JP3887029B2 - 軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電力トランス、高周波トランス、リアクトルなどの鉄心に用いられる軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
急冷金属薄帯は、合金を溶融状態から急冷することによって、連続的に薄帯を製造する遠心急冷法、単ロール法、双ロール法等によって製造できることが知られている。これらの方法は、高速回転する金属製ドラムの内周面または外周面に溶融金属をオリフィス等から噴出させることによって、急速に溶融金属を凝固させて薄帯や線を製造するものである。さらに、合金組成を適正に選ぶことによって、液体金属に類似した非晶質合金を得ることができ、磁気的性質に優れた材料、あるいは、機械的に優れた材料を製造することができる。
【0003】
しかし、非晶質材料を製造する場合、例えば、Alを含む原料を用いると、微量であっても鉄損や透磁率が大幅に劣化することが知られている。また、特開昭59−64143号公報に示されるようにTiも磁気特性を劣化させる。これまでは、このような有害な不純物の混入を防ぐために高純度の原料が用いられていた。しかし、高純度の原料を用いることは製品のコストアップを招くので問題となっていた。従来、このような不純物に起因して生じる特性劣化を特定元素を添加することによって防止する方法が採られていた。例えば、特開平4−329846号公報では、Al,Ti,Zrなどの不純物による磁気特性の劣化をSn,S添加により防止できると記載されている。また、特開平5−291019号公報では、Cu添加がSn,S添加と同様にAl,Ti,Zrなどの不純物による磁気特性劣化の防止効果をもつことが記載されている。
【0004】
しかし、これらのどの公知例においても、不純物がほとんどない場合、あるいは、不純物が入っている場合の薄帯特性の幅方向の分布に関する記載はない。本発明者らは、不純物が存在する場合においても、製造方法を工夫することによって、すなわち、ロール表面温度を制御することによって、幅方向に均一な急冷金属薄帯を得るに至った。
【0005】
従来、ロール温度を制御する方法としては、以下のものが開示されている。すなわち、特開昭57−121860号公報においては、冷却基材の表面温度が120℃以上250℃以下に制御すると良好な非晶質薄帯が得られることが開示されている。また、特開昭58−358号公報においては、ロール表面温度を薄帯成分に応じて最適値に設定する方法が開示されている。ここでは、ロール温度が低すぎる場合はロールと溶湯との間の濡れが悪くなるために不均一に冷却された薄帯ができ、反対にロール温度が高すぎる場合は、冷却能が不足し非晶質化しにくくなる等、いずれにしても部分的に非晶質化不十分な箇所が生じると述べられている。さらに、特開昭58−135751号公報においては、水冷ロールの端部の冷却能力を低下させることによって鋳造中のロール温度を幅方向に対して一定にし、ロールクラウンを防止する方法が開示されている。これはロールクラウンを防止することによって、薄帯の幅方向の板厚を一定にする効果を狙ったものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来の公知の方法においては、急冷金属薄帯を製造する場合、ある特定の添加元素なしにAlなどの不純物を含む低純度原料を使用して高特性の薄帯を得ることができなかった。また、薄帯端部の特性が中央部の特性に比べて劣化し、幅方向に均一な薄帯を得ることはできなかった。
【0007】
本発明は、不純物を含んでいるのにもかかわらず特定元素を添加せずに、薄帯の幅方向に特性の均一な軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯とその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の事項をその要旨としている。
(1) 合金組成が(FeaSibBcCd)100−xMx、で表示される、板厚5μm以上、板幅25mm以上の急冷金属薄帯であって、該薄帯の幅方向端部と中央部の磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損が0.15W/kg以下であり、前記鉄損の差が0.03W/kg以下であることを特徴とする、軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯。
ただし、a,b,cおよびdは、原子%で、70≦a≦86、1≦b≦19、7≦c≦20、0≦d≦4、で、a+b+c+d=100であり、MはAl,S,Ti,Zr,Sb,P,Cu,As,Zn、のうちの少なくとも1種以上であり、Xは0.003重量%以上0.15重量%以下である。
(2) 高速回転しているロール上で合金溶湯を急冷凝固させて(1)に記載した金属薄帯を製造する方法において、鋳造中に該薄帯の幅方向端部が接するロール部位の表面温度をTe(℃)、該薄帯の幅方向中央部が接するロール部位の表面温度をTc(℃)とした場合、該ロールの表面温度の幅方向の分布を、鋳造開始時から鋳造が定常状態に達するまでの間、0<Te−Tc<80に制御し、かつ、40<Te<360に制御することを特徴とする軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯の製造方法。
(3) 高速回転しているロール上で合金溶湯を急冷凝固させた(1)に記載した金属薄帯を製造する方法において、鋳造中に該薄帯の幅方向端部が接するロール部位の表面温度をTe(℃)、該薄帯の幅方向中央部が接するロール部位の表面温度をTc(℃)とした場合、該ロールの表面温度の幅方向の分布を、鋳造が定常状態に達した後から終了するまでの間、|Te−Tc|<20に制御し、かつ、80<Te<360に制御することを特徴とする軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯の製造方法。
【0009】
前記(2)の製造方法、および前記(3)の製造方法は、いずれも単独で用いても軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯を得ることが可能であるが、組み合わせることによって、さらに顕著な効果が得られる。
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の金属薄帯の合金組成範囲について述べる。
本発明の急冷金属薄帯は、原子%で、Fe70〜86%、Si1〜19%、B7〜20%、C0〜4%からなる。これら成分は、鉄心材料に要求される飽和磁束密度(Bs)、鉄損、透磁率、非晶質形成能、熱的安定性、機械的性質などを考慮して選定したものである。
【0011】
Feは、実用的レベルとして飽和磁束密度Bsが1.5T以上であることを条件に70原子%以上86%原子以下とした。70原子%未満では1.5T以上の飽和磁束密度が得られず、86原子%超では非晶質の形成が困難になり磁気特性のばらつきが大きくなるからである。磁気特性および薄帯製造の安定性を得るためには、好ましくはFeは77原子%以上83原子%以下とする。
【0012】
SiとBは、非晶質形成能および熱的安定性を向上させるために加える。本発明においては、Siは1原子%以上19原子%以下、Bは7原子%以上20原子%以下である。Siが1原子%未満、あるいはBが7原子%未満では非晶質相が安定に形成されず、一方、Siが19原子%超、あるいはBが20原子%超では原料コストが高くなるだけで、非晶質形成能、熱的安定性の向上は認められない。
【0013】
Cは、非晶質薄帯の製造性向上に効果のある元素である。本発明においてはCが含まれていなくても効果を得ることができるが、より効果が顕著に現れるためにはCを含有することが望ましい。Cを含有させることにより冷却基板材質として良く用いられるCuなどとの濡れ性が向上して性状の良い薄帯を形成することができる。Cは0.01原子%程度の少量でも含有させることによって、冷却基板との濡れ性が改善される。しかし、4原子%超では、熱的安定性が低下するとともに薄帯表面層が結晶化しやすくなる。従って、Cの範囲は0以上4原子%以下と規定する。
【0014】
不純物Mは、Al,S,Ti,Zr,Sb,P,Cu,As,Znから選ばれた1種以上の元素で、その合計が0.003重量%以上0.15重量%以下とする。0.003重量%未満では、高純度原料の使用が必須となるため、コストアップを招く。0.15重量%超では、磁気特性の劣化は防止しがたいからである。コストと磁気特性の両面から考えると、不純物Mは、0.005重量%以上0.1重量%以下が好適である。
【0015】
本発明の薄帯は、薄帯幅方向に磁気特性の差が少ないことを特徴とする。
すなわち、薄帯の幅方向端部と中央部の磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損(W13/50 )の差が0.03W/kg以下のものである。0.03W/kgを超えると、薄帯全体の磁気特性が劣化するからである。ここでは、鉄損W13/50 の値で規定したが、薄帯端部と中央部における鉄損の差は測定方法を変えても、それに応じて値が変わるだけ(例えば、周波数を高くすると、鉄損は増加する。)で、磁気特性の差が薄帯幅方向に少ないという薄帯そのものの本質は変わらない。
【0016】
次に、本発明の急冷金属薄帯の板厚と板幅について述べる。
板厚5μm未満の薄帯は製造が困難であるため、5μm以上と規定する。板幅は、10mm未満の急冷金属薄帯では、本発明の効果が低いので、10mm以上と規定する。
【0017】
本発明者らは、軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯の製造において、低コストである、Alなどの有害不純物を多く含む低純度原料を使用可能とする研究開発を進めてきた。その過程において、鋳造中の薄帯温度および薄帯が接触するロールの温度分布を幅方向について調べ、その温度分布と得られた薄帯の特性とを対応させた。その結果、従来公知の手法で鋳造を行う場合、薄帯端部が接触するロール表面温度が中央部よりも低くなり、これにより、薄帯端部の冷却速度が中央部に比べて遅くなり、それに対応して、薄帯端部の特性が劣化することを新たに見い出した。
そして、これらの知見に基づき、様々な検討を行った結果、ロール温度を幅方向に対して所定の分布になるように制御することによって、薄帯の冷却速度が幅方向に均一になり、不純物を多く含みながらも、それらの不純物を無害化する特定元素を添加しなくても軟磁気特性に優れ、かつ磁気特性が薄帯の幅方向に均一な急冷金属薄帯を製造することが可能となった。
【0018】
以下に、本発明金属薄帯の製造方法について詳細に述べる。
本発明法と従来法における鋳造中のロール温度の時間変化を比較して、図1に示す。ここで、鋳造中に薄帯端部が接するロール部位の表面温度をTe(℃)、薄帯中央部が接するロール部位の表面温度をTc(℃)とする。また、鋳造開始からロール温度が安定する状態(定常状態)に達するまでを非定常状態、またこれ以後から鋳造終了までの間を定常状態、と定義する。
【0019】
図1から明らかなように、ロール温度は鋳造開始より上昇し、ある時点でロール温度が安定する定常状態に達する。従来法では、常にTeがTcよりも低く、定常状態においても、その温度差が30〜70℃にも達している。その結果、薄帯端部の濡れ性が中央部に比べて悪くなるために端部の冷却速度が低下し、特性劣化が起こってしまう。
【0020】
図1において、本発明の薄帯の幅方向端部が接するロール部位の表面温度Te(℃)と薄帯の幅方向中央部が接するロール部位の表面温度Tc(℃)の時間変化に示したように、本発明では、鋳造開始前からロールの加熱を行う。その時、Te>Tcとなるように設定する。これは、あらかじめTeを高くしておくことによって、非定常状態における薄帯端部の濡れ性の低下を抑制し、薄帯の特性劣化を防止するために規定したものである。
【0021】
TeとTcの温度差(Te−Tc)は、80℃未満に規定する。これはTe−Tcが80℃以上になると、ロールが熱歪みによって変形するので、正常な薄帯が製造できなくなるからであり、また、技術的にもTe−Tcを80℃以上にするのは困難だからである。鋳造開始後から定常状態に達するまで、ロール温度は上昇する。その時もロール温度を制御して、TeとTcの温度差(Te−Tc)が0<Te−Tc<80になるように制御する。
【0022】
非定常状態における好ましい制御方法としては、例えば図1のように、鋳造開始時の温度差(Te−Tc)を最も大きくし、以後この温度差が減少していくように制御を行う。鋳造開始直後の急激なロール温度上昇に対して加熱機構が追随しにくいので、鋳造開始時の温度差(Te−Tc)を一番大きく設定することが好ましい。定常状態に達してから鋳造終了までの間は、|Te−Tc|が20℃未満となるようにロール温度を制御する。|Te−Tc|が20℃以上となると、薄帯の磁気特性が幅方向に均一にならないため、薄帯全体の磁気特性が劣化する。このようなロール温度の制御を行うことにより、薄帯の構造及び磁気特性は、幅方向に均一となり優れた磁気特性を持つ急冷金属薄帯が得られる。
【0023】
本発明の製造方法を用いると、薄帯の冷却速度が幅方向に均一になる。その結果、高純度な原料を使用した急冷金属薄帯においても、薄帯端部の磁気特性の劣化が防止され、薄帯全体の磁気特性が改善される。さらに、この製造方法は、Alなどの表面偏析が起こりやすい不純物元素を含む急冷金属薄帯製造において顕著な効果を示す。Alなどの表面偏析が起こりやすい不純物元素は薄帯表面に偏析し、結晶化を促進する原因と言われている。したがって、従来の方法では、薄帯端部の冷却速度が遅いので、薄帯端部表面に偏析し、その結果、薄帯端部表面が結晶化していた。本発明の製造方法では、薄帯の冷却速度が幅方向に均一なので、偏析元素の薄帯端部表面への偏析が抑制され、結晶化を抑制する。したがって、磁気特性の劣化が防止され、その結果、Alなどの不純物を多く含む低純度原料を使用して軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯の製造が可能となった。
【0024】
薄帯端部が接触するロール部位の表面温度Te(℃)は、鋳造開始から定常状態に達するまでの非定常状態においては、40℃超360℃未満に規定する。Teが40℃以下の場合には、濡れ性が悪くなり特性が劣化する。Teが360℃以上の場合には、薄帯の冷却速度が低下するため、薄帯の結晶化を招く。望ましくは、Teを80℃以上とする。そうすれば、鋳造初期から鋳造終了までの温度変化を少なくすることができ、鋳造初期からさらに優れた軟磁気特性を持つ急冷金属薄帯が得られる。また、ロール表面温度が高くなるとロール表面の磨耗が増加するため、ロール温度はなるべく低温の方が望ましいので、Teを80℃以上150℃以下に制御することが好ましい。さらに好ましくは、80℃以上110℃以下である。
【0025】
定常状態においては、Teを80℃超360℃未満に規定する。Teが80℃以下では、優れた軟磁気特性を持つ急冷金属薄帯が得られず、Teが360℃以上であると冷却速度を低下させるため、薄帯の結晶化を招くからである。しかし、非定常状態の場合と同じく、ロール表面温度が高くなるとロール表面の磨耗が増加するので、ロール温度はなるべく低温の方が望ましいため、Teを80℃以上150℃以下に制御することが好ましい。さらに好ましくは、80℃以上110℃以下である。
【0026】
本発明の製造方法は、例えば図2に示した装置を用いて実施することができる。すなわち、図2において、接触式熱電対3によってロール温度を測温し、それをロール温度制御装置5を通じて、電熱ヒーター4にフィードバックしてロール側面を加熱し、ロール温度を制御する方法である。ロール側面を加熱する方式は、構造が簡単で、制御が容易であり、かつ、経済的でもある。加熱方法としては、ヒーターの他に高温ガスの吹き付けなどの方法が適用可能である。また、ロールを水冷することにより、加熱と冷却の独立制御が行え、より精密な制御が可能となる。ロール温度の測定には放射温度計も適用可能である。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例にしたがって、さらに詳細に説明する。
実施例1
市販の2種類の低純度原料を用いて目標組成:Fe78Si12B10(原子%)の母合金を作製した。化学分析の結果、それぞれにAlが0.03重量%、0.1重量%含まれていた。この2種類の合金をCu製の単ロール法により、幅25mm、板厚25〜30μmの薄帯にした。本発明例は鋳造開始時のTe−Tcが20℃、定常状態で10℃となるよう制御した。比較例として、ロール温度を制御していない場合も行った。
【0028】
製造装置の概略図を、図2に示す。ロール表面温度の測温は接触式熱電対で行った。熱電対はノズル後方15cmの位置にあり、端部と中央部の表面温度を同時に測温できるように配置されている。また、ロール側面の加熱は電熱ヒーターを用い、測温しながらフィードバック制御を行った。使用したノズルスリットは、スリット幅0.4mm、幅25mmである。
【0029】
ロール温度と磁気特性との関係を、表1及び表2に示す。磁気特性の評価は、定常状態において製造された薄帯を380℃×1hの磁場中焼鈍後、単板試験器(SST)で測定した値を用いて行った。表1及び表2に示した非定常状態中間時とは、鋳造開始から定常状態に達するまでの間の、中間時点を示している。
【0030】
本発明例がロール温度制御を行っていない比較例に比べて、鉄損W13/50 (B=1.3T,f=50Hzのときの鉄損W)が低下し、磁束密度B1(H=1Oeの時の磁束密度B)が高くなるなど、磁気特性が向上しているのが明らかである。特に、表2に示したAlが0.1重量%含まれている薄帯の場合、本発明によって、鉄損W13/50 が約38%と大幅に改善されている。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示したAl0.1重量%添加材については薄帯自由面の幅方向の結晶化の様子をX線回折法によって調べた。薄帯の幅方向の位置と結晶化の度合いを表すX線回折の(110)強度の関係を、図3に示す。図3より、比較例のロール温度を制御していない場合は、薄帯端部での表面の結晶化が著しいのに対し、本発明例では、薄帯の結晶化が抑制されていることが明らかである。
【0034】
端部の結晶化と磁気特性の相関を調べるために、薄帯を幅方向に5つに切断した後、380℃×1hの磁場中焼鈍を行い、磁気特性を測定した。用いた試料は表2に示す薄帯である。図4にその結果を示す。
【0035】
図4から、本発明例は、端部と中央部の鉄損W13/50 の差は0.03W/kg以下となっていることから、薄帯の特性が幅方向に均一であることが明らかである。これに対し、比較例は、薄帯の両端部の鉄損W13/50 が高くなっていて、端部と中央部の鉄損W13/50 の差は0.1W/kg以上にも達している。したがって、本発明を用いることによって、幅方向に均一な特性を持つ軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯を得ることができる。
【0036】
実施例2
不純物の効果を調べるために、高純度の原料を用いて、目標組成:Fe78Si12B10(原子%)の母合金を作製し、その合金に不純物を添加して実施例1と同様の方法で薄帯を作製した。各薄帯の不純物の含有量、ロール温度、および定常時薄帯の全体特性と端部と中央部の特性を、表3に示す。
本発明例では、全体特性としてW13/50 =0.15W/kg以下の優れた軟磁気特性を示している。また、端部と中央部の鉄損W13/50 の差が0.03W/kg以下となっていて、幅方向に均一であることを示している。
【0037】
本発明に係る元素であって、この実施例2に記載されていない元素についても、本発明例と同様の結果を示している。
【0038】
【表3】
【0039】
実施例3
実施例1と異なる市販の原料を用いて、目標組成:Fe80.5Si6.5 B12C1(原子%)の母合金を作製した。化学分析の結果、Al:0.003重量%、Ti:0.001重量%含まれていた。この合金を実施例1と同様の方法で薄帯にした。ただし、スリット幅0.4mm、幅25mmの二重スリットを用いた。薄帯幅は25mm、薄帯厚は50〜60μmである。鋳造時に、鋳造開始時のTeとTcの温度差を変化させた。それらのロール温度と磁気特性の関係を、表4に示す。
【0040】
焼鈍条件は360℃×1hである。鋳造開始より定常状態に達するまでの間の非定常状態中間時に製造された薄帯を初期薄帯、定常状態で製造された薄帯を定常時薄帯とした。定常時薄帯においては、薄帯端部と中央部の磁気特性を調べるために、薄帯から試料を切り出してから、焼鈍し、測定を行った結果も、表4に併せて示す。
【0041】
鋳造開始から定常状態に達するまでの非定常状態において、TeとTcの温度差(Te−Tc)が本発明の温度範囲に含まれる本発明例は、初期薄帯における鉄損がW13/50 =0.15W/kg以下の優れた軟磁気特性を示している。また、定常状態において、TeとTcの温度差(Te−Tc)が本発明の温度範囲に含まれる本発明例は、定常状態時薄帯における鉄損がW13/50 =0.15W/kg以下の優れた軟磁気特性を示している。
【0042】
さらに、鋳造開始時より鋳造終了まで、TeとTcの温度差が本発明の温度範囲に含まれる本発明例は、鋳造初期から鋳造終了までW13/50 =0.15W/kg以下の優れた軟磁気特性を示している。
また、本発明例の端部と中央部の鉄損W13/50 の差が0.03W/kg以下となっていて、幅方向に均一であることを示している。
【0043】
【表4】
【0044】
実施例4
実施例1と同様の方法で、目標組成:Fe80.5Si6.5 B12C1(原子%)の実施例3と同じ合金を薄帯にした。薄帯幅は120mm、薄帯厚は25〜30μmである。使用したノズルスリットは、スリット幅0.4mm、幅120mmである。鋳造開始時において、TeとTcの温度差(Te−Tc)を20℃一定とし、Teのみを変化させた。それらの定常状態に至るまでのロール温度と磁気特性の関係を、表5に示す。焼鈍条件は360℃×1hである。
【0045】
Teが本発明の温度範囲に含まれる本発明例は、初期薄帯及び定常時薄帯ともに、W13/50 =0.15W/kg以下の優れた軟磁気特性を示している。
また、本発明例の端部と中央部の鉄損W13/50 も測定した結果、鉄損の差が0.03W/kg以下となっていて、幅方向に均一であることを示している。
【0046】
【表5】
【0047】
【発明の効果】
本発明の急冷金属薄帯は、電力トランス、高周波トランス、リアクトルとして用いる場合、薄帯幅方向に特性変動の少ない、低鉄損、高磁束密度の軟磁気特性に優れているため、従来材料に比べて優れている。また、不純物含有量を高くできるため、不純物の多い低コストな原料の使用が可能となり、低コストが達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳造中のロール温度の変化を示した図である。
【図2】ロール温度制御可能な急冷金属薄帯製造装置の概略図であり、(a)側面図、および(b)背面図である。
【図3】非晶質薄帯の幅方向位置とX線回折強度との関係を示した図である。
【図4】非晶質薄帯の幅方向位置と鉄損W13/50 の関係を示した図である。
【符号の説明】
1 冷却ロール
2 ノズル
3 接触式熱電対
4 電熱ヒーター
5 ロール温度制御装置
6 急冷金属薄帯
Claims (3)
- 合金組成が(FeaSibBcCd)100−xMx、で表示される、板厚5μm以上、板幅25mm以上の急冷金属薄帯であって、該薄帯の幅方向端部と中央部の磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損が0.15W/kg以下であり、前記鉄損の差が0.03W/kg以下であることを特徴とする、軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯。
ただし、a,b,cおよびdは、原子%で、70≦a≦86、1≦b≦19、7≦c≦20、0≦d≦4、で、a+b+c+d=100であり、Mは、Al,S,Ti,Zr,Sb,P,Cu,As,Zn、のうちの少なくとも1種以上であり、Xは、0.003重量%以上0.15重量%以下である。 - 高速回転しているロール上で合金溶湯を急冷凝固させて請求項1に記載した金属薄帯を製造する方法において、鋳造中に該薄帯の幅方向端部が接するロール部位の表面温度をTe(℃)、該薄帯の幅方向中央部が接するロール部位の表面温度をTc(℃)とした場合、該ロールの表面温度の幅方向の分布を、鋳造開始時から鋳造が定常状態に達するまでの間、0<Te−Tc<80に制御し、かつ、40<Te<360に制御することを特徴とする軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯の製造方法。
- 高速回転しているロール上で合金溶湯を急冷凝固させた請求項1に記載した金属薄帯を製造する方法において、鋳造中に該薄帯の幅方向端部が接するロール部位の表面温度をTe(℃)、該薄帯の幅方向中央部が接するロール部位の表面温度をTc(℃)とした場合、該ロールの表面温度の幅方向の分布を、鋳造が定常状態に達した後から終了するまでの間、|Te−Tc|<20に制御し、かつ、80<Te<360に制御することを特徴とする軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP08548995A JP3887029B2 (ja) | 1995-04-11 | 1995-04-11 | 軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP08548995A JP3887029B2 (ja) | 1995-04-11 | 1995-04-11 | 軟磁気特性に優れた急冷金属薄帯およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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