JP3887292B2 - Pcケーブル定着具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にPC構造物の定着具周辺に発生するPCケーブルの折り曲げ現象を解消するためのPCケーブル定着具に関する。
【0002】
【従来の技術】
PC鋼線、PCより線などのPCケーブルによってコンクリートにプレストレスを導入してなるPC構造物は、RC構造物と比較して長寿命、軽量、高耐力などの特徴を有していることから、橋梁やスラブなどに広く用いられている。
【0003】
PC構造物におけるプレストレスの導入時には、PCケーブルを緊張状態で固定するための定着具がPC構造物の両端に不可欠となる。このPC構造物における定着具は、コンクリートに埋設される支圧板と、PCケーブルなどの緊張材を定着させるための定着板と、緊張材を留め付けるためのナットまたはクサビとから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−79016号公報(図5、図6)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、PCケーブルの引張荷重をPC構造物に効率的に伝播させるためには、定着具における定着板がPCケーブルの張力方向と直角をなし、かつコンクリートに埋設されている支圧板と定着板とが密着状態となる必要がある。この条件が満たされない場合には定着具付近でPCケーブルが折れ曲がってしまうため、PCケーブルの破断による大事故につながるおそれがある。そのためPC構造物の構築時には、PCケーブルの取付角度の現地測定、定着具の取付位置測量等の芯だし作業や、コンクリート打設時における圧力や流動力等の影響を排除するためのPCケーブル仮固定作業などに高度の注意が求められていた。
【0006】
また、PCケーブルの定着位置が許容誤差を超えた場合には、コンクリートに埋設した定着板を一旦取り外してから再度固定する必要が生じるので、その作業が非常に煩雑であって改善の余地も多い。
【0007】
本発明は前記従来技術の欠点を除くためにされたものであり、その目的は、コンクリートに埋設した定着板とPCケーブルとが多少誤差をもっていても、定着板を取り外す必要なく誤差を吸収することができるPC構造物の定着具を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明のPCケーブル定着具は、PCケーブル6に取り付けられた係止部材8の反力をとるための定着板2と、コンクリート5中に埋設されてPCケーブル6の引張荷重をコンクリート5に伝達する開口支圧板3と、前記開口支圧板3の開口部3a周縁に固定された定着板受け材4とからなり、前記定着板受け材4に刻設されてなる1組の軸受け溝4aと前記定着板2の両側面から突設した1組の回転軸2bとが嵌合され、前記定着板2の回転によって前記定着板2の取付角度をPCケーブル6の張力方向と直角をなすように調整可能としたPCケーブル定着具1であって、開口支圧板3の開口部3aを中心として放射線状に複数組の軸受け溝4aが定着板受け材4に刻設されており、任意の前記軸受け溝4aに定着板2の回転軸2bを嵌合可能としたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態に係るPCケーブル定着具1を図1および図2を参照しつつ説明する。第1実施形態のPCケーブル定着具1は、定着板2、開口支圧板3および定着板受け材4とから構成されている。
【0010】
第1実施形態の定着板は、矩形の定着板本体2aと、定着板本体の両側面からそれぞれ突設した1組の回転軸2bとから構成されている。1組の回転軸2bは定着板本体2aを挟んで直線をなすように定着板本体2aに設けられており、定着板本体2aの中央には、2つの回転軸2bを結んだ線と直交するようにPCケーブル挿通孔2cが定着板厚さ方向に開孔されている。
【0011】
開口支圧板3はコンクリート5中に埋設されて、PCケーブル6の引張荷重をコンクリート5に伝達する役目を果たすものである。開口支圧板3には、定着板本体2aよりひと回り大きい相似形の開口部3aが設けられており、開口部周縁には定着板受け材を受けるための環状の段差3bが形成されている。
【0012】
定着板受け材4は、開口支圧板3の開口部3aと同形状の開口を有する環状部材である。定着板受け材4の一方の開口面には定着板2の回転軸2bと対応するように1組の軸受け溝4aが刻設されており、他方の開口面が開口支圧板3との接合面となっている。
【0013】
第1実施形態のPCケーブル定着具1では、開口支圧板3の段差3bに定着板受け材4が配置され、定着板受け材4は開口支圧板3に溶接あるいは接着等の手段で固定されている。また定着板受け材4の軸受け溝4aには定着板2の回転軸2bが嵌合されており、定着板2が定着板受け材4によって回転可能に軸支されている。
【0014】
上記の第1実施形態のPCケーブル定着具1は以下のように使用される。
【0015】
(1)まず定着板受け材4が固定された開口支圧板3をシース7の両端に取り付けてシース7および開口支圧板3を型枠内に配置し、型枠内にコンクリート5を打設する。したがって、PC構造物を構成するコンクリート5には開口支圧板3が埋設された状態となっている。
【0016】
(2)コンクリート5の硬化後にシース7内にPCケーブル6を挿入する。またPCケーブル6の両端において、定着板2にPCケーブル6を挿通させておく。
【0017】
(3)PCケーブル6の一端あるいは両端をジャッキで緊張し、ナット、クサビなどの係止部材8をPCケーブル6に取り付け、係止部材8を定着板2に引っかけてPCケーブル6の端部を定着する。このときPCケーブル6の緊張力によって、定着板2は定着板受け材4に押し付けられるようにして軸止される。またPCケーブル6の引張荷重は、定着板2の回転軸2bを経て、開口支圧板3が埋設されたコンクリート5に伝達される。
【0018】
本発明では定着板2が定着板受け材4によって回転可能に軸支されており、定着板2の取付角度を調整することができる。そのため図2(b)に示すように、開口支圧板3に対してPCケーブル6が傾斜している場合でも、PCケーブル6の理想的な配置状態(定着板2がPCケーブル6の張力方向と直角をなし、開口支圧板3と定着板2とが密着状態であること)を実現することができ、作業の難易度が大幅に低減される。従来ではPCケーブルを理想的な配置状態にできない場合には、PCケーブルの折り曲げを防ぐためにコンクリートに埋設した定着板を一旦取り外してから最度固定していたので、このような煩雑な作業がなくなる点で非常に有利である。
【0019】
(4)そしてジャッキを取り外し、PCケーブル6の余長部分を切断する。そして必要に応じてシース7内にグラウトを充填する。
【0020】
図3は本発明の第2実施形態に係るPCケーブル定着具1aを示した図である。なお、第2実施形態において第1実施形態と共通の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
第2実施形態のPCケーブル定着具1aでは、定着板本体2aの形状と開口支圧板3および定着板受け材4の開口部とが円形であり、開口支圧板3の開口部を中心として放射線状に複数組の軸受け溝4aが定着板受け材4に刻設されている。すなわち、定着板2の回転軸2bを任意の軸受け溝4aに軸支させることが可能である。
【0022】
第1実施形態ではPCケーブル6が回転軸に対して上下左右に複合して傾斜している場合、定着板2がPCケーブル6の張力方向と直角をなすように調整することができないが、第2実施形態では定着板2の回転軸2bを任意の軸受け溝4aに軸支させることによって、PCケーブル6が回転軸2bに対して上下左右に複合して傾斜している場合においても、定着板2がPCケーブル6の張力方向と直角をなすように調整できるようにしたものである。
【0023】
【発明の効果】
本発明では定着板が定着板受け材によって回転可能に軸支されており、定着板の取付角度を調整することができる。そのため、PCケーブルの定着位置の許容誤差を大きくしても、PCケーブルの理想的な配置状態(定着板がPCケーブルの張力方向と直角をなし、支圧板と定着板とが密着状態であること)を実現することができ、作業の難易度が大幅に低減される。従来ではPCケーブルを理想的な配置状態にできない場合には、PCケーブルの折り曲げを防ぐためにコンクリートに埋設した定着板を一旦取り外してから最度固定していたので、このような煩雑な作業がなくなる点で非常に有利である。
【0024】
また開口支圧板の開口部を中心として放射線状に複数組の軸受け溝が定着板受け材に刻設することによって、定着板の回転軸を任意の軸受け溝に軸支させることが可能である。すなわち、PCケーブルが回転軸に対して上下左右に複合して傾斜している場合においても、定着板がPCケーブルの張力方向と直角をなすように調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は第1実施形態のPCケーブル定着具の斜視図であり、(b)は定着板を取り外した状態の第1実施形態のPCケーブル定着具の斜視図である。
【図2】(a)は第1実施形態のPCケーブル定着具の側面断面図であり、(b)は使用状態における第1実施形態のPCケーブル定着具の側面図である。
【図3】定着板を取り外した状態の第2実施形態のPCケーブル定着具の斜視図である。
【符号の説明】
1,1a PCケーブル定着具
2 定着板
2a 定着板本体
2b 回転軸
2c PCケーブル挿通孔
3 開口支圧板
3a 開口部
3b 段差
4 定着板受け材
4a 軸受け溝
5 コンクリート
6 PCケーブル
7 シース
8 係止部材

Claims (1)

  1. PCケーブルに取り付けられた係止部材の反力をとるための定着板と、コンクリート中に埋設されてPCケーブルの引張荷重をコンクリートに伝達する開口支圧板と、前記開口支圧板の開口部周縁に固定された定着板受け材とからなり、前記定着板受け材に刻設されてなる1組の軸受け溝と前記定着板の両側面から突設した1組の回転軸とが嵌合され、前記定着板の回転によって前記定着板の取付角度をPCケーブルの張力方向と直角をなすように調整可能としたPCケーブル定着具であって、
    開口支圧板の開口部を中心として放射線状に複数組の軸受け溝が定着板受け材に刻設されており、任意の前記軸受け溝に定着板の回転軸を嵌合可能としたことを特徴とするPCケーブル定着具。
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