JP3893138B2 - 角型食パン類の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は角型食パン類の製造方法に関し、さらに詳しくは、小麦粉として内麦粉だけを用いた生地中に酸化剤として臭素酸カリウムを添加する角型食パン類の製造方法において、完成品である焼成食パン類の品質の向上を図るとともに、完成品である焼成食パン類中に臭素酸を残存させない方法に関する。
従来から、パン類生地を構成する小麦粉として国内産小麦粉(本発明では内麦粉と略称する)を使用してパン類を製造することも行われてきたが、内麦粉で製パンに適するものはほんの少量しか収穫されず、内麦粉の圧倒的な大部分はそれに含まれるタンパク質の質及び量ともに製パンには適していない。すなわち、この大部分の内麦粉は、そのタンパク質が製パンに必要なある特定の高分子グルテニンサブユニットを有していないと言われているために、軟弱であり、パン生地に特有の弾力性と強靱性を付与することができない等の課題がある。また、この内麦粉は、それに含まれる小麦タンパク質の量が製パンに適する量よりも少ない。したがって、このような内麦粉は、製パンというよりも、製麺に使用されることが多い。
そして、このような一般に入手可能な内麦粉を使用する製パン及び焼成パンは、以下のような課題を有すると言われてきた。
(1)混捏工程において直ぐに生地を形成しやすいことから、ミキシング耐性が劣っている。このため、混捏中の生地はオーバーミキシングになりやすく、また、一旦オーバーミキシングになってしまった生地は回復し難い。
(2)内麦粉は損傷澱粉が少ないこと等から、醗酵が遅くなる。
(3)上述した内麦粉の小麦グルテンの性質から、作成したパン生地のガス保持力が弱くなる。
(4)機械的加工性に劣る。
(5)内麦粉を使用して製造したパンは、ボリュームが小さい、内相が膜厚で粗い、クラストが厚い、風味、食感等の官能性が劣る、柔らかさを欠く、老化が早い等の品質上の問題を有する。
このような内麦粉を使用する製パン及び焼成パンの課題を解決するためには、従来から酸化剤として一般的に使用されてきたアスコルビン酸を添加するだけでは、およそ不十分であった。
また、バイタルグルテンを添加する方法も一般的に採用されてきたが、やはり十分な改善効果を期待することができないだけでなく、クラストの食感がゴム状に硬くなる、異味・異臭がする等の弊害が生じることもあった。そもそも、一般に入手可能なバイタルグルテンは、北米、オーストラリア等の外国産の製パン用強力粉を原材料として製造されていることから、このようなバイタルグルテンを添加して製造したパンを、小麦粉として内麦粉だけを用いたパン、または小麦粉として内麦粉を100%用いたパンなどと表現すること自体に疑義が生じる場合もある。
他方、臭素酸カリウムは、1910年代にアメリカで製パン用改良剤として推奨されて以来、広く世界で用いられているが、わが国では、「臭素酸カリウムの使用はパンに限定され、その使用量は、小麦粉1Kgにつき臭素酸として0.03g(小麦粉に対して30ppm)以下でなければならず、且つ最終製品の完成前に分解または除去しなければならない」、すなわち、焼成後の製品に残存してはならないという使用基準がある。
そして、従来、パン中に臭素酸を残存させないための方法としては、
パン生地の発酵時間や焼成時間を十分にとり臭素酸の化学反応を完全な
ものにするか、臭素酸カリウムの添加量を低減するかのいずれか、あるいはこれらを組み合わせた方法が行われてきた。
本発明者等はアスコルビン酸を添加することにより、臭素酸のパン中の残存量を減少させる方法を既に開発している(例えば、特許文献1)。
一方、わが国における使用基準の「臭素酸を分解または除去しなければならない」、すなわち、「残存してはならない」とは、その時々において、最も精密な測定方法により測定したときに検出されないこと、すなわち検出限界値未満の測定値であることを意味する。そこで、本発明者等は、先に、臭素酸カリウムを添加するパン類生地の作成工程において、硫酸第一鉄を添加することにより、本発明者等が開発した、焼成後のパン類中の臭素酸の検出限界値が3ppbという極めて精密なHPLC法(高速液体クロマトグラフィー測定法)によって測定しても検出されないようにすること、すなわち焼成後のパン類中の臭素酸の残存量が3ppb未満となるようにすることに成功した(例えば、特許文献2)。
しかしながら、本発明で、「臭素酸が残存しない」という表現は、本発明の出願時での技術水準における、さらに改良されたHPLC法により測定したときの「臭素酸の検出限界値」である0.5ppb以上存在しないことを意味する。
しかし、上記従来の技術は、焼成後の角型食パン類における臭素酸の消失や、またはその残存量の著しい低減に対する有効性については確認されておらず、特に本発明の出願時における0.5ppb未満という基準を満たすものではなかった。また臭素酸カリウムを水溶液として添加することについても開示していない。さらに硫酸第一鉄の添加量もパン類生地を構成する全小麦粉量に対して50ppm〜370ppmであり、本発明の食パン類に使用する添加量としては、焼成後の食パン類の風味及び味に影響を与えない範囲を著しく超えている。
特開平8−116857号公報 特許第3131898号公報
したがって、小麦粉として内麦粉だけを使用したとしても、従来の外国産小麦粉(強力粉)を使用した場合と同等か、これに近い品質を有する角型食パン類及びその製造方法が望まれていた。さらに、バイタルグルテンを添加することなく、このような角型食パン類を製造する方法が望まれていた。
また、小麦粉として内麦粉だけを用いた食パン類生地に臭素酸カリウムを配合して焼成後の角型食パンの品質を改善すると共に、配合した臭素酸が角型食パン中に全く残存しないか又は臭素酸の検出限界である0.5ppb未満の残存量に減少した角型食パン類を製造できる角型食パン類の製造方法が望まれていた。
本発明者等は、小麦粉として内麦粉だけを用いる食パン類生地の作成工程において、臭素酸カリウムを添加するにあたり、これを水溶液として添加することにより、食パン類生地中において添加された臭素酸カリウムの溶解性を向上させ、その酸化剤としての作用と、臭素酸の化学的な分解を促進することにより、上記従来の技術の課題を解決し得るという知見を得た。
そこで、本発明は、小麦粉として内麦粉だけを用いる食パン類生地の作成工程において、臭素酸カリウムを添加するにあたり、食パン類生地中において添加された臭素酸カリウムの溶解性を向上させ、その酸化剤としての作用と、臭素酸の化学的な分解を促進するために、臭素酸カリウムを水溶液として添加するという、以下の製造方法を提供するものである。即ち、食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて、中種法により角型食パン類を製造するにあたり、中種の作成工程において、臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、アスコルビン酸を添加して、又は硫酸第一鉄とアスコルビン酸とを添加して食パン類生地を作成し、これを焼成型に蓋をして焼成することにより、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させないようにすることからなる角型食パン類の製造方法を提供するものである。また、本発明により、食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて、直捏法により角型食パン類を製造するにあたり、食パン類生地の作成工程において、臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、アスコルビン酸を添加して、または硫酸第一鉄およびアスコルビン酸を添加して食パン類生地を作成し、これを焼成型に蓋をして焼成することにより、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させないことを特徴とする角型食パン類の製造方法が提供される。
さらに、硫酸第一鉄の添加量を著しく減少させるか、又は全く添加しないことにより、焼成後の角型食パン類の風味及び味に影響を与えないようにすることができる、角型食パン類の製造方法を提供するものである。
本発明は、小麦粉として内麦粉だけを用いた食パン類生地またはその中種の作成工程において、臭素酸カリウムを添加するにあたり、食パン類生地中において添加された臭素酸カリウムの溶解性を向上させ、臭素酸の酸化剤としての作用と、臭素酸の化学的な分解を促進するために、臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、アスコルビン酸を添加するか、又は硫酸第一鉄及びアスコルビン酸を添加することにより、焼成後の角型食パン類の品質の向上を図るとともに、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させないようにすることからなる角型食パン類の製造方法を提供するものである。
本発明により、臭素酸カリウムを水溶液として添加することにより、硫酸第一鉄を添加するときでも、その添加量を著しく減少させて、焼成後の角型食パン類の風味及び味に影響を与えないようにすることが可能となった。本発明の方法は角型食パン類の製造方法に広く適用可能である。
さらに、本発明によれば、内麦粉を原料として使用した場合の製パンに関する問題点(例えば、(1)混捏中の生地がオーバーミキシングになりやすく、一旦オーバーミキシングになってしまった生地が回復し難いこと、(2)醗酵が遅いこと、(3)作成したパン生地のガス保持力が弱いこと、(4)機械的加工性に劣ること)を改善することができる。
さらに、本発明によれば、一般に製パンには適さないとされる内麦粉を原料として使用した場合でも、オーブンスプリングが大きく、内相が薄く細かな、クラストの薄い食パンを製造することが可能になる。また、本発明によれば、風味、食感等の官能性に優れる、柔らかい、老化の遅い食パンを製造することが可能となる。また、本発明によれば、焼色等の外観を改良することも可能である。しかも、本発明によれば、バイタルグルテンを添加することなく、このような角型食パン類を製造することが可能になる。
発明の実施の形態
そこで、本発明は、食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて、中種法により角型食パン類を製造するにあたり、中種の作成工程において、臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、アスコルビン酸を添加し、又は硫酸第一鉄とアスコルビン酸とを添加して食パン類生地を作成し、これを焼成型に蓋をして焼成することにより、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させないようにすることからなる角型食パン類の製造方法である。
さらに、本発明は、食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて、直捏法により角型食パン類を製造するにあたり、食パン類生地の作成工程において、臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、アスコルビン酸を添加して、又は硫酸第一鉄とアスコルビン酸とを添加して食パン類生地を作成し、これを焼成型に蓋をして焼成することにより、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させないことを特徴とする角型食パン類の製造方法である。
まず、本発明は、食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて食パン類生地を作成し、これを焼成して角型食パン類を製造するものである。本発明において、内麦粉とは、日本国内産小麦を製粉した小麦粉のことである。
上述した通り、内麦粉で製パンに適するタンパク質を有するもの(強力粉)はほんの少ししか収穫されず、大量に入手することが困難である。これに対し、内麦粉の圧倒的な大部分は、タンパク質含有量が8.5〜10.5%前後であり、またタンパク質が製パンに必要なある特定の高分子グルテニンサブユニットを有していないと言われている中力粉であり(「冬作物研究」第1号、第51頁〜第59頁(平成14年2月発行)および「食品と科学」第46巻第4号、第77頁〜第82頁((株)食品と科学社、平成16年3月発行)を参照)、その主な用途は、製パンではなく、製麺である。本発明では、前者の強力粉だけでなく、後者の中力粉も用いることができるし、それ以外の内麦粉も使用可能である。しかし、典型的には、後者の中力粉に属する小麦粉であり、小麦の品種でいえば、内麦粉の半分を占める「ホクシン」、「農林61号」等の一般に普及している小麦を製粉した小麦粉である。そのタンパク質含有量としては、8.5質量%以上の小麦粉が望ましく、9.0質量%以上の小麦粉がより一層望ましい。
本発明では、後述する通り、中種法により食パン類生地を作成することが望ましく、この場合には、中種の作成工程において、臭素酸カリウム水溶液及びアスコルビン酸の二者を添加するか、又は臭素酸カリウム水溶液、硫酸第一鉄及びアスコルビン酸の三者を添加する必要がある。
まず、臭素酸カリウムは、粉末状のものを水に溶解した水溶液として添加する。この臭素酸カリウム水溶液は、水と臭素酸カリウムとを単に攪拌するか、超音波を当てながら攪拌するか、その他の水溶液を作るための任意の方法を採用して作成することができる。
食パン類生地に添加する臭素酸カリウム水溶液は、臭素酸カリウムが水に完全に溶解している必要があるが、水に完全に溶解していれば、その濃度は任意に選択することができる。臭素酸カリウムは水への溶解性が比較的低く、また温度によって水への溶解性が変わり、温度が低くなると溶解性が低下してくる。0℃の水では3%が最大溶解量である。食パン類生地の作成時に添加する水の温度は、通常、0℃以上であり、3%以上の臭素酸カリウムを溶解することが可能であるが、食パン類生地の製造工程中に、臭素酸カリウムが析出することを防止するため、臭素酸カリウム水溶液の濃度は3%以下であることが必要であり、2%以下であることが望ましい。
他方、臭素酸カリウム水溶液の濃度の下限値については、濃度が低ければ低いほど、臭素酸カリウムのパン生地中での溶解性、分散均一性及び計量の正確さ、容易さが向上するという点で望ましいと言えるが、濃度が低すぎると、大量の水溶液を添加する必要が生じ、作業性、製パン適性等に影響するようになる。したがって、臭素酸カリウム水溶液の濃度は0.1%以上が望ましく、1%以上がより一層望ましい。そして、この両者の要求を満たすように調節すればよい。
臭素酸カリウム水溶液を添加する量は、中種法により角型食パン類を製造する場合には、アスコルビン酸のみを添加する(硫酸第一鉄を添加しない)ときには、パン類生地を構成する全小麦粉量に対して、通常、臭素酸カリウムの添加量として5ppm〜20ppmとなるように添加する。これに対し、硫酸第一鉄及びアスコルビン酸を添加するときには、同じく5ppm〜25ppmとなるように、望ましくは5ppm〜20ppmとなるように添加する。そして、どちらの場合にも、臭素酸カリウムの添加量は、さらに望ましくは8ppm〜15ppmとなるように、さらに一層望ましくは11ppm〜13ppmとなるように添加することである。また、直捏法により角型食パン類を製造する場合には、臭素酸カリウムを添加する量は、通常、5ppm〜15ppmであるが、より好ましくは8ppm〜15ppmとなるように、さらに好ましくは11ppm〜13ppmとなるように添加する。こうすることで、臭素酸カリウムの本来的な酸化作用を十分に発揮させることができるようになり、焼成後の食パン類の風味及び食感の向上、焼色等の外観の向上等の製パン改良効果を十分に実現させることができる。さらに、著しく少量のアスコルビン酸や硫酸第一鉄を添加するだけで、角型食パンにおいて、焼成後のパン類中の臭素酸を残存させないようにすることができる。
臭素酸カリウムの添加量が例えば5ppm未満のように少な過ぎると、上記製パン改良効果が得られなくなるおそれがあり、これに対し、臭素酸カリウムの添加量が25ppmを超えるような多過ぎる量でも、やはり上記製パン改良効果を達成できないことがある。さらに、このように添加量が多過ぎる場合、アスコルビン酸や硫酸第一鉄の添加量も多くすることによって、焼成後の食パン類、特に角型食パン中の臭素酸を残存させないようにする必要がある。しかしながら、そのように多量のアスコルビン酸や硫酸第一鉄を使用すると、焼成後のパン類の風味、味、及び焼色が影響を受けることになり、さらに、アスコルビン酸や硫酸第一鉄の添加量を多くしても焼成後のパン類中に臭素酸が依然として残存するおそれがある。
本発明は、上記食パン類生地またはその中種の作成工程において、臭素酸カリウム水溶液を添加するとともに、アスコルビン酸、又はアスコルビン酸と硫酸第一鉄とを添加することからなる角型食パン類の製造方法である。ここでアスコルビン酸とはL−アスコルビン酸のことである。
このようにしてアスコルビン酸を添加することにより、パン生地(中種を含む)に添加されたアスコルビン酸は、パン生地との関係では、良好な改良剤として機能するが、臭素酸カリウムとの関係では、還元剤若しくはこれに類するものとして働き、臭素酸カリウムの化学反応を完全なものにする。本発明の一つの態様は基本的にはかかる知見に基づいて完成されたものである。
アスコルビン酸としては、被覆等されていない裸の状態のアスコルビン酸、又は油脂で被覆されたアスコルビン酸、又は、油脂及びモノグリセライド脂肪酸エステル等の乳化剤の混合物で被覆されたアスコルビン酸のいずれを用いてもよい。
アスコルビン酸を添加することにより、角型食パンにおいて、焼成後の食パン類中の臭素酸をより一層残存させないようにするとともに、製パン性及び焼成後のパン類の品質をより一層向上させることができるようになる。
次に、製パン性及び焼成後のパン類の品質を向上させる効果については、次のように説明できる。すなわち、臭素酸カリウムは、パン類生地中で十分に作用させるための、添加量及び醗酵、焼成のための温度及び時間の適正範囲が非常に狭い。しかしながら、アスコルビン酸を添加することにより、この適正範囲を広げることができるので、パン類の製造条件を緩和できる。また、臭素酸カリウムを添加した食パン類、特に角型食パン類は、腰折れを起こし易いが、アスコルビン酸の添加によって、この現象が抑制できる。
本発明においてアスコルビン酸を添加する量は、焼成後の食パン類中に臭素酸を残存させないという観点からすれば、多いほうが望ましい。これに対し、パン類生地中における臭素酸カリウムの酸化剤としての本来的な作用を発揮させて、製パン性や焼成後の食パン類の品質を向上させるという観点からすると、少ないほうが望ましい。両方の要求を満足させるためには、アスコルビン酸の添加量は、これに限らないが、通常、3ppm〜20ppmであり、3ppm〜15ppmが望ましく、3ppm〜10ppmがより望ましく、5ppm〜10ppmがより一層望ましい。
本発明で使用する硫酸第一鉄は、FeSOの化学式で表され、結晶物(7水塩)及び乾燥物(1〜1.5水塩)があり、それぞれを硫酸第一鉄(結晶)及び硫酸第一鉄(乾燥)と称する。硫酸第一鉄(結晶)は食品添加物として昭和32年指定され、昭和39年硫酸第一鉄(乾燥)も追加された。そして、この両者をまとめて硫酸第一鉄と称することとなった。
硫酸第一鉄は、鉄と希硫酸とを加えて以下のように製造する。
Fe+HSO+7HO → FeSO・7HO(結晶物)+H
乾燥物は、上記により得られた結晶物を40℃で乾燥し、粉末として製造する。本発明における硫酸第一鉄は、結晶物または乾燥物のいずれでも良いが、実施例においてはより純度が高い乾燥物(FeSO・1〜1.5HO)を使用した。
この硫酸第一鉄を添加することにより、パン生地(中種を含む)に添加された硫酸第一鉄は、パン生地との関係では、良好な鉄強化剤として機能し、臭素酸カリウムとの関係では、還元剤若しくはこれに類するものとして働き、臭素酸の化学反応を完全なものにする。本発明の一つの態様は基本的にはかかる知見に基づいて完成されたものである。
また、アスコルビン酸と硫酸第一鉄とを併用した場合には、焼成後の角型食パン類中の臭素酸をより一層残存させないようにすることができる。このような臭素酸の残存量を低減する効果については、本発明の食パン類生地中には、添加した硫酸第一鉄が臭素酸を化学分解する過程で生じるFe3+が存在していると考えられる。しかしながら、このFe3+は臭素酸と化学反応し難いものである。そこで、アスコルビン酸を添加することにより、添加したアスコルビン酸がパン類生地中で還元剤として作用するため、直接に臭素酸と化学反応してこれを分解するだけではなく、当該パン類生地中に存在し、臭素酸と化学反応し難いFe3+を、臭素酸と化学反応し易いFe2+に変換させる結果として、臭素酸のより一層の化学分解に寄与すると推測される。
この硫酸第一鉄は、パン類生地を構成する全小麦粉量に対して0.1ppm〜20ppm添加することが望ましく、5ppm〜16ppm添加することがより望ましく、5ppm〜10ppm添加することがより一層望ましい。このような添加量であれば、臭素酸カリウムを水溶液として添加することを前提として、製パン性や焼成後の食パン類の品質に影響を与えることなく、角型食パンでも、焼成後のパン類中の臭素酸を確実に残存させないようにすることができるようになる。ここで硫酸第一鉄を添加する量が16ppmを越えると、焼成後の食パンの内相がやや暗くなる傾向がある。その量が20ppmを越えると、食パン類の製造条件によっては、大なり小なり焼成後の食パン類の風味及び味に影響するおそれがある。
上記硫酸第一鉄またはアスコルビン酸は、上記臭素酸カリウム水溶液とは別に、粉末として添加することが望ましく、硫酸第一鉄及びアスコルビン酸の両者を添加するときには、両者ともに、粉末として添加することがより一層望ましい。硫酸第一鉄を水溶液として使用すると、臭素酸と反応してこれを分解する硫酸第一鉄中の鉄イオン(Fe2+)が変質して臭素酸を分解する力を失うおそれがある。
また、アスコルビン酸を水溶液として添加すると、パン類生地中で、臭素酸カリウムが酸化剤としての本来的な作用を発揮する前から分解されてしまい、製パン性や焼成後の食パン類の品質を改良する効果に影響するおそれがある。
また、アスコルビン酸及び硫酸第一鉄は、それ自体単独で添加し、またイーストフード、酵素剤、乳化剤、その他の生地改良剤の1種または2種以上に混合、分散させて添加することでき、またそのような添加方法が好ましい。
そして、本発明では、中種法により食パン類生地を作成することが望ましく、この場合には、この中種の作成工程において、臭素酸カリウム水溶液及びアスコルビン酸の二者を添加するか、又は臭素酸カリウム水溶液、硫酸第一鉄及びアスコルビン酸の三者を添加する必要がある。
中種法とは、食パン類生地の作成では、一般的に、少なくとも食パン類生地を構成する小麦粉量の一部の小麦粉と、イースト及び水とを使用し、これに必要に応じてさらにイーストフード、酸化剤、酵素剤等々の生地改良剤、乳化剤、塩、その他の原料素材や添加剤のうち一種または二種以上を添加し、混捏して中種を作成し、これを一定条件で醗酵させる。次に、この醗酵後の中種に、少なくとも残りの小麦粉、塩及び水を添加し、必要に応じてさらに糖類、油脂類、脱脂粉乳、その他の原料素材や添加剤のうち一種または二種以上を添加して混捏(本捏)してパン生地を作成し、この本捏生地を一定条件で醗酵(フロアータイム)させるというパン生地の製造方法である。
そして、本発明における中種法では、まず、中種を構成する小麦粉の量は、食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して50質量%〜80質量%の量、好ましくは同じく60質量%〜80質量%の量を添加する必要がある。これよりも中種を構成する小麦粉の量が多くなったり、または少なくなったりすると、この中種を使用して混捏したパン類生地は、中種法の特徴である醗酵安定性や機械耐性を欠くようになるおそれがある。
また、混捏後の中種の醗酵条件は、26℃〜29℃の温度下、好ましくは27℃〜28℃の温度下において、十分な発酵が得られる時間であれば良く、これに制限されないが、例えば4時間〜6時間、好ましくは4時間〜5時間とすることができる。しかし、中種の醗酵の温度が低かったり、または時間が短かったりすると、中種が未熟となり、この中種を使用して混捏したパン類生地は、中種法の特徴である醗酵安定性や機械耐性を欠き、また焼成後のパン類の品質にも影響するだけでなく、臭素酸カリウム、硫酸第一鉄及びアスコルビン酸の三者の化学反応が不十分となるおそれがある。これに対し、中種の醗酵の温度が高かったり、または時間が長かったりすると、中種が過醗酵・過熟成となり、この中種を使用して混捏したパン類生地は、同様に上記中種法の特徴を欠き、また焼成後のパン類の品質にも影響する。
これにより、本発明では、食パン類生地(ここでは中種を含む意味である)の混捏開始から焼成終了までの全製造工程の時間が長くなるため、中種の混捏工程において添加された臭素酸カリウム及びアスコルビン酸の二者の化学反応、又は臭素酸カリウム、硫酸第一鉄及びアスコルビン酸の三者の化学反応の時間もそれだけ長くなり、その結果として臭素酸の分解が十分に行なわれ、焼成後の食パン類中に臭素酸が残存しないようになると考えられる。
これに対し、直捏法(ストレート法)とは、一般的に、食パン類生地を構成する全部の原料素材、添加剤等を一度に混捏してパン生地を作成し、このパン生地を一定条件下で醗酵させるというパン生地の製造方法である。ここで、食パン類生地を構成する原料素材や添加剤は、上述した中種法による食パン類生地のそれと同様である。
また、混捏後のパン生地の醗酵条件は、具体的には、例えば、25℃〜29℃の温度下、好ましくは26℃〜29℃の温度下、より好ましくは26℃〜28℃の温度下において、90分〜150分間、好ましくは110〜130分間である。そして、この醗酵時間の途中で、すなわち全醗酵時間の約2/3〜3/4が経過した後にパンチング等によりガス抜きを行う。
このように、直捏法では、食パン類生地の混捏開始から焼成終了までの全製造工程の時間が中種法よりも短くなるため、食パン類生地の混捏工程で添加された臭素酸カリウム、アスコルビン酸、および硫酸第一鉄の前二者または三者の化学反応の時間もそれだけ短くなり、その結果として中種法よりも臭素酸の分解が控えめになると予想される。しかし、それにも関わらず、本発明によれば、焼成後の角型食パン類中に臭素酸が残存しないようにその分解が十分に行われるようになる。
さらには、中種法により食パン類を製造する場合には、必要に応じて、上記中種の作成工程において、イーストを上記食パン類生地を構成する小麦粉に対して1.7質量%〜2.2質量%添加するとともに、本捏工程において、イーストを同じく0.5質量%〜1.0質量%添加することが望ましい。これにより、中種の必要な醗酵を実現するとともに、本捏後のフロアータイム、ホイロ等の醗酵をより一層促進することができるようになる。また、直捏法により食パン類を製造する場合には、上記食パン類生地の作成工程において、上記食パン類生地を構成する小麦粉に対して2.2質量%〜3質量%添加することが望ましい。そして、必要に応じて、ホイロは50〜70分間、好ましくは55〜65分間とるようにしてもよい。
そして、本発明では、上述したとおり、食パン類生地を構成する内麦粉として、製パンに必要なある特定の高分子グルテニンサブユニットを有していないと言われている、主に麺用として用いられる中力粉だけを使用することが可能である。
本発明は、上記食パン類生地の製造方法により製造された食パン類生地を焼成することからなる角型食パン類の製造方法である。
ここで角型食パン類とは、具体的には、例えば、正方形、長方形等の四角形の底面と、該底面の各々の4辺から垂直に立ち上がり、周囲四方を取り囲む側壁からなる直方体の焼成型にパン類生地を入れ、ホイロ後、蓋を上面に被せて、焼成して得られる、角型の食パンである。しかし、これに限られない。
本発明方法により食パン類を製造するならば、角型食パンでは、焼成後の食パン類の品質の向上を図るとともに、焼成後の食パン類中に臭素酸を残存させないようにすることができる。
上記の説明のように、本発明の方法により製造される、焼成後の角型食パン類中の臭素酸の残存量を改良されたHPLC法で測定したときに、臭素酸が残存しない、即ち、その検出限界値である0.5ppb未満まで減少させることが可能となる。
このHPLC法は、上述したとおり、本発明者等が開発したものであり、焼成後のパン類中の臭素酸の検出限界値が0.5ppbという極めて精密な高速液体クロマトグラフィー測定法である。この測定法の詳細については、(社)日本食品衛生学会発行「食品衛生学雑誌」第43巻、第4号(平成14年8月)第221頁〜第224頁、平成15年3月4日付、厚生労働省医薬局食品保健部基準課長通知(食基発第0304001号)「食品中の臭素酸カリウム分析法について」、及び平成15年3月12日付、厚生労働省食品保健部基準課事務連絡『「食品中の臭素酸カリウム分析法について」に係る正誤について』を参照されたい。当該食基発第0304001号通知により、その検出限界値が0.5ppbであると認められた。
以下の実施例、比較例及び実験例により、本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] 角型食パンの製造(中種法で、中種に臭素酸カリウム水溶液、硫酸第一鉄及びアスコルビン酸を添加)
単位は、小麦粉全量を基準とする質量%またはppmである(以下の実施例でも同様)。
(原料配合)
中種 小麦粉 70 %
イースト 2 %
イーストフード、酵素等の生地改良剤 0.1 %
(内被覆してない裸のL−アスコルビン酸として)20 ppm
乳化剤 0.3 %
水(中種吸水) 47 %
臭素酸カリウム(濃度1.0%の水溶液として) 15 ppm
硫酸第一鉄 15 ppm
本捏 小麦粉 30 %
イースト 0.5 %
砂糖 7 %
油脂 5 %
脱脂粉乳 2 %
塩 2 %
水(全吸水) 52 %
ここで、中種および本捏に用いた小麦粉は、タンパク質含有量9.2%前後の、北海道産中力粉である(商品名「薫風」、小麦の品種は「ホクシン」)。
(製造工程)
中種 混捏 L3H2(分)
捏上温度 24℃
醗酵 4時間
本捏 混捏 L2H2↓(油脂添加)L2H3(分)
捏上温度 27℃
フロアータイム 20分間
分割 500g
丸め
ベンチタイム 20分間
ガス抜き(圧延)
整形 M型(該圧延生地をカーリングにより巻き込み、棒状とし、
M型にする)
型詰(3個のM型整形生地を3斤食パン類用焼成型に詰める)
ホイロ 38℃、55分間
焼成(蓋をかぶせる) 210℃、33分間
このようにして角型食パンを製造した。
(測定法)
上記「食品衛生学雑誌」及び上記厚生労働省通知に記載の方法と同様の方法
(結果)
上記測定法(上述した通り、検出限界値0.5ppb)により焼成後の食パン中の臭素酸の残存量を測定したところ、ND(Non−Detected。検出されないこと。以下同様)であった。
これにより、本発明によれば、臭素酸カリウムを水溶液として添加することにより、臭素酸カリウムとして15ppmとなるように添加したときでも、上記従来の技術よりも著しく少量の硫酸第一鉄及びアスコルビン酸を添加するだけで、角型食パン中に臭素酸を残存させないようにすることができることがわかる。
また、この焼成後の角型食パンは、風味及び味も硫酸第一鉄の影響を受けずに良好なものであった。
後述する比較例1と比べると、本発明の方法においては、ミキシング時間が適度に長く、ミキシングに対する耐性が改善され、吸水が多くなり、釜伸びも改善された。また、フロアータイムの許容される時間的幅は広く、後半まで安定していた。本発明により製造した食パンは、比較例1で製造した食パンと比較して、外観についてはホワイトラインが均一で、内相については膜薄く白く、老化が遅くなり、食感についてはぱさつきが改善された。
[実施例2] 角型食パンの製造(中種法で、中種に臭素酸カリウム水溶液及びアスコルビン酸の添加)
(原料配合)
中種 小麦粉 70 %
イースト 2.2 %
イーストフード、酵素等の生地改良剤 0.1 %
(内被覆してない裸のL−アスコルビン酸として) 5 ppm
乳化剤 0.3 %
水(中種吸水) 47 %
臭素酸カリウム(濃度1.0%の水溶液として) 12 ppm
本捏 小麦粉 30 %
イースト 0.6 %
砂糖 7 %
油脂 5 %
脱脂粉乳 2 %
塩 2 %
水(全吸水) 52 %
ここで、中種および本捏に用いた小麦粉は、タンパク質含有量9.2%前後の、北海道産中力粉である(商品名「薫風」、小麦の品種は「ホクシン」)。
(製造工程)
中種 混捏 L3H2(分)
捏上温度 24℃
醗酵 4時間15分
本捏 混捏 L2H2↓(油脂添加)L2H3(分)
捏上温度 27℃
フロアータイム 20分間
分割 500g
丸め
ベンチタイム 20分間
ガス抜き(圧延)
整形 M型(該圧延生地をカーリングにより巻き込み、棒状とし、
M型にする)
型詰(3個のM型整形生地を3斤食パン類用焼成型に詰める)
ホイロ 38℃、55分間
焼成(蓋をかぶせる) 210℃、33分間
このようにして角型食パンを製造した。
(結果)
上記測定法により焼成後の角型食パン中の臭素酸の残存量を測定したところ、NDであった。
後述する比較例2と比べると、本発明の方法においては、ミキシング時間が適度に長く、ミキシングに対する耐性が改善され、吸水が多くなり、釜伸びも改善された。また、フロアータイムの許容される時間的幅は広く、後半まで安定していた。本発明により製造した食パンは、比較例2で製造した食パンと比較して、外観についてはホワイトラインが均一で、内相については膜薄く白く、老化が遅くなり、食感についてはぱさつきが改善された。
[比較例1、2] 角型食パンの製造(アスコルビン酸のみ適当量添加)
比較例1及び比較例2として、臭素酸カリウムと硫酸第一鉄を添加しないこと以外は、それぞれ実施例1及び実施例2と同様の条件にて、角型食パンを製造した。
[実施例3] 角型食パンの製造(中種法で、中種に臭素酸カリウム水溶液、硫酸第1鉄、及びアスコルビン酸の添加)
実施例1において、臭素酸カリウム、L−アスコルビン酸、および硫酸第1鉄の添加量を、それぞれ12ppm、5ppm、および5ppmに変更し、その他の条件は同様にして、角型食パンを製造した。
(結果)
焼成後の角型食パン中の臭素酸の残存量を、上記の測定法により測定したところ、NDであった。
[実施例4] 角型食パンの製造(中種法で、中種に臭素酸カりウム水溶液及びアスコルビン酸の添加)
(原料配合)
中種 小麦粉 70 %
イースト 2 %
イーストフード、酵素等の生地改良剤 0.15%
(内 被覆していない裸のL−アスコルビン酸) 10 ppm
乳化剤 0.2 %
水(中種吸水) 47 %
臭素酸カリウム 12 ppm
(濃度1.2%の水溶液として添加)
塩 0.2 %
本捏 小麦粉 30 %
イースト 0.5 %
砂糖 7.5 %
油脂 5 %
脱脂粉乳 2 %
塩 1.8 %
水(全吸水) 50.5 %
ここでも、中種および本捏に用いた小麦粉は、タンパク質含有量9.2%前後の、北海
道産中力粉である(商品名「薫風」、小麦の品種「ホクシン」)。
(製造工程)
中種 混捏 L3H1.5(分)
捏上温度 24℃
醗酵 27.5℃、82%、4時間30分
終点温度 29℃
本捏 混捏 L2H1.5↓(油脂添加)L2H3(分)
捏上温度 26℃
フロアータイム 15分間
分割 ホッパー付きディバイダー使用、510gに分割
丸め
ベンチタイム 27℃、74%、20分間
ガス抜き 圧延後に展圧板を通した
整形 M型(該圧延生地をカーリングにより巻き込み、棒状と
し、M型にした)
型詰め 3個のM型整形生地を3斤食パン類用焼成型に詰めた
ホイロ 38℃、55分間、型下18mmまで
焼成(蓋をかぶせる) 205℃、33分間
上記工程にしたがって、小麦粉として内麦粉だけを使用して角型食パンを製造した。
(結果)
上記測定法により焼成後の角型食パン中の臭素酸の残存量を測定したところ、NDであ
った。
[実施例5] ワンローフ食パンの製造(臭素酸カりウム水溶液及びアスコルビン酸の添加)
実施例4において本捏工程の条件を以下の通り変更したものを、実施例5とした。
分割 260g分割
整形 圧延生地をカーリングにより巻き込み、棒状とした
型詰め 1本の棒状整形生地をワンローフ焼成型に詰めた
ホイロ 38℃、64分間、型上15mmまで
焼成 205℃、23分間(蓋を被せない)
[比較例3]
比較例3として、臭素酸カリウム水溶液を添加せず、L−アスコルビン酸を8ppm添加するように変更した以外は、実施例4と同様の条件にて、角型食パンを製造した。
[比較例4]
臭素酸カリウム水溶液およびL−アスコルビン酸を含むイーストフード、酵素等の生地改良剤を添加しない以外は、上記実施例4と同一の方法により、角型食パンを製造した。
[比較例5]
比較例3において本捏工程の条件を以下の通り変更したものを、比較例5とする。
分割 260g分割
整形 圧延生地をカーリングにより巻き込み、棒状とした
型詰め 1本の棒状整形生地をワンローフ焼成型に詰めた
ホイロ 型上15mmまで、38℃、65分間
焼成 205℃、23分間(蓋を被せない)
[実験例]
実施例4および比較例3・4等に従って角型食パンを製造し、製パン性および焼成後の食パンの品質について比較検討した。但し、下記の実験例において、本捏の混捏時間、フロアータイムの時間、またはホイロ条件その他について特に記載がある場合には、実験例に記載の条件に従った。以下、結果を詳述する。
[実験例1] 混捏耐性の改善(混捏時間の改善)
実施例4と比較例3とにおいて、本捏における最適生地状態までに要する混捏時間(ミキシング時間)を比較検討した。
(結果)
実施例4:L2分H1分30秒↓(油脂添加)L2分H3分00秒
比較例3:L2分H1分30秒↓(油脂添加)L2分H2分30秒
実施例4では、本捏における最適生地状態までの混捏時間がL2H1.5↓(油脂添加)L2H3(分)であったのに対し、比較例3では、L2H1.5↓(油脂添加)L2H2.5(分)だった。すなわち、実施例4は、比較例3と比較して、高速回転時間が30秒間長かった。
したがって、本発明によれば、混捏時間が適度に長くなり、パン生地のミキシング耐性が改善されることが示された。
[実験例2] 混捏耐性の改善(混捏時間の改善)
実施例4と比較例3とにおいて、本捏工程におけるパン生地の混捏時にミキサーが消費する電力量を測定して比較検討した。
ここで、ミキサーの消費電力量は、パン生地の混捏時にミキサーに掛かるパン生地の負荷(抵抗)に比例する。該消費電力量の測定およびグラフ化は、日本国アトー社製「ドゥグラフ」(商品名)を使用して行った。なお、「ドゥグラフ」は、ピンミキサー、電力量測定装置およびソフトウェア等からなり、パン生地の混捏時にピンミキサーが消費する電力量を1秒毎に連続的に測定して、20秒経過毎にその時点の前後20秒間(計41秒間)の移動平均値を算出し、別に用意したパソコンのディスプレイ上に該移動平均値をプロットしてグラフ化することができるシステムである。
(結果)
結果を図1に示す。実施例4および比較例3ともに最大電力量および最大電力量に達するまでの時間はほぼ同じだったが、実施例4は、比較例3に比べて、最大電力量に達した後の電力量が大きかった。特に、比較例3では、最大電力量に達した後に電力量が急減するのに対し、実施例4では、最大電力量に達した後に電力量が徐々に減少した。
電力量はミキサーに掛かるパン生地の負荷を表すことから、本発明においては、比較例と比べて、ミキサーが最大電力量に達した後のパン生地のミキシング耐性が良好なことが示された。一般に小麦粉として内麦粉だけを用いたパン生地は混捏工程において直ぐに生地が形成され易いため、混捏時間が短くなってしまうところ、本発明によれば、最大電力量に達した後のパン生地のミキシング耐性が向上するため、オーバーミキシングとなることを防止し易くなる。従って、本発明によれば、実際の食パン製造ラインにおいて、ミキサー担当者の仕込作業が容易となり、ひいては焼成した食パンの品質の安定化を図ることができる。
[実験例3] 中種の醗酵力(ガス発生量)および膨張
実施例4、比較例3、および比較例4(臭素酸カリウム水溶液およびL−アスコルビン酸を含むイーストフード、酵素等の生地改良剤を添加しない以外は、上記実施例4と同一の方法)にしたがって、それぞれ中種を作成し、該中種の醗酵力(ガス発生量)および中種膨張容積を測定して、比較検討した。ここで、中種の醗酵力(ガス発生量)および中種膨張容積は、以下の方法により評価した。
ガス発生量
中種の醗酵力は、ファーモグラフにより評価した。ファーモグラフは、微生物発酵の活性を発生するガス量で定量化する装置であって、微生物発酵により発生したガスを圧力センサーにより検出し、自動記録する装置である。ファーモグラフの測定には、ATTO(アトー社)製ATTOファーモグラフII−W(製品型式:AF−1101−20W型)を使用した。具体的には、中種生地30gを入れた試料ビンを、27.5℃に調温した恒温槽にセットし、発生するガス量を10分間隔で4時間測定した。
中種膨張容積
中種のボリュームを膨張管により測定し、中種の膨張容積を評価した。生地110gを丸め、この生地を膨張管の底から入れ、生地ボリュームを100mlに調整した後に、27.5℃における生地ボリュームを20分毎に測定した。膨張管は中京テクノス製の内径60mm、外径70mm、高さ210mmのものを使用した。
(結果)
中種のガス発生量を図2aに示す。中種醗酵の開始から4時間経過後において、実施例4におけるガス発生量は、比較例4と比較して著しく多く、比較例3よりもやや多かった。
さらに、中種の容積を図2bに示す。中種醗酵の開始から4時間経過後の時点において、実施例4の方が、比較例3および比較例4よりも著しく大きかった。
これにより、中種の醗酵力について、本発明の中種(実施例4)は、比較例4よりも著しく大きいガス発生量を有し、また比較例3と比較しても同等以上の良好なガス発生量を有することが明らかになった。さらに、本発明の中種(実施例4)は、比較例3および比較例4よりも著しく大きい中種膨張容積を示しており、本発明の中種が、上記の良好な醗酵力に加えて、極めて大きなガス保持力を有することが示された。
特に、実施例4と比較例3とを比較すると、中種のガス発生量の差異に比して、中種膨張容積の差異が著しく大きく、実施例4は、比較例3に対して、中種のガス保持力が顕著に改善されていた。
[実験例4] 機械的加工性(分割工程の時間的ズレに対する耐性・安定性)
実施例4および比較例3に記載の方法によって作成した生地を、それぞれ150gの生地重量に分割した。フロアタイムは、標準条件である15分間、および標準条件の2倍に延長した30分間とし、整形工程で150mmの棒状(ロール状)生地に整形した。
本実験例においては、フロアタイムを15分間および30分間としているが、このフロアタイムの時間の差異(15分間)は、1バッチの混捏のパン生地塊(約500kg)をホッパー付きディバイダーによって分割する場合に、分割開始時から分割終了までに要する時間を想定している。というのも、分割工程において最後に分割される生地は、最初に分割される生地に比べ、分割工程に要する時間分だけ、実質的にフロアタイムが延長されていることになる(これを、分割工程における時間的ズレと呼ぶ)。そこで、本実験例では、分割開始時から15分間後にパン生地の分割が終了することを想定し、フロアタイムについて、標準工程である15分間に加えて、フロアタイムを30分間に延長した実験も行った。
上述のようにして分割および整形した生地について、エクステンソグラフによりF/E値を測定した。ここで、エクステンソグラフとは、棒状に成形して一定時間寝かせた生地をアームで引っ張り、引っ張った際の伸び方や、伸びる際の抵抗の変化を機械的に測定し、記録する機械である。結果は、山型のグラフとして記録され、グラフの形状から小麦粉生地の特性を評価することが可能である。山型グラフの底辺の長さが伸張度(E)、山の高さが抗張力(F)を示す。なお、F/E値は、抗張力(F)と伸張度(E)との比であり、麩質の特性を示すものである。本実験例においては、ブラベンダー社製エクステンソグラフ(DM90−40型)を使用した。
(結果)
結果を図3に示す。フロアタイムが15分間および30分間のいずれの場合でも、実施例4の生地ではF/E値に大きな差は見られなかった。一方、比較例3の生地では、フロアタイムが15分間の場合と30分間の場合とでは、F/E値が大きく相違した。
これにより、実施例4の生地は、分割工程の時間的ズレに対する耐性・安定性を有していることがわかった。
[実験例5] 機械的加工性(分割工程の時間的ズレに対する耐性・安定性)
実施例4および比較例3に記載の方法によって作成した生地について、それぞれフロアタイムを25分間に変更し、整形工程におけるパン生地の長さを測定して比較検討した。
ガス抜き工程における圧延工程は、三段ローラーモルダーを使用し、該ローラー間隔を上段からそれぞれ9mm、5mm、および3mmに設定した。また、展圧板の間隔は28〜32mmに設定した。
本実験例では、1バッチの混捏のパン生地塊(約500kg)の分割工程において後半に分割されたに等しい整形生地として、フロアタイムを25分間とった整形生地を用意し、その長さを測定した。
(結果)
結果を図4に示す。実施例4の整形生地は約482mmであるのに対して、比較例3の整形生地は約464.5mmであった。すなわち、比較例の3の成形生地は、実施例4の整形生地よりも、約17.5 mmも縮んで短かくなっていた。
これにより、本発明のパン生地は著しく伸展性に富んでおり、機械的なガス抜き工程および整形工程に適した性状であることがわかる。これに対し、比較例3の生地は、パン生地の分割工程における分割までの待ち時間によるフロアタイムの実質的な延長により、パン生地のグルテンが引き締まり、硬く縮んでしまうため、伸展性を欠くようになり、機械的なガス抜き工程および整形工程に適していないことがわかる。
[実験例6] ホイロ工程におけるパン生地の安定性
実施例4および比較例3について、それぞれホイロをとり、ホイロ終了時におけるパン生地の膨張状態について比較検討した。
(結果)
図5に結果を示す。実施例4の場合、M型に整形して焼成型に3個型詰めしたパン生地の頭部がきれいに揃って膨張しているのに対し、比較例3では、パン生地の頭部が凸凹しており、きれいに揃って膨張していない。
これにより、本発明によれば、ホイロ工程におけるパン生地の伸展性およびガス保持力が良好になり、パン生地が全体的に均等に膨張することがわかる。
[実験例7] オーブンスプリング(角型食パン)
ホイロ工程で型下18mmまで膨張させてホイロ出しをした実施例4と、型下15mmまでホイロ出しをした比較例3とにより、角型食パンを製造し、焼成工程におけるオーブンスプリングについて比較検討した。
(結果)
図6に角型食パンの外観を示す。実施例4では、型下18mmまでのホイロ出しでも蓋を被せた焼成型内で十分に膨化し、ホワイトラインの幅が均一で、外観・形状がきれいに整った食パンを得ることができたのに対し、比較例3では、型下15mmまでホイロ出しをしたにもかかわらず、焼成パンの蓋の周縁部付近に部分的に何箇所か膨張不足が見られ、上部周縁がやや丸みをおびた形状に焼き上がっていて、いわゆるホワイトラインの幅が不均一となり、ホワイトラインが綺麗に形成されていなかった。
これにより、本発明は、焼成工程におけるオーブンスプリングが大きい、外観・形状が整った角型食パンを焼き上げることができることが明らかとなった。
[実験例8] オーブンスプリング(ワンローフ食パン)
本発明と比較例3とについて、焼成工程におけるオーブンスプリングの相違をより一層明らかにするため、実施例4と比較例3の生地からワンローフ食パンを製造し、オーブンスプリングについて比較検討した。
ここでは、実施例4および比較例3において本捏工程の条件を以下の通り変更し、ワンローフ食パンを焼き上げ(実施例5および比較例5)、食パンの容積および比容積を測定した。本実験例においては、ワンローフ食パンを各5個ずつ製造した。
分割 260g分割
整形 圧延生地をカーリングにより巻き込み、棒状とした
型詰め 1本の棒状整形生地をワンローフ焼成型に詰めた
ホイロ 型上15mmまで、38℃、64分間(実施例5)、
65分間(比較例5)
焼成 205℃、23分間(蓋を被せない)
(結果)
実施例5は、比較例5に比べて、ワンローフ食パンの5個の平均容積および平均比容積が著しく大きかった。
この結果からも、本発明は、焼成工程におけるオーブンスプリングが大きいことが示された。
[実験例9] 内相
実施例4および比較例3にしたがって、角型食パンを製造し、製品をスライスして内
相を比較検討した。また、このスライスしたパンの内相についてL値を測定した。ここで、L値の測定には、ミノルタ社(現コニカミノルタ社)製色彩色差計(CR−200型)を用いた。なお、L値とは明度を示し、数値が大きいほど明るい色である。
(結果)
図7に内相の写真を示す。実施例4では、内相の気泡膜が薄く、ほぼ均一であった。また、気泡膜が縦目(縦長)に形成されており、オーブンスプリングが大きいことを示唆している。さらにL値が78.77と高く、白い色になっていた。
一方、比較例3では、スライス面の下側には、オーブンスプリングの不足を示す底溜まりが見られた。また、内相の気泡膜は厚く、不均一である。さらに、気泡膜は丸目に形成されており、オーブンスプリングが小さいことを示唆している。L値は77.05とやや低く、白い色がくすんでいた。
以上の結果から、実施例4によれば、比較例3と比べて、内相が良好な角型食パンを得ることができることが明らかである。
[実験例10] 官能(風味、食感等)
実施例4および比較例3にしたがって、角型食パンを製造し、製品を食べたときの官
能性について比較検討した。8人のパネラーにより評価を行った。
(結果)
クラムの食感についてみると、8人のパネラー全員が、一人の例外もなく、実施例4の製品はダンゴ感が小さく(口中でダンゴ状にならない)、くちゃつきも小さくて口溶けが良好であるのに対し、比較例3の製品は、ダンゴ感が大きく(口中でダンゴ状になる)、くちゃつきも大きくて口溶けが悪い、と評価した。
[実験例11] 柔らかさ(老化防止)
実施例4および比較例4にしたがって、角型食パンを製造し、製品の柔らかさについて比較検討した。柔らかさは、レオメータにより、製品のクラムの圧縮荷重を測定した。レオメータとしては、山電製レオナーRE−33005を用い、測定条件は、以下の通りとした。
プランジャー:直径30mm円柱
進入速度 :5mm/sec
進入距離 :10mm
検体条件 :厚さ20mmにスライス
(結果)
結果を図8に示す。実施例4は、比較例4と比べ、製造日から1日経過後では圧縮荷重がやや小さく、製造日から3日経過後では圧縮荷重が著しく小さかった。
これにより、本発明の食パンは、老化しにくく、柔らかさが維持されることが示された。
[実験例12] 柔らかさ(老化防止)
実施例4および比較例3にしたがって、角型食パンを製造し、製品の柔らかさについて比較検討した。
柔らかさの測定は実験例11と同様である。ここでは、実施例4および比較例3ともに、それぞれ9枚の食パンスライス片について測定を行い、各測定値の平均値を求めた。
(結果)
結果を図9に示す。製造日から1日経過後および3日経過後ともに、実施例4は、比較例3よりも圧縮荷重が小さかった。
これにより、本発明の食パンは、老化しにくい、柔らかいクラムであることがわかる。
[実施例6] 角型食パンの製造(直捏法で、パン生地の混捏時に臭素酸カリウム水溶液およびアスコルビン酸を添加)
(原料配合)
小麦粉 100 %
イースト 2.5 %
イーストフード、酵素等の生地改良剤 0.1 %
(内 被覆してない裸のL−アスコルビン酸として)10 ppm
臭素酸カリウム(濃度1.0%の水溶液として) 12 ppm
乳化剤 0.25%
砂糖 7.0 %
油脂 5.0 %
脱脂粉乳 2.0 %
塩 2.0 %
水(全吸水) 55.0 %
ここで、パン生地に用いた小麦粉は、タンパク質含有量9.2%前後の、北海道産中力粉である(商品名「薫風」、小麦の品種は「ホクシン」)。
(製造工程)
以下の工程によって、角型食パンを製造した。
混捏 L3H1(分)↓(油脂添加)L2H3.5(分)
捏上温度 26℃
醗酵 120分(90分間経過後にパンチ(ガス抜き)を行い、
さらに30分間醗酵させる)
分割 510g
丸め
ベンチタイム 15分間
ガス抜き(圧延)
整形 M型(該圧延生地をカーリングにより巻き込み、棒状と
し、M型に整形する)
型詰 3個のM型整形生地を3斤食パン類用焼成型に詰める
ホイロ 38℃、55分間
焼成(蓋をかぶせる) 210℃、33分間
(結果)
上記の測定法により焼成後の食パン中の臭素酸の残存量を測定したところ、NDであった。
臭素酸カリウム水溶液を添加しないでアスコルビン酸のみを適当量添加するように変更し、それ以外は本実施例と同様の条件にて角型食パンを製造する比較例6と比べると、本発明の方法では、ミキシング時間が適度に長く、ミキシングに対する耐性が改善され、吸水が多くなり、釜伸びも改善された。また、フロアータイムの許容される時間的幅は広く、後半まで安定していた。本発明により製造した食パンは、比較例2で製造した食パンと比較して、外観についてはホワイトラインが均一で、内相については膜薄く白く、老化が遅くなり、食感についてはぱさつきが改善された。
[実施例7] 角型食パンの製造(直捏法で、パン生地の混捏時に臭素酸カリウム水溶液、硫酸第一鉄、およびアスコルビン酸を添加)
実施例6の原料配合において、さらに硫酸第一鉄5ppmを加えた以外は、実施例6と同様にして、角型食パンを製造した。
(結果)
上記の測定法により焼成後の食パン中の臭素酸の残存量を測定したところ、NDであった。
図1は、本捏工程における混捏時間とミキサーの消費電力量との関係を示すグラフである(実験例2)。 図2aは、中種のガス発生量を示したグラフである(実験例3)。 図2bは、中種の容積の経時変化を示したグラフである(実験例3)。 図3は、実施例4および比較例3においてフロアタイムを15分および30分とした場合の、生地の安定性を示す(実験例4)。 図4は、実施例4および比較例3における、成型時の生地の長さを示す(実験例5)。 図5は、実施例4および比較例3における、ホイロ出し時の生地の状態を撮影した写真である(実験例6)。 図6は、実施例4および比較例3にしたがって製造した食パンの外観を撮影した写真である(実験例7)。 図7は、実施例4および比較例3にしたがって製造した食パンの内相を撮影した写真である(実験例9)。 図8は、実施例4および比較例4にしたがって製造した食パンの、製造から1日後および3日後の圧縮荷重を示す(実験例11)。 図9は、実施例4および比較例3にしたがって製造した食パンの、製造から1日後および3日後の圧縮荷重を示す(実験例12)。

Claims (22)

  1. 食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて、中種法により角型食パン類を製造するにあたり、中種の作成工程において、上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して5ppm〜20ppmの量の臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して3ppm〜20ppmの量のアスコルビン酸を添加して食パン類生地を作成し、これを焼成型に蓋をして焼成することにより、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させない(0.5ppb未満である)ことを特徴とする、角型食パン類の製造方法。
  2. 食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて、中種法により角型食パン類を製造するにあたり、中種の作成工程において、上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して5ppm〜25ppmの量の臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して0.1ppm〜20ppmの量の硫酸第一鉄および上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して3ppm〜20ppmの量のアスコルビン酸を添加して食パン類生地を作成し、これを焼成型に蓋をして焼成することにより、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させない(0.5ppb未満である)ことを特徴とする、角型食パン類の製造方法。
  3. 上記硫酸第一鉄および/またはアスコルビン酸は、上記臭素酸カリウム水溶液とは別に、粉末として添加することを特徴とする、請求項1または2に記載の角型食パン類の製造方法。
  4. 上記アスコルビン酸は、その全部または一部が、油脂で、または油脂とモノグリセライド脂肪酸エステルとの混合物で被覆されていることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の角型食パン類の製造方法。
  5. 上記中種の作成工程において、イーストを上記食パン類生地を構成する小麦粉に対して1.7質量%〜2.2質量%添加するとともに、本捏工程において、イーストを同じく0.5質量%〜1.0質量%添加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  6. ホイロを50〜70分間とることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  7. 上記内麦粉は、主に麺用として用いられる中力粉であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  8. 食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて、直捏法により角型食パン類を製造するにあたり、食パン類生地の作成工程において、上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して5ppm〜15ppmの量の臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して3ppm〜20ppmの量のアスコルビン酸を添加して食パン類生地を作成し、これを焼成型に蓋をして焼成することにより、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させない(0.5ppb未満である)ことを特徴とする、角型食パン類の製造方法。
  9. 食パン類生地を構成する小麦粉として内麦粉だけを用いて、直捏法により角型食パン類を製造するにあたり、食パン類生地の作成工程において、上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して5ppm〜15ppmの量の臭素酸カリウムを水溶液として添加するとともに、上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して0.1ppm〜20ppmの量の硫酸第一鉄および上記食パン類生地を構成する全小麦粉量に対して3ppm〜20ppmの量のアスコルビン酸を添加して食パン類生地を作成し、これを焼成型に蓋をして焼成することにより、焼成後の角型食パン類中に臭素酸を残存させない(0.5ppb未満である)ことを特徴とする、角型食パン類の製造方法。
  10. 上記硫酸第一鉄および/またはアスコルビン酸は、上記臭素酸カリウム水溶液とは別に、粉末として添加することを特徴とする、請求項8または9に記載の角型食パン類の製造方法。
  11. 上記アスコルビン酸は、その全部または一部が、油脂で、または油脂とモノグリセライド脂肪酸エステルとの混合物で被覆されていることを特徴とする、請求項8、9または10に記載の角型食パン類の製造方法。
  12. ホイロを50〜70分間とることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  13. 上記内麦粉が、主に製麺用に用いられる中力粉であることを特徴とする、請求項8〜12のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  14. 上記食パン類生地の作成工程において、イーストを上記食パン類生地を構成する小麦粉に対して2.2〜3.0質量%添加することを特徴とする、請求項8〜13のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  15. 上記食パン類生地を混捏後90分間〜150分間醗酵させることを特徴とする、請求項8〜14のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  16. 上記食パン類生地を混捏後25℃〜29℃の温度下において醗酵させることを特徴とする、請求項8〜15のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  17. 上記食パン類生地の作成工程において、バイタルグルテンを添加しないことを特徴とする、請求項8〜16のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  18. 上記内麦粉が、タンパク質含有量が8.5質量%以上の小麦粉であることを特徴とする、請求項8〜17のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  19. 中種を混捏後4時間〜6時間醗酵させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  20. 中種を混捏後26℃〜29℃の温度下において醗酵させることを特徴とする、請求項1〜7および19のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  21. 上記食パン類生地の作成工程において、バイタルグルテンを添加しないことを特徴とする、請求項1〜7、19および20のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
  22. 上記内麦粉が、タンパク質含有量が8.5質量%以上の小麦粉であることを特徴とする、請求項1〜7および19〜21のいずれか1項に記載の角型食パン類の製造方法。
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