JP3885390B2 - 光伝送監視装置および光伝送システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、WDM方式により大容量かつ高速の光通信を行う光伝送システム、および、この光伝送システムにおいて用いられる光伝送監視装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
WDM(Wavelength Division Multiplexing)方式を採用した光伝送システムは、多波長の信号光を光ファイバ伝送路網を介して伝送するものであり、大容量かつ高速の通信を行うことができるものである。この光伝送システムは、信号光の伝送媒体である光ファイバ伝送路の他、多波長信号光を一括光増幅する光増幅器や、多波長信号光のうちの一部の波長の信号光を取り出したり追加したりする光ADM(Add-Drop Multiplexer)等を備えて構成される。
【0003】
このような光伝送システムにおいて光増幅器の監視制御が重要な課題の1つとなっている。すなわち、送信器から送出される信号光の波数が変動する場合や、光伝送経路の途中に設けられた光ADMにより信号光の波数が変動する場合や、光ファイバ伝送路等における伝送損失が変動する場合などにおいても、光増幅器により光増幅されて出力される多波長信号光それぞれの強度を一定に制御することが望まれる。この課題を解決すべく種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、「1996年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会B−1096」で提案されている「WDM用光アンプの出力レベル制御方式」は、光増幅器の出力端子に接続された光伝送路上に設けられた分岐素子により多波長信号光それぞれの一部を分岐して取り出し、この取り出された多波長信号光を周波数掃引された音響光学フィルタに入力させ、音響光学フィルタから出力される光の強度の時間変化を観察してそのパルス数を計数し、これにより多波長信号光の波数を求めて、この波数に基づいて光増幅器の出力一定制御(ALC: Automatic Level Control )を行うものである。また、「1996年電子情報通信学会総合大会C−254」の「ダブルステージ型偏光無依存音響光学可変波長フィルタの広帯域低サイドローブ動作」には、上記の音響光学フィルタについて記載されている。
【0005】
「1996年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会B−1092」に記載されている「ALC付き光増幅器の波長数変動及び入力レベル変動に対する特性」では、光増幅器の増幅帯域にある波長のパイロット光を用い、光増幅器の出力端子に接続された光伝送路上に設けられた分岐素子によりパイロット光を分岐して取り出し、この取り出されたパイロット光の強度を検出し、このパイロット光の強度が一定になるよう光増幅器を制御する方法が提案されている。
【0006】
また、「1996年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会B−1127」に記載されている「ファイバグレーティングを用いた波長監視方式の検討」では、光増幅器の出力端子に接続された光伝送路上に設けられた分岐素子により多波長信号光それぞれの一部を分岐して取り出し、この取り出された多波長信号光を音響光学スイッチにより短パルスとし、短パルスとされた多波長信号光それぞれに対して光サーキュレータおよび光ファイバグレーティングにより波長に応じた遅延を与え、この遅延が与えられた光の強度の時間変化を観察してそのパルス数を計数し、これにより多波長信号光の波数を求めて、この波数に基づいて光増幅器の出力一定制御を行う方式が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例それぞれには以下のような問題点がある。すなわち、音響光学フィルタ、音響光学スイッチおよび光サーキュレータの特別な素子を用いるものやパイロット光を用いるものは、システム構成が複雑となり高価となる。
【0008】
また、音響光学フィルタを用いるものは、多波長信号光の波数を検出することができるものの、多波長信号光のうちの特定波長の信号光の強度変動に対応することができない。また、パイロット光を用いるものは、多波長信号光の波数を検出することができず、多波長信号光のうちの特定波長の信号光の強度変動に対応することもできない。したがって、上記従来例の何れも、多波長信号光の強度変動の原因が特定波長の信号光の強度変動および光伝送路損失変動の何れにあるのかを検出することができない。この問題は光ADMが用いられる光伝送システムで特に大きい。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、簡易な構成であって、多波長信号光の強度変動の原因を識別することができる光伝送監視装置、および、この光伝送監視装置を備えた光伝送システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る光伝送監視装置は、(1) 光伝送路を伝送される多波長の信号光を含む信号光波長帯域の光の一部を該伝送路から分岐して取り出す光分岐手段と、(2) 光分岐手段により取り出された信号光波長帯域の光のうちの第1の波長帯域の光の強度を検出する第1の光検出器と、(3) 光分岐手段により取り出された信号光波長帯域の光のうち第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光の強度を検出する第2の光検出器と、(4) 第1の光検出器により検出された第1の波長帯域の光の強度の変化率と、第2の光検出器により検出された第2の波長帯域の光の強度の変化率とを比較し、その比較結果に基づいて、多波長の信号光が伝送される光伝送路の損失変動を検出する監視部とを備えることを特徴とする。
【0011】
この光伝送監視装置によれば、入力した多波長の信号光を含む信号光波長帯域の光の一部が該伝送路から光分岐手段により分岐して取り出され、その取り出された信号光波長帯域の光のうち第1および第2の波長帯域それぞれの光の強度が第1および第2の光検出器により検出され、監視部により、第1および第2の波長帯域それぞれの光の強度の変化率が互いに比較され、その比較結果に基づいて光伝送が監視され、伝送路損失変動および波数変動が分離して検出される。
【0012】
ここで、第1および第2の波長帯域それぞれは、互いに異なるものであり、多波長の信号光のうち少なくとも1波長の信号光が第1および第2の波長帯域のうち一方には含まれ他方には含まれない。第1および第2の波長帯域それぞれは、互いに重なる帯域が全く無くてもよいし、一部が互いに重なるものであってもよい。また、第1および第2の波長帯域のうち一方は他方の全てを含んでいてもよく、何れか一方は多波長の信号光の全てを含んでいてもよい。さらに、第1または第2の波長帯域は、信号光を含まず、信号光波長間のASE雑音光のみを含むものであってもよく、この場合には、櫛波型フィルタを用いることによりこのASE雑音光を抽出することができる。
【0013】
また、本発明に係る光伝送監視装置は、信号光波長帯域の光を一括増幅する光増幅器の後段に接続されるものであって、信号光波長帯域における光増幅器の平均利得と略等しい利得となる波長を中心として第1および第2の波長帯域それぞれが設定されることを特徴とする。この場合には、光増幅器に入力する光の強度が変動して光増幅器が利得偏差を有するようになった場合でも、伝送路損失変動および波数変動が分離して検出される。特に、信号光波長帯域や多波長の信号光の波数が変化すれば光増幅器の平均利得と略一致する信号光の波長域も変化するので、第1および第2の波長帯域それぞれは信号光波長帯域および多波長の信号光の波数に応じて設定されるのが好適である。
【0014】
また、本発明に係る光伝送システムは、上記光伝送監視装置と、その光伝送監視装置に対し光伝送路上の上流または下流に設けられ多波長の信号光のうちの一部の波長の信号光を取り出し又は追加する光ADMとを備え、光伝送監視装置における第1および第2の波長帯域のうちの何れか一方が、光ADMが取り出し又は追加する一部の波長の信号光を含む波長帯域であることを特徴とする。この光伝送システムによれば、光伝送監視装置により、多波長の信号光のうち光ADMが取り出し又は追加する上記一部の波長の信号光の監視が好適に行われる。そして、この監視結果に基づいて光増幅器の信号光利得の制御が好適に行われる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。尚、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下では8波長の信号光が伝送される場合について説明するが、波数はこれに限られるものではない。
【0016】
まず、本発明に係る光伝送監視装置が用いられた光伝送システムについて説明する。図1は、この光伝送システムの構成図である。この図には、光伝送システムの構成の他、この光伝送システム上の2地点それぞれを通過する光のスペクトルも示されている。図1(a)に示す光伝送システムは、互いに異なる8波長λ1 〜λ8 の信号光を送出する送信器10と、送信器10から送出された8波長の信号光を一括光増幅する光増幅器20と、光増幅器20から出力された8波長の信号光を監視する光伝送監視装置30とを備え、これらが光ファイバ伝送路41〜43により接続されている。
【0017】
この光伝送システムにおいて、送信器10から送出された光は、図1(b)に示すように、8波長λ1 〜λ8 の信号光のみからなり、雑音光は殆ど無い。この8波長の信号光は、光ファイバ伝送路41を経て光増幅器20に入力して一括光増幅される。光増幅器20から出力された光は、図1(c)に示すように、一括光増幅された8波長λ1 〜λ8 の信号光の他、ASE(Amplified Spontaneous Emission)雑音光も含む。光増幅器20から出力された光は、光ファイバ伝送路42を経て光伝送監視装置30に入力し、更に光ファイバ伝送路43を伝送していく。
【0018】
光伝送監視装置30では、入力した8波長の信号光を含む信号光波長帯域の光の一部が該伝送路から分岐して取り出され、その取り出された信号光波長帯域の光のうち第1および第2の波長帯域それぞれの光の強度が検出され、第1および第2の波長帯域それぞれの光の強度の変化率が互いに比較され、その比較結果に基づいて光伝送が監視される。ここで、第1および第2の波長帯域それぞれは、互いに異なるものであり、8波長の信号光のうち少なくとも1波長の信号光が第1および第2の波長帯域のうち一方には含まれ他方には含まれない。第1および第2の波長帯域それぞれは、互いに重なる帯域が全く無くてもよいし、一部が互いに重なるものであってもよい。また、第1および第2の波長帯域のうち一方は他方の全てを含んでいてもよく、何れか一方は8波長の信号光の全てを含んでいてもよい。さらに、第1または第2の波長帯域は、信号光を含まず、信号光波長間のASE雑音光のみを含むものであってもよく、この場合には、櫛波型フィルタを用いることによりこのASE雑音光を抽出することができる。
【0019】
次に、第1の実施形態に係る光伝送監視装置について説明する。図2は、第1の実施形態に係る光伝送監視装置の構成図である。この図には、本実施形態に係る光伝送監視装置31および光ファイバ伝送路42の他、所定の4地点それぞれにおける光のスペクトルも示されている。
【0020】
この光伝送監視装置31は、光ファイバ伝送路42上に設けられた光分岐素子311および312と、光分岐素子311に接続された光検出器313と、光分岐素子312に一端が接続された光ファイバグレーティング314と、光ファイバグレーティング314の他端に接続された光検出器315と、光検出器313および315に接続された監視部316とを備えて構成される。
【0021】
光分岐素子311および312それぞれは、例えば光ファイバカプラ等であり、光ファイバ伝送路42を伝送される8波長の信号光λ1 〜λ8 を含む信号光波長帯域の光の一部を分岐して取り出す。光検出器313は、例えばフォトダイオードであり、光分岐素子311により取り出された光の強度を検出する。光ファイバグレーティング314は、光ファイバの光軸に沿って周期的に屈折率変調が形成されたものであり、光分岐素子312と光検出器315との間に設けられ、光分岐素子312により取り出された光のうち4波長λ5 〜λ8 の波長帯域の光を透過させる。光検出器315は、例えばフォトダイオードであり、光ファイバグレーティング314を透過した光の強度を検出する。監視部316は、光検出器313および315それぞれにより検出された光の強度の変化率を互いに比較し、その比較結果に基づいて光伝送を監視する。
【0022】
光ファイバ伝送路42を経て光伝送監視装置31に入力する光は、光増幅器20から出力されたものであり、図2(b)(図1(c)と同じ)に示すように、光増幅器20により一括光増幅された8波長λ1 〜λ8 の信号光の他、ASE雑音光も含む。光伝送監視装置31に入力した光の大部分は、光分岐素子311および312を透過して出力される。光伝送監視装置31から出力される光のスペクトルは、図2(c)に示すように、入力した光のスペクトル(図2(b))と同様のものである。
【0023】
光伝送監視装置31に入力した光の一部は、光分岐素子311により分岐されて取り出され、光検出器313により強度が検出される。光検出器313が受光する光(第1の波長帯域の光)は、図2(d)に示すように、8波長λ1 〜λ8 の他にASE雑音光も含む。また、光伝送監視装置31に入力した光の一部は、光分岐素子312により分岐されて取り出され、そのうちの4波長λ5 〜λ8 を含む帯域の光が光ファイバグレーティング314を透過して検出器315により強度が検出される。光検出器315が受光する光(第2の波長帯域の光)は、図2(e)に示すように、4波長λ5 〜λ8 の信号光の他に、これらの信号光の波長帯域にあるASE雑音光も含む。そして、監視部316では、光検出器313により検出された第1の波長帯域の光の強度の変化率と、光検出器315により検出された第2の波長帯域の光の強度の変化率とが比較され、その比較結果に基づいて光伝送が監視される。
【0024】
図3は、第1の実施形態に係る光伝送監視装置における監視方法を説明する図である。この図において、実線で示す曲線は、光検出器313により検出された第1の波長帯域の光の強度I1 の時間変化を示すものであり、破線で示す曲線は、光検出器315により検出された第2の波長帯域の光の強度I2 の時間変化を示すものである。なお、この図では、比較を容易にする為、第2の波長帯域の光の強度I2 を2倍にして記してある。光伝送監視装置31の監視部316は、これら光の強度I1 およびI2 それぞれの変化率を互いに比較して、その比較結果に基づいて以下のように判断する。
【0025】
この図において、時刻t<t1 ,t1 <t<t2 およびt2 <tそれぞれの時間範囲では、第1および第2の波長帯域の光の強度I1 ,I2 の変化率は略一致しているので、光ファイバ伝送路42を伝送される信号光の波数変動はなく、光ファイバ伝送路42を含む上流の伝送路における伝送損失変動または上流の光増幅器等の出力レベル変動に起因して信号光の強度変動が生じていると、監視部316により判断される。一方、時刻t1 およびt2 それぞれでは、第1の波長帯域の光の強度I1 の変化率と第2の波長帯域の光の強度I2 の変化率とは互いに異なるので、光ファイバ伝送路42を伝送される信号光の波数が変動したと、監視部316により判断される。
【0026】
次に、第2の実施形態に係る光伝送監視装置について説明する。図4は、第2の実施形態に係る光伝送監視装置の構成図である。この図には、本実施形態に係る光伝送監視装置32および光ファイバ伝送路42の他、所定の4地点それぞれにおける光のスペクトルも示されている。
【0027】
この光伝送監視装置32は、光ファイバ伝送路42上に設けられた光分岐素子321と、光分岐素子321に接続された分波フィルタ322と、分波フィルタ322に接続された光検出器323および324と、光検出器323および324に接続された監視部325とを備えて構成される。光分岐素子321は、光ファイバ伝送路42を伝送される8波長の信号光λ1 〜λ8 を含む信号光波長帯域の光の一部を分岐して取り出す。分波フィルタ322は、例えばダイクロイックミラーであり、光分岐素子321により取り出された光のうち4波長の信号光λ1 〜λ4 を含む波長帯域の光と、残りの4波長の信号光λ5 〜λ8 を含む波長帯域の光と、を分波してそれぞれを出力する。光検出器323は、例えばフォトダイオードであり、分波フィルタ322から出力された4波長の信号光λ5 〜λ8 を含む波長帯域の光の強度を検出する。光検出器324は、例えばフォトダイオードであり、分波フィルタ322から出力された4波長の信号光λ1 〜λ4 を含む波長帯域の光の強度を検出する。監視部325は、光検出器323および324それぞれにより検出された光の強度の変化率を互いに比較し、その比較結果に基づいて光伝送を監視する。
【0028】
光ファイバ伝送路42を経て光伝送監視装置32に入力する光は、光増幅器20から出力されたものであり、図4(b)(図1(c)と同じ)に示すように、光増幅器20により一括光増幅された8波長λ1 〜λ8 の信号光の他、ASE雑音光も含む。光伝送監視装置32に入力した光の大部分は、光分岐素子321を透過して出力される。光伝送監視装置32から出力される光のスペクトルは、図4(c)に示すように、入力した光のスペクトル(図4(b))と同様のものである。
【0029】
光伝送監視装置32に入力した光の一部は、光分岐素子321により分岐されて取り出され、分波フィルタ322により、4波長の信号光λ1 〜λ4 を含む波長帯域の光と、4波長の信号光λ5 〜λ8 を含む波長帯域の光とに分波される。分波フィルタ322から出力された4波長の信号光λ5 〜λ8 を含む波長帯域の光は、光検出器323により強度が検出される。光検出器323が受光する光(第1の波長帯域の光)は、図4(d)に示すように、4波長λ5 〜λ8 の他にASE雑音光も含む。分波フィルタ322から出力された残りの4波長の信号光λ1 〜λ4 を含む波長帯域の光は、光検出器324により強度が検出される。光検出器324が受光する光(第2の波長帯域の光)は、図4(e)に示すように、4波長λ1 〜λ4 の他にASE雑音光も含む。そして、監視部325では、光検出器323により検出された第1の波長帯域の光の強度の変化率と、光検出器324により検出された第2の波長帯域の光の強度の変化率とが比較され、その比較結果に基づいて光伝送が監視される。
【0030】
図5は、第2の実施形態に係る光伝送監視装置における監視方法を説明する図である。この図において、実線で示す曲線は、光検出器323により検出された第1の波長帯域の光の強度I1 の時間変化を示すものであり、破線で示す曲線は、光検出器324により検出された第2の波長帯域の光の強度I2 の時間変化を示すものである。光伝送監視装置31の監視部325は、これら光の強度I1 およびI2 それぞれの変化率を互いに比較して、その比較結果に基づいて以下のように判断する。
【0031】
この図において、時刻t<t1 ,t1 <t<t2 およびt2 <tそれぞれの時間範囲では、第1および第2の波長帯域の光の強度I1 ,I2 の変化率は略一致しているので、光ファイバ伝送路42を伝送される信号光の波数変動はなく、光ファイバ伝送路42を含む上流の伝送路における伝送損失変動または上流の光増幅器等の出力レベル変動に起因して信号光の強度変動が生じていると、監視部316により判断される。一方、時刻t1 およびt2 それぞれでは、第1の波長帯域の光の強度I1 の変化率と第2の波長帯域の光の強度I2 の変化率とは互いに異なるので、光ファイバ伝送路42を伝送される信号光の波数が変動したと、監視部316により判断される。
【0032】
次に、第3の実施形態に係る光伝送監視装置について説明する。図6は、第3の実施形態に係る光伝送監視装置の構成図である。この図には、本実施形態に係る光伝送監視装置33、これの前段に設けられた光増幅器20および光ファイバ伝送路42の他、所定の4地点それぞれにおける光のスペクトルも示されている。
【0033】
この光伝送監視装置33は、光ファイバ伝送路42上に設けられた光分岐素子331および332と、光分岐素子331に接続された光検出器333と、光分岐素子332に一端が接続されたバンドパスフィルタ334と、バンドパスフィルタ334の他端に接続された光検出器335と、光検出器333および335に接続された監視部336とを備えて構成される。
【0034】
光分岐素子331および332それぞれは、例えば光ファイバカプラ等であり、光ファイバ伝送路42を伝送される8波長の信号光λ1 〜λ8 を含む信号光波長帯域の光の一部を分岐して取り出す。光検出器333は、例えばフォトダイオードであり、光分岐素子331により取り出された光の強度を検出する。バンドパスフィルタ334は、光分岐素子332と光検出器335との間に設けられ、光分岐素子332により取り出された光のうち4波長λ3 〜λ6 の波長帯域の光を透過させる。光検出器335は、例えばフォトダイオードであり、バンドパスフィルタ334を透過した光の強度を検出する。監視部336は、光検出器333および335それぞれにより検出された光の強度の変化率を互いに比較し、その比較結果に基づいて光伝送を監視する。
【0035】
光ファイバ伝送路42を経て光伝送監視装置33に入力する光は、光増幅器20から出力されたものであり、図6(b)(図1(c)と同じ)に示すように、光増幅器20により一括光増幅された8波長λ1 〜λ8 の信号光の他、ASE雑音光も含む。光伝送監視装置33に入力した光の大部分は、光分岐素子331および332を透過して出力される。光伝送監視装置33から出力される光のスペクトルは、図6(c)に示すように、入力した光のスペクトル(図6(b))と同様のものである。
【0036】
光伝送監視装置33に入力した光の一部は、光分岐素子331により分岐されて取り出され、光検出器333により強度が検出される。光検出器333が受光する光(第1の波長帯域の光)は、図6(d)に示すように、8波長λ1 〜λ8 の他にASE雑音光も含む。また、光伝送監視装置33に入力した光の一部は、光分岐素子332により分岐されて取り出され、そのうちの4波長λ3 〜λ6 を含む帯域の光がバンドパスフィルタ334を透過して検出器335により強度が検出される。光検出器335が受光する光(第2の波長帯域の光)は、図6(e)に示すように、4波長λ3 〜λ6 の信号光の他に、これらの信号光の波長帯域にあるASE雑音光も含む。そして、監視部336では、光検出器333により検出された第1の波長帯域の光の強度の変化率と、光検出器335により検出された第2の波長帯域の光の強度の変化率とが比較され、その比較結果に基づいて光伝送が監視される。この監視の態様は、図3を用いて説明したものと同様である。
【0037】
光増幅器20は、一般には多波長の信号光それぞれに対する利得の偏差が無いことが望まれ、この場合、均一な強度の多波長の信号光が入力すると、光増幅器20から均一な強度の多波長の信号光が出力される。光増幅器20は、出力パワーを一定値に維持するよう出力一定制御を行うが、光ファイバ伝送路42における伝送損失変動等に因り入力光パワーが変動すると、その旨を検知して新たな利得を設定して出力一定制御を行う。このように新たな利得が設定されると利得偏差が生じ、多波長の信号光それぞれに対する利得は互いに異なったものとなる場合がある。このとき、均一な強度の多波長の信号光が入力しても、光増幅器20からは、不均一な強度の多波長の信号光が出力される。
【0038】
図7は、光増幅器の出力光スペクトルを示す図である。この図に示すように、入力光パワーが変動すると、光増幅器20の出力光スペクトルも変動する。しかし、光増幅器20が一括光増幅する信号光波長帯域における中央付近の波長における利得は、信号光波長帯域における光増幅器20の平均利得と略等しい。そこで、本実施形態に係る光伝送監視装置33は、信号光波長帯域における光増幅器20の平均利得と略等しい利得となる波長を中心として第1および第2の波長帯域それぞれが設定されていることを特徴としている。
【0039】
以下では、第1の実施形態に係る光伝送監視装置31の場合と対比しながら、本実施形態に係る光伝送監視装置33の作用について説明する。図8は、第3の実施形態に係る光伝送監視装置の作用について説明する図であり、光増幅器20から出力される光のスペクトルを示している。
【0040】
光増幅器20が利得偏差を有しない場合には、第1の波長帯域の光の強度P1 の変化率と第2の波長帯域の光の強度P2 の変化率とは互いに略等しい(図8(a))。したがって、この場合には、第1の実施形態に係る光伝送監視装置31でも、本実施形態に係る光伝送監視装置33でも、同様にして、光ファイバ伝送路42を伝送される信号光の波数が変動した場合と、光ファイバ伝送路42における伝送損失変動等が生じた場合とを判別することができる。
【0041】
しかし、第1の実施形態に係る光伝送監視装置31では、光ファイバ伝送路42を伝送される信号光の波数が変動した場合だけでなく、光ファイバ伝送路42における伝送損失変動等に因り光増幅器20の利得偏差が生じた場合にも、第1の波長帯域(λ1 〜λ8 )の光の強度P1 の変化率と第2の波長帯域(λ5 〜λ8 )の光の強度P2 の変化率とが互いに異なる(図8(b),(c))。したがって、第1の実施形態に係る光伝送監視装置31は、上記の2つの場合のうちの何れであるかを判別することができない。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る光伝送監視装置33では、信号光波長帯域における光増幅器20の平均利得と略等しい利得となる波長を中心として第1および第2の波長帯域それぞれが設定されているので、光ファイバ伝送路42における伝送損失変動等に因り光増幅器20の利得偏差が生じた場合であっても、第1の波長帯域(λ1 〜λ8 )の光の強度P1 の変化率と第2の波長帯域(λ3 〜λ6 )の光の強度P2 の変化率とが互いに略等しい(図8(d),(e))。したがって、本実施形態に係る光伝送監視装置33は、光ファイバ伝送路42を伝送される信号光の波数が変動した場合と、光ファイバ伝送路42における伝送損失変動等が生じた場合とを、常に判別することができる。
【0043】
また、信号光波長帯域や多波長の信号光の波数が変化すれば、光増幅器20の平均利得と略一致する信号光の波長域も変化するので、本実施形態では、第1および第2の波長帯域それぞれは、信号光波長帯域および多波長の信号光の波数に応じて設定されるのが好適である。
【0044】
図9は、第3の実施形態に係る光伝送監視装置の変形例の構成図である。この図に示すものは、光伝送監視装置本体33Aとは別に波長選択素子334Aが設けられている。この波長選択素子334Aは、光伝送監視装置本体33Aの光分岐素子332と光検出器335との間に着脱自在であって交換可能であり、伝送波長数や信号光波長帯域に応じて最適なものが光伝送監視装置本体33Aに接続される。
【0045】
波長選択素子334Aとしてバンドパスフィルタが用いられる場合には、図6に示したものと実質的に同様の構成となる。波長選択素子334Aとして光ファイバグレーティングが用いられる場合には、光検出器335が受光する光(第2の波長帯域の光)は、図9(e)に示すように、4波長λ1 ,λ2 ,λ7 およびλ8 の信号光の他に、これらの信号光の波長帯域にあるASE雑音光をも含むよう構成することができる。このように、この図9に示す構成の光伝送監視装置も、図6に示すものと同様の作用・効果を奏するだけでなく、光伝送路の本線を切断することなく光伝送監視装置の選択波長域を最適に設定することができるという効果をも有する。
【0046】
次に、光伝送システムにおける光伝送監視装置の適用の第1の例について説明する。図10は、本発明に係る光伝送監視装置が挿入された光伝送システムの構成図であり、図11は、この光伝送システムの3地点それぞれにおける光のスペクトルを示す図である。
【0047】
図10に示す光伝送システムは、光増幅器21、光ADM50、光増幅器22、光増幅器23、光伝送監視装置30および光増幅器24が光ファイバ伝送路41〜47を介して順に縦続接続されて構成されている。ここで、光増幅器21および22、光ADM50、受信器61ならびに送信器11は第1の中継器1を構成しており、光増幅器23および24ならびに光伝送監視装置30は第2の中継器2を構成しており、第1および第2の中継器1,2それぞれは光増幅器が2段構成となっている。また、この図において、地点Aは第1の中継器1の光増幅器21の入力端子近傍の地点であり、地点Bは第1の中継器1の光増幅器22の出力端子近傍の地点であり、地点Cは第2の中継器2の光増幅器23の入力端子近傍の地点である。
【0048】
光増幅器21〜24それぞれは、入力した光を増幅して出力するものであり、多波長の信号光が入力した場合にこれらを一括光増幅して出力する。光伝送監視装置30は、光増幅器23および光増幅器24の間に設けられており、本発明に係るものである。光ADM50は、光増幅器21および光増幅器22の間に設けられており、また、受信器61および送信器11とも接続されている。
【0049】
光ADM50の構成は以下のとおりである。光ADM50は、光カプラ501および502ならびに光ファイバグレーティング503を備えて構成されている。光カプラ501は、光増幅器21から光ファイバ伝送路42を経て到達した8波長λ1 〜λ8 の信号光を入力して分波し、4波長λ1 〜λ4 の信号光を受信器61に対して出力するとともに、残りの4波長λ5 〜λ8 の信号光を光ファイバグレーティング503に対して出力する。光ファイバグレーティング503は、光カプラ501から到達した4波長λ5 〜λ8 の信号光を透過させるとともに、4波長λ1 〜λ4 の信号光を遮断する。光カプラ502は、光ファイバグレーティング503から到達した4波長λ5 〜λ8 の信号光と、送信器11から入力した4波長λ1 〜λ4 の信号光とを合波し、これらを光ファイバ伝送路43を経て光増幅器22に対して出力する。
【0050】
この光伝送システムでは、光ファイバ伝送路41を経て光増幅器21に入力した8波長λ1 〜λ8 の信号光は、光増幅器21により一括光増幅されて出力され、光ファイバ伝送路42を経て光ADM50に入力する。光ADM50に入力した8波長λ1 〜λ8 の信号光のうち、4波長λ1 〜λ4 の信号光は、光カプラ501を経て受信器61により受信され、残りの4波長λ5 〜λ8 の信号光は、光カプラ501および光ファイバグレーティング503を経て光カプラ502に入力し、送信器11から出力された4波長λ1 〜λ4 の信号光と光カプラ502により合波されて出力される。
【0051】
光ADM50で合波されて出力された8波長λ1 〜λ8 の信号光は、光ファイバ伝送路43を経て光増幅器22に入力して光増幅器22により一括光増幅されて出力され、さらに、光ファイバ伝送路44を経て光増幅器23に入力して光増幅器23により一括光増幅されて出力される。光増幅器23から出力された8波長λ1 〜λ8 の信号光は、光ファイバ伝送路45を経て光伝送監視装置30に入力して光伝送が監視され、さらに、光ファイバ伝送路46を経て光増幅器24に入力して一括光増幅されて光ファイバ伝送路47に出力される。
【0052】
第1の中継器1の入力地点である地点Aに到達した光は、図11(a)に示すように、互いに略等しいレベルの8波長λ1 〜λ8 の信号光と、信号光波長帯域の全体に亘るASE雑音光とを含むものであるとする。もし、この光伝送システムが正常であるとすれば、第1の中継器1の出力地点である地点Bから出力される光は、図11(b)に示すように、互いに略等しいレベルの8波長λ1 〜λ8 の信号光と、波長λ5 〜λ8 の範囲のASE雑音光とを含む。このとき波長λ1 〜λ4 の範囲のASE雑音光が含まれないのは、この波長帯域の光は、光ADM50の光カプラ501により受信器61へと伝送され、かつ、光ファイバグレーティング503により遮断されるからである。同様に、第2の中継器2の入力地点である地点Cに到達する光は、図11(c)に示すように、互いに略等しいレベルの8波長λ1 〜λ8 の信号光と、波長λ1 〜λ4 の範囲のASE雑音光とを含む。
【0053】
しかし、もし、地点Aより上流の何れかの地点において伝送損失が増加した場合には、地点Aに到達する光は、図11(d)に示すように、互いに略等しいレベルの8波長λ1 〜λ8 の信号光と、信号光波長帯域の全体に亘るASE雑音光とを含むが、正常な場合における強度(図11(a))と比較して全体の強度が低下する。地点Bから出力される光は、図11(e)に示すように、波長λ1 〜λ4 の波長帯域では正常な場合における強度(図11(b))と同じ強度の4波長λ1 〜λ4 の信号光のみからなり、波長λ5 〜λ8 の波長帯域では正常な場合における強度(図11(b))と比較して強度が低下する。これは、光ADM50を通過する波長λ5 〜λ8 の波長帯域の光は、地点Aより上流の何れかの地点における伝送損失の増加の影響を受けて強度が低下するのに対して、光ADM50で挿入された波長λ1 〜λ4 の波長帯域の光は、該伝送損失の影響を受けないからである。同様に、地点Cに到達する光は、図11(f)に示すように、波長λ1 〜λ4 の波長帯域では正常な場合における強度(図11(c))と同じ強度の4波長λ1 〜λ4 の信号光のみからなり、波長λ5 〜λ8 の波長帯域では正常な場合における強度(図11(c))と比較して強度が低下する。
【0054】
また、もし、送信器11から出力され光ADM50の光カプラ502により合波されるべき4波長λ1 〜λ4 の信号光が、送信器11または光カプラ502の故障により強度が低下した場合には、地点Bに出力される光および地点Cに到達する光それぞれは、図11(g)に示すように、波長λ1 〜λ4 の波長帯域では正常な場合における強度(図11(b),(c))と比較して強度が小さくなり、波長λ5 〜λ8 の波長帯域では正常な場合における強度(図11(b),(c))と同じ強度の4波長λ5 〜λ8 の信号光およびASE雑音光からなる。また、もし、地点Bと地点Cとの間において伝送損失が増加した場合には、地点Bに到達する光は、図11(h)に示すように、正常な場合における強度(図11(c))と比較して強度が低下する。
【0055】
このように、地点Aより上流において伝送損失が増加した場合、光ADM50において挿入されるべき4波長λ1 〜λ4 の信号光の強度が低下した場合、および、地点Bと地点Cとの間において伝送損失が増加した場合それぞれにおいて、地点Cに到達する光の全強度が互いに略同一であっても、波長λ1 〜λ4 の波長帯域の光の強度の変化率と波長λ5 〜λ8 の波長帯域の光の強度の変化率とは互いに異なる。
【0056】
すなわち、地点Aより上流において伝送損失が増加した場合には、地点Cに到達する光のうち波長λ5 〜λ8 の波長帯域の光の強度の変化率の方が、波長λ1 〜λ4 の波長帯域の光の強度の変化率より大きい(図11(f))。光ADM50において挿入されるべき4波長λ1 〜λ4 の信号光の強度が低下した場合には、地点Cに到達する光のうち波長λ1 〜λ4 の波長帯域の光の強度の変化率の方が、波長λ5 〜λ8 の波長帯域の光の強度の変化率より大きい(図11(g))。また、地点Bと地点Cとの間において伝送損失が増加した場合には、地点Cに到達する光のうち波長λ1 〜λ4 の波長帯域の光の強度の変化率は、波長λ5 〜λ8 の波長帯域の光の強度の変化率と同程度である(図11(h))。
【0057】
したがって、第2の中継器2に設けられた光伝送監視装置30は、波長λ1 〜λ4 の波長帯域の光の強度の変化率と、波長λ5 〜λ8 の波長帯域の光の強度の変化率とを比較し、その比較結果に基づいて、光伝送システム中の何れの領域で伝送損失が増加したか、光ADM50における4波長λ1 〜λ4 の信号光の挿入が正常か否か、或いは、波数の変動があったか否か、を識別することができる。そして、光伝送監視装置30は、この光伝送の監視の結果に基づいて、光増幅器23および24のそれぞれの利得を制御するのが好適である。
【0058】
次に、光伝送システムにおける光伝送監視装置の適用の第2の例について説明する。図12は、本発明に係る光伝送監視装置が挿入される光伝送システムの構成図であり、図13は、この光伝送システムの中継器の構成図である。
【0059】
図12(a)に示す光伝送システムは、送信器10および中継器1j が光ファイバ伝送路40j を介して縦続接続されて構成されており、各中継器1j には少なくと光増幅器が含まれている(j=0,1,2,…)。送信器10と中継器10 とは光ファイバ伝送路400 を介して接続されており、中継器1j-1 と中継器1j とは光ファイバ伝送路40j を介して接続されている(j=1,2,3,…)。ここで、各光ファイバ伝送路40j における伝送損失をαj とし、各中継器1j における光増幅利得をGt,j とし、各中継器1j の入力端における光の強度をPa,j とし、各中継器1j の出力端における光の強度をPd,j とする。これらのパラメータの間には、ASE雑音光を考慮しなければ、
αj = Pa,j/Pd,j-1 …(1)
Gt,j = Pd,j/Pa,j …(2)
なる関係がある。
【0060】
しかし、実際には各中継器からASE雑音光が出力され(図12(b))、そのASE雑音光は、次段の中継器で光増幅されるとともに、その中継器で生じたASE雑音光が加算される(図12(c))。そして、その加算されたASE雑音光は、さらに次段の中継器で光増幅されるとともに、その中継器で生じたASE雑音光が更に加算される(図12(d))。このようなASE雑音光を考慮すると、上記 (2)式に替えて、
Pd,j = Gt,j・(K+Pa,j) …(3)
なる関係が成り立つ。ここで、Kは、中継器内の光増幅器における光増幅帯域幅および雑音指数に比例し、入力光強度に依存する値である。
【0061】
図13(a)に示すように、光増幅器101、光伝送監視装置130および光増幅器102が縦続接続されて中継器1j が構成される場合には以下のようになる。前段の光増幅器101の出力端における光の強度をPb,j とし、後段の光増幅器102の入力端における光の強度をPc,j とする。また、前段の光増幅器101の出力端から後段の光増幅器102の入力端に到るまでの伝送路の伝送損失をαthru,jとし、前段の光増幅器101の光増幅率をGb,j とし、後段の光増幅器102の光増幅率をGc,j とする。各中継器1j における光増幅利得Gt,j は、
Gt,j = Gb,j・αthru,j・Gt,j …(4)
で表される。
【0062】
図13(b)に示すように、光増幅器101、光ADM150、光伝送監視装置130および光増幅器102が縦続接続されて中継器1j が構成されている場合には以下のようになる。ここで、光ADM150は、光カプラ103および105ならびに光ファイバグレーティング104を備えている。また、中継器1j は、光ADM150に接続された受信器106および送信器107を備えている。前段の光増幅器101の出力端における光の強度をPb,j とし、後段の光増幅器102の入力端における光の強度をPc,j とする。また、前段の光増幅器101の出力端から光カプラ103、光ファイバグレーティング104および光カプラ105を経て後段の光増幅器102の入力端に到るまでの伝送路の伝送損失をαthru,jとし、前段の光増幅器101の光増幅率をGb,j とし、後段の光増幅器102の光増幅率をGc,j とする。この場合も、各中継器1j における光増幅利得Gt,j は上記 (4)式で表される。
【0063】
図13(a)および(b)の何れに示す中継器の場合にも、光伝送監視装置130は、信号光波長帯域の光のうちの互いに異なる第1および第2の波長帯域それぞれの光の強度を検出して、第1の波長帯域の光の強度の変化率と第2の波長帯域の光の強度の変化率とを比較して、その比較結果に基づいて光伝送を監視する。ここで、図13(b)に示すように中継器内1j に光ADM150が設けられている場合には、第1および第2の波長帯域のうちの何れかは、光ADM150により取り出し又は追加される信号光を含む帯域であるのが好適である。
【0064】
そして、図13(a)および(b)の何れに示す中継器の場合にも、光ファイバ伝送路40j の伝送損失αj が変動したか、および、伝送される信号光の波数が変動したかが、光伝送監視装置130により検出される。その検出結果に基づいて、各中継器1j の光増幅利得Gt,j を前区間の光ファイバ伝送路40j の伝送損失αj の逆数に設定することで、光伝送システムを伝送する多波長信号光の強度は、各中継器1j それぞれの出力端において互いに等しく保たれる。また、各中継器1j の出力光の目標強度を、入力光強度Pa,j と光増幅利得Gt,j との積に、その中継器1j で発生するASE雑音光の強度を上乗せして設定する。
【0065】
次に、図12に示した光伝送システムの動作について図14〜図16を用いて説明する。
【0066】
図14および図15それぞれは、図13(b)に示す構成の中継器1と中継器2とが光ファイバ伝送路40を介して接続されている光伝送システムの構成図である。これらの図には、また、前段の中継器1の入力端近傍の地点1Aにおける光の強度I1A、前段の中継器1内の前段の光増幅器101の出力端近傍の地点1Bにおける光の強度I1B、前段の中継器1内の後段の光増幅器102の入力端近傍の地点1Cにおける光の強度I1C、および、前段の中継器1の出力端近傍の地点1Dにおける光の強度I1Dそれぞれの時間変化を示すグラフが示されている。また、後段の中継器2の入力端近傍の地点2Aにおける光の強度I2A、後段の中継器2内の前段の光増幅器201の出力端近傍の地点2Bにおける光の強度I2B、後段の中継器2内の後段の光増幅器202の入力端近傍の地点2Cにおける光の強度I2C、および、後段の中継器2の出力端近傍の地点2Dにおける光の強度I2Dそれぞれの時間変化を示すグラフが示されている。これら光強度の時間変化を示す各グラフにおいて、ハッチングで示したものは、各中継器内の光ADM150,250それぞれにより取り出し又は追加される4波長λ1 〜λ4 の信号光を含む帯域の光の強度を表す。また、前段の中継器1内の地点1Cおよび後段の中継器2内の地点2Cそれぞれに光伝送監視装置130,230が設けられているものとする。
【0067】
図14に示す光伝送システムでは、前段の中継器1に入力すべき8波長λ1 〜λ8 の信号光の強度が、上流の光ファイバ伝送路の伝送損失の増加等に因り、時刻t1 に突然低下した場合について説明する。この場合、前段の中継器1の地点1Aにおける光の強度I1Aは時刻t1 以降低下する。地点1Bにおける光の強度I1Bは、地点1Aにおける光の強度I1Aに光増幅器101の信号光利得を乗じたものであり、時刻t1 に低下するものの、出力一定制御された光増幅器101により時刻t1 以降は次第に増加していく。
【0068】
地点1Cにおける光の強度I1Cのうち、波長λ1 〜λ4 の信号光の帯域の光の強度については、光ファイバグレーティング104により遮断されるが送信器107から出力された信号光が追加されるので略一定であるのに対して、波長λ5 〜λ8 の信号光の帯域の光の強度については、時刻t1 に小さくなり、時刻t1 以降は次第に増加していく。地点1Dにおける光の強度I1Dは、地点1Cにおける光の強度I1Cに光増幅器102の信号光利得を乗じたものであり、出力一定制御された光増幅器102により時刻t1 以降は次第に増加していく。
【0069】
しかし、前段の中継器1内の地点1Cに設けられた光伝送監視装置130により、時刻t1 に8波長λ1 〜λ8 の信号光の強度が低下したことが検知されると、光増幅器101および102それぞれの信号光利得が制御される。これにより信号光利得が制御された時刻t2 (>t1 )以降では、光増幅器101の出力光は殆ど零になり、光増幅器102から出力される4波長λ1 〜λ4 の信号光それぞれの強度は時刻t1 前と略同一の値に維持される。
【0070】
後段の中継器2の地点2Aにおける光の強度I2Aは、地点1Dにおける光の強度I1Dに対して光ファイバ伝送路40の伝送損失を乗じたものである。地点2Bにおける光の強度I2Bは、地点2Aにおける光の強度I2Aに光増幅器201の信号光利得を乗じたものであり、時刻t1 に低下するものの、出力一定制御された光増幅器201により時刻t1 以降は次第に増加していく。
【0071】
地点2Cにおける光の強度I2Cのうち、波長λ1 〜λ4 の信号光の帯域の光の強度については、光ファイバグレーティング204により遮断されるが送信器207から出力された信号光が追加されるので略一定であるのに対して、波長λ5 〜λ8 の信号光の帯域の光の強度については、時刻t1 に小さくなり、時刻t1 以降は次第に増加していく。地点2Dにおける光の強度I2Dは、地点2Cにおける光の強度I2Cに光増幅器202の信号光利得を乗じたものであり、出力一定制御された光増幅器202により時刻t1 以降は次第に増加していく。
【0072】
しかし、後段の中継器2内の地点2Cに設けられた光伝送監視装置230により、時刻t1 に信号光の波数が減少したことが検知されると、光増幅器201および202それぞれの信号光利得が制御される。これにより信号光利得が制御された時刻t2 (>t1 )以降では、光増幅器201および光増幅器202それぞれから出力される4波長λ1 〜λ4 の信号光それぞれの強度は時刻t1 前と略同一値に維持される。
【0073】
図15に示す光伝送システムでは、前段の中継器1内の光ADM150により追加すべき4波長λ1 〜λ4 の信号光の全てが、送信器107の故障等に因り、時刻t1 に入力しなくなった場合について説明する。この場合、前段の中継器1の地点1Aおよび1Bそれぞれにおける光の強度I1A,I1Bは時刻t1 の前後に亘って略一定である。
【0074】
地点1Cにおける光の強度I1Cのうち、波長λ1 〜λ4 の信号光の帯域の光の強度については、光ファイバグレーティング104により遮断され、また、時刻t1 以降では送信器107から出力された信号光が追加されることがないので、略零になるのに対して、波長λ5 〜λ8 の信号光の帯域の光の強度については、時刻t1 の前後に亘って略一定である。地点1Dにおける光の強度I1Dは、地点1Cにおける光の強度I1Cに光増幅器102の信号光利得を乗じたものであり、時刻t1 に波数の減少に因り低下するものの、出力一定制御された光増幅器102により時刻t1 以降は次第に増加していく。
【0075】
しかし、前段の中継器1内の地点1Cに設けられた光伝送監視装置130により、時刻t1 に波数が変動したことが検知されると、光増幅器101および102それぞれの信号光利得が制御される。これにより信号光利得が制御された時刻t2 (>t1 )以降では、光増幅器202から出力される4波長λ5 〜λ8 の信号光それぞれの強度は時刻t1 前と略同値に維持される。
【0076】
後段の中継器2の地点2Aにおける光の強度I2Aは、地点1Dにおける光の強度I1Dに対して光ファイバ伝送路40の伝送損失を乗じたものである。地点2Bにおける光の強度I2Bは、地点2Aにおける光の強度I2Aに光増幅器201の信号光利得を乗じたものであり、時刻t1 に波数の減少に因り低下するものの、出力一定制御された光増幅器201により時刻t1 以降は次第に増加していく。
【0077】
地点2Cにおける光の強度I2Cのうち、波長λ1 〜λ4 の信号光の帯域の光の強度については、光ファイバグレーティング204により遮断されるが送信器207から出力された信号光が追加されるので略一定であるのに対して、波長λ5 〜λ8 の信号光の帯域の光の強度については、時刻t1 以降は次第に増加していく。地点2Dにおける光の強度I2Dは、地点2Cにおける光の強度I2Cに光増幅器202の信号光利得を乗じたものであり、出力一定制御された光増幅器202により時刻t1 以降は、波長λ1 〜λ4 の信号光については次第に減少していき、波長λ5 〜λ8 の信号光については次第に増加していく。
【0078】
しかし、後段の中継器2内の地点2Cに設けられた光伝送監視装置230により、時刻t1 に波長λ1 〜λ4 の信号光の強度が変動せず波長λ5 〜λ8 の信号光の強度が増加したことが検知されると、光増幅器201および202それぞれの信号光利得が制御される。これにより信号光利得が制御された時刻t2 (>t1 )以降では、光増幅器201および光増幅器202それぞれから出力される8波長λ1 〜λ8 の信号光それぞれの強度は時刻t1 前と略同一値に維持される。
【0079】
図16は、図13(b)に示す構成の中継器1と他の構成の中継器3とが光ファイバ伝送路40を介して接続されている光伝送システムの構成図である。この図には、また、前段の中継器1の入力端近傍の地点1Aにおける光の強度I1A、前段の中継器1内の前段の光増幅器101の出力端近傍の地点1Bにおける光の強度I1B、前段の中継器1内の後段の光増幅器102の入力端近傍の地点1Cにおける光の強度I1C、および、前段の中継器1の出力端近傍の地点1Dにおける光の強度I1Dそれぞれの時間変化を示すグラフが示されている。また、後段の中継器3の入力端近傍の地点3Aにおける光の強度I3A、後段の中継器3内の前段の光増幅器301の出力端近傍の地点3Bにおける光の強度I3B、後段の中継器3内の後段の光増幅器302の入力端近傍の地点3Cにおける光の強度I3C、および、後段の中継器3の出力端近傍の地点3Dにおける光の強度I3Dそれぞれの時間変化を示すグラフが示されている。これら光強度の時間変化を示す各グラフにおいて、ハッチングで示したものは、中継器1内の光ADM150により取り出し又は追加される4波長λ1 〜λ4 の信号光を含む帯域の光の強度を表す。また、前段の中継器1内の地点1Cに光伝送監視装置130が設けられているものとする。
【0080】
図16に示す光伝送システムの前段の中継器1の作用については、図14に示す光伝送システムの前段の中継器1の作用と同様である。
【0081】
後段の中継器3の地点3Aにおける光の強度I3Aは、地点1Dにおける光の強度I1Dに対して光ファイバ伝送路40の伝送損失を乗じたものである。地点3Bにおける光の強度I3Bは、地点3Aにおける光の強度I3Aに光増幅器301の信号光利得を乗じたものであり、時刻t1 に低下するものの、出力一定制御された光増幅器301により時刻t1 以降は次第に増加していく。
【0082】
地点3Cにおける光の強度I3Cは、地点3Bにおける光の強度I3Bに光増幅器301および光増幅器302の間の伝送損失を乗じたものである。地点3Dにおける光の強度I3Dは、地点3Cにおける光の強度I3Cに光増幅器302の信号光利得を乗じたものであり、時刻t1 に減少し、その後、出力一定制御された光増幅器302により次第に増加して所定値に漸近し、また、時刻t2 に減少し、その後再び、出力一定制御された光増幅器302により次第に増加して所定値に漸近する。
【0083】
以上のように、中継器に光伝送監視装置が設けられていない場合には、その中継器から出力される光の全体強度は一定に維持されるものの、その中継器から出力される各波長の信号光それぞれの強度は一定に維持されない。しかし、各中継器に設けられた光伝送監視装置を用いて、信号光波長帯域のうちの互いに異なる第1および第2の波長帯域それぞれの光の強度の変化率を比較することにより光伝送を監視し、その監視結果に基づいて波数変動と伝送損失変動とを識別して、波数変動の場合と伝送損失変動の場合それぞれに応じて中継器内の光増幅器の信号光利得を適切に制御することで、中継器から出力される各波長の信号光それぞれの強度は一定に維持される。
【0084】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したとおり、本発明に係る光伝送監視装置によれば、入力した多波長の信号光を含む信号光波長帯域の光の一部が該伝送路から光分岐手段により分岐して取り出され、その取り出された信号光波長帯域の光のうち第1および第2の波長帯域それぞれの光の強度が第1および第2の光検出器により検出され、監視部により、第1および第2の波長帯域それぞれの光の強度の変化率が互いに比較され、その比較結果に基づいて光伝送が監視され、これにより伝送路損失変動および波数変動が分離して検出される。また、従来技術で用いたような特別な素子やパイロット光を用いる必要がなく、システム構成が簡単となり安価となる。
【0085】
また、本発明に係る光伝送監視装置が光増幅器の後段に接続され、信号光波長帯域における光増幅器の平均利得と略等しい利得となる波長を中心として第1および第2の波長帯域それぞれが設定される場合には、光増幅器に入力する光の強度が変動して光増幅器が利得偏差を有するようになった場合でも、伝送路損失変動および波数変動が分離して検出される。
【0086】
また、本発明に係る光伝送システムによれば、上記光伝送監視装置と、その光伝送監視装置に対し光伝送路上の上流または下流に設けられ多波長の信号光のうちの一部の波長の信号光を取り出し又は追加する光ADMとを備え、光伝送監視装置における第1および第2の波長帯域のうちの何れか一方が、光ADMが取り出し又は追加する一部の波長の信号光を含む波長帯域であるので、光伝送監視装置により、多波長の信号光のうち光ADMが取り出し又は追加する上記一部の波長の信号光の監視が好適に行われ、この監視結果に基づいて光増幅器の信号光利得の制御が好適に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光伝送監視装置が用いられた光伝送システムの構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る光伝送監視装置の構成図である。
【図3】第1の実施形態に係る光伝送監視装置における監視方法を説明する図である。
【図4】第2の実施形態に係る光伝送監視装置の構成図である。
【図5】第2の実施形態に係る光伝送監視装置における監視方法を説明する図である。
【図6】第3の実施形態に係る光伝送監視装置の構成図である。
【図7】光増幅器の出力光スペクトルを示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る光伝送監視装置の作用について説明する図である。
【図9】第3の実施形態に係る光伝送監視装置の変形例の構成図である。
【図10】本発明に係る光伝送監視装置が挿入された光伝送システムの構成図である。
【図11】光伝送システムの3地点それぞれにおける光スペクトルを示す図である。
【図12】本発明に係る光伝送監視装置が挿入される光伝送システムの構成図である。
【図13】中継器の構成図である。
【図14】本発明に係る光伝送監視装置が挿入される光伝送システムの構成図である。
【図15】本発明に係る光伝送監視装置が挿入される光伝送システムの構成図である。
【図16】本発明に係る光伝送監視装置が挿入される光伝送システムの構成図である。
【符号の説明】
1〜3…中継器、10,11…送信器、20〜24…光増幅器、30〜33…光伝送監視装置、40〜46…光ファイバ伝送路、50…光ADM、61…受信器。
Claims (4)
- 光伝送路を伝送される多波長の信号光を含む信号光波長帯域の光の一部を該伝送路から分岐して取り出す光分岐手段と、
前記光分岐手段により取り出された前記信号光波長帯域の光のうちの第1の波長帯域の光の強度を検出する第1の光検出器と、
前記光分岐手段により取り出された前記信号光波長帯域の光のうち前記第1の波長帯域と異なる第2の波長帯域の光の強度を検出する第2の光検出器と、
前記第1の光検出器により検出された前記第1の波長帯域の光の強度の変化率と、前記第2の光検出器により検出された前記第2の波長帯域の光の強度の変化率とを比較し、その比較結果に基づいて、多波長の信号光が伝送される光伝送路の損失変動を検出する監視部と
を備えることを特徴とする光伝送監視装置。 - 前記信号光波長帯域の光を一括増幅する光増幅器の後段に接続される光伝送監視装置であって、前記信号光波長帯域における前記光増幅器の平均利得と略等しい利得となる波長を中心として前記第1および前記第2の波長帯域それぞれが設定されることを特徴とする請求項1記載の光伝送監視装置。
- 前記第1および前記第2の波長帯域それぞれが前記信号光波長帯域および前記多波長の信号光の波数に応じて設定されることを特徴とする請求項2記載の光伝送監視装置。
- 請求項1記載の光伝送監視装置と、その光伝送監視装置に対し光伝送路上の上流または下流に設けられ多波長の信号光のうちの一部の波長の信号光を取り出し又は追加する光ADMとを備え、
前記光伝送監視装置における前記第1および前記第2の波長帯域のうちの何れか一方が、前記光ADMが取り出し又は追加する前記一部の波長の信号光を含む波長帯域であることを特徴とする光伝送システム。
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