JP3886579B2 - 高負荷伝動ベルト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エラストマー製のセンターベルトと耐側圧を補強するブロックからなる高負荷伝動用に供するベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から無段変速装置等の高負荷伝動を要求される用途としてに適用されるベルトとして、ゴム製Vベルト、また、特開昭55−100443号公報のような金属ベルトが提案されている。
しかしゴム製Vベルトでは高負荷用のものであっても最大面圧が10kg/cm2 程度であり、それ以上のトルクのかかる用途であるとゴム製Vベルトが高側圧に耐えられず座屈変形してしまう。
【0003】
金属ベルトは耐側圧性に優れており、かなりの高側圧に耐えることができるので座屈変形することはないが、一般的に変速プーリは鉄やアルミニウム合金などの金属材料で構成されているために、金属ベルトはプーリとの当接面の焼きつきや摩耗を防止するために、断えずオイルを供給しながら走行させなければならない。そうなるとオイルを供給するための装置を設けなければならないので、ベルトの伝動装置としては大型のものにならざるを得ない。
【0004】
そこで、オイルによる潤滑の不要な乾式のベルトであるとともに高負荷にも耐えうるベルトとして心体を埋設したゴムベルトに硬質の樹脂等からなるブロックを固定してベルト幅方向の強度を高め耐久性を向上させたベルトも多数提案されている。
【0005】
そのようなブロックを用いた例として、特公昭62−7418号公報に開示されるようなブロックの両側面にそれぞれスロット部を設け、そのスロット部にゴム製の張力体を挿入したベルトがある。
【0006】
このベルトは特に固定のためにブロックに張力体を差し込んで嵌合固定する構造であるために、例えば止着材を用いてブロックと張力体を固定するようなベルトと比べると、ブロックの厚みを薄くすることができる。よって、ベルトを走行させた際のピッチノイズを低レベルに抑えることができるという利点を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特公昭62−7418号公報に開示されるベルトは、図6にその断面を示すように、上ビーム部31と下ビーム部32をセンターピラー33で連結し、両側面にセンターベルトの嵌合溝34、34を有するブロック30の前記嵌合溝34、34にセンターベルト35を嵌合したタイプのベルトである。また、センターピラー33の中央部に前後のブロックを整列されるガイド凸部36を有している。
【0008】
このタイプのベルトの場合、センターベルトを側面から挿入する構造のために、最も効率的な伝達力が得られるセンターベルトの側方にセンターベルトを挿入する溝が開口しているために、その部分で動力の受渡しができないという欠点がある。また、センターベルトが2本であることから、変速ベルトでは避けられないミスアライメント走行する場合、ベルトが捩じれた状態になって1本のベルトでしか張力を受け持てず、動力伝達効率の低下につながったり、切断してしまうという問題もある。
【0009】
そこで、図7に示すようなブロック40の上ビーム部41と下ビーム部42を端部においてサイドピラー43で連結した略コ字形状とし、1本のセンターベルト44に前記のような略コ字形状のブロックを左右交互に嵌め込んでゆくベルトとすると、センターベルトは1本なので上述のようなベルトが捩れてしまうという問題がなくなり、センターベルト44を嵌合する溝も片側しか開口していないので、センターベルトの側方の面積が狭くなるという問題もある程度カバーすることができる。
【0010】
しかし、この略コ字形状のブロック40はプーリのV溝と接触するプーリ接触面の面積が左右で異なるため、V溝との間で発生する左右の摩擦力のバランスが崩れて、同じベルト内において摩擦力の大きい側の速度が速くなり、走行方向に対してブロック40が斜行する。
【0011】
また、側面のセンターベルト44を挿入するための開口部にかかるモーメント力によって上、下ビーム部41、42が開いてブロックが破損したり、センターベルト44からブロックが外れてしまうという問題がある。
【0012】
更にブロック40をベルト長手方向で整列させるために例えばブロックの前面の凸部45、背面の凹部からなるガイド嵌合部を設けて前後に位置するをブロック同志を凹凸嵌合させているが、センターベルト44の横方向に開口部が存在するため、凸部45と凹部を設ける位置はブロックの上ビーム部41、もしくは下ビーム部42にしなければならない。そうすると凹凸嵌合の位置がセンターベルトの存在するピッチラインから大きく外れるため凸部と凹部との間で相対的な動きが大きく、摩耗の度合いも大きくなるという問題があった。
このため、かえって両側面にセンターベルトを挿入する溝が開口しているベルトよりも伝達力や耐久性の低下を招くことがある。
【0013】
そこで、本発明はセンターベルトは1本でベルトの捩れが発生することがなく、また、センターベルトの側方でプーリからの側圧を受けることができ、ピッチライン付近にガイド嵌合部を設けることによって前後のブロックを嵌合しているので、凹凸の摩耗も少なく、更にセンターベルトとブロックとの固定が容易でありかつ外れにくい高負荷伝動ベルトの提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために請求項1では、心線をエラストマー中に埋設した無端のセンターベルトと、該センターベルトにプーリのV溝と係合する傾斜したプーリ接触面を有する複数のブロックを、嵌合係止した構成からなる高負荷伝動ベルトにおいて、前記ブロックは、プーリ接触面を含む一対のプーリ当接部を一対の連結部材で一体に接続して、前記一対のプーリ当接部と一対の連結部材で囲まれた嵌合溝を形成し、該嵌合溝は一方のプーリ当接部にセンターベルトを嵌入するための開口部を有しているとともに、開口部は嵌合溝のベルト幅方向から外れた位置に設けられ、嵌合溝と開口部との間はベルト幅方向に対して斜め方向の切込みで接続されており、嵌合溝内においてセンターベルトは一対の連結部材にて挟持されるとともに一対の連結部材にはベルト幅方向の凸条部、一方、センターベルトにはベルト幅方向の溝条部を有し、該凸条部と溝条部が噛み合ってなることを特徴とする。
【0015】
このような構成を採ることによって、センターベルトを一本であるとともに、ブロックの厚みを薄くできるという効果を有する上に、センターベルトのブロックへの装着は比較的簡単で、一度装着したセンターベルトが容易に外れることがない。
【0016】
請求項2では、プーリ当接部の嵌合溝に装着したセンターベルトの心線の高さであるピッチライン上にブロックを整列させるガイド部を配置したことによって、ガイド部の動きが少なく摩耗も起こりにくいことから長期にわたってブロックの整列機能を果たすことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の高負荷伝動ベルトの斜視図、図2は本発明高負荷伝動ベルトのブロック本体の斜視図である。
【0018】
本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー2内に心体3をスパイラル状に埋設してなるセンターベルト4とセンターベルト4の長手方向に複数嵌合配置するブロック5からなる。ブロック5の両側面は、プーリのV溝と係合する傾斜のついたプーリ接触面5a、5bとなっており、駆動されたプーリから動力を受け取ってブロック5に係止固定したセンターベルトを介して従動側のプーリに動力を伝えるものである。
【0019】
ブロック5は、図2に示すような一対のプーリ当接部6、7の下端および上端を一体的に接続する一対の連結部材8、9を有し、一対のプーリ当接部6、7と一対の連結部材8、9に囲まれた嵌合溝10を設けている。この嵌合溝10は、一対のプーリ当接部6、7のいずれか一方に開口しており、開口部11はセンターベルト4の位置からずれた位置に開いている。図2の例では、嵌合溝10の端から上側の連結部材8に斜め上方向の切り込み12が入り、嵌合溝10からずれた位置まできたところで、そのまま横方向に開口部11に至るまで延びている。そして、嵌合溝10内のセンターベルト4と比べてほぼセンターベルト4の厚み分だけ上方にずれた位置に、開口部11が位置している。
【0020】
開口部11の位置をこのようにセンターベルト4の位置からずらすことによって、一端装着したセンターベルト4が容易に抜けないようになっている。
【0021】
また、プーリ接触面5aは、ブロック5の下から開口部11までとしており、連結部材8の側面にあたる部分は、プーリに接触しないようにしているが、それは、連結部材8にプーリからの力がかかることによって開口部11が開いてしまうのを防止するためである。また、開口部11のない反対側のプーリ接触面5bもそれにあわせて上方では、傾斜角度を立ち上げてプーリと接触しないようにし、左右のバランスをとっている。
また、ブロック5は、金属からなる補強部材13の少なくともプーリと当接するプーリ接触面5a、5bに樹脂部14を被覆した構成からなっている。
【0022】
そして、高負荷伝動ベルトを組み立てるときには、図3に示すようにセンターベルト4を開口部11に挿入して行うことができるので、比較的簡単にベルトの組み立てを行うことができる。また、ベルトの左右の重量バランスを取るために、右側に開口部11を持つブロック5と左側に開口部11’を持つブロック5’を交互のセンターベルト4に装着する。
【0023】
また、図5のようにブロック5にはプーリ当接部6、7のブロック前面のほぼセンターベルト4の心線2と略同じ高さの位置に、凸部15と、背面の凹部16からなるガイド部を設け、その凸部15と凹部16が嵌合し、隣り合うブロック同志の動きが規制しブロックを整列させるガイドを役目を果たしている。また、凸部15および凹部16は曲面となっておりベルトの屈曲で隣り合うブロックとの間の角度が変わる際にも、摩耗しないようになっている。
【0024】
上記のように凸部15と凹部16からなるガイド部を嵌合することによって、ベルト長手方向でブロックを整列することができ、ベルトのプーリへの進入の際にブロックがプーリに衝突することに寄って発生する衝突音を防止することができる。また、ガイド部をプーリ当接部6、7の中央に設けることによって、センターベルト4側方のほぼセンターベルト4の心線3と同じ高さであるピッチライン上に配置することができるので、隣り合うブロック同志の相対的な動きが最も少ない場所であり、凸部と凹部の摩耗も他の場所に設けたときと比べて少ないと言える。
【0025】
ブロック5の前面においてプーリ当接部6、7の上下方向中央付近から下半分は連結部材8、9を含めて傾斜面となっており、ベルトがプーリに進入して屈曲したときに前後のブロック同志が前面と背面とで接触しないようになっている。更に、図4に断面を示すように嵌合溝10内の連結部材8の下面、連結部材9の上面は、凸条部8a、9aを形成しており、センターベルト4の上面及び下面の溝条部4a、4bと噛み合うようになっている。
【0026】
前記のセンターベルト4を構成するエラストマー2として使用されるものは、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、ハイパロン(クロロスルフォン化ポリエチレン)、HNBR(水素化ニトリルゴム)、不飽和カルボン酸金属塩を含有したHNBR等のゴムの単一材またはこれらのブレンド物からなるゴム配合物やポリウレタン樹脂等でが挙げられる。
【0027】
そして、エラストマー2内にスパイラル状に埋設する心体3としては、ポリアミド、ポリエステル、アラミド等の合成繊維、あるいはスチールコード、ガラス繊維コード、カーボン繊維コード等の無機繊維の単体からなるコードやこれらの混紡からなる撚りコード、織物などが用いられる。
【0028】
また、図2で示すようにブロック5は、金属製の補強材13の全面を樹脂部14で被覆して構成したものとなっているが、樹脂部14は少なくとも、プーリと接触するプーリ接触面5a、5bに相当する部分に設ける必要があるものであり、例えば補強材13のプーリ当接部6、7のみを樹脂部14で被覆したものでも使用可能である。
【0029】
補強材13の少なくともプーリ接触面5a、5bを被覆する樹脂部14としては、比較的摩擦係数の大きく耐摩耗性に優れ、センターベルト4を構成するエラストマー2と比べると剛性の高い、具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等の合成樹脂が用いられる。
【0030】
また、これらの樹脂中に、綿糸、ポリアミド繊維やアラミド繊維等の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等からなる織布、フィラー、ウィスカー、シリカ、炭酸カルシウムなどの無機材料等を混入した強化樹脂からなる。
【0031】
【実施例】
次に、本発明のベルトを実際に走行させて伝達性と騒音を測定する試験を行った。
実施例としては、図1に示す構造からなる本発明の高負荷伝動ベルトであり、側部部分の略中央であってセンターベルトの側方のほぼピッチライン位置にガイド嵌合部を設けたベルトを使った。
【0032】
比較例としては、図7に示すような嵌合溝の側方に開口部を有し、ガイド部を上部の連結部材に設けたベルトを用いた。
走行条件は、表1にまとめたように駆動側プーリのピッチ径が65mmで回転数が3200rpm、従動側プーリのピッチ径が130mmで回転数が1600rpm、そして雰囲気温度は90℃、負荷は駆動側が4kgfm、従動側が8kgfmで行った。
それぞれのベルトのトルク4kgfmでのスリップ率及び、走行中の音圧、寿命に至る時間を測定した。その結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003886579
【0034】
【表2】
Figure 0003886579
【0035】
表2の結果から分かるように、比較例に比べて実施例ではスリップ率は半分程度であり、音圧も小さくなっており、ガイド部をセンターベルトの心線の位置に配置したため、ブロックの整列がよくより効率的にベルトが走行していることがわかる。
また、寿命時間についても比較例が260時間で寿命となってしまっているのに対し、実施例は400時間走行させても、まだ寿命となっていないが、このことから、ガイド部の摩耗が少なく長期に渡ってベルトの整列が行われていることが分かる。
【0036】
【発明の効果】
以下のように本発明の高負荷伝動ベルトは、請求項1では、心線をエラストマー中に埋設した無端のセンターベルトと、該センターベルトにプーリのV溝と係合する傾斜したプーリ接触面を有する複数のブロックを、嵌合係止した構成からなる高負荷伝動ベルトにおいて、前記ブロックは、プーリ接触面を含む一対のプーリ当接部を一対の連結部材で一体に接続して、前記一対のプーリ当接部と一対の連結部材で囲まれた嵌合溝を形成し、該嵌合溝は一方のプーリ当接部にセンターベルトを嵌入するための開口部を有しているとともに、開口部は嵌合溝のベルト幅方向から外れた位置に設けられ、嵌合溝と開口部との間はベルト幅方向に対して斜め方向の切込みで接続されており、嵌合溝内においてセンターベルトは一対の連結部材にて挟持されるとともに一対の連結部材にはベルト幅方向の凸条部、一方、センターベルトにはベルト幅方向の溝条部を有し、該凸条部と溝条部が噛み合ってなることを特徴とする。
【0037】
このような構成を採ることによって、センターベルトを一本にできるので、走行中のベルトの捩れがなく、ブロックの厚みを薄くできるので、走行中のピッチノイズを低減するという効果を有する上に、センターベルトのブロックへの装着は比較的簡単で、一度装着したセンターベルトが容易に外れることがない。
【0038】
また、請求項2においては、プーリ当接部の嵌合溝に装着したセンターベルトの心線の高さであるピッチライン上にブロックを整列させるガイド部を配置したことによって、ガイド部の動きが少なく摩耗も起こりにくいことから長期にわたってブロックの整列機能を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高負荷伝動ベルトの斜視図である。
【図2】ブロックの斜視図である。
【図3】ブロック本体に係止部材を装着するところの要部断面図である。
【図4】高負荷伝動ベルトの嵌合溝位置での縦断面図である。
【図5】ガイド凸部位置での縦断面図である。
【図6】従来のベルトの断面図である。
【図7】従来のベルトの断面図である。
【符号の説明】
1 高負荷伝動ベルト
2 エラストマー
3 心体
4 センターベルト
5 ブロック
6 プーリ当接部
7 プーリ当接部
8 連結部材
9 連結部材
10 嵌合溝
11 開口部
12 切り込み
13 補強部
14 樹脂部
15 凸部
16 凹部

Claims (2)

  1. 心線をエラストマー中に埋設した無端のセンターベルトと、該センターベルトにプーリのV溝と係合する傾斜したプーリ接触面を有する複数のブロックを、嵌合係止した構成からなる高負荷伝動ベルトにおいて、前記ブロックは、プーリ接触面を含む一対のプーリ当接部を一対の連結部材で一体に接続して、前記一対のプーリ当接部と一対の連結部材で囲まれた嵌合溝を形成し、該嵌合溝は一方のプーリ当接部にセンターベルトを嵌入するための開口部を有しているとともに、開口部は嵌合溝のベルト幅方向から外れた位置に設けられ、嵌合溝と開口部との間はベルト幅方向に対して斜め方向の切込みで接続されており、嵌合溝内においてセンターベルトは一対の連結部材にて挟持されるとともに一対の連結部材にはベルト幅方向の凸条部、一方、センターベルトにはベルト幅方向の溝条部を有し、該凸条部と溝条部が噛み合ってなることを特徴とする高負荷伝動ベルト。
  2. プーリ当接部の嵌合溝に装着したセンターベルトの心線の高さであるピッチライン上にブロックを整列させるガイド部を配置した請求項1記載の高負荷伝動ベルト。
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