JP3893507B2 - 電動式パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動式パワーステアリング装置に関し、特に、フロントボディに衝撃が加わった場合に、その衝撃エネルギー(衝撃力)を有効に吸収することができる、例えば、キャビンが変形してしまうことを防止することができる電動式パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パワーステアリング装置は、車輌(自動車)に搭載され、操舵力をアシストする装置であり、操舵者の操舵力の軽減を主たる目的としている。このパワーステアリング装置の中には、構成部品が少なくて済み、小型で軽量な電動式パワーステアリング装置(以下、「EPS」と称する。)がある。
【0003】
図5は、一従来例であるEPS91の平面図である。図5に示すように、EPS91には、操舵力をアシストするアシスト力を発生する電動モータ92と、その電動モータ92により発生されるアシスト力を伝達するウォーム(図示せず)と、そのウォームを収容するケース体93と、そのケース体93と一体または別体に構成され且つケース体93及び電動モータ92を接続する接続ステー94と、その接続ステー94及びケース体93に接合(溶接、ロー付け、及び接着の意味を包含する。以下、同じ。)されたリブ95とが設けられている。
【0004】
このEPS91によれば、電動モータ92により、アシスト力が発生されると、ウォームにより、アシスト力が伝達される。このウォームを介して伝達されたアシスト力は、更に、ラック軸96に伝達されるのである。このウォームはケース体93内に収容され、ケース体93と一体または別体に構成された接続ステー94により、ケース体93と電動モータ92とが接続される。ここで、接続ステー94及びケース体93にはリブ95が接合されており、このリブ95により、電動モータ92がケース体93に対して強固に固定される。このため、振動その他の付加が継続的に加わる場合においても、電動モータ92がケース体93より分裂されてしまうことを防止することが、即ち、かかるEPS91の剛性を高めることができるのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図6は、上記EPS91が車輌100に搭載された状態を示した概略図である。図6(a)に示すように、EPS91が、エンジン(動力装置の一種)97やラジエータ98と共にフロントボディ101内に収容されているものがある。このようにフロントボディ101内にEPS91が収容されている場合、フロントボディ101内の空間が制限されているために、通常、電動モータ92は、エンジン97とキャビン102との間であって、且つラック軸96の上方に配設される。このため、例えば車輌100が建造物に衝突するなどの理由により、車輌100の前方側からフロントボディ101に衝撃が加わった場合には、図6(b)に示すように、エンジン97がキャビン102側に押され、エンジン97が電動モータ92と衝突するのである。このようにエンジン97が電動モータ92と衝突した場合、かかるEPS91においては、その衝突エネルギーを吸収する構造を有していないので、衝撃エネルギーを吸収することができず、例えば、キャビン102が変形してしまうという問題点があった。
【0006】
そこで、案出されたのが本発明であって、車輌の前方側から衝撃が加わった場合に、その衝撃エネルギーを有効に吸収することができる、例えば、キャビンが変形してしまうことを防止することができる電動式パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために請求項1記載の電動式パワーステアリング装置は、操舵力をアシストするアシスト力を発生する電動モータと、その電動モータにより発生されるアシスト力を伝達するウォームと、そのウォームを収容するケース体と、そのケース体と一体または別体に構成され且つ其のケース体及び電動モータを接続する接続ステーとを備えており、更に、前記電動モータに衝撃が加わった場合に、その電動モータを前記ケース体より分裂させるメカニカルヒューズを備えているものである。
【0008】
この請求項1記載の電動式パワーステアリング装置によれば、電動モータにより、アシスト力が発生されると、ウォームにより、そのアシスト力が伝達される。このウォームはケース体内に収容され、一方、そのケース体と一体または別体に構成された接続ステーにより、ケース体と電動モータとが接続される。
【0009】
ところで、本電動式パワーステアリング装置は、エンジンその他の動力装置と共に車輌のフロントボディ内に収容される場合がある。この場合、本電動式パワーステアリング装置を構成する電動モータは、収納スペースを効率よく使用するために、通常、動力装置とフロントボディとの間であって、ラック軸の上方側に配設される。車輌の前方側からフロントボディに衝撃が加わると、動力装置がキャビン側に押され、動力装置が電動モータと衝突する。しかしながら、メカニカルヒューズにより、電動モータに衝撃が加わった場合には、電動モータがケース体より分裂されるので、その衝撃エネルギーが吸収される。例えば、電動モータと共にラック軸がキャビン側に押動(押すようにして動くこと。)され、キャビンが変形してしまうことが防止される。
【0010】
請求項2記載の電動式パワーステアリング装置は、請求項1記載の電動式パワーステアリング装置において、接続ステー及びケース体に取着されたリブを備えており、更に、メカニカルヒューズが、そのリブに形成された穴部を備えているものである。
【0011】
請求項3記載の電動式パワーステアリング装置は、請求項1記載の電動式パワーステアリング装置において、メカニカルヒューズが、ケース体に形成された切欠き部を備えているものである。
【0012】
請求項4記載の電動式パワーステアリング装置は、請求項3記載の電動式パワーステアリング装置において、切欠き部が、接続ステー近傍に形成されているものである。
【0013】
この請求項4記載の電動式パワーステアリング装置によれば、請求項3記載の電動式パワーステアリング装置と同様に作用する上、接続ステー近傍に形成される切欠き部により、電動モータに衝撃が加わった場合に、電動モータがケース体より分裂される。通常、ケース体の直径と接続ステーの直径とは異なるため、電動モータに衝撃が加わった場合、ケース体の破壊が、ケース体と接続ステーとの境界部近傍において起こることが多い。このため、切欠き部を接続ステー近傍に形成すれば、電動モータのケース体からの分裂が容易とされる。
【0014】
請求項5記載の電動式パワーステアリング装置は、請求項3または4に記載の電動式パワーステアリング装置において、メカニカルヒューズが、リブに形成された穴部を備えているものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である電動式パワーステアリング装置(以下、「EPS」と称する。)1の平面図であり、図2は、本EPS1の側面図であり、図3は、本EPS1に衝撃が加わった状態を示した図である。本EPS1は、いわゆるラックピニオン式の電動パワーステアリング装置であり、電動モータ92と、ウォーム(図示せず)と、ケース体93と、ウォームホイール(図示せず)と、接続ステー94と、リブ95と、メカニカルヒューズ2とを備えている。
【0016】
電動モータ92は、操舵力をアシストするアシスト力を発生するものであり、この電動モータ92に流れる電流は、操舵力の大きさに応じて変化するようにされている。ウォームは、電動モータ92により発生されるアシスト力を伝達するものであり、略円柱状に形成されており、その外周面には歯車が形成されている。
【0017】
ケース体93は、ウォームを収容するものであり、略円柱状に形成されている。接続ステー94は、ケース体93と一体に構成されており、且つ其のケース体93及び電動モータ92を接続するものである。ウォームホイールは、歯車状に形成されており、ウォームに噛合されている。
【0018】
リブ95は、接続ステー94及びケース体93に接合されるものであり、接続ステー94及びケース体93に複数接合されている。このリブ95により、接続ステー94とケース体93とを強固に固定することが、即ち、電動モータ92とケース体93とを強固に固定することができるのである。
【0019】
メカニカルヒューズ2は、電動モータ92に衝撃が加わった場合に、その電動モータ92をケース体93より分裂させるものである。このメカニカルヒューズ2は、穴部2aと切欠き部2bとによって構成されている。穴部2aは、リブ95に形成(穿設(穴を空けること))されており、電動モータ92とケース体93とを強固に固定させるリブ95の破壊に要するエネルギーを、低減するものである。従って、図3に示すように、本EPS1に衝撃が加わった場合には、電動モータ92をケース体93より分裂させることができるのである。また、リブ95そのものを無くした分けではないので、振動その他の付加が継続的に加わる場合においても、電動モータ92がケース体93より分裂してしまうことを防止することができるのである。なお、振動その他の付加としては、例えば、エンジン97が駆動することにより発生する振動や、走行中にラック軸96を介して伝達される外力などが挙げられる。
【0020】
一方、切欠き部2bは、ケース体93の外周であって、且つケース体93と接続ステー94との境界部近傍に形成されている。この切欠き部2bは、ケース体93の破壊に要するエネルギーを低減するものである。従って、図3に示すように、本EPS1に衝撃が加わった場合には、電動モータ92をケース体93より分裂させることができるのである。また、ケース体93の直径と接続ステー94の直径とは異なるため、ケース体93の破壊に要するエネルギーは、ケース体93と接続ステー94との境界部近傍において低くなる。従って、切欠き部2bをケース体93と接続ステー94との境界部近傍に形成することにより、電動モータ92のケース体93からの分裂を容易とすることができるのである。
【0021】
図4は、本EPS1が車輌100に搭載されている状態を示した概略図である。図4に示すように、本EPS1は、エンジン97や、ラジエータ98、ラック軸96等と共に、車輌100のフロントボディ101内に収容されている。このようにフロントボディ101内に本EPS1が収容されている場合、フロントボディ101内の空間が制限されているために、通常、電動モータ92は、エンジンとキャビン102との間であって、且つラック軸96の上方に配設されている。そして、例えば車輌100が建造物に衝突するなどの理由により、車輌100の前方側からフロントボディ101に衝撃が加わると、フロントボディ101の凹み度合いに応じて、ラジエータ98及びエンジン97がキャビン102側に押動されるのである。この押動されたエンジン97は、ラック軸96の上方に配設された電動モータ92と衝突するのである(特に、ラックピニオン式の場合においては、フロントボディ101内の空間を有効に利用するために電動モータ92がラック軸96とエンジン97との間に配設されているので、顕著である。)。このようにエンジン97と電動モータ92とが衝突した場合、リブ95により電動モータ92がケース体93に対して強固に固定されていると、電動モータ92がケース体93より分裂されず、かかる衝撃エネルギーが吸収されないという問題点があった。例えば、電動モータ92と共にラック軸96がキャビン102側に押動され、キャビン102が変形してしまうという問題点があった。
【0022】
しかしながら、穴部2aにより、リブ95の破壊に要するエネルギーが低減され、切欠き部2bにより、切欠き部2bの近傍におけるケース体93の破壊に要するエネルギーが低減される。このため、電動モータ92に衝撃が加わった場合には、電動モータ92がケース体93より分裂され、その衝撃エネルギーを吸収することができるのである。例えば、電動モータ92と共にラック軸96がキャビン102側に押動され、キャビン102が変形してしまうことを防止することができるのである。
【0023】
次に、図3及び図4を参照して、上記のように構成されたEPS1の動作について説明する。具体的には、EPS1を搭載する車輌100の前方側からフロントボディ101に衝撃が加わった場合について説明する。
【0024】
車輌100の前方側からフロントボディ101に衝撃が加わると、まず、フロントボディ101が変形する。フロントボディ101が変形すると、そのフロントボディ101の凹み度合いに応じて、ラジエータ98及びエンジン97がキャビン102側へ押動される。ラジエータ98及びエンジン97がキャビン102側へ押動されると、エンジン97が電動モータ92に衝突される。ここで、電動モータ92とケース体93とを強固に固定するリブ95の破壊に要するエネルギーは、穴部2aによって低減されており、切欠き部2bの近傍におけるケース体93の破壊に要するエネルギーは、切欠き部2bによって低減されている。このため、エンジン97が電動モータ92に衝突した場合には、即ち、電動モータ92に衝撃が加わった場合には、電動モータ92がケース体93より分裂されるので、電動モータ92と共にラック軸96がキャビン102側に押動されてしまうことを防止することができ、ひいては、キャビン102が変形してしまうことを防止することができるのである。
【0025】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察することができるものである。
【0026】
なお、特許請求の範囲に記載の「取着」の意味には、▲1▼接合すること、▲2▼ネジ止めすること、▲3▼鋳造により一体に形成すること、及び、▲4▼材料を切削することにより一体に形成することの▲1▼から▲4▼までの全てを包含する。
【0027】
【発明の効果】
請求項1記載の電動式パワーステアリング装置によれば、メカニカルヒューズにより、電動モータに衝撃が加わった場合には、電動モータがケース体より分裂されるので、その衝撃エネルギーを吸収することができるという効果がある。
【0028】
請求項2記載の電動式パワーステアリング装置によれば、請求項1記載の電動式パワーステアリング装置の奏する効果に加え、更に、リブに形成された穴部により、リブの破壊に要するエネルギーを低減させることができる。従って、電動モータに衝撃が加わった場合には、その電動モータをケース体より分裂させることができるという効果がある。
【0029】
請求項3記載の電動式パワーステアリング装置によれば、請求項1記載の電動式パワーステアリング装置の奏する効果に加え、更に、ケース体に形成された切欠き部により、切欠き部の近傍におけるケース体の破壊に要するエネルギーを、低減することができる。従って、電動モータに衝撃が加わった場合には、その電動モータをケース体より分裂させることができるという効果がある。
【0030】
請求項4記載の電動式パワーステアリング装置によれば、請求項3記載の電動式パワーステアリング装置の奏する効果に加え、更に、ケース体に形成される切欠き部が接続ステー近傍に形成されているので、電動モータのケース体からの分裂を容易とすることができるという効果がある。
【0031】
請求項5記載の電動式パワーステアリング装置によれば、請求項3または4に記載の電動式パワーステアリング装置の奏する効果に加え、更に、リブの破壊に要するエネルギーを低減させることができる。従って、電動モータに衝撃が加わった場合には、その電動モータをケース体より分裂させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である電動式パワーステアリング装置(EPS)の平面図である。
【図2】 上記電動式パワーステアリング装置(EPS)の側面図である。
【図3】 上記電動式パワーステアリング装置(EPS)に衝撃が加わった状態を示した図である。
【図4】 上記電動式パワーステアリング装置(EPS)が車輌に搭載された状態を示した概略図である。
【図5】 一従来例である電動式パワーステアリング装置(EPS)の平面図である。
【図6】 上記一従来例である電動式パワーステアリング装置(EPS)が車輌に搭載された状態を示した概略図である。
【符号の説明】
1 電動式パワーステアリング装置(EPS)
2 メカニカルヒューズ
2a 穴部
2b 切欠き部
92 電動モータ
93 ケース体
94 接続ステー
95 リブ

Claims (5)

  1. 操舵力をアシストするアシスト力を発生する電動モータと、その電動モータにより発生されるアシスト力を伝達するウォームと、そのウォームを収容するケース体と、そのケース体と一体または別体に構成され且つ其のケース体及び電動モータを接続する接続ステーとを備えた電動式パワーステアリング装置において、
    前記電動モータに衝撃が加わった場合に、その電動モータを前記ケース体より分裂させるメカニカルヒューズを備えていることを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
  2. 接続ステー及びケース体に取着されたリブを備えており、更に、
    メカニカルヒューズが、そのリブに形成された穴部を備えていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング装置。
  3. メカニカルヒューズが、ケース体に形成された切欠き部を備えていることを特徴とする請求項1記載の電動式パワーステアリング装置。
  4. 切欠き部が、接続ステー近傍に形成されていることを特徴とする請求項3記載の電動式パワーステアリング装置。
  5. メカニカルヒューズが、リブに形成された穴部を備えていることを特徴とする請求項3または4に記載の電動式パワーステアリング装置。
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