JP3888366B2 - 銅合金の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、銅合金の製造方法に関し、特に各種の電子機器の端子、コネクタのような部品に用いられる銅合金の製造方法に関する。
近年,携帯電話やノートPC等の電子機器においては、小型化、薄型化及び軽量化が進行してきているが、これに伴ってそれらの電子機器を組み立てる端子、コネクタのような部品も、より小型化で電極間ピッチもより狭いものが使用されるようになってきている。このような小型化によって部品に使用される導電材料の厚さも薄肉になっているが、薄肉でも部品の接続の信頼性を保つ必要から、導電材料はより高強度で高いばね性を有する材料が要求されている。
また、上記のような部品は製造過程で複雑な曲げ加工が施されるので、曲げ加工時の割れを防ぐために、使用される導電材料は上述したような高強度で高いばね性を有すると同時に、伸びの高い良好な加工性を有することも要求されている。さらに、高強度、高いばね性及び伸びの高い良好な加工性を有する導電材料でも、圧延方向と圧延直交方向とで特性差があることは好ましくなく、いずれの方向でも良好な特性を示すことが重要である。
一方、電子機器の高機能化に伴う電極数の増加や通電電流の増加によって、通電時に部品に発生するジュール熱も多量になりつつあるので、このような多量なジュール熱を抑制するために、従来以上に導電率の高い材料への要求が高まっている。こうした高導電率材料は、用途の多様化に伴う付属品の増加により通電電流の増加が急速に進んでいる、自動車向けの電装品のような電子機器の端子、コネクタのような部品で特に強く求められている。従来において、このような高導電率材料としては、黄銅(Zn‐Cu合金)や、りん青銅(P‐Sn‐Cu合金)
が一般に広く使用されている。
ところで、上記の黄銅やりん青銅では、前述したような端子、コネクタのような部品に使用される導電材料としての要求に十分に応えられない問題が生じている。まず、黄銅では,強度、ばね性及び導電率の不足によって、部品の小型化及び通電電流の増加に対応することができない。次に、りん青銅では、黄銅よりは強度及びばね性が高いものの、導電率が20%IACS程度と低いことから通電電流の増加に対応することができない。さらに、りん青銅は耐マイグレーション性に劣るという欠点もある。耐マイグレーション性とは、部品の電極間に結露等により水分が付着した際に、陽極側のCuがイオン化して陰極側に析出して、最終的に電極間が短絡に至る現象である。このように耐マイグレーション性に劣ることは、高湿環境で使用される自動車に装備される電子機器の部品に用いられる導電材料としては致命的であり、これは小型化で電極間ピッチがより狭くなっている部品においても考慮する必要がある。
上記のような黄銅やりん青銅が有している問題を改善する導電材料として、Cu‐Ni‐Siを主成分とする銅合金が知られている(例えば、特許文献1、2参照。) 特許文献1で提案されている銅合金は、例えばNiが2〜4.8質量%、Siが0.2〜1.4質量%、Mgが0.05〜0.45質量%、及び残部がCuから成ることを特徴としている。一方、特許文献2で提案されている銅合金は、Niが0.4〜4.0質量%、Siが0.1〜1.0質量%、Znが1.0〜5.0質量%、Mgが0.1〜0.5質量%、Snが0.1〜0.5質量%、Cr、Ti、Zrのいずれか一種以上が0.001〜0.01質量%、及び残部がCuから成ることを特徴としている。
特許第2572042号公報(第5頁、左欄下から5〜7行目、第1図) 特許第2977845号公報(第2頁、左欄下から19〜24行目、第4図)
ところで、特許文献1、2で提案されている銅合金では、いずれもCu‐Ni‐Siを主成分としているが、高強度及び高いばね性を実現しようとした場合には、曲げ加工性の悪化や圧延方向と圧延直交方向とで特性差が大きくなって特性の異方性が大きくなる、という問題がある。
本発明の目的は、高強度、高いばね性及び曲げ加工性を両立し、かつ特性の異方性を小さくすることができるようにした銅合金の製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、Cuを主成分とする合金素材に複数の処理を施して所望の銅合金を得る銅合金の製造方法に係り、Niが1.0〜5.0質量%、Siが0.2〜1.0質量%、Znが1.0〜5.0質量%、Pが0.003〜0.3質量%、及び残部がCuから成り、前記NiとSiとの質量比Ni/Siが4.5〜5.5である前記合金素材を準備し、この合金素材を目的とする最終板厚の1.1〜1.2倍の厚さまで第1の冷間圧延を施す工程と、前記合金素材を700〜850℃に昇温した後、25℃/分以上の降温速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理を施す工程と、前記合金素材を前記目的とする最終板厚まで第2の冷間圧延を施す工程と、前記合金素材を400〜500℃に昇温した後、30分〜3時間保持する第2の熱処理を施す工程とを含むことを特徴とする銅合金の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、Cuを主成分とする合金素材に複数の処理を施して所望の銅合金を得る銅合金の製造方法に係り、Niが1.0〜5.0質量%、Siが0.2〜1.0質量%、Znが1.0〜5.0質量%、Pが0.003〜0.3質量%、及び残部がCuから成り、前記NiとSiとの質量比Ni/Siが4.5〜5.5である前記合金素材を準備し、この合金素材を目的とする最終板厚の1.1〜1.2倍の厚さまで第1の冷間圧延を施す工程と、前記第1の冷間圧延を施した合金素材を700〜850℃に昇温した後、25℃/分以上の降温速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理を施す工程と、前記第1の熱処理を施した合金素材を400〜500℃に昇温した後、30分〜3時間保持する第2の熱処理を施す工程と、前記第2の熱処理を施した合金素材を前記目的とする最終板厚まで第2の冷間圧延を施す工程とを含み、前記第2の冷間圧延を施す工程の後に、前記合金素材を300〜500℃に昇温する第3の熱処理を施す工程を実施することを特徴とする銅合金の製造方法を提供する。
この発明の銅合金の製造方法によれば、合金素材の熱処理前の板厚、熱処理の加熱温度等を規定範囲に収めることにより、引張強さ、耐力、伸び及び導電率がいずれも大きな値が得られ、例えば引張強さが688N/mm、0.2%耐力が614N/mm、伸びが15%及び導電率が42%IACSといずれも大きな値が得られた。したがって、高強度、高いばね性及び曲げ加工性を両立し、かつ特性の異方性を小さくすることができる。また、通電電流の増加にも対応することができる。
Niが2.5質量%、Siが0.5質量%、Znが1.7質量%、Pが0.15質量%、及び残部がCuから成る組成を有する銅合金において、NiとSiとの質量比Ni/Siが4.5〜5.5のインゴット(合金素材)を鋳造し、このインゴットを押出加工して板状に加工した後、厚さ0.35mmまで第1の冷間圧延を施す。この第1の冷間圧延は、以後の熱処理後に施される第2の冷間圧延で適度な量の格子欠陥を導入するために行う。次に、第1の冷間圧延後のインゴットを770℃に昇温して10分間保持した後、約300℃/分の降温速度で室温(約20℃)まで冷却する第1の熱処理を施す。次に、第1の熱処理後のインゴットを目的とする最終板厚である0.3mmまで第2の冷間圧延を施す。次に、第2の冷間圧延後のインゴットを450℃に昇温した後、2時間保持する第2の熱処理を施す。
以下、本発明の実施例1である銅合金の製造方法について工程順に説明する。
まず、Niが2.5質量%、Siが0.5質量%、Znが1.7質量%、Pが0.15質量%、及び残部がCuから成る組成を有する銅合金を、無酸素銅を母材にして高周波溶解炉で溶製して、NiとSiとの質量比Ni/Siが4.5〜5.5で、直径30mm、長さ250mmのインゴット(合金素材)を鋳造した。
次に、このインゴットを850℃に加熱して押出加工し、幅20mm、厚さ8mmの板状に加工した後、厚さ0.35mmまで冷間圧延(第1の冷間圧延)を施した。この第1の冷間圧延は、次の第1の熱処理で銅合金中に再結晶を起こし易くさせるとともに、再結晶後に大きさの揃った結晶粒組織を得るために行う。
次に、第1の冷間圧延後のインゴットを770℃に昇温して10分間保持した後、水中に投入して約300℃/分の降温速度で室温(約20℃)まで冷却する第1の熱処理を施した。この第1の熱処理は、合金成分を均一微細に分散析出させるために不均一な析出物を一旦銅母材中に再固溶するために行う。また、強い冷間圧延で歪んだ状態にある結晶組織を再結晶させて異方性の小さい結晶組織に変えるとともに、伸びを向上させることによって良好な曲げ加工を実現するために行う。
次に、第1の熱処理後のインゴットを厚さ0.3mm(目的とする最終板厚)まで冷間圧延(第2の冷間圧延)を施した。この第2の冷間圧延は、合金中に格子欠陥を適度に導入して、良好な耐力を確保するために行う。次に、第2の冷間圧延後のインゴットを450℃に昇温した後、2時間保持する第2の熱処理を施した。この第2の熱処理は、NiとSiとによりSi化合物を形成して合金中に微細な形状で析出させて、高強度と高導電率を両立させるために行う。以上の複数の処理を施すことにより、表1に示すように、所望の銅合金となる試料1を製造した。
Figure 0003888366
この試料1は、表1から明らかなように、上記の第1の熱処理前(すなわち、熱処理前)のインゴットの板厚0.35mmに対して、第2の熱処理後(すなわち、熱処理後)のインゴットの目的とする最終板厚は0.3mmとなって、その板厚比は(0.35/0.3)≒1.17となる。
次に、本発明の実施例2である銅合金の製造方法について工程順に説明する。
この実施例2の銅合金の製造方法が上述の実施例1のそれと大きく異なるところは、第1の冷間圧延を施した後に第1の熱処理及び第2の熱処理を続けて施し、次に第2の冷間圧延を施した後に、新たに追加した第3の熱処理を施すようにした点である。
まず、実施例1と同じ組成を有するインゴット(合金素材)を用いて、実施例1と同じ条件で鋳造、押出加工した後、インゴットを厚さ0.35mmまで冷間圧延(第1の冷間圧延)を施した。
次に、第1の冷間圧延後のインゴットを、実施例1と同じく770℃に昇温して10分間保持した後、水中に投入して約300℃/分の降温速度で室温(約20℃)まで冷却する第1の熱処理を施した。次に、第1の熱処理後のインゴットを450℃に昇温した後、2時間保持する第2の熱処理を施した。
次に、第2の熱処理後のインゴットを厚さ0.3mm(目的とする最終板厚)まで冷間圧延(第2の冷間圧延)を施した。次に、第2の冷間圧延後のインゴットを400℃に昇温した後、5分間保持する第3の熱処理を施した。第3の熱処理は、第2の冷間圧延を施すことにより一般に冷間圧延は伸びの低下を伴うために、この伸びを回復させるために行う。以上の複数の処理を施すことにより、表1に示すように、所望の銅合金となる試料2を製造した。このように、第1の冷間圧延後に第1及び第2の熱処理を続けて施し、次に第2の冷間圧延を施した後に新たに追加した第3の熱処理を施しても、実施例1と同様な良好な特性を得ることができる。
この試料2は、表1から明らかなように、実施例1により製造された試料2と同様に熱処理前のインゴットの板厚0.35mmに対して、熱処理後のインゴットの目的とする最終板厚は0.3mmとなって、その板厚比は試料1と同じになる。
次に、実施例1、2に対して、比較例による銅合金の製造方法について説明する。
実施例1、2と同じ組成を有するインゴット(合金素材)を用いて、前述したような複数の処理を施して所望の銅合金を製造する場合、熱処理前の板厚、第1の熱処理及び第2の熱処理の各加熱条件を表1に示すように設定して、試料3〜8を製造した。ここで、試料3〜8の熱処理前の板厚は、表1に示したような板厚比となるように設定した。例えば、試料3の例では板厚比が1.07なので、熱処理前の板厚は(1.07×0.3=0.321mm)となる。同様にして、試料4の例では板厚比が1.27なので、熱処理前の板厚は(1.27×0.3=0.381mm)となる。
次に、表2を参照して、実施例1,2により製造された各試料1,2の効果を、比較例により製造された試料3〜8と比較して説明する。
Figure 0003888366
各試料1,2及び試料3〜8について、引張強さ、0.2%耐力、伸び及び導電率を測定したところ、表2に示すような結果が得られた。表2から明らかなように、試料1は、引張強さが688N/mm、0.2%耐力が614N/mm、伸びが15%及び導電率が42%IACSといずれも大きな値が得られ、高強度及び高いばね性と曲げ加工性を両立し、かつ特性の異方性を小さくすることができることを示している。また、通電電流の増加にも対応することができることを示している。
また、試料2は、引張強さが684N/mm、0.2%耐力が620N/mm、伸びが13%及び導電率が42%IACSと、試料1と略同様に大きな値が得られ、高強度及び高いばね性と曲げ加工性を両立し、かつ特性の異方性を小さくすることができることを示している。また、通電電流の増加にも対応することができることを示している。
一方、試料3、4は、ともに熱処理前の板厚が規定範囲(例えば前記0.35mm)から外れ、試料3は板厚が薄過ぎる(前記0.321mm)ので特に0.2%耐力が488N/mmと低い値にとどまり、引張強さも660N/mmと低くなっている。また、試料4は板厚が厚過ぎる(前記0.381mm)ので熱処理後の冷間圧延で伸びが低下して6%と低く、曲げ加工性が悪化する。
また、試料5、6は、ともに第1の熱処理の加熱温度が規定範囲(例えば前記770℃)から外れ、試料5は加熱温度が低すぎる(650℃)ので引張強さが580N/mm、0.2%耐力が530N/mmと低くなっている。また、試料6は加熱温度が高過ぎる(880℃)ので引張強さが602N/mm、0.2%耐力が554N/mmと低くなっている。
また、試料7,8は、ともに第2の熱処理の加熱温度が規定範囲(例えば前記450℃)から外れ、試料7は加熱温度が低過ぎる(370℃)ので特に導電率が35%IACSと低い値にとどまり、引張強さも588N/mm、0.2%耐力も536N/mmと低くなっている。また、試料8は加熱温度が高過ぎる(530℃)ので特に導電率は44%IACSと高い値になるが、引張強さが592N/mm、0.2%耐力が550N/mmと低くなっている。
このように、比較例により製造された試料3〜8では、熱処理前の板厚が規定範囲から外れたり、第1の熱処理及び第2の加熱温度が規定範囲から外れているので、試料1、2のように、引張強さ、0.2%耐力、伸び及び導電率のいずれもが十分な値とならないので、高強度及び高いばね性と曲げ加工性を両立し、かつ特性の異方性を小さくすることができない。
実施例1、2においては、板厚比を1.17に選んだ例で説明したが、この値に限ることなく板厚比は1.1〜1.2に選べば、略同様な効果を得ることができる。規定範囲より板厚が厚い場合は熱処理の冷間圧延で伸びの低下が大きくなり、良好な曲げ加工性が確保できない。一方、規定範囲よりも板厚が薄い場合は熱処理後の冷間圧延で導入される格子欠陥が少なくなるため、低い耐力しか得られない。
また、第1の熱処理の加熱温度を770℃に選び約300℃/分の降温速度で室温(約20℃)まで冷却する例で説明したが、これらの値に限ることなく加熱温度を700〜850℃に選び、25℃/分以上の降温速度で300℃以下まで冷却しても、略同様な効果を得ることができる。このような温度範囲及び降温速度に選んで第1の熱処理を行うことにより十分に固溶を進行させ、冷却中に粗大な析出物が再形成されるのを防止することができる。また、第1の熱処理では、再結晶によって結晶組織を異方性の小さい組織に変え、同時に伸びを向上させることで良好な曲げ加工性を確保することも必要となる。この第1の熱処理において、加熱温度が850℃を超えると、結晶粒の粗大化が起こって曲げ加工性が低下する危険がある。
また、第2の熱処理の加熱温度及び保持時間についても、450℃で2時間に選んだ例で説明したが、これらの値に限ることなく、400〜500℃で30分〜3時間に選べば、略同様な効果を得ることができる。第2の熱処理では、時効を目的として微細析出物を形成することで強度、導電率を向上させることが重要になる。第2の熱処理の処理条件が規定範囲である400〜500℃で30分〜3時間よりも高温で長時間になると、析出物が粗大化して十分な強度が得られなくなる。一方、低温で短時間になると、析出が十分に進行しないので、強度、導電率とも十分な値が得られない。
また、実施例2のように第1の冷間圧延後に第1及び第2の熱処理を続けて施して、次に第2の冷間圧延を施した場合にも実施例1と同様な良好な特性が得られる。この場合、第2の冷間圧延後に伸びを回復させる目的で第3の熱処理を400℃で施しているが、この値に限ることなく、300〜500℃に選べば、略同様な効果を得ることができる。ここで、加熱温度が300℃未満になると伸びは回復せず、一方、過熱温度が500℃を超えると強度、耐力が低下する。
次に、本発明の各実施例の銅合金の製造方法に用いる、合金素材について説明する。前記の組成を有する合金素材において、Ni、Siは、銅合金中にSi化合物を形成して分散析出させる。質量比Ni/Siを特定範囲に規定することにより、導電率を低下させる原因となる銅合金中の固溶元素量を抑えながら、析出物の分散強化による効果で強度及びばね性を向上させる働きを有する。Siの添加量が0.2質量%未満では効果的なSi化合物が形成されず、一方、Siの添加量が1.0質量%を超えると導電率に対する悪影響が大きくなる。よって、Siの組成範囲は0.2〜1.0質量%に規定される。
NiはSi化合物を効果的に形成させるとともに、高強度と高導電率を両立させる働きを有するが、このためにはNiの組成範囲は1.0〜5.0質量%に、かつ質量比Ni/Siは4.5〜5.5に規定される。Niの添加量が1.0質量%未満ではSi化合物の形成量が不十分になり、強度、ばね性が不足する。一方、Niの添加量が5.0質量%を超えると、余剰のNiが銅合金中に固溶して導電率を低下させる。さらに、質量比Ni/Siが4.5未満ではSi化合物の形成時にSiが過剰となり、一方、質量比Ni/Siが5.5を越えると逆にNiが過剰となる。このような過剰成分は銅合金中に固溶状態で存在するため、導電性に対する悪影響が大きくなる。
Znは強度及びばね性を向上させるとともに、耐マイグレーション性を大幅に向上させ、さらに電子部品材料として必要なはんだ濡れ性やSnめっき密着性を改善させる働きを有する。このような効果を得るために、Znの組成範囲は1.0〜5.0質量%に規定される。特にZnの添加量が5.0質量%を越えると導電性に対する悪影響が大きくなる。
Pは銅合金中にP化合物を形成する。Pの添加量が0.003質量%未満では十分な量のP化合物が形成されず、満足できる強度が得られない。一方、Pの添加量が0.3質量%を越えると鋳造時にP化合物の偏析に起因する鋳塊割れが起こり易くなる。よって、Pの組成範囲は0.003〜0.3質量%に規定される。
このように、本発明の銅合金の製造方法によれば、合金素材の熱処理前の板厚、熱処理の加熱温度等を規定範囲に収めることにより、引張強さ、耐力、伸び及び導電率がいずれも大きな値が得られる。したがって、高強度、高いばね性及び曲げ加工性を両立し、かつ特性の異方性を小さくすることができる。また、通電電流の増加にも対応することができる。
また、本発明の各実施例により製造された銅合金は、従来用いられている黄銅、りん青銅に比べて高導電率を有し、かつりん青銅並の高強度及び耐力を有する。
また、従来の銅合金に比べて優れた曲げ加工性を兼備しており、特性の異方性も小さくなる。このような利点は、通電電流の増加が急速に進んでいる自動車向け電子機器の端子、コネクタのような部品に有効に活用することができ、部品の設計自由度を大幅に広げることができる。また、製造コストの面でも、本発明により製造される銅合金は、従来例と同等のコストで製造することが可能であり、実用上の問題はない。
以上、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的名構成は実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれる。例えば、実施例1、2では電子機器の端子、コネクタのような部品に使用される導電材料を対象として説明してきたが、それらの部品に限らずに、IC、LSI等のリードフレームのような他の部品にも適用することができる。

Claims (2)

  1. Cuを主成分とする合金素材に複数の処理を施して所望の銅合金を得る銅合金の製造方法であって、
    Niが1.0〜5.0質量%、Siが0.2〜1.0質量%、Znが1.0〜5.0質量%、Pが0.003〜0.3質量%、及び残部がCuから成り、前記NiとSiとの質量比Ni/Siが4.5〜5.5である前記合金素材を準備し、この合金素材を目的とする最終板厚の1.1〜1.2倍の厚さまで第1の冷間圧延を施す工程と、
    前記第1の冷間圧延を施した合金素材を700〜850℃に昇温した後、25℃/分以上の降温速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理を施す工程と、
    前記第1の熱処理を施した合金素材を前記目的とする最終板厚まで第2の冷間圧延を施す工程と、
    前記第2の冷間圧延を施した合金素材を400〜500℃に昇温した後、30分〜3時間保持する第2の熱処理を施す工程と、
    を含むことを特徴とする銅合金の製造方法。
  2. Cuを主成分とする合金素材に複数の処理を施して所望の銅合金を得る銅合金の製造方法であって、
    Niが1.0〜5.0質量%、Siが0.2〜1.0質量%、Znが1.0〜5.0質量%、Pが0.003〜0.3質量%、及び残部がCuから成り、前記NiとSiとの質量比Ni/Siが4.5〜5.5である前記合金素材を準備し、この合金素材を目的とする最終板厚の1.1〜1.2倍の厚さまで第1の冷間圧延を施す工程と、
    前記第1の冷間圧延を施した合金素材を700〜850℃に昇温した後、25℃/分以上の降温速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理を施す工程と、
    前記第1の熱処理を施した合金素材を400〜500℃に昇温した後、30分〜3時間保持する第2の熱処理を施す工程と、
    前記第2の熱処理を施した合金素材を前記目的とする最終板厚まで第2の冷間圧延を施す工程と、
    を含み、
    前記第2の冷間圧延を施す工程の後に、前記合金素材を300〜500℃に昇温する第3の熱処理を施す工程を実施することを特徴とする銅合金の製造方法。
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