JP3888613B2 - 核酸の固定方法およびマイクロアレイならびにこれを用いた遺伝子解析法 - Google Patents

核酸の固定方法およびマイクロアレイならびにこれを用いた遺伝子解析法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多種類の遺伝子の発現、機能性、変異、多型等を同時解析するマイクロアレイの作製および遺伝子の解析に好適な核酸の固定方法およびマイクロアレイならびにこれを用いた遺伝子解析法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、様々な生物の遺伝子機能を効率的に解析するための技術開発が進められている。DNAマイクロアレイは、数千〜数万といった多数のDNA分子をスライドガラス等の固相基板表面に高密度に配列させたものである。このDNAマイクロアレイを用いる技術は、多種類の遺伝子発現、機能性、変異、多型等の同時解析を簡便かつ迅速に実現することができ、遺伝子の機能解析や疾病の診断、予防、創薬の開発に有効な手段として注目されている。
【0003】
しかし、DNAマイクロアレイを作製するためには、多数のDNA断片やオリゴヌクレオチドを固相基板表面に効率よく安定的に配列する必要がある。そして、そのように作製されたDNAマイクロアレイ上に蛍光標識されたDNA断片を添加し、固定されているDNA断片と蛍光標識されたDNA断片とがハイブリダイゼーションすることにより相補性を有するDNA断片が検出される。
【0004】
ここで、DNAマイクロアレイの一般的な作製方法としては、DNA断片の種類や固相基板の種類に応じて、(1)DNA断片がcDNA(mRNAを鋳型にして合成した相補的DNA)やPCR産物(cDNAをPCR法によって増幅させたDNA断片)の場合に、これらをスポッターを用いてポリ−L−リジン等のポリ陽イオンで表面処理した固相基板に点着し、DNAの荷電を利用して固相基板に静電結合により固定化する手法と、(2)固定するDNA断片が合成オリゴヌクレオチドの場合に、アミノ基やアルデヒド基等の反応活性基を導入した固相基板表面に前記合成オリゴヌクレオチドを点着させて共有結合により固定化する手法とがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のDNAマイクロアレイ作製方法においては、cDNAやPCR産物の準備に手間と時間がかかり過ぎるという問題があった。また、前述した(1)の静電結合によるDNA断片の固定化方法では、結合力が弱いため配列したDNA断片が剥がれ落ち易いという問題があった。一方、(2)の共有結合によるDNA断片の固定方法では、固相基板の全面に反応活性基がコートされているために、ハイブリダイゼーションするときに蛍光標識したDNA断片が前記反応活性基と結合してしまい、解析時にバックグラウンドが高くなってしまうという問題があった。そのため、ハイブリダイゼーションする前にブロッキング操作を行う必要があるが、このブロッキング処理を行っても完全にバックグラウンドをなくすことは極めて困難であった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、反応活性基のブロッキングおよび洗浄処理が不要となり、安価で簡便かつ迅速にDNA等の核酸を固定化できるとともに、バックグラウンドが低くて感度のよい解析結果が得られ、しかもマイクロアレイの再利用が可能となる核酸の固定方法およびマイクロアレイならびにこれを用いた遺伝子解析法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る核酸の固定方法の特徴は、あらかじめ核酸とシランカップリング剤とを各反応活性基の反応により共有結合させた後に、前記シランカップリング剤の加水分解性基と固相基板表面とを脱水縮合反応により共有結合させて前記核酸を固相基板表面に固定する点にある。
【0008】
そして、このような方法を採用したことにより、核酸と共有結合したシランカップリング剤のみが固相基板表面に存在し、核酸が固定されていない部分にシランカップリング剤が存在しないため、マイクロアレイの作製の際に固相基板表面における反応活性基のブロッキングおよび洗浄処理が不要となる。また、係る方法により作製したマイクロアレイはバックグラウンドが低いため蛍光強度の感度がよくなり、しかも核酸が共有結合により固相基板に強固に固定されているため、マイクロアレイの再利用が可能となる。
【0009】
また、本発明に係るマイクロアレイの特徴は、シランカップリング剤と共有結合した核酸が、そのシランカップリング剤を介して固相基板表面に固定されているマイクロアレイであって、前記固相基板表面のうち前記核酸および前記シランカップリング剤の混合溶液を点着した部分以外に、反応活性基を有するシランカップリング剤が存在していない点にある。
【0010】
そして、このような構成を採用したことにより、核酸が固定されている点着部分以外には反応活性基を有するシランカップリング剤が存在しないため、固相基板表面における反応活性基のブロッキングおよび洗浄処理が不要となる。また、バックグラウンドが低いため蛍光強度の感度がよくなり、しかも核酸が共有結合により固相基板に強固に固定されているため、マイクロアレイの再利用が可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様では、核酸がDNAまたはRNAを含むようにしてもよいし、あるいは、核酸がPNAを含むようにしてもよい。この場合、核酸には、DNAとRNAの複合体(キメラ)やDNAとPNAのキメラも含まれる。
【0012】
また、本発明の一態様では、核酸とシランカップリング剤との結合が、当該核酸の塩基部位に含まれるアミノ基または当該核酸の末端に導入されたアミノ基と、そのアミノ基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基との反応により行われるようにしてもよい。このときのアミノ基と結合可能な有機官能基としては、イソシアネート基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基および活性エステル化したカルボニル基が好ましい。このようにすれば、核酸とシランカップリング剤とは共有結合で強固に結合される。
【0013】
また、本発明の一態様では、核酸とシランカップリング剤との結合が、当該核酸の末端に導入されたチオール基と、そのチオール基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基との反応により行われる。
【0014】
さらに、本発明の一態様では、核酸とシランカップリング剤との結合が、当該核酸の末端に導入されたカルボニル基と、そのカルボニル基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基との反応により行われる。
【0015】
また、本発明の一態様では、固相基板を、その表面に水酸基を導入した無機および有機材料とし、シランカップリング剤の加水分解により生じたシラノール基と水酸基との脱水縮合反応により前記核酸を前記固相基板表面に固定化されることが好ましい。
【0016】
また、本発明の一態様では、固相基板を、その表面に酸化膜を形成した無機材料とし、シランカップリング剤の加水分解により生じたシラノール基と酸化膜との脱水縮合反応により前記核酸を前記固相基板表面に固定化されることが望ましい。
【0017】
また、本発明の一態様では、塩基配列が既知である核酸が用いられることが好ましい。これにより未知の核酸をハイブリダイゼーションしたときに相補的結合により遺伝子を解析できる。
【0018】
また、本発明に係るマイクロアレイを用いた遺伝子解析法の特徴は、マイクロアレイに蛍光標識した核酸断片を含む溶液を添加した後、インキュベートして、前記マイクロアレイに固定されている核酸と蛍光標識した核酸断片とをハイブリダイゼーションすることにより相補性を有する核酸断片を検出する方法であって、前記マイクロアレイとして、シランカップリング剤と共有結合した核酸がそのシランカップリング剤を介して固相基板表面に固定されており、前記固相基板表面の核酸が固定されていない部分にシランカップリング剤が存在していないものを使用している点にある。
【0019】
そして、このような方法を採用したことにより、マイクロアレイのバックグラウンドが低いことから、核酸断片の蛍光強度が高感度で検出され、しかも核酸が共有結合により固相基板に強固に固定されているため、マイクロアレイの再利用が可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る核酸の固定方法およびマイクロアレイならびにこれを用いた遺伝子解析法の実施形態の一例を図面を用いて説明する。ここで、核酸とは、プリン(A,G)塩基またはピリミジン(C,T,U)塩基と、糖とリン酸からなるヌクレオチドを基本単位とし、各ヌクレオチド間が隣り合う糖の3’末端と5’末端間で結合した鎖状ポリヌクレオチドを意味し、例えば、DNA、RNA、PNAの他、DNAとRNAの複合体(キメラ)やDNAとPNAのキメラが挙げられる。
【0021】
本実施形態では、核酸の一例としてDNA断片を使用し、このDNA断片を無機材料からなる固相基板表面に多数配列させるDNAの固定方法およびDNAマイクロアレイならびにこれを用いた遺伝子解析法について説明する。
【0022】
本実施形態におけるDNAの固定方法は、図1に示すように、まずDNA断片と架橋試薬とを結合させた後に、この架橋試薬を介して前記DNA断片を無機材料からなる固相基板の表面に固定するようになっている。
【0023】
架橋試薬には、無機材料からなる固相基板の表面およびDNA断片のそれぞれと結合可能なシランカップリング剤が使用される。このシランカップリング剤の特徴は、1分子中に無機材料との共有結合可能な加水分解性基と、有機物質との共有結合可能な有機官能基とを同時に有していることである。本実施形態では、加水分解性基としてアルコキシシランを備えているとともに、有機官能基としてDNA断片の末端に導入されたアミノ基やチオール基、カルボニル基と結合するための反応活性基を備えている。
【0024】
例えば、DNA断片の末端にアミノ基が導入されている場合、このアミノ基と結合可能なシランカップリング剤の反応活性基としては、イソシアネート、エポキシ、ハロゲン化アルキル基および活性エステル化したカルボニル基が用いられる。活性エステル化したカルボニル基は、例えばスクシイミド基である。
【0025】
また、DNA断片の末端にチオール基が導入されている場合には、このチオール基と結合可能なシランカップリング剤の反応活性基として、例えばマレイミド基やチオール基が用いられる。
【0026】
さらに、DNA断片の末端にカルボニル基が導入されている場合には、このカルボニル基と結合可能なシランカップリング剤の反応活性基として、例えばアミノ基が用いられる。
【0027】
なお、DNA断片の末端に導入するアミノ基、チオール基およびカルボニル基のうち、特にアミノ基は、反応制御がしやすくて取り扱いが容易であるため好ましい。
【0028】
一方、前述のように、DNA断片には、3’末端または5’末端にアミノ基やチオール基、カルボニル基が導入されているが、シランカップリング剤との結合にアミノ基を用いる場合には、DNAの塩基部位に含まれるアミノ基を利用することも可能である。しかし、DNAの3’末端や5’末端にアミノ基を導入する方がより好ましい。なぜなら、塩基部位は立体構造化されているため、反応活性基との結合が阻害され易いのに対し、3’末端や5’末端にはそのような阻害条件がなく安定かつ効率的な結合を達成できるからである。
【0029】
また、DNA断片は、cDNA等をPCR法により増幅して調製したものや2〜100量体の合成DNAを使用して調製したものが用いられる。特に、2〜100量体の合成DNAを使用すると、特異性の向上や固定化するDNA断片の調製時間を短縮することができる。
一方、固相基板は、シランカップリング剤のアルコキシシランが結合できる材質であれば適宜選択してよいが、基板表面に水酸基が導入された無機および有機材料や、酸化膜が導入されている無機材料が好ましい。例えば、ガラス、酸化薄膜が形成されたシリコンやアルミニウムや鉄等である。特に、ガラスまたはシリコンがより好ましい。
【0030】
つぎに、本実施形態におけるDNAの固定方法について、図2を参照しつつより具体的に説明する。まず、DNA断片とシランカップリング剤とを混合した水溶液を無機材料からなる固相基板表面に点着する。この結果、シランカップリング剤のアルコキシル基が加水分解によりシラノール基に変わり、基板表面の水酸基あるいは酸化薄膜との水素結合により吸着される。その後に減圧下において乾燥させて溶媒を除去し、さらに80℃で乾燥することにより固定化する。
【0031】
このときの乾燥により、シラノール基と基板表面の水酸基あるいは酸化膜との脱水縮合反応により共有結合による固定化がなされる。また、DNA断片の点着後に水溶液や有機溶媒等で後処理を施すことにより、固定化に寄与していない余分なDNA断片を除去し、固定化量を均一にすることができる。
【0032】
このように本実施形態におけるDNAの固定方法では、固相基板表面にコーティングのように反応活性基を導入していない。したがって、本実施形態により作製されるDNAマイクロアレイは、シランカップリング剤がDNA断片との結合部分にのみ存在し、固相基板表面のDNA断片が固定されていない部分にシランカップリング剤が存在しない構造を有している。このため、DNAマイクロアレイの作成過程におけるブロッキング処理が不要であるし、蛍光標識したDNA断片がDNAマイクロアレイ上に添加されても、固定化されたDNA断片以外の部分に結合することがないため、蛍光強度を感度よく検出できる。
【0033】
つぎに、本実施形態におけるDNAマイクロアレイを用いた遺伝子解析法について説明する。
【0034】
まず、本実施形態のDNAマイクロアレイ上に、蛍光標識された試料DNA断片をハイブリダイゼーション用の溶液に混合させて固相基板上に添加する。蛍光標識には、一般的に利用されている物質、例えば、シアニン色素(Cy3,Cy5等)、ローダミン(ROX,TAMRA等)、フルオレセイン(FITC,FAM等)が使用される。
【0035】
また、ハイブリダイゼーションは、公知の手法により標識された試料DNA断片を調製し、適量を添加することで行われる。ハイブリダイゼーションは、室温から70℃の温度範囲で6時間から24時間行うことが好ましい。この時点で、固定されたDNAの分子と相補的な塩基配列をもつ蛍光標識されたDNA中に含まれている分子は、選択的に結合する。その後、固相基板を洗浄液で洗浄して室温で乾燥させる。
【0036】
そして、固相基板表面の蛍光強度をスキャニング装置で測定し、その蛍光強度により遺伝子発現のレベルをモニタリングすることができる。これにより多数の遺伝子の発現プロファイルを一度に相対的に比較することができる。
【0037】
ここで、従来のDNAマイクロアレイは、微量の試料DNA断片でハイブリダイゼーションして検出できることが特徴であった。しかし、DNA断片の固定が非共有結合によるため、一度使用したDNAマイクロアレイを再利用することは困難であった。
【0038】
本実施形態によりDNAマイクロアレイを作製した場合、シランカップリング剤を介し、DNA断片と固相基板表面が共有結合により安定的に固定化されているため、複数回の再利用が可能になる。また、シランカップリング剤へDNA断片を直接導入するため、シラノール基の自己組織化により規則的に基板表面に配列、固定化させることができる。この結果、試料DNA断片の定量性の向上が期待できる。
【0039】
つぎに、本実施形態におけるDNAの固定方法およびDNAマイクロアレイならびにこれを用いた遺伝子解析法について、実証も含めて行った実験結果を各実施例として説明する。
【0040】
『実施例1』
本実施例1では、スライドガラス表面にDNA断片を固定し、その固定の強さを確認する実験を行った。
【0041】
まず、シランカップリング剤を含む0.005質量%の3−イソシアネートプロピルトリエソキシシランメタノール溶液を1μlと、5’末端に蛍光標識であるシアニン色素Cy5を導入するとともに3’末端にアミノ基を導入した1mMのDNA断片を1μlと、緩衝液3μlとをそれぞれ混合して放置した。そして、その混合溶液を適度な濃度に希釈した後、標準のスライドガラスに点着し、減圧下にて乾燥を行った。その後、80℃にて固定化を行い、メタノールおよび蒸留水を用いて洗浄し、乾燥させた。これにより、シランカップリング剤のアルコキシル基が加水分解によりシラノール基に変わり、脱水縮合反応を経てスライドガラスと共有結合し、DNA断片が安定的に固定される。
【0042】
そして、スライドガラス表面の蛍光強度をスキャニング装置で測定したところ、DNA断片を固定化した部分での蛍光強度は329であった。そこで、そのDNA断片の固定の強さを確認するため、スライドガラスを38℃で30分間洗浄処理をし、その後、さらに80℃の蒸留水で20分間洗浄処理を行った。
【0043】
その結果、最初の洗浄後の蛍光強度は272、さらなる洗浄後の蛍光強度は219と観測された。このような厳しい条件で洗浄を行っても、蛍光強度に大きな変化は観測されず、DNA断片がスライドガラスと共有結合により強く固定されていることが明らかになった。また、スライドガラス表面は、点着した部分以外にはDNA断片および反応活性基が存在しないため、反応活性基のブロッキングおよび洗浄の操作を行う必要がない。そのため、操作が簡便でバックグラウンドが非常に低い良好な解析結果を得ることができる。
【0044】
『実施例2』
つぎに、実施例2として、DNAマイクロアレイに試料DNA断片をハイブリダイゼーションさせて検出する実験を行った。
【0045】
まず、0.005質量%の3−イソシアネートプロピルトリエソキシシランメタノール溶液を1μlと、末端にアミノ基を導入した1mMのDNA断片を1μlと、緩衝液3μlとをそれぞれ混合し放置した。この混合溶液を適度な濃度に希釈した後、標準のスライドガラスに点着し、減圧下にて乾燥を行った。その後、80℃にて固定化を行い、メタノールおよび蒸留水を用いて洗浄し、乾燥を行った。これによりDNAマイクロアレイの作製を完了する。
【0046】
つづいて、5’末端にシアニン色素Cy5が蛍光標識された30量体の試料DNA断片をハイブリダイゼーション用溶液(0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム))および2×SSC(塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム混合水溶液)に混合する。この試料DNA断片を含む溶液を前記DNAマイクロアレイのスライドガラス上に添加し、カバーガラスで保護した後、チャンバー内にて38℃で一晩インキュベートした。その後、洗浄液で洗浄した後に室温で乾燥した。
【0047】
そして、スライドガラス表面の蛍光強度をスキャニング装置で測定したところ、DNA断片を固定化した部分において蛍光が観測された。このときの蛍光強度は30であった。また、スライドガラス表面は、DNA断片を点着した部分以外には、DNA断片および反応活性基が存在しないため、反応活性基のブロッキングおよび洗浄の操作を行う必要がない。そのため、操作が簡便でバックグラウンドが低い良好な解析結果を得ることができた。そして、本実施例2の固定化法により作製されたDNAマイクロアレイを用いて、固定されているDNA断片と相補的な配列を有する試料DNA断片を検出できることが明らかになった。
【0048】
『実施例3』
実施例3では、実施例2において作製し、試料DNA断片の検出に供したDNAマイクロアレイの再利用の可能性について実験した。
【0049】
まず、実施例2で使用したDNAマイクロアレイの再利用を行うため、前記DNA断片を80℃の蒸留水に20分間浸して変性を行った。その後、そのスライドガラス表面の蛍光強度をスキャニング装置で測定したところ、蛍光強度は30から5に減少した。
【0050】
つづいて、前述の変性処理したDNAマイクロアレイについて、実施例2と同じ操作により試料DNA断片のハイブリダイゼーションを行い、スライドガラス表面の蛍光強度をスキャニング装置で測定した。その結果、DNA断片を固定化した部分の蛍光強度が25に増加し、再検出が確認された。特に、本実施例2のDNAマイクロアレイは、余分なシランカップリング剤が塗布されていないためバックグラウンドが低く、より鮮明に蛍光強度を確認できる。
【0051】
したがって、本実施例の固定方法により、シランカップリング剤と結合させたDNA断片とスライドガラス表面とを共有結合によって安定に固定化することによりDNAマイクロアレイを再利用できることが明らかになった。
【0052】
以上より、前述した本実施形態によれば、固相基板に反応活性基コート処理を施していないスライドガラス等を使用し、シランカップリング剤を介して共有結合によってDNA断片を固定するため、反応活性基のブロッキングおよび洗浄処理が不要となり安価で簡便かつ迅速にDNA断片を固定化できる。また、バックグラウンドを低くして感度の良好な解析結果が得られ、しかもDNAマイクロアレイを再利用することができる。
【0053】
なお、本発明の本実施形態の各構成は前述したものに限るものではなく、適宜変更することができる。
【0054】
例えば、前述した実施形態では、核酸の一例としてDNA断片を用いて説明しているが、RNAやPNA、DNAとRNAとのキメラ、DNAとPNAとのキメラ等を用いた場合であっても同様の効果が得られる。また、基板として表面に酸化薄膜を形成したシリコンを用いた場合においても同様の効果を得ることができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、反応活性基のブロッキングおよび洗浄処理が不要となり、安価で簡便かつ迅速にDNA等の核酸を固定化できる。また、バックグラウンドが低くて感度のよい解析結果が得られ、しかもマイクロアレイを再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る核酸の固定方法の実施形態の一例を示す模式図
【図2】 図1をより具体的に示した模式図

Claims (22)

  1. あらかじめ核酸とシランカップリング剤とを各反応活性基の反応により共有結合させた後に、前記シランカップリング剤の加水分解性基と固相基板表面とを脱水縮合反応により共有結合させて前記核酸を固相基板表面に固定することを特徴とする核酸の固定方法。
  2. 前記核酸がDNAまたはRNAを含む請求項1に記載の固定方法。
  3. 前記核酸がPNAを含む請求項1に記載の固定方法。
  4. 前記核酸と前記シランカップリング剤との結合が、当該核酸の塩基部位に含まれるアミノ基または当該核酸の末端に導入されたアミノ基と、そのアミノ基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基との反応によることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固定方法。
  5. 前記アミノ基と結合可能なシランカップリング剤の有機官能基として、イソシアネート基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基および活性エステル化したカルボニル基を用いることを特徴とする請求項4に記載の核酸の固定方法。
  6. 前記核酸と前記シランカップリング剤との結合が、当該核酸の末端に導入されたチオール基と、そのチオール基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基との反応によることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固定方法。
  7. 前記核酸と前記シランカップリング剤との結合が、当該核酸の末端に導入されたカルボニル基と、そのカルボニル基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基との反応によることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の固定方法。
  8. 前記固相基板をその表面に水酸基を導入した無機および有機材料とし、シランカップリング剤の加水分解により生じたシラノール基と水酸基との脱水縮合反応により前記核酸を前記固相基板表面に固定化することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固定方法。
  9. 前記固相基板をその表面に酸化膜を形成した無機材料とし、シランカップリング剤の加水分解により生じたシラノール基と酸化膜との脱水縮合反応により前記核酸を前記固相基板表面に固定化することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固定方法。
  10. 前記核酸として、その塩基配列が既知であるものを用いることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の固定方法。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の核酸固定方法を用いて核酸が固相基板表面に固定されていることを特徴とするマイクロアレイ。
  12. シランカップリング剤と共有結合した核酸が、そのシランカップリング剤を介して固相基板表面に固定されているマイクロアレイであって、前記固相基板表面のうち前記核酸および前記シランカップリング剤の混合溶液を点着した部分以外に、反応活性基を有するシランカップリング剤が存在していないことを特徴とするマイクロアレイ。
  13. 前記核酸がDNAまたはRNAを含む請求項12に記載のマイクロアレイ。
  14. 前記核酸がPNAを含む請求項12に記載のマイクロアレイ。
  15. 前記核酸と前記シランカップリング剤との結合に、当該核酸の塩基部位に含まれるアミノ基または当該核酸の末端に導入されたアミノ基と、そのアミノ基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基とが用いられていることを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
  16. 前記アミノ基と結合可能なシランカップリング剤の有機官能基として、イソシアネート基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基および活性エステル化したカルボニル基が用いられていることを特徴とする請求項15に記載のマイクロアレイ。
  17. 前記核酸と前記シランカップリング剤との結合に、当該核酸の末端に導入されたチオール基と、そのチオール基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基とが用いられていることを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
  18. 前記核酸と前記シランカップリング剤との結合には、当該核酸の末端に導入されたカルボニル基と、そのカルボニル基と結合可能な当該シランカップリング剤の有機官能基とが用いられていることを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
  19. 前記固相基板を、その表面に水酸基を導入した無機材料とし、その水酸基とシランカップリング剤の加水分解性基とが共有結合していることを特徴とする請求項12から請求項18のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
  20. 前記固相基板を、その表面に酸化膜を形成した無機材料とし、その酸化膜とシランカップリング剤の加水分解性基とが共有結合していることを特徴とする請求項12から請求項18のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
  21. 前記核酸として、その塩基配列が既知であるものを用いることを特徴とする請求項12から請求項20のいずれか1項に記載のマイクロアレイ。
  22. 請求項11から請求項21のいずれか1項に記載のマイクロアレイに、蛍光標識した核酸断片を含む溶液を添加した後、インキュベートして、前記マイクロアレイに固定されている核酸と蛍光標識した核酸断片とをハイブリダイゼーションすることにより相補性を有する核酸断片を検出する遺伝子解析法。
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