JP3892540B2 - 全面駆動型スピーカ - Google Patents
全面駆動型スピーカ Download PDFInfo
- Publication number
- JP3892540B2 JP3892540B2 JP22488597A JP22488597A JP3892540B2 JP 3892540 B2 JP3892540 B2 JP 3892540B2 JP 22488597 A JP22488597 A JP 22488597A JP 22488597 A JP22488597 A JP 22488597A JP 3892540 B2 JP3892540 B2 JP 3892540B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- magnetic
- generating means
- plate member
- diaphragm
- magnetism generating
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Audible-Bandwidth Dynamoelectric Transducers Other Than Pickups (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気音響変換装置に関し、特に、磁性材料を用いた振動板にその板面に沿って磁束を通し、磁束と鎖交する方向に電流を流して振動板を振動させる全面駆動型スピーカに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁性材料からなる振動板に磁束を通し、磁束と鎖交する方向に音声電流を流して振動板を音響振動させる電気音響変換装置は、例えば特公昭47−14936号公報に記載されているように公知である。
【0003】
この装置は、図10に示すように、マグネット11,11’の磁極14,15間を金属磁性材料からなる振動板13により橋絡して、振動板13中に矢印18で示すように磁束が通るようにし、かつ、リード線16,17を通じて振動板13に点線の矢印で示すように磁束と鎖交する方向に音声電流を流すようにしたものである。
【0004】
この装置では、振動板13中の磁束と電流の相互作用により、振動板13が磁束および電流の方向と直交する方向で振動し、電流に対応した音響を発生する。すなわち、電気信号を音響信号に変換する電気音響変換装置となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の電気音響変換装置は、金属磁性材料からなる振動板を用いるので、振動系は剛性が高くかつ重いものとなる。このような振動系を用いる電気音響変換装置は、電気音響変換効率が低く実用に耐えない。
【0006】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、磁束を集中させる振動板を用いながらも電気音響変換効率が高い全面駆動型スピーカを実現することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1)課題を解決するための請求項1の発明は、少なくとも一端側が開口し開口端が単極性の磁極となる実質的に筒状の磁気発生手段と、前記磁気発生手段の前記一端側に前記開口を塞ぐように配設された非磁性かつ非導電性の板部材と、前記板部材に被着され、前記磁気発生手段が発生する磁束を前記板部材の中心に関して放射状に通す磁気通路とこの磁気通路の磁束と鎖交する電流を前記板部材の中心に関して渦巻状に通す電気通路とを構成し、渦巻きの中心部に近づくにつれて周方向の磁気抵抗が増すかあるいは放射方向での磁気抵抗が減じる導電性の磁性膜とを具備することを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明では、板部材に被着された磁性膜中に磁束が放射状に集中する。そして、磁束との相互作用により、外部から渦巻状の電流通路に与えられた電流に応じた板部材の振動が生じる。電流通路が渦巻状になっていることにより、磁性膜の面積当たりの電流通路が長くなって能率の良い電気音響変換が行われる。
また、導電性の磁性膜は渦巻きの中心部に近づくにつれて周方向の磁気抵抗が増すかあるいは放射方向での磁気抵抗が減じるので、放射状の磁気通路の偏向が抑制され、磁気通路の放射状特性が維持される。
【0012】
(2)課題を解決するための請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記磁気発生手段が筒内の軸方向に磁性材料からなる柱部材を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明では、柱部材が集磁作用をして磁束の放射状特性を向上させる。
(3)課題を解決するための請求項3の発明は、少なくとも一端側が開口し開口端が単極性の磁極となる実質的に筒状の第1の磁気発生手段と、少なくとも一端側が開口し開口端が前記第1の磁気発生手段の前記磁極と同極性の磁極となり、この磁極が前記第1の磁気発生手段の前記磁極と対向するように前記第1の磁気発生手段に関して相対的に配設された実質的に筒状の第2の磁気発生手段と、前記第1の磁気発生手段の前記磁極と前記第2の磁気発生手段の前記磁極との間に配設された非磁性かつ非導電性の板部材と、前記板部材に被着され、前記第1および第2の磁気発生手段が発生する磁束を前記板部材の中心に関して放射状に通す磁気通路とこの磁気通路の磁束と鎖交する電流を前記板部材の中心に関して渦巻状に通す電気通路とを構成し、渦巻きの中心部に近づくにつれて周方向の磁気抵抗が増すかあるいは放射方向での磁気抵抗が減じる導電性の磁性膜と、を具備することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明では、板部材に被着された磁性膜中に磁束が放射状に集中する。そして、磁束との相互作用により、外部から渦巻状の電流通路に与えられた電流に応じた板部材の振動が生じる。
【0015】
電流通路が渦巻状になっていることにより、磁性膜の面積当たりの電流通路が長くなり、また、2つの磁気発生手段の磁束の和を利用することにより、能率の良い電気音響変換が行われる。また、導電性の磁性膜は渦巻きの中心部に近づくにつれて周方向の磁気抵抗が増すかあるいは放射方向での磁気抵抗が減じるので、放射状の磁気通路の偏向が抑制され、磁気通路の放射状特性が維持される。
【0016】
(4)課題を解決するための請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記第1の磁気発生手段と前記第2の磁気発生手段のうちの少なくとも一方が筒内の軸方向に磁性材料からなる柱部材を有することを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明では、柱部材が集磁作用をして磁束の放射状特性を向上させる。
【0018】
(5)課題を解決するための請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1つの発明において、前記磁性膜が高透磁率金属の薄膜であることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明では、高透磁率金属の薄膜中に磁束が高密度に集中する。
(6)課題を解決するための請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記高透磁率金属がパーマロイであることを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明では、パーマロイの薄膜中に磁束が高密度に集中する。
(7)課題を解決するための請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1つの発明において、前記板部材が高分子材料のフィルムであることを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明では、高分子材料のフィルムであることにより振動板の剛性と重量が小さくなる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
(発明の実施の形態の第1の例)
図1に本発明の全面駆動型スピーカの模式的構成を示す。本スピーカは、本発明の実施の形態の第1の例である。
【0024】
(構成)
本スピーカの構成を説明する。図1に示すように、本スピーカは1対の磁石1,1’を有する。磁石1,1’は本発明における磁気発生手段の実施の形態の一例である。磁石1,1’はベース2の上に取り付けられている。ベース2は例えば軟鉄等の磁性材料の板で構成される。磁石1,1’は互いに逆極性の磁極面をベース2に接触させ、例えば接着等によって取り付けられている。
【0025】
磁石1,1’のベース2に取り付けられた磁極とは反対側の磁極同士が、振動板3によって橋絡されている。橋絡される2つの磁極は互いに逆な極性の磁極となる。振動板3は、図1におけるx方向の両端部の裏面がそれぞれ磁石1,1’の磁極面に例えば接着等によって取り付けられている。磁石1,1’およびベース2は、本発明における支持手段の実施の形態の一例である。
【0026】
振動板3は概ね平板をなしている。ただし、磁石1,1’の磁極面への取り付け部付近で波型をなすように成形されている。これら波型部分は振動板3のいわゆるエッジ部を形成する。
【0027】
振動板3の、図1におけるy方向の両端部に導線4,4’の一端がそれぞれ接続されている。導線4,4’の他端はそれぞれ端子5,5’に接続されている。端子5,5’は、振動板3の磁石1’側の取付部の上部に電気的に絶縁した状態で配設されている。
【0028】
図2に、振動板3の断面を示す。同図に示すように、振動板3は、高透磁性かつ導電性の第1の層31と非磁性かつ非導電性の第2の層32との2層構造を有する。
【0029】
第1の層31は、例えばパーマロイ等の高透磁率の金属磁性材料の薄膜で構成される。第1の層31は、本発明における磁性膜の実施の形態の一例である。高透磁率の金属磁性材料は、本発明における高透磁率金属の実施の形態の一例である。金属磁性材料は、パーマロイに限らず他の高透磁率合金であって良い。金属磁性材料は一般的に導電性を有する。
【0030】
第2の層32は、例えばポリエステル等の高分子材料の板ないしフィルムで構成される。第2の層32は、本発明における板部材の実施の形態の一例である。板部材は、ポリエステルに限らず他の樹脂材料、例えばポリエチレン、ポリイミド等で構成しても良い。
【0031】
第1の層31は、第2の層32をなす板部材の上に例えばメッキやスパッタリング等によって密着して形成される。第1の層31の厚さは例えば数百nm〜数μm程度とされる。第2の層32の厚さは例えば数10μm程度とされる。
【0032】
図1では、このような2層構造の振動板3が、第1の層31を表側とし第2の層32を裏側として磁石1,1’の磁極に取り付けられている。このような構成により、磁石1,1’の磁極間には高透磁性の第1の層31による磁気通路が構成される。
【0033】
これによって、磁石1,1’の磁極間の磁束は、第1の層31に集中して通過する。磁束が薄い層を集中的に通過することにより、第1の層31内の磁束密度が高められ、磁石1,1’としてさほど強力なものを用いなくても、例えば0.8T(テスラ)程度の磁束密度は容易に達成可能である。磁束は振動板の板面に沿ってほぼ均一に分布する。
【0034】
図3に、第1の層31内の磁束密度分布のシミュレーション結果を示す。同図に示すように、振動板8の中心からx方向に±0.0113mの範囲、すなわち、振動板8のx方向の有効長のほぼ全域にわたって0.857〜0.872Tの磁束密度が得られる。
【0035】
導線4,4’は、このような第1の層31に接続されるようになっている。これによって、端子5から導線4、第1の層31および導線4’を経由して端子5’に到る電気通路が構成される。この電気通路は第1の層31では磁気通路と鎖交する。また、電気通路は振動板3の板面に沿ってほぼ均一に分布する。
【0036】
(動作)
本スピーカの動作を説明する。図示しない電流供給手段により、端子5,5’を通じて電気通路に例えば音声電流を流すと、第1の層31内での磁束と電流の相互作用により、振動板3は、磁束および電流の方向と直交する方向すなわち板面に垂直な方向に振動する。このとき、振動板はその全面にほぼ均等に作用する駆動力によってピストン運動を行い、それによって周囲の空気に粗密波を発生する。すなわち、電気信号が音響信号に変換される。
【0037】
振動板3の振動特性は、厚みの大部分を占める第2の層32を構成する板部材の機械的特性によって支配される。第2の層32を構成する例えばポリエステルフィルム等の板部材は、同じ厚さの金属板に比べて剛性および重量が小さい。このため、ピストン運動の振幅が大きくなって音圧レベルを向上させることが可能となる。すなわち、電気音響変換効率が高い全面駆動型スピーカを実現することができる。
【0038】
また、第2の層32を構成する板部材の材質とその厚みを選ぶことにより、振動板3の振動特性を変えることができる。これによって設計の自由度が増し、音質設計等がやり易くなる。
【0039】
以上は、第1の層31を、第2の層の表面を連続的に覆うように設けた例であるが、第1の層31は、例えば図4に示すように、磁束と鎖交する方向の複数の平行な条体311となるように形成し、これら複数の条体311をリード線312により同じ極性で直列に接続するようにしても良い。条体311は、本発明における条体の実施の形態の一例である。このようにすることにより、同一の電流が複数回繰り返して磁束と鎖交するようになるので、電流当たりの能率が良い音響振動を発生させることができる。
【0040】
(発明の実施の形態の第2の例)
図5に本発明の実施の形態の第2の例の模式的構成を示す。図5の(a)は平面図、(b)はA−A断面図である。なお、図5の(b)では一部の図示を省略してある。
【0041】
(構成)
本スピーカの構成を説明する。図5に示すように、本スピーカは磁石1を有する。磁石1は円筒状の形状を有し、その軸方向に磁化されている。磁石1は本発明における磁気発生手段の実施の形態の一例である。
【0042】
円筒形の磁石1を用いることは、一般のスピーカ用の円筒磁石を流用できる点で好ましい。なお、円筒に限らず、それ以外の例えば楕円筒や角筒等適宜の断面形状の筒体をなす磁石であっても良い。また、複数の棒磁石を筒型に並べて実質的に筒体を形成するようにしても良い。
【0043】
磁石1はベース2の上に取り付けられている。ベース2は例えば軟鉄等の磁性材料の板で構成される。磁石1は一方の磁極面をベース2に接触させ、例えば接着等によって取り付けられている。
【0044】
磁石1の他方の磁極に振動板3が取り付けられている。振動板3は円板状の形状を有する。円板状の振動板は指向性と異方性を持たない点で好ましい。なお、磁石1が例えば楕円筒や角筒等である場合は、振動板3は、それら筒体の断面形状に対応した形状とされる。
【0045】
振動板3は、その周部の裏面が磁石1の磁極面に例えば接着等によって取り付けられている。これによって、筒状の磁石1の開口面が振動板3によって閉塞される。
【0046】
振動板3の中心部に導線4の一端が接続されている。振動板3の周部に導線4’の一端が接続されている。導線4,4’の他端は端子5,5’にそれぞれ接続されている。端子5,5’は、振動板3の磁石1への取付部の上部に電気的に絶縁した状態で配設されている。
【0047】
図6に、振動板3の断面を拡大して示す。同図に示すように、振動板3は、高透磁性かつ導電性の第1の層31と非磁性かつ非導電性の第2の層32との2層構造を有する。
【0048】
第1の層31および第2の層32は、それぞれ、図1に示したスピーカにおける振動板3の第1の層31および第2の層32と同様のものである。ただし、第1の層31は、例えばエッチング等により部分的に除去されて、振動板3の中心部から周部にかけて渦巻状のパターンを形成するようになっている。渦巻状のパターンの巻数(ターン数)は例えば数10ターン程度とされる。渦巻状のパターンの隣合うターン間には、第1の層31が存在しないクリアランス33が形成される。
【0049】
このような2層構造の振動板3が、第1の層31を表側とし第2の層32を裏側として、磁石1に取り付けられている。このような構成により、円筒状の磁石1の開口が高透磁性の第1の層31で覆われることになる。このため、磁石1の磁束が第1の層31に集中して通過するようになる。
【0050】
磁石1が円筒状であることにより、その磁束は、第1の層31中を振動板3の面に沿って、振動板3の中心部に関して放射状に通過する。磁束は、振動板3の中心部とベース2の中心部の間では、例えば破線で示すように、軸方向に通過する。
【0051】
このように、第1の層31中には放射状の磁気通路が形成される。磁束が薄い層を集中的に通過することにより、第1の層31中の磁束密度が高められ、磁石1としてさほど強力なものを用いなくても、例えば0.8T(テスラ)程度の磁束密度は容易に達成可能である。
【0052】
第1の層31中に放射状の磁気通路が形成されることは、有限要素法による解析によって確かめることができた。その際、磁気通路は振動板3の中心部に近づくにつれて渦巻状のパターンの周方向に偏向する傾向があることが分かった。このような偏向は磁気通路の放射状特性を弱めるものとなる。
【0053】
それを補正するためには、第1の層31の断面積を渦巻の中心部に近づくにつれて小さくし、または、第1の層31の透磁率を渦巻の中心部に近づくにつれて小さくして、渦巻の周方向の磁気抵抗を増やし、周方向への磁束の偏向度を抑制すれば良い。あるいは、渦巻状のパターンのクリアランス33を渦巻の中心部に近づくにつれて小さくし、放射方向での磁気抵抗を減らすことによって、磁束の放射状特性を改善するようにしても良い。このようにして、第1の層31に放射状の磁気通路の偏向を抑制する性質を付与することができる。
【0054】
導線4,4’は、このような第1の層31に接続される。これによって、端子5から導線4、第1の層31(渦巻状のパターン)および導線4’を経由して端子5’に到る電気通路が構成される。渦巻状の電気通路は放射状の磁気通路と鎖交するものとなる。電気通路が渦巻状になっていることにより、磁束と鎖交する長さが長くなる。
【0055】
(動作)
本スピーカの動作を説明する。図示しない電流供給手段により、端子5,5’を通じて電気通路に例えば音声電流を流すと、第1の層31中での磁束と電流の相互作用により、振動板3は、磁束および電流の方向と直交する方向すなわち板面に垂直な方向に振動する。このとき、振動板3はその全面にほぼ均等に作用する駆動力によってピストン運動を行い、それによって周囲の空気に粗密波を発生する。すなわち、電気信号が音響信号に変換される。
【0056】
その場合、電流が渦巻状に流れることにより、電流が同一の磁束と複数回(数10回)交わり、それぞれ駆動力を発生する。このため電流当たりの音圧発生の能率が高くなる。すなわち、能率の良い全面駆動型スピーカが得られる。
【0057】
振動板3の振動特性は、厚みの大部分を占める第2の層32を構成する板部材の機械的特性によって支配される。第2の層32を構成する例えばポリエステルフィルム等の板部材は、同じ厚さの金属板に比べて剛性および重量が小さい。このため、ピストン運動の振幅が大きくなって音圧レベルを向上させることが可能となる。すなわち、電気音響変換効率が高い全面駆動型スピーカを実現することができる。
【0058】
また、第2の層32を構成する板部材の材質とその厚みを選ぶことにより、振動板3の振動特性を変えることができる。これによって設計の自由度が増し、音質設計等がやり易くなる。
【0059】
(発明の実施の形態の第3の例)
図7に、本発明の実施の形態の第3の例を示す。図7において、図5と同様な部分は同一の符号を付して説明を省略する。この例は、ベース2の中心部に例えば軟鉄等の磁性材料からなる柱部材21を軸方向に設けるようにしたものである。柱部材21は、本発明における柱部材の実施の形態の一例である。柱部材21はベース2と一体的に成形するようにしても良い。
【0060】
柱部材21は、振動板3の中心部とベース2の中心部の間に、透磁性の良い磁気通路を形成して磁束を中心部に集める。これによって、振動板3の磁性膜を通過する磁束の放射方向成分が増強され、より能率の良い電気音響変換が行えるようになる。なお、図7では、柱部材21の先端と振動板3の間に間隙を有する例を示したが、柱部材21の先端を振動板3の中央部に固着するようにしても良い。これによって、振動板3の磁性膜を通過する磁束の放射方向成分が一層増強される。
【0061】
(発明の実施の形態の第4の例)
図8に、本発明の実施の形態の第4の例を示す。図8において、図5と同様な部分は同一の符号を付して説明を省略する。この例は、円筒状の磁石1’を磁石1と対向させて配置するようにしたものである。ここで、磁石1は、本発明における第1の磁気発生手段の実施の形態の一例である。磁石1’は、本発明における第2の磁気発生手段の実施の形態の一例である。磁石1,1’は、同磁極同士が向き合うように振動板3を挟んで対向配置されている。磁石1’は振動板3の磁性膜とは電気的に絶縁されている。
【0062】
磁石1’の他方の磁極には例えば軟鉄等の磁性材料の板で構成されるヨーク2’が取り付けられている。ヨーク2’は、磁石1’の磁束に対するリターンパスとなる。ヨーク2’には複数の抜き穴20が設けられている。抜き穴20は、音響信号の出入口を与える。なお、ヨーク2’は省略することが可能である。これは、音響信号の出入口が広がる点で好ましい。
【0063】
この装置では、磁石1’を追加した分だけ電気音響変換に関わる磁束が増加するので、図5に示した装置よりも感度の良い全面駆動型スピーカを得ることができる。
【0064】
(発明の実施の形態の第5の例)
図9に、本発明の実施の形態の第5の例を示す。図9において、図7および図8と同様な部分は同一の符号を付し説明を省略する。この例は、ベース2およびヨーク2’に例えば軟鉄等の磁性材料からなる柱部材21および21’を設けるようにしたものである。柱部材21,21’はそれぞれベース2およびヨーク2’の中心部に設けられている。柱部材21および21’は、それぞれベース2およびヨーク2’と一体的に成形するようにしても良い。
【0065】
柱部材21,21’がそれぞれ磁束を振動板3の中心部に集める作用をすることにより、図7の場合と同様に、振動板3の磁性膜における磁束の放射方向成分が強められ、対向磁石1,1’の使用との相乗効果で4例の中では最も感度の良い電気音響変換が行える。なお、柱部材21,21’のうちのいずれか一方は省略することが可能である。
【0066】
以上の発明の実施の形態の各例では、磁性膜を板部材の表面に設けるようにしたが、磁性膜は板部材の裏面に設けるようにしても良いのは勿論である。さらには、板部材の両面に設けるようにしても良い。磁性膜を板部材の両面に設けることにより磁石の磁束をさらに有効に利用することができる。
【0067】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1の発明では、磁性膜を被着した板部材を振動板としたので、板部材の材質や厚み等を選ぶことにより音圧特性を変えることができ、それによって、磁束を集中させる振動板を用いながらも電気音響変換効率が高い全面駆動型スピーカを実現することができる。
また、放射状の磁気通路と渦巻状の電気通路をなす磁性膜を被着した板部材を振動板としたので、磁束を集中させる振動板を用いながらも、能率の良い全面駆動型スピーカを実現することができる。
さらに、導電性の磁性膜は渦巻きの中心部に近づくにつれて周方向の磁気抵抗が増すかあるいは放射方向での磁気抵抗が減じるので、磁気通路の放射状特性が維持され、電気音響変換能率が向上する。
【0069】
また、請求項2の発明では、磁気発生手段の筒内に軸方向に磁性体の柱部材を設けるようにしたので、その磁束集中効果により磁気通路の放射状特性が良くなり、電気音響変換能率が向上する。
【0070】
また、請求項3の発明では、互いに対向する2つの磁気発生手段を用いるので、電気音響変換に関わる磁力が増し、電気音響変換能率が向上する。
また、放射状の磁気通路と渦巻状の電気通路をなす磁性膜を被着した板部材を振動板としたので、磁束を集中させる振動板を用いながらも、能率の良い全面駆動型スピーカを実現することができる。
さらに、導電性の磁性膜は渦巻きの中心部に近づくにつれて周方向の磁気抵抗が増すかあるいは放射方向での磁気抵抗が減じるので、磁気通路の放射状特性が維持され、電気音響変換能率が向上する。
また、請求項4の発明では、磁性体の柱部材を2つの磁気発生手段の少なくとも一方に設けるようにしたので、その磁束集中効果により磁気通路の放射状特性が良くなり、電気音響変換能率が向上する。
【0072】
また、請求項5の発明では、高透磁率金属の薄膜中に磁束が高密度に集中し効率の良い全面駆動型スピーカを実現することができる。
また、請求項6の発明では、パーマロイの薄膜中に磁束が高密度に集中し効率の良い全面駆動型スピーカを実現することができる。
【0073】
また、請求項7の発明では、高分子材料のフィルムにより振動板の剛性と重量が低減し変換効率の良い全面駆動型スピーカを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の一例の模式的構成を示す図である。
【図2】 本発明の実施の形態の一例における振動板の断面を示す図である。
【図3】 振動板の第1の層内の磁束密度分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】 本発明の実施の形態の一例における振動板の構成の他の例を示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態の一例の模式的構成を示す図である。
【図6】 本発明の実施の形態の一例における振動板の断面を示す図である。
【図7】 本発明の実施の形態の一例の模式的構成を示す図である。
【図8】 本発明の実施の形態の一例の模式的構成を示す図である。
【図9】 本発明の実施の形態の一例の模式的構成を示す図である。
【図10】 従来例の模式的構成を示す図である。
【符号の説明】
1,1’ 磁石
2 ベース
2’ ヨーク
3 振動板
4,4’ 導線
5,5’ 端子
31 第1の層
32 第2の層
33 クリアランス
21,21’ 柱部材
20 抜き穴
11,11’ マグネット
13 振動板
14,15 磁極
16,17 リード線
Claims (7)
- 少なくとも一端側が開口し開口端が単極性の磁極となる実質的に筒状の磁気発生手段と、
前記磁気発生手段の前記一端側に前記開口を塞ぐように配設された非磁性かつ非導電性の板部材と、
前記板部材に被着され、前記磁気発生手段が発生する磁束を前記板部材の中心に関して放射状に通す磁気通路とこの磁気通路の磁束と鎖交する電流を前記板部材の中心に関して渦巻状に通す電気通路とを構成し、渦巻きの中心部に近づくにつれて周方向の磁気抵抗が増すかあるいは放射方向での磁気抵抗が減じる導電性の磁性膜と、
を具備することを特徴とする全面駆動型スピーカ。 - 前記磁気発生手段が筒内の軸方向に磁性体の柱部材を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の全面駆動型スピーカ。 - 少なくとも一端側が開口し開口端が単極性の磁極となる実質的に筒状の第1の磁気発生手段と、
少なくとも一端側が開口し開口端が前記第1の磁気発生手段の前記磁極と同極性の磁極となり、この磁極が前記第1の磁気発生手段の前記磁極と対向するように前記第1の磁気発生手段に関して相対的に配設された実質的に筒状の第2の磁気発生手段と、
前記第1の磁気発生手段の前記磁極と前記第2の磁気発生手段の前記磁極との間に配設された非磁性かつ非導電性の板部材と、
前記板部材に被着され、前記第1および第2の磁気発生手段が発生する磁束を前記板部材の中心に関して放射状に通す磁気通路とこの磁気通路の磁束と鎖交する電流を前記板部材の中心に関して渦巻状に通す電気通路とを構成し、渦巻きの中心部に近づくにつれて周方向の磁気抵抗が増すかあるいは放射方向での磁気抵抗が減じる導電性の磁性膜と、
を具備することを特徴とする全面駆動型スピーカ。 - 前記第1の磁気発生手段と前記第2の磁気発生手段のうちの少なくとも一方が筒内の軸方向に磁性体の柱部材を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の全面駆動型スピーカ。 - 前記磁性膜が高透磁率金属の薄膜である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の全面駆動型スピーカ。 - 前記高透磁率金属がパーマロイである、
ことを特徴とする請求項5に記載の全面駆動型スピーカ。 - 前記板部材が高分子材料のフィルムである、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の全面駆動型スピーカ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22488597A JP3892540B2 (ja) | 1997-08-21 | 1997-08-21 | 全面駆動型スピーカ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP22488597A JP3892540B2 (ja) | 1997-08-21 | 1997-08-21 | 全面駆動型スピーカ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1169486A JPH1169486A (ja) | 1999-03-09 |
JP3892540B2 true JP3892540B2 (ja) | 2007-03-14 |
Family
ID=16820698
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP22488597A Expired - Fee Related JP3892540B2 (ja) | 1997-08-21 | 1997-08-21 | 全面駆動型スピーカ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3892540B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005252684A (ja) * | 2004-03-04 | 2005-09-15 | Clarion Co Ltd | 平面スピーカー |
JP4699933B2 (ja) * | 2006-04-19 | 2011-06-15 | パイオニア株式会社 | スピーカー装置 |
CN108055628A (zh) * | 2018-01-19 | 2018-05-18 | 东莞市和乐电子有限公司 | 平板覆膜复合膜片扬声器系统 |
-
1997
- 1997-08-21 JP JP22488597A patent/JP3892540B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1169486A (ja) | 1999-03-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CA1045707A (en) | Planar audio transducer | |
JP3192372B2 (ja) | 薄型電磁変換器 | |
US6008714A (en) | Thin-Structured electromagnetic transducer | |
JPS6336794Y2 (ja) | ||
JP2003179994A (ja) | 平面型音響変換装置用ダイヤフラム、及び平面型音響変換装置 | |
JPS59501289A (ja) | 電磁音響変換器 | |
JP2002078079A (ja) | 電気音響変換器 | |
CN113727257A (zh) | 电动激励器、扬声器、电动换能器和输出设备 | |
US20030002696A1 (en) | Electroacoustic transducer with field replaceable diaphragm carrying two interlaced coils, without manipulating any wires | |
JP2002118894A (ja) | 線状加振装置及び該加振装置を備えたスピーカ | |
JP3892540B2 (ja) | 全面駆動型スピーカ | |
JP4625427B2 (ja) | スピーカー | |
JP3842395B2 (ja) | 全面駆動型スピーカ | |
JP2000152378A (ja) | 平面型音響変換装置 | |
JPS6022711Y2 (ja) | 電気―音響相互変換器 | |
CN109451405A (zh) | 一种双振膜等磁式扬声器 | |
JP2785206B2 (ja) | 電気音響変換器 | |
JP2002204495A (ja) | プレーナ型電磁トランスジューサ | |
JP2003102088A (ja) | 平面型音響変換装置 | |
JP3934535B2 (ja) | 電気音響変換装置 | |
JPH0591591A (ja) | 電気音響変換器 | |
JP2002084595A (ja) | スピーカ | |
JP2008187310A (ja) | リボンマイクロホンユニット、及びリボンマイクロホン | |
JP2000201395A (ja) | 平面型音響変換装置 | |
JP3844096B2 (ja) | 振動発生機 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040820 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060801 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060808 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061010 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20061205 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20061207 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101215 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101215 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111215 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111215 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121215 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121215 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131215 Year of fee payment: 7 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees | ||
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |