JP3893419B2 - 射出成形用金型 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は合成樹脂の射出成形金型関し、特に射出成形する際に、成形品のゲート対向面に生じる突起状の不良が解消できる射出成形金型関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より射出成形により製造される成形品は、一般に生産性が高いことから広範囲な分野において使用されている。そして、近年において、射出成形精度が非常に高くなってきたことから、それまで射出成形品を利用していなかった分野において射出成形品を使用するようになってきている。
【0003】
その1つの例として磁気ディスクカートリッジのプラスチックシャッターを上げることができる。この磁気ディスクカートリッジ用のシャッターは、該シャッターの基部近傍に突出された突起が上下ハーフシェルの外面の側縁部に沿って設けられたガイド溝内を案内されて、磁気ヘッド挿入用開口を開閉するべく摺動自在に取付けられている。そして、そのほとんどは周知の如く従来、薄いステンレス板等の金属板をコ字状に折曲して形成された金属製シャッターが使用されていたが、この金属製シャッターに代って製造が容易で安価にできることからプラスチックシャッターが多用されて来ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そして、前記シャッターのごとく肉厚の薄い成形品においては、機械的にゲートを閉じるバルブゲートが有効である。すなわち、成形サイクルの短縮、樹脂の高速充填、ゲートシールが早い等の点、またゲート外観においては例えば糸引き、ゲートのこり等の外観不良の発生率が極めてすくないだけでなく、射出樹脂中の異物によるゲート詰まり故障が極めて少ない。
【0005】
このようにバルブゲートが使用されたことによりゲート径を大きくすることができ、よってゲート部分における樹脂流動性を改善できることが、例えば特開昭2−229019号公報等に開示されている。しかし、ゲート径が大きいことは大きな異物も容易にゲートを通過して、該大きい異物も射出空間内に高速射出されることになる。この異物が可動側金型のゲートに対向する部分に衝突し、金型面に傷をつけることになる。
【0006】
この傷が大きくなると前記成形品に転写され、成形品の外観故障となっている。またこの現象が繰り返されることによって、ゲートに対向する金型部分は徐々に凹化するため、その成形品の該当部分は凸になり、前記シャッターの内側のスライド面に凸部となるような場合には極めて大きな問題となる。
前記ゲートに対向する部分に傷が付く現象は、バルブゲートに限らず、ゲート通過時の樹脂速度が早い場合に発生しやすい。顕著な例としてバルブゲート、外部加熱ホットランナー型ゲートを用いたときに生じ易い。このようなことから、ゲート対向面の部の形成が金型の寿命を短くしていた。また、この金型の交換は極めて高価になるという問題があった。
【0007】
一方、前記シャッターの成形においては下記するような問題も抱えていた。
この問題を図9及び図10を参照して説明する。なお、図9及び図10はシャッー成形用の金型が開いて突出ピンにより突き出されるときの状態を示した斜視図および断面側面図である。
図9に示すようにセンターコア41を有した可動金型40には、この該センターコア41を挟むようにその左右に図示しないスライドコアが設けられている。そして、例えば可動金型40の開き移動に伴ってスライドコアが適宜開き、また、上下の突き出しピン42によりシャッタ22が突き出される(矢印A方向)。この状態において、前記シャッター22に対する上下の支えがなくなり(実際にはスライドコアの一部が適当な間隔をおいて対面している)、該シャッター22は前記センターコア41のみで支えられた状態となるために、該シャッター22が矢印Dで示されるよう傾斜する。又、前記スライドコア同士の合わせ部分の隅部分にはガス抜き部が形成されこの部分はガスによる汚れが付着しているために、上記傾きにより汚れが前記シャッター22に付着したり、最悪の場合には落下することがある。この突き出された状態の前記シャッター22は、通常、図示しないシャッター保持手段により補足されて、次の工程に移動されるので、上述のシャッターの傾きや落下は極めて大きな問題である。
【0008】
ここで、ゲート構造やガス抜き構造に関しては、例えば特開平2−151415号等に開示されている。しかし、ここに示された金型構造は、ゲートと対向する箇所にガス抜きのためのピンを設けた構造であるものの、本発明の課題であるゲート対向面の傷の問題並びに成形品の取り出し性に関するものではなく、また該公報の構成では本発明の目的を達成するには到っていないのが現状である。
【0009】
すなわち、本発明の第1の目的は、金型の長期使用に伴ってゲートに対向した面の凹部が形成されることによる成形品の外観不良や製品の機能不良等の不都合を解消すること、又、第2の目的とするところは、プラスチックシャッターの突き出しピンによる突き出しの際の落下を防ぐと共に、該シャッターを安定して取り出すことができる射出成形金型提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、少なくとも一つ以上のゲートから射出空間に初めて樹脂が射出されるときの該ゲートにおける樹脂速度が5m/sec以上で、かつ前記ゲートから該ゲートに対向する部分までの距離が0.2mm〜2.0mmの射出成形用金型において、前記ゲートに対向する部分に交換可能なゲート対向金型部材が設けられ、該ゲート対向金型部材は、前記ゲートに対向する前記射出空間の壁面より突出して配設されているとともに、前記ゲート対向金型部材の直径が、前記ゲートの直径の0.6倍以上の大きさであることを特徴とする射出成形用金型により達成できる。さらに、前記ゲート対向金型部材における前記ゲートに対向する先端面は、その略中央部分が前記ゲートに最も接近するように湾曲もしくは傾斜していることを特徴とする射出成形用金型、さらには、前記ゲート対向金型部材が、樹脂を前記射出空間に射出後、前記金型を開き、成形品を突き出す突出ピンであることを特徴とする射出成形用金型によっても上記目的は達成できる。
【0012】
【実施態様】
以下、図1乃至図7に示す本発明の一実施態様について説明する。
なお、図1は本発明の成形金型の要部の拡大断面概略図であり、図2は本実施態様における成形金型の断面概略図であり、図3から図6図は突出ピンの先端部分の形状を示す概略側面図である。また、図7は磁気ディスクカートリッジに装着されるシャッタの斜視図である。
【0013】
先ず、本実施態様において成形する成形品である磁気ディスクカートリッジのシャッタについて、図7を参照して説明する。
図7に示すシャッタ22は、表面板25と、裏面板26と、該表面板25と該裏面板26を連結する天面板27とからなる断面が略コ字形状のものである。そして、前記表裏面板25、26にはその偏った位置に窓部23が設けられ、前記裏面板26には天面板寄りの位置にカートリッジシェル側の溝に係合する突起24が形成されている。前記天面板27にはシャッター内方に突出して( 図中下方に突出して) 該シャッターを閉じ方向に付勢するスプリングに係合するスプリング係止凸部28が形成されている。また、前記両面板25、26はその先端部同士が前記天面板27の幅よりも近づくように構成されている。そして、前記シャッタ22の肉厚は例えば300μm〜400μmの肉薄のものである。
【0014】
なお、前記シャッタ22の材料としては、機械強度の高い樹脂材料が好ましく、例えばポリオキシメチレン樹脂等を用いることができる。
本実施態様にて示す前記シャッタ22の成形用の成形金型1は、大別するとバルブゲート5(以下、単にゲートという)を有した固定金型2と、センターコア4及び該センターコアの左右両側(図1及び図2においては紙面直交方向)に左右に開閉するスライドコアを備えた可動金型3とにより構成されている。これらの金型部材が組み合わされて射出空間7が形成されている。そして、前記可動金型4には中央の突出ピン10及び左右二つの突出ピン15が設けられている。
【0015】
また、前記シャッタ22の連結部である前記天面板27を成形する射出空間7の中央に当接する前記突出ピン10は、その先端面11が前記センターコア4の上端面4aよりも突出しており、かつ該先端面11に対向したところに前記ゲート5が配置されている。さらに、前記突出ピン10は例えば図示のごとく基部側に向かってその径が太くなるような構成であり、その基部10Aが保持部材13に嵌合し、止めネジ12により着脱自在に固定されている。また、前記センターコア4(実際にはセンターコアを保持した金型ベース)と前記保持部材13との間には間隙Wが形成されており、前記突出ピン10の突き出し動作を可能にしている。
【0016】
前記ゲート5のバルブ6は図示しない駆動手段により上下移動(矢印E方向)することができ、射出樹脂の前記射出空間7への流入を制御することができるものである。
また、本発明者らの鋭意研究によれば、射出樹脂のゲート部での射出速度を5m/s以上のとき、前記ゲート5から前記突出ピン10のピン先端面11までの距離dが2mm以下としたとき前記突出ピン10の径tを下記式
0.6×(ゲート径T)≦(ピン径t)
を満足するように構成することにより、必要以上に前記突出ピン10の径を大きくする必要もなく、また射出樹脂による金型の傷の問題解消する該突出ピンの最小径を設定することができる。すなわち、前記突出ピン10のピン径が傷径よりも大きければ金型面への傷付を防止できるのであるが、上記式によれば、この効果的に設定できるものである。本態様においては、例えば前記ゲート5のゲート径は0.7〜2.0mm、前記ゲート5からピンの先端面11までの距離は0.2〜2.0mm、突出ピン10のピン径は0.3〜6.0mm、該突出ピンのピン材質は当然のことながら硬度の高いものがよいが、例えばSKD11(かたさHR C60)や超硬合金等を使用することができる。前記突出ピン10そのものの材質はさほど硬度の高いものでなくとも、例えばTiN等のハードコートを施してもよい。
【0017】
射出樹脂としては、例えばメルトフローインデックスMIが50程度のポリオキシメチレンを使用することができる。
このように、本実施態様においては、前記ゲート5に対向する部分が他の壁面より突出した前記突出ピン10の構成であることから、該ゲートから射出される樹脂により該突出ピン10の先端面11が削られた場合でも、この削られた部分によって形成される凸状部は、該突出ピン10によって形成される凹みの中に形成されることになる。したがって、この凸状部はほかの壁面よりも突出することがない。また、前記削れにより形成された凸状部が凹み部分から突出するように大きく形成されるまでには、従来のショット数(射出回数)に比べて格段の改善ができた。さらに、前記突出ピン10が交換自在であることにより、金型のメンテナンスが容易になり、また金型の寿命を長くすることができる。
【0018】
又、成形品を金型から取り出すときに(図9及び図10の状態)、前記突出ピン10の先端部分が該成形品に食い込むことができることから、該突出ピン10により前記シャッタ22を保持することができ、成形品取り出し性を向上させることができる。
本発明における前記突出ピン10の先端面11の形状は図1に示すように平坦な構成に限るものではなく、図3に示す半球状の先端面11a、図4に示すように円錐状又は断面三角状の先端面11bにすることができる。このような湾曲形状あるいは傾斜形状であると、射出された樹脂抵抗を放射状に広げることができ、射出樹脂の衝撃の緩衝作用もある。また、図5の如く先端部のコーナー部がR状に面取りした構成や図6に示すごとく傾斜面状に面取りした構成であっても良いことは勿論である。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、プラスチツク成形品の連結部の少なくとも中央に当接するゲート対向金型部材(突出ピン)を設け、かつ該突出ピンを前記射出空間の壁面よりも突出させると共に、該突出ピンの先端面に対向したところに射出ゲートを設けた構成であり、また前記ゲート対向金型部材の直径が、前記ゲートの直径の0.6倍以上の大きさの薄肉成形品である。
【0020】
したがって、ゲートに対向する部分が他の壁面より突出した突出ピンの構成であることから、ゲートから射出される樹脂により突出ピンの先端面が削られた場合でも、この削られた部分によって形成される凸状部は、突出ピンによって形成される凹みの中に形成され、ほかの壁面よりも突出することがなく、凸状部が外の壁面よりも張り出したときに生じるトラブルを回避することができ、高品質な成形品を安定製造することができる。又、突出ピンが交換自在であることにより、金型のメンテナンスが容易になり金型の寿命を長くでき、製品製造コストの低減をはかることができる。また、成形品を金型から取り出すときに、突出ピンの先端部が該成形品に食い込ませることができるので、この突出ピンにより成形品を保持することができ、成形品取り出し性を向上させることもできる。さらに、このようにして成形された成形品においては、ゲートと対向する金型面に生じた傷が成形品に凸に転写されても、外観不良や製品の機能不良等を生じることがない。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果をより明確にすることができる。
(実施例1)
図1及び図2に示す構造の射出成形金型を使用してシャッタ22の射出成形を繰り返してテストを行った。
【0022】
なお、成形金型のゲート付近の寸法およびその他の条件は、
*ゲート径;φ1.2mm、或はφ1.0mm
*突出ピンの突出量;0.03mm、
*ゲートからピン先端面までの距離;0.47mm
*ピン径;φ0.8mm、
*突出ピンの材質;SKD11(硬さHR C60)
*樹脂はPOMでメルトフローインデックス(MI)=50
*射出回数は10万ショット
*樹脂を濾過するフィルターは径が0.7mmの大きさの異物を濾過可能
において、樹脂のゲート通過速度と傷付きの状況であるキズの深さ及びキズの大きさ(径)を 測定した。この結果を図8示す。
【0023】
図8からは、射出樹脂のゲート通過速度が5m/s以上のときにおいてキズの深さが顕著に現れることが判る。
(実施例2)
また、距離d、ピン径tおよびゲート径Tとの関係をみるためにこれらの大きさを変えてキズの出来具合をテストした。また、ピン径tの最大値はシャッタの構成状2.7mmであり、距離dは天面板の厚みからして最大値は0.5mmである。他の条件は実施例1に準じるものとした。この結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003893419
【0025】
表1からゲート径とピン径との関係は0.6×(ゲート径T)≦(ピン径t)を満足する場合に、キズの発生をピン先端面にて全て発生させることができ、キズがピン先端部によって形成される凹み以外の所に形成されなかった。また、シャタを金型から取り出すときに、シャッタの傾きや落下が発生しなかった。なお、ピンの許容最大径はシャッタの連結部の最大幅まで許容される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の成形金型の要部の拡大断面概略図である。
【図2】図2は本実施態様における成形金型の断面概略図である。
【図3】図3は突出ピンの先端部分の形状を示す概略側面図である。
【図4】図4は突出ピンの先端部分の形状を示す概略側面図である。
【図5】図5は突出ピンの先端部分の形状を示す概略側面図である。
【図6】図6は突出ピンの先端部分の形状を示す概略側面図である。
【図7】図7は磁気ディスクカートリッジに装着されるシャッターの斜視図である。
【図8】樹脂のゲート通過速度と傷の深さの関係を示したグラフである。
【図9】従来の成形金型におけるシャッター取り出し時の状態を示す斜視図である。
【図10】従来の成形金型におけるシャッター取り出し時の状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
1 射出成形金型
2 固定側金型
3 可動側金型
4 センターコア
5 ゲート
6 バルブ
7 射出空間
10 突出ピン
10A 基部
11,11a,11b,11c,11d 突出ピンの先端面
12 止めネジ
13 保持部材
22 シャッタ

Claims (3)

  1. 少なくとも一つ以上のゲートから射出空間に初めて樹脂が射出されるときの該ゲートにおける樹脂速度が5m/sec以上で、かつ前記ゲートから該ゲートに対向する部分までの距離が0.2mm〜2.0mmの射出成形用金型において、
    前記ゲートに対向する部分に交換可能なゲート対向金型部材が設けられ、該ゲート対向金型部材は、前記ゲートに対向する前記射出空間の壁面より突出して配設されているとともに、前記ゲート対向金型部材の直径が、前記ゲートの直径の0.6倍以上の大きさであることを特徴とする射出成形用金型。
  2. 前記ゲート対向金型部材における前記ゲートに対向する先端面は、その略中央部分が前記ゲートに最も接近するように湾曲もしくは傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型。
  3. 前記ゲート対向金型部材が、樹脂を前記射出空間に射出後、前記金型を開き、成形品を突き出す突出ピンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形金型。
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