JP3886909B2 - 車両用走行速度制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の走行速度を制御または制限する車両用走行速度制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、運転者の運転操作低減や安全性向上等を目的とし、車速を制御または制限する車両用走行速度制御装置が開発されている。この様な装置においては、一般的に車速を設定車速に一致させるべく閉ループ制御が行われる。しかし、車速は常に車両用走行速度制御装置の制御下に置かれるわけではなく、一般的に運転者の加減速操作状態によっては運転者の制御下に置かれる。
例えば、車両用走行速度制御装置が車速を設定速度に一致するように制御する定速走行装置として動作する場合、運転者がアクセルペダルによって加速操作を行うと、車速は運転者の制御下に置かれ、車両は運転者の加速操作に従って加速される。
また、車両用走行速度制御装置が車速を設定車速で制限する車速制限装置として動作する場合、車速が設定車速よりもはるかに低速域にある時や、車速が設定車速近傍にあり、運転者がアクセルペダルを戻している時などには、車速は運転者の制御下にある。
【0003】
この様な車速が運転者の制御下にある場合でも閉ループ制御による制御出力値は算出されるが、車速は運転者の制御下にあるため閉ループ制御による制御出力値は車速には反映されない。従って、閉ループ制御のループ構造が成立しなくなり、閉ループ制御による出力は適正な制御出力値ではなくなる。
この様な状態が継続した後、再び車速が車両用走行速度制御装置の制御下に戻されると、例えば急加速や急減速状態から再開する可能性がある。
そこで、車速が車両用走行速度制御装置の制御下から離れた時の制御出力値と車両状態を記憶し、記憶された制御出力値を制限値の初期値として、その後の車速変化に応じて制限値を変化させ、制御出力値をこの制限値で制限する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−193689号公報(第7頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の車両用走行速度制御装置は以上のように、車速が車両用走行速度制御装置の制御下から離れた時の制御出力値を制限値の初期値としているが、この初期値はその時の車両状態に依存した値となり、その後車両状態が変わっても十分に制限されない場合があるといった問題点があった。
例えば、車両が急勾配の坂を登っている最中に制御装置の制御下から離れた場合、初期値は非常に大きい値となっているため、制御出力値は大きい値で制限されたまま保持される。その後、車両が平坦路や下り坂を走行中に制御装置の制御下に復帰すると、急加速状態から復帰してしまうこととなる。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、車速が制御器の制御下にある状態と、制御下にない状態との移行特性を改善する車両用走行速度制御装置を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両用走行速度制御装置は、車両の車速を検出する車速検出手段と、所定の設定車速で車速を制御するための車速制御値を少なくとも閉ループ制御を用いて算出する車速制御器と、車速を調整するために操作される加減速入力手段と、加減速入力手段の操作量に対応した加減速値を検出する加減速値検出手段と、車速制御値と加減速値とのうちの小さい方の値を選択する加減速入力選択手段と、加減速入力選択手段により選択された値に応じて、車両の加減速度を調整する加減速度調整手段とを備え、車速制御器は、設定車速に応じた基準制御値を予め格納する基準制御値設定手段を含み、加減速値が選択されている間は、基準制御値に基づいた値に車速制御値の上限を制限するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。図1は、この発明の実施の形態1を示す車両用走行速度制御装置のブロック構成図である。
図1において、車両用走行速度制御装置は、車両の設定速度(設定車速)を変更するコントロールレバー(設定車速変更手段)1と、設定車速を記憶する設定車速変更記憶部2と、車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ(車速検出手段)3と、運転者が車速を調整するために操作され、アクセル開度を操作量に応じて調整するアクセルペダル(加減速入力手段)4と、アクセル開度(加減速値)を検出するアクセルペダルセンサ(加減速値検出手段)5とが設けられている。
また、設定車速、車速およびアクセル開度に基づいて、車速を制御する車速制御器6と、車速制御値およびアクセル開度の何れか一方を選択する最小値選択部(加減速入力選択手段)7と、内燃機関のスロットル(図示せず)を調整するスロットル制御部(加減速度調整手段)8とが設けられている。
【0009】
次に、この発明の実施の形態1による動作について説明する。
コントロールレバー1は例えば運転席に設けられており、運転者がコントロールレバー1を操作して設定車速を変更することにより、設定車速変更記憶部2はコントロールレバー1の操作内容に応じた設定車速に変更して記憶する。
例えば、コントロールレバー1は、車速増加側に操作されると、設定車速を所定値だけ増加させ、車速減少側に操作されると、設定車速を所定値だけ減少させる。
なお、コントロールレバー1による設定車速の変更は、運転者が行うものに限らず、例えば、先行車との車間距離に基づいて自動的に変更されるものとしてもよい。
車速センサ3は車速を検出し、また、アクセルペダルセンサ5は、運転者がアクセルペダル4を操作することによって入力された車両の加減速値(アクセル開度)を検出する。
【0010】
車速制御器6は、設定車速変更記憶部2に記憶された設定車速30と、車速センサ3で検出された車速31と、アクセルペダルセンサ5で検出されたアクセル開度32とに基づいて、車速31を設定車速30に一致させるための車速制御値33を算出する。
最小値選択部7は、アクセル開度32と車速制御値33とを比較し、小さい値の方を最小値34として出力する。
ここで、最小値選択部7は、アクセル開度32と車速制御値33との何れか一方を選択してスロットル制御部8に入力させるので、車速制御値33は、当然アクセル開度32に相当する数値として算出される。
【0011】
次に、スロットル制御部8は、最小値選択部7で選択された最小値34に基づいて内燃機関のスロットル(図示せず)を調整することにより、内燃機関の駆動出力を調整する。
なお、スロットル制御部8は、車両の加減速度を調整するものであればよく、例えば電動モータの出力を調整するモータ出力調整部であっても、電動モータと内燃機関の出力の両方を総合的に扱う出力調整部であってもよい。
スロットル制御部8へは、アクセル開度32と車速制御値33との最小値が選択されて出力されるため、車速制御値33は運転者によって入力されたアクセル開度32を制限する方向に作用する。また、車速制御値33は、車速31を設定車速30に一致させるための出力であるので、結果として、車両用走行速度制御装置は、車速31を設定車速30に制限する車速制限装置として動作する。
【0012】
次に、車速制御器6について説明する。
図2は、この発明の実施の形態1の車速制御器6を示すブロック構成図である。
車速制御器6は、設定車速30と車速31との偏差(車速偏差)εを算出する減算器10と、車速偏差εを小さくするための制御出力値ΔPcを算出するPID制御部11と、加算器12と、設定車速30およびアクセル開度32に基づいて車速制御値の上限値35を設定する制限値設定部(制限手段)13と、上限値35により車速制御値を制限する上限値制限部(制限手段)14とが設けられている。
また、単調増加または単調減少する制御出力値ΔPfを出力する傾斜出力設定部17と、車速31が設定車速近傍の場合の車速制御と車速31が設定車速近傍より離れている場合の車速制御とを選択する切換判定部16と、切換判定部16からの指示に従って、車速制御を切り換える切換器15とが設けられている。
【0013】
次に、車速制御器6の動作について説明する。
車速制御器6に設定車速30、車速31およびアクセル開度32が入力されると、減算器10は、設定車速30から車速31を減算した車速偏差εを算出する。
PID制御部11は、以下の式(1)により、車速偏差εを小さくするための制御出力値ΔPcを算出する。
ΔPc=Ki・ε+Kp・(dε/dt)+Kd・(dε/dt)・・・ (1)
式(1)において、Ki,Kp,Kdは制御ゲインであり、固定値または可変値として設定される。
【0014】
また、加算器12は、制御出力値ΔPcと、前回車速制御器6から出力された車速制御値33とを加算する。すなわち、ここでは制御出力値ΔPcの時間積分を行っていることになる。
一方、制限値設定部13は、設定車速30およびアクセル開度32に基づいて、車速制御値33の制限値35を算出する。
上限値制限部14は、制限値設定部13で算出された制限値35を上限値に設定し、加算器12の出力値を上限値35で制限する。上限値制限部14からの出力は閉ループ制御出力値36として切換器15へ入力される。
【0015】
一方、設定車速30と車速31との車速偏差εは切換判定部16へも入力される。切換判定部16は、車速偏差εの大きさを判定するために、正の所定値で設定された閾値(プラス偏差閾値)と、負の所定値で設定された閾値(マイナス偏差閾値)とが設定されている。切換判定部16は、設定車速30と車速31との車速偏差εがプラス偏差閾値以上であるのか(すなわち、車速31は設定車速30より小さい値で、車速偏差εは閾値以上であるのか)、マイナス偏差閾値以下であるのか(すなわち、車速31は設定車速30より大きい値で、車速偏差εは閾値以上であるのか)、それ以外であるのか(すなわち、車速31は、車速偏差εの閾値の範囲内であるのか)を判定する。
【0016】
図3は、この発明の実施の形態1による切換判定部16の動作を説明する説明図である。
なお、図3において、マイナス偏差閾値の絶対値と設定車速30との加算値(設定車速30からマイナス偏差閾値を減算した値)を上側速度閾値、プラス偏差閾値と設定車速30との加算値(設定車速30からプラス偏差閾値を減算した値)を下側速度閾値と呼ぶ。
図3において、切換判定部16は、車速偏差εがマイナス偏差閾値以下である(すなわち、車速31は、設定車速30よりも所定値以上高速側にある、上側速度閾値以上の速度である)場合は、傾斜出力設定部17へマイナス傾斜出力指示信号を出力するとともに、切換器15へ開ループ出力切換指示信号を出力する。
また、車速偏差εがプラス偏差閾値以上である(すなわち、車速31は、設定車速30よりも所定値以上低速側にある、下側速度閾値以下の速度である)場合は、傾斜出力設定部17へプラス傾斜出力指示信号37を出力するとともに、切換器15へ開ループ出力切換指示信号38を出力する。
【0017】
また、車速偏差εがマイナス偏差閾値より大きく、プラス偏差閾値よりも小さい(すなわち、車速31は、下側速度閾値よりも大きく、上側速度閾値よりも小さい)場合は、傾斜出力設定部17へ傾斜出力停止指示信号37を出力するとともに、切換器15へ閉ループ出力切換指示信号38を出力する。
なお、切換判定部16に設定されたプラス偏差閾値およびマイナス偏差閾値は、固定値であってもよいが、車両の変速機(変速装置)の変速段によって異なる値を設定してもよい。また、変速機が無段階変速機である場合は、その時点でのギア比によって異なる値を設定してもよい。
【0018】
図2において、傾斜出力設定部17は、切換判定部16からマイナス傾斜出力指示が入力されている場合は、車速制御値33を単調減少させるために負の所定値に設定されたマイナス傾斜出力値を制御出力値ΔPfとして出力する。
また、プラス傾斜出力指示が入力されている場合は、車速制御値33を単調増加させるために正の所定値に設定されたプラス傾斜出力値を制御出力値ΔPfとして出力する。
また、傾斜出力停止指示が入力されている場合は、車速31が設定車速近傍にあるため、単調減少や単調増加させることのないように「0」を制御出力値ΔPfとして出力する。
ここでプラス傾斜出力およびマイナス傾斜出力は、固定値であってもよいが、車両の変速機の変速段によって異なる値を設定してもよい。また、変速機が無段階変速機である場合は、その時点でのギア比によって異なる値を設定してもよい。
【0019】
次に、加算器18は、傾斜出力設定部17からの制御出力値ΔPfと、車速制御値33とを加算する。すなわち、ここでは制御出力値ΔPfの時間積分を行い、開ループ制御出力値39として切換器15へ入力させる。
なお、傾斜出力設定部17からの制御出力値ΔPfは所定値であるので、この時間積分値である開ループ制御出力値39は、所定の傾きで単調増加又は単調減少する値となる。
切換器15は、切換判定部16から開ループ出力切換指示38が入力された場合、開ループ制御出力値を車速制御値33として出力する。一方、閉ループ出力切換指示38が入力された場合、閉ループ制御出力値を車速制御値33として出力する。
【0020】
この様に、車速31が設定車速30よりも所定以上高速側にある(車速31が上側速度閾値以上である)場合、車速制御値33は、所定の傾きで単調減少する制御出力値として出力される。また、車速31が設定車速30よりも所定以上低速側にある(車速31が下側速度閾値以下である)場合、車速制御値33は、所定の傾きで単調増加する制御出力値として出力される。
この様な車速制限装置としての車両用走行速度制御装置は、運転者のアクセル操作に関わらず、車両が設定車速以上に加速しない様にすることが目的であるので、車速31が設定車速30よりも所定以上高速側にある場合は、車速制御値33を単調減少する制御出力値とすることで、外乱等に関わらず、確実に減速方向に制御し、少なくとも所定時間後にはスロットルを全閉にすることが可能である。
【0021】
また、車速制限装置は、設定車速近傍まで加速された場合、設定車速30への制限を滑らかに行うために制御を行うべきである。しかし、設定車速30にまで至らない低速位置では、車速制限装置が動作していないときと同様に、車両は運転者のアクセル操作で自由に動作すべきである。従って、車速31が設定車速30よりも所定値以上低速側にある場合は、車速制御値33を単調増加させるように出力することにより、外乱等に関わらず、車速制御値33を確実に最大値に保持することができ、運転者のアクセル操作を一切阻害しない様にしておくことが可能である。
また、車速制御値33を単調減少または単調増加させる場合の傾きを所定の値で設定しておくことにより、例えば設定車速30を急変させた場合にも、スロットル開度が急変することなく、運転者が十分反応可能なスロットル開度変化に設定することが可能である。
【0022】
次に、制限値設定部13について説明する。
図4は、この発明の実施の形態1の制限値設定部13を示すブロック構成図である。
図4において、制限値設定部13は、設定速度30に応じた基準制御値を格納した基準制御値設定部20と、基準制御値40とアクセル開度32とを比較する最大値選択部21と、オフセット42を出力するオフセット設定部22と、加算器23とが設けられている。
図5は、この発明の実施の形態1の基準制御値設定部20に格納された車両特性マップである。
【0023】
次に、制限値設定部13の動作について説明する。
制限値設定部13に設定車速30およびアクセル開度(第2の制限値)32が入力されると、基準制御値設定部20は、設定車速30に応じた基準制御値(第1の制限値)40を出力する。制限値設定部13は、図5に示すような、横軸を車速、縦軸を基準制御値とする車両特性を内部に格納している。
この車両特性は、特定の車速において平坦路で定速走行するために必要なアクセル開度を基準制御値として与えられている。図5では4速の変速機において、変速段毎に基準制御値が設定されている。
この車両特性値は、運転者の操作によって定速安定走行を行った場合のアクセル開度を測定するか、車両用走行速度制御装置によって定速安定走行を行っている時の車速制御値33を測定することで容易に設定することが可能である。この場合、変速機の変速段を検出する変速段センサ(変速検出手段)(図示せず)を設け、基準制御値設定部20は、格納された車両特性に従い、現在の変速機の変速段と入力された設定車速30とに応じた基準制御値40を出力する。
【0024】
最大値選択部21は、基準制御値40とアクセル開度32とを比較し、大きい値の方を制限基準値41として出力する。
加算器23は、最大値選択部21から出力された制限基準値41と、オフセット設定部22で設定されたオフセット42とを加算し、両者の加算値を制限値35として出力する。
オフセット設定部22で設定されるオフセット42は、最小値選択部7でアクセル開度32が選択されている状態から車速制御値33が選択される状態に切換わるときの加速応答性を改善するものである。ここでは、固定値として設定されているが、車速偏差εに応じた可変値として設定させることにより、車速偏差εに応じて加速応答性を変化させることも可能である。また、このオフセット42を「0」、すなわち制限基準値41を制限値35にしておくと、加速応答性としては若干遅れが生じるが、車速制限はより確実に実施されることとなる。
【0025】
また、図5のように制限値設定部13を構成してもよい。図5は、この発明の実施の形態1の制限値設定部13を示すブロック構成図である。図5において、前述(図3参照)と同様のものは同一符号を付して詳述を省略する。
図5において、制限値設定部13の加算器23は、基準制御値40とオフセット42との加算値(第1の制限値)43を出力する。
最大値選択部21は、基準制御値40とオフセット42との加算値43と、アクセル開度(第2の制限値)32とを比較して、大きい値の方を制限基準値41とし、この制限基準値41を制限値35として出力する。
【0026】
本実施例において、切換器15が上限値制限部14からの閉ループ制御出力値36を選択していると、車速制御器6は閉ループ制御器として動作する。
ここで、上限値制限部14で上限値が設定されておらずに、最小値選択部7でアクセル開度32が選択されていると、閉ループ構造が成立しないため車速制御値33は適切な値とならない。
例えば、車速31が設定車速近傍である状態で、運転者がアクセル開度32を全閉にした場合、最小値選択部7はアクセル開度32をスロットル制御部8の入力として選択する。このときに、設定車速30よりも低速側に偏差があると、車速制御値33は、車両を加速させるために増加方向に変化する。しかし、最小値選択部7ではアクセル開度32が選択されているため、スロットル制御部8はアクセル開度32に応じて内燃機関の駆動出力を調整し、実際の車速は減速したままとなる。従って、車速制御値33は、車速偏差εが小さい状態であっても最大値まで際限なく増加していくこととなる。
【0027】
この車速制御値33の増加後に運転者がアクセル全開にすると、スロットル制御部8にはアクセル全開がそのまま入力され、全開加速を行うことになる。車速偏差εが小さい状態でもこの様な現象は起こり、車速31は設定車速30を大きくオーバーしてしまうこととなる。
従って、上限値制限部14で上限値を設定し、制御出力値を制限することにより、この様な増加を抑制することができる。また、この上限値は、例えばオフセットが「0」の場合、基準制御値40とアクセル開度32との中で、大きい値の方が選択される。
前述のように基準制御値40は、設定車速30で定速走行するために必要なアクセル開度であるので、アクセル開度32が基準制御値40よりも小さい場合、上限値には基準制御値40が設定され、車速制御値33は、設定車速30で定速走行するために必要なアクセル開度相当の値以上には増加しない。
例えば、運転者がアクセル開度32を全閉にした後、車速偏差εが小さい状態で継続したとしても、アクセル開度32は設定車速30で定速走行するために必要なアクセル開度で制限されており、その後運転者がアクセル開度全開としても、すぐに設定車速相当のアクセル開度で制御を再開することができる。
【0028】
次に、以上の様な速度制限を行う車両用走行速度制御装置の動作を、図7に従って説明する。図7の横軸は時間、縦軸は上半分に車速、下半分に制御量(アクセル開度)を示す。また、オフセット42は固定値としている。
まず、A点までの間は、アクセル開度32は車速制御値33よりも大きいので、スロットル制御部8への入力は車速制御値33が選択されており、車両は車速制御器6によって設定車速30で制限されて走行している。
この状態から、運転者がアクセルを緩めることにより、徐々にアクセル開度32が減少し、アクセル開度32はA点で車速制御値33と同値となっている。
【0029】
A点からD点までの間は、アクセル開度32は車速制御値33よりも小さいので、スロットル制御部8への入力はアクセル開度32が選択される。A点でアクセル開度32が選択されると車速はそれに従って低下するので、車速制御値33は、車両を加速されるためにB点の制限値(上限値)まで上昇する。
B点で車速制御値33が制限値に達すると、車速制御値33はその上限を制限され、制限値35に保持される状態となる。
なお、B点においては、基準制御値40がアクセル開度32よりも大きく、基準制御値40にオフセット42を加算した値が制限値35となっている。
【0030】
C点からD点においては、運転者がアクセルペダル4によってアクセル開度32を増加させたために、アクセル開度32が基準制御値40よりも大きくなり、それに伴いアクセル開度32が制限値35として選択され、アクセル開度32とともに制限値35が増加する。また、制限値35が増加することにより、車速制御値33も増加可能となって増加していく。
この時、車速制御値33は車速偏差εに応じた増加量で増加するので、この様にアクセル開度32が急増加している場合には、制限値35の傾きよりも小さい傾きで増加する。
【0031】
D点において、アクセル開度32が車速制御値33よりも大きくなり、スロットル制御部8への入力には車速制御値33が選択され、車速制御器6による制御が再開される。車速制御器6による制御再開後は、運転者のアクセルペダル4の操作によるアクセル開度32の増加に関わらず、車速31は滑らかに設定車速30で制限される。
この様に車速31が車速制御器6の制御下にない状態でも車速制御値33が制限値35により適正に制限されているので、アクセル開度32が急増加し、車速制御器6の制御下に切り換えられても、車速31が設定車速30を超え、車両が急加速などすることなく、滑らかに車速31の制限を行う事ができる。
【0032】
次に、E点手前では再びアクセル開度32が減少し、アクセル開度32がE点で車速制御値33と同値となっている。ここでの動作はA点と同様であり、スロットル制御部8への入力はアクセル開度32が選択される。また、アクセル開度32が選択されると車速はそれに従って低下するので、車速制御値33は車両を加速させようとして制限値35のF点まで上昇する。
F点もB点と同様に、車速制御値33が制限値35に達し、制限値35によって上限を制限される。
【0033】
G点では、車速31が下側速度閾値よりも低速となるので、切換器15は開ループ制御出力側に切換え、車速制御器6は開ループ制御器として動作を始める。
G点からI点までにおいては、開ループ制御出力値39が車速制御値33として出力され、車速制御値33は、傾斜出力設定部17から出力されるプラス傾斜の単調増加の傾きで増加を始める。
この場合、制限値35による制限は行われないので、車速31が下側速度閾値よりも低速である限り、車速制御値33の最大値まで増加する。
なお、車速制御値33の最大値とは、アクセル開度32の全開位置であるが、それ以上の所定値であってもよい。従って、車速31が下側速度閾値よりも低速になれば、所定時間以内に確実に車速制御値33の最大値となり、車速制御器6による車速制御が、運転者のアクセルペダル操作による車速制御を妨げることを完全に無くすことができる。
【0034】
なお、この例では、車速制御値33が最大値に達する前に、運転者がアクセル開度32を増加させているため、H点でスロットル制御部8への入力がアクセル開度32から車速制御値33に切り換えられ、車速制御器6による制御が再開される。ただし、車速31はまだ下側速度閾値よりも低速であるので、スロットル制御部8への入力はプラス傾斜の傾きでの増加を継続する。
このスロットル制御部8への入力値の増加に伴い、I点で車速31が下側速度閾値よりも高速になり、車速制御器6は閉ループ制御器としての動作に切り換わる。この時、車両は加速しているので、車速制御器6は車両の加速度により車速制御値33を減少させる方向に動作し、以後、車速31を設定車速30に滑らかに制限する。
【0035】
ここで、アクセル開度32の増加がこの例よりも更に後に行われ、車速制御値33が最大値まで増加した後に切り換えられた場合、H点でスロットル制御部8への入力は全開位置となるが、全開加速時からでも車速31を設定車速30に滑らかに制限できるように下側速度閾値を設定しておけば、車速31を設定車速30に滑らかに制限することができる。
また、下側速度閾値はギア位置毎に設定されているのでギア位置毎に最適な値を設定することができる。
また、I点の下側速度閾値をG点の下側速度閾値よりも小さい値に設定するため、すなわち、開ループ制御と閉ループ制御との頻繁な切換わりを防止するために、下側速度閾値にヒステリシスを設けてもよい。
【0036】
この様に、車速制御値33が設定車速30に応じた基準制御値40に基づいて設定されるので、車速31が車速制御器6の制御下にない場合でも、車速制御値33は適正な値から大きく外れた値にならない様に調整され、車速31が車速制御器6の制御下に復帰する場合に違和感の少ない移行を行うことができる。
また、車速31が上側または下側速度閾値よりも離れている場合には、開ループ制御で車速制御値33を所定の傾きで変化させ、上側および下側速度閾値の範囲内にある場合には閉ループ制御を行い、閉ループ制御時のみ車速制御値33を基準制御値40に基づいて設定するので、車両の走行速度を制御または制限する必要がない場合には、運転者のアクセルペダル操作を妨げることなく、また、設定車速30の変化などにも自然な感覚で運転者操作優先の状態に移行を行うことができる。
なお、上記説明ではこの発明を車速制限装置として説明したが、この装置を、最小値選択部7を最大値選択部、上限値制限部14を下限値制限部、最大値選択部21を最小値選択部とし、加算器23においてオフセット設定部22の出力を減算する様に構成することにより、車速を自動的に設定車速に調整し、車両を定速走行させるクルーズコントロール装置として適用することも可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、車両の車速を検出する車速センサと、所定の設定車速で車速を制御するための車速制御値を少なくとも閉ループ制御を用いて算出する車速制御器と、車速を調整するために操作されるアクセルペダルと、アクセルペダルの操作量に対応した加減速値を検出するアクセルペダルセンサと、車速制御値と加減速値とのうちの小さい方の値を選択する加減速入力選択手段と、加減速入力選択手段により選択された値に応じて、車両の加減速度を調整する加減速度調整手段とを備え、車速制御器は、設定車速に応じた基準制御値を予め格納する基準制御値設定手段を含み、加減速値が選択されている間は、基準制御値に基づいた値に車速制御値の上限を制限するので、車速が車速制御器の制御下にない場合でも、車速制御値は適正な値から大きく外れた値にならない様に調整され、車速が車速制御器の制御下に復帰する場合に違和感の少ない移行を行うことのできる車両用走行速度制御装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示す車両用走行速度制御装置のブロック構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1における車速制御器のブロック構成図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による切換判定部の動作を説明する説明図である。
【図4】 この発明の実施の形態1における制限値設定部のブロック構成図である。
【図5】 この発明の実施の形態1における基準制御値設定部の車両特性マップである。
【図6】 この発明の実施の形態1における制限値設定部の構成ブロック図である。
【図7】 この発明の実施の形態1を示す車両用走行速度制御装置の動作例である。
【符号の説明】
1 コントロールレバー(設定車速変更手段)、2 設定車速変更記憶部、3車速センサ(車速検出手段)、4 アクセルペダル(加減速入力手段)、5 アクセルペダルセンサ(加減速値検出手段)、6 車速制御器、7 最小値選択部(加減速入力選択手段)、8 スロットル制御部(加減速度調整手段)、10減算器、11 PID制御器、12 加算器、13 制限値設定部(制限手段)、14 上限値制限部(制限手段)、15 切換器、16 切換判定部、17傾斜出力設定部、18 加算器、20 基準制御値設定部(基準制御値設定手段)、21 最大値選択部、22 オフセット設定部、23 加算器、30 設定車速、31 車速、32 アクセル開度(加減速値)、33 車速制御値、34 最小値(スロットル制御入力値)、35 制限値、36 閉ループ制御出力値、37 プラス(マイナス)傾斜出力指示信号、38 開ループ(閉ループ)出力切換指示信号、39 開ループ制御出力値、40 基準制御値、41 制限基準値、42 オフセット、ΔPf 制御出力値、ΔPc 制御出力値、ε 車速偏差。

Claims (13)

  1. 車両の車速を検出する車速検出手段と、
    所定の設定車速で前記車速を制御するための車速制御値を少なくとも閉ループ制御を用いて算出する車速制御器と、
    前記車速を調整するために操作される加減速入力手段と、
    前記加減速入力手段の操作量に対応した加減速値を検出する加減速値検出手段と、
    前記車速制御値と前記加減速値とのうちの小さい方の値を選択する加減速入力選択手段と、
    前記加減速入力選択手段により選択された値に応じて、前記車両の加減速度を調整する加減速度調整手段とを備え、
    前記車速制御器は、前記設定車速に応じた基準制御値を予め格納する基準制御値設定手段を含み、前記加減速値が選択されている間は、前記基準制御値に基づいた値に前記車速制御値の上限を制限することを特徴とする車両用走行速度制御装置。
  2. 前記車速制御器は、前記加減速値が選択されている間は、前記基準制御値および前記加減速値に基づいた値に前記車速制御値の上限を制限することを特徴とする請求項1に記載の車両用走行速度制御装置。
  3. 前記基準制御値を第1の制限値、前記加減速入力値を第2の制限値とする制限手段を備え、
    前記制限手段は、前記第1の制限値と前記第2の制限値とのうちの大きい方の値を制限基準値として選択し、前記制限基準値を制限値として、前記車速制御値の上限を前記制限値で制限することを特徴とする請求項2に記載の車両用走行速度制御装置。
  4. 前記基準制御値を第1の制限値、前記加減速入力値を第2の制限値とする制限手段を備え、
    前記制限手段は、前記第1の制限値と前記第2の制限値とのうちの大きい方の値を制限基準値として選択し、前記制限基準値に所定のオフセットを加減した値を前記制限値として、前記車速制御値の上限を制限することを特徴とする請求項2に記載の車両用走行速度制御装置。
  5. 前記基準制御値に所定のオフセットを加減した値を第1の制限値、前記加減速入力値を第2の制限値とする制限手段を備え、
    前記制限手段は、前記第1の制限値と前記第2の制限値とのうちの大きい方の値を制限基準値として選択し、前記制限基準値を制限値として、前記車速制御値の上限を前記制限値で制限することを特徴とする請求項2に記載の車両用走行速度制御装置。
  6. 前記制限手段は、前記第1の制限値と前記第2の制限値とを比較して、大きい値の方を前記制限基準値として選択し、前記制限値を上限値として前記車速制御値を制限することを特徴とする請求項3から請求項5までの何れか1項に記載の車両用走行速度制御装置。
  7. 前記基準制御値設定部は、所定の車速毎に、平坦路で前記車両を一定速度で走行させるための加減速値を予め与えられた前記基準制御値として設定することを特徴とする請求項1から請求項6までの何れか1項に記載の車両用走行速度制御装置。
  8. 前記車両の変速装置のギア比を検出する変速検出手段を備え、
    前記基準制御値設定部は、前記変速装置のギア比毎に、予め設定された値として基準制御値を設定することを特徴とする請求項7に記載の車両用走行速度制御装置。
  9. 前記車速制御器は、
    前記設定車速から所定値だけ低速側に下側速度閾値を設定し、
    前記車速が前記下側速度閾値よりも高速側にある場合は、前記車速制御値に基づいて閉ループ制御を行い、
    前記車速が前記下側速度閾値よりも低速側にある場合は、前記車速制御値を所定の傾きで単調増加させる開ループ制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項8までの何れか1項に記載の車両用走行速度制御装置。
  10. 前記車速制御器は、前記車速が前記下側速度閾値よりも低速側にあって前記開ループ制御を行っている場合には、前記制限値に関わらず前記車速制御値を単調増加させることを特徴とする請求項9に記載の車両用走行速度制御装置。
  11. 前記車速制御器は、
    前記設定車速から所定値だけ高速側に上側速度閾値を設定し、
    前記車速が前記上側速度閾値よりも低速側にある場合は、前記車速制御値に基づいて閉ループ制御を行い、
    前記車速が前記上側速度閾値よりも高速側にある場合は、前記車速制御値を所定の傾きで単調減少させる開ループ制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項10までの何れか1項に記載の車両用走行速度制御装置。
  12. 前記車速制御器は、前記車速が前記上側速度閾値よりも高速側にあって前記開ループ制御を行っている場合には、前記制限値に関わらず前記車速制御値を単調減少させることを特徴とする請求項11に記載の車両用走行速度制御装置。
  13. 前記設定車速を変更する設定車速変更手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項12までの何れか1項に記載の車両用走行速度制御装置。
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