能率を向上させることができると言う良好な面を備えている。
【0004】
しかし、従来の技術のように、昇降操作スイッチの反復操作により苗植付装置の強制上昇及び接地下降が行われるものでは、昇降操作スイッチの操作時に苗植付装置の強制上昇が行われるのか、苗植付装置の接地下降が行われるのかが、判別し難いことがある。特に走行機体の後部に苗植付装置を連結したものでは、作業姿勢の作業者から苗植付装置が上昇位置にあるのか下降位置にあるのかを認識することが困難なことがある。例えば、枕地での旋回終了時に苗植付装置の接地下降を行ったにもかかわらず、作業者が苗植付装置の接地下降を行ったことを忘れて、昇降操作スイッチを再び操作し苗植付装置の強制上昇を行ってしまうことがあるので、改善の余地がある。
本発明は水田作業機において、ワンタッチの操作で作業装置の昇降が行えると言う良好な面を損なうことなく、誤操作を抑えながら作業装置の昇降が確実に行えるように構成することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
[1] 本発明の特徴は、次のように構成することにある。
走行機体に整地フロートを備えた作業装置がアクチュエータにより昇降自在なリンク機構を介して連結され、走行機体の側方位置の圃場面に次行程の走行指標を描く作用姿勢及び格納姿勢に姿勢変更自在な左右のマーカを備え、走行機体に前記作業装置に動力を伝達するクラッチ機構を備えた水田作業機において、
人為的に操作される切換レバーをステアリングハンドルの下方に備えて、前記切換レバーを中立姿勢に復帰付勢し、この中立姿勢より上下方向及び前後方向に揺動操作自在に構成すると共に、
この切換レバーの中立姿勢から上方向への操作により、前記作業装置をアクチュエータにより所定高さまで上昇させる上昇制御が行われ、前記切換レバーの中立姿勢から下方向への操作により、前記作業装置をアクチュエータにより作業高さまで下降させる下降制御が行われるように構成し、
前記切換レバーによる下降制御は、切換レバーが下方操作姿勢へ操作されたことと整地フロートが接地したこととの検出に基づいて前記クラッチ機構の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行う接地条件付きクラッチ制御を伴うものと、前記切換レバーが一度下方操作姿勢に操作されていて再び下方操作姿勢に操作されると、前記クラッチ機構の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行うクラッチ制御を伴うものとに選択切換自在であり、
さらに、前記切換レバーの中立姿勢から前後方向への操作により、前記左右のマーカの何れかを、格納姿勢から圃場面に突入する作用姿勢に操作するように構成してある。
【0006】
[2] 前項[1]の構成において、切換レバーの上方向への操作による作業装置の上昇時に、クラッチ機構が切り操作されるように構成してある。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【作用】
[I] 請求項1の特徴によると、切換レバーが中立姿勢から上方向に操作された場合には、作業装置を所定高さまで上昇させる上昇制御が行われ、切換レバーが中立姿勢から下方向に操作された場合には、作業装置を作業高さまで下降させる下降制御が行われると共に、前記切換レバーによる下降制御は、切換レバーが下方操作姿勢へ操作されたことと整地フロートが接地したこととの検出に基づいて前記クラッチ機構の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行う接地条件付きクラッチ制御を伴うも のと、前記切換レバーが一度下方操作姿勢に操作されていて再び下方操作姿勢に操作されると、前記クラッチ機構の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行うクラッチ制御を伴うものとに選択切換自在であり、
さらに、前記切換レバーの中立姿勢から前後方向への操作により、前記左右のマーカの何れかを、格納姿勢から圃場面に突入する作用姿勢に操作するように構成された制御である。
【0011】
このように請求項1の特徴によると、切換レバーの操作方向と作業装置の昇降方向とが一致するので、誤操作が生じ難い。例えば、切換レバーが中立姿勢から下方向に操作されて作業装置の下降制御が行われた後に、誤って切換レバーが下方向に操作されても、作業装置が移動する方向は切換レバーの操作方向(下方向)と同じ下方に向かう方向なので、作業装置が上昇することはない。
【0012】
【発明の効果】
請求項1の特徴によると、単純な操作で作業装置の昇降が行えると言う良好な面を損なうことなく、誤操作を抑えながら作業装置の昇降が確実に行える水田作業機が、合理的に構成された。
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、ステアリング操作される駆動型の前車輪1及び駆動型の後車輪2を備えた走行機体3の前部にエンジン4を搭載し、走行機体3の後部にエンジン4の動力が伝達される静油圧式の無段変速装置5及びミッションケース6を配置して、走行機体3の中央部に運転座席7を配置している。走行機体3の後端部に、アクチュエータの一例としての昇降シリンダ8により昇降駆動されるリンク機構9を介して、作業装置Aの一例としての苗植付装置Anを連結して、水田作業機の一例としての田植機を構成している。
【0013】
図1に示すように、運転座席7の右側部に、苗植付装置Anの昇降制御とクラッチ機構としての植付クラッチCの入り及び切り操作とを行う昇降レバー10を備えており、運転座席7の左側部に変速レバー11を備えている。植付クラッチCはミッションケース6に内装されており、ミッションケース6から苗植付装置Anに動力を伝達する伝動軸12が決まった回転位相にある場合にのみ、植付クラッチCの切り操作が許容されて、植付アーム17が圃場面に接触するのを回避した姿勢で動力が遮断されるように構成されている。
【0014】
図1に示すように、苗植付装置Anは、マット状の苗Wを載置して上端側が走行機体3の前方側に傾斜する姿勢の苗載せ台13、伝動軸12の動力が伝達される伝動ケース14、伝動ケース14からチェーンケース15を介して伝達される動力で回転するロータリケース16、ロータリケース16に一対ずつ備えられた植付アーム17、及び複数の整地フロート18を備えて複数条植用に構成されており、右及び左の側部位置にマーカ25を備えている。
【0015】
図1に示すように、運転座席7の前方位置のステアリングハンドル20のポスト部の右側面に、操作具としての切換レバー21を備えている。切換レバー21は図2に示すように、略水平の中立姿勢Nとなるようにバネ(図示せず)で復帰する方向に付勢されており、中立姿勢Nを基準として、切換レバー21の端部を上方に変位させた上方操作姿勢U、切換レバー21の端部を下方に変位させた下方操作姿勢D、切換レバー21の端部を後方に変位させた左マーカ操作姿勢L、切換レバー21の端部を前方に変位させた右マーカ操作姿勢Rに操作自在になるように、切換レバー21の基端部を中心として十字方向に揺動自在に切換レバー21が構成されている。
【0016】
昇降レバー10は図3に示すように、ガイド22に形成された経路に沿って操作するように構成されており、昇降レバー10を下降位置より前方側に操作すると苗植付装置Anが下降され、昇降レバー10を上昇位置より後方側に操作すると苗植付装置Anが上昇される。昇降レバー10を中立位置に操作すると、苗植付装置Anをそのレベルに維持するように制御系が連係され、昇降レバー10を入位置に操作すると、植付クラッチCを入り操作して苗植付装置Anに備えた整地フロート18が接地する状態で所定の圃場高さを維持する自動昇降制御が行われ、昇降レバー10を切位置に操作すると、植付クラッチCが切り操作される。
昇降レバー10を自動位置に操作すると、切換レバー21の操作により苗植付装置Anの上昇制御及び下降制御が許容されると同時に、苗植付装置Anの上昇制御時に植付クラッチCが自動的に切り操作される。
【0017】
図4に示すように、右及び左のマーカ25は苗植付装置Anのフレーム部26に、前後向き姿勢の支軸27周りに揺動自在に支持され、右及び左のマーカ25を倒伏状態の作用姿勢に保持するバネ28、バネ28の付勢力に抗して右及び左のマーカ25を起立状態の格納姿勢に保持するように、右及び左のマーカ25のピン29に係合する揺動型のロック部材30を備えている。苗植付装置Anの上昇時に、リンク機構9の後端位置の部材と苗植付装置Anとの相対姿勢の変化を利用して右及び左のマーカ25を格納姿勢に操作するワイヤ31、ロック部材30をロック解除姿勢に操作する左右一対の電磁ソレノイド32を備えている。
【0018】
図1に示すように、運転座席7の下方位置にマイクロプロセッサを備えた制御装置33が配置されている。図5に示すように制御装置33に、昇降レバー10の操作位置を検出するレバーセンサ34、昇降レバー10が自動位置に操作されたことを検出する自動スイッチ35、切換レバー21の上方操作姿勢Uへの操作を検出する上昇スイッチ36、切換レバー21の下方操作姿勢Dへの操作を検出する下降スイッチ37、切換レバー21の左マーカ操作姿勢Lへの操作を検出する左マーカスイッチ38、切換レバー21の右マーカ操作姿勢Rへの操作を検出する右マーカスイッチ39、リンク機構9の基端部に備えられて苗植付装置Anの対機体高さを計測するポテンショメータ型のリンクセンサ40(図1参照)、苗植付装置Anの自動昇降制御感度を設定するポテンショメータ型の制御感度設定器41、整地フロート18のうち左右中央の整地フロート18の前部の昇降方向への傾斜姿勢を計測するポテンショメータ型のフロートセンサ42の信号が入力されている。
【0019】
図5に示すように、整地フロート18のうち左右中央の整地フロート18は、後部が横向き姿勢の軸43周りに揺動自在に苗植付装置Anに支持され、前部が屈折型のリンク片44を介して苗植付装置Anに支持されている。これにより、整地フロート18のうち左右中央の整地フロート18前部の上下方向への揺動量を、フロートセンサ42で計測する。
【0020】
図5に示すように、制御装置33は昇降シリンダ8を制御する電磁弁45、植付クラッチCを入り及び切り操作する電動モータ46を制御するリレー47、右及び左のマーカ25に対する電磁ソレノイド32に対する出力系を備えている。
昇降レバー10を入位置に操作した状態では、制御感度設定器41で設定される整地フロート18の軸43周りでの揺動姿勢が維持されるように、フロートセンサ42の信号をフィードバックしながら、苗植付装置Anの昇降制御を行うことで所定の圃場高さを維持する自動昇降制御が行われる。制御装置33は切換レバー21の操作によって、苗植付装置Anの上昇及び下降制御、右及び左のマーカ25の操作、植付クラッチCの入り操作が行えるように構成されており、この制御動作を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0021】
図6に示すように、自動スイッチ35の信号に基づいて昇降レバー10が自動位置に操作されていると判別されると、上昇スイッチ36、下降スイッチ37、左マーカスイッチ38、右マーカスイッチ39の信号に基づいて切換レバー21の姿勢が判別される。切換レバー21が上方操作姿勢Uに操作された場合には、フロートセンサ42の信号に基づいて苗植付装置Anが作業高さにある場合にのみ、苗植付装置Anを上昇させる上昇制御が行われ、フラグが「0」(苗植付装置Anが上昇指令を受けたことを意味する)にセットされる(#101〜#105ステップ)。苗植付装置Anの上昇制御では、電磁弁45の操作で昇降シリンダ8に圧油を供給して苗植付装置Anの上昇を行い、リンクセンサ40の信号に基づいて苗植付装置Anの対機体高さが、予め設定された限界としての上限高さに達したことが判別されると、苗植付装置Anの上昇制御が終了する。
【0022】
切換レバー21が下方操作姿勢Dに操作された場合には、タイマが作動されてフラグが「0」であり、リンクセンサ40の信号に基づいて苗植付装置Anが上限高さにある場合にのみ、苗植付装置Anを下降させる下降制御が行われ、フラグが「1」(苗植付装置Anが1回目の下降指令を受けたことを意味する)にセットされる(#106〜#111ステップ)。苗植付装置Anの下降制御において、切換レバー21が3秒以上に下方操作姿勢Dに操作され続けたことがタイマのカウント結果から判別された場合には、整地フロート18が接地したことをフロートセンサ42の信号で検出したタイミングで、植付クラッチCが入り操作される(#112,#113ステップ)。
【0023】
苗植付装置Anの下降制御では、電磁弁45の操作で昇降シリンダ8から排油することで苗植付装置Anの下降を行い、フロートセンサ42の信号に基づいて整地フロート18が圃場面に接する作業高さまで苗植付装置Anが下降すると、苗植付装置Anの下降制御を終了する。苗植付装置Anの上昇制御を行う#104ステップ、及び苗植付装置Anの下降制御を行う#110ステップにより、制御手段Eが構成されている。
【0024】
また、切換レバー21が一度下方操作姿勢Dに操作されて苗植付装置Anの下降制御が行われ、フラグが「1」にセットされていて、切換レバー21が再び下方操作姿勢Dに操作された(♯106ステップ)場合には、フラグの値「1」から操作を判別して(♯108ステップ)、切換レバー21の下方操作姿勢Dへの操作のタイミングで、植付クラッチCが入り操作される(#114ステップ)。#113ステップおよび#114ステップにより、クラッチ操作手段Fが構成されている。
【0025】
切換レバー21が左マーカ操作姿勢L又は右マーカ操作姿勢Rに操作された場合には、操作に対応した側の電磁ソレノイド32が操作され、操作に対応した側のマーカ25を作用姿勢に操作する制御が行われる(#115,#116ステップ)。昇降レバー10が自動位置以外の位置に操作された場合には、フラグを初期値「0」に設定する制御が行われる(#117ステップ)。#116ステップにより、右及び左のマーカ25を作用姿勢に操作するマーカ操作手段Gが構成されている。
【0026】
苗植付装置Anが上昇された場合、作用姿勢の右又は左のマーカ25が、ワイヤ31の張力によって起立操作され、ロック部材30によって格納姿勢に保持される。ロック部材30をロック解除姿勢に操作した際に苗植付装置Anが下降していれば、ロック部材30がロック解除姿勢に操作された側のマーカ25が作用姿勢に操作されるのであるが、苗植付装置Anが完全に下降していない場合には苗植付装置Anが完全に下降した時点で、マーカ25が適性な作用姿勢に操作される。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 田植機の全体側面図
【図2】 切換レバーの操作方向を示す側面図
【図3】 昇降レバーの経路を示す平面図
【図4】 マーカの操作系を示す背面図
【図5】 制御系を示すブロック図
【図6】 制御動作のフローチャートを示す図
【符号の説明】
3 走行機体
8 アクチュエータ
20 ステアリングハンドル
21 切換レバー
25 マーカ
A 作業装置
An 苗植付装置
C 植付クラッチ(クラッチ機構)
N 中立姿勢
【産業上の利用分野】
本発明は、走行機体に作業装置をアクチュエータにより昇降自在なリンク機構を介して連結し、作業装置をアクチュエータにより所定高さまで上昇させる上昇制御、及び作業装置をアクチュエータにより作業高さまで下降させる下降制御を行うように構成された水田作業機に関する。
【0002】
【従来の技術】
前述のように構成された水田作業機として、特開平6−237612号公報に開示されたものがある。前記公報の構造では、ステアリングハンドルの近傍位置に配置された揺動レバー式の昇降操作スイッチの操作により、作業装置としての苗植付装置を最大上昇位置まで強制上昇させる状態、及び苗植付装置を接地下降させる状態に切換自在に構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術では、運転座席の側部位置の昇降レバーの操作により苗植付装置の昇降が行えるように構成されると共に、苗植付装置の強制上昇及び接地下降を行う専用の昇降操作スイッチが備えられている。これにより、枕地での旋回開始時に、昇降操作スイッチのワンタッチ操作により苗植付装置の強制上昇を開始しながら、ステアリング操作が可能になり、枕地での旋回終了時に、昇降操作スイッチのワンタッチ操作により苗植付装置の接地下降を開始しながら、ステアリング操作が可能になる。従って、苗植付装置の昇降を行う際に、昇降レバーのように決まったストロークの操作を行わなくてもよく、操作が単純で作業能率を向上させることができると言う良好な面を備えている。
【0004】
しかし、従来の技術のように、昇降操作スイッチの反復操作により苗植付装置の強制上昇及び接地下降が行われるものでは、昇降操作スイッチの操作時に苗植付装置の強制上昇が行われるのか、苗植付装置の接地下降が行われるのかが、判別し難いことがある。特に走行機体の後部に苗植付装置を連結したものでは、作業姿勢の作業者から苗植付装置が上昇位置にあるのか下降位置にあるのかを認識することが困難なことがある。例えば、枕地での旋回終了時に苗植付装置の接地下降を行ったにもかかわらず、作業者が苗植付装置の接地下降を行ったことを忘れて、昇降操作スイッチを再び操作し苗植付装置の強制上昇を行ってしまうことがあるので、改善の余地がある。
本発明は水田作業機において、ワンタッチの操作で作業装置の昇降が行えると言う良好な面を損なうことなく、誤操作を抑えながら作業装置の昇降が確実に行えるように構成することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
[1] 本発明の特徴は、次のように構成することにある。
走行機体に整地フロートを備えた作業装置がアクチュエータにより昇降自在なリンク機構を介して連結され、走行機体の側方位置の圃場面に次行程の走行指標を描く作用姿勢及び格納姿勢に姿勢変更自在な左右のマーカを備え、走行機体に前記作業装置に動力を伝達するクラッチ機構を備えた水田作業機において、
人為的に操作される切換レバーをステアリングハンドルの下方に備えて、前記切換レバーを中立姿勢に復帰付勢し、この中立姿勢より上下方向及び前後方向に揺動操作自在に構成すると共に、
この切換レバーの中立姿勢から上方向への操作により、前記作業装置をアクチュエータにより所定高さまで上昇させる上昇制御が行われ、前記切換レバーの中立姿勢から下方向への操作により、前記作業装置をアクチュエータにより作業高さまで下降させる下降制御が行われるように構成し、
前記切換レバーによる下降制御は、切換レバーが下方操作姿勢へ操作されたことと整地フロートが接地したこととの検出に基づいて前記クラッチ機構の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行う接地条件付きクラッチ制御を伴うものと、前記切換レバーが一度下方操作姿勢に操作されていて再び下方操作姿勢に操作されると、前記クラッチ機構の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行うクラッチ制御を伴うものとに選択切換自在であり、
さらに、前記切換レバーの中立姿勢から前後方向への操作により、前記左右のマーカの何れかを、格納姿勢から圃場面に突入する作用姿勢に操作するように構成してある。
【0006】
[2] 前項[1]の構成において、切換レバーの上方向への操作による作業装置の上昇時に、クラッチ機構が切り操作されるように構成してある。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【作用】
[I] 請求項1の特徴によると、切換レバーが中立姿勢から上方向に操作された場合には、作業装置を所定高さまで上昇させる上昇制御が行われ、切換レバーが中立姿勢から下方向に操作された場合には、作業装置を作業高さまで下降させる下降制御が行われると共に、前記切換レバーによる下降制御は、切換レバーが下方操作姿勢へ操作されたことと整地フロートが接地したこととの検出に基づいて前記クラッチ機構の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行う接地条件付きクラッチ制御を伴うも のと、前記切換レバーが一度下方操作姿勢に操作されていて再び下方操作姿勢に操作されると、前記クラッチ機構の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行うクラッチ制御を伴うものとに選択切換自在であり、
さらに、前記切換レバーの中立姿勢から前後方向への操作により、前記左右のマーカの何れかを、格納姿勢から圃場面に突入する作用姿勢に操作するように構成された制御である。
【0011】
このように請求項1の特徴によると、切換レバーの操作方向と作業装置の昇降方向とが一致するので、誤操作が生じ難い。例えば、切換レバーが中立姿勢から下方向に操作されて作業装置の下降制御が行われた後に、誤って切換レバーが下方向に操作されても、作業装置が移動する方向は切換レバーの操作方向(下方向)と同じ下方に向かう方向なので、作業装置が上昇することはない。
【0012】
【発明の効果】
請求項1の特徴によると、単純な操作で作業装置の昇降が行えると言う良好な面を損なうことなく、誤操作を抑えながら作業装置の昇降が確実に行える水田作業機が、合理的に構成された。
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、ステアリング操作される駆動型の前車輪1及び駆動型の後車輪2を備えた走行機体3の前部にエンジン4を搭載し、走行機体3の後部にエンジン4の動力が伝達される静油圧式の無段変速装置5及びミッションケース6を配置して、走行機体3の中央部に運転座席7を配置している。走行機体3の後端部に、アクチュエータの一例としての昇降シリンダ8により昇降駆動されるリンク機構9を介して、作業装置Aの一例としての苗植付装置Anを連結して、水田作業機の一例としての田植機を構成している。
【0013】
図1に示すように、運転座席7の右側部に、苗植付装置Anの昇降制御とクラッチ機構としての植付クラッチCの入り及び切り操作とを行う昇降レバー10を備えており、運転座席7の左側部に変速レバー11を備えている。植付クラッチCはミッションケース6に内装されており、ミッションケース6から苗植付装置Anに動力を伝達する伝動軸12が決まった回転位相にある場合にのみ、植付クラッチCの切り操作が許容されて、植付アーム17が圃場面に接触するのを回避した姿勢で動力が遮断されるように構成されている。
【0014】
図1に示すように、苗植付装置Anは、マット状の苗Wを載置して上端側が走行機体3の前方側に傾斜する姿勢の苗載せ台13、伝動軸12の動力が伝達される伝動ケース14、伝動ケース14からチェーンケース15を介して伝達される動力で回転するロータリケース16、ロータリケース16に一対ずつ備えられた植付アーム17、及び複数の整地フロート18を備えて複数条植用に構成されており、右及び左の側部位置にマーカ25を備えている。
【0015】
図1に示すように、運転座席7の前方位置のステアリングハンドル20のポスト部の右側面に、操作具としての切換レバー21を備えている。切換レバー21は図2に示すように、略水平の中立姿勢Nとなるようにバネ(図示せず)で復帰する方向に付勢されており、中立姿勢Nを基準として、切換レバー21の端部を上方に変位させた上方操作姿勢U、切換レバー21の端部を下方に変位させた下方操作姿勢D、切換レバー21の端部を後方に変位させた左マーカ操作姿勢L、切換レバー21の端部を前方に変位させた右マーカ操作姿勢Rに操作自在になるように、切換レバー21の基端部を中心として十字方向に揺動自在に切換レバー21が構成されている。
【0016】
昇降レバー10は図3に示すように、ガイド22に形成された経路に沿って操作するように構成されており、昇降レバー10を下降位置より前方側に操作すると苗植付装置Anが下降され、昇降レバー10を上昇位置より後方側に操作すると苗植付装置Anが上昇される。昇降レバー10を中立位置に操作すると、苗植付装置Anをそのレベルに維持するように制御系が連係され、昇降レバー10を入位置に操作すると、植付クラッチCを入り操作して苗植付装置Anに備えた整地フロート18が接地する状態で所定の圃場高さを維持する自動昇降制御が行われ、昇降レバー10を切位置に操作すると、植付クラッチCが切り操作される。
昇降レバー10を自動位置に操作すると、切換レバー21の操作により苗植付装置Anの上昇制御及び下降制御が許容されると同時に、苗植付装置Anの上昇制御時に植付クラッチCが自動的に切り操作される。
【0017】
図4に示すように、右及び左のマーカ25は苗植付装置Anのフレーム部26に、前後向き姿勢の支軸27周りに揺動自在に支持され、右及び左のマーカ25を倒伏状態の作用姿勢に保持するバネ28、バネ28の付勢力に抗して右及び左のマーカ25を起立状態の格納姿勢に保持するように、右及び左のマーカ25のピン29に係合する揺動型のロック部材30を備えている。苗植付装置Anの上昇時に、リンク機構9の後端位置の部材と苗植付装置Anとの相対姿勢の変化を利用して右及び左のマーカ25を格納姿勢に操作するワイヤ31、ロック部材30をロック解除姿勢に操作する左右一対の電磁ソレノイド32を備えている。
【0018】
図1に示すように、運転座席7の下方位置にマイクロプロセッサを備えた制御装置33が配置されている。図5に示すように制御装置33に、昇降レバー10の操作位置を検出するレバーセンサ34、昇降レバー10が自動位置に操作されたことを検出する自動スイッチ35、切換レバー21の上方操作姿勢Uへの操作を検出する上昇スイッチ36、切換レバー21の下方操作姿勢Dへの操作を検出する下降スイッチ37、切換レバー21の左マーカ操作姿勢Lへの操作を検出する左マーカスイッチ38、切換レバー21の右マーカ操作姿勢Rへの操作を検出する右マーカスイッチ39、リンク機構9の基端部に備えられて苗植付装置Anの対機体高さを計測するポテンショメータ型のリンクセンサ40(図1参照)、苗植付装置Anの自動昇降制御感度を設定するポテンショメータ型の制御感度設定器41、整地フロート18のうち左右中央の整地フロート18の前部の昇降方向への傾斜姿勢を計測するポテンショメータ型のフロートセンサ42の信号が入力されている。
【0019】
図5に示すように、整地フロート18のうち左右中央の整地フロート18は、後部が横向き姿勢の軸43周りに揺動自在に苗植付装置Anに支持され、前部が屈折型のリンク片44を介して苗植付装置Anに支持されている。これにより、整地フロート18のうち左右中央の整地フロート18前部の上下方向への揺動量を、フロートセンサ42で計測する。
【0020】
図5に示すように、制御装置33は昇降シリンダ8を制御する電磁弁45、植付クラッチCを入り及び切り操作する電動モータ46を制御するリレー47、右及び左のマーカ25に対する電磁ソレノイド32に対する出力系を備えている。
昇降レバー10を入位置に操作した状態では、制御感度設定器41で設定される整地フロート18の軸43周りでの揺動姿勢が維持されるように、フロートセンサ42の信号をフィードバックしながら、苗植付装置Anの昇降制御を行うことで所定の圃場高さを維持する自動昇降制御が行われる。制御装置33は切換レバー21の操作によって、苗植付装置Anの上昇及び下降制御、右及び左のマーカ25の操作、植付クラッチCの入り操作が行えるように構成されており、この制御動作を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0021】
図6に示すように、自動スイッチ35の信号に基づいて昇降レバー10が自動位置に操作されていると判別されると、上昇スイッチ36、下降スイッチ37、左マーカスイッチ38、右マーカスイッチ39の信号に基づいて切換レバー21の姿勢が判別される。切換レバー21が上方操作姿勢Uに操作された場合には、フロートセンサ42の信号に基づいて苗植付装置Anが作業高さにある場合にのみ、苗植付装置Anを上昇させる上昇制御が行われ、フラグが「0」(苗植付装置Anが上昇指令を受けたことを意味する)にセットされる(#101〜#105ステップ)。苗植付装置Anの上昇制御では、電磁弁45の操作で昇降シリンダ8に圧油を供給して苗植付装置Anの上昇を行い、リンクセンサ40の信号に基づいて苗植付装置Anの対機体高さが、予め設定された限界としての上限高さに達したことが判別されると、苗植付装置Anの上昇制御が終了する。
【0022】
切換レバー21が下方操作姿勢Dに操作された場合には、タイマが作動されてフラグが「0」であり、リンクセンサ40の信号に基づいて苗植付装置Anが上限高さにある場合にのみ、苗植付装置Anを下降させる下降制御が行われ、フラグが「1」(苗植付装置Anが1回目の下降指令を受けたことを意味する)にセットされる(#106〜#111ステップ)。苗植付装置Anの下降制御において、切換レバー21が3秒以上に下方操作姿勢Dに操作され続けたことがタイマのカウント結果から判別された場合には、整地フロート18が接地したことをフロートセンサ42の信号で検出したタイミングで、植付クラッチCが入り操作される(#112,#113ステップ)。
【0023】
苗植付装置Anの下降制御では、電磁弁45の操作で昇降シリンダ8から排油することで苗植付装置Anの下降を行い、フロートセンサ42の信号に基づいて整地フロート18が圃場面に接する作業高さまで苗植付装置Anが下降すると、苗植付装置Anの下降制御を終了する。苗植付装置Anの上昇制御を行う#104ステップ、及び苗植付装置Anの下降制御を行う#110ステップにより、制御手段Eが構成されている。
【0024】
また、切換レバー21が一度下方操作姿勢Dに操作されて苗植付装置Anの下降制御が行われ、フラグが「1」にセットされていて、切換レバー21が再び下方操作姿勢Dに操作された(♯106ステップ)場合には、フラグの値「1」から操作を判別して(♯108ステップ)、切換レバー21の下方操作姿勢Dへの操作のタイミングで、植付クラッチCが入り操作される(#114ステップ)。#113ステップおよび#114ステップにより、クラッチ操作手段Fが構成されている。
【0025】
切換レバー21が左マーカ操作姿勢L又は右マーカ操作姿勢Rに操作された場合には、操作に対応した側の電磁ソレノイド32が操作され、操作に対応した側のマーカ25を作用姿勢に操作する制御が行われる(#115,#116ステップ)。昇降レバー10が自動位置以外の位置に操作された場合には、フラグを初期値「0」に設定する制御が行われる(#117ステップ)。#116ステップにより、右及び左のマーカ25を作用姿勢に操作するマーカ操作手段Gが構成されている。
【0026】
苗植付装置Anが上昇された場合、作用姿勢の右又は左のマーカ25が、ワイヤ31の張力によって起立操作され、ロック部材30によって格納姿勢に保持される。ロック部材30をロック解除姿勢に操作した際に苗植付装置Anが下降していれば、ロック部材30がロック解除姿勢に操作された側のマーカ25が作用姿勢に操作されるのであるが、苗植付装置Anが完全に下降していない場合には苗植付装置Anが完全に下降した時点で、マーカ25が適性な作用姿勢に操作される。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 田植機の全体側面図
【図2】 切換レバーの操作方向を示す側面図
【図3】 昇降レバーの経路を示す平面図
【図4】 マーカの操作系を示す背面図
【図5】 制御系を示すブロック図
【図6】 制御動作のフローチャートを示す図
【符号の説明】
3 走行機体
8 アクチュエータ
20 ステアリングハンドル
21 切換レバー
25 マーカ
A 作業装置
An 苗植付装置
C 植付クラッチ(クラッチ機構)
N 中立姿勢
Claims (2)
- 走行機体(3)に整地フロート(18)を備えた作業装置(A)がアクチュエータ(8)により昇降自在なリンク機構(9)を介して連結され、走行機体(3)の側方位置の圃場面に次行程の走行指標を描く作用姿勢及び格納姿勢に姿勢変更自在な左右のマーカ(25)を備え、走行機体(3)に前記作業装置(A)に動力を伝達するクラッチ機構(C)を備えた水田作業機において、
人為的に操作される切換レバー(21)をステアリングハンドル(20)の下方に備えて、前記切換レバー(21)を中立姿勢(N)に復帰付勢し、この中立姿勢(N)より上下方向及び前後方向に揺動操作自在に構成すると共に、
この切換レバー(21)の中立姿勢(N)から上方向への操作により、前記作業装置(A)をアクチュエータ(8)により所定高さまで上昇させる上昇制御が行われ、前記切換レバー(21)の中立姿勢(N)から下方向への操作により、前記作業装置(A)をアクチュエータ(8)により作業高さまで下降させる下降制御が行われるように構成し、
前記切換レバー(21)による下降制御は、切換レバー(21)が下方操作姿勢(D)へ操作されたことと整地フロート(18)が接地したこととの検出に基づいて前記クラッチ機構(C)の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行う接地条件付きクラッチ制御を伴うものと、前記切換レバー(21)が一度下方操作姿勢(D)に操作されていて再び下方操作姿勢(D)に操作されると、前記クラッチ機構(C)の入り操作が行われるようにクラッチ操作手段に対する入り指令の出力を行うクラッチ制御を伴うものとに選択切換自在であり、
さらに、前記切換レバー(21)の中立姿勢(N)から前後方向への操作により、前記左右のマーカ(25)の何れかを、格納姿勢から圃場面に突入する作用姿勢に操作するように構成してある水田作業機。 - 前記切換レバー(21)の上方向への操作による作業装置(A)の上昇時に、前記クラッチ機構(C)が切り操作されるように構成してある請求項1に記載の水田作業機。
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