JP3897444B2 - ポリカーボネート樹脂とその製造法および電子写真感光体 - Google Patents
ポリカーボネート樹脂とその製造法および電子写真感光体Info
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的性質や光学的性質、電子写真特性に優れたポリカーボネート樹脂と、その製造方法、並びにこのポリカーボネート樹脂を感光層中のバインダー樹脂として含有する耐久性に優れた電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、機械的性質や熱的性質、電気的性質に優れていることから、様々な産業分野において成形品の素材に用いられてきた。近年、さらにこのポリカーボネート樹脂の光学的性質などをも併せて利用した機能的な製品の分野においても多用されている。このような用途分野の拡大に伴って、ポリカーボネート樹脂に対する要求性能も多様化している。このような要請に応えるためには、従来から用いられてきた2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンや1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどを原料とするポリカーボネート樹脂のみでは充分な対応ができないことがあることから、様々な化学構造を有するポリカーボネート樹脂が提案されてきている。しかしながら、各種の用途毎に特有の要求特性があることから、それら要請を満足する性能を具備するポリカーボネート樹脂の開発が求められている。
【0003】
このような機能的な製品として、ポリカーボネート樹脂を有機電荷発生材料や電荷輸送材料用のバインダー樹脂とする感光層を導電性基体上に形成した有機電子写真感光体がある。この電子写真感光体としては、従来、セレンやα−シリコンなどの無機光導電性材料を用いたものが使用されていたが、最近では、前記有機電子写真感光体の性能が向上したことから、その使用割合が拡大している。
【0004】
この有機電子写真感光体には、適用される電子写真プロセスに応じて、所定の感度や電気特性、光学特性を備えていることが要求される。この電子写真感光体は、その感光層の表面に、コロナ帯電あるいは接触帯電、トナー現像、紙への転写、クリーニング処理などの操作が繰返し行われるため、これら操作を行う度に電気的、機械的な外力が加えられる。したがって、長期間にわたって電子写真の画質を維持するためには、電子写真感光体の表面に設けた感光層に、これら外力に対する耐久性が要求される。
【0005】
このような要請に応えるため、有機電子写真感光体のバインダー樹脂としては、感光層に用いる電荷輸送物質との相溶性がよく光学特性も良好なポリカーボネート樹脂が使用されてきた。しかしながら、従来公知の前記ポリカーボネート樹脂を使用したものでは、電子写真感光体の耐久性の点で充分に満足できるには至っていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、光学的性質や電気的性質、機械的性質、ことに耐摩耗性に優れた成形品を得ることのできるポリカーボネート樹脂と、その製造方法、ならびにこのポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として含有する耐久性に優れた電子写真感光体を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂を構成する繰返し単位に、特定の化学構造を有するイミン系化合物の残基を結合した形態の繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂が、電気的性質や機械的性質、ことに耐摩耗性に優れていることを見出し、これら知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、下記のとおりである。
(1)下記の一般式〔1〕で表される繰返し単位(1)および一般式〔2〕で表される繰返し単位(2)を、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)の合計に対する繰返し単位(1)のモル比〔(1)/((1)+(2))〕が、0.01〜1となる割合で有するポリカーボネート樹脂。
【0009】
【化5】
【0010】
〔式〔1〕中のR1 、R2 は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18の縮合多環式炭化水素基を示し、sは0〜4の整数を示し、Yは、次の一般式〔3〕または〔4〕、
【0011】
【化6】
【0012】
(式〔3〕中のR3 は、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18の縮合多環式炭化水素基を示し、aは1または2を示し、式〔4〕中のR4 R5 は各々独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、トリフルオロメチル基または炭素数6〜18のアリール基を示し、rは0〜4の整数、bは1〜12の整数を示す)で表される基を表し、式〔2〕中のArは、次の一般式〔5a〕〜〔5d〕、
【0013】
【化7】
【0014】
(式〔5a〕中のXは、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−、−SO2 −、−CR8 R9 −(ただし、R8 、R9 は各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基またはトリフルオロメチル基である)、炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基、炭素数2〜12の置換もしくは無置換のα,ω−アルキレン基、9,9−フルオレニリデン基、1,8−メンタンジイル基、2,8−メンタンジイル基、置換もしくは無置換のピラジリデン基または炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリーレン基を示し、式〔5a〕〜〔5d〕中のR6 、R7 は、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基またはトリフルオロメチル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリールオキシ基を示し、mは各々独立に0〜4の整数、qは0〜6の整数、nは0〜200の整数、pは各々独立に0〜6の整数を示す)のいずれかで表される基を表す〕
(2)塩化メチレンを溶媒として、0.5g/デシリットルの濃度、20℃の温度で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が、少なくとも0.1デシリットル/gである前記(1)記載のポリカーボネート樹脂。
(3)下記一般式〔6〕で表されるジヒドロキシイミン化合物を単独で、または該ジヒドロキシイミン化合物と下記一般式〔7〕で表されるジヒドロキシ化合物とを、炭酸エステル形成性化合物と反応させることを特徴とする前記(1)または(2)記載のポリカーボネート樹脂の製造法。
【0015】
【化8】
【0016】
〔式〔6〕中のR1 、R2 、Y、sは、前記式〔1〕中のR1 、R2 、Y、sと同じ意味を有し、式〔7〕中のArは、前記式〔2〕中のArと同じ意味を有する〕
(4)導電性基体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層に前記(1)記載のポリカーボネート樹脂を含有していることを特徴とする電子写真感光体。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のポリカーボネート樹脂は、これを構成する繰返し単位が、前記一般式〔1〕で表される繰返し単位(1)からなる重合体、あるいは前記一般式〔1〕で表される繰返し単位(1)と一般式〔2〕で表される繰返し単位(2)とからなる共重合体であり、その重合体鎖は直鎖状、分岐状、環状のいずれの構造を有するものであってもよく、さらに特殊な末端構造や特殊な分岐構造が導入されたものであってもよい。
【0018】
これら式〔1〕および〔2〕で表される繰返し単位からなるポリカーボネート樹脂について、さらに具体的に述べると、前記式〔1〕においてR1 、R2 が表す置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられ、炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、トリル基、スチリル基、ビフェニリル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数6〜18の縮合多環式炭化水素基としては、カルバゾリル基、ピラゾリン基、ピレン基、イミダゾリル基などが挙げられる。
【0019】
また、前記式〔3〕におけるR3 が表す炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、2−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基などが挙げられ、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、前記式〔1〕におけるR1 が表すアルキル基と同様であり、炭素数6〜18のアリール基としては、フェニル基、トリル基、スチリル基、ビフェニリル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数6〜18の縮合多環式炭化水素基としては、前記式〔1〕におけるR1 が表す縮合多環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0020】
また、前記式〔4〕および〔5a〕〜〔5d〕におけるR4 〜R9 が表す炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリール基としては、前記式〔1〕におけるR1 、前記式〔3〕におけるR 3 が表すそれぞれの基と同様のものが挙げられる。また、R6 ,R7 が表す炭素数6〜12の置換もしくは無置換のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、スチリルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基などが挙げられる。
【0021】
さらに、式〔5a〕におけるXが表す炭素数6〜12の置換もしくは無置換のシクロアルキリデン基としては、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、シクロノニリデン基、シクロウンデシリデン基などが挙げられ、炭素数1〜12の置換もしくは無置換のα,ω−アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基などが挙げられ、炭素数6〜24の置換もしくは無置換のアリーレン基としては、フェニル基、ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基などが挙げられる。
【0022】
そして、前記繰返し単位(1)と繰返し単位(2)からなる共重合体である場合には、繰返し単位(1)のモル比〔(1)/((1)+(2))〕が、0.01以上であるもの、好ましくは0.1〜0.7の範囲であるものが好適に用いられる。このモル比が、0.01未満のものでは、光導電性や機械的強度の向上効果が充分に得られない。
【0023】
また、このポリカーボネート樹脂には、本発明の目的達成を阻害しない範囲でこれら繰返し単位(1)および(2)のほか、前記式〔1〕、〔2〕で規定した以外の構造単位を有するポリカーボネート単位や、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン構造を有する単位を含有しているものであってもよい。
【0024】
このポリカーボネート樹脂は、塩化メチレンを溶媒とする0.5g/デシリットルの濃度、20℃の温度で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が0.01〜5デシリットル/g、好ましくは0.2〜5デシリットル/g、さらに好ましくは0.3〜4デシリットル/gであるものが好適に用いられる。この還元粘度〔ηSP/c〕が、0.01デシリットル/g未満のものでは、機械的強度が充分でなく、電子写真感光体のバインダー樹脂として用いる場合に充分な耐刷性を発現させることができない。また、この還元粘度が5デシリットル/gを超えるものでは、成形加工性が低下することがある。
【0025】
つぎに、前記繰返し単位を有するポリカーボネート樹脂を製造する方法については、前記一般式〔6〕で表されるジヒドロキシ化合物を単独で、あるいは、この化合物と前記一般式〔7〕で表されるジヒドロキシ化合物とを、溶媒中、酸受容体や触媒の存在下に、炭酸エステル形成性化合物と反応させることによって、製造することができる。
【0026】
前記一般式〔6〕で表されるジヒドロキシ化合物について、具体的な化合物を挙げると、下記のものを例示することができる。
【0027】
【化9】
【0028】
これらジヒドロキシ化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
また、前記一般式〔7〕で表されるジヒドロキシ化合物としては、たとえば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジシクロヘキシルビフェニルなどの4,4’−ジヒドロキシビフェニル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4メチルフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフルオロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−4−sec−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−4,6−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ペンチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン類;4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニルなどのジヒドロキシ−p−ターフェニル類;4,4’’’−ジヒドロキシ−p−クォーターフェニルなどのジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類;2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ピラジン、2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,6−ジメチルピラジン、2,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジエチルピラジンなどのビス(ヒドロキシフェニル)ピラジン類;1,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メンタン、2,8−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メンタン、1,8−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メンタン、1,8−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メンタンなどのビス(ヒドロキシフェニル)メンタン類;1,4−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼンなどのビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン類;1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類;レゾルシン、ヒドロキノン、カテコールなどのジヒドロキシベンゼン類;α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス〔3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピル〕ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類;1,1,8,8−テトラヒドロ−1,8−ジヒドロキシパーフルオロオクタン、1,1,6,6−テトラヒドロ−1,6−ジヒドロキシパーフルオロヘキサンなどのジヒドロパーフルオロアルカン類などが挙げられる。
【0029】
これら各種のジヒドロキシ化合物の中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,ω−ビス〔3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピル〕ポリジメチルシロキサン、レゾルシン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなどが好ましく、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。これらジヒドロキシ化合物についても、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
また、前記溶媒としては、通常のポリカーボネート樹脂の製造に際して使用されているものを用いるが、その具体例を示せば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1.1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、アセトフェノンなどが好適なものとして挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、互いに混ざり合わない2種の溶媒を用いて界面重縮合反応を行ってもよい。
【0031】
前記酸受容体としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、ピリジンなどの有機塩基、あるいはこれらの混合物を用いることができる。この酸結合剤の使用割合も反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。具体的には、原料の二価フェノールの水酸基1モル当たり、1当量もしくはそれより過剰量、好ましくは1〜5当量の酸結合剤を使用すればよい。
【0032】
また、前記触媒としては、トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリンなどの三級アミン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどの四級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどの四級ホスホニウム塩などが好適である。
【0033】
さらに、前記炭酸エステル形成性化合物としては、ホスゲンなどの各種ジハロゲン化カルボニルや、クロロホーメートなどのハロホーメート、炭酸エステル化合物などを用いることができる。ホスゲンなどのガス状の炭酸エステル形成性化合物を使用する場合、これを反応系に吹き込む方法が好適に採用できる。この炭酸エステル形成性化合物の使用割合は、反応の化学量論比(当量)を考慮して適宜調整すればよい。
【0034】
そして、本発明のポリカーボネート樹脂の分子量の調節には、末端停止剤として、一価のカルボン酸とその誘導体や、一価のフェノールを用いることができる。例えば、p−tert−ブチル−フェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−パーフルオロノニルフェノール、p−(パーフルオロノニルフェニル)フェノール、p−(パーフルオロキシルフェニル)フェノール、p−tert−パーフルオロブチルフェノール、1−(P−ヒドロキシベンジル)パーフルオロデカン、p−〔2−(1H,1H−パーフルオロトリドデシルオキシ)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル〕フェノール、3,5−ビス(パーフルオロヘキシルオキシカルボニル)フェノール、p−ヒドロキシ安息香酸パーフルオロドデシル、p−(1H,1H−パーフルオロオクチルオキシ)フェノール、2H,2H,9H−パーフルオロノナン酸、1,1,1,3,3,3−テトラフロロ−2−プロパノールなどが好適に用いられる。
【0035】
また、分岐型ポリカーボネート樹脂を製造する場合には、様々な分岐剤を用いることができる。このような分岐剤の具体例としては、フロログリシン、ピロガロール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、2,4−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,4−ビス〔2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラキス〔4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ〕メタン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、シアヌル酸、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロモイサチンなどが好適なものとして挙げられる。
【0036】
さらに、所望により、この反応系に亜硫酸ナトリウムやハイドロサルファイドなどの酸化防止剤を少量添加してもよい。
つぎに、前記重縮合反応を行う際の反応条件については、反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは5〜40℃であり、反応圧力は減圧、常圧、加圧のいずれでもよいが、通常は常圧もしくは反応系の自圧程度の加圧下に行うことができる。反応時間については、反応温度により左右されるが、0.5分間〜10時間、好ましくは1分間〜2時間程度である。また、この反応は、連続法、半連続法、回分法のいずれの反応方式で実施してもよい。
【0037】
ポリカーボネート樹脂の分子量を前記還元粘度の数値範囲内に調節をするには、例えば前記反応条件の選択、前記末端停止剤や分岐剤の使用量の増減などにより行うことができる。また、場合により、得られたポリカーボネート樹脂に、物理式処理(混合、分画等)や化学的処理(ポリマー反応、架橋処理、部分分解処理等)を施して所望の還元粘度のポリカーボネート樹脂としてもよい。
【0038】
この重縮合反応によりえられたポリカーボネート樹脂は、公知の分離、精製法により、高純度のポリカーボネート樹脂として得ることができる。
このようにして得られるポリカーボネート樹脂は、光導電性を有するとともに、耐熱性や機械的強度、殊に耐摩耗性に優れていることから、このような諸性質を兼ね備えていることが要求される電気機器、電子機器、光学機器などの用途分野において、有用性の高い素材として利用することができる。これら用途分野においても、とくに電子感光体のバインダー樹脂に好適に用いられる。
つぎに、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、その感光層が上記のポリカーボネート樹脂を含有する表面層を有するものである。
【0039】
本発明の電子写真感光体は、このような感光層が導電性基体上に形成されたものである限り、その構造に特に制限はなく、単層型、積層型などの公知の種々の形式の電子写真感光体はもとより、どのようなものとしてもよい。通常は、感光層が少なくとも1層の電荷発生層と、表面層を形成する少なくとも1層の電荷輸送層を有する積層型電子写真感光体が好ましく、少なくとも1層の電荷輸送層中に、上記ポリカーボネート樹脂がバインダー樹脂としておよび/または前記表面保護層として用いられていることが好ましい。
【0040】
本発明の電子写真感光体において、上記ポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として用いる場合、このポリカーボネート樹脂を1種のみまたは2種以上を組合せて用いてもよいし、また、所望に応じて、本発明の目的達成を阻害しない範囲で、他のポリカーボネート樹脂などの樹脂成分を配合した組成物を用いてもよい。
【0041】
本発明の電子写真感光体に用いられる導電性基体としては、公知のものなど各種のものを使用することができ、具体的には、アルミニウムやニッケル、クロム、パラジウム、チタン、モリブデン、インジウム、金、白金、銀、銅、亜鉛、真鍮、ステンレス、酸化鉛、酸化錫、酸化インジウム、ITOもしくはグラファイトからなる板やドラム、シート、ならびに蒸着、スパッタリング、塗布などによりコーティングするなどして導電処理したガラス、布、紙もしくはプラスチックのフィルム、シートおよびシームレスベルト、ならびにアルミニウムなどの金属箔を積層したプラスチックのフィルム、シートおよびシームレスベルトならびに金属板のフィルム状シートおよびシームレスベルト、ならびに電極酸化などにより金属酸化処理した金属ドラムなどを使用することができる。
【0042】
積層型電子写真感光体の電荷発生層は、少なくとも電荷発生物質を含むものであり、この電荷発生層はその下地となる基体上に、真空蒸着法や化学蒸着法、スパッタリング法によって、電荷発生物質の層を形成するか、またはその下地となる層上に電荷発生物質をバインダー樹脂を用いて結着してなる層を形成せしめることによって得ることができる。バインダー樹脂を用いる電荷発生層の形成方法としては公知の方法など、各種の方法を使用することができるが、通常、たとえば、電荷発生物質をバインダー樹脂と共に適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗工液を、所定の下地となる層上に塗布し、乾燥せしめる方法が好適に用いられる。このようにして得られる電荷発生層の厚さは、0.01〜2.0ミクロン、好ましくは0.1〜0.8ミクロンである。電荷発生層はの厚さを0.01ミクロン未満にすると均一な厚さに層を形成することが困難であり、また、2.0ミクロンを超えると電子写真特性の低下を招くことがあるからである。
【0043】
ここで用いる電荷発生物質としては、たとえば特開平8−225639号公報等で公知の各種化合物を使用することができる。具体的な化合物としては、非晶性セレンや三方晶セレンなどのセレン単体、テルル単体、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金などのセレン合金、As2 Se3 などのセレン化合物もしくはセレン含有組成物、酸化亜鉛、硫化カドミウム、硫化アンチモン、硫化亜鉛、CdS−Seなどの合金、第12族および第16族元素からなる無機材料、酸化チタンなどの酸化物系半導体、アモルファスシリコンなどのシリコン系材料、τ型無金属フタロシアニン、χ型無金属フタロシアニンなどの無金属フタロシアニン顔料、α型銅フタロシアニン、β型銅フタロシアニン、γ型銅フタロシアニン、ε型銅フタロシアニン、X型銅フタロシアニン、A型チタニルフタロシアニン、B型チタニルフタロシアニン、C型チタニルフタロシアニン、D型チタニルフタロシアニン、E型チタニルフタロシアニン、F型チタニルフタロシアニン、G型チタニルフタロシアニン、H型チタニルフタロシアニン、K型チタニルフタロシアニン、L型チタニルフタロシアニン、M型チタニルフタロシアニン、N型チタニルフタロシアニン、Y型チタニルフタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、X線回折図におけるブラック角2θが27.3±0.2度に強い回折ピークを示すチタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン顔料、シアニン染料、アントラセン顔料、ビスアゾ顔料、ピレン顔料、多環キノン顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、ピリリウム染料、スクェアリウム顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料、アゾ顔料、チオインジゴ顔料、キノリン顔料、レーキ顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、トリフェニルメタン顔料、アズレニウム染料、トリアリールメタン染料、キサンチン染料、チアジン染料、チアピリリウム染料、ポリビニルカルバゾール、ビスベンゾイミダゾール顔料などが挙げられる。
【0044】
そして、これら化合物のなかでも染料や顔料については、前記特開平8−225639号公報で具体的に例示されている化合物がことに好適に用いられる。また、これら化合物は、1種単独で、あるいは2種以上のものを混合して、電荷発生物質として用いることができる。
また、電荷発生層に用いるバインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知の各種のものを使用することができる。具体的には、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリケトン、ポリアクリルアミド、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、メタクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、メラミン樹脂、ポリエーテル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシ−メチルセルロース、塩化ビニリデン系ポリマーラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−スチレン共重合体、大豆油変性アルキッド樹脂、ニトロ化ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリイソプレン、ポリチオカーボネート、ポリアリレート、ポリハロアリレート、ポリアリルエーテル、ポリビニルアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられる。上記電荷発生層におけるバインダー樹脂として、上記のポリカーボネート樹脂を使用することもできる。
【0045】
つぎに、本発明の電子写真感光体の電荷輸送層については、その下地となる層、例えば電荷発生層の上に、上記のポリカーボネート樹脂を含有する層を形成するだけでよい。
この電荷輸送層を形成する方法としては、公知の各種方式によって行うことができるが、上記のポリカーボネート樹脂をと電荷輸送物質とを、適当な溶媒に分散もしくは溶解した塗工液を、所定の下地となる層上に塗布し、乾燥させる方式などによって行うことができる。
【0046】
ここで、電荷輸送物質とポリカーボネート樹脂との配合割合は、好ましくは重量比で0.1:99.9〜70:30、さらに好ましくは1:99〜60:40である。そして、この電荷輸送物質の配合割合は、併用する樹脂成分の含有割合に応じて増大すればよい。この配合割合が0.1未満であると、電荷輸送性能が低下し、また70を超えると耐刷性の低下を招くようになる。
【0047】
このようにして形成される電荷輸送層の厚さは、5〜100ミクロン、好ましくは10〜30ミクロンである。この厚さを5ミクロン未満にすると、初期電位の低下を招くようになり、100ミクロンを超えると、電子写真特性が低下することがある。
この電荷輸送物質として用いることのできる化合物は、前記特開平8−225639号公報等において公知の各種の化合物がある。このような化合物としては、カルバゾール化合物、インドール化合物、イミダゾール化合物、オキサゾール化合物、ピラゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ピラゾリン化合物、チアジアゾール化合物、アニリン化合物、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、スチルベン化合物、フルオレノン化合物、ブタジエン化合物、キノン化合物、キノジメタン化合物、チアゾール化合物、トリアゾール化合物、イミダゾロン化合物、イミダゾリジン化合物、ビスイミダゾリジン化合物、オキサゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンズイミダゾール化合物、キナゾリン化合物、ベンゾフラン化合物、アクリジン化合物、フェナジン化合物、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリ−9−ビニルフェニルアントラセン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾール樹脂、あるいはこれら構造を主鎖や側鎖に有する重合体などが好適に用いられる。これら化合物のなかでも、前記特開平8−225639号公報において具体的に例示されている化合物がことに好適に用いられる。これら化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の電子写真感光体においては、前記導電性基体と感光層との間に、通常使用されるような下引き層を設けることができる。この下引き層としては、酸化チタンや酸化アルミニウム、ジルコニア、チタン酸、ジルコン酸、ランタン鉛、チタンブラック、シリカ、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化珪素などの微粒子、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、カゼイン、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、ニトロセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂などの成分を使用することができる。また、この下引き層に用いる樹脂として、前記バインダー樹脂を用いてもよいし、本発明のポリカーボネート樹脂を用いてもよい。これら微粒子や樹脂は単独または種々混合して用いることができる。これらの混合物として用いる場合には、無機質微粒子と樹脂を併用すると、平滑性のよい皮膜が形成されることから好適である。
【0049】
この下引き層の厚みは、0.01〜10ミクロン、好ましくは0.01〜1ミクロンである。この厚みが0.01ミクロン未満であると、下引き層を均一に形成することが困難であり、また10ミクロンを超えると電子写真特性が低下することがある。
また、前記導電性基体と感光層との間には、通常使用されるような公知のブロッキング層を設けることができる。このブロッキング層としては、前記のバインダー樹脂と同種の樹脂を用いることができる。また本発明のポリカーボネート樹脂を用いてもよい。このブロッキング層の厚みは、0.01〜20ミクロン、好ましくは0.1〜10ミクロンである。この厚みが0.01ミクロン未満であると、ブロッキング層を均一に形成することが困難であり、また20ミクロンを超えると電子写真特性が低下することがある。
【0050】
さらに、本発明の電子写真感光体には、感光層の上に、保護層を積層してもよい。この保護層には、前記のバインダー樹脂と同種の樹脂を用いることができる。また、本発明のポリカーボネート樹脂を用いることが特に好ましい。この保護層の厚みは、0.01〜20ミクロン、好ましくは0.1〜10ミクロンである。そして、この保護層には、前記電荷発生物質、電荷輸送物質、添加剤、金属やその酸化物、窒化物、塩、合金、カーボンブラック、有機導電性化合物などの導電性材料を含有していてもよい。
【0051】
さらに、この電子写真感光体の性能向上のために、前記電荷発生層および電荷輸送層には、結合剤、可塑剤、硬化触媒、流動性付与剤、ピンホール制御剤、分光感度増感剤(増感染料)を添加してもよい。また、繰返し使用に対しての残留電位の増加、帯電電位の低下、感度の低下を防止する目的で種々の化学物質、酸化防止剤、界面活性剤、カール防止剤、レベリング剤などの添加剤を添加することができる。
【0052】
前記結合剤としては、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイソブレン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリクロロプレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ホルマール樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂などが挙げられる。また、熱および/または光硬化性樹脂も使用できる。いずれにしても、電気絶縁性で通常の状態で皮膜を形成し得る樹脂であれば、特に制限はない。
【0053】
この結合剤は前記ポリカーボネート樹脂に対して、1〜200重量%の配合割合で添加することが好ましく、10〜100重量%がより好ましい。この結合剤の配合割合が1重量%未満では感光層の皮膜が不均一になりやすく、画質が劣る傾向があり、200重量%を超えると感度が低下し、残留電位が高くなる傾向がある。
【0054】
前記可塑剤の具体例としては、ビフェニル、塩化ビフェニル、o−ターフェニル、ハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタレン、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、トリフェニルフォスフェート、ジイソブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ラウリル酸ブチル、メチルフタリールエチルグリコレート、ジメチルグリコールフタレート、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、ポリプロピレン、ポリスチレン、フルオロ炭化水素などが挙げられる。
【0055】
前記硬化触媒の具体例としては、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などが挙げられ、流動性付与剤としては、モダフロー、アクロナール4Fなどが挙げられ、ピンホール制御剤としては、ベンゾイン、ジメチルフタレートが挙げられる。
これら可塑剤や硬化触媒、流動付与剤、ピンホール制御剤は、前記電荷輸送物質に対して、5重量%以下で用いることが好ましい。
【0056】
また、分光感度増感剤としては、増感染料を用いる場合には,例えばメチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルー、ビクトリアブルーなどのトリフェニルメタン系染料、エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジ、フラペオシンなどのアクリジン染料、メチレンブルー、メチレングリーンなどのチアジン染料、カプリブルー、メルドラブルーなどのオキサジン染料、シアニン染料、メロシアニン染料、スチリル染料、ピリリュウム塩染料、チオピリリュウム塩染料などが適している。
【0057】
感光層には、感度の向上、残留電位の減少、反復使用時の疲労低減などの目的で、電子受容性物質を添加することができる。その具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、3−ニトロ無水フタル酸、4−ニトロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水メリット酸、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、1,3,5−トリニトロベンゼン、p−ニトロベンゾニトリル、ピクリルクロライド、キノンクロルイミド、クロラニル、ブロマニル、ベンゾキノン、2,3−ジクロロベンゾキノン、ジクロロジシアノパラベンゾキノン、ナフトキノン、ジフェノキノン、トロポキノン、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、4−ニトロベンゾフェノン、4,4’−ジニトロベンゾフェノン、4−ニトロベンザルマロンジニトリル、α−シアノ−β−(p−シアノフェニル)アクリル酸エチル、9−アントラセニルメチルマロンジニトリル、1−シアノ−(p−ニトロフェニル)−2−(p−クロロフェニル)エチレン、2,7−ジニトロフルオレノン、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン、9−フルオレニリデン−(ジシアノメチレンマロノニトリル)、ポリニトロ−9−フルオレニリデン−(ジシアノメチレンマロノジニトリル)、ピクリン酸、o−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、5−ニトロサリチル酸、3,5−ジニトロサリチル酸、フタル酸、メリット酸などの電子親和力の大きい化合物が好ましい。これら化合物は電荷発生層、電荷輸送層のいずれに加えてもよく、その配合割合は、電荷発生物質または電荷輸送物質に対して0.01〜200重量%、好ましくは0.1〜50重量%である。
【0058】
また、表面性の改良のため、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂およびそれらの共重合体、フッ素系グラフトポリマーを用いてもよい。これら表面改質剤の配合割合は、前記バインダー樹脂に対して、0.1〜60重量%、好ましくは5〜40重量%である。この配合割合が0.1重量%より少ないと、表面耐久性、表面エネルギー低下などの表面改質が充分でなく、60重量%より多いと、電子写真特性の低下を招くことがある。
【0059】
前記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、スルフィド系酸化防止剤、有機リン酸系酸化防止剤などが好ましい。これら酸化防止剤のなかでも、前記特開平8−225639号公報に具体的に例示されている化合物がとくに好適に用いることができる。これら酸化防止剤の配合割合は、前記電荷輸送物質に対して、通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0060】
そして、これら酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、これらは前記感光層のほか、表面保護層や下引き層、ブロッキング層に添加して用いてもよい。
前記電荷発生層、電荷輸送層の形成の際に用いる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、アニソールなどの芳香族系溶媒や、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチル、エチルセロソルブなどのエステル類、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミドなどが挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
つぎに、前記電荷輸送層を形成する方法としては、前記電荷輸送物質、添加剤、バインダー樹脂として用いるポリカーボネート樹脂を溶媒に分散または溶解させてなる塗工液を調製し、これを所定の下地となる例えば前記電荷発生層の上に塗工し、前記ポリカーボネート樹脂がバインダー樹脂として電荷輸送物質と共存する形態の電荷輸送層を形成する。
【0062】
前記塗工液を調製する方法としては、前記の調合原料をボールミル、超音波、ペイントシェーカー、レッドデビル、サンドミル、ミキサー、アトライターなどを用いて、分散あるいは溶解させることができる。
このようにして得られた塗工液を塗工する方法については、浸漬塗工法、静電塗工法、粉体塗工法、スプレー塗工法、ロール塗工法、アプリケーター塗工法、スプレーコーター塗工法、バーコーター塗工法、ロールコーター塗工法、ディップコーター塗工法、ドクターブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、ナイフコーター塗工法、アトライター塗工法、スピナー塗工法、ビード塗工法、ブレード塗工法、カーテン塗工法などが採用できる。
【0063】
また、単層型電子写真感光体の感光層は、前記のポリカーボネート樹脂、電荷発生物質、添加剤、所望により電荷輸送物質や他のバインダー樹脂を用いて形成される。この場合の塗工液を調製やその塗工法、添加剤の処方などに関しては、積層型電子写真感光体における感光層の形成の場合と同様である。さらに、この単層型電子写真感光体においても、上記と同様に下引き層、ブロッキング層、表面保護層を設けてもよい。これら層を形成する場合にも、前記ポリカーボネート樹脂を用いることが好ましい。
【0064】
単層型電子写真感光体における感光層の厚さは、5〜100ミクロン、好ましくは8〜50ミクロンであり、これが5ミクロン未満であると初期電位が低くなりやすく、100ミクロンを超えると電子写真特性が低下することがある。
この単層型電子写真感光体の製造に用いられる電荷発生物質:バインダー樹脂の比率は、重量比で1:99〜30:70、好ましくは3:97〜15:85である。また、電荷輸送物質:ポリカーボネート樹脂の比率は、重量比で5:95〜70:30、好ましくは10:90〜60:40である。
【0065】
このようにして得られる本発明の電子写真感光体は、優れた耐摩耗性を有し、長期間にわたって優れた耐刷性および電子写真特性を維持する感光体であり、複写機(モノクロ、マルチカラー、フルカラー;アナログ、デジタル)プリンター(レーザー、LED、液晶シャッター)、ファクシミリ、製版機などの各種の電子写真分野に好適に用いられる。
【0066】
また、本発明の電子写真感光体を使用するにあたっては、帯電には、コロナ放電(コロトロン、スコロトロン)、接触帯電(帯電ロール、帯電ブラシ)などが用いられる。また、露光には、ハロゲンランプや蛍光ランプ、レーザー(半導体、He−Ne)、LED、感光体内部露光方式のいずれを採用してもよい。現像には、カスケード現像、二成分磁気ブラシ現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像などの乾式現像方式や液体トナーなどを用いた湿式現像方式が用いられる。転写には、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法や、圧力転写法、粘着転写法が用いられる。定着には、熱ローラ定着、ラジアントフラッシュ定着、オープン定着、圧力定着などが用いられる。さらに、クリーニング・除電には、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなどが用いられる。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1〕
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン74gを、6重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液550ミリリットルに溶解した溶液に、塩化メチレン250ミリリットルを加えて攪拌しながら、冷却下、該溶液にホスゲンガスを950ミリリットル/分間の割合で15分間吹き込んだ。ついで、この反応液を静置分離して、有機相に重合度が2〜4であり、分子末端がクロロホーメート基であるポリカーボネートオリゴマーの塩化メチレン溶液を得た。
【0068】
このポリカーボネートオリゴマーの塩化メチレン溶液に、塩化メチレンを加えて全量を450ミリリットルとした後、これに、下記の化学構造を有するジヒドロキシイミン化合物20gを2規定濃度の水酸化カリウム水溶液150ミリリットルに溶解させた溶液、および分子量調節剤としてp−tertーブチルフェノール1.0gを加えた。
【0069】
【化10】
【0070】
つぎに、この混合液を激しく攪拌しながら、触媒として7重量%濃度のトリエチルアミン水溶液を2ミリリットル加え、25℃において、攪拌下に1.5時間反応を行った。反応終了後、反応生成物を塩化メチレン1リットルで希釈し、ついで、水1.5リットルで2回、0.01規定濃度の塩酸1リットルで1回、さらに水1リットルで2回の順で洗浄した後、有機層をメタノール中に投入し、再沈精製して、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0071】
上記で得られたポリカーボネート樹脂につき、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/デシリットルの溶液の20℃で測定(以下の実施例も同一条件において測定)した還元粘度〔ηsp/c〕は、0.50デシリットル/gであった。この還元粘度の測定には、離合社製の自動粘度測定装置VMR−042を用い、自動粘度用ウッベローデ改良型粘度計(RM型)により測定した。また、このポリカーボネート樹脂について測定した1 H−NMRスペクトルにおいて、1.7ppmにイソプロピリデン基のメチル基づく吸収ピークが認められ、また7.8〜10ppmにイミンの芳香環に基づく吸収ピークが認められた。そして、これらの強度比より、〔a−1〕前記ジヒドロキシイミン化合物に由来する繰返し単位と、〔b−1〕2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する繰返し単位との共重合組成を算出した結果、〔a−1〕:〔b−1〕=0.20:0.80であった。したがって、ここで得られたポリカーボネート樹脂の化学構造は、下記のとおりであると認められた。
【0072】
【化11】
【0073】
〔実施例2〕
実施例1で用いたジヒドロキシイミン化合物に代えて、下記の化学構造を有するジヒドロキシイミン化合物22gを用いた他は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0074】
【化12】
【0075】
ここで得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度〔ηsp/c〕は、0.45デシリットル/gであった。また、1 H−NMRスペクトルを測定した結果、1.7ppmにイソプロピリデン基のメチル基に基づく吸収ピークが認められ、7.8〜10ppmにイミンの芳香環に基づく吸収ピークが認められた。これらの強度比から、このポリカーボネート樹脂の共重合組成を算出した結果、〔a−2〕前記ジヒドロキシイミン化合物に由来する繰返し単位と、〔b−1〕2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する繰返し単位とが、〔a−2〕:〔b−1〕=0.20:0.80であった。従って、ここで得られたポリカーボネート樹脂の化学構造は、下記のとおりであると認められた。
【0076】
【化13】
【0077】
〔実施例3〕
実施例1で用いた2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代えて、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン54gを用い、ジヒドロキシイミン化合物として、下記の化学構造を有するジヒドロキシイミン化合物91gを用いた他は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0078】
【化14】
【0079】
ここで得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度〔ηsp/c〕は、0.40デシリットル/gであった。また、1 H−NMRスペクトルを測定した結果、1.7ppmにイソプロピリデン基のメチル基に基づく吸収ピーク、および7.8〜10ppmにイミンの芳香環に基づく吸収ピークが認められた。これらの強度比から、このポリカーボネート樹脂の共重合組成を算出した結果、〔a−3〕前記ジヒドロキシイミン化合物に由来する繰返し単位と、〔b−2〕2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する繰返し単位とが、〔a−3〕:〔b−2〕=0.50:0.50であった。従って、ここで得られたポリカーボネート樹脂の化学構造は、下記のとおりであると認められた。
【0080】
【化15】
【0081】
〔実施例4〕
実施例1で用いた2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに代えて、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン71gを用い、ジヒドロキシイミン化合物として、下記の化学構造を有するジヒドロキシイミン化合物52gを用いた他は、実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂を得た。
【0082】
【化16】
【0083】
ここで得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度〔ηsp/c〕は、0.35デシリットル/gであった。また、1 H−NMRスペクトルを測定した結果、1.7ppmにイソプロピリデン基のメチル基に基づく吸収ピーク、および7.8〜10ppmにイミドの芳香環に基づく吸収ピークが認められた。これらの強度比から、このポリカーボネート樹脂の共重合組成を算出した結果、〔a−4〕前記ジヒドロキシイミン化合物に由来する繰返し単位と、〔b−3〕2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する繰返し単位とが、〔a−4〕:〔b−3〕=0.50:0.50であった。従って、ここで得られたポリカーボネート樹脂の化学構造は、下記のとおりであると認められた。
【0084】
【化17】
【0085】
〔実施例5〕
導電性基体としてアルミニウム金属を蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用い、その表面に、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層して積層型感光層を形成した電子写真感光体を製造した。
電荷発生物質としてオキソチタニウムフタロシアニン0.5重量部を用い、バインダー樹脂としてはブチラール樹脂0.5重量部を用いた。これらを溶媒の塩化メチレン19重量部に加え、ボールミルにて分散し、この分散液をバーコーターにより、前記導電性基体フィルム表面に塗工し、乾燥させることにより、膜厚約0.5μm の電荷発生層を形成した。
【0086】
つぎに、電荷輸送層の形成材料として、実施例1で得たポリカーボネート樹脂0.5gと、下記の化学構造を有する化合物0.5gとを用い、これらを溶媒のテトラヒドロフラン10ミリリットルに溶解させて塗工液とした。
【0087】
【化18】
【0088】
ついで、この塗工液をアプリケーターにより、上記電荷発生層の上に塗布し、乾燥させて、膜厚約20μm の電荷輸送層を形成した。
ここで得られた電子写真感光体につき、静電気帯電試験装置EPA−8100(株式会社川口電機製作所製)を用いて、電子写真特性の測定をした。測定時の条件は、−6kvでコロナ放電を行い、その際の初期表面電位、10ルックスでの光照射から5秒後の残留電位、半減露光量(E1/2 )を測定した。これらの測定結果を第1表に示す。
また、この電子写真感光体の耐久性を評価するため、感光層の耐摩耗性試験を実施した。試験装置としては、スガ摩耗試験機NUS−ISO−3型(スガ試験機株式会社製)を用い、摩耗試験の条件として、500gの荷重をかけた摩耗紙(粒径3μm のアルミナ粒子を含有)を感光層表面と接触させて2000回の往復運動を行い、重量減少量の測定をした。この結果を第1表に示す。
【0089】
〔実施例6〕
電荷輸送層の形成材料として、実施例2で得たポリカーボネート樹脂0.5gと下記化学構造を有する電荷輸送物質0.5gを用いた。
【0090】
【化19】
【0091】
上記以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を製造し、その評価をした。これら評価結果を第1表に示す。
【0092】
〔実施例7〕
電荷輸送層の形成材料として、実施例2で得たポリカーボネート樹脂0.5gと下記化学構造を有する電荷輸送物質0.5gを用いた。
【0093】
【化20】
【0094】
上記以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を製造し、その評価をした。これら評価結果を第1表に示す。
【0095】
〔実施例8〕
電荷輸送層の形成材料として、実施例3で得たポリカーボネート樹脂0.5gと下記化学構造を有する電荷輸送物質0.5gを用いた。
【0096】
【化21】
【0097】
上記以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体を製造し、その評価をした。これら評価結果を第1表に示す。
【0098】
〔比較例1〕
電荷輸送層の形成材料として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを原料とするポリカーボネート樹脂(還元粘度;0.77デシリットル/g)0.5gと、実施例5で用いた電荷輸送物質0.5gを用いた他は、実施例5と同様にして電子写真感光体を製造し、その評価をした。これら評価結果を第1表に示す。
【0099】
〔比較例2〕
電荷輸送層の形成材料として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを原料とするポリカーボネート樹脂(還元粘度;0.56デシリットル/g)0.5gと、実施例5で用いた電荷輸送物質0.5gを用いた他は、実施例5と同様にして電子写真感光体を製造し、その評価をした。これら評価結果を第1表に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【発明の効果】
本発明のポリカーボネート樹脂は、光学的性質や電気的性質ならびに機械的性質、ことに耐摩耗性に優れている。また、本発明の電子写真感光体は、感光層にバインダー樹脂として、特定の化学構造を有し耐摩耗性ポリカーボネート樹脂を用いていることから、感光層表面の耐摩耗性が向上するので、耐久性に優れたものが得られる。
Claims (4)
- 下記の一般式〔1〕で表される繰返し単位(1)および一般式〔2〕で表される繰返し単位(2)を、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)の合計に対する繰返し単位(1)のモル比〔(1)/((1)+(2))〕が、0.01〜1となる割合で有するポリカーボネート樹脂。
- 塩化メチレンを溶媒として、0.5g/デシリットルの濃度、20℃の温度で測定した還元粘度〔ηSP/c〕が、少なくとも0.1デシリットル/gである請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 導電性基体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層に請求項1記載のポリカーボネート樹脂を含有していることを特徴とする電子写真感光体。
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