JP3893830B2 - アナログモジュール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は産業用コントローラに係り、更に詳しくは例えばセンサから与えられるアナログ信号を、コントローラ内で利用しやすい範囲のディジタル信号に変換するためのアナログ入力モジュール、またはその逆の動作を行うアナログ出力モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
アナログモジュールの従来例の構成を図14に示す。同図はアナログ入力信号をシステム内で利用しやすい範囲のディジタル信号に変換して出力するアナログ入力モジュールの例である。逆の動作を行うアナログモジュールとしてアナログ出力モジュールも用いられるが、本発明ではアナログ入力モジュールを例として本発明の内容を説明する。なお図14のアナログ入力モジュールでは、入力アナログ信号として、例えば単一のレンジを持つ電圧値が入力されるものとする。
【0003】
図15は、図14のアナログ入力モジュールにおいてアナログ入力信号をディジタル信号に変換した後、その変換値に加工を行い、出力信号を得る場合の変換のパラメータとしてのゲインとオフセットとの説明図である。同図においては、アナログ入力信号として−10〜+10Vレンジの電圧に対応して、モジュールからディジタル変換値−500〜+500(digit)が出力さるものとする。
【0004】
図14のアナログ入力モジュール50において、アナログ入力信号は入力部51を介してA/D変換部52によってディジタル信号に変換され、変換値加工53によって、EEPROM58に格納されている変換用のパラメータとしてのゲイン59aおよびオフセット59bを用いて加工され、ディジタル信号としてシステムバス54に出力される。この変換値加工53の動作については後述する。
【0005】
ゲイン設定60aは外部スイッチ56がオンとなった時点で動作し、A/D変換部52の出力をゲイン59aとしてEEPROM58に書き込み、またオフセット設定60bは外部スイッチ57がオンとなった時に動作し、A/D変換部52の出力をオフセット59bとしてEEPROM58に書き込む。通常の場合、アナログモジュールに対しては、製造者によって工場出荷時にゲイン59a、およびオフセット59bのデフォルト値が書き込まれている。
【0006】
マイコン55はアナログ入力モジュール50全体の動作を制御するものであり、ハードウェアの初期化、モジュール内の変換値処理、EEPROM58への書込み、およびシステムバス54へのデータ送出などを制御する。すなわち変換値加工53、ゲイン設定60a、およびオフセット設定60bの各ブロックはハードウェアではなく、マイコン55によるソフトウェア処理である。
【0007】
ゲインとオフセットは、変換値加工53によって行われる、A/D変換部52の出力からシステムバス54に出力するディジタル信号への変換に用いられるパラメータであるが、このゲインとオフセットをユーザに設定可能とさせる機能がアナログモジュールに与えられている場合がある。
【0008】
これはアナログモジュールがシステム機器に組み込まれたり、プラントに組み込まれたりして動作する時に、接続相手先との間で入力レンジのフルスケールの分だけ印加電圧や印加電流をふることができない場合があるためであり、その原因は回路上のリーク電流や、接続ケーブルの抵抗などである。
【0009】
そのような場合に備えて、ユーザがアナログモジュールを動作させる前に、接続先から出力される最小出力値を例えばゲイン、最小出力値をオフセットとして、アナログモジュールに記憶させて動作させるゲイン、オフセット設定機能が必要となる。
【0010】
次にゲインとオフセットを使用した変換値加工53の動作について説明する。変換値加工53は、前述のように実際にはハードウェアではなく、マイコン55によって行われるソフトウェア処理である。その機能は2つあり、第1の機能はA/D変換部52の出力に対するゲインとオフセットを使ったフルスケール変換であり、第2の機能はフルスケールを越える範囲での上限値、下限値張り付けの処理である。
【0011】
図15を用いて具体的な処理例を説明する。まず第1の手順として入力に+10Vを与えて外部スイッチ56を押す。この時A/D変換部52は+600を出力し、この値はゲイン59aとしてEEPROM58に書き込まれる。第2の手順として入力に0Vを与えて外部スイッチ57が押される。この時のA/D変換部52の出力+10が、オフセット59bとしてEEPROM58に書き込まれる。これらの手順はアナログモジュール50を初めて使用する時に一度行えばよいものであり、例えば製造者によって工場出荷時に実行される。
【0012】
ユーザによる通常の使用時においてアナログ入力電圧として+5Vが与えられるとすると、A/D変換部52の出力は+305となる。この出力値に対して次式による変換値加工を行って、システムバス54への出力Xを求めるのが変換値加工53の機能である。
【0013】
X=(A/D変換部出力値−オフセット)×分解能/(ゲイン−オフセット)
・・・・・(1)
IF X>500 THEN X=500 ←上限値張り付け
IF X<−500 THEN X=−500 ←下限値張り付け
この処理によって得られた値が、ディジタル出力としてシステムバス54に与えられる。前述のゲインとオフセットの値を代入し、分解能を500として(1)式を計算すると、システムバス54への出力値Xとして、250(digit)が得られる。
【0014】
次に図14のEEPROM58としては、多くの場合アナログモジュールに対するコストとスペースの制約のために値段が安く、小さいパッケージのシリアルEEPROMが使われることが多い。図16はそのようなシリアルEEPROMとマイコンとの接続例を示し、図17はシリアルEEPROMに対するアクセスの例を示す。
【0015】
シリアルEEPROMとしては、わずか8ピンしかないパッケージの中に256ワード×16ビット(1024×16などメモリ容量は色々ある。)のメモリが格納されており、図16に示すように *CS信号を与えながら、Din端子にリードコマンドやライトコマンドを与えることによって、希望するアドレスのデータを読み出したり、データの書き込みを行うことができる。
【0016】
図17に示すように、例えばアドレスの8ビットに対してDin端子は1本だけであり、 コマンドやアドレスは1ビットずつシリアルにEEPROMに与えられる。Dout 端子からのステータスやリードデータも、1ビットずつシリアルに出力される。
【0017】
図17に示すようにリード動作時のステータスは通常0であり、引き続いてデータビットが出てくることを示している。RS232Cのようなシリアル通信におけるスタートビットと同様なものがステータスである。これに対してライト動作時には、Din端子からコマンド、アドレス、ライトデータが与えられ、そのライト動作に対応するステータスとしてはレディ(完了)か、ビジィ(未完了)のいずれかが出力される。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、従来のアナログモジュールでは、工場から出荷される時点でその入力対出力特性が精度保証範囲内に収まるように、ゲインとオフセットの値が設定される。しかしながらユーザがある使用環境に対応するためにゲインやオフセットの調整を行うと、EEPROMに書き込まれているゲインとオフセットの値は上書きされることにより消えてしまい、別の環境で使用したり、精度を戻したい場合には工場へ送り返してゲインとオフセットの値を設定しなおしてもらうか、あるいはユーザ自身が高精度の電圧発生器や電流発生器を用意して、ゲイン、オフセットの設定をし直さなければならないという問題点があった。
【0019】
また複数のレンジを入力レンジとして持つアナログモジュール、例えば−10V〜+10Vレンジ、0〜+10Vレンジ、−5V〜+5Vレンジ、0〜+5Vレンジ、および+1V〜+5Vレンジというように、1台で5つのレンジを持つアナログモジュールも存在する。このようなアナログモジュールにおいては、各レンジ毎にゲインとオフセットの値を持たせると、それらを書き込むために多くのEEPROM容量を必要とし、高価なアナログモジュールになってしまうという問題点があった。
【0020】
更に前述のように、従来のアナログモジュールではコストやスペースの制約から、シリアルEEPROMが使われることが多く、データのリードやライトに時間がかかるため、高速な変換スピードを持つアナログモジュールができないという問題点があった。
【0021】
本発明の課題は、上述の問題点に鑑み、任意の時点でゲインとオフセットの値を工場から出荷された時に設定された精度に戻すことができ、またマルチレンジモジュールに対しても工場出荷時において1つのレンジだけに対応してゲインとオフセットを設定するだけでよく、更にデータのリードやライトを高速化できるアナログモジュールを提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
図1は本発明の原理構成ブロック図である。同図はアナログデータをシステム内で利用しやすい範囲のディジタルデータとして処理するためのアナログモジュール、すなわちアナログ入力モジュール、またはアナログ出力モジュールの原理構成ブロック図である。
【0023】
同図においてアナログモジュール1の内部には、パラメータ記憶手段2およびパラメータコピー手段5が備えられる。パラメータ記憶手段2は、例えば書き換え可能なメモリとしてのEEPROMであって、ユーザ用領域3とメーカ用領域4とを備えている。
【0024】
ユーザ用領域3は、入力値を出力値に変換するためのパラメータとして、ユーザにより書き込まれるパラメータを格納するものであり、メーカ用領域4は、例えば工場出荷時にメーカ側から書き込まれたパラメータであって、モジュール内に保持すべきパラメータを格納する領域である。
【0025】
パラメータコピー手段5は、メーカ用領域4に格納されているパラメータをユーザ用領域3にコピーするものであり、このコピーは任意の時点で実行される。例えばユーザがアナログモジュールの使用開始時点でメーカ用領域に格納されているパラメータを入力値を出力値に変換するために使用するとすれば、そのパラメータがパラメータコピー手段5によってユーザ用領域にコピーされて使用される。
【0026】
そして例えばある時点で、ユーザがユーザ用領域3に格納されているパラメータ、例えばゲインとオフセットの値とを書き換えてアナログモジュールを使用したとしても、その後任意の時点で再度メーカ用領域4に格納されているパラメータの値をユーザ用領域3にコピーすることによって、再び工場出荷時に設定された精度でアナログモジュールを使用することが可能となる。
【0027】
本発明の実施形態においては、ユーザによる誤操作としてのメーカ用領域4の書き換えを防止するために、メーカ用領域4に格納されているパラメータの書き換えを外部、例えばシステムバスからゲイン書き込みコマンドを受け取った時にのみ実行するメーカ用領域書き換え制限手段を更に備えることもできる。
【0028】
また本発明の実施形態においては、入力値の範囲を示すレンジとして複数のレンジに対応するために、外部、例えばユーザからのレンジ変更の指示を受けて、メーカ用領域4に格納されているパラメータを用いて、レンジ変更後に使用すべきパラメータの値を算出し、ユーザ用領域3に格納するパラメータ補正手段を更に備えることもできる。
【0029】
この場合、この複数のレンジが1つ以上の電圧レンジと1つ以上の電流レンジとから構成され、またメーカ用領域4が電圧用パラメータと電流用パラメータとを格納し、パラメータ補正手段が外部からのレンジ変更の指示を受けて、変更後のレンジが電圧レンジと電流レンジのいずれであるかに対応して、電圧用パラメータと電流用パラメータのいずれかを使用してレンジ変更後に使用すべきパラメータの値を算出することもできる。
【0030】
また本発明の実施形態において、アナログモジュール1はユーザ用領域3に格納されたパラメータがコピーされて格納される、パラメータ記憶手段2よりも高速に読み出し可能な高速パラメータ記憶手段を更に備えることもできる。
【0031】
本発明のアナログモジュールは、例えばアナログ/ディジタル入力値をディジタル/アナログ値に変換するアナログ入力/出力モジュールであり、また入力値を出力値に変換するためのパラメータは、例えばそれぞれある入力値に対応するゲイン、オフセットである。
【0032】
本発明のアナログモジュールは、入力値を出力値に変換するためのパラメータのユーザによる書き換えを実行させないようにしたものとすることもできる。このようなアナログモジュールも、パラメータ記憶手段とパラメータコピー手段とを備える。
【0033】
パラメータ記憶手段は、入力値を出力値に変換するためのパラメータを格納する変換用パラメータ格納領域と、メーカ側から書き込まれたパラメータであって、モジュール内に保持すべきパラメータを格納するメーカ用領域とを有し、書き換え可能なメモリによって構成される。
【0034】
パラメータコピー手段は、メーカ用領域に格納されているパラメータを変換用パラメータ格納領域にコピーするものであり、これによって任意の時点でメーカ用領域に格納されているパラメータを、入力値を出力値に変換するために使用することが可能となる。
【0035】
このようなアナログモジュールにおいて、入力値の範囲を示すレンジとして複数のレンジに対応するために、外部からのレンジ変更の指示を受けて、メーカ用領域に格納されているパラメータを用いてレンジ変更後に使用すべきパラメータの値を算出し、変換用パラメータ格納領域に格納するパラメータ補正手段と、外部からの書込みコマンドを受け取った時にのみメーカ用領域に格納されているパラメータの書き換えを実行する、メーカ用領域書き換え手段とを更に備えることもできる。
【0036】
以上説明したように本発明によれば、一般に工場出荷時に設定されたパラメータ、例えばゲインやオフセットの値をユーザが書き換えてしまっても、任意の時点でその値を再び使用することが可能となる。
【0037】
【発明の実施の形態】
図2は本発明の第1の実施形態におけるアナログ入力モジュールの構成を示すブロック図である。同図において、図14の従来例と同じ動作をする部分については説明を省略する。なお図2でユーザ設定領域20と製造者設定領域21とが太線で示されているが、これは請求項に対応した強調を示す。他の図でも同様である。
【0038】
図2において図14と異なる点は、EEPROM19の中にユーザ設定領域20、および製造者設定領域21が設けられ、ユーザ設定領域20にはゲイン20aとオフセット20bとが格納され、また製造者設定領域21にもゲイン21aおよびオフセット21bが格納される点が基本的な相違である。
【0039】
この相違に対応して、ユーザ設定領域20に対してゲイン、オフセットを設定するためのゲイン設定23a、オフセット設定23b、製造者設定領域21にゲイン、オフセットを設定するためのゲイン設定24a、オフセット設定24b、およびユーザ設定領域20に対する入力をゲイン設定23a、オフセット設定23b側に接続するか、製造者設定領域21に格納されているゲインとオフセットをコピーするために、製造者設定領域側に接続するかを切り替えるスイッチ22a,22bが備えられる。
【0040】
またユーザ設定領域20、製造者設定領域21に対するゲイン、オフセットの書き込みを制御するモードとしての3つのモードを切り替えるモードスイッチ16が備えられる。ゲイン用押しボタンスイッチ17、オフセット用押しボタンスイッチ18は図14の従来例における外部スイッチ56,57に相当し、これらのスイッチが押された時に、A/D変換部12の出力値としてのゲイン、オフセットがEEPROM19に格納される。
【0041】
図2のアナログ入力モジュール10において、EEPROM19の内部には前述のようにゲイン、オフセットの値を設定するためのユーザ設定領域20と製造者設定領域21とが設けられ、また3つのポジションを持ったモードスイッチ16が備えられる。モードスイッチの3つのモード0,1、および2は押しボタンスイッチ17、および18が押された時に次ような意味を持つ。先ずモード0では、ユーザによってゲインとオフセットの設定が実行される。アナログモジュール10の内部では、ユーザ設定領域20にゲイン20a、オフセット20bが書き込まれる。
【0042】
モード1では、製造者設定領域21に格納されているゲイン21a、オフセット21bの値が、それぞれスイッチ22a,22bを介してユーザ設定領域20にコピーされる。
【0043】
モード2では、製造者によってゲインとオフセットの設定が実行される。アナログモジュール10の内部では、製造者設定領域21にゲインとオフセットが書き込まれる。なおここでは3つのポジションを持つロータリースイッチがモードスイッチ16として使用されているが、この3つのモードを持たせることができれば、ロータリースイッチ以外の他の種類のスイッチを使用することもできる。
【0044】
図2において、ユーザがゲインとオフセットの値をアナログ入力モジュール10の工場出荷時に書き込まれた値、すなわち製造者設定領域21に格納されている値と異なる値に設定したい場合には、モードスイッチ16を0の位置にして、ゲイン用押しボタンスイッチ17とオフセット用押しボタンスイッチ18を、アナログ入力電圧の指定された値に対して押すことによって、A/D変換部12の出力としてのゲイン、オフセットの値がゲイン設定23a、オフセット設定23b、スイッチ22a,22bを介してユーザ設定領域20に書き込まれる。工場出荷時のゲインとオフセットの値を使用したい場合には、モードスイッチ16を1の位置として、2つの押しボタンスイッチ17,18を押すことにより、製造者設定領域21からゲインとオフセットの値が読み出され、ユーザ設定領域20に格納される。
【0045】
図3は第2の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。同図においてアナログ入力モジュールの構成は図2におけると同様であるが、システムバス14からの書込みコマンドが、製造者設定領域21にゲインとオフセットの値を設定するためのゲイン設定24a、オフセット設定24bに与えられる点が異なっている。
【0046】
第1の実施形態における図2のアナログ入力モジュール10においては、ユーザが誤ってモードスイッチ16を2の位置にして、製造者設定領域21にゲインとオフセットの値を書き込むことも可能であり、このようなユーザの誤操作によって製造者によって書き込まれたゲインとオフセットの値が消されてしまうことのないように、アナログ入力モジュールの高信頼度化が図られる。
【0047】
システムバス14からユーザに公開されていないゲイン書込み用のコマンド、オフセット書込み用のコマンドを受けられるようにして、そのコマンドが入力され、かつモードスイッチ16が2の位置にある時にのみ、EEPROM19の製造者設定領域21にゲイン、またはオフセットの書込みが可能なように、ゲイン設定24a、オフセット設定24bが制御される。すなわち、モードスイッチ16が2の位置にある時は、押しボタンスイッチ17、および18のオン/オフが無効とされ、ユーザが誤ってこれらのボタンを押してゲインとオフセットの値を設定しようとしても、製造者設定領域21に対するゲインとオフセットの書込みは行われない。
【0048】
製造者がゲインとオフセットの値を設定したい場合には、モードスイッチ16を2の位置にして、かつシステムバス14からユーザに非公開のコマンドを送り、あらかじめ定められたアナログ入力電圧を与えて2つの押しボタンスイッチ17,18を押すことによって、製造者設定領域21にゲイン、オフセットの値が書き込まれる。
【0049】
図4は第3の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。同図を第2の実施形態における図3と比較すると、システムバス14側から書込みコマンドに加えて動作レンジ設定のコマンドが与えられ、その動作レンジの設定値は、ユーザ設定領域20の中にゲイン20a、オフセット20bに加えて動作レンジ20cとして格納される。また動作レンジの設定が変更される時、ゲイン補正25a、オフセット補正25bによって、製造者設定領域21に格納されているゲイン21a、オフセット21b、および変更後の動作レンジ20cが読み出され、レンジ変更後に使用されるべきゲインとオフセットの値が計算されて、ユーザ設定領域20にゲイン20a、オフセット20bとして格納される。
【0050】
第3の実施形態においては、アナログ入力モジュール10は複数のアナログ入力動作レンジを切り替えて使用することができるマルチレンジアナログ入力モジュールである。ユーザが動作レンジを変更したい時、例えば0〜10Vレンジから0〜5Vレンジに変更したい場合などには、ユーザ設定領域20に格納されるべきゲイン20a、オフセット20bの値としてはゲイン補正25a、オフセット補正25bによって補正計算が行われた結果が書き込まれる。この補正計算は実際にはマイコン15によって実行されるものであるが、その計算については後述する。
【0051】
製造者が製造者設定領域21に対してゲイン21a、オフセット21bを書き込む時に、対応する入力レンジを常に一定、例えば0〜10Vレンジとしておくことによって、製造者設定領域21にゲイン、オフセットを設定した時の動作レンジをアナログ入力モジュール10に記憶させておく必要はない。
【0052】
図5は第3の実施形態における動作レンジ設定コマンドの流れの説明図である。動作レンジ設定コマンドはユーザによって発行され、システムバス14を経由して受信されるコマンドである。図5はコントローラの全体図であるが、ここではCPUモジュール30に実装されているアプリケーションプログラム31によって動作レンジ設定コマンドが発行されている。
【0053】
アナログ入力モジュール10の内部のマイコン15はシステムバス14からのコマンドを解釈し、動作レンジ設定コマンドであればEEPROMのユーザ設定領域20の動作レンジ20cに設定すべき動作レンジを格納し、更に製造者設定領域21に格納されているゲイン、オフセットの値を読み出し、変更後の動作レンジに合わせた補正を行って、ユーザ設定領域20にゲイン20a、オフセット20bとして格納する。なお動作レンジが変更されてもA/D変換部12の変換特性(図15の直線の傾き)は一定である。
【0054】
図6は第3の実施形態におけるゲインとオフセットの補正計算の説明図である。同図においてアナログ入力モジュール10は5つの入力レンジを持ち、製造者設定領域21には、その中で0〜+10Vの入力レンジに対応したゲインの値がA、オフセットの値がBとして格納されているものとする。ユーザが他の入力レンジに変更した時には、ユーザ設定領域に設定されるべきゲイン20a、20bの値として、図6に従って計算された値がゲイン補正25a、オフセット補正25bによって書き込まれる。AとBの値が、図15で説明したように例えば600,10であるとすると、図6において下の3つのレンジに対応するゲインの値は305となり、また一番下のレンジに対応するオフセットの値は69となる。
【0055】
図7はマイコン15によって実行されるゲイン補正とオフセット補正のフローチャートである。同図において処理が開始されると、まずステップS1で動作レンジ設定コマンドが受け取られ、ステップS2で新しい動作レンジがユーザ設定領域20に対して動作レンジ20cとして書き込まれ、ステップS3で製造者設定領域21の内部のゲイン21a、オフセット21b、すなわちA,Bが読み出される。
【0056】
そしてステップS4でユーザ設定領域20に書き込むべきゲインの値がA,Bから算出され、ステップS5で算出されたゲインの値がユーザ設定領域20にゲイン20aとして書き込まれる。続いてステップS6でユーザ設定領域に書き込むべきオフセットの算出が行われ、ステップS7で算出されたオフセットがオフセット20bとして書き込まれ、処理を終了する。
【0057】
図8〜図10はマルチレンジアナログモジュールにおける入出力特性の例である。まず図8において、−10V〜+10Vレンジの入出力特性は図15におけるシステムバスへの出力値と同じである。−5V〜+5Vレンジでは、図6で説明したようにゲインの値は305となり、例えば入力値としての+5Vに対応する出力値は前述の(1)式によって500となり、この値は上限値となる。
【0058】
図9は0〜+5V、および0〜+10Vレンジに対する入出力特性である。これらのレンジに対しては分解能が1,000となり、上限値は1,000、下限値は0となる。
【0059】
図10は+1〜+5Vレンジに対する入出力特性を示す。このレンジに対しては分解能が1,000、ゲインが前述のように305、オフセットが69となり、+1Vに対する出力値は下限値0、+5Vに対する出力値は上限値の1,000となる。
【0060】
図11は第4の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。この第4の実施形態においては、ユーザによるゲインとオフセットの設定は禁止される。従って図2で説明したモードスイッチ16、2つの押しボタンスイッチ17,18はアナログ入力モジュール10から外され、製造者設定領域へのゲインとオフセットの設定は、図3におけると同様に、例えば製造者、またはサービスマンによってシステムバス14を介して書込みコマンドが送られることによって実行される。
【0061】
製造者設定領域21に格納されたゲインとオフセットの値は、そのままユーザ設定領域20におけるゲイン20a、オフセット20bとしてコピーされて使用されることも可能である。またユーザが動作レンジを変更した時には、第3の実施形態におけると同様にゲインとオフセットの補正計算が行われ、ユーザ設定領域20に書き込まれる。前述と同様に製造者がゲイン、オフセットを製造者設定領域21に書き込む時の動作レンジを常に一定、例えば0〜10Vレンジで行うようにすれば、アナログ入力モジュールにその動作レンジを記憶させる必要はない。
【0062】
図11においてはユーザがユーザ設定領域のゲイン20a、オフセット20bの値を書き込むことはできず、ユーザがレンジを変更しても工場出荷時の製造者によって書き込まれたゲイン21a、オフセット21bを用いて補正計算が行われ、その結果が変換値の加工に使用されるため、ユーザによるレンジの変更が行われても常に工場出荷時の高精度状態でアナログ入力モジュールを使用することが可能となる。
【0063】
図12は第5の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。第5の実施形態としては、アナログ入力として電圧入力と電流入力との両方を使用できるアナログ入力モジュールが用いられる。図12においてアナログ入力は入力部11の内部のオペアンプ11aを介してA/D変換部12に与えられるが、オペアンプ11aへの入力としては実質的に1MΩの両端に与えられる電圧入力、または250Ωの両端に加えられる電流入力とのいずれかが用いられる。
【0064】
電圧入力と電流入力との両方に対応するために、製造者設定領域21の内部に電圧レンジ用ゲイン21c、電流レンジ用ゲイン21d、電圧レンジ用オフセット21e、および電流レンジ用オフセット21fの格納領域が設けられる。
【0065】
図12においてユーザからレンジを変更するためのレンジ設定コマンドがシステムバス14を介して入力されると、変更後のレンジが電流レンジであるか電圧レンジであるかによって、電圧レンジ用ゲイン、電圧レンジ用オフセット、あるいは電流レンジ用ゲイン、電流レンジ用オフセットのいずれかが読み出され、変更後の動作レンジに合わせた補正計算がなされ、ユーザ設定領域20のゲイン20a、オフセット20bの値として書き込まれる。
【0066】
図13は第6の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。同図においては、例えば第5の実施形態における図12と比較すると、EEPROM19内のユーザ設定領域20と変換値加工13との間に、ランダムアクセスメモリ(RAM)32が備えられている点が異なっている。
【0067】
図13においては、例えばアナログ入力モジュール10の使用開始時に、EEPROM19からユーザ設定領域20に格納されているゲイン、オフセット、および動作レンジが読み出されてRAM32に格納されることによって、通常の場合の変換値加工は、例えば製造者によって設定されたゲイン、オフセットの値を用いて実行される。RAM32としてはワンチップマイコンに内蔵されているものを使用してもよく、またマイコンとは別個にRAMデバイスを置いてもよい。
【0068】
図13においては、A/D変換部12から出力された値に対する変換値加工13において、読み出しに時間のかかるEEPROM19からゲインとオフセットの値を読み出すのではなく、高速に読出しの可能なRAM32からゲインとオフセットの値を読み出すことができ、処理を高速化することができる。
【0069】
以上の説明においては、アナログ入力信号をシステム内で利用しやすい範囲のディジタル信号に変換するアナログ入力モジュールを用いて発明の内容を説明したが、本発明はアナログ入力モジュールに限定されるものではなく、逆にディジタル信号をアナログ信号に変換するアナログ出力モジュールに適用することも当然可能である。
【0070】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によればユーザが使用環境に合わせてゲインとオフセットの値を勝手に変更した後であっても、工場出荷時に設定されたゲインとオフセットの値に戻すことができ、アナログ入力モジュールの精度を保つことが可能になる。またユーザが外部スイッチの誤操作をしても、工場出荷時に設定されたゲインやオフセットの値を壊すことなく、工場出荷時の精度でアナログ入力モジュールを使用することができ、信頼性を高めることができる。
【0071】
マルチレンジモジュールに対してユーザがレンジの変更を行う時にも、自動的に工場出荷時と同じ精度を保つことができる。また製造者は全てのレンジにおいてゲインとオフセットを設定することなく、1つのレンジだけに対応して設定しておくだけで、全てのレンジに対して精度を確保することができる。
【0072】
また外部スイッチを設けないアナログモジュールを使用すれば、価格を安くすることができ、かつ動作レンジを変更してもゲインとオフセットの自動設定が可能となるアナログモジュールが提供される。電圧レンジと電流レンジの両方を備えているアナログモジュールにおいてどちらのレンジを使用する場合でも、ユーザがゲイン、オフセットを使用環境に合わせて設定することもでき、またその後に工場出荷時の値に戻すこともできる。更に変換に使用するゲインやオフセットの値を高速のメモリに格納しておくことによって、高速な変換が可能となり、アナログモジュールの実用性の向上に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理構成ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。
【図3】第2の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。
【図4】第3の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。
【図5】第3の実施形態における動作レンジ設定コマンドの流れを説明する図である。
【図6】マルチレンジアナログモジュールにおけるゲインとオフセットの算出法の説明図である。
【図7】第3の実施形態におけるゲインとオフセットの補正処理のフローチャートである。
【図8】マルチレンジアナログモジュール入出力特性(その1)を示す図である。
【図9】マルチレンジアナログモジュール入出力特性(その2)を示す図である。
【図10】マルチレンジアナログモジュール入出力特性(その3)を示す図である。
【図11】第4の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。
【図12】第5の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。
【図13】第6の実施形態におけるアナログ入力モジュールの説明図である。
【図14】アナログ入力モジュールの従来例の説明図である。
【図15】アナログ入力モジュールにおけるゲインとオフセットの説明図である。
【図16】マイコンとシリアルEEPROMの接続を説明する図である。
【図17】シリアルEEPROMのアクセス例を示す図である。
【符号の説明】
1 アナログモジュール
2 パラメータ記憶手段
3 ユーザ用領域
4 メーカ用領域
5 パラメータコピー手段
10 アナログ入力モジュール
11 入力部
12 A/D変換部
13 変換値加工
14 システムバス
15 マイコン
16 モードスイッチ
17 ゲイン用押しボタンスイッチ
18 オフセット用押しボタンスイッチ
19 EEPROM
20 ユーザ設定領域
21 製造者設定領域
30 CPUモジュール
31 アプリケーションプログラム
32 ランダムアクセスメモリ(RAM)

Claims (9)

  1. アナログデータをシステム内で利用しやすい範囲のディジタルデータとして処理するためのアナログモジュールにおいて、
    入力値を出力値に変換するためのパラメータであってユーザによって書き込まれるパラメータを格納するユーザ用領域と、メーカ側から書き込まれたパラメータであってモジュール内に保持すべきパラメータを格納するメーカ用領域とを有するパラメータ記憶手段と、
    該メーカ用領域に格納されているパラメータをユーザ用領域にコピーするパラメータコピー手段とを備え、任意の時点でメーカ用領域に格納されているパラメータを前記入力値を出力値に変換するために使用可能とすることを特徴とするアナログモジュール。
  2. 前記アナログモジュールにおいて、
    前記パラメータ記憶手段が書き換え可能なメモリによって構成されることを特徴とする請求項1記載のアナログモジュール。
  3. 前記アナログモジュールにおいて、
    前記メーカ用領域に格納されているパラメータの書き換えを、外部からの書き込みコマンドを受け取った時のみに実行するメーカ用領域書き換え制限手段を更に備えることを特徴とする請求項2記載のアナログモジュール。
  4. 前記アナログモジュールにおいて、
    前記入力値の範囲を示すレンジとして複数のレンジに対応するために、外部からのレンジ変更の指示を受けて、前記メーカ用領域に格納されているパラメータを用いてレンジ変換後に使用すべきパラメータの値を算出し、前記ユーザ用領域に格納するパラメータ補正手段を更に備えることを特徴とする請求項2記載のアナログモジュール。
  5. 前記複数のレンジが1つ以上の電圧レンジと1つ以上の電流レンジとから成ると共に、前記メーカ用領域が電圧用パラメータと電流用パラメータとを格納し、
    前記パラメータ補正手段が、前記外部からのレンジ変更の指示を受けて変更後のレンジが電圧レンジと電流レンジのいずれであるかに対応して、該電圧用パラメータと電流用パラメータとのいずれかを使用してレンジ変更後に使用すべきパラメータの値を算出することを特徴とする請求項4記載のアナログモジュール。
  6. 前記アナログモジュールにおいて、
    前記ユーザ用領域に格納されたパラメータがコピーされて格納され、前記パラメータ記憶手段よりも高速に読出し可能な高速パラメータ記憶手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のアナログモジュール。
  7. 前記入力値を出力値に変換するためのパラメータがそれぞれある入力値に対応するゲイン、オフセットであることを特徴とする請求項1記載のアナログモジュール。
  8. アナログデータをシステム内で利用しやすい範囲のディジタルデータとして処理するためのアナログモジュールにおいて、
    入力値を出力値に変換するためのパラメータを格納する変換用パラメータ格納領域と、メーカ側から書き込まれたパラメータであってモジュール内に保持すべきパラメータを格納するメーカ用領域とを有し、書き換え可能なメモリによって構成されるパラメータ記憶手段と、
    該メーカ用領域に格納されているパラメータを変換用パラメータ格納領域にコピーするパラメータコピー手段とを備え、任意の時点でメーカ用領域に格納されているパラメータを前記入力値を出力値に変換するために使用可能とすることを特徴とするアナログモジュール。
  9. 前記アナログモジュールにおいて、
    前記入力値の範囲を示すレンジとして複数のレンジに対応するために、外部からのレンジ変更の指示を受けて前記メーカ用領域に格納されているパラメータを用いてレンジ変更後に使用すべきパラメータの値を算出し、前記変換用パラメータ格納領域に格納するパラメータ補正手段と、
    前記メーカ用領域に格納されているパラメータの書き換えを、外部からの書き込みコマンドを受け取った時のみに実行するメーカ用領域書き換え手段とを更に備えることを特徴とする請求項8記載のアナログモジュール。
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