JP3886767B2 - 生分解性ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、及びそれより得られる発泡体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は生分解性ポリエステル樹脂とポリ乳酸ステレオコンプレックスとからなり、機械的強度、耐熱性に優れ、操業性に問題のない発泡体等の成形に有利なレオロジー特性を有する生分解性ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、及びそれから得られる発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸は他の生分解性樹脂と比較して融点が高く耐熱性に優れる特徴を持つ。しかし、ポリ乳酸は溶融粘度が低く、押出発泡成形する際には、破泡を起こして十分な発泡倍率が得られなかったり、また、インフレーション成形する際には、バブルが安定せず成形体に偏肉を生じ易いという問題があった。従って、ポリ乳酸の発泡体を得るには、厳しい成形条件が必要であり、またその生産効率が悪い等の様々な欠点を有していた。そこで、ポリ乳酸の発泡体を実用的に製造するためには、ポリ乳酸の溶融張力を向上させ、伸長粘度測定時の歪み硬化性を発現させることが必要であった。
【0003】
一般に、歪み硬化性を発現させるには高重合度ポリマーを添加する方法や長鎖分岐を有するポリマーを用いる方法が有効と考えられている。しかしながら高重合度ポリマーの製造では、重合に長時間を要し生産性効率が悪くなるばかりか、長時間の熱履歴による着色や分解等が見られるため、例えば重量平均分子量(Mw)が50万以上の生分解性ポリエステルは実用化されていない。また一方で、分岐ポリ乳酸を製造する方法としては、重合時に多官能性開始剤を添加する方法(特開平10−7778号公報、特開2000−136256号公報)、過酸化物及び反応性化合物等との溶融混練により架橋を生じさせる方法(特開平10−324766号公報)が知られているが、ゲル等の発生により操業安定性等に問題があった。また、層状珪酸塩を溶融混練する方法が検討されているが、層状珪酸塩の分散性に問題があり、生分解性樹脂ではまだ実用化されていない。
また、グリコールと二塩基酸から合成された生分解性樹脂の発泡体作製も検討されているが、これらの樹脂は強度が低く、特に発泡倍率が高くなると問題となるものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり、機械的強度、耐熱性に優れ、操業性に問題のない発泡体等の成形に有利なレオロジー特性を有する生分解性ポリエステル樹脂組成物、その製造方法、及びその発泡体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生分解性ポリエステル樹脂に、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを特定量溶融混練することにより、得られる組成物に、溶融粘度の向上及び伸長粘度測定における歪み硬化性の発現がみられ、この組成物が発泡成形性に優れたレオロジー特性を有するのみならず、この組成物から得られた成形加工品が耐熱性や機械的強度にも優れ、成形加工時の操業性にも問題がないことを見い出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)D−乳酸、L−乳酸又はこれらの混合物を50モル%以上含有する生分解性ポリエステル樹脂100質量部と、ポリ乳酸ステレオコンプレックス0.1〜20質量部とを溶融混練してなる生分解性ポリエステル樹脂組成物を発泡成形して得られる生分解性樹脂発泡体であって、
前記ポリ乳酸ステレオコンプレックスは、L−乳酸単位70〜100モル%とD−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(A)と、D−乳酸単位70〜100モル%と、L−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(B)とを、(A):(B)=10:90〜90:10(質量比)の範囲で溶融ブレンドして得られるものであること特徴とする生分解性樹脂発泡体。
(2)D−乳酸、L−乳酸又はこれらの混合物を50モル%以上含有する生分解性ポリエステル樹脂とポリ乳酸ステレオコンプレックスとを溶融混錬することを特徴とする生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリ乳酸ステレオコンプレックスは、L−乳酸単位70〜100モル%とD−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(A)と、D−乳酸単位70〜100モル%とL−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(B)とを、(A):(B)=10:90〜90:10(質量比)の範囲で溶融ブレンドして得られるものである、生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
本発明に用いる生分解性ポリエステル樹脂は、α−及び/又はβ−ヒドロキシカルボン酸単位を50モル%以上含有する必要がある。α−及び/又はβ−ヒドロキシカルボン酸単位が50モル%未満であると、強度が十分でなくなる。α−及び/又はβ−ヒドロキシカルボン酸単位の例としては、D−乳酸、L−乳酸、又はこれらの混合物、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒロドキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
【0008】
従って本発明に用いるα−及び/又はβ−ヒドロキシカルボン酸単位を50モル%以上含有する生分解性ポリエステル樹脂として好ましいのは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒロドキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシカプロン酸)、及びこれらの共重合体、及びこれらの混合物等である。これらの中で、ポリ乳酸は、加工性、強度面で優れており、また大量生産されており、実用上最も有利である。
【0009】
ここで用いられる生分解性ポリエステル樹脂は通常公知の溶融重合法で、あるいはさらに固相重合法を併用して製造される。また、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)及びポリ(3−ヒロドキシ吉草酸)等については微生物による生産も可能である。
【0010】
本発明に用いる生分解性ポリエステル樹脂には、ポリ(α−及び/又はβ−ヒドロキシカルボン酸)の耐熱性を大幅に損ねない範囲で、必要に応じてその他の生分解性樹脂成分を共重合ないしは混合することもできる。その他の生分解性樹脂としては、ポリ(エチレンサクシネート)やポリ(ブチレンサクシネート)等に代表されるジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステル、ポリ(ε−カプロラクトン)に代表されるポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、さらに芳香族成分を含んでいても生分解を示すポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンテレフタレート)や(ブチレンアジペート−co−ブチレンテレフタレート)の他、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネート、デンプンなどの多糖類等が挙げられる。
【0011】
本発明で用いる生分解性ポリエステル樹脂の分子量としては特に制限はないが、重量平均分子量が5万以上、100万未満であることが好ましく、さらには10万以上、50万未満であることが好ましい。重量平均分子量が5万未満である場合には、樹脂組成物の溶融粘度が低すぎるので好ましくない。また、100万以上である場合には、樹脂組成物の成形性が急速に低下したり、コスト高となるので好ましくない。
【0012】
本発明で用いるポリ乳酸ステレオコンプレックスとしては、L−乳酸単位70〜100モル%と、D−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(A)と、D−乳酸単位70〜100モル%と、L−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(B)とを、(A):(B)=10:90〜90:10(質量比)の範囲で溶融ブレンドして得られる結晶性ポリ乳酸組成物等が挙げられる。
【0013】
ポリ乳酸ステレオコンプレックスの製造法としては、一般的な押出機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等を用いてポリマー(A)とポリマー(B)とを溶融混練する方法があるが、両者の分散性を向上させるために二軸押出機を使用することが好ましい。この場合、ポリマー(A)、ポリマー(B)の添加方法としては、溶融混練前に予めドライブレンドしておく方法や、粉体フィーダーを用いて供給する方法が望ましい。
【0014】
ポリ乳酸ステレオコンプレックスの配合量は、生分解性ポリエステル樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが必要であり、好ましくは0.2〜10質量部である。0.1質量部未満では本発明の目的とする機械的強度、耐熱性、寸法安定性の改良効果が得られない。また、20質量部を超える場合に、融点が高くなり分解点に近づくため、溶融混練時に分解しやすく、好ましくない。
【0015】
本発明における生分解性ポリエステル樹脂組成物は、その融点より10℃高い温度での伸張粘度測定で得られる時間−伸張粘度の対数プロット(図1参照)において、変曲点があらわれるまでの伸張初期の線形領域の傾きa1と変曲点以降の伸張後期の傾きa2との比であらわされる歪み硬化係数(a2/a1)が、1.05以上、50未満であるような、歪み硬化性が発現されることが好ましい。より好ましい歪み硬化係数は1.5〜30である。歪み硬化係数が1.05未満であると、押出発泡成形時に破泡を起こしたり、成形体に偏肉を生じることがある。また歪み硬化係数が50以上であると成形時にゲルが発生しやすく流動性も大きく低下して好ましくない。歪み硬化係数は、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの配合量を選択することによって、上記範囲とすることができる。
【0016】
本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造法としては、一般的な押出機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等を用いて生分解性ポリエステル樹脂とポリ乳酸ステレオコンプレックスとを溶融混練する方法があるが、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの分散をよくする意味で二軸押出機を使用することが好ましい。混練温度はポリ乳酸ステレオコンプレックスの融点より5〜100℃高い温度で行うのが好ましい。この場合、本発明で用いるポリ乳酸ステレオコンプレックスの添加方法としては、溶融混練前に予めドライブレンドしておく方法や粉体フィーダーを用いて供給する方法が望ましい。
【0017】
本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材等を添加することも可能である。熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物を使用することができる。無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
【0018】
なお、本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物に、他の熱可塑性樹脂や上記充填材等を混合する方法は特に限定されるものではなく、通常の加熱溶融後、例えば、従来より知られている一軸押出機、二軸押出機、ロール混練機、ブラベンダー等を用いる混練法によって混練するとよい。また、スタティックミキサーやダイナミックミキサーを併用することも効果的である。
【0019】
本発明の生分解性ポリエステル樹脂組成物から発泡体を得る方法として、一般的な発泡方法を適用することができる。例えば、押出機を用いて、樹脂にあらかじめ樹脂の溶融温度で分解する分解型発泡剤をブレンドしておき、スリット状ノズルから押し出してシート状にしたり、丸形ノズルから押し出してストランド形状にすることができる。分解型発泡剤の例としては、アゾジカルボンアミドやバリウムアゾジカルボキシレートに代表されるアゾ化合物,N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンに代表されるニトロソ化合物,4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)やヒドラジカルボンアミドに代表されるヒドラジン化合物、あるいは炭酸水素ナトリウムなどの無機系の発泡剤などを挙げることが出来る。
また、押出機途中から揮発型発泡剤を注入して発泡することも可能である。この場合の発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、水等の無機化合物や、メタン、エタン、ブタンなどの各種炭化水素、フロン化合物、エタノールやメタノール等の各種アルコール類に代表される有機溶媒などを挙げることが出来る。
また、あらかじめ微粒子を作製し有機溶媒や水など上記に示した発泡剤を含浸させた後、温度や圧力の変化で発泡させて発泡微粒子を作製する方法も適用できる。
【0020】
【実施例】
以下本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0021】
実施例及び比較例の評価に用いた測定法は次のとおりである。
(1)分子量及び分子量分布
示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置(島津製作所製)を用い、テトラヒドロフランを溶出液として40℃で標準ポリスチレン換算で求めた。
(2)曲げ弾性率
ASTM−790に準じて150mm×10mm×6mmの試験片を作製し、変形速度1mm/分で荷重をかけ、曲げ弾性率を測定した。
(3)融点
示差走査熱量計DSC―7(パーキンエルマー社製)を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(4)MFR
JIS K7210に従い、附属書A表1のFの条件にて測定した。
(5)伸長粘度
伸長粘度測定装置RME(レオメトリック社製)を用い、60mm×7mm×1mmの試験片を作製し、その両端を金属ベルトクランプにより支持した後、融点よりも10℃高い温度(ポリ乳酸の場合180℃)で、歪み速度0.1sec−1で回転させて測定サンプルに伸長変形を加え、変形中にピンチローラにかかるトルクを検出することにより伸長粘度を求めた。
(6)歪み硬化係数(a2/a1)(図1参照)
伸長時間と伸長粘度の両対数プロットにおいて、変曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と変曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1)を算出した。
(7)ビカット軟化温度
JIS K7206に従い、測定した。
(8)発泡倍率
得られた発泡体を水中に浸漬した際に増加する体積と、発泡体の質量と樹脂密度から求まる体積との比から算出した。
【0022】
また、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの作製法は次のとおりである。
(1)ポリ乳酸ステレオコンプレックス(a)
成形機(池貝製二軸押出成形機PCM−30、ダイス直径4mm×3孔、押出ヘッド温度220℃、ダイ出口温度180℃)を用い、L−ポリ乳酸(L体99%、重量平均分子量(Mw)=199,000、数平均分子量(Mn)=116,000)100質量部と、D−ポリ乳酸(D体99%、Mw=150,000、Mn=100,000)100質量部とを溶融混練し、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(a)を作製した。
(2)ポリ乳酸ステレオコンプレックス(b)
L−ポリ乳酸(L体99%、Mw=199,000、Mn=116,000)100質量部と、D−乳酸とポリグリコール酸の共重合体(D−乳酸95質量部+ポリグリコール酸5質量部)100質量部とを用いて、同様にしてポリ乳酸ステレオコンプレックス(b)を作製した。
(3)ポリ乳酸ステレオコンプレックス(c)
L−ポリ乳酸(L体99%、Mw=199,000、Mn=116,000)55質量部と、D−ポリ乳酸(D体99%、Mw=150,000、Mn=100,000)45質量部とを用いて、同様にしてポリ乳酸ステレオコンプレックス(c)を作製した。
(4)ポリ乳酸ステレオコンプレックス(d)
L−ポリ乳酸(L体99%、Mw=199,000、Mn=116,000)60質量部と、D−ポリ乳酸(D体99%、Mw=150,000、Mn=100,000)40質量部とを用いて、同様にしてポリ乳酸ステレオコンプレックス(d)を作製した。
【0023】
実施例1
成形機(池貝製二軸押出成形機PCM−30、ダイス直径4mm×3孔、押出ヘッド温度220℃、ダイ出口温度180℃)を用い、ポリ乳酸(カーギルダウ社製Nature Works、L体98%、Mw=198,000、Mn=115,000)100質量部に対し、ポリ乳酸ステレオコンプレックス(a)を5質量部添加し、溶融混練した。得られたストランドを粉砕機によりペレット化した後、真空乾燥し、生分解性ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られた生分解性ポリエステル樹脂組成物を耐圧容器に入れ、融点より10℃低い温度において、10MPaの圧力で二酸化炭素を含浸後、常圧へ戻してバッチ式で発泡体を作製した。また、成形機(池貝製二軸押出成形機PCM−30、押出ヘッド温度200℃、ダイ出口温度160℃、ダイのスリット長さ40mm、スリット巾1mm)で生分解性ポリエステル樹脂組成物を溶融混練し、これに二酸化炭素を連続注入し、厚み9.7mmのシート状発泡体を作製した。測定結果を表1に示した。
【0024】
実施例2〜9
ポリ乳酸100質量部に対して、表1に示した種類と量のポリ乳酸ステレオコンプレックスを添加した以外は実施例1と同様に行った。
【0025】
比較例1
ポリ乳酸ステレオコンプレックスを使用しなかった以外は実施例1と同様に試験を行った。
【0026】
比較例2
ポリ乳酸100質量部に対してポリ乳酸ステレオコンプレックス(a)を0.01質量部添加し、溶融混練した以外は実施例1と同様に試験を行った。
【0027】
【表1】
【0028】
表1から明らかなように実施例1〜9においては、得られた樹脂組成物は曲げ弾性率に優れ、また、この樹脂組成物から独立気泡で均一な発泡体が得られることが分かった。
比較例1では、樹脂組成物がポリ乳酸ステレオコンプレックスを含有していないため、樹脂組成物は曲げ弾性率を代表とする機械的強度の改善が図れず、歪硬化係数も低いものであった。この樹脂組成物を発泡処理を行っても満足な発泡体が得られなかった。
比較例2でも、樹脂組成物におけるポリ乳酸ステレオコンプレックスの含有量が少量であるため、樹脂組成物は曲げ弾性率を代表とする機械的強度の改善が図れず、歪硬化係数も測定できないものであった。この樹脂組成物から発泡体を得ようとしたが破泡して満足な発泡体を得ることができなかった。
【0029】
実施例10
実施例1で得た生分解性樹脂組成物を用いて、発泡剤としてアゾジカルボンアミド系熱分解型発泡剤(永和化成製ビニホールAC#3)が1.5質量%になるように添加し、ドライブレンド法で混練し、押出Tダイ試験機(スルーザー型スタティックミキサー、一軸40mm径、3.5段併設、スリット長500mm、スリット幅1.5mm)を用い、溶融温度220℃、ダイ出口温度180℃、スクリュー回転数16rpm、引取り速度3m/分で製膜し、厚みが4.2mmの発泡体を得た。
製膜時の発泡状態は極めて均一であり、得られた発泡体は、発泡倍率が3.5倍であり、独立型の気泡から構成されているものであった。
【0030】
実施例11
押出Tダイ試験機の途中から、発泡剤として液化二酸化炭素を樹脂の3質量%になるように高圧ポンプで注入した以外は実施例10と同様にして製膜し、厚みが12.5mmの発泡体を得た。
製膜時の発泡状態は極めて均一であり、得られた発泡体は、発泡倍率が10倍であり、独立型の気泡から構成されているものであった。
【0031】
実施例12
実施例1で得た生分解性樹脂組成物を凍結粉砕して、平均粒径1mmの粒子を作製した。この粒子をいったん乾燥した後、耐圧容器に入れ、融点より5℃低い温度において、10MPaの圧力で二酸化炭素を含浸後、常圧へ戻してバッチ式で発泡させ、平均粒径3.0mmの発泡粒子を得た。
得られた発泡粒子は、発泡倍率、気泡径、粒子径が極めて均一であり、発泡倍率は28倍であり、独立型の気泡から構成されているものであった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、機械的強度、耐熱性に優れ、発泡体等の成形に有利なレオロジー特性を有する生分解性ポリエステル樹脂組成物を、簡便に、コストも低く作製することができ、この樹脂を用いて機械的特性に優れた発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】変曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と変曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1、歪み硬化係数)を求める際の伸長時間と伸長粘度の模式図を示す。
Claims (3)
- D−乳酸、L−乳酸又はこれらの混合物を50モル%以上含有する生分解性ポリエステル樹脂100質量部と、ポリ乳酸ステレオコンプレックス0.1〜20質量部とを溶融混練してなる生分解性ポリエステル樹脂組成物を発泡成形して得られる生分解性樹脂発泡体であって、
前記ポリ乳酸ステレオコンプレックスは、L−乳酸単位70〜100モル%とD−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(A)と、D−乳酸単位70〜100モル%と、L−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(B)とを、(A):(B)=10:90〜90:10(質量比)の範囲で溶融ブレンドして得られるものであることを特徴とする生分解性樹脂発泡体。 - 前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が、生分解性ポリエステル樹脂の融点より10℃高い温度での伸長粘度測定で得られる時間−伸長粘度曲線において、変曲点が現れるまでの伸長初期の線形領域の傾きa1と変曲点以降の伸長後期の傾きa2との比(a2/a1)が、1.05以上、50未満であるような、歪み硬化性が発現されることを特徴とする生分解性ポリエステル樹脂組成物である、請求項1記載の生分解性樹脂発泡体。
- D−乳酸、L−乳酸又はこれらの混合物を50モル%以上含有する生分解性ポリエステル樹脂とポリ乳酸ステレオコンプレックスとを溶融混錬することを特徴とする生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリ乳酸ステレオコンプレックスは、L−乳酸単位70〜100モル%とD−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(A)と、D−乳酸単位70〜100モル%とL−乳酸単位及び/又は乳酸以外の共重合成分単位0〜30モル%とから構成されるポリマー(B)とを、(A):(B)=10:90〜90:10(質量比)の範囲で溶融ブレンドして得られるものである、生分解性ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
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