インバータ洗濯機は撹拌体の回転により撹拌体の近傍では洗濯物の巻き込みが強く、撹拌体より離れるにしたがって弱くなるねじ込みという現象が生じる。洗濯時間を短縮するために停止期間を短縮すると、正転方向から逆転方向に及び逆転方向から正転方向に撹拌体を反転するときにねじ込みによってインバータ手段が回転させようとする回転方向とは逆方向に撹拌体が振られることがある。通電信号形成手段は直流ブラシレスモータの回転位置を示すロータ位置信号に基づいて通電信号を形成するので励磁の誤りによって直流ブラシレスモータが停止したり、直流ブラシレスモータに異常電流が流れたりすることがある。そのため、停止期間をあまり短くすることができず洗濯時間が長いという問題がある。
また、上記従来の洗濯機では停止期間ではインバータ手段のスイッチング手段をすべてオフしているので直流ブラシレスモータが回転に対してフリーの状態となる。したがって、正転及び逆転の回転中から停止期間に入るときに、洗濯物による負荷が大きい場合には急速に回転が減速することになる。このとき、直流ブラシレスモータの回転軸と撹拌体のあそびで衝撃が生じる。この衝撃が騒音の原因になっているという問題がある。
本発明は上記課題を解決するもので、洗濯物のねじ込みによってインバータ手段が回転させようとする回転方向とは逆方向に撹拌体が振られることがあっても励磁を誤ることがないようにしたインバータ洗濯機を提供することを目的とする。また、本発明は停止期間を短縮して洗濯時間を短縮できるインバータ洗濯機を提供することを目的とする。また、本発明は撹拌体と回転軸のあそびで生じる衝撃を和らげて騒音を低減したインバータ洗濯機を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では、外槽の内部に回転可能に設けられた撹拌体と、前記撹拌体をダイレクトにドライブすることが可能な直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータのロータの回転位置を検知してロータ位置信号を出力するロータ位置検知手段と、前記ロータ位置信号に基づいて前記直流ブラシレスモータを駆動するモータ駆動部とを備えたインバータ洗濯機において、モータ駆動部が前記直流ブラシレスモータを回転させようとする回転方向と逆方向に前記直流ブラシレスモータが回転したと前記モータ駆動部が前記ロータ位置信号に基づいて判断したときには前記直流ブラシレスモータの駆動を一旦停止するようにしている。
このような構成によると、モータ駆動部はロータ位置信号によってモータの回転方向を判断することができるので洗濯物のねじ込みによってモータ駆動部が直流ブラシレスモータを回転させようとする回転方向と逆方向に直流ブラシレスモータが回転したときには、インバータ洗濯機は直流ブラシレスモータの駆動を一旦停止し、その後ロータ位置信号に基づいて駆動を再開することによって誤った励磁を回避することができる。
また、本発明では、外槽の内部に回転可能に設けられた撹拌体と、前記撹拌体をダイレクトにドライブすることが可能な直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータのロータの回転位置を検知してロータ位置信号を出力するロータ位置検知手段と、前記ロータ位置信号に基づいて前記直流ブラシレスモータを正転方向と逆転方向に停止期間を挟みながら断続的に繰り返し駆動するモータ駆動部とを備えたインバータ洗濯機において、前記停止期間の直前に前記直流ブラシレスモータの回転数を減速させる減速期間を設け、前記停止期間では前記直流ブラシレスモータの停止状態を保持するためのブレーキをかけるようにしている。
このような構成によると、直流ブラシレスモータが正転方向及び逆転方向に回転しているときに減速期間で回転数が減速されてから停止期間に入るようになっているので停止期間に入ったときのモータの回転軸と撹拌体のあそびによって生じる衝撃を和らげることができる。そのため、モータが駆動されているときの音が小さくなる。さらに、停止期間ではインバータ洗濯機はブレーキをかけることによって停止状態を確実にすることができる。
また、本発明では、外槽の内部に回転可能に設けられた撹拌体と、前記撹拌体をダイレクトにドライブすることが可能な直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータのロータの回転位置を検知してロータ位置信号を出力するロータ位置検知手段と、前記ロータ位置信号に基づいて前記直流ブラシレスモータを正転方向と逆転方向に停止期間を挟みながら断続的に繰り返し駆動するモータ駆動部とを備えたインバータ洗濯機であって、前記停止期間の直前に前記直流ブラシレスモータの回転数を減速させる減速期間を設け、前記停止期間では前記直流ブラシレスモータの停止状態を保持するためのブレーキをかけるようにしているインバータ装置において、前記モータ駆動部は直流の+側に接続されている上アームのスイッチング手段と、前記直流の−側に接続されている下アームのスイッチング手段とから成る3相全波ブリッジ構成のインバータ手段を有し、前記減速期間では徐々に振幅が小さくなる正弦波形の信号を前記直流ブラシレスモータに印加し、前記停止期間では前記上アームのスイッチング手段をオフし、前記下アームのスイッチング手段をオンするようにしている。
このような構成によると、モータ駆動部は振幅を制御した正弦波形の信号を直流ブラシレスモータに印加することによって直流ブラシレスモータを駆動する。減速期間ではモータ制御部が振幅を徐々に小さくすることによって回転数が減少する。そして、停止期間では上アームのスイッチング手段をオフし、下アームのスイッチング手段をオンすることによって直流ブラシレスモータの停止状態を保持するブレーキがかかる。
また、本発明では、外槽の内部に回転可能に設けられた撹拌体と、前記撹拌体をダイレクトにドライブすることが可能な直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータのロータの回転位置を検知してロータ位置信号を出力するロータ位置検知手段と、前記ロータ位置信号に基づいて前記直流ブラシレスモータに正弦波形の信号を印加して前記直流ブラシレスモータを駆動するモータ駆動部とを備えたインバータ洗濯機において、前記直流ブラシレスモータに流れる電流を検出する電流検出手段を設け、その検出電流に基づいて前記モータ駆動部は前記電流が小さくなるように前記直流ブラシレスモータに印加する前記正弦波の信号の位相を調整するようにしている。
このような構成によると、モータ駆動部が直流ブラシレスモータに印加する正弦波形の位相を変えることによって直流ブラシレスモータに流れる電流を変化させることができるので、電流検出手段で直流ブラシレスモータに流れる電流を検出して電流が小さくなるようにモータ駆動部がモータに印加する正弦波の信号の位相を調整する。
また、本発明では、外槽の内部に回転可能に設けられた撹拌体と、前記撹拌体をダイレクトにドライブすることが可能な直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータのロータの回転位置を検知してロータ位置信号を出力するロータ位置検知手段と、前記ロータ位置信号に基づいて前記直流ブラシレスモータを正転方向と逆転方向に停止期間を挟みながら断続的に繰り返し駆動するモータ駆動部とを備えたインバータ洗濯機において、前記直流ブラシレスモータに流れる電流を検出する電流検出手段を設け、前記モータ駆動部が前記直流ブラシレスモータを一定の回転数となるように駆動している時に前記電流の変化量に基づいて該インバータ洗濯機で洗濯される洗濯物の絡みを検出し、前記絡みを検出したときは前記絡みを抑える動作を行うようにしている。
このような構成によると、直流ブラシレスモータを正転方向と逆転方向に停止期間を挟みながら断続的に繰り返し駆動しているときに、電流検出手段で電流の変化量が所定値よりも小さいとき等には洗濯物が団子状に絡んだ状態となっているために撹拌体に負荷がかかりにくくなっていると判断できる。このようにして洗濯物の絡みを検出したときにはインバータ洗濯機は水流を変更する等の洗濯物の絡みを抑える動作をする。
また、本発明では、外槽の内部に回転可能に設けられた撹拌体と、前記撹拌体をダイレクトにドライブすることが可能な直流ブラシレスモータと、前記直流ブラシレスモータのロータの回転位置を検知してロータ位置信号を出力するロータ位置検知手段と、前記ロータ位置信号に基づいて前記直流ブラシレスモータを正転方向と逆転方向に停止期間を挟みながら断続的に繰り返し駆動するモータ駆動部とを備えたインバータ洗濯機において、前記モータ駆動部が前記直流ブラシレスモータを一定の回転数となるように駆動している時に前記ロータ位置信号に基づいて前記直流ブラシレスモータの回転数の変動を取り込んで、前記変動が所定の範囲を超えるときには該インバータ洗濯機で洗濯される洗濯物の絡みを抑える動作を行うようにしている。
このような構成によると、直流ブラシレスモータを正転方向と逆転方向に停止期間を挟みながら断続的に繰り返し駆動しているときに、ロータ位置信号の例えばエッジ間の時間をタイマを使って計ることによって直流ブラシレスモータの回転数を取得することができる。そして、一定速度で回転させるようにモータ駆動部が直流ブラシレスモータを駆動しているときにその回転数の変動が所定の値よりも小さいときには洗濯物が絡んでいると判断し、洗濯物の絡みを抑える動作を行う。
本発明のインバータ洗濯機では、洗濯物のねじ込みによってモータ駆動部が直流ブラシレスモータを回転させようとする方向と逆方向にモータが回転したとしても、そのときにはモータ駆動部は直流ブラシレスモータの駆動を一旦停止するので異常な過電流が生じる等の誤った励磁が行われなくなる。
また、本発明のインバータ洗濯機によると、正転から停止期間に及び逆転から停止期間に入る直前に減速期間を設けて回転数の減速が行われるので停止期間に入ったときにモータの回転軸と撹拌体のあそびに生じる衝撃が小さくなる。これにより、静音性が良くなる。また、停止期間ではブレーキによって停止状態を保持するので停止期間を短縮できる。
また、本発明のインバータ洗濯機によると、モータ駆動部に含まれるインバータ手段が減速期間では直流ブラシレスモータに印加する正弦波形の信号の振幅を徐々に小さくすることによりモータの回転数を縮小させる。これにより、正転から停止、逆転から停止になるときにモータの回転軸と撹拌体のあそびに生じる衝撃が小さくなる。そのため、騒音が小さくなる。また、停止期間ではインバータ手段の上アームのスイッチング手段をすべてオフし、下アームのスイッチング手段をすべてオンすることによってブレーキをかける。そのため、停止状態が確実になっているので停止時間を短縮できる。これによって洗濯時間を短縮できる。
また、本発明のインバータ洗濯機によると、直流ブラシレスモータに流れる電流を電流検出手段で検出できるのでモータ駆動部が直流ブラシレスモータに供給する正弦波の信号の位相を調整することによってモータに流れる電流を小さくするように制御できる。したがって、消費電流を抑えることができる。さらに直流ブラシレスモータを効率良く回転させることができるので直流ブラシレスモータで発生する音も小さくなる。
また、本発明のインバータ洗濯機によると、正転時又は逆転時のように一定回転数となるように制御しているときに、モータに流れる電流に変動が見られない場合には洗濯物が絡んだ状態であるため撹拌体に負荷がかからなくなっていると判断する。洗濯物が絡んだ状態であるときには例えば水流を変えることによって洗濯物の絡みを抑えることができる。
また、本発明のインバータ洗濯機によると、ロータ位置信号に例えばタイマを使用して直流ブラシレスモータの回転数を検出する。一定回転数制御時に回転数に変動が小さく場合には、速度変動が小さいと判断できる。洗濯物が絡んだ状態であるときには例えば水流を変えることによって洗濯物の絡みを抑えることができる。
以下、本発明を適用したインバータ洗濯機の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態のダイレクトドライブ方式のインバータ洗濯機の概略図を図1示す。洗濯機1は一槽式の全自動洗濯機であり、本体の内部に洗濯槽を兼ねた回転槽2及び外槽3を備えている。外槽3はサスペンション部4によって本体に吊持されており、回転槽2は外槽3の内側に回転可能に設置されている。また撹拌体5が回転槽2の底部から一定の距離が開けられて設けられている。本体は洗濯物を出し入れするための蓋6を有する。外槽3の下部には直流ブラシレスモータ7の回転を回転槽2もしくは撹拌体5に切り替える伝達機構8を有する。
本体の上部には、操作部9、表示部10、ブザー11、及び蓋6の開閉を検知する蓋センサ12が備えられており、外槽3の側方には外槽3内の水位を検出する水位センサ13が備えられている。また、操作部9の下部には、洗濯機1の動作全体を制御するための、マイクロコンピュータよりなる主制御部14が設けられ、主制御部14とは別に上面板にモータ7に信号を供給するためのインバータ手段と、このインバータ手段を介してモータ7の回転を制御するためのマイクロコンピュータとから成る副制御部15(モータ駆動部)が設けられている。外槽3内の水量を調節するための給水弁16と排水弁17が設けられている。
インバータ洗濯機1には「洗いモード」と「脱水モード」のモードがある。「洗いモード」のときには伝達機構8によってモータ7の回転が撹拌体5にダイレクトに伝達されて、回転槽2の内部に入れられた洗濯物の洗い又はすすぎが行われる。一方、「脱水モード」のときには伝達機構8によってモータ7の回転が回転槽2にダイレクトに伝達されて、洗濯物の脱水が行われる。本発明は前者の「洗いモード」での動作に関係している。
洗濯機1の動作に関する回路構成の概略を図2に示す。主制御部14は洗い、すすぎ、脱水等の各行程の動作の内容や、行程の実行順序すなわち処理コースを記憶したプログラムを記憶しており、このプログラムに従って給水弁16と排水弁17の開閉、及び伝達機構8におけるモータ7の回転の伝達先の切り替えを制御し、副制御部15を介してモータ7の回転を制御する。
主制御部14はモータ7の回転を制御するために必要な制御データ20を同期用クロック19とともに副制御部15に送信する。また副制御部15は信号20を読み取った後クロック19に同期して信号21を主制御部14に送信する。副制御部15は直流ブラシレスモータ7のロータ回転位置を示すロータ位置信号Hu、Hv、Hwに基づいてモータ7に信号を供給する。
次に、図3を用いて副制御部15の構成を説明する。本実施形態のインバータ洗濯機1ではモータ7として3相20極直流ブラシレスモータを使用している。商用電源30の交流電圧は整流手段31で脈流状の直流に変換される。整流手段31にはダイオードブリッジが使用されている。整流手段31で整流された直流は平滑用のコンデンサ32で平滑される。コンデンサ32で平滑された直流がインバータ手段35に供給される。インバータ手段35は直流を三相交流に変換する。
インバータ手段35は6個のスイッチング手段としてNPN型トランジスタ36a〜36c、37a〜37cを3相全波ブリッジ構成にしたものである。平滑用のコンデンサ32の+側に接続された3個のトランジスタ36a〜36cを上アーム、コンデンサ32の−側に接続された3個のトランジスタ37a〜37cを下アームという。そして、6個のトランジスタ36a〜36c、37a〜37cにはそれぞれ並列にダイオード42a〜42c、42a〜42cが接続されている。上アームのトランジスタ36a〜36cと下アームのトランジスタ37a〜37cの各接続点のa、b、cが直流ブラシレスモータ7の各相(U相、V相、W相)に接続されている。
トランジスタ36a〜36c、37a〜37cのベースはドライブ回路40に接続されており、マイクロコンピュータ41の信号により、トランジスタ36a〜36c、37a〜37cは駆動される。インバータ手段35はトランジスタ36〜36c、37a〜37cをスイッチ動作させることにより各相が正弦波形の3相交流の信号を直流ブラシレスモータ7に印加する。これにより、直流ブラシレスモータ7は回転する。
電流検出手段38は直流ブラシレスモータ7のU相に流れる電流を検出し、検出結果をマイクロコンピュータ41に出力する。ホールセンサ55a、55b、55cはモータ7のロータの回転位置を検知するロータ位置検知手段であり、それぞれのロータホールセンサ55a、55b、55cで得られるロータ位置信号Hu、Hv、Hwをマイクロコンピュータ41に出力する。
次に、モータ駆動信号波形を正弦波としたときの駆動パターンの一例を図4に示す。図4はモータ7を一定の回転数で定常的に駆動するときの信号の波形図である。図4の(d)はU相の上アームのトランジスタ36aと下アームのトランジスタ37aの駆動信号の一例を示しており、マイクロコンピュータ41が図4の(d)のパターンで駆動信号を出力した場合、U相への出力電圧は図4の(e)のように、PWM(Pulse Width Modulation)された波形となり、U相の巻線電流は図4の(f)のような正弦波状となる。このとき、インバータ手段35はV相、W相は図4の(b)のようにU相を基準とした場合、V相が電気角で240゜、W相は120゜ずれた信号を発生し、モータ7を駆動している。
副制御部15のマイクロコンピュータ41から図4の(d)に示す駆動信号を発生させるために、マイクロコンピュータ41は図4の(c)に示す一定周期の三角波60(キャリア)を内部において発生させ、正弦波形の駆動波形データ61と三角波60を比較することによって図4の(d)に示すようなPWM波形を発生するようにしている。U相、V相、W相は2π/3ラジアンずつ位相のずれた波形であるので、U相に着目して説明する。
マイクロコンピュータ41は正弦波データを記憶した正弦波テーブルをデータポインタ(NEW_DATA)をアドレスにて参照して駆動波形データ61を生成している。詳細には次のような処理を行っている。一般に周波数fの正弦波の信号波の時刻tにおける位相角Θは
Θ=2πft(ラジアン)
である。キャリア周期Tcごとの位相更新量ΔΘは
ΔΘ=2πf・Tc(ラジアン)
である。そして、マイクロコンピュータ41は信号波の1周期の2πラジアンを65536で分割したデータポインタ(NEW_DATA)で処理している。このとき、キャリア周期Tcごとの位相更新量の変数(α_DATA)は
α_DATA=2πf・Tc・(65536/2π)
となり、キャリア周期Tc=63.5μsで、周波数f=60Hzの駆動信号を出力するときには
α_DATA=4.161・f=249
となる。キャリア周波数はタイマの分解能とPWMの分解能で決定する。
更新量(α_DATA)が定まるとマイクロコンピュータ41は新しい位相角をデータポインタNEW_DATAとして
NEW_DATA=NEW_DATA+α_DATA
で更新し、0〜2πの位相範囲のどの位置なのかを保持する。
次に位相角(NEW_DATA)に対しての正弦波の振幅値を求める。予め正弦波テーブルデータには2πラジアン分が512バイトとなるようなデータの(1+2/3)×2πラジアン分の854個の基本データが記憶されている。これらの基本データには符号ビットも含まれる。2πラジアン分が512個のテーブルデータなのでNEW_DATAの内容を128で割った数の番地(アドレス)の内容を前記テーブルデータより読み込み、それに変調率βを掛けた値がデータ61として実際の比較バッファに埋め込まれる。そして、マイクロコンピュータ41に内蔵の比較器が図4の(c)に示す正弦波のデータ61と三角バッファに埋め込まれたデータ60を比較して比較結果を出力する。これにより、図4の(d)に示す駆動信号が生成される。
この駆動信号を受けたインバータ手段35より直流ブラシレスモータ7のU相の巻線には図4の(f)に示すような正弦波形の交流電流が流される。V相、W相についても同様にして駆動信号が生成される。これによって、直流ブラシレスモータ7が回転する。3個のホールセンサ55a、55b、55cから出力されるロータ位置信号は図4の(a)に示すようになるように直流ブラシレスモータ7に取り付けられている。また、直流ブラシレスモータ7の各相の誘起電圧は図4の(b)に示すようになる。
次に、「洗いモード」における制御の一例を図5及び図6を用いて説明する。図5は副制御部15が直流ブラシレスモータ7を正転方向に回転させる場合の信号の波形図である。図6は副制御部15が直流ブラシレスモータ7を逆転方向に回転させる場合の信号の波形図である。図5はロータが回転しているときの波形を示しているが、まず直流ブラシレスモータ7を正転方向に起動するときの動作について説明する。
ホールセンサ55a、55b、55cはロータが停止していてもロータ位置を検出することができる。起動するときにまずマイクロコンピュータ41はロータ位置信号Hu、Hv、Hwからロータ位置を確認して起動パターンを決定する。起動パターンはロータ位置信号Hu、Hv、Hwから識別できるもので6種類ある。
例えば信号Huがハイレベル、信号Hvがローレベル、信号Hwがローレベルであるときにはパターン1である。このとき、副制御部15はV相に着目してV相の位相30゜分のデータポインタ(NEW_DATA)にあたる65536×30/360=1555'Hをアドレスにて埋め込みテーブルデータよりデータを取り込む。このとき、運転モードはモードaとし、V相に対してW相は120゜、U相は240゜遅れた位相のデータポインタよりデータを読み込む。このとき、更新量(α_DATA)は実験値より適当な初期値を求めている。また、モータ7の回転数を検出するためのタイマを起動する。
これにより、副制御部15が駆動信号を発生してロータが回転を開始する。ロータの回転によりロータ位置信号Hu、Hv、Hwの切り替わりである信号Hwの立ち上がりエッジ53cが来るが、このときにデータポインタ(NEW_DATA)はロータが遅れることを想定して、データポインタ(NEW_DATA)が1555'H×2=2AAA'Hに達すると信号Hwの立ち上がりエッジ53cを検出するまで更新せず同じデータで待機している。そして、実際に信号Hwの立ち上がりエッジ53cが来た時点でデータポインタ(NEW_DATA)の更新を再開して再度速度検知タイマを一旦リセットする。
さらにロータの回転によって信号Huの立ち下がりエッジ53dが来るが、このとき正弦波モードをモードbに切り替え、U相に着目する。このときにも信号Huの立ち下がりエッジ53dまでV相のデータポインタは2AAA'Hで待機しておく。そして、U相基準(データポインタの初期値が0)で、U相に対してV相は240゜、W相は120゜進んだデータポインタからデータを読み込む。このようにして順次6箇所のエッジ53a〜53fでデータの補正を行う。また、速度検知タイマの値で回転数が得られるのでこれに応じて更新量(α_DATA)を随時速度変化に追従するように変更する。
直流ブラシレスモータ7を逆転方向に回転させる場合にも、図6に示すようにロータ位置信号から識別できる6種類のロータ位置パターン6〜9、a、bで、どの位置なのかを確認してから起動を行う。信号Huがハイレベル、信号Hvがローレベル、信号Hwがハイレベルであるときのパターン6になっているときを例に説明する。このとき、副制御部15はU相に着目してU相の位相30゜分のデータポインタ(NEW_DATA)にあたる1555'Hを埋め込みテーブルデータよりデータを取り込む。このとき、運転モードはモードdとし、U相に対してV相は120゜、W相は240゜進んだデータポインタよりデータを読み込む。このとき、更新量(α_DATA)は実験値より初期値を求めている。また、起動時にモータ7の回転数を検知するためのタイマを起動する。
ロータの回転によりロータ位置信号Hu、Hv、Hwの切り替わりである信号Hwの立ち下がりエッジ63bが来るが、このときにデータポインタ(NEW_DATA)はロータが遅れることを想定して、データポインタ(NEW_DATA)は2AAA'Hから更新せず、同じデータで待機している。そして、実際に信号Hwの立ち上がりエッジ63bが来た時点でデータポインタ(NEW_DATA)の更新を再開して再度速度検知タイマをリセットする。次に信号Hvの立ち上がりエッジ63cがくるが、このとき、動作モードをモードeに切り替え、V相に着目する。V相を基準にU相に120゜、W相に240゜遅れたデータポインタからデータを読み込む。
このように順次6箇所のエッジ63a〜63fでデータの補正する。また、モータ7の速度検知タイマの値により、更新量(α_DATA)を随時速度変化に追従するように変更する。
「洗いモード」ではインバータ洗濯機1は撹拌体5を図7に示すように、正転70と逆転71を停止72の期間を挟みながら断続的に繰り返す制御をしている。正転70に制御しているときには図5に示すようにロータ位置信号Hu、Hv、Hwから判断されるロータ位置パターンは通常0→1→2→3→4→5→0の順番に推移していくが、洗濯物のねじ込みによって撹拌体5が逆方向に振られて例えばパターン2の次にパターン1のロータ位置信号Hu、Hv、Hwが入ってくることがある。
このように副制御部15がブラシレスモータ7を回転させようとする方向と逆方向に撹拌体5が振られたために逆パターンとなるロータ位置信号Hu、Hv、Hwが入ってきた場合には、副制御部15はロータ位置信号Hu、Hv、Hwに基づいてモータ7に供給する信号を生成しているために励磁を誤ってしまい、モータ7が停止したり、モータ7に異常な過電流が流れたりする。そのため、逆パターンを副制御部15が検知したときには、副制御部15は一旦モータ7への信号供給を停止してロータ位置信号Hu、Hv、Hwを再度読み込み、変調率βは逆パターンが入ってきた時点のままで正弦波形の信号を発生させる。
逆転71のときにも図6に示すようにロータ位置パターン8からパターン7になる等の逆パターンのロータ位置信号Hu、Hv、Hwが入ってきた場合にも、副制御部15は一旦モータ7への信号供給を停止してロータ位置信号Hu、Hv、Hwを再度読み込み、変調率βは逆パターンが入ってきた時点のままにして正弦波の信号を発生させる。
次に、図7において、正転70から停止72に及び逆転71から停止72の期間にするときのモータ7の回転数の制御について説明する。「洗いモード」では図8に示すように、インバータ洗濯機1は正転70の期間中において停止71の期間に入る直前に直流ブラシレスモータ7の回転数を減速させる数msの減速期間80を設け、モータ7の回転数を減速させてから停止期間71に入るようにしている。回転数の減速は副制御部15が変調率βを徐々に下げていくことにより行われる。これにより、モータ7に印加される正弦波の信号の振幅が小さくなり、回転数が下がる。
そして、副制御部15は停止72の期間では停止状態を保持するためのブレーキをかける。ブレーキは図3に示すインバータ手段35の上アームのトランジスタ36a〜36cをすべてオフし、下アームのトランジスタ37a〜37cをすべてオンすることによってかけられる。
減速期間80でモータ7の回転数が減速されているので停止71の期間に入ったときにモータ7の回転軸と撹拌体のあそびによって生じる衝撃が和らげられる。そのため、衝撃にともなう騒音が低減される。また、停止71の期間ではブレーキがかけられているので、モータ7がフリーの状態にならず停止期間71を短縮してもモータ7を逆転71に再起動したときに逆パターンが生じにくくなっている。逆転71の期間中においても図示していないが、図8に示す場合と同様に、停止71の期間の直前に減速期間80を設け、変調率βを徐々に下げることにより回転数を減少させている。
したがって、本実施形態のインバータ洗濯機1では、停止71の期間を短縮しても停止期間71でブレーキをかけているので再起動時に逆パターンが発生しにくいようになっている。さらに、たとえ洗濯物のねじ込みによって逆パターンが発生したとしても過電流等の誤った励磁を行わないようになっているので停止71の期間を短く設定しても問題なくインバータ洗濯機1は動作するようになっている。このように停止期間72を短くすることによって洗濯時間の短縮を図ることができる。
副制御部15は直流ブラシレスモータ7に印加する正弦波の信号の位相を変化させることによってモータ7に流れる電流を変化させることができる。モータ7に流れる電流は負荷の状態等によって変動するので、電流検出手段38でモータ7に流れる電流を検出して、マイクロコンピュータ41は電流が小さくなるようにモータ7に印加する正弦波の位相を調整する。これにより、消費電流が減少する。また、モータ7を効率良く回転させることができるので騒音も小さくなる。
また、洗濯物の量が多いときには洗濯物が「洗いモード」中に団子状にかたまり、絡んだ状態となる場合がある。このような洗濯物が絡んだ状態になると、撹拌体5の回転によっても洗濯物に負荷がかからず洗濯が十分に行われなくなる。そのため、洗濯機1は洗濯物が絡んだか否かを判断して洗濯物が絡んだ状態となったときにはその絡みを抑えるように動作する必要がある。
洗濯物が絡んだか否かを判断するために、上記従来の洗濯機では、停止72の期間は撹拌体5がフリー状態になることを利用して、この期間中に惰性による回転で生じるロータ位置信号Hu、Hv、Hwの切り替わりエッジ数を数えていたが、本実施形態のように停止71の期間では洗濯機1はブレーキをかけているのでエッジ数を数えることでは洗濯物が絡んだか否かを正確に判断することができない。
そのため、洗濯物が絡んだか否かを判断する第1の手段として、図7に示す「洗いモード」において、正転70と逆転71の目標回転数に達して副制御部15が一定回転数になるように制御しているときに電流検出手段38よりモータ7に流れる電流を検出し判断する。洗濯物が絡んだときには撹拌体5に負荷がかかりにくくなっているために電流の変化量が小さくなるのでマイクロコンピュータ41は電流の変化量が小さいときには洗濯物が絡んでいると判断する。例えば、正転70又は逆転71の一定回転数に制御している期間中の電流の最大値と最小値の差がある一定の値より小さい場合に洗濯物が絡んでいると判断する。洗濯物が絡んでいると判断したとき、インバータ洗濯機1は水流のオン時間や水流の強さを変更して洗濯物の絡みを抑える動作をする。
また、洗濯物が絡んだか否かを判断する第2の手段として、正転70又は逆転71の目標回転数に達して一定回転数に制御しているときに、モータ7の回転数の変動を取り込み判断する。洗濯物が絡んだときには撹拌体5に負荷がかかりにくくなっているためにトルク変動が小さいので回転数の変動が小さくなる。そのため、例えば100rpmで制御しているときにモータ7の回転数が98〜102rpmの範囲内で安定しているときには洗濯物は絡んだ状態であると判断し、水流のオン時間や水流の強さを変えて洗濯物の絡みを抑えるような動作を行う。インバータ洗濯機1はロータ位置信号Hu、Hv、Hwのエッジ間の時間をタイマで計ることによって回転数を検出することができる。