JP3891930B2 - 吸収性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸収性物品に関わり、特に、高い透湿性を備つつ、外部から排尿の有無を識別することができる吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
使い捨ておむつ等の吸収性物品の裏面シートには、ポリオレフィン系樹脂からなる液不透過性で且つ水蒸気透過性の透湿シートが種々用いられている。この種の透湿シートは、ポリオレフィン樹脂と無機充填剤とを主とした組成物からなるシートを一軸又は二軸方向に延伸することで、シートに連通孔が形成され、透湿性が発現される。この透湿シートは、多数の微多孔を有しているため白色を呈し、その透明性は低いものとなっている。このシートをそのまま使い捨ておむつの裏面シートとして使用した場合、おむつ着用者が尿をしても、尿が外部から見えにくく、おむつの取り替え時期が判りにくいことがあった。
【0003】
近年、このような排尿の有無を外部から識別できるように、裏面シートに光線透過率が30〜70%の通気性不透液性のプラスチックフィルムを用い、この裏面シートと吸収体との間に親水性基材を配し、この親水性基材の片面に濡れると顕在化するインク層とこのインク層に密着するインク被覆層を備えている使い捨ておむつが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。この使い捨ておむつは、前記親水性基材が吸収体と裏面シートとの間に配されているため、その識別は裏面シート及び親水性基材越しに行うこととなる。従って、その視認性の点からも、透明性が高く、透湿性も高い裏面シートが求められている。一般に、この裏面シートの透明性を高めようとすると透湿性が低下してしまい、逆に透湿性を高めようとすると透明性が低下してしまうことが知られている。つまり、裏面シートにおいて、透湿度を高めることと、透明性を高めることとは二律背反の関係にある。
【0004】
一方、メルトフローレートが0.1〜20g/10minのポリエチレンと、メルトフローレートが0.01〜5g/10minの分岐状低密度ポリエチレンとの混合樹脂を含む透湿シートが知られている(下記特許文献2参照。)。この透湿シートは、全光線透過率が50%以上で、透湿度が1300〜5000g/(m2・24h)であるとされている。しかし、特許文献2に記載の実施例においては、実際に製造された透湿シートの透湿度は前記範囲の中でも低い値である1800〜3300となっている。この範囲の透湿度の透湿シートを例えば使い捨ておむつの裏面シートに用いると、その低透湿度に起因して、おむつ着用中に着装内の湿度が高くなり、着用者の肌がかぶれ易くなってしまう。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−153504号公報
【特許文献2】
特開平11−240971号公報
【0006】
従って、本発明は、高い透湿度を維持しつつ排尿の有無を外部から容易に識別させることができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の透湿率及び特定の全光線透過率を有する裏面シートと吸収体との間に排尿の有無を識別させる識別手段を設けることで、前記目的を達成し得る吸収性物品が得られることを知見した。
【0008】
本発明は前記知見に基づきなされたものであり、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シートおよび両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を備えた吸収性物品において、前記裏面シートと前記吸収体との間に排尿の有無を視認させる識別手段を有しており、前記裏面シートが、透湿シートの一面に繊維シートが貼り合わされてなる複合シートであって、全光線透過率が45%以上で且つ透湿度が3600〜8400g/(m2・24h)であり、前記透湿シートは、ポリオレフイン系樹脂100重量部に対して無機充填剤100〜300重量部を含むポリオレフイン系樹脂組成物からなり、少なくとも一軸延伸されており、坪量が10〜50g/m 2 であって、前記ポリオレフイン系樹脂は、メルトフローレートが1〜5g/10minで且つ密度が0.920〜0.935g/cm 3 である線状低密度ポリエチレン80〜99重量%およびメルトフローレートが6〜15g/10minで且つ密度が0.910〜0.930g/cm 3 である分岐状低密度ポリエチレン1〜20重量%を含むことを特徴とする吸収性物品を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1及び図2は、本発明の吸収性物品を、止着用のテープを備えたいわゆるテープ型の使い捨ておむつ(以下、単におむつともいう)に適用した一実施形態を示すものである。図1及び図2において、符号1は、おむつを示している。
図2に示すように、おむつ1は、液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3および両シート間に介在配置された液保持性の吸収体4を備え、前記裏面シート3と前記吸収体4との間に排尿の有無を識別させる識別手段5を有している。前記裏面シート3は、透湿シート30の一面に繊維シート31が貼り合わされてなる複合シートで構成されている。なお、図2では、便宜上識別手段5を手前に示している。
【0011】
前記透湿シート30は、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物を原料とするものである。本発明においては、ポリオレフィン系樹脂として、特定の線状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEともいう)と、特定の分岐状低密度ポリエチレン(以下、LDPEともいう)とを併用することが特徴の一つとなっている。かかるポリオレフィン系樹脂を用いて透湿シートを製造すると、意外にも該透湿シートは透湿性が高く、しかも透明性も高いことが本発明者らの検討によって判明した。
【0012】
LLDPEとしては、メルトフローレート(以下、MFRともいう)が1〜5g/10min、好ましくは2〜5g/10min、更に好ましくは2.5〜4.5g/10minのものが用いられる。このMFRの範囲は、従来透湿シートの原料に用いられてきたポリオレフィン系樹脂のMFRよりも高いものである。このような高MFRのLLDPEを用いることによって、流動性が高まり、成形性が良好となる。また、得られる透湿シートの透湿性が高くなる。詳細にはMFRが1g/10min未満では、流動性が低く、シート成形が困難となってしまう。5g/10min超では、延伸開孔時に孔が開きやすくなり、防漏性に問題が出るような穴開きが多発してしまう。MFRはASTM D−1238−57T(E)に規定される方法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件下に測定される。
【0013】
またLLDPEは、その密度が0.920〜0.935g/cm3、好ましくは0.920〜0.930g/cm3である。この範囲の密度を有するLLDPEを用いることで、透湿性が充分に高く、縦裂強度やCD破断強度等の強度が高く、柔軟性が高く、ホットメルト塗工に対する耐熱性が高く、外観上シートの延伸ムラも少ない透湿シートが得られる。詳細には密度が0.920g/cm3未満では、透湿性が低くなり、耐熱性も低い透湿シートとなってしまう。0.935g/cm3超では、柔軟性が低く、外観上シートの延伸ムラが多く、見栄えの悪い透湿シートとなってしまう。密度はJIS K 7112のD法(密度勾配管による測定法)に基づき測定される。
【0014】
LLDPEは、メタロセン触媒を用いて製造されたものであることが好ましい。これによって、成形性とシート物性、特に透湿性と強度と柔軟性とがバランスした透湿シートが得られる。この場合LLDPEは、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0015】
LLDPEとしては市販のものを用いることもできる。そのようなLLDPEとしては例えば宇部興産(株)製のUMERIT 2540FやUMERIT 2525F、日本ポリオレフィン(株)製のハーモレックスNC479Aなどが挙げられる。
【0016】
前記透湿シート30に用いられるポリオレフィン系樹脂のもう一方の成分であるLDPEとしては、MFRが6〜15g/10min、好ましくは7〜12g/10minのものが用いられる。このMFRの範囲は、従来透湿シートの原料に用いられてきたポリオレフィン系樹脂のMFRよりも高いものである。このような高MFRのLDPEを用いることによって、流動性が向上し、成形性が良好となる。また、シートの物性上も高い透湿性が得られる。詳細にはMFRが6g/10min未満では成形性が悪くなり、幅方向の厚みムラも多く、外観上見栄えの悪いシートとなり、更には透湿性も低いものとなってしまう。15g/10min超では延伸開孔時に孔が開きやすくなり、防漏性に問題が出るような穴開きが多発してしまう。
【0017】
またLDPEは、その密度が0.910〜0.930g/cm3、好ましくは0.910〜0.925g/cm3、更に好ましくは0.915〜0.925g/cm3である。この範囲の密度を有するLDPEを用いることで、透湿性が充分に高く、縦裂強度やCD破断強度等の強度が高く、柔軟性が高く、ホットメルト塗工に対する耐熱性が高く、外観上シートの延伸ムラも少ない透湿シートが得られることとなる。詳細には密度が0.910g/cm3未満では透湿性が低くなり、耐熱性も低い透湿シートとなってしまう。0.930g/cm3超では柔軟性が低く、外観上シートの延伸ムラが多く、見栄えの悪い透湿シートとなってしまう。
【0018】
LDPEとしては市販のものを用いることもできる。そのようなLDPEとしては例えば宇部興産(株)製のJ1019及び日本ポリオレフィン(株)製のJH606Nなどが挙げられる。
【0019】
本発明においては、LLDPEとLDPEとの配合比率も重要である。具体的には、ポリオレフィン系樹脂におけるLLDPEの配合量は80〜99重量%、好ましくは85〜99重量%、更に好ましくは85〜95重量%である。一方、ポリオレフィン系樹脂におけるLDPEの配合量は1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは5〜15重量%である。各樹脂の配合量がこのような範囲内であることによって、シートの成形性が良好で、幅方向及び流れ方向の厚みムラが少なく、外観上見栄えの良好なシートが得られる。また、透湿性と強度、柔軟性のバランスが優れた透湿シートとなる。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂と共に用いられる無機充填剤は、前記透湿シートを多孔質にして透湿性を付与するために用いられるものである。無機充填剤としては例えば、炭酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、カーボンブラック、アルミニウム粉、鉄粉などの粉粒体が挙げられる。これらは一種又は二種以上を併用できる。得られる透湿シートの強度確保や製造時のシート破れの防止の点から、これらの無機充填剤はその平均粒径が0.3〜8μmで最大粒径が20μm以下であることが好ましく、平均粒径が0.5〜5μmで最大粒径が15μm以下であることが更に好ましい。
【0021】
前述した各種無機充填剤のうち、炭酸カルシウムや硫酸バリウムを用いることが好ましく、特に炭酸カルシウムを用いることが好ましい。炭酸カルシウムを用いる場合、その比表面積が16000〜24000cm2/g、特に18000〜22000cm2/gであるものを用いることが、透湿性が高く耐水性も高いシート、即ち、緻密な孔が多数開いていて液がにじみにくく、且つ十分な強度のシートが得られること点から好ましい。
【0022】
無機充填剤は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して100〜300重量部、好ましくは100〜200重量部、更に好ましくは120〜200重量部用いられる。無機充填剤の量が100重量部未満であると得られるシートの透湿性が不十分となってしまい、300重量部超であるとシートの耐水性が低下し、液がにじみやすくなり、更には、強度が低下し、また、成形性も悪くなってしまう。
【0023】
前記透湿シートで用いられるポリオレフィン系樹脂組成物においては、前述したポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤に加えて、しなやかな風合い、鳴りの減少、滑り性を与え、延伸性を向上させるために、第三成分を添加することができる。前記第三成分としては、通常ゴムやプラスチックに混合される可塑剤や滑剤を使用することができ、例えば、脂肪酸と脂肪族アルコールからなるモノエステル、芳香族カルボン酸と脂肪族アルコールとからなるモノエステル又はポリエステル、脂肪族ポリカルボン酸とポリアルコールとからなるポリエステル、モノカルボン酸及び/又はポリカルボン酸とモノアルコール及び/又はポリアルコールとからなるポリエステル、アルコール及び/又はカルボン酸の一部を残したエステル又はポリエステル、脂肪族アミド、芳香族アミド、脂肪酸の金属石鹸、芳香族カルボン酸の金属石鹸、ブタジエンオリゴマー、ブテンオリゴマー、イソブチレンオリゴマー、イソプレンオリゴマー、石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、塩素化パラフィン、ヒマシ油、シリコーン油、流動パラフィン、ポリエチレンワックス等が挙げられる。その中でも特に、第三成分として特定のポリエステルを配合することが好ましい。このポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステルである。このポリエステルを配合することで、得られる透湿シートはしなやかな風合いで、鳴りが少なく、滑り性が良好となる。また、延伸性が良好となるため、均一にムラなく白化し、外観上見栄えの良いものとなる。このポリエステルを構成する各成分の組み合わせは、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤との親和性のバランスから、ポリエステル一定重量中のエステル基数及び炭化水素鎖の分岐度を考慮して選択される。
【0024】
前記ポリエステルにおける一塩基酸としては、炭素数14〜22の長鎖炭化水素のモノカルボン酸等が用いられる。多塩基酸としてはジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等が用いられる。一価アルコールとしては炭素数12〜22の長鎖炭化水素のモノアルコール等が用いられる。多価アルコールとしてはジオール類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等が用いられる。一塩基酸の炭素数が12以下、又は一価アルコールの炭素数が10以下の場合、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤への親和性のバランスがずれ、フィルム成形時にポリエステルが部分的に集中して延伸時にむらが生じたり、タテ裂け強度が低下することがある。
【0025】
前記ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られるポリエステルであり、末端がカルボン酸の場合、その大部分がステアリルアルコール、オレイルアルコール、ゲルベアルコール等の長鎖炭化水素のモノアルコールでエステル化されていることが好ましい。末端がアルコールの場合、その大部分がステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の長鎖炭化水素のモノカルボン酸でエステル化された末端封鎖ポリエステルであることが好ましい。しかし、これらの場合でも全ての末端が封鎖されている必要はない。エステル構成成分として分岐の酸又はアルコールを含んだエステルは更に好ましい。
【0026】
好ましい具体的なポリエステルの例は、ジエチレングリコールとダイマー酸とのポリエステルの両末端のカルボン酸又はアルコールをステアリルアルコール又はステアリン酸で部分的に又は全部を封鎖したポリエステル、1,3−ブタンジオールとアジピン酸とのポリエステルの両末端をヒドロキシステアリン酸で封鎖したポリエステル、トリメチロールプロパン−アジピン酸−ステアリン酸からなるヘキサエステル、ペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアリン酸からなるオクタエステル、ジペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアリン酸からなるドデカエステル、前記ポリエステルの構成成分であるアジピン酸の代わりにダイマー酸又は水添ダイマー酸を用いたポリエステル、及びステアリン酸の代わりにイソステアリン酸を用いたポリエステル等である。
【0027】
前記ポリエステルは、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1〜30重量部、特に5〜20重量部配合されることが、しなやかな風合い、鳴りの減少、滑り性、延伸性の向上の点から好ましい。
【0028】
前記透湿シート30で用いられるポリオレフィン系樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂組成物中での分散性を良くすることを目的として、ステアリン酸を配合することもできる。ステアリン酸は、無機充填剤100重量部に対して0.5〜3重量部、特に0.8〜2重量部配合されることが好ましい。
【0029】
前記透湿シート30で用いられるポリオレフィン系樹脂組成物には、前述した各成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを配合してもよい。
【0030】
前記透湿シート30は、前述したポリオレフィン系樹脂組成物を原料とし、これを溶融成膜したのち少なくとも一軸延伸して得られる。前記透湿シートはその坪量が10〜50g/m2であり、好ましくは10〜35g/m2、更に好ましくは15〜30g/m2である。坪量が10g/m2未満ではシートの強度が低下し、搬送性が問題となったり、また、穴あきによる耐水性の低下が問題となってしまう。50g/m2超では柔軟性が低下したり、透湿性が低下したシートとなってしまう。
【0031】
前記透湿シート30に貼り合わされる前記繊維シート31は、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が80%未満であると、複合シートの全光線透過率を低下させてしまい、排尿の有無の識別が困難となる場合がある。本明細書において全光線透過率は、JIS K 7105に準じ、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズ・透過・反射率計HR−100を用いて測定される。透湿度はJIS Z 0208に準じ、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHの環境下で測定される。
【0032】
前記繊維シート31には、前記全光線透過率が得られる坪量及び厚さの不織布を用いることが好ましい。該不織布は、識別が鮮明に透けて見え且つ風合い及び肌触りを損なわないようにする観点からその坪量が5〜50g/m2、特に5〜20g/m2であることが好ましい。
【0033】
前記繊維シート31に用いられる不織布としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂単独からなる繊維や、これらの樹脂の二種以上を用いてなる芯鞘型やサイドバイサイド型の構造を有する複合繊維から構成される不織布が挙げられる。不織布はエアースルー法、メルトブローン法、ヒートシール法、スパンボンド法、サクションヒートボンド法等の一般的な製法によって製造されたものを用いることが好ましい。
【0034】
前記繊維シート31に用いられる不織布は、その地色が白色であるか、又は非常に淡い色であることが好ましいが、本発明の効果及び吸収性物品の外観を損なわない範囲で着色することもできる。
【0035】
前記裏面シート3は、前記透湿シート30が前述したポリオレフィン系樹脂組成物を原料としていることから、前記繊維シート31を貼り合わせた状態においても、その全光線透過率が45%以上という高い値となる。このような高い全光線透過率を示すにもかかわらず、前記裏面シート3はその透湿度が3600〜8400g/(m2・24h)という高い値となり、好ましくは4000〜8400g/(m2・24h)、更に好ましくは5000〜8400g/(m2・24h)となる。このように裏面シート3は、従来同時に達成し得なかった高全光線透過率及び高透湿度を有するものである。なお、これまでの経験により、裏面シートの透湿度が2000g/(m2・24h)以下であるとおむつかぶれが頻発し、3500g/(m2・24h)以下であると稀に発生し、3500g/(m2・24h)を超えるとほとんど発生しないことが判っている。
【0036】
前記裏面シート3の坪量は、前記透湿シート30の一面に前記繊維シート31が貼り合わされた複合シートの形態においては、好ましくは15〜100g/m2であり、更に好ましくは15〜50g/m2である。
【0037】
前記表面シート2及び吸収体4には、従来からこの種のおむつに用いられている通常のものを特に制限無く用いることができる。本実施形態では、吸収体4は、吸水性ポリマー、解繊パルプ等の混合物を主体として構成されている。また、本実施形態のおむつ1では、表面シート2と裏面シート3の間には、ゴム等の弾性部材32、33が配されており、おむつ1のウェスト部34やレッグ部35に伸縮性のギャザが形成されるようになっている。また、おむつ1は、止着用のテープ6を備えている。テープ6は、従来からこの種のおむつに用いられている通常のものを特に制限無く用いることができる。
【0038】
前記識別手段5は、例えば、前記裏面シート(透湿シート)3の肌当接面側(前記吸収体側)の面に非水溶性インクで文字、記号又は絵柄(以下、絵柄等という。)が印刷された非水溶性印刷部及び水溶性インクで絵柄等が印刷された水溶性印刷部で構成することができる。
【0039】
前記非水溶性印刷部と前記水溶性印刷部は、それぞれ独立して設けることもでき、非水溶性印刷部の一部又は全部を被覆するように水溶性印刷部を設けることもでき、これらを組み合わせて設けることもできる。非水溶性印刷部と水溶性印刷部の絵柄等は、同じ絵柄等とすることもでき、異なる絵柄等とすることもできる。特に、非水溶性印刷部に水溶性印刷部を被覆して印刷することで、印刷面積を狭くすることができ、その分透湿シートの透湿性を損なうことがない。
【0040】
前記非水溶性印刷部に用いられる前記非水溶性インクとしては、ニトロセルロース系インク、ポリアミド系インク、アクリル系インク、染料型インク等が挙げられる。
【0041】
前記水溶性印刷部に用いられる前記水溶性インクとしては、マレイン酸樹脂系インク、アクリル系水性インク等が挙げられる。
【0042】
次に、前記おむつ1の製造方法を図3〜図5に基づいて説明する。なお、図3〜図5は、それぞれおむつ1の製造工程の一部分を模式的に示したものである。
【0043】
<透湿シートの製造>
先ず、前記ポリオレフィン系樹脂組成物を構成する各成分を、ヘンシェルミキサやスーパーミキサを用いて予備混合した後、一軸又は二軸押出機で混練してペレット化し、図3に示すように、得られたペレットを用い成形機7によって成膜してフィルムを得る。成形機としてはTダイ型及びインフレーション型のものを用いることができる。特に、Tダイ型の成形機を用いると、高全光線透過率及び高透湿度の透湿シートを容易に成膜できることが本発明者らの検討によって判明した。
【0044】
次に、得られたフィルムを延伸機8で一軸又は二軸延伸して、樹脂と無機充填剤との界面剥離を生じさせ多孔質化する。延伸にはロール法やテンター法が用いられる。望ましい全光線透過率及び透湿度の透湿シートを得るためには、延伸条件として、一軸方向に少なくとも1.2倍、特に1.5〜4倍、とりわけ1.5〜3.5倍延伸することが好ましい。
【0045】
次に、延伸処理を施した透湿シート30を連続的に供給し、前記非水溶性インク及び前記水溶性インクを用い、印刷装置9で当該フィルムの肌当接面側に前記絵柄等を印刷して前記非水溶性印刷部及び前記水溶性印刷部を設ける。
【0046】
本実施形態では、透湿シート30の肌当接面側に印刷を施すため、印刷する絵柄等は反転印刷とする。ここで、印刷方式には、従来からこの種の印刷に用いられている通常の印刷方法を用いることができる。該印刷方法に特に制限はないが、例えば、フレキソ印刷方式、グラビア印刷方式、インクジェット方式、スクリーン印刷方式、バブルジェット(登録商標)方式等の印刷方法が挙げられる。そして、水溶性インクと非水溶性インクとを1回の印刷工程で実施できる点からフレキソ又はグラビアの多色印刷装置を用いることが好ましい。このようにして被水溶性印刷部及び水溶性印刷部が設けられた透湿シート30を、ワインダーによりロール状に巻き取る。
【0047】
<複合シートの製造>
図4に示すように、先ず、前記非水溶性印刷部及び水溶性印刷部を定着させた透湿シート30を、そのロール300から巻き出し、その一面上にホットメルト塗布装置10によってホットメルトを塗布する。次いで、前記繊維シート31のロール310から該繊維シート31を巻き出し、透湿シート30の塗布面上に貼り合わせて前記裏面シート3(図2参照)に用いる複合シート3’を作製する。そして、複合シート3’を一対のニップロール11間に挿通させ、透湿シート30と繊維シート31との接着を確実にする。このようにして得られた複合シート3’をワインダーによりロール状に巻き取る。
【0048】
<おむつの製造>
先ず、図5に示すように、前記おむつ1の裏面シート3として用いる前記複合シート3’を、そのロール300’から連続的に巻き出し、ホットメルト塗布装置12によってホットメルトを塗布した後、吸収体4を連続的又は間欠的に供給する供給ラインに合流させる。なお、吸収体4の製造工程には、この種のおむつにおける通常の吸収体の製造工程を用いることができる。
【0049】
次に、前記表面シート2をそのロール20から巻き出し、ホットメルト塗布装置13によってホットメルトを塗布した後、吸収体4の上方より連続的又は間欠的に供給してこられを合流させて位置決めする。そして、前記ゴム32、33及びテープ6(図2参照)を配し、表面シート2及び裏面シート3を接合する。その後、カッティング工程に移送して所望の寸法・形状にカッティングする。なお、表面シート2の吸収体4上への配置工程、前記ゴム32、33の配置工程、カッティング工程には、この種の吸収性物品の製造方法に用いられる通常の工程を用いることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のおむつ1は、裏面シート3を構成する透湿シート30に所定の全光線透過率及び透湿度を有するものを用いたので、高い透湿度を維持しつつ排尿の有無を外部から容易に識別させることができる。
【0051】
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0052】
また、本発明は、前記実施形態におけるように、透湿シートの肌当接面側に非水溶性印刷部及び水溶性印刷部を設けた識別手段を有していることが好ましいが、非水溶性印刷部を非肌当接面側のみ又は非肌当接面及び肌当接面に設けるとともに、水溶性印刷部を肌当接面側に設けることもできる。
【0053】
また、本発明は、前記実施形態のようなテープ型のおむつ以外に、パンツ型の使い捨ておむつにも適用することができる。また、液透過性の表面シートと吸収体とが実質的に一体的に形成されて液保持性の吸収体が構成された吸収性層を備えた生理用ナプキン等の他の吸収性物品にも適用することができる。
【0054】
【実施例】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0055】
〔実施例1〜6及び比較例1〜4〕
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の調製
以下の表1に示す材料を表2に示す組成で配合し、100リットルのヘンシェルミキサで予備混合し、次いで二軸押出機で溶融混練してペレット化した樹脂組成物を得た。二軸押出機は池貝製のPCM−45−33.5であり、スクリュー径は45mmであった。設定温度は160℃とし、スクリュー回転数は150rpm、押出量は25kg/hとした。
【0056】
(2)透湿シートの成形
径50mmの単軸押出機(L/D=28)と、幅500mmのTダイス(ダイリップクリアランス1.5mm)とからなるTダイフィルム成形装置を用い、前記で得られたポリオレフィン系樹脂組成物を成形し、厚み35μm、幅400mmのフィルムを得た。Tダイスの設定温度は200℃とし、成形速度は10m/minとした。得られたフィルムを、ロール一軸延伸機を用いて縦方向に延伸し、透湿シートを得た。延伸倍率は表2に示す通りとした。予熱温度は80℃とし、延伸温度は50℃、アニール温度は80℃とした。またアニールでの戻し率は13%とした。但し、比較例2及び3については、フィルムの成形を以下の装置及び条件を用いて行った。
径50mmの単軸押出機(L/D=28)と、径100mmのサーキュラーダイス(ダイリップクリアランス1.0mm)とからなるインフレーションフィルム成形装置を用い、前記で得られたポリオレフィン系樹脂組成物を成形し、厚み35μm、折り幅390mmのフィルムを得た。サーキュラーダイスの設定温度は160℃とし、ブロー比は2.5、成形速度は8m/minとした。
【0057】
(3)識別手段の作製
得られた透湿シートの肌当接面側の表面に、フレキソ印刷機を用いて非水溶性印刷部と、該非水溶性印刷部を部分的に被覆する絵柄の水溶性印刷部とを印刷した。
【0058】
(4)裏面シートの製造
前記(2)で得られた透湿シート及び表2に示す繊維シートを市販のオレフィン系のホットメルト接着剤を用いて貼り合わせ、裏面シートを得た。
【0059】
(5)吸収性物品(テープ型おむつ)の製造
前記(4)で得られた裏面シート以外はおむつに通常用いられる部材を用いてテープ型使い捨ておむつを作製した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
〔性能評価〕
実施例及び比較例のそれぞれのおむつに使用する上記透湿シートについて、前述の方法で透湿度及び全光線透過率を測定するとともにその坪量を下記のように測定した。また、該透湿シートを用いて製造された各おむつについて、装着したときの排尿の有無の識別性を下記のように評価した。これらの結果を以下の表3に示す。
【0063】
〔坪量〕
得られた透湿シートを10cm×10cmの大きさに切り取りその重量を測定し、1m2の面積に換算した。
【0064】
〔識別性の評価〕
おむつの表面シート側中央部より、生理食塩水30gを滴下し、10分間放置した後、裏面側より排尿の識別手段の変化を目視で観察し、次の3段階の基準に従って評価した。
◎:識別手段の変化が見えやすく、非常に判りやすい。
○:識別手段の変化がやや見やすく、やや判りにくい。
△:識別手段の変化がやや見えにくく、やや判りにくい。
○:識別手段の変化が見えず、判らない。
【0065】
【表3】
【0066】
表3に示す結果から明らかなように、実施例の吸収性物品(本発明品)は、高い透湿度を維持しつつ排尿の有無を容易に識別できることが判る。これに対して比較例の吸収性物品では、透湿度を高くしようとすると全光線透過率が低くなり得られるおむつも排尿の有無の識別性が悪くなることが判る。
【0067】
【発明の効果】
本発明の吸収性物品によれば、高い透湿度を維持しつつ排尿の有無を外部から容易に識別させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る吸収性物品の一実施形態の使用状態を模式的に示す一部を破断した斜視図である。
【図2】同実施形態を表面シート側から一部を破断した展開平面図及び要部断面図を模式的に示す図であり、(a)は表面シート側から見た展開平面図、(b)はA−A矢視断面図ある。
【図3】本発明に係る吸収性物品の製造工程のうち、透湿シートの製造工程を模式的に示す図である。
【図4】本発明に係る吸収性物品の製造工程のうち、複合シートの製造工程を模式的に示す図である。
【図5】本発明に係る吸収性物品の製造工程のうち、おむつの製造工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
3’ 複合シート
30 透湿シート
31 繊維シート
4 吸収体
5 識別手段
Claims (5)
- 液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シートおよび両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を備えた吸収性物品において、
前記裏面シートと前記吸収体との間に排尿の有無を視認させる識別手段を有しており、
前記裏面シートが、透湿シートの一面に繊維シートが貼り合わされてなる複合シートであって、全光線透過率が45%以上で且つ透湿度が3600〜8400g/(m2・24h)であり、
前記透湿シートは、ポリオレフイン系樹脂100重量部に対して無機充填剤100〜300重量部を含むポリオレフイン系樹脂組成物からなり、少なくとも一軸延伸されており、坪量が10〜50g/m 2 であって、前記ポリオレフイン系樹脂は、メルトフローレートが1〜5g/10minで且つ密度が0.920〜0.935g/cm 3 である線状低密度ポリエチレン80〜99重量%およびメルトフローレートが6〜15g/10minで且つ密度が0.910〜0.930g/cm 3 である分岐状低密度ポリエチレン1〜20重量%を含むことを特徴とする吸収性物品。 - 前記繊維シートの坪量が5〜50g/m2で且つ全光線透過率が80%以上である請求項1記載の吸収性物品。
- 前記線状低密度ポリエチレンがメタロセン触媒を用いて製造されたものである請求項1又は2記載の吸収性物品。
- 前記ポリオレフイン系樹脂組成物が、前記ポリオレフイン系樹脂100重量部に対して、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステル1〜30重量部を更に含む請求項1〜3の何れかに記載の吸収性物品。
- 前記無機充填剤が、比表面積16000〜24000cm2/gである炭酸カルシウムからなる請求項1〜4の何れかに記載の吸収性物品。
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