JP3888885B2 - 繊維状素材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガス吸着能および陽イオン交換能に優れた繊維状素材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木材パルプやレーヨン、木綿等のセルロース系繊維を膨潤させ、その膨潤したセルロース系繊維の実体内でゼオライト等の無機多孔結晶を生成させた繊維状素材を本件の発明者は既に提案している(特開平10−120923号、特開2001−40109号)。
【0003】
上記繊維状素材においては、生成された無機多孔結晶により繊維表面が凹凸化され、シート化したときの透過度が高く、スピーカコーンあるいは空気中に浮遊するダストや化学物質の除去用フィルタとしてきわめて有効である。
【0004】
また、無機多孔結晶がゼオライトから成る繊維状素材においては、陽イオン交換能が高く、水中から重金属イオンを回収したり、放射性金属イオンを回収したりする用途に用いることができると共に、遷移金属イオンの水溶液や抗菌性金属イオンの水溶液に浸漬させることにより、容易に触媒性繊維や抗菌繊維を得ることができるという特徴を有する。
【0005】
無機多孔結晶がゼオライトから成る繊維状素材の製造には、木材パルプ等のセルロース系繊維をアルミン酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液中に浸漬してセルロース系繊維を膨潤させたのち、その膨潤したセルロース系繊維をメタケイ酸ナトリウム水溶液中に浸漬して攪拌し、上記水溶液を例えば40℃乃至100℃の温度に保持する状態でセルロース系繊維を所定時間浸漬させて、化学反応によりセルロース系繊維の実体内でゼオライトを生成させるようにする方法が採用される。
【0006】
上記のような繊維状素材の製造において、セルロース系繊維の膨潤、混合および浸漬に際し、樹脂混練用の混練機を採用して試験を行なった。採用した混練機は、外周にジャケットを有する混練槽内に2本の攪拌ロータを並列に設け、各攪拌ロータを相対的に逆方向に回転させて内容物を混練する形式のものである。
【0007】
ところで、上記のような樹脂混練用の混練機においては、混練槽の内周と攪拌ロータとの隙間が極めて小さいため、このような混練機を用いてセルロース系繊維を薬液と共に混練した場合に、上記隙間にセルロース系繊維が挟まり、攪拌ロータの回転によってセルロース系繊維が切断されたり、攪拌ロータが停止するという問題が生じた。
【0008】
ここで、セルロース系繊維が切断された場合、シート化した場合の繊維の絡みが悪く、丈夫なシートを得ることができないという問題が生じるだけでなく、装置に無理な応力がかかり、装置自体が故障するという問題が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような問題点を解決するには、混練槽の内周と攪拌ロータ間の隙間を適正な範囲に設定することが重要である。
【0010】
この発明の課題は、セルロース系繊維を切断することなくゼオライトを生成させることができるようにした繊維状素材の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、内周の少なくとも一部に曲面が形成された混練槽と、その混練槽内に組込まれた複数の攪拌ロータとから成り、前記混練槽の内周と攪拌ロータの相互間に形成される隙間の大きさが3乃至50mmとされた混練機の前記混練槽内にセルロース系繊維と水酸化ナトリウム水溶液およびアルミン酸ナトリウム水溶液から成る混合液を供給して前記攪拌ロータの回転により攪拌し、前記セルロース系繊維内に対する混合液の含浸によってそのセルロース系繊維を膨潤させる工程と、セルロース系繊維の膨潤後に混合槽内にメタケイ酸ナトリウム水溶液を供給し、前記混練槽内を40℃乃至100℃程度に加熱して、前記混合液とメタケイ酸ナトリウム水溶液の化学反応によりセルロース系繊維の実体内でゼオライトを生成させる工程とから成る構成を採用したのである。
【0012】
上記のように、混練槽の内周と攪拌ロータの相互間に形成される隙間の最小値を3乃至50mmとすることにより、親水性高分子繊維状物を切断することなく効果的に薬液を含浸させ、攪拌することができる。
【0013】
ここで、混練槽は、生成物の排出の容易化を図るため、底部に排出口を有するものが好ましい。
【0014】
上記生成物の排出に際し、液体によって混練槽容積の30乃至99%になるよう希釈して流動性を高めるようにしてもよい。
【0015】
前記排出口にスクリュフィーダを接続しておくことにより、流動性の悪い生成物を次工程に容易に搬送させることができる。
【0016】
この発明に係る混練機において、混練の対象物である親水性高分子繊維状物は、水に対して膨潤するものであれば特に制限はない。例えば、天然セルロース(パルプ、ケナフ、木綿、麻、楮、三椏)、再生セルロース(レーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセル)、バクテリアセルロース、化学修飾セルロース、絹、羊毛、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、架橋型ポリビニルアルコール、キチン、キトサン、エチレン酢酸ビニルコポリマーおよびビニルホルマールなどが挙げられる。
【0017】
薬液としては、親水性高分子繊維状物の実体内に含浸するものであれば特に制限はない。水溶液もしくは水に分散したコロイドや、スラリー状物でもよい。例えば、電解質水溶液としては過塩素酸銀水溶液、硝酸銀水溶液、硝酸銅水溶液、硫酸銅水溶液、塩化銅水溶液、硝酸亜鉛水溶液、硫酸亜鉛水溶液、塩化亜鉛水溶液、硝酸カルシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、硝酸マグネシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アルミン酸ソーダ水溶液、メタケイ酸ソーダ水溶液、リン酸水素二ナトリウム水溶液、硝酸アルミニウム水溶液、各種鉱酸、有機酸などで、非電解質水溶液としてはノニオン系界面活性剤水溶液、サイクロデキストリン水溶液などである。水に分散したコロイドやスラリーとしては、例えば、シリカゾル、酸化チタンゾル、粘土ゾル、天然および合成染料、ラテックスエマルジョンなどが挙げられる。
【0018】
含浸もしくは反応による生成物としては、例えば銀−カルボキシメチルセルロース繊維、銅−カルボキシメチルセルロース繊維、亜鉛−カルボキシメチルセルロース繊維、銀−ポリアクリロニトリル繊維、銅−ポリアクリロニトリル繊維、銅−レーヨン、ゼオライト−パルプ、銅ゼオライト−パルプ、ハイドロキシアパタイト−パルプ、ハイドロタルサイト−パルプ、酸化チタン−木綿、シリカゲル−木綿などが挙げられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図示のように、混練槽1は蓋2を上部に有している。蓋2は軸3を中心として開閉自在に支持され、シリンダ4によって開閉される。その蓋2の閉鎖によって混練槽1内は密封状態に保持される。蓋2は小蓋5によって開閉される繊維投入部6を有している。
【0020】
混練槽1の外周にはジャケット7が形成され、そのジャケット7内に供給される蒸気によって混練槽1内が加熱される。
【0021】
また、混練槽1内の底部には二つの円筒面から成る曲面8a、8bが並列に形成され、各曲面8a、8bの曲率中心と同軸上に攪拌ロータ9a、9bが設けられている。
【0022】
攪拌ロータ9a、9bはロータ軸10の外周に2枚の攪拌羽根11を軸方向に位置をずらし、かつ、180°の位相差をもって形成しており、各攪拌羽根11はロータ軸10の周方向にねじれている。
【0023】
上記攪拌ロータ9a、9bは図示省略した駆動装置によって図1の矢印方向に回転される。このとき、攪拌ロータ9a、9bは所定の速度差をもって回転されるようになっている。
【0024】
攪拌ロータ9a、9bの外周と混練槽1の底部の曲面8a、8b間には隙間δが形成され、その隙間δの大きさは3乃至50mm程度とされている。また、2本の攪拌ロータ9a、9bの相互間に形成される隙間の大きさも3乃至50mm程度としている。
【0025】
ここで、隙間δが3mm未満であると、混練槽1内に入れられたセルロース系繊維等の親水性高分子繊維状物の攪拌時に、その親水性高分子繊維状物が隙間δに挟まって攪拌ロータ9a、9bにより切断され易くなり、また、50mmを超えると親水性高分子繊維状物を良好に攪拌させることができない。
【0026】
前記混練槽1の底部における各曲面8a、8bの最低所位置にはそれぞれ排出口12が形成され、各排出口12とその下方に設けられたスクリュフィーダ13とは排出管14で接続され、その排出管14に開閉弁15が組込まれている。
【0027】
実施の形態で示す混練機は上記の構造から成り、セルロース系繊維の実体内で無機多孔結晶、例えばゼオライトを生成させた繊維状素材の製造に際しては、図1に示すように、混練槽1内に連通する第1タンクT1 乃至第3タンクT3 内に、水酸化ナトリウム水溶液、アルミン酸ナトリウム水溶液およびメタケイ酸ナトリウム水溶液をそれぞれ個別に充填しておき、混練槽1内にセルロース系繊維を所定量投入したのち、第1タンクT1 内に充填された水酸化ナトリウム水溶液および第2タンクT2 内に充填されたアルミン酸ナトリウム水溶液(以下、2液をA液という)をポンプP1 、P2 の駆動によって混練槽1内に所定量供給する。
【0028】
A液の定量供給後、2本の攪拌ロータ9a、9bを図1の矢印方向に回転させてセルロース系繊維を攪拌し、A液にセルロース系繊維を浸漬させて、セルロース系繊維内に対するA液の含浸によってセルロース系繊維を膨潤させる。
【0029】
セルロース系繊維の膨潤後、第3タンクT3 内のメタケイ酸ナトリウム水溶液(以下、B液という)をポンプP3 の駆動により混練槽1内に所定量供給する。そのB液の定量供給後、2本の攪拌ロータ9a、9bを図1の矢印方向に回転させ、A液を含浸させたセルロース系繊維およびB液を攪拌する。攪拌後、ジャケット7に対する温水の供給によって混練槽1内を35℃程度に加熱して一定時間保温すると共に、その保温後に、ジャケット7に対する蒸気の供給により混練槽1内を40℃乃至100℃程度に加熱し、実体内におけるA液とB液の反応によってセルロース系繊維の実体内でゼオライトを生成させる。
【0030】
ここで、混練槽1内に充填されたセルロース系繊維の攪拌工程において、混練槽1の底部に形成された曲面8a、8bと攪拌ロータ9a、9bの外周間に形成された隙間δの大きさは3乃至50mm程度であるため、上記隙間δにセルロース系繊維が挟み込まれるという不都合の発生は殆どない。このため、セルロース系繊維を切断することなく効果的に攪拌することができる。
【0031】
なお、ゼオライトが生成された繊維状素材は混練槽1から取り出されるが、その際には、混練槽容積の30乃至99%に水で希釈したのち、開閉弁15を開放して排出管14からスクリュフィーダ13内に排出し、そのスクリュフィーダ13により攪拌しながら取り出して、洗浄および脱水工程に搬送する。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、この発明においては、混練槽の内周と攪拌ロータの相互間に形成された隙間の大きさを3乃至50mmとしたので、親水性高分子繊維状物を切断させることなく効果的に薬液を含浸させ、攪拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る混練機の実施形態を示す一部切欠正面図
【図2】図1に示す混練機の横断平面図
【符号の説明】
1 混練槽
8a、8b 曲面
9a、9b 攪拌ロータ
12 排出口
13 スクリュフィーダ
δ 隙間
Claims (1)
- 内周の少なくとも一部に曲面が形成された混練槽と、その混練槽内に組込まれた複数の攪拌ロータとから成り、前記混練槽の内周と攪拌ロータの相互間に形成される隙間の大きさが3乃至50mmとされた混練機の前記混練槽内にセルロース系繊維と水酸化ナトリウム水溶液およびアルミン酸ナトリウム水溶液から成る混合液を供給して前記攪拌ロータの回転により攪拌し、前記セルロース系繊維内に対する混合液の含浸によってそのセルロース系繊維を膨潤させる工程と、
セルロース系繊維の膨潤後に混合槽内にメタケイ酸ナトリウム水溶液を供給し、前記混練槽内を40℃乃至100℃程度に加熱して、前記混合液とメタケイ酸ナトリウム水溶液の化学反応によりセルロース系繊維の実体内でゼオライトを生成させる工程、
とから成る繊維状素材の製造方法。
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