JP3897379B2 - 衝撃吸収ドアトリム構造及びドアトリム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等のドアの室内側に設けられるドアトリムに関し、特に側面衝突によるエネルギーを吸収し乗員を保護するために用いられる衝撃吸収ドアトリム構造及びドアトリムに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のドアの構造として図4及び図5に示すように、側面衝突の際に搭乗者101がドア102に衝突した時の衝撃を吸収させる目的で、ドア102の室内側に設けられたドアトリム103を衝撃吸収構造とすることが公知(例えば特開平6−42420号公報)である。
【0003】
上記従来の衝撃吸収ドアトリムは、ドアトリム103の上部に搭乗者101の胸105或いは肩106を保護するパッド107(クッションパッド)が装着され、ドアトリム103の下部に搭乗者101の腰108を保護するパッド109が装着され、2つのクョションパッド107、109がそれぞれ、別々にドアトリム4に取付けられている。またドアトリム104の略中央部には車内装飾用のオーナメント部110が設けられている。オーナメント部110には表皮材が貼着されて構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のドアトリムは、以下の不具合があった。
▲1▼クッションパッドの体積が小さいため、エネルギー吸収量が小さい。乗員の保護という点では、更に大きなエネルギー吸収が望まれている。そのためにはドアの車内側面の全面にクッションパッドを装着すればよいが、ドアトリムの略中央にオーナメント部110と呼ばれる内装があり、その部分を避けるようにしてクッションバッドを入れるため、従来のクッションパッドはエネルギー吸収量が不充分であった。
【0005】
▲2▼クッションパッドの体積を増やしてエネルギー吸収量を大きくするために厚みを厚く形成することが考えられる。しかしながら、クッションパッドを厚く形成すると車内の幅が狭くなって居住性が低下してしまうため、クッションパッドを厚く形成するには限界があり、一定以上の厚みに形成することはできない。
【0006】
▲3▼実際の衝突は必ずしも側面方向から真っ直ぐ衝突する場合ばかりではなく、斜め前方、斜め後方等の自動車の前後方向に対し直角以外の方向から衝突することもある。側面衝突の角度によっては、搭乗者の体が前後に動いてしまい、体がクッションパッドの装着位置以外の部分に衝突してしまう。このような場合には、クッションハッドによる衝突時のエネルギー吸収作用が全く発揮されない。
【0007】
▲4▼また、クッションパッドをドアトリムに取り付ける場合、上記公報に記載されているように、クリップ、ボルトナット、止め具、接着剤等の各種の取付け手段が用いられる。そしてクッションパッドは、走行中の振動等による軋み音や脱落等が発生しないように、強固に取付ける必要があり手間がかかる。このクョッシンパッドを簡単な手段で確実に取り付け可能とし、組立工程を合理化することが望まれている。
【0008】
本発明は上記従来技術の欠点を解決するためになされたものであり、厚みを増やさずにエネルギー吸収量を増大させることが可能であり、衝突角度が変化しても衝突時のエネルギー吸収作用を発揮でき、また組立時の取付け作業が容易である、衝撃吸収ドアトリム構造、及びドアトリムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)窓部の設けられたドアトリム本体と、密度が0.018〜0.045g/cm3 であり搭乗者の胸或いは肩を保護する上段の衝撃吸収部A、密度が0.03〜0.12g/cm3 であり搭乗者の腰部を保護する下段の衝撃吸収部B、及び密度が0.018〜0.225g/cm3 であり前記窓部に挿入される中段の衝撃吸収部Cを有し、前記衝撃吸収部Aと前記衝撃吸収部Bとが前記衝撃吸収部Cにより連結されて一体に形成されてなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体製衝撃吸収パッドと、を備え、前記衝撃吸収部Cが前記窓部に前記ドアトリム本体の室外側から挿入されて係止され、且つ、前記衝撃吸収部Aが前記ドアトリム本体の上部に係止されて構成されており、前記衝撃吸収パッドが、前記衝撃吸収部Aと前記衝撃吸収部Bとの密度が異なるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体であり、かつ前記衝撃吸収部Bの密度が前記衝撃吸収部Aの密度より高いことを特徴とする衝撃吸収ドアトリム構造、(2)衝撃吸収パッドが前記衝撃吸収部Cと前記衝撃吸収部Aとの連結部、及び前記衝撃吸収部Cと前記衝撃吸収部Bとの連結部に溝が設けられている上記(1)に記載の衝撃吸収ドアトリム構造、(3)密度が0.018〜0.045g/cm3 であり搭乗者の胸或いは肩を保護する上段の衝撃吸収部Aと、密度が0.03〜0.12g/cm3 であり搭乗者の腰部を保護する下段の衝撃吸収部Bと、前記衝撃吸収部AとBとを連結する密度が0.018〜0.225g/cm3 である中段の衝撃吸収部Cとが一体に形成されてなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体製衝撃吸収パッドに内装材が積層接着されてなるドアトリムであって、前記衝撃吸収パッドが、前記衝撃吸収部Aと前記衝撃吸収部Bとの密度が異なるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体であり、かつ衝撃吸収部Bの密度が衝撃吸収部Aの密度より高いことを特徴とするドアトリム、を要旨とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の衝撃吸収ドアトリム構造は図1に示すように、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体からなる衝撃吸収パッド1が、ドアトリム本体2に取り付けられて構成される。上記衝撃吸収パッド1は、搭乗者の胸或いは肩等を保護するためのドアトリムの上部に位置する上段の衝撃吸収部Aと、搭乗者の腰部を保護するためのドアトリムの下部に位置する下段の衝撃吸収部Bが、ドアトリムの中段の衝撃吸収部Cにより連結された形状であって、上記衝撃吸収部A、B及びCは一体に形成されている。
【0011】
ドアトリム本体2にはドアトリムの中段に位置する装飾用のオーナメント部に対応する箇所に、該ドアトリムを室内側と室外側に貫通するようにくり抜かれた窓部4が設けられている。衝撃吸収パッド1は、上段の衝撃吸収部Aの上部片7がドアトリム本体2の上部にドアトリムの室外側から係止され(図3参照)、ドアトリム本体の窓部4と略同じ面積を有する中段の衝撃吸収部Cがドアトリム本体の窓部4にドアトリムの室外側から挿入されて取付けられる。窓部4を設けることで、その部分のドアトリムの厚さ分だけ、衝撃吸収パッドの厚さを厚く形成することができる。尚、衝撃吸収部Cの面積は300〜1500cm2 、厚み0.5〜10cmのものが好ましい。
【0012】
衝撃吸収パッド1のドアトリム本体2への係止による取付け手段は上述の手段に加え、例えばタッピングスクリュー、リブ、溶着、接着剤、両面テープ、クリップ、ボルト等の従来公知の各種手段を補助的に用いることができる。
【0013】
本発明の構造ではパッドをドアトリムへ取り付ける場合、衝撃吸収パッド1は1つの部材として構成されているため、ドアトリム本体に取り付ける際に一度の取付けで良く、従来の2つのパッドをドアインナーパネルやドアトリムに取付ける場合と比較して、工程が合理化でき、しかも、衝撃吸収パッド1の上部と中段の衝撃吸収部Cがドアトリム本体に係止される構造である為、尚更取付工程数、取付部品点数が合理化できる。
【0014】
上記衝撃吸収パッド1の上段の衝撃吸収部Aは密度が0.018〜0.045g/cm3 、好ましくは0.02〜0.036g/cm3 に形成され、下段の衝撃吸収部Bは密度が0.03〜0.12g/cm3 、好ましくは0.06〜0.1g/cm3 に形成され、中段の衝撃吸収部Cは密度が0.018〜0.225g/cm3 、特にエネルギー吸収量、厚みを考慮すると、好ましくは0.11〜0.225g/cm3 に形成される。
【0015】
衝撃吸収パッド1は衝撃吸収部A、B、Cの密度が異なるように形成してもよい。特に少なくとも衝撃吸収部Aの密度と衝撃吸収部Bの密度を異ならしめ、衝撃吸収部Bの密度が衝撃吸収部Aの密度よりも高くなるように形成するのが好ましい。衝撃吸収部Aは搭乗者の胸又は肩が衝突する部分であり、衝撃吸収部Bは搭乗者の腰が衝突する部分である。人体の骨の強度を比較した場合、胸或いは肩の骨と比較すると腰の骨の方が丈夫であるから、発泡体の密度は衝撃吸収部Bの密度が衝撃吸収部Aの密度よりも高くなるように形成するのが好ましい。衝撃吸収部Cの密度は、頭部、胸部、肩部の衝突、その際のシートベルトによるエネルギー減衰を考慮して決定される。衝撃吸収パッド1は、発泡成形体の密度が高い程エネルギー吸収量は大きくなるが、あまり密度が高くなると硬くなりすぎて衝突した際の人体に対するダメージが大きくなる。衝撃吸収パッドの密度は、上記要素を適宜考慮して決定される。また、発泡成形体の体積が大きい程、エネルギー吸収量は大きくなり、本発明では衝撃吸収部Cを設けることにより特に厚みを大きくしなくても十分なエネルギー吸収が達成できる。
【0016】
衝撃吸収パッド1は上段の衝撃吸収部A及び下段の衝撃吸収部Bと、上記の各衝撃吸収部と連結する中段の衝撃吸収部Cとの間に溝3を設けることができる。溝3の深さは、3〜60mmが好ましい。そして、ドアトリム本体2の窓4の周囲6を上記溝3に嵌合するようにして、衝撃吸収パッドの中段の衝撃吸収部Cをドアトリム本体2の窓4に挿入した際に、該周囲6を溝3に嵌合させて、ドアトリム本体2に衝撃吸収パッド1を係止するように形成することができる。
【0017】
また図2に示すように、衝撃吸収パッド1をドアトリム本体2に取り付ける際、トリコットなどの表皮材5を衝撃吸収パッド1の中段の衝撃吸収部Cに被せてから、該パッド1をドアトリム本体2に取り付けてもよい。図3示すように、表皮材5が衝撃吸収パッド1中段の衝撃吸収部Cを覆い、ドアトリム本体2の窓部4の周囲6がパッド1の溝3に嵌合し、表皮材5の周囲がしっかりと保持され、表皮材5の周囲の始末が容易でありしかも表皮材5の室内側表面に皺が発生することもない。表皮材5はレザー、フェルト、トリコット等の装飾材料が用いられる。
【0018】
衝撃吸収パッド1は、ポリプロピレン系樹脂の発泡粒子を所望の成形用金型に充填し加熱して粒子相互を融着一体化する所謂ビーズ成形により所定形状に成形してなる発泡粒子成形体が用いられる。予備発泡粒子に用いるポリプロピレン系樹脂は、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、プロピレン−ブテンランダムコポリマー、エチレン−ブテン−プロピレンランダムターポリマー、ポリプロピレンホモポリマー等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0019】
衝撃吸収パッド1の密度を部分的に異ならしめるには、例えば、衝撃吸収パッドを製造する際に、金型内の所定の位置に仕切りを設け各区画に密度の異なる発泡粒子を充填した後、上記仕切りを取り除いて、成形して一体化する方法が挙げられる。本発明では上記衝撃吸収パッドに発泡粒子成形体を用いているため、部分的に密度を異ならしめることが容易である。
【0020】
上記の衝撃吸収ドアトリムは、数箇所をクリップ又はスクリューで固定する方法、インナーパネルに嵌合部を設けて押し込む方法、固定用プレートとクリップ又はスクリューにより固定する方法等によりドアインナーパネルに取り付けられて組立られる。
【0021】
また、上記の衝撃吸収パッドに、予め内装材を積層接着してドアトリムとしてもよい。内装材を積層してドアトリムとする場合は、当然発泡粒子成形体からなる衝撃吸収パッドがドアトリム本体の役割もはたす程度の強度を有するように金型にて成型される。具体的には凸型及び凹型からなる金型内に内装材を配置した後、圧空等の空気差圧を利用して該内装材を加熱成形し、その後該金型内に発泡粒子を充填し加熱することにより粒子相互を融着一体化すると同時に内装材も一体に成形され内装材が積層接着されたドアトリムを得る手段等が用いられる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、密度0.018〜0.045g/cm3 の上段の衝撃吸収部Aと、密度0.03〜0.12g/cm3 の下段の衝撃吸収部Bと、上記衝撃吸収部AとBとを連結する密度0.018〜0.225g/cm3 の中段の衝撃吸収部Cとが一体に形成されており、上記衝撃吸収パッドが、上段の衝撃吸収部Aと下段の衝撃吸収部Bとの密度が異なるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体であり、かつ衝撃吸収部Bの密度が衝撃吸収部Aの密度より高いポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体製衝撃吸収パッドを用いたことにより、厚みを増加させずに衝撃吸収パッドの体積を増加することかでき、エネルギー吸収量が大きくなる。また受圧面積を大きくすることにより安定したエネルギー吸収を実現することができる。また、本発明ドアトリム構造により、従来と比較して衝撃吸収パッド取付部品点数が減り取り付け作業性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明衝撃吸収ドアトリム構造の1例を示す分解斜視図である。
【図2】図1のII−II線縦断面図である。
【図3】本発明衝撃吸収ドアトリム構造の縦断面図である。
【図4】従来のドアトリム構造の説明図である。
【図5】従来のドアトリム構造の縦断面図である。
【符号の説明】
1 衝撃吸収パッド
2 ドアトリム本体
A ドアトリム上段の衝撃吸収部
B ドアトリム下段の衝撃吸収部
C ドアトリム中段の衝撃吸収部
Claims (3)
- 窓部の設けられたドアトリム本体と、
密度が0.018〜0.045g/cm3 であり搭乗者の胸或いは肩を保護する上段の衝撃吸収部A、密度が0.03〜0.12g/cm3 であり搭乗者の腰部を保護する下段の衝撃吸収部B、及び密度が0.018〜0.225g/cm3 であり前記窓部に挿入される中段の衝撃吸収部Cを有し、前記衝撃吸収部Aと前記衝撃吸収部Bとが前記衝撃吸収部Cにより連結されて一体に形成されてなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体製衝撃吸収パッドと、を備え、
前記衝撃吸収部Cが前記窓部に前記ドアトリム本体の室外側から挿入されて係止され、且つ、前記衝撃吸収部Aが前記ドアトリム本体の上部に係止されて構成されており、
前記衝撃吸収パッドが、前記衝撃吸収部Aと前記衝撃吸収部Bとの密度が異なるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体であり、かつ前記衝撃吸収部Bの密度が前記衝撃吸収部Aの密度より高いことを特徴とする衝撃吸収ドアトリム構造。 - 衝撃吸収パッドが前記衝撃吸収部Cと前記衝撃吸収部Aとの連結部、及び前記衝撃吸収部Cと前記衝撃吸収部Bとの連結部に溝が設けられている請求項1に記載の衝撃吸収ドアトリム構造。
- 密度が0.018〜0.045g/cm3 であり搭乗者の胸或いは肩を保護する上段の衝撃吸収部Aと、密度が0.03〜0.12g/cm3 であり搭乗者の腰部を保護する下段の衝撃吸収部Bと、前記衝撃吸収部AとBとを連結する密度が0.018〜0.225g/cm3 である中段の衝撃吸収部Cとが一体に形成されてなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体製衝撃吸収パッドに内装材が積層接着されてなるドアトリムであって、前記衝撃吸収パッドが、前記衝撃吸収部Aと前記衝撃吸収部Bとの密度が異なるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体であり、かつ衝撃吸収部Bの密度が衝撃吸収部Aの密度より高いことを特徴とするドアトリム。
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1996
- 1996-09-03 JP JP25233996A patent/JP3897379B2/ja not_active Expired - Fee Related
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