JP3881737B2 - 2端子型非線形素子の製造方法 - Google Patents

2端子型非線形素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2端子型非線形素子の製造方法に関する。
【0002】
【背景技術】
アクティブマトリクス方式の液晶表示装置は、画素領域毎にスイッチング素子を設けてマトリクスアレイを形成したアクティブマトリクス基板と、たとえばカラーフィルタを設けた対向基板との間に液晶を充填しておき、各画素領域毎の液晶の配向状態を制御して、所定の画像情報を表示するものである。スイッチング素子としては、一般に、薄膜トランジスタ(TFT)などの3端子素子または金属−絶縁体−金属(MIM)型非線形素子(以下、「MIM素子」ともいう。)などの2端子素子が用いられている。そして、2端子素子を用いたスイッチング素子は、3端子素子に比べ、クロスオーバ短絡の発生がなく、製造工程を簡略化できるという点で優れている。
【0003】
MIM素子を用いた液晶表示装置において、コントラストが高く、かつ、表示ムラ、残像および焼き付きなどの現象が認識できない高画質の液晶表示パネルを実現するためには、MIM素子の特性として以下の条件を満足することが重要である。
【0004】
(1)MIM素子の容量が液晶表示パネルの容量に対して充分に小さいこと、
(2)MIM素子の電流−電圧特性の経時変化が充分に小さいこと、
(3)MIM素子の電流−電圧特性の対称性が良いこと、
(4)MIM素子の電流−電圧特性の急峻性が充分に大きいこと、
(5)MIM素子の素子抵抗が広い電圧範囲において充分に一様であること。
【0005】
すなわち、コントラストを高くするためには、MIM素子の容量が液晶表示パネルの容量に対して充分に小さく、かつ、MIM素子の電流−電圧特性の急峻性が充分に大きいことが必要である。表示ムラが認識できないようにするには、MIM素子の素子抵抗が広い電圧範囲において、充分に一様であることが必要である。残像が認識できないようにするには、MIM素子の電流−電圧特性の経時変化が充分に小さいことが必要である。さらに、焼き付きが認識できないようにするには、MIM素子の電流−電圧特性の経時変化が充分に小さく、かつ、MIM素子の電流−電圧特性の対称性が良いこと、が必要である。
【0006】
ここで、「残像」とは、ある画像を数分表示した後に異なる画像を表示したときに、以前に表示していた画像が認識される現象のことである。また、「焼き付き」とは、ある画像を数時間表示した後に異なる画像を表示したときに、以前に表示していた画像が認識される現象のことである。さらに、「電流−電圧特性の対称性がよいこと」とは、ある電圧において、第1の導電膜から第2の導電膜に電流を流すときと、第2の導電膜から第1の導電膜に電流を流すときと、の電流の絶対値の差が充分に小さくなることである。
【0007】
MIM素子の技術を開示した文献としては以下のものが例示される。
【0008】
(a)たとえば、特開昭52−149090号公報においては、タンタルからなる第1の導電膜と、この第1の導電膜が陽極酸化されて形成される金属酸化膜からなる絶縁膜と、この絶縁膜の表面に形成されたクロムからなる第2の導電膜とから構成されるMIM素子が開示されている。前記絶縁膜は、第1の導電膜の表面を陽極酸化して形成されることにより、ピンホールがなく均一の膜厚で形成されている。また、特開昭57−122478号公報では、陽極酸化の化成液(電解液)として、クエン酸の希薄水溶液を用いることが開示されている。
【0009】
これらの技術においては、前述したMIM素子の特性の内(2)〜(5)の各特性において必ずしも充分に良好でなかった。すなわち、電流−電圧特性の経時変化、対称性および急峻性の点で不充分であり、かつ、素子抵抗が広い電圧範囲において充分に一様でなかった。そのため、このMIM素子を用いた液晶表示パネルでは、広い温度範囲においてコントラストを高く保つことが困難で、表示ムラも発生しやすいという問題があった。
【0010】
(b)国際公開された国際出願PCT/JP94/00204(国際公開番号WO94/18600)においては、MIM素子の第1の導電膜として、タンタルにタングステンを添加した合金膜を用いた構造が開示されている。
【0011】
この技術においては、MIM素子の第1の導電膜を、タンタルに変えてタンタルとタングステンなどの特定の元素との合金膜にしたため、前述した特性(2)および(3)、すなわちMIM素子の電流−電圧特性の経時変化および対称性の点が、前述の文献(a)の技術に比べて改善されたことから、残像を認識できないようなレベルにでき、さらに、広い温度範囲でコントラストを高く保つことができるようになった。しかしながら、この技術でも高温時のコントラスト特性が要求されるような用途においては、マージンが不充分であるという問題があった。
【0012】
(c)Jpn.J.Appl.Phys,31,4582(1992)においては、MIM素子の絶縁膜を形成するための陽極酸化の化成液としてリン酸やホウ酸アンモニウムの希薄水溶液を用いることが開示されている。
【0013】
この技術においては、前述した特性の(2)および(3)、つまりMIM素子の電流−電圧特性の経時変化および対称性の点が、前述の文献(a)に比べて改良され、残像が認識できないようなレベルにでき、さらに広い温度範囲でコントラストを高く保つことができるようになった。しかしながら、この技術でも、素子の信頼性が低く破壊されやすく、表示ムラが発生しやすい、という問題があった。
【0014】
(d)さらに、特開平2−93433号公報においては、MIM素子の第1の導電膜としてタンタルとシリコンの合金膜を用いた構造が開示されている。
【0015】
この技術においては、前述の文献(a)の技術に比較して、電流−電圧特性の急峻性を改善することができ、広い温度範囲において充分なマージンをもってコントラストを高く保つことができるようになった。しかしながら、この技術でも、素子の信頼性が低く破壊されやすく、表示ムラが発生しやすい、という問題点があった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前述したMIM素子に要求される特性(1)〜(5)に優れ、特に、素子容量が充分に小さく、電流−電圧特性の急峻性が充分に大きく、かつ電流−電圧特性の経時変化が小さく信頼性の高い2端子型非線形素子、およびこれを用いた、コントラストが高い高画質の液晶表示パネルを提供することにある。
【0017】
さらに、本発明の他の目的は、上述した優れた特性を有する2端子型非線形素子の製造のための非水系化成液およびこの化成液を用いた製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる2端子型非線形素子(以下、「MIM型非線形素子」という)の製造のための非水系化成液は、有機溶媒、溶質および水を含み、前記溶質は少なくとも芳香族カルボン酸塩を含み、かつ、前記水は3〜10重量%の割合で含まれることを特徴とする。なお、本発明においては、MIM型非線形素子を構成する第2の導電膜は金属に限定されず、ITOなどの導電膜を含む。
【0019】
この発明によれば、陽極酸化時に溶質または溶媒、あるいはその両者を構成する物質、特に炭素原子が酸化膜内に取り込まれることにより、酸化膜(絶縁膜)の比誘電率を低下させてその値を適正な範囲とすることができる。その結果、得られるMIM型非線形素子は、容量が充分に小さく、かつ、電流−電圧特性の急峻性が大きいものとなる。
【0020】
前記芳香族カルボン酸塩は、サリチル酸塩およびフタル酸塩の少なくとも一方であることが望ましく、特にサリチル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、γ−レゾルシン酸アンモニウム、フタル酸水素アンモニウムおよびフタル酸ジアンモニウムからなる群から選ばれる1種以上であることが望ましい。
【0021】
前記非水系化成液は、そのpHは、好ましくは4〜12、より好ましくは4.5〜10、特に好ましくは5〜8である。
【0022】
また、前記有機溶媒は、エチレングリコールであることが望ましい。
【0023】
本発明のMIM型非線形素子は、(a)基板上に、タンタルあるいはタンタル合金からなる第1の導電膜を形成する工程、(b)前記第1の導電膜を、本発明に係る非水系化成液中で陽極酸化して、該第1の導電膜の表面に絶縁膜を形成する工程、(c)前記絶縁膜の表面に第2の導電膜を形成する工程、を含むプロセスによって製造することができる。
【0024】
本発明の非水系化成液および製造方法を用いて得られた、本発明のMIM型非線形素子は、前述したように、容量が小さいこと、電流−電圧特性の急峻性が大きいこと、および絶縁膜の膜特性が安定で電流−電圧特性の経時変化が小さいこと、などの優れた特性を有する。
【0025】
さらに、本発明の液晶表示パネルは、上述したMIM型非線形素子を備えたことを特徴とし、より具体的には、透明な基板、この基板上に所定のパターンで配設された一方の信号線、この信号線に所定のピッチで接続された本発明のMIM型非線形素子、およびこのMIM型非線形素子に接続された画素電極を備えた第1の基板と、前記画素電極に対向する位置に他方の信号線を備えた第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に封入された液晶層と、含むことを特徴とする。この液晶表示パネルによれば、コントラストが高く、残像などが発生しにくく、したがって高品質の画像表示が可能であり、幅広い用途に適用することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(MIM型非線形素子および液晶表示パネル)
図1は、本発明のMIM型非線形素子を用いた液晶駆動電極の1単位を模式的に示す平面図であり、図2は、図1におけるA−A線に沿った部分を模式的に示す断面図である。
【0028】
MIM型非線形素子20は、絶縁性ならびに透明性を有する基板、たとえばガラス,プラスチックなどからなる基板(第1の基板)30と、この基板30の表面に形成された絶縁膜31と、タンタルあるいはタンタル合金からなる第1の導電膜22と、この第1の導電膜22の表面に陽極酸化によって形成された絶縁膜24と、この絶縁膜24の表面に形成された第2の導電膜26とから構成されている。そして、前記MIM型非線形素子20の第1の導電膜22は信号線(走査線またはデータ線)12に接続され、第2の導電膜26は画素電極34に接続されている。
【0029】
前記絶縁膜31は、たとえば酸化タンタルから構成されている。前記絶縁膜31は、第2の導電膜26の堆積後に行われる熱処理よって第1の導電膜22の剥離が生じないこと、および基板30からの第1の導電膜22への不純物の拡散を防止することを目的として形成されているので、これらのことが問題にならない場合は必ずしも必要でない。
【0030】
前記第1の導電膜22は、タンタル単体、あるいはタンタルを主成分とし、これに周期律表で6,7および8族に属する元素を含ませた合金膜としてもよい。合金に添加される元素しては、たとえばタングステン,モリブデン,レニウム,イットリウム,ランタン,ディスプロリウムなどを好ましく例示することができる。特に、前記元素としてはタングステンが好ましく、その含有割合はたとえば0.2〜6原子%であることが好ましい。
【0031】
前記絶縁膜24は、後に詳述するように、特定の非水系化成液中で陽極酸化することによって形成される。そして、この絶縁膜24は、前記第1の導電膜22に含まれる添加元素を含むと共に、化成液中の溶媒および溶質の少なくとも一方を構成する物質、好ましくは炭素原子を含んで構成される。
【0032】
前記第2の導電膜26は特に限定されないが、通常クロムによって構成される。また、前記画素電極34は、ITO膜等の透明導電膜から構成される。
【0033】
また、図3に示すように、第2の導電膜および画素電極は、同一の透明導電膜36によって構成してもよい。このように第2の導電膜および画素電極を単一の膜で形成することにより、膜形成に要する製造工程を少なくすることができる。
【0034】
次に、前記MIM型非線形素子20を用いた液晶表示パネルの一例について説明する。
【0035】
図4は、前記MIM型非線形素子20を用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示パネルの等価回路の一例を示す。この液晶表示パネル10は、走査信号駆動回路100およびデータ信号駆動回路110を含む。液晶表示パネル10には、信号線、すなわち複数の走査線12および複数のデータ線14が設けられ、前記走査線12は前記走査信号駆動回路100により、前記データ線14は前記データ信号駆動回路110により駆動される。そして、各画素領域16において、走査線12と信号線14との間にMIM型非線形素子20と液晶表示要素(液晶層)40とが直列に接続されている。なお、図4では、MIM型非線形素子20が走査線12側に接続され、液晶表示要素40がデータ線14側に接続されているが、これとは逆にMIM型非線形素子20をデータ線14側に、液晶表示要素40を走査線12側に設ける構成としてもよい。
【0036】
図5は、本実施の形態に係る液晶表示パネルの構造の一例を模式的に示す斜視図である。この液晶表示パネル10は、2枚の基板、すなわち第1の基板30と第2の基板32とが対向して設けられ、これらの基板30,32間に液晶が封入されている。前記第1の基板30上には、前述したように、絶縁膜31が形成されている。この絶縁膜31の表面には、信号線(走査線)12が複数設けられている。そして、第2の基板32には、前記走査線12に交差するようにデータ線14が短冊状に複数形成されている。さらに、画素電極34はMIM素子20を介して走査線12に接続されている。
【0037】
そして、走査線12と信号線14とに印加された信号に基づいて、液晶表示要素40を表示状態,非表示状態またはその中間状態に切り替えて表示動作を制御する。表示動作の制御方法については、一般的に用いられる方法を適用できる。
【0038】
(化成液)
次に、本発明の化成液について詳細に説明する。
【0039】
本発明の化成液は、有機溶媒、溶質および水を含んでなる非水系化成液である。
【0040】
そして、前記溶質は少なくとも芳香族カルボン酸塩を含み、かつ、前記水は3〜10重量%、好ましくは5〜7重量%の割合で含まれる。
【0041】
前記芳香族カルボン酸塩は、サリチル酸塩およびフタル酸塩の少なくとも一方であることが望ましく、特にサリチル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、γ−レゾルシン酸アンモニウム、フタル酸水素アンモニウムおよびフタル酸ジアンモニウムであることが望ましく、これらのうちの2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記非水系化成液は、pHメータで測定したpHが、好ましくは4〜12、より好ましくはpHが4.5〜10、特に好ましくは5〜8である。非水系化成液のpHが12より大きいと酸化膜が剥がれやすくなり、pHが4より小さいと電解液の電気電導率が小さくなりすぎて均一な酸化膜の作成が困難になりやすい。
【0043】
また、前記有機溶媒は、エチレングリコールであることが望ましい。この有機溶媒には、ヘキサン、トルエン、シリコ−ンオイル等の非極性溶媒を添加することもできる。
【0044】
溶質の濃度は、化成液の電気電導率、陽極酸化膜中への溶質の添加量、pHなどの点を考慮して規定される。たとえば、芳香族カルボン酸塩の濃度は、好ましくは1〜30重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0045】
この発明によれば、陽極酸化時に溶質または溶媒、あるいはその両者を構成する物質、特に炭素原子が酸化膜内に取り込まれることにより、酸化膜(絶縁膜)の比誘電率を低下させてその値を適正な範囲とすることができる。その結果、得られるMIM型非線形素子は、容量が充分に小さく、かつ、電流−電圧特性の急峻性が大きいものとなる。
【0046】
(MIM型非線形素子の製造プロセス)
次に、たとえば図2に示すMIM型非線形素子20の製造方法について説明する。本発明の製造方法においては、第1の導電膜を特定の非水系化成液中おいて陽極酸化することを特徴としている。
【0047】
MIM型非線形素子20は、たとえば以下のプロセスによって製造される。
【0048】
(a)まず、基板30上に酸化タンタルからなる絶縁膜31が形成される。絶縁膜31は、例えばスパッタリング法で堆積したタンタル膜を熱酸化する方法、あるいは酸化タンタルからなるターゲットを用いたスパッタリングやコスパッタリング法により形成することができる。この絶縁膜31は、第1の導電膜22の密着性を向上させ、さらに基板30からの不純物の拡散を防止するために設けられるものであるので、たとえば50〜200nm程度の膜厚で形成される。
【0049】
次いで、絶縁膜31上に、タンタルあるいはタンタル合金からなる第1の導電膜22が形成される。第1の導電膜の膜厚は、MIM型非線形素子の用途によって好適な値が選択され、通常150〜500nm程度とされる。第1の導電膜はスパッタリング法や電子ビーム蒸着法で形成することができる。タンタル合金からなる第1の導電膜を形成する方法としては、混合ターゲットを用いたスパッタリング法、コスパッタリング法あるいは電子ビーム蒸着法などを用いることができる。タンタル合金に含まれる元素としては、周期律表で6,7および8族の元素、好ましくはタングステン、モリブデン、レニウムなどの前述した元素を選択することができる。
【0050】
前記第1の導電膜22は、一般に用いられているフォトリソグラフィおよびエッチング技術によってパターニングされる。そして、第1の導電膜22の形成工程と同じ工程で信号線(走査線またはデータ線)12が形成される。
【0051】
(b)次いで、陽極酸化法を用いて前記第1の導電膜22の表面を酸化させて、絶縁膜24を形成する。このとき、信号線12の表面も同時に酸化され絶縁膜が形成される。前記絶縁膜24は、その用途によって好ましい膜厚が選択され、たとえば30〜70nm程度とされる。
【0052】
陽極酸化は、化成液が安定に液体として存在する温度範囲で行われ、この温度範囲は一般的に−20〜150℃であり、好ましくは室温〜100℃である。また、陽極酸化時の電流および電圧の制御方法は特に限定されないが、通常、予め定められた化成電圧(Vf)まで定電流で電気分解を行い、化成電圧Vfに達した後に、その電圧に一定時間保持される。この際の電流密度は、好ましくは0.001〜10mA/cm2、より好ましくは0.01〜1mA/cm2である。また、化成電圧Vfは液晶表示パネルを作製する際の駆動回路の設計にもよるが、通常、5〜100Vであり、好ましくは10〜40Vである。
【0053】
陽極酸化に用いられる化成液は、前述したように、特定の溶質および水を含む非水系化成液であって、この化成液によって基板面内で均質で経時変化の小さい絶縁膜を得ることができる。そして、陽極酸化時に、化成液中の溶質および溶媒の少なくとも一方が酸化膜の中に取り込まれ、溶質あるいは溶媒を構成する元素、好ましくは炭素が酸化膜内に取り込まれることにより、絶縁膜の比誘電率を好適な範囲に設定することができる。
【0054】
(c)次いで、クロム,アルミニウム,チタン,モリブデンなどの金属膜を例えばスパッタリング法によって堆積させることにより、第2の導電膜26が形成される。第2の導電膜は、たとえば膜厚50〜300nmで形成され、その後通常使用されているフォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いてパターニングされる。次いで、ITO膜をスパッタリング法などによって膜厚30〜200nmで堆積させ、通常用いられるフォトリソグラフィおよびエッチング技術を用いて所定のパターンの画素電極34が形成される。
【0055】
なお、図3に示すMIM型非線形素子20においては、第2の導電膜と画素電極とが同一のITO膜等の透明導電膜36によって形成される。この場合、第2の導電膜と画素電極とを同一工程において形成できるため、製造プロセスをより簡略化することができる。
【0056】
【実施例】
以下に、本発明の具体的な実施例および比較例を挙げて、さらに詳細に説明する。
【0057】
(実施例1)
ガラス基板上にスパッタリング法で膜厚200nmのタンタル膜を堆積し、第1の導電膜を形成した。次いで、10重量%のサリチル酸アンモニウムおよび7重量%の水を含むエチレングリコール溶液を化成液として用い、電流密度0.1mA/cm2で電圧30Vに至るまで定電流電解を行い、その後、約2時間にわたって電圧30Vで定電圧電解を行い、前記タンタル膜の陽極酸化を行った。その結果、厚さ約50nmの酸化タンタル膜が形成された。
【0058】
さらに、窒素雰囲気下において、400℃で熱処理を行い、陽極酸化膜(絶縁膜)を安定化させた後、この絶縁膜上にスパッタリング法によりクロムを膜厚150nmで堆積させて第2の導電膜を形成し、MIM型非線形素子を作製した。
【0059】
上記の方法で作成した4μm角のパターンを有するMIM型非線形素子の静電容量は49.7fFであった。なお、静電容量の測定は、前記4μm角のMIM型非線形素子を1000個並列に接続して、周波数10KHzの交流を印加して行ったものである。また、エリプソメータによって絶縁膜の膜厚を測定したところ43.3nmであった。そして、得られた静電容量および膜厚より絶縁膜の比誘電率を算出したところ24.3であった。
【0060】
また、このMIM型非線形素子の電流−電圧特性を測定し、その平均値をプロットした結果を図6に示した。この曲線の勾配から、急峻性を表す非線形係数(β値)を算出すると5.5であった。
【0061】
さらに、得られたMIM型非線形素子での電流−電圧特性の経時変化を見るために、経時変化の指標であるシフト値を求めると1.4%であった。なお、このシフト値は、1秒毎に極性を変えた矩形波の電圧をMIM型非線形素子に印加したとき、下記式であらわされる値ISで定義されるものである。このとき、前記印加電圧は、電流が液晶表示パネルの1画素当たり1×10-7A流れるように設定される。
【0062】
S={(I100−I0)/I0}×100 (%)
この式において、I0は初期(1秒)の電流値を示し、I100は100秒後の電流値を示す。
【0063】
化成液の含水量、β値、絶縁膜の比誘電率、シフト値および化成液のpHを表1に示した。
【0064】
さらに、上述の方法で作成されたMIM型非線形素子を用いて液晶表示パネルを作製したところ、0〜80℃の温度範囲において100以上のコントラストを得ることができ、かつ残像も認められなかった。
【0065】
(実施例2〜4、比較例1〜3)
実施例1における化成液の変わりに、水の割合を以下に示す値とした化成液を用いた他は、実施例1と同様にしてMIM型非線形素子を作製した。すなわち、実施例2においては、水の割合を5重量%、実施例3においては、水の割合を3重量%、実施例4においては、水の割合を10重量%、比較例1においては、水の割合を1重量%、および比較例2においては、水の割合を100重量%、比較例3においては、水の割合を0.1重量%とした。
【0066】
さらに、得られたMIM型非線形素子について、実施例1と同様に、β値、絶縁膜の比誘電率、シフト値を求めた。その結果ならびに化成液の含水率およびpHを表1に示した。
【0067】
(実施例5)
実施例1における化成液の変わりに、10重量%のフタル酸水素アンモニウムおよび5重量%の水を含むエチレングリコール溶液からなる化成液を用いた他は、実施例1と同様にしてMIM型非線形素子を作製した。
【0068】
さらに、得られたMIM型非線形素子について、実施例1と同様に、β値、絶縁膜の比誘電率およびシフト値を求めた。その結果ならびに化成液の含水率およびpHを表1に示した。
【0069】
【表1】
Figure 0003881737
表1から明らかなように、本発明の実施例によれば、いずれも、絶縁膜の比誘電率は小さく、電流−電圧特性の急峻性を示すβ値が充分に大きく、さらに電流−電圧特性の経時変化を示すシフト値が充分に小さいことが確認された。これに対し、比較例1においては、化成液の含水量が少なすぎるため、比誘電率は小さくなるものの、シフト値が大きく電流−電圧特性の経時変化が大きくなることがわかる。比較例2においては、化成液の含水量が多すぎるため、シフト値は小さくなるものの、比誘電率が大きくなることがわかる。また、比較例3においては、含水量が少なすぎるため、β値は大きくなるものの、シフト値が測定できないほど大きくなることがわかる。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のMIM型非線形素子を適用した液晶表示パネルの要部を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明のMIM型非線形素子の他の構成例を示す断面図である。
【図4】本発明の液晶表示パネルの等価回路を示す図である。
【図5】本発明の液晶表示パネルを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例に係るMIM型非線形素子の印加電圧と電流値との関係を示す図である。
【符号の説明】
10 液晶表示パネル
12 走査線
14 データ線
16 画素領域
20 MIM型非線形素子
22 第1の導電膜
24 絶縁膜
26 第2の導電膜
30 第1の基板
32 第2の基板
34 画素電極
40 液晶表示要素
100 走査信号駆動回路
110 データ信号駆動回路

Claims (5)

  1. (a)基板上に、タンタルあるいはタンタル合金からなる第1の導電膜を形成する工程、
    (b)前記第1の導電膜を、有機溶媒としてのエチレングリコール、溶質および水を含み、前記溶質は芳香族カルボン酸塩を含み、かつ、前記水は3〜10重量%の割合で含まれる非水系化成液中で陽極酸化して、前記第1の導電膜の表面に絶縁膜を形成する工程、
    (c)前記絶縁膜の表面に第2の導電膜を形成する工程、
    を含むことを特徴とする2端子型非線形素子の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記芳香族カルボン酸塩は、サリチル酸塩およびフタル酸塩の少なくとも一方であることを特徴とする2端子型非線形素子の製造方法。
  3. 請求項2において、
    前記芳香族カルボン酸塩は、サリチル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、γ−レゾルシン酸アンモニウム、フタル酸水素アンモニウムおよびフタル酸ジアンモニウムからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする2端子型非線形素子の製造方法。
  4. 請求項2において、
    前記芳香族カルボン酸塩は、サリチル酸アンモニウムおよびフタル酸水素アンモニウムからなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする2端子型非線形素子の製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、
    前記非水系化成液は、pHが4〜12であることを特徴とする2端子型非線形素子の製造方法。
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