JP3891719B2 - 車輪の踏面清掃装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両における車輪の踏面清掃装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に軌道上を走行する鉄道車両は長距離の走行中に車輪の踏面に錆,ゴミ,砂利等が付着し、これらのゴミ等が踏面と軌道間に介在することによって軌道を損傷し、異音を発生し、最悪の場合には脱線するおそれもある。又、車輪の踏面にゴミ等が付着することにより、軌道間との摩擦係数が変動し、ブレーキ動作にも悪影響を及ぼす場合がある。
【0003】
そこで、従来は車両の車体に踏面清掃装置を組付け、走行中に、この清掃装置で踏面に付着しているゴミ等を取りのぞいている。
【0004】
この踏面清掃装置としては、例えば、図4,図5に示すものが開発され、使用されている。
【0005】
即ち、この踏面清掃装置は、シリンダ40と、シリンダ40内に移動自在に挿入したトルク受ロッド41と、トルク受ロッド41の外端に設けた研摩子受け42と、研摩子受け42の端部に着脱自在に取付けた研摩子43と、研摩子受け42に下端がボルトB,Bを介して回転自在に枢着されるときに上端を車体側に結合した吊りアーム44とを有している。
【0006】
更に、シリンダ40の内周にはトルク受ロッド41の位置を規制するラッチ受け45と、このラッチ受け45に選択的に係合するラッチ46とを設け、又、シリンダ40の内周とトルク受ロッド41の内端側外周との間にトルク受ロッド41の支えとエア圧の洩れを防止するダイヤフラム47を設けている。更にトルク受ロッド41の外周にはトルク受ロッド41の復帰用スプリング48を設けている。
【0007】
上記の踏面清掃装置によれば、トルク受ロッド41の内端側にエアー圧を供給するとトルク受ロッド41と研摩子受け42と研摩子43が図4において左方向に伸長し、研摩子43の弯曲面43aが走行中の車輪の踏面に摺接し、当該踏面の外面に付着しているゴミ.砂利等を取り除く。
【0008】
エアー圧の供給を停止するとトルク受ロッド41は復帰スプリング48のばね力で元の位置に戻り、研摩子43も車輪の踏面から離れる。
【0009】
研摩子43が車輪の踏面に当接している時、踏面に付着したゴミ等の大きさに応じて研摩子43には車輪の接線方向の力を受け、この時研摩子43はボルトを中心にして揺動すると共に接線方向の力がトルク受ロッド41に作用しないように吊りアーム44で担持する。
【0010】
ラッチ受け45とラッチ46は研摩子43の弯曲面が使用により徐々に摩耗するため研摩子43と踏面との間の距離が変化するため、この距離を調節するものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の踏面の清掃装置では機能上特に欠陥があるわけではないが、次のような問題の改善が要望されている。
【0012】
第1に、研摩子43に発生する接線方向の力は吊りアーム44で受ける構造となっているために、この吊りアーム44と、吊りアーム44を車体側に結合する梁材や取付け部材が必要となり、その為の大きなスペースを確保しなければならないし、部品点数が多く、構造も複雑となり、加工性,組付性,経済性において不利である。
【0013】
第2に、シリンダ40内にはラッチ受け45に加えてシール機能とトルク受ロッド41の支持機能を備えた長いダイヤフラム47を軸方向に沿って設けているためにシリンダ40の軸方向の長さが長くなり、取付スペースの制約を受けると共に材料が嵩み、加工性,組付性,経済性において不利である。
【0014】
第3に、研摩子43が接線方向の力を受けた時ボルトを中心にして揺動するが、この状態で研摩子43を元の位置まで引き戻すと上記のボルトには研摩子43を水平状態の中立位置に復帰する機能を有しない為に、研摩子43が傾斜したままの状態で復帰する。従って、再度トルク受ロッド41を伸長して清掃作業を行う時傾斜したままの研摩子43が車輪の踏面に当り、これにより研摩子43の外周端がこすれて研摩子43を偏摩耗させ、又無理な力が入力されて破損の原因にもなる可能性がある。
【0015】
そこで、本発明の目的は、取付スペースの制約を受けず、部品点数が少なく、構造が簡単であり、シリンダ長を短くでき、研摩子を常に中立状態に保って偏摩耗の発生を防止し、加工性,組付性,経済性にすぐれた車輪の踏面清掃装置を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、シリンダと、シリンダ内に当該シリンダの内周全域に亘って回転を規制しながら摺動自在に挿入した中空な筒型のトルク受ロッドと、シリンダと連動して上記トルク受けロッド内に挿入した支持桿と、トルク受ロッドと支持桿との間に介装されたロッド復帰用スプリングと、トルク受ロッドの外端に設けた筒型ブラケットと、このブラケットにボルトを介して着脱自在に結合する二又状の研摩子受けと、研摩子受けの端部に着脱自在に取付けた研摩子と、上記ボルトの外周と上記ブラケットの内周との間に介装されて研摩子の中立位置を保持する防振ゴムと、トルク受けロッドの外周溝に軸方向移動自在に挿入したラッチ受けと、シリンダに設けられて上記ラッチ受けと選択的に係合するラッチとからなることを特徴とするものである。
【0017】
この場合、トルク受ロッドを中空に形成し、シリンダに設けたキャップにトルク受ロッド内に侵入する支持桿を取付け、トルク受ロッドの内周に設けたシートと、支持桿の端部に設けたシートとの間に復帰用スプリングを介装しているのが好ましい。
【0019】
更に、研摩子受けの外端にパイプを起立し、研摩子の端部に補強部材を介してソケットを設け、ソケットをパイプに挿入すると共にソケットとパイプ間にスプリングフックを着脱自在に挿入して研摩子を研摩子受け側に取付けているのが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図3にもとづいて説明する。
【0021】
車輪の清掃装置Pはブラケット36を介して鉄道車両の台車に取付けられ、研摩子3を車輪の踏面に摺接させて踏面の外面に付着したゴミ,砂利等を取り除いて清掃するものである。
【0022】
車輪の清掃装置Pの基本形態は、ブラケット36に結合したシリンダ1と、シリンダ1内に当該シリンダ1の内周全域に亘って回転を規制しながら摺動自在に挿入したピストンロッド型の中空な筒型のトルク受ロッド2と、シリンダ1と連動して上記トルク受けロッド2内に挿入した支持桿5と、トルク受ロッド2と支持桿14との間に介装されたロッド復帰用スプリング18と、トルク受ロッド2の外端に設けた筒型ブラケット26と、このブラケット2bにボルト29を介して着脱自在に結合する二又状の研摩子受け4と、研摩子受け4の端部に着脱自在に取付けた研摩子3と、上記ボルト29の外周と上記ブラケット2bの内周との間に介装されて研摩子3の中立位置を保持する防振ゴム22と、トルク受けロッド2の外周溝37に軸方向移動自在に挿入したラッチ受け8と、シリンダ1に設けられて上記ラッチ受け8と選択的に係合するラッチ8とからなるものである。
【0023】
シリンダ1の後端部内にキャップ6がC型止め輪23とピン31とOリング17とを介して結合され、キャップ6は中空に形成されると共にエアー圧供給用のコネクタ30が取付けられている。
【0024】
シリンダ1の基端部とトルク受ロッド2の外端フランシ2aとの間にはダストの侵入を防止するブーツ14が取付けられている。
【0025】
シリンダ1内には外周に溝37を備えたトルク受ロッド2がロッドシール16を介して摺動自在に挿入され、トルク受ロッド2はシリンダ1内に常に水平方向に案内されて摺動し、研摩子3から受ける接線方向の力はトルク受ロッド2を介してシリンダ1が担持している。トルク受ロッド2の外周溝37内には外周に多数ののこぎり歯状の溝を備えたラッチ受け8が軸方向移動自在に挿入され、ラッチ7の先端が上記の溝のいずれかと選択的に係合するようになっている。
【0026】
更に、トルク受ロッド2には他の軸方向溝37aが形成され、図2に示すように止め輪25とプレート13とを介してシリンダ1に取付けたピン12が溝37aに嵌合してトルク受ロッド2の移動を軸方向に案内し、且つ研摩子3の回転を防止している。
【0027】
シリンダ1には、直径方向に向けてガイド筒39が起立し、ガイド筒39にはキャップ33が嵌合し、ガイド筒39とキャップ33の中央にはベアリング34を介してロッド状のラッチ7が上下移動自在に挿入され、通常ラッチ7はスプリング19で押されてその先端がラッチ受け8と係合し、ラッチ7の外端を指でスプリング19に抗して引き出した時ラッチ受け8との係合が解消されてラッチ受け8を移動するようになっている。ラッチ7の外端とキャップ33との間にはダストの侵入を防止するブーツ15が取付けられている。
【0028】
ラッチ受け8は、トルク受ロッド2の後退ストロークを規制するものである。例えば、研摩子3の弯曲面3aが摩耗した時、その摩耗した肉厚分の距離だけトルク受ロッド2を押し出し、その押し出した分、トルク受ロッド2が後退しないようにラッチ受け8を移動してトルク受ロッド2の位置を規制する。これによって研摩子3が摩耗しても、研摩子3と車輪の踏面との距離を常にある一定の範囲に保持できる。
【0029】
トルク受ロッド2は中空に形成され、シリンダ1に設けたキャップ6にトルク受ロッド2内に侵入する支持桿5を取付け、トルク受ロッド2の内周に設けたシート24と、支持桿5の端部に設けたワッシャ型のシート10との間に復帰用スプリング18を介装している。
【0030】
コネクタ30から供給されたエアー圧はキャップ6内を通してトルク受ロッド2の端面に作用し、復帰用スプリング18を圧縮させながらトルク受ロッド2を車輪方向に伸長させる。エアー圧の供給を停止すると復帰用スプリング18の復元力でトルク受ロッド2は研摩子3と共に後退する。
【0031】
研摩子受け4は図3に示すように、二又状に形成し、トルク受ロッド2の外端に設けた筒型ブラケット2bを研摩子受け4内に挿入し、研摩子受け4とブラケット2bとをボルト29を介して着脱自在に結合し、ボルト29の外周とブラケット2bの内周との間に環状の防振ゴム22を介在させている。ブラケット2bは研摩子受け4内に上下の皿バネ28,28と、上下の段付きプレート35,35を介して挾持されている。
【0032】
更にボルト29の端部はスペーサ21とキャッスルナット26とキャッスルナット26に挿入したスプリットピン27で抜け止めされている。研摩子受け4の外端にパイプ50を起立し、研摩子3の端部に補強部材51を介してソケット52を設け、ソケット52をパイプ50に挿入するとパイプ50に内部より装着されているスプリングフック9を押し縮め研摩子3を研摩子受け4側に完全に取付けるスプリングフック9は押し拡がり、自動的に研摩子3は研摩子受けに保持される。この為、研摩子3を交換する場合には、スプリングフック9を指でパイプ5の内側に押し縮めソケット52をパイプ50から抜き出すことにより研摩子3を取りはずし、上記と逆の手順で新しい研摩子3を取付けるものである。
【0033】
次に作動について述べる。
【0034】
コネクタ30よりエアー圧を供給するとトルク受ロッド2が車輪方向に伸長すると共に復帰用スプリング18を圧縮させる。トルク受ロッド2が伸長する研摩子受け4を介して研摩子3が移動し、研摩子3の弯曲面3aが走行中の回転する車輪の踏面に摺接し、この踏面に付着している錆,ゴミ,砂利等を除去する。ゴミ等の除去が終了するとエアー圧の供給を停止し、これにより自動的に復帰用スプリング18の復元力でトルク受ロッド2と研摩子受け4と研摩子3が元の位置に戻る。
【0035】
上記清掃中において、踏面と研摩子3の摺動抵抗により踏面の接線方向に作用する力が研摩子3に作用しても、この力はトルク受ロッド2を介してシリンダ1が受け且つ防振ゴム22が圧縮して担持する。併せて上記接線方向の力によって研摩子3が揺動して傾斜しても、この力が解消した時防振ゴム22の復元力で研摩子3は水平な中立位置に復帰できる。
【0036】
更にエアー圧の供給を停止して研摩子3等を元の位置に復帰する場合、トルク受ロッド2がシリンダ1に案内されて水平に移動するから研摩子3も水平に移動する。又、研摩子3が揺動して傾斜しても防振ゴム22で水平な中立状態に戻されるから、再度清掃作業を行なう為に伸長しても研摩子3は水平な状態で車輪の踏面に当接でき、研摩子3の外縁が直接踏面に当接して偏摩耗するのを防止できる。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、次の効果がある。
【0038】
(1)各請求項の発明によれば、トルク受ロッドがシリンダ内に当該シリンダの内周全域に亘って回転を規制しながら摺動自在に挿入されているので、研摩子に作用する踏面の接線方向の力はトルク受ロッドを介してシリンダが担持する。従って、上記の力を支える特別な吊りアーム等の部材が不用となる。この為、構造が簡素化され、部品点数が少なくなり、取付スペースの制約を受けないから加工性、組付性、経済性にすぐれている。
【0039】
(2)同じくトルク受ロッドはシリンダの内周全域で支持されているからトルク受ロッドの傾斜を吸収するダイヤフラムを軸方向に設ける必要がない。
又、ラッチ受けとこれに係合するラッチを設けているから、研摩子が摩耗した時、その摩耗した肉厚分トルク受けロッドを押し出し、その押し出した分トルク受けロッドが後退しないように位置を規制できる。
しかもラッチ受けはトルク受ロッドの外周溝内に挿入されているから、ラッチ受けロッドを軸方向に確実に移動でき、更に、軸方向の長さはトルク受ロッドの長さに相当する長さのみで良く、軸方向の全長を短かくでき、全体がコンパクトとなる。
【0040】
(3)同じく、トルク受けロッド側のブラケットと研摩子側の研摩子受けとの間に防振ゴムを設けているので、研摩子に接線方向の力が作用しても、この力はトルク受けロッドを介してシリンダが受け且つ防振ゴムが圧縮して担持する。その結果、清掃中に研摩子が揺動して傾斜しても防振ゴムの復元力で常に研摩子が水平な中立状態に復帰できる為、研摩子を元の位置に戻す時水平状態で戻せ、しかも再度伸長して研摩子を車輪の踏面に当接する時にも水平状態で当接できるから研摩子の外端縁が直接踏面に当ることが無く、研摩子の偏摩耗を防止できる。
【0041】
▲4▼請求項4の発明によれば、パイプとソケットとパイプに装着しているスプリングフックとを介して研摩子を着脱させるようにしているから、研摩子の交換時における作業が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車輪の踏面清掃装置の縦断正面図である。
【図2】図1のA−A線縦断側面図である。
【図3】図1のB−B線横断平面図である。
【図4】従来の車輪の踏面清掃装置の一部切欠き正面図である。
【図5】図4のC−C線縦断側面図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 トルク受ロッド
3 研摩子
4 研摩子受け
5 支持桿
6 キャップ
7 ラッチ
8 ラッチ受け
9 スプリングフック
10シート
18 復帰用スプリング
22 防振ゴム
26 ブラケット
29 ボルト
37 溝
50 パイプ
51 補強部材
52 ソケット
Claims (3)
- シリンダと、シリンダ内に当該シリンダの内周全域に亘って回転を規制しながら摺動自在に挿入した中空な筒型のトルク受ロッドと、シリンダと連動して上記トルク受けロッド内に挿入した支持桿と、トルク受ロッドと支持桿との間に介装されたロッド復帰用スプリングと、トルク受ロッドの外端に設けた筒型ブラケットと、このブラケットにボルトを介して着脱自在に結合する二又状の研摩子受けと、研摩子受けの端部に着脱自在に取付けた研摩子と、上記ボルトの外周と上記ブラケットの内周との間に介装されて研摩子の中立位置を保持する防振ゴムと、トルク受けロッドの外周溝に軸方向移動自在に挿入したラッチ受けと、シリンダに設けられて上記ラッチ受けと選択的に係合するラッチとからなることを特徴とする車輪の踏面清掃装置。
- トルク受ロッドを中空に形成し、シリンダに設けたキャップにトルク受ロッド内に侵入する支持桿を取付け、トルク受ロッドの内周に設けたシートと、支持桿の端部に設けたシートとの間に復帰用スプリングを介装している請求項1の車輪の踏面清掃装置。
- 研摩子受けの外端にパイプを起立し、研摩子の端部に補強部材を介してソケットを設け、ソケットをパイプに挿入すると共にソケットとパイプ間にスプリングフックを着脱自在に挿入して研摩子を研摩子受け側に取付けている請求項1又は2の車輪の踏面清掃装置。
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