JP3881924B2 - ステンレス鋼の酸洗設備及び同設備の酸洗液制御方法 - Google Patents

ステンレス鋼の酸洗設備及び同設備の酸洗液制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼の酸洗設備及び同設備における酸洗液制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷間又は熱間圧延されたステンレス鋼のストリップは、焼鈍処理後、表面のスケールを除去するため酸洗を行う。
【0003】
図3に酸洗タンクの一例を、図4に酸洗液の循環系の一例を示す。ステンレスのストリップ1は、焼鈍後酸洗タンク2に搬送される。酸洗タンク2への搬送前に図示しないベンディング、ショットブラスト、ソルトバス処理等の事前処理をされることもある。
【0004】
図3のストリップ1は酸洗タンク2の上流側に設置されたピンチロール7で酸洗タンク2内に導かれて浸漬ロール9により酸洗液中に浸漬され、ストリップ1の表面の図示しないスケールが酸洗除去された後、酸洗タンク2の下流側に設置された水切りロール8で引き上げられ、次の図示しない酸洗タンクあるいは図示しない水洗タンクに搬送される。酸洗液は酸洗タンク2の側面に複数個設けられた酸洗液供給口4から供給され、酸洗タンク2の底部に設けられた酸洗液排出口5又はオーバーフロー排出口11から排出される。一点鎖線で示す6は酸洗液の液面、点の集合で示す18はスケールと酸洗液の反応により生じたスラッジである。
【0005】
図4の排出バルブ17の操作により酸洗液排出口5から排出された酸洗液及びオーバーフロー排出口11から排出された酸洗液は、酸洗循環タンク12に集められ、酸洗液中に懸濁しているスラッジ18を酸洗循環タンク12底部に沈殿させ底部より排出し除去する。酸洗液排出口5からの排出は定期的に又は必要に応じて、また、オーバーフロー排出口11からの排出は常時行われている。スラッジ18を除去した上澄み液である酸洗液は酸洗循環タンク12で図示しない酸供給配管により新たな酸が加えられて濃度が調整され、酸洗循環タンク12より熱交換器15で酸洗液の液温が調整されながら供給ポンプ14により再度酸洗タンク2へ送られる。16は酸洗タンク2や配管の洗浄等に使用される工業用水である。
【0006】
上記のような酸洗装置において、ストリップ1のスケールと酸洗液との反応により生じたスラッジ18は酸洗タンク2の底部に泥状に堆積し、これを放置すると徐々に蓄積してストリップパスラインに干渉し、ストリップ1との接触、あるいはストリップ1の搬送により巻き上げられてストリップ1の随伴流と共にロールとストリップ間に挟み込まれて、ストリップ1に押し傷等の品質不良を発生させる。
【0007】
従って、このような問題を回避するため、従来は、酸洗液をオーバーフロー排出口11から常時オーバーフローさせてスラッジ18を排出すると共に、定期的にラインを停止させ又はラインの操業停止時に酸洗タンク2の酸洗液排出口5から泥状になったスラッジ18を手作業で排出除去していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記ライン停止によるスラッジ18の酸洗液排出口5からの除去作業は、ライン停止期間が1週間程度の長期間となるため、ラインの操業効率を低下させ、手作業によるスラッジ18の除去は酸を使う作業のため作業効率や安全性に問題があった。また常時酸洗液をオーバーフローさせることは無効な酸洗液を多量に循環させることになり、ランニングコスト上からもエネルギー消費からも問題があった。
【0009】
本発明は、上記した点に鑑み、酸洗設備のスラッジ堆積によるストリップへの干渉、スラッジ排出のためのライン停止などの問題点を解消した新規な酸洗設備及び酸洗方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、冷間又は熱間圧延されたストリップの表面のスケールを除去するための酸洗タンクを有するステンレス鋼の酸洗設備において、予め定めた1バッチ当たりの基準酸洗処理量を記憶する基準酸洗処理量記憶手段と、該ストリップの通過量を該ストリップの走行速度より演算して計測する通過量計測手段と、該通過量より酸洗処理量を演算する酸洗処理量演算手段と、該酸洗処理量より積算酸洗処理量を演算する積算酸洗処理量演算手段と、該基準酸洗処理量と該積算酸洗処理量との処理量比較値を演算する処理量比較手段と、該処理量比較値が所定の値に達したことにより該酸洗タンクの底部に蓄積するスラッジを含んだ酸洗液の排出を開始する酸洗液排出手段と、スラッジを含んだ酸洗液の排出に伴い該積算酸洗処理量をバッチ処理毎にリセットする積算酸洗処理量リセット手段と、予め定めた1バッチ当たりの前記酸洗タンクより排出する前記スラッジを含んだ酸洗液の基準排出量を記憶する基準排出量記憶手段と、前記酸洗タンクより排出する酸洗液の排出量を計測する排出量計測手段と、前記酸洗タンクより排出する酸洗液の積算排出量を演算する積算排出量演算手段と、該基準排出量と該積算排出量との排出量比較値を演算する排出量比較手段と、該排出量比較値が所定の値に達したことによりスラッジを含んだ酸洗液の排出を停止する酸洗液制御手段と、酸洗液の排出停止に伴い該積算排出量をバッチ処理毎にリセットする積算排出量リセット手段と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準液面高さを記憶する基準液面高さ記憶手段と、前記酸洗タンク内の酸洗液の液面高さを計測する液面高さ計測手段と、該基準液面高さと計測された該液面高さとの液面比較値を演算する液面比較手段と、該液面比較値が所定の値になるように前記酸洗タンクへの酸洗液の供給及び排出を制御する液面制御手段と、前記酸洗タンクに供給する酸洗液を調温する熱交換手段と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準温度を記憶する基準温度記憶手段と、前記酸洗タンク内の酸洗液の温度を計測する温度計測手段と、該基準温度と計測された該温度との温度比較値を演算する温度比較手段と、該温度比較値が所定の値になるように熱交換手段を制御して前記酸洗タンクに供給する酸洗液を調温する温度制御手段と、前記酸洗タンクに酸洗液を供給する酸洗液供給手段と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準濃度を記憶する基準濃度記憶手段と、前記酸洗タンク内の酸洗液の濃度を計測する濃度計測手段と、該基準濃度と計測された該濃度との濃度比較値を演算する濃度比較手段と、該濃度比較値が所定の値になるように該酸洗液供給手段により前記酸洗タンクに酸洗液を供給し前記酸洗タンク内の酸洗液の濃度を制御する濃度制御手段と、を備えたことを特徴とするステンレス鋼の酸洗設備に係るものである。
【0011】
上記構成によれば、酸洗処理を開始する前に酸の種類とストリップの鋼種、走行速度及び板幅等を入力し、その入力値を基に演算を行い予め1バッチ当たりの酸洗処理量を演算し基準酸洗処理量として設定しておく。酸洗処理の開始後、酸洗処理量をストリップの通過量より積算し、積算酸洗処理量が基準酸洗処理量になるまで酸洗タンクにスラッジを蓄積させ、積算酸洗処理量が基準酸洗処理量と同値になるか超えたときにスラッジを含んだ酸洗液の排出を開始することにより、無効な酸洗液を循環しない効率のよいスラッジのバッチ処理による排出作業を自動化することができる。積算酸洗処理量はバッチ処理毎に初期値にリセットされる。
【0013】
また、ストリップは薄板状であるので酸洗処理量はストリップの通過面積に略比例する。よって、酸洗処理量をストリップの走行速度より演算される走行距離と板幅で比例演算することができるが、板幅が一定の場合はストリップの走行距離を積算酸洗処理量として演算することが可能であり、その場合、計算が単純になり演算効率が良くなる。
【0015】
また、酸洗タンクに蓄積されるスラッジの量に基づく酸洗液のバッチ当たりの排出量をストリップの鋼種、酸の種類、ストリップの走行速度及び板幅等より演算し予め定めることにより、酸洗液の排出を所定の基準排出量になるまで排出し、積算排出量が基準排出量になった時点で排出を停止するため、排出の流量制御を必要とせず作業の効率よい自動化と排出装置の簡略化が可能となる。排出が一時的に多量になり液面が低下し過ぎる等の問題が生じる場合は排出の流量制御を行うことも可能である。積算排出量はバッチ毎に初期値にリセットされる。
【0017】
また、酸洗タンク内のスラッジを伴う酸洗液の排出により低下する酸洗液の液面を常に必要な範囲のレベルに保つように酸洗液の供給を行うことにより、酸洗液の排出中も酸洗作業を連続して行い、スケール除去性能も均一になる。また、酸洗液の液面は酸洗液の排出時に低下するのみならず、酸洗液の温度調整又は濃度調整の際に酸洗液が供給され液面が上昇する場合もあり、その場合は酸洗液の排出を行い液面を必要な範囲のレベルに保つ。酸洗液の基準液面高さはある幅を持って設定してもよい。
【0019】
また、酸洗タンク内の酸洗液の温度低下は酸洗効率及び酸洗性能に悪影響があり、酸洗液の温度は一定の範囲に保持する必要があるが、上記構成によれば、常時、酸洗液の温度を計測し温度低下があれば温度の調整された酸洗液を酸洗タンクに供給することができる。また、スラッジを伴う酸洗液の排出中も、酸洗タンク内の酸洗液の温度を所定の範囲に保持することができる。
【0021】
そしてまた、酸洗中の酸洗液の濃度低下は酸洗効率及び酸洗性能に悪影響があり、酸洗液の濃度は一定の範囲に保持する必要があるが、上記構成によれば、常時、酸洗液の濃度を計測し濃度低下があれば濃度の調整された酸洗液を供給し濃度を制御することができる。また、スラッジを伴う酸洗液の排出中も、酸洗タンク内の酸洗液の濃度を所定の範囲に保持することができる。
【0022】
また、請求項の発明は、予め定めた基準酸洗処理量とストリップの通過量から演算した積算酸洗処理量との処理量比較値を演算し、該処理量比較値が所定の値に達したことにより酸洗タンクより酸洗液の排出を開始する工程と、予め定めた酸洗液の基準排出量と前記酸洗タンクより排出された酸洗液の積算排出量との排出量比較値を演算し、該排出量比較値が所定の値に達したことにより酸洗液の排出を停止する工程等のバッチ処理と、予め定めた前記酸洗タンクの基準液面高さと計測された液面高さとの液面比較値を演算し、該液面比較値が所定の値になるように前記酸洗タンクへの酸洗液の供給及び排出を制御する工程と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準温度と計測された温度との温度比較値を演算し、該温度比較値が所定の値になるように酸洗液の温度を制御する工程と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準濃度と計測された濃度との濃度比較値を演算し、該濃度比較値が所定の値になるように前記酸洗タンクへの酸洗液の供給を制御する工程とを有してなることを特徴とするステンレス鋼の酸洗設備の酸洗液制御方法に係るものである。
【0023】
上記方法によれば、酸洗処理量をストリップの通過量より積算し、積算酸洗処理量が予め定めた基準酸洗処理量になるまで酸洗タンクにスラッジを蓄積し、積算酸洗処理量が基準酸洗処理量と同じになるか超えたときにスラッジを含んだ酸洗液の排出を開始し、積算排出量がスラッジの排出が必要なくなる予め定めた基準排出量と同じになるか超えたときにスラッジを含んだ酸洗液の排出を停止する、効率のよいスラッジのバッチ処理による排出作業を自動化することができる。
【0025】
また、上記方法によれば、酸洗タンク内のスラッジを伴う酸洗液の排出により低下する酸洗液の液面を常に必要な範囲のレベルに保ち、酸洗液の排出中も酸洗作業を連続して行い、スケール除去性能も均一になる。また、酸洗タンク内の酸洗液の温度調整又は濃度調整の際に供給される酸洗液により液面が上昇する場合は酸洗液を排出し、液面を常に必要な範囲のレベルに保つ。
【0027】
また、上記方法によれば、常時酸洗液の温度を計測し酸洗タンク内の酸洗液の温度を一定に保つのみならず、特にスラッジを伴う酸洗液の排出中も、酸洗タンク内の酸洗液の温度を所定の範囲に保持することができる。
【0029】
そしてまた、上記方法によれば、常時酸洗液の濃度を計測し酸洗タンク内の酸洗液の濃度を一定に保つのみならず、特にスラッジを伴う酸洗液の排出中も、酸洗タンク内の酸洗液の濃度を所定の範囲に保持することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って詳細に説明する。なお、図1、図2において、図3、図4に示す装置と同じ構成の部分には同一の符号を付し、それらについての重複する説明は省略する。
【0031】
図1は発明に係る一実施形態の主要部分として、酸洗タンクの底部に泥状に堆積したスラッジの排出を制御する設備の構成及びその制御方法を示す図である。図1において実線の矢印は作業又は制御の順序を示し、破線の矢印は機械制御のための信号の流れを示す。
【0032】
図1において、22は基準値設定制御部を示し、基準値設定制御部22は初期値入力手段221と基準値演算記憶手段222よりなり、初期値入力手段221にてストリップ1の鋼種、走行速度、板幅及び酸の種類等演算に必要な諸元を入力し、基準値演算記憶手段222にて基準酸洗処理量Lo、基準排水量Vo及び基準液面高さHoを演算し基準酸洗処理量Loを基準酸洗処理量記憶手段223に、基準排水量Voを基準排出量記憶手段224に及び基準液面高さHoを基準液面高さ記憶手段225に各々記憶する。基準酸洗処理量記憶手段223、基準排出量記憶手段224及びに基準液面高さ記憶手段225は基準値設定制御部22に備えても良く、また、別の制御部に備えることも可能である。
【0033】
また、23は排出開始制御部を示し、排出開始制御部23では、酸洗タンク2を通過するストリップ1の通過量を計測する通過量計測手段235より送られるデータより酸洗処理量演算手段231で酸洗処理量を演算し、積算酸洗処理量演算手段232により酸洗処理量を積算して積算酸洗処理量Lを求め、基準酸洗処理量記憶手段223に記憶されている基準酸洗処理量Loと積算酸洗処理量Lとを処理量比較手段233により比較し積算酸洗処理量Lが基準酸洗処理量Loと同値になるか積算酸洗処理量Lが基準酸洗処理量Loを上回ったときに、酸洗液の排出を開始するために酸洗液排出手段234により排出バルブ17が開けられる。積算酸洗処理量Lが基準酸洗処理量Loを下回るときは酸洗処理の積算を続ける。ストリップ1の板幅が一定の場合は走行速度の積算値である走行距離を積算酸洗処理量Lに置き換えることも可能であり、また、走行速度も一定の場合は処理時間の積算値を積算酸洗処理量Lに置き換えることも可能である。その場合は基準酸洗処理量Loも走行距離又は処理時間の関数とする。
【0034】
また、24は排出停止制御部を示し、排出停止制御部24では、酸洗液排出量計測手段241により計測した排出量を積算排出量演算手段242にて積算して積算排出量Vを演算し、基準排出量記憶手段224に記憶されている基準排出量Voと積算排出量Vとを排出量比較手段243にて比較し積算排出量Vが基準排出量Voと同値になるか積算排出量Vが基準排出量Voを上回ったときに酸洗液制御手段244により排出バルブ17が閉じられ酸洗液の排出を停止する。積算排出量Vが基準排出量Voを下回るときは排出量の積算を続ける。
25はリセット制御部を示し、リセット制御部25では酸洗液の排出停止後、積算酸洗処理量Lと積算排出量Vを初期値である零にリセットする。積算酸洗処理量Lのリセットは必ずしも酸洗液の排出停止後に行われるものではなく、排出開始後で酸洗液排出停止前の間に行われてもよい。積算酸洗処理量Lと積算排出量Vが初期値である零にリセットされると、制御の流れは次のバッチ処理の排出開始制御部に移る。
【0035】
また、26は液面保持制御部を示す。液面保持制御部26においては、酸洗処理が行われる間は液面高さ計測手段261にて酸洗液面高さHを計測し液面比較手段262にて基準液面高さ記憶手段225に記憶された基準液面高さHoと計測された酸洗液面高さHを比較して酸洗液面が常に基準液面高さHoになるように酸洗タンク2へ酸洗液を酸洗液供給手段である供給ポンプ14により供給する。基準液面高さHoに上下の幅を持った値を設定し酸洗液面高さHがその範囲に入るよう制御してもよい。図1には常に供給ポンプ14と排出バルブ17を操作しているように記載しているが、基準液面高さHoが上下の幅を持った値を設定している場合で酸洗液面高さHがその範囲に入っているときは、通常、排出バルブ17は閉止し供給ポンプ14は停止している。酸洗液の排出が供給酸洗液を上回り、酸洗液面高さHが予定を上回って下降する場合は排出バルブ17を閉止して酸洗液の排出を停止し、酸洗液面高さHが回復するのを待って排出バルブ17を開けて酸洗液の排出を行ってもよい。また、酸洗液の排出中でなくとも、酸洗液面高さHが基準液面高さHoを上回る場合は、排出バルブ17を操作して酸洗液を排出するようにしてもよい。酸洗液面高さHが基準液面高さHoを下回る場合は、供給ポンプ14を操作して酸洗液を供給するようにしてもよい。
【0036】
図2は図1で省略した本発明に係る一実施形態の他の主要部分として、酸洗タンクの酸洗液の温度及び濃度を制御する設備の構成及びその制御方法を示す図である。図2において実線の矢印は作業又は制御の順序を示し、破線の矢印は機械制御のための信号の流れを示す。
【0037】
図2より、29は酸洗タンク2内の酸洗液の基準温度と基準濃度を演算して記憶する基準酸洗液制御部である。基準酸洗液制御部29は基準値設定制御部22の初期値入力手段221にて入力されたストリップ1の鋼種、走行速度、板幅及び酸の種類等演算に必要な諸元から基準温度To及び基準濃度Coを演算し基準温度Toを基準温度記憶手段291に、基準濃度Coを基準濃度記憶手段292に各々記憶する。
【0038】
30は酸洗タンク2内の酸洗液の温度と濃度を制御する温度・濃度制御部である。温度・濃度制御部30は予め設定された基準温度Toと温度計測手段304で計測された酸洗タンク2内の酸洗液温度Tを温度比較手段302で比較演算し熱交換手段である熱交換器15及び供給ポンプ14を制御し、また、予め設定された酸洗液の濃度Coと濃度計測手段303で計測された酸洗タンク2内の酸洗液の濃度Cを濃度比較手段301で比較演算し供給ポンプ14を制御する。
【0039】
次に酸洗液の温度及び濃度の制御方法を説明する。まず、基準酸洗液制御部29で酸洗液の基準温度Toを設定して基準温度記憶手段291に記憶し、酸洗タンク2に設置した温度計測手段304により酸洗液の温度Tを測定する。ついで、基準温度Toと測定した酸洗液温度Tを温度比較手段302で比較演算し、温度Tが基準温度Toを下回る間は熱交換器15に信号を出してパイプ内を流動する酸洗液を加熱すると共に供給ポンプ14に温度制御手段305より信号を出して供給ポンプ14を駆動し、ストレージタンク13から酸洗タンク2へ加熱された酸洗液を供給して温度を上昇させる。基準温度Toが範囲を持って設定されている場合はTがその範囲に入るように制御を行うこともできる。
【0040】
また、酸洗液の濃度は、鋼種等によって定まる基準濃度Coを設定し基準濃度記憶手段292に記憶し、酸洗タンク2に設置した濃度計測手段303により酸洗液の濃度Cを測定する。次いで、基準濃度Coと測定した酸洗液の濃度Cを濃度比較手段301で比較演算し、濃度Cが基準濃度Coを下回るに間は供給ポンプ14に濃度制御手段306より信号を出して供給ポンプ14を駆動させ、ストレージタンク13から酸洗タンク2へ酸洗液を供給して濃度を上昇させる。基準濃度Coが範囲を持って設定されている場合は濃度Cがその範囲に入るように制御を行うこともできる。
ストレージタンク13は酸洗循環タンク12に加えて設けたもので、ストレージタンク13内にて酸洗液の濃度をチェックし図示しない酸供給配管より酸を供給し設定濃度Coよりも高めの濃度に調整しておくことも可能である。また、ストレージタンク13は酸洗循環タンク12で兼用しても良い。
【0041】
また、酸洗液の供給中は図1に示す液面保持制御部26により酸洗タンク2の液面高さHを監視し、予め設定した所定の基準液面高さHoと液面高さ計測手段261で測定した液面高さHとを液面比較手段262で比較演算して、供給ポンプ14とバルブ17を制御して液面を所定の高さに保持することができる。基準液面高さHoがある範囲を持ち、液面高さHがその範囲に入るように制御しても良い。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、酸洗処理の開始後、酸洗処理量をストリップの通過量より積算し、積算酸洗処理量が基準酸洗処理量になるまで酸洗タンクにスラッジを蓄積させ、積算酸洗処理量が基準酸洗処理量と同値になるか超えたときにスラッジを含んだ酸洗液の排出を開始することにより、無効な酸洗液を循環しないので、エネルギーの消費を低減できる。また、効率のよいスラッジのバッチ処理による排出作業を自動化することができる。
【0043】
また、発明によれば、酸洗処理量をストリップの走行速度より演算される走行距離と板幅で比例演算することができるが、板幅が一定の場合はストリップの走行距離を積算酸洗処理量として演算することが可能であり、その場合演算効率が良くなる。
【0044】
また、発明によれば、酸洗液の排出を所定の基準排出量になるまで排出し、積算排出量が基準排出量になった時点で排出を停止するため、余分なエネルギーの消費を防止し、また、排出の流量制御を必要とせず作業の効率よい自動化と排出装置の簡略化が可能となる。
【0045】
また、発明によれば、酸洗タンク内のスラッジを伴う酸洗液の排出により低下する酸洗液の液面を常に必要な範囲のレベルに保つように酸洗液の供給を行うので、酸洗液の排出中も酸洗作業を連続して行うことが可能となり、スケール除去性能も均一になる。また、オーバーフローさせる酸洗液をなくし、調整した酸洗液を有効に使用することが可能となる。
【0046】
また、発明によれば、スラッジを伴う酸洗液の排出中も、酸洗タンク内の酸洗液の温度を所定の範囲に保持することができるのでストリップの酸洗処理が安定して行われる。
【0047】
また、発明によれば、スラッジを伴う酸洗液の排出中も、酸洗タンク内の酸洗液の濃度を所定の範囲に保持することができるのでストリップの酸洗処理が安定して行われる。
【0048】
また、請求項の発明によれば、無効な酸洗液を循環しないので、エネルギーの消費を低減できる。また、効率のよいスラッジのバッチ処理による排出作業を自動化することができる。また、排出の流量制御を必要とせず作業の効率よい自動化と排出装置の簡略化が可能となる。
【0049】
また、発明によれば、酸洗液の排出中も酸洗作業を連続して行うことが可能となり、スケール除去性能も均一になる。また、オーバーフローさせる酸洗液をなくし、調整した酸洗液を有効に使用することが可能となる。
【0050】
また、発明によれば、常時、酸洗タンク内の酸洗液の温度を一定に保つのみならず、特にスラッジを伴う酸洗液の排出中も、酸洗タンク内の酸洗液の温度を所定の範囲に保持することができる。
【0051】
また、発明によれば、常時、酸洗タンク内の酸洗液の濃度を一定に保つのみならず、特にスラッジを伴う酸洗液の排出中も、酸洗タンク内の酸洗液の濃度を所定の範囲に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるスラッジ排出を制御する設備の構成及びその制御方法を示す制御流れ図。
【図2】本発明における酸洗液の温度及び濃度を制御する設備の構成及びその制御方法を示す制御流れ図。
【図3】酸洗タンクの断面図。
【図4】従来の酸洗液の循環を示す流れ図。
【符号の説明】
1 ストリップ
2 酸洗タンク
14 供給ポンプ
15 熱交換器
22 基準値設定制御部
223 基準酸洗処理量記憶手段
224 基準排出量記憶手段
225 基準液面高さ記憶手段
23 排出開始制御部
231 酸洗処理量演算手段
232 積算酸洗処理量演算手段
233 処理量比較手段
234 酸洗液排出手段
235 通過量計測手段
24 排出停止制御部
241 酸洗液排出量計測手段
242 積算排出量演算手段
243 排出量比較手段
244 酸洗液制御手段
25 リセット制御部
251 積算酸洗処理量リセット手段
252 積算排出量リセット手段
26 液面保持制御部
261 液面高さ計測手段
262 液面比較手段
263 液面制御手段
29 基準酸洗液制御部
291 基準温度記憶手段
292 基準濃度記憶手段
30 温度・濃度制御部
301 濃度比較手段
302 温度比較手段
303 濃度計測手段
304 温度計測手段
305 温度制御手段
306 濃度制御手段

Claims (2)

  1. 冷間又は熱間圧延されたストリップの表面のスケールを除去するための酸洗タンクを有するステンレス鋼の酸洗設備において、予め定めた1バッチ当たりの基準酸洗処理量を記憶する基準酸洗処理量記憶手段と、該ストリップの通過量を該ストリップの走行速度より演算して計測する通過量計測手段と、該通過量より酸洗処理量を演算する酸洗処理量演算手段と、該酸洗処理量より積算酸洗処理量を演算する積算酸洗処理量演算手段と、該基準酸洗処理量と該積算酸洗処理量との処理量比較値を演算する処理量比較手段と、該処理量比較値が所定の値に達したことにより該酸洗タンクの底部に蓄積するスラッジを含んだ酸洗液の排出を開始する酸洗液排出手段と、スラッジを含んだ酸洗液の排出に伴い該積算酸洗処理量をバッチ処理毎にリセットする積算酸洗処理量リセット手段と、予め定めた1バッチ当たりの前記酸洗タンクより排出する前記スラッジを含んだ酸洗液の基準排出量を記憶する基準排出量記憶手段と、前記酸洗タンクより排出する酸洗液の排出量を計測する排出量計測手段と、前記酸洗タンクより排出する酸洗液の積算排出量を演算する積算排出量演算手段と、該基準排出量と該積算排出量との排出量比較値を演算する排出量比較手段と、該排出量比較値が所定の値に達したことによりスラッジを含んだ酸洗液の排出を停止する酸洗液制御手段と、酸洗液の排出停止に伴い該積算排出量をバッチ処理毎にリセットする積算排出量リセット手段と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準液面高さを記憶する基準液面高さ記憶手段と、前記酸洗タンク内の酸洗液の液面高さを計測する液面高さ計測手段と、該基準液面高さと計測された該液面高さとの液面比較値を演算する液面比較手段と、該液面比較値が所定の値になるように前記酸洗タンクへの酸洗液の供給及び排出を制御する液面制御手段と、前記酸洗タンクに供給する酸洗液を調温する熱交換手段と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準温度を記憶する基準温度記憶手段と、前記酸洗タンク内の酸洗液の温度を計測する温度計測手段と、該基準温度と計測された該温度との温度比較値を演算する温度比較手段と、該温度比較値が所定の値になるように熱交換手段を制御して前記酸洗タンクに供給する酸洗液を調温する温度制御手段と、前記酸洗タンクに酸洗液を供給する酸洗液供給手段と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準濃度を記憶する基準濃度記憶手段と、前記酸洗タンク内の酸洗液の濃度を計測する濃度計測手段と、該基準濃度と計測された該濃度との濃度比較値を演算する濃度比較手段と、該濃度比較値が所定の値になるように該酸洗液供給手段により前記酸洗タンクに酸洗液を供給し前記酸洗タンク内の酸洗液の濃度を制御する濃度制御手段とを備えたことを特徴とするステンレス鋼の酸洗設備。
  2. 予め定めた基準酸洗処理量とストリップの通過量から演算した積算酸洗処理量との処理量比較値を演算し、該処理量比較値が所定の値に達したことにより酸洗タンクより酸洗液の排出を開始する工程と、予め定めた酸洗液の基準排出量と前記酸洗タンクより排出された酸洗液の積算排出量との排出量比較値を演算し、該排出量比較値が所定の値に達したことにより酸洗液の排出を停止する工程等のバッチ処理と、予め定めた前記酸洗タンクの基準液面高さと計測された液面高さとの液面比較値を演算し、該液面比較値が所定の値になるように前記酸洗タンクへの酸洗液の供給及び排出を制御する工程と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準温度と計測された温度との温度比較値を演算し、該温度比較値が所定の値になるように酸洗液の温度を制御する工程と、予め定めた前記酸洗タンク内の酸洗液の基準濃度と計測された濃度との濃度比較値を演算し、該濃度比較値が所定の値になるように前記酸洗タンクへの酸洗液の供給を制御する工程とを有してなることを特徴とするステンレス鋼の酸洗設備の酸洗液制御方法。
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