JP3893074B2 - ワーク内面の検査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワーク内面の検査装置に関し、例えば、鋳造により形成した自動車のエンジンシリンダブロックなどのワーク内面に存在する鋳巣や傷、あるいはボア内面に溶射により形成した被覆層の孔などをインラインで検査する場合に好適するワーク内面の検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジンシリンダブロックは、全体を鉄の鋳造によって製作する方法、大部分をアルミニウムの鋳造で製作しそのボア内面に鉄製のライナを装着する方法などがある。前者の全体を鉄の鋳造によって製作する方法では、鋳造時の充填不足による鋳巣や鋳型除去時に傷などが入り易いという問題点がある。また、後者の大部分をアルミニウムの鋳造で製作しそのボア内面に鉄製のライナを装着する方法では、前記同様の問題があるほか、アルミニウム鋳造部分へのライナの装着が面倒であるのみならず、アルミニウム鋳造部品の内径寸法とライナの外形寸法とに高精度の寸法公差が要求され、さらにはライナが鉄製なので重くなるという問題点がある。
【0003】
そこで、エンジンシリンダブロックをアルミニウムで鋳造すると共に、そのボア内面に鉄を溶射して被覆層を形成する方法が考えられる。この方法は、アルミニウムの鋳造で製作したエンジンシリンダブロックのボア内面に鉄を溶射して被覆層を形成するので、従来のライナのような別物を製作することや、このライナをエンジンシリンダブロックのボア内面に装着するという煩雑な工程がなく、しかも、エンジンシリンダブロック内径寸法とライナ外径寸法との高精度の寸法公差も要求されないため、著しく生産性を向上できるという利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、鋳造により形成したエンジンシリンダブロックの鋳巣や傷の発生に対しては対策が困難なので、被覆層の形成前に鋳巣や傷の検査が必要であるし、ボア内面に付着した油や汚れに起因して被覆層に孔が形成されてしまうことがあるため、ボア内面に被覆層を形成した後には、被覆層に孔がないかどうか検査することが必要になる。
【0005】
この鋳造品のボア内面の鋳巣や傷の検査、あるいは被覆層の孔の検査方法には、例えば、特開平6−18426号公報に記載されるように、ボア内面を回転ミラーで円周方向に走査して受光部(CCD素子など)に結像させ、この画像を直線状画像に展開して表示させるようにする方法や、特開平6−241760号公報に記載されるように、円錐形ミラーを介してテレビカメラのCCD素子に円形帯状画像を結像させ、この画像に設定した円形の取込線上にある画素を一列に取り出して、直線状画像に展開して表示させるようにする方法がある。
【0006】
また、特開平11−23477号公報に記載されているように、ボア内面全面に対して、撮像素子を直線状に配列したラインセンサで走査撮影し、ラインセンサおよび回転角度検出手段から信号を取り込んで平面画像に展開すると共に、この平面画像を表示手段に表示するようにする方法がある。
【0007】
しかしながら、以上のような光学的方法によってボア内面を検査する装置では、ボア内面や被覆層表面に油や汚れが付着していると、それを鋳巣や傷、あるいは孔と誤検出することがあり、鋳巣や傷、あるいは孔の有無を高信頼度で検出することができなかった。そのため、このような光学的な検査装置は、インラインで採用することができなかった。
【0008】
そこで、X線を利用する方法も考えられるが、このX線検査装置は自動検査が可能ではあるものの、X線は作業者の安全衛生上の見地から、インラインに採用することができなかった。
【0009】
また、超音波を利用する装置もあるが、この超音波による検査装置は、エンジンシリンダブロックを水没させなければならず、水を使用する設備が必要であるため、製造ラインに水槽や給水管や排水管を敷設しなければならず設備が複雑化するのみならず、鉄を溶射して形成した被覆層が水によって酸化されるため、やはりインラインで採用することができなかった。
【0010】
そこで、現在は、止むを得ず作業者が肉眼で検査するようにしているが、このような検査方法では、検査作業に長時間を要し非能率的であるのみならず、長時間連続作業すると眼精疲労のために作業者の視力が低下して、検査の信頼度が低下するという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記の鉄鋳造製やアルミニウム鋳造製エンジンシリンダブロックなどのワークのボア内面や、そのボア内面に鉄を溶射して被覆層を形成したようなワークの被覆層などの検査において、ワークの鋳巣や傷の有無、あるいは被覆層の孔の有無やその大きさなどを、インラインで自動的に、かつ、高信頼度で検査できるワーク内面の検査装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載されたワーク内面の検査装置は、ボアを有するワークのボア内面に近接して回転する回転体と、この回転体の周面に設けられた磁気プローブと、前記回転体を回転させる駆動手段と、前記回転体をワーク内で軸心方向に移動させる移動手段とを具備し、前記ワークであるエンジンシリンダブロックのボア内面で生じる渦電流を前記磁気プローブにて検査するワーク内面の検査装置において、この回転体の周面に距離測定用の近接センサを設けるとともに、X−Yテーブルに前記駆動手段及び移動手段を取り付け、回転体をエンジンシリンダブロック内に挿入し、この挿入状態で近接センサの出力変化を検出し、前記X−Yテーブルを制御して、エンジンシリンダブロックのボア内面に回転体を近接させて、ボア内面と磁気プローブとの間隔寸法を一定に維持しつつ、1回転あたり所定の移動ピッチで前記回転体をエンジンシリンダブロック内で軸心方向に移動させることを特徴とするものである。
【0013】
このようなワーク内面の検査装置によれば、ボア内面や、このボア内面に形成された被覆層に近接して回転する回転体に磁気プローブを設けてあるので、この回転体に設けられた磁気プローブがボア内面や、このボア内面に形成された被覆層に近接して回転することによって、ワーク(エンジンシリンダブロック)のボア内面や被覆層内で生じる渦電流に基づいて、磁気プローブに得られる出力電圧の変化により、エンジンシリンダブロックのボア内面の鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔の有無やその大きさを検出することができる。
【0014】
すなわち、エンジンシリンダブロックのボア内面に鋳巣や傷がない場合や被覆層に孔がない場合は、回転体の回転によって磁気プローブに得られる出力は変化しないが、もし、エンジンシリンダブロックのボア内面に鋳巣や傷がある場合や被覆層に孔がある場合は、その孔部分で渦電流の流れが変化する。この渦電流の流れの変化に基づく磁気プローブの出力電圧変化をモニタすることによって、ボア内面に鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔の有無やその大きさを検出することができる。
【0015】
このような方法によれば、従来のカメラによる光学的な方法に比較して、渦電流を利用した電磁気的な探傷方法であるため、油や汚れの付着に起因して誤報することがない。また、X線検査装置に比較して作業者の安全衛生上の問題がない。さらに、超音波を利用する検査装置に比較してエンジンシリンダブロックを水没させる必要がないので、設備が簡素化されるのみならず、鉄の溶射による被覆層の酸化の問題などがない。したがって、鋳造品のボア内面の鋳巣や傷、あるいは溶射による被覆層の孔などをインラインで検査可能になり、著しく生産性を向上することができる。
【0016】
上記のワーク内面の検査装置によれば、近接センサによって、エンジンシリンダブロックや回転体の傾きを修正して、近接センサとエンジンシリンダブロックのボア内面や被覆層との間隔寸法を一定にすることができるため、その傾きに起因する近接センサの出力変化を、鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔と誤報することを防止ことができる。例えば、エンジンシリンダブロックと回転体とのいずれか一方または両方に傾きが生じていれば、回転体の回転によって、磁気プローブとボア内面やその被覆層との間隔寸法が変化して、磁気プローブの出力電圧が変化するので、その出力電圧変化を鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔と誤報することがあるが、近接センサとエンジンシリンダブロックのボア内面や被覆層との間隔寸法を一定にすることによって、このような誤報を防止ことができる。
【0017】
本発明のワーク内面の検査装置においては、前記エンジンシリンダブロックのボア内面と磁気プローブとの距離を、0.5mm〜0.6mmの範囲内に設定することが望ましい。
【0018】
ここで、エンジンシリンダブロックのボア内面と磁気プローブとの距離が、0.5mm未満では、磁気プローブの出力電圧が大きくなり過ぎて、飽和してしまい、正しい鋳巣や傷、孔の大きさが判らなくなる。また、エンジンシリンダブロックのボア内面と磁気プローブとの距離が0.6mmを超えると、磁気プローブの出力電圧が小さくなり過ぎて出力電圧の変化が判別し難くなる。したがって、エンジンシリンダブロックのボア内面と磁気プローブとの距離を、0.5mm〜0.6mmの範囲内に設定することによって、ワークの鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔やその大きさを容易、かつ確実に検出することができる。
【0019】
上記のワーク内面の検査装置によれば、X−Yテーブルを水平面内で移動させることによって、X−Yテーブルに搭載された回転体の回転軸心をエンジンシリンダブロックのボアの中心軸に一致させることができるので、エンジンシリンダブロックのボア内面と回転体の外周面との間隔寸法を一定にでき、高精度でワークの鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔の有無やその大きさを検出することができる。
【0020】
本発明のワーク内面の検査装置では、前記磁気プローブの出力電圧が与えられるパソコンを有することが望ましい。
【0021】
上記のワーク内面の検査装置によれば、磁気プローブの出力電圧が与えられるパソコンモニタに映し出される出力電圧波形を解析して、エンジンシリンダブロックの鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔の有無やその大きさを検出することができると共に、そのエンジンシリンダブロックや被覆層の良否判定を行なうことができる。さらに、例えば、回転体の回転角度を横軸にとり、時間を縦軸にとって、回転角度−時間の関係を2次元座標図で表示すると、ボア内面あるいは被覆層のどの位置に、どの程度の大きさの鋳巣や傷、あるいは孔があるかが、一目で分かる。
【0022】
本発明の請求項2に記載されたワーク内面の検査装置は、前記移動手段が、回転体の1回転当たりの移動ピッチをP、検出しようとする鋳巣や傷、あるいは孔の外径寸法をAとするとき、P≦A−0.05mmの関係に設定されていることを特徴とするものである。
【0023】
上記のワーク内面の検査装置によれば、例えば、検出しようとする鋳巣や傷、あるいは孔の外径寸法をAとし、A=0.3mmとすると、回転体の1回転当たりの移動ピッチをP≦0.25mmに設定する。そうすると、回転体の回転動作によって、ワークのボア内面または被覆層のいずれの位置に存在している0.3mm以上の鋳巣や傷、あるいは孔でも磁気プローブが必ず走査することになるので、確実に検出することが可能である。
【0024】
上記のワーク内面の検査装置によれば、アルミニウム鋳造によるエンジンシリンダブロックのボア内面に存在する鋳巣や傷の有無やその大きさを自動的に検出することができ、インラインでの検査が可能になる。
【0025】
本発明のワーク内面の検査装置では、前記エンジンシリンダブロックのボア内面に、鉄の溶射による被覆層が形成されている場合にも好適するものである。
【0026】
上記のワーク内面の検査装置によれば、エンジンシリンダブロックのボア内面に形成された鉄の溶射による被覆層における孔の有無やその大きさを自動的に検出することができ、インラインでの検査が可能になる
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係るワーク内面の検査装置について、図面を参照して説明する。図1はワーク内面の検査装置の斜視図で、図2(A)は検査対象であるワークの一例の縦断面図、図2(B)はワークの異なる例の縦断面図である。
【0028】
図2(A)に示すワークは、アルミニウム鋳造にて形成され、円筒状のボア22を有するエンジンシリンダブロック21である。図2(B)に示すワークは、アルミニウム鋳造により形成され、円筒状のボア32を有するエンジンシリンダブロック31であって、この円筒状のボア32の内面に、鉄の溶射による被覆層33が形成されている。
【0029】
図1に示すワーク内面の検査装置1は、回転軸2の下端部に、円盤状の回転体3,4を有し、これらの回転体3,4の外周面に、それぞれ磁気プローブ5と、近接センサ6とを有する。磁気プローブ5は、図2(A)のエンジンシリンダブロック21のボア22の内面、あるいは図2(B)のエンジンシリンダブロック31のボア32の内面に形成された被覆層33との間隔寸法に応じた出力が得られるものであればよい。近接センサ6は、ボア22内面あるいは被覆層33との間隔寸法を検出するもので、例えば、磁気センサ,変位センサ,渦電流変位センサ,接触式変位センサなどで構成され、回転体4の円周方向等間隔位置に、例えば、120°毎に3個設けられている。
【0030】
前記回転軸2は、駆動手段である駆動用モータ7によって回転駆動され、その回転角度はロータリーエンコーダ8によって検出される。前記駆動用モータ7およびロータリーエンコーダ8は、X−Yテーブル9に吊下げ状に搭載されている。このX−Yテーブル9は、例えば、固定部材9aの下にX方向スライド部材9bとY方向スライド部材9cとを重ね合わせて構成されている。前記X−Yテーブル9の固定部材9aは、図示しない移動手段により上下方向に移動可能な上下動作手段10によって支持されて、上下動作が可能に構成されている。
【0031】
また、前記磁気プローブ5および近接センサ6は、パソコン11のモニタ12に接続されている。したがって、磁気プローブ5の出力電圧に基づいてモニタ12に移し出された電圧波形を解析したり、その解析結果から良否を判定したりすることができる。以上の構成によって、エンジンシリンダブロック21,31のボア22,32内面の鋳巣や傷、あるいはボア32の内面に形成された被覆層33における孔の有無やその大きさを検査することができる。
【0032】
例えば、検出しようとする巣や傷、あるいは孔の外径寸法Aの規格値が0.3mm以上の場合は、前述のP≦A−0.05mmの関係式から、回転体3の1回転による1ピッチ分のスパイラル上下動寸法Pは、0.25mmに設定される。ここで、駆動用モータ7の回転数NがN=2,400rpm(=40rps)とすると、上下動作手段10による軸方向の移動速度Sは、S=0.25[mm/回転]×40[rps]=10mm/sになる。したがって、エンジンシリンダブロック21,31のボア22,32の長さ寸法Lが100mmの場合は、10秒でボア1個の検査が終了することになる。もちろん、駆動用モータ7の回転数Nを大きくするか、回転数伝達手段を設けその増速比を大きくすれば、検査所要時間を短縮することができる。
【0033】
図3(A)〜図3(D)は、エンジンシリンダブロック21,31のボア22,32内面に、φ0.3mm×深さ0.3mmの大きさの人工鋳巣を形成し、磁気プローブ5とエンジンシリンダブロック21のボア22内面との間隔寸法を0.4mmから0.7mmまで0.1mm刻みで変化させた場合の、回転体3の略1回転によって磁気プローブ5に得られた出力電圧波形図を示す。なお、図3(A)〜図3(D)において、出力電圧Aの楕円A’で囲った部分が人工鋳巣の検出信号であり、その出力電圧Aの下側の矩形波P1,P2は、回転パルス信号である。
【0034】
すなわち、図3(A)は磁気プローブ5とエンジンシリンダブロック21のボア22内面との間隔寸法が0.4mmの場合で、出力電圧の振幅がOK/NGの上限しきい値UCLおよび下限しきい値LCLを大きく超え、さらにこれ以上の波形が出力されても飽和してしまう上方飽和電圧値USLおよび下方飽和電圧値LSLに対して飽和している。図3(B)および図3(C)はそれぞれ間隔寸法が0.5mm、0.6mmの場合で、出力電圧の振幅がOK/NGの上下限しきい値UCLおよびLCLを超えているが、上方飽和電圧値USLおよび下方飽和電圧値LSLには達しておらず、適正な大きさになっている。図3(D)は間隔寸法が0.7mmの場合で、出力電圧の振幅が小さ過ぎて、OK/NGの上下限しきい値UCLおよびLCLとほぼ等しいため、OK/NGの判定が困難である。以上の結果から、磁気プローブ5とエンジンシリンダブロック21のボア22内面との間隔寸法は、0.5mm〜0.6mmの範囲が適当である。
【0035】
図4(A)は、図2(A)のエンジンシリンダブロック21のボア22内面について、ロータリーエンコーダ8で回転軸2の回転角度θを横軸にとり、検査経過時間から磁気プローブ5の位置を縦軸にボア長で示した、回転角度θ−ボア長の2次元座標図である。すなわち、磁気プローブ5によって得られる電圧波形の変化を、横軸が回転角度θ(°)で縦軸がボア22の長さ(mm)の2次元座標データを得ることによって、その検出した磁気プローブ5の出力電圧波形の変化位置座標aから、実エンジンシリンダブロック21のボア22面内の鋳巣や傷の位置やその大きさを検出することができる。
【0036】
図4(B)は、図2(B)に示すエンジンシリンダブロック31について、被覆層33の一部を人工的に剥離して孔を形成した場合における、前記図4(A)と同様の2次元座標図である。この図4(B)でも、その検出した磁気プローブ5の出力電圧波形の変化位置座標bから、実際のエンジンシリンダブロック31のボア32内面に形成した被覆層33の孔の位置やその大きさを検出することができる
【0037】
なお、上記実施形態では、特定の実施形態のみを説明したが、本発明の精神を逸脱しない範囲で各種の変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記実施形態では、回転体3,4の外周面には1個の磁気プローブ5を設ける場合について説明したが、周方向等間隔位置に複数個の磁気プローブ5を設けるようにしてもよい。このようにすれば、例えば、n個の磁気プローブ5を設けた場合は、回転体3,4の1/nの回転動作によって、エンジンシリンダブロック21,31のボア22,32内面1回転分(360°)の検査が可能になり、それだけ検査に要する時間を短縮することができる。
【0038】
また、アルミニウム鋳造によるボア22を有するエンジンシリンダブロック21、あるいは、アルミニウム鋳造によるボア32を有し、そのボア32内面に鉄の溶射による被覆層33を有するエンジンシリンダブロックについて説明したが、鉄の鋳造によるボアを有するエンジンシリンダブロックにおける鋳巣や傷の検査にも適用できる。
【0039】
なお、上記の鉄の溶射による被覆層33を有するエンジンシリンダブロック31や鉄の鋳造によるエンジンシリンダブロックの場合は、残留磁束の影響をなくすために脱磁処理を行なうか、あるいは残留磁束を一定にするために磁気飽和処理を実施した上で、本発明の検査装置による検査を実施する方が、残留磁束による影響を受けることなく、より正確な検査が行なえる。
【0040】
また、ロータリーエンコーダ8に代えて、パルス数によって回転角度が分かるパルスモータを用いてもよい。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、以上のように、ボアを有するエンジンシリンダブロックのボア内面に近接して回転する回転体と、この回転体の周面に設けられた磁気プローブと、前記回転体を回転させる駆動手段と、前記回転体をエンジンシリンダブロック内で軸心方向に移動させる移動手段とを具備し、渦電流を利用して鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔を検出するものであるから、従来の光学的な検査装置に比較して、油や汚れによる虚報がなく、X線による検査装置に比較して、作業者の安全衛生上の問題がなく、また超音波による検査装置に比較して、エンジンシリンダブロックを水没させる必要がなく、短時間で正確にボア内面の鋳巣や傷、あるいは被覆層の孔の検出が可能であり、生産ラインに検査装置を組み込んでインラインで検査することができ、生産性が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るワーク内面の検査装置の要部斜視図である。
【図2】(A)は検査対象であるエンジンシリンダブロックの一例の断面図、(B)は検査対象であるエンジンシリンダブロックの異なる例の断面図である。
【図3】(A)は磁気プローブの出力電圧が過大な場合の波形図(プローブ〜エンジンシリンダブロック間距離0.4mm)、(B)は磁気プローブの出力電圧が適正な場合の波形図(プローブ〜エンジンシリンダブロック間距離0.5mm)、(C)は磁気プローブの出力電圧が適正な場合の波形図(プローブ〜エンジンシリンダブロック間距離0.6mm)、(D)は磁気プローブの出力電圧が過小な場合の波形図(プローブ〜エンジンシリンダブロック間距離0.7mm)である。
【図4】(A)はエンジンシリンダブロックのボア内面の鋳巣や傷による磁気プローブの出力電圧変化を回転体の回転角度−ボア長の2次元座標データで表した2次元座標図、(B)はエンジンシリンダブロックのボア内面に形成した被覆層の孔による磁気プローブの出力電圧変化を回転体の回転角度−ボア長の2次元データで表した2次元座標図である。
【符号の説明】
1ワーク内面の検査装置
2 回転軸
3,4 回転体
5 磁気プローブ
6 近接センサ
7 駆動手段(駆動用モータ)
8 ロータリーエンコーダ
9 X−Yテーブル
10 移動手段(上下動作手段)
11 パソコン
12 モニタ
21,31エンジンシリンダブロック
22,32 ボア
33 鉄の溶射による被覆層
A 出力電力波形
A’ 鋳巣や傷の検出信号
P1,P2 回転パルス信号
a 鋳巣や傷の検出位置座標
b 被覆層の孔検出位置座標

Claims (2)

  1. ボアを有するワークのボア内面に近接して回転する回転体と、この回転体の周面に設けられた磁気プローブと、前記回転体を回転させる駆動手段と、前記回転体をワーク内で軸心方向に移動させる移動手段とを具備し、前記ワークであるエンジンシリンダブロックのボア内面で生じる渦電流を前記磁気プローブにて検査するワーク内面の検査装置において、この回転体の周面に距離測定用の近接センサを設けるとともに、X−Yテーブルに前記駆動手段及び移動手段を取り付け、回転体をエンジンシリンダブロック内に挿入し、この挿入状態で近接センサの出力変化を検出し、前記X−Yテーブルを制御して、エンジンシリンダブロックのボア内面に回転体を近接させて、ボア内面と磁気プローブとの間隔寸法を一定に維持しつつ、1回転あたり所定の移動ピッチで前記回転体をエンジンシリンダブロック内で軸心方向に移動させることを特徴とするワーク内面の検査装置。
  2. 前記移動手段が、回転体の1回転当たりの移動ピッチをP、検出しようとする孔径寸法をAとするとき、P≦A−0.05mmの関係に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク内面の検査装置。
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