JP3883730B2 - ディスクリート半導体封止用樹脂組成物およびディスクリート半導体封止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体チップ等の電子部品をトランスファー成形などで封止するに用いるディスクリート半導体封止用樹脂組成物と、該組成物によって樹脂封止されたディスクリート半導体封止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体ディスクリートの分野において、高信頼性化の動きがある。例えば、TO−220の場合、従来、熱放散させるために、ヒートシンク(放熱金属板)がついていたが、信頼性を向上させるため、ヒートシンクをとり、代わりに熱伝導性のある樹脂でパッケージ裏面も封止するという方向に進んでいる。さらに、熱放散性を高めるため、パッケージ裏面層は、年々薄くなってきている。
【0003】
従来の封止用樹脂組成物によって表裏両面を封止した半導体装置は、トランスファー成形などで封止すると、パッケージの表裏面の厚み比が大きく、樹脂が均一に流れず、その部分からリーク電流や腐食が発生し、長期間の信頼性を保証することができないという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、表裏面などの厚み比が大きいパッケージのトランスファー成形に適して充填性や作業性がよい、ディスクリート半導体封止用樹脂組成物およびディスクリート半導体封止装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、最大粒子径が200μm以下で、平均粒子径が35μm以上50μm以下である破砕状結晶シリカ充填剤をエポキシ樹脂100重量部に対して300〜600重量部含有し、特に水をエポキシ樹脂100重量部に対して10〜20重量部配合すれば、トランスファー成形における充填性や作業性がよい、ディスクリート半導体封止用樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成したものである。
【0006】
即ち、本発明のディスクリート半導体封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)水および(C)破砕状結晶シリカ充填剤を必須成分とし、前記(B)水は、前記(A)エポキシ樹脂100重量部に対して10〜20重量部の割合で配合され、前記(C)破砕状結晶シリカ充填剤は、その最大粒子径が200μm以下で平均粒子径が35μm以上50μm以下であるとともに、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して300〜600重量部の割合で含有することを特徴とし、また本発明のディスクリート半導体封止装置は、(A)エポキシ樹脂、(B)水および(C)破砕状結晶シリカ充填剤を必須成分とし、前記(B)水は、前記(A)エポキシ樹脂100重量部に対して10〜20重量部の割合で配合され、前記(C)破砕状結晶シリカ充填剤は、その最大粒子径が200μm以下で平均粒子径が35μm以上50μm以下であるとともに、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して300〜600重量部の割合で含有する封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップが封止されてなることを特徴とする。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に用いる(A)エポキシ樹脂としては、1 分子中に2 個以上のエポキシ基を有する化合物であればよく、例えば、汎用されているビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸のグリシジルエステル、シクロヘキサン誘導体のエポキシ化によって得られるエポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独または2 種以上混合して使用することができる。また、これらのエポキシ樹脂に、必要に応じて、液状のモノエポキシ樹脂等を併用することができる。
【0010】
本発明に用いる(B)水は、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して10〜20重量部、好ましくは、10〜15重量部である。その割合が、10重量部未満では流動性および硬化後の樹脂強度が低下し、20重量部を超えると、付着などの影響で封止樹脂の製造が著しく低下して好ましくない。なお、上記した(A)エポキシ樹脂の100重量部のなかには、そのエポキシ樹脂に必要な硬化剤および硬化触媒の配合量が含まれる。
【0011】
本発明に用いる(C)シリカ充填剤は、熱伝導性を高めるため、結晶シリカを使用する。結晶シリカとしては、一般に天然の高純度の珪石、珪砂、水晶等が用いられる。通常、これらをジョークラッシャー、ロールクラッシャー等で粗砕し、これら粗砕品をさらにボールミル等で微粉砕し、本発明における破砕状シリカとして用いる。
【0012】
本発明に用いる(C)破砕状結晶シリカ充填剤は、最大粒子径は、200μm以下で、好ましくは150μm以下である。粒子径が200μmを超えると、半導体の樹脂封止の工程でつまりを生じる場合があるため使用できない。更に平均粒子径は、35μm以上50μm以下であり、好ましくは40μm以上50μmである。35μm未満では、薄面パッケージの充填性が損なわれ、50μmを超えると樹脂組成物の良好な流動性が損なわれる。
【0013】
また、(C)シリカ充填剤の配合割合は、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して300〜600重量部であり、好ましくは500〜600重量部の範囲である。シリカ充填剤の配合が300重量部以下では内部応力低下の効果がみられず、600重量部を超えると、樹脂の流動性が著しく低下するので好ましくない。なお、(A)エポキシ樹脂の100重量部のなかには、そのエポキシ樹脂に必要な硬化剤および硬化触媒の配合量が含まれる。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、上述した(C)破砕状結晶シリカ充填剤および(B)水を(A)エポキシ樹脂に配合させたものであるが、本発明の目的に反しない限度において、また必要に応じて、例えば天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド、エステル類、パラフィン等の離型剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、カーボンブラック等の着色剤、ゴム系やシリコーン系の低応力付与剤等を適宜添加配合することができる。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的方法は、前述したエポキシ樹脂、水、破砕状結晶シリカ充填剤、その他の成分を配合し、ミキサー等によって十分均一に混合し、さらに熱ロールによる溶融混合処理またはニーダ等による混合処理を行い、次いで冷却固化させ適当な大きさに粉砕して成形材料とすることができる。こうして得られた成形材料は、半導体装置をはじめとする電子部品或いは電気部品の封止、被覆、絶縁等に適用すれば優れた特性と信頼性を付与させることができる。
【0016】
また、本発明のディスクリート半導体封止装置は、上述の成形材料を用いてトランジスタ、サイリスタ、ダイオード等を封止することにより容易に製造することができる。封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法があるが、射出成形、圧縮成形、注形等による封止も可能である。成形材料で封止後加熱して硬化させ、最終的にはこの硬化物によって封止されたディスクリート半導体封止装置が得られる。加熱による硬化は、150℃以上に加熱して硬化させることが望ましい。
【0017】
【作用】
本発明において平均粒子径を調整した特定のシリカ充填剤と、水と、エポキシ樹脂とを特定範囲量で配合することによって、本発明のディスクリート半導体封止用樹脂組成物が得られる。このディスクリート半導体樹脂組成物を使用することにより、トランスファー成形における充填性や作業性を大幅に向上することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下の実施例および比較例において「部」とは「重量部」を意味する。
【0019】
参考例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、エタノール10部、最大粒子径150μmで平均粒子径35μmである結晶シリカ粉末400部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して参考例1のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0020】
参考例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、エタノール10部、最大粒子径150μmで平均粒子径35μmである結晶シリカ粉末600部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して参考例2のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0021】
参考例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、エタノール2部、最大粒子径150μmで平均粒子径35μmである結晶シリカ粉末550部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して参考例3のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0022】
参考例4
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、ジメチルホルムアミド10部、最大粒子径150μmで平均粒子径35μmである結晶シリカ粉末550部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して参考例4のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0023】
実施例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、水10部、最大粒子径150μmで平均粒子径35μmである結晶シリカ粉末550部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して実施例1のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0024】
参考例5
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、水2部、最大粒子径150μmで平均粒子径35μmである結晶シリカ粉末550部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して参考例5のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0025】
比較例1
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、エタノール10部、最大粒子径120μmで平均粒子径20μmである結晶シリカ粉末400部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して比較例1のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0026】
比較例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、エタノール10部、最大粒子径120μmで平均粒子径20μmである結晶シリカ粉末600部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して比較例2のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0027】
比較例3
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、ジメチルホルムアミド10部、最大粒子径120μmで平均粒子径20μmである結晶シリカ粉末550部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して比較例3のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0028】
比較例4
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、水10部、最大粒子径120μmで平均粒子径20μmである結晶シリカ粉末550部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して比較例4のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0029】
比較例5
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、エタノール2部、最大粒子径120μmで平均粒子径20μmである結晶シリカ粉末550部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して比較例5のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0030】
比較例6
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200)70部に、ノボラック型フェノール樹脂(フェノール当量104)30部、最大粒子径150μmで平均粒子径35μmである結晶シリカ粉末550部、およびトリフェニルホスフィン3部を配合し、ロールミルにて混練後、粉砕して比較例6のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0031】
前記参考例、実施例および比較例で作成したエポキシ樹脂組成物の流動性および成形性をみるため、高化式フロー粘度およびスパイラルフローを測定し、また、上記樹脂組成物を用いて封止した半導体装置の外観検査を行い、この結果を表1〜2にそれぞれ示した。参考例1〜5、実施例1のシリカ充填剤を使用した樹脂組成物が比較例1〜6のシリカ充填剤を使用した樹脂組成物より成形性が良好であった。また、参考例1〜5、実施例1の極性溶剤で5〜20重量%添加すると、さらに成形性が向上し、本発明の効果が確認された。
【0032】
【表1】
*1:島津フローテスターCFT−500型を用い、175℃、荷重10kgの条件にて測定。
【0033】
*2:EMMI規格1一66に準じ、175℃×2分硬化の条件にて測定。
【0034】
*3:180℃×60秒の条件で成形した、裏面厚0.3mmのTO−220フルパックタイプの成形品1000個について。成形品の裏面を目視により観察し、巣の数をかぞえる。
【0035】
*4:吸湿、半田処理後の、裏面厚0.3mmのTO−220フルパックタイプの成形品1000個当たりのフクレ数をかぞえる。
【0036】
【表2】
*1:島津フローテスターCFT−500型を用い、175℃、荷重10kgの条件にて測定。
【0037】
*2:EMMI規格1一66に準じ、175℃×2分硬化の条件にて測定。
【0038】
*3:180℃×60秒の条件で成形した、裏面厚0.3mmのTO−220フルパックタイプの成形品1000個について。成形品の裏面を目視により観察し、巣の数をかぞえる。
【0039】
*4:吸湿、半田処理後の、裏面厚0.3mmのTO−220フルパックタイプの成形品1000個当たりのフクレ数をかぞえる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の破砕状結晶シリカ充填剤を含有するエポキシ樹脂組成物を半導体等の電子部品の封止に用いることにより、トランスファー成形工程における成形性および信頼性の改善をはかることができる。
Claims (2)
- (A)エポキシ樹脂、(B)水および(C)破砕状結晶シリカ充填剤を必須成分とし、前記(B)水は、前記(A)エポキシ樹脂100重量部に対して10〜20重量部の割合で配合され、前記(C)破砕状結晶シリカ充填剤は、その最大粒子径が200μm以下で平均粒子径が35μm以上50μm以下であるとともに、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して300〜600重量部の割合で含有することを特徴とするディスクリート半導体封止用樹脂組成物。
- (A)エポキシ樹脂、(B)水および(C)破砕状結晶シリカ充填剤を必須成分とし、前記(B)水は、前記(A)エポキシ樹脂100重量部に対して10〜20重量部の割合で配合され、前記(C)破砕状結晶シリカ充填剤は、その最大粒子径が200μm以下で平均粒子径が35μm以上50μm以下であるとともに、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して300〜600重量部の割合で含有する封止用樹脂組成物の硬化物によって、半導体チップが封止されてなることを特徴とするディスクリート半導体封止装置。
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