JP3891783B2 - 液体試料の濃縮方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体試料を濃縮する方法および該方法に用いる装置に関する。更に詳しくは、例えば、液体試料について微量分析を行なう際のプレコンセントレーションとして有用なマイクロ波加熱を利用した濃縮方法および該濃縮方法に好適に用いられるマイクロ波加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体材料分野等において、原材料や製品の純度に対する要求は高く、ごく微量含まれる不純物の分析を高精度で行なうことが重要となっている。そのためには、例えば、溶液試料については、定量の妨害をするようなマトリックス物質を除去したり、分析目的成分を機器分析の定量限界内に入るようにしたり、更には測定精度を高めたりする目的で、測定試料を濃縮する操作(プレコンセントレーション)することが行われている。
【0003】
液体試料のプレコンセントレーションの一手段として、溶媒若しくは分散媒を蒸発させて除去する方法がある。そして、液体試料の溶媒若しくは分散媒が水等の比誘電率の高い誘電体である場合には、簡便な方法としては、マイクロ波加熱を用いて溶媒若しくは分散媒を蒸発させて除去し、濃縮を行う方法が知られている。該方法は、水等の比誘電率の大きな物質は、マイクロ波の照射によって生じる高周波電界によって容易に発熱することを利用したものであり、簡便に濃縮操作ができるという特徴がある。なお、一般に、該方法においては、試料を加熱した際に可燃性ガスや酸などの危険性のあるガスを発生することが多いため、これらガスを安全に排出するため、容器内で加熱を行ない、発生したガスが大気中に拡散しない様に隔絶して排出させるのが一般的である。
【0004】
例えば、特開平6−82349号公報には、不活性ガス供給管及び排気管とを有する密閉可能な処理容器内の溶液試料に対してマイクロ波を照射し、溶媒を気化させて、気化した溶媒蒸気を不活性ガスに同伴させて排気管から系外に排出して濃縮又は灰化処理を行なうための加熱処理装置が開示されており、このような装置を用いることにより発生ガスを安全に排出すると共に外部からの汚染を防止しながら処理を行なうことが可能となっている。また、該装置を用いた場合には、液体試料を目盛り付きの試験管に入れ、これを上記処理容器内に挿入配置して濃縮又は灰化処理を行うことにより、その試験管を用いて処理後に引続き稀釈操作を行なうことも可能となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、マイクロ波加熱を利用して、容器内で濃縮する方法においては、濃縮に伴い試料の液量が減ると共に濃縮速度が激減し、例えば10mlの液体試料を濃縮すると時間をかけても3ml以下に液量が減らないといった現象がおこる{Anal.Chem.,72,(13),2908−2913(2000)}。
【0006】
そこで、本発明は、マイクロ波加熱を利用して短時間で液体試料の高倍率の濃縮が可能な方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来の方法で濃縮が止ってしまうのは、一旦気化した溶媒若しくは分散媒が系外に排出される前に凝縮し、容器壁を伝わって戻ってくる(還流する)のが原因ではないかと考え、前記公開公報に記載されたような不活性ガスの導入が可能な装置を用い、不活性ガスを液面に直接吹き付けて蒸発を促すことを試みた。しかしながら、この場合、上記還流は起こらなかったものの、液量が少なくなるとともに濃縮速度が激減し、所期の目的を達することはできなかった。
【0008】
この濃縮速度が低下する原因は、発熱体である溶媒若しくは分散媒が減少するため、十分な熱量が得られなくなることではないかと考え、さらに容器外部から蒸発を促す加熱を行う必要があると考えた。試料を有効に加熱する方法について種々検討を行なった結果、容器を二重構造にし、還流した溶媒等が試料内には戻らずにその外側に溜まるようにした場合には、短時間で液体試料を乾固させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、第一の本発明は、開口容器の内部に保持された液体試料であって、該開口容器の構成材料よりも高い比誘電率を有する誘電体からなる溶媒若しくは分散媒に濃縮目的物である溶質が溶解した溶液試料をマイクロ波加熱して該液体試料の溶媒若しくは分散媒を蒸発させて除去することにより前記濃縮目的物を濃縮する方法において、液体試料をマイクロ波加熱する際に、前記開口容器の構成材料よりも高い比誘電率を有する誘電体を前記開口容器外面の少なくとも一部に接触させ、当該誘電体を同時にマイクロ波加熱することを特徴とする前記液体試料の濃縮方法である。
【0010】
上記本発明の濃縮方法においては、ガス導入孔及びガス排出孔を有する有蓋容器の内部に、液体試料を保持した開口容器を配置し、前記有蓋容器内面と該開口容器外面との間の空間に、前記開口容器の構成材料よりも高い比誘電率を有する誘電体を前記開口容器外面の少なくとも一部と密接するように介在させ、該誘電体を液体試料と同時にマイクロ波加熱することにより、外部からの汚染を防止しながら安全に濃縮操作を行なうことができる。さらに、マイクロ波加熱中に前記ガス排出孔から吸引するか又は前記ガス導入孔からガスを導入するかして前記有蓋容器内のガスを排出すると共に、マイクロ波加熱によって蒸発した溶媒若しくは分散媒の少なくとも一部を凝縮させ、得られたら凝縮液を有蓋容器内面と開口容器外面との間の空間に該開口容器外面の少なくとも一部と密着するように介在させることにより、より短時間で濃縮を行なうことが可能となる。また、この場合には、開口容器の構成材料よりも高い比誘電率を有する誘電体を別途用意する必要も無い。
【0011】
本発明の濃縮方法においては、液体試料を保持する開口容器がマイクロ波加熱によって容易に発熱する比誘電率が高い誘電体と接触しているため、溶媒若しくは分散媒が減少して液体試料自体の発熱量が減少しても濃縮を続けるのに必要な熱が熱伝導によって供給され続けるため、濃縮効率が低下しないものと思われる。
【0012】
また、第二の本発明は、液体試料を保持した開口容器をその内部に配置するための有蓋容器であって、ガス導入孔及びガス排出孔、前記液体試料から発生した溶媒若しくは分散媒の蒸気を凝縮させるための蒸気凝縮部、並びに該蒸気凝縮部で凝縮した凝縮液を集めて該凝縮液が前記開口容器外面に接触するように保持する凝縮液保持部を有する有蓋容器と、該有蓋容器を保持するための容器保持室を有する装置本体と、前記容器保持室に配置された有蓋容器内の液体試料及び該有蓋容器内面と前記開口容器外面との間に存在する凝縮液をマイクロ波加熱するためのマイクロ波発生手段とを有することを特徴とするマイクロ波加熱装置である。
【0013】
上記本発明の装置を用いることにより、本発明の濃縮方法を簡便且つ効率よく行なうことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の濃縮方法では、マイクロ波加熱法を利用する。ここで、マイクロ波加熱法とは、電磁波加熱の一種であり、高周波電界によって、誘電体内部に生じた電気双極子を、高周波により回転させて分子間に摩擦を起こし、その摩擦によって発生する熱を利用して加熱を行なうものであり、電界を作る方法として電波を用いる加熱方法である。マイクロ波加熱では、通常、主にマグネトロンを使用し、2450MHz、915MHzの周波数を使って加熱が行われ、導波管及びオーブンが用いられる。また、電波を均等に照射するために、攪拌ファンが用いられることもある。
【0015】
本発明の濃縮方法では、上記したようなマイクロ波加熱を利用して開口容器に保持された液体試料の濃縮を行なう。液体試料を開口容器に保持するのは、加熱されて気化した溶媒若しくは分散媒を拡散除去させるためである。上記開口容器の材質は、絶縁体であれば特に限定されないが、それ自体が加熱されて高温になったり、変形したりするのを防ぐという観点から、比誘電率が小さい、特に比誘電率(εr)が15以下、更には10以下の誘電体からなっているのが好適である。また、硼珪酸ガラス(εr=4.5〜5.0)、アルミナ磁器(εr=9.3)も適用できるが、容器から溶液中に不純物が溶出しにくいという観点から、石英ガラス(εr=3.5〜4.5)あるいはポリ四弗化エチレン(εr=2.1)、ポリ弗化ビニリデン(εr=8.4)等のフッ素樹脂製であるのが特に好適である。
【0016】
なお、該有蓋容器と前記開口容器は必ずしも個別である必要はなく、有蓋容器と開口容器が一体となったような2重構造の有蓋容器を用いてもよい。
【0017】
本発明の濃縮方法では、上記したようなマイクロ波加熱を利用するため、用いる液体試料の溶媒若しくは分散媒は、液体試料を保持する開口容器の構成材料よりも高い比誘電率、好ましくは20以上の比誘電率を有する必要がある。適用できる液体試料の溶媒若しくは分散媒は、上記条件を満足すれば特に限定されず、水、又は公知の有機溶媒でよい。本発明で好適に使用できる溶媒若しくは分散媒を例示すれば、水(εr=81);アセトン(εr=20.7)等のケトン類、メタノール(εr=32.6)、エタノール(εr=24.3)等のアルコール類等が挙げられる。これらは、単独で用いても複数種類混合して用いてもよい。これらの中でも、水は沸点が高く他の方法では蒸発させにくいのに対し、マイクロ波加熱で容易に蒸気となるので、本発明の方法は、水又は水と水溶性有機溶媒との混合物を溶媒又は分散媒とする試料に適用するのが最も効果的である。
【0018】
また、液体試料において濃縮対象物となる溶質又は懸濁物は、特に限定されず、目的に応じて適宜決定される。液体試料が水溶液である場合には塩であることが多く、イオンの形で溶解していることが多い。濃縮効率の点から、濃縮目的物である溶質又は懸濁物は溶媒又は分散媒よりも揮発し難いものであるのが好ましいが、揮発性を有する場合にも捕集剤を用いて高沸点の錯体を形成させることにより濃縮が可能となる。例えばホウ素を濃縮するためにマンニトールを必要量加えてホウ素−マンニトール錯体を形成後、濃縮を行うことができる。
【0019】
なお、液体試料には、濃縮目的となる物質以外にも各種酸、アルカリ、塩等の他の物質が溶解していてもよい。
【0020】
本発明の濃縮方法においては、前記開口容器に保持された液体試料をマイクロ波加熱するに際して、前記開口容器の構成材料よりも高い比誘電率を有する誘電体(以下、外部加熱用誘電体ともいう。)を前記開口容器外面の少なくとも一部に接触させ、当該誘電体を同時にマイクロ波加熱することを最大の特徴とする。外部加熱用誘電体を開口容器に接触させて、これを合わせてマイクロ波加熱することにより、外部加熱用誘電体から発生した熱を液体試料に伝え、液体試料の量が少なくなっても溶媒等を蒸発させ続けることが可能となる。
【0021】
外部加熱用誘電体は、その比誘電率が前記開口容器の構成材料よりも高い誘電体であれば特に限定されないが、その加熱効果の点から、比誘電率が20以上の誘電体であるのが好適である。好適に使用できる外部加熱用誘電体を、具体的に例示すれば、液体試料の好適な溶媒若しくは分散媒として例示したものと同じものの他、酸化チタン(εr=80)、チタン酸バリウム(εr=1700)等が挙げられる。
【0022】
本発明の濃縮方法においては、液体試料から一旦蒸発した溶媒若しくは分散媒を凝縮させ、得られた凝縮液を外部加熱用誘電体として使用することもできる。該凝縮液を外部加熱用誘電体として使用するには、例えば有蓋容器の内部に、液体試料を保持した開口容器を配置し、前記有蓋容器の上部内壁面でマイクロ波加熱によって発生した溶媒若しくは分散媒の蒸気を凝縮させ、壁面を通じて凝縮液を有蓋容器下方の前記開口容器との間の空間に導き、凝縮液が開口容器の外面に接触するようにすればよい。
【0023】
上記有蓋容器においては、液体試料を保持した開口容器を出し入れすることができるように蓋は取り外しできるようになっていると共に、加熱によりガス発生したり内部のガスの膨張により加圧状態になるのを避け、外部と均圧を保つため、或いは溶媒若しくは分散媒の蒸発を促進するために内部のガスを吸引排気するための排気孔が設けられているのが好ましい。また、吸引排気する場合には、内部が過度の減圧状態になら無い様にするために、大気若しくは外部から供給される不活性ガス等のガスを有蓋容器内に導入するためのガス導入孔が設けられているのが好適である。なお、ガス導入孔および排気孔の両方を有する場合には、ガス導入孔から不活性ガス等を外部から強制的に導入し有蓋容器内のガスを排気孔から排気しても上記吸引排気と同様の効果を得ることができる。
【0024】
上記有蓋容器の材質は特に限定されないが、前記したのと同じ理由により、開口容器と同様の材質であるのが好適である。また、大きさは特に限定されないが、蓋の形状は、蓋の内面で凝縮したにできる凝縮液が開口容器内部にもどらず、蓋の側面をつたって有蓋容器の底つまり開口容器の外側を包むように溜まるようにするために、例えばドーム型の形状をしているのが望ましい。更に、外部加熱効果を高めるために、その内底部に前記開口容器を載置した際にできる、有蓋容器内面と開口容器外面との間の空間容積が、有蓋容器容積に対し特に20〜30%となるような大きさでかつ開口容器の高さはこの空間に溜まる凝縮液が開口容器内流入しない高さであるのが好適である。
【0025】
本発明の濃縮方法は、前記した本発明のマイクロ波加熱装置を用いて好適に行なうことができる。以下に、図を参照して本発明のマイクロ波加熱装置を用いた濃縮操作につて詳しく説明する。
【0026】
図1は、代表的な本発明のマイクロ波加熱装置1の該略図である。該マイクロ波加熱装置1は、▲1▼液体試料2を保持した開口容器3をその内部に配置するための有蓋容器4と、▲2▼該有蓋容器を保持するための容器保持室5を有する装置本体(オーブン)6と、▲3▼前記容器保持室5に配置された有蓋容器4内の液体試料2及び該有蓋容器内面と前記開口容器外面との間の空間(以下、外部加熱用誘電体保持空間ともいう。)に存在する凝縮液8をマイクロ波加熱するためのマイクロ波発生手段7とを有する。
【0027】
上記有蓋容器4は、容器本体4aと蓋4bからなっており、該蓋4bを開閉することによって容器本体4a内部に開口容器3を設置できるようになっている。なお、容器本体には、開口容器3が転倒するのを防止するために開口容器3が嵌合する凹部、或いは転倒防止壁等の固定手段を有するのが好適である。また、有蓋容器本体4aと開口容器3とが一体となるように成型したものを使用することもできる。
【0028】
また、該蓋4bには、ガス導入孔4d及びガス排出孔4eが設けられている。ガス導入孔4dには汚染を防止するフィルターを取り付けたり清浄な不活性ガス源に接続したりすることもできる。そして、ガス排出孔4eに接続した排気管9(該排気管9は、装置本体6を貫通して装置外部に延出している。)を介して前記有蓋容器4内のガスを装置外部に真空ポンプやアスピレーター等の排気手段(図示しない)によって吸引排出すると共に前記ガス導入孔4dから外気或いは不活性ガスを該有蓋容器内に導入する(ガス置換法A)か、又は前記ガス導入孔4dに該導入孔4dを貫通しないように接続された配管(図示しない)を介して前記有蓋容器4内に外気或いは不活性ガスを供給すると共に前記ガス排出孔4eに接続した排気管9を介して該有蓋容器内のガスを装置外部に排出する(ガス置換法B)ことによって前記有蓋容器内のガスを置換することができるようになっている。この時排気ガス中に酸やアルカリミストなどが含まれている場合には、排気ガスを水などに吸収させ、中和処理すればよい。
【0029】
なお、上記ガス置換法Bを採用する場合、ガス導入孔4dを貫通した配管を用いて開口容器近傍でガスを吹き込んだ場合には、溶媒等の蒸気が凝縮しないで系外に排出されてしまい、凝縮液を外部加熱用誘電体とする本発明の濃縮方法を行なうことができなくなるので注意する必要がある。
【0030】
また、装置本体6は扉(図示しない)を有しており、これを開閉して有蓋容器4を容器保持室5に設置できるようになっている。
【0031】
なお、図1ではマイクロ波発生手段7が容器保持室5の天井部に配置され、マイクロ波10が上方から照射される態様を示したが、導波管を介してマイクロ波を溶液試料等に照射できるので、その位置は任意に変更できる。
【0032】
濃縮に際しては、先ず、液体試料2を保持した開口容器3をその有蓋容器4内に設置した後、これを装置本体6の容器保持室5に設置し、必要に応じて前記ガス置換方A又はBを行ないながら液体試料2および外部加熱用誘電体保持空間にマイクロ波発生手段7で発生させたマイクロ波を照射すればよい。マイクロ波の照射によって溶液試料は発熱し、溶媒が気化しその蒸気は上部に導かれる。有蓋容器4は、それ自体は発熱しにくく、また十分な高さを有しているので、その上方部が液体試料から発生した溶媒若しくは分散媒の蒸気を凝縮させるための蒸気凝縮部4cとなり、凝縮液は自然に壁面を伝って下方部の開口容器3との間の空間に集まる。集まった凝縮液8(即ち、外部加熱用誘電体)はマイクロ波加熱されて発熱し、発生した熱は熱伝導により開口容器を介して溶液試料に伝えられ、濃縮効率が低下すること無く、例えば、乾固するまで濃縮を行なうことができる。
【0033】
【実施例】
本発明を更に具体的に説明するため以下実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
図1に示すのと同じ構造のマイクロ波加熱装置を用いて、ベリリウムが1ppb溶解した水溶液の濃縮を行なった。なお、濃縮は、内容積23mlのテフロン製の開口容器に、試料溶液10mlを入れ、これをテフロン製の有蓋容器に配置し、マイクロ波加熱装置にセットした後、2450MHz(出力300Wに設定)の周波数を使って1時間加熱した。なお、加熱中は排気管から排気速度10l/minの真空ポンプを用いて吸引を行なった。この時ガス通気孔にはテフロンフィルターを接続し、排気したのと同量のフィルターろ過された大気が導入されるようにしておいた。もちろんあらかじめ操作中の大気からベリリウムの混入がないことを確認している。
【0035】
加熱処理後有蓋容器内を観察したところ、開口容器との間に水が溜まっていた。また、溶液試料の溶媒は完全になくなっており、ピペットでは吸引できなかった。その後、開口容器を取り出し、乾固物に1%硝酸0.5mlを加え溶液として回収した。この溶液を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により分析を行なったところ、ベリリウム濃度は20ppbであり、1ppb水溶液が10mlから0.5mlへと20倍濃縮した操作中にベリリウムの消失はなく、溶液が乾固されていることが確認された。
【0036】
比較例1
実施例1において、加熱中に吸引を行なう代わりに、ガス導入孔からガス導入管をその先端が有蓋容器底部近傍にくるように貫入し、窒素ガスを約0.2/min.の流速で導入する他は実施例1と同様にして濃縮を行なった。
【0037】
加熱処理後有蓋容器内を観察したところ、開口容器との間に凝集液は溜まっていなかった。また、開口容器内に溶液試料が残存しておりその量をピペットで吸引して確認したところ約0.5mlであり、0.5ml溶液で回収する操作では大きな誤差をもって測定しなけらばならないことがわかった。
【0038】
比較例2
加熱時間を4時間とする他は比較例1と同様にして加熱を行なった。加熱処理後有蓋容器内を観察したところ、開口容器内には溶液試料が約0.25ml残存していた。
【0039】
比較例3
開口容器を内部に入れず、有蓋容器のみでさらに上蓋を外してマイクロ波で濃縮を行った。4時間加熱したが、溶液試料が約0.5ml残存していた。
【0040】
【発明の効果】
本発明の濃縮方法によれば、水溶液や懸濁液等の液体試料について外部からの汚染を受けること無く、簡便に短時間で溶媒若しくは分散媒を蒸発させて除去し、溶質又は懸濁物を濃縮することができる。しかも、従来のマイクロ波加熱を利用した濃縮方法では、溶媒等の量の減少と共に濃縮効率が低下し、高倍率の濃縮を行なうのが困難であったのに対し、本発明の濃縮方法では、このような濃縮効率の低下が起こらない。したがって、本発明の濃縮方法は、微量分析を行なう際のプレコンセントレーション法として好適に採用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本図は、代表的な本発明のマイクロ波加熱装置の概略図である。
【符号の説明】
1・・・マイクロ波加熱装置
2・・・溶液試料
3・・・開口容器
4・・・有蓋容器
4a・・・・容器本体
4b・・・・蓋
4c・・・・蒸気凝縮部
4d・・・・ガス導入孔
4e・・・・ガス排出孔
5・・・容器保持室
6・・・装置本体
7・・・マイクロ波発生手段
8・・・凝縮液
9・・・排気管
10・・マイクロ波

Claims (4)

  1. 開口容器の内部に保持された液体試料であって、該開口容器の構成材料よりも高い比誘電率を有する誘電体からなる溶媒若しくは分散媒に濃縮目的物である物質が溶解若しくは懸濁した液体試料をマイクロ波加熱して該液体試料の溶媒若しくは分散媒を蒸発させて除去することにより前記濃縮目的物を濃縮する方法において、液体試料をマイクロ波加熱する際に、前記開口容器の構成材料よりも高い比誘電率を有する誘電体を前記開口容器外面の少なくとも一部に接触させ、当該誘電体を同時にマイクロ波加熱することを特徴とする前記液体試料の濃縮方法。
  2. ガス導入孔及びガス排出孔を有する有蓋容器の内部に、液体試料を保持した開口容器を配置し、前記有蓋容器内面と該開口容器外面との間の空間に、前記開口容器の構成材料よりも高い比誘電率を有する誘電体を前記開口容器外面の少なくとも一部と密接するように介在させ、該誘電体を液体試料と同時にマイクロ波加熱することを特徴とする請求項1に記載の濃縮方法。
  3. マイクロ波加熱中に前記ガス排出孔から吸引するか又は前記ガス導入孔からガスを導入するかして前記有蓋容器内のガスを排出すると共に、マイクロ波加熱によって蒸発した溶媒若しくは分散媒の少なくとも一部を凝縮させ、得られた凝縮液を有蓋容器内面と開口容器外面との間の空間に該開口容器外面の少なくとも一部と密着するように介在させることを特徴とする請求項2に記載の濃縮方法。
  4. 液体試料を保持した開口容器をその内部に配置するための有蓋容器であって、ガス導入孔及びガス排出孔、前記液体試料から発生した溶媒若しくは分散媒の蒸気を凝縮させるための蒸気凝縮部、並びに該蒸気凝縮部で凝縮した凝縮液を集めて該凝縮液が前記開口容器外面に接触するように保持する凝縮液保持部を有する有蓋容器と、該有蓋容器を保持するための容器保持室を有する装置本体と、前記容器保持室に配置された有蓋容器内の液体試料及び該有蓋容器内面と前記開口容器外面との間に存在する凝縮液をマイクロ波加熱するためのマイクロ波発生手段とを有することを特徴とするマイクロ波加熱装置。
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