JP3881399B2 - 固定式原子炉内計装装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子炉内に設置した中性子検出器の出力に基づいて原子炉出力を計測する原子炉内出力計測装置に係り、特に検出器を校正するのにガンマサーモメータ等の固定式センサの出力を使用する固定式原子炉内計装装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図16は、従来より有る原子炉内出力計測装置の一つである可動式炉内計測装置(TIP:Traversing Incore Probe System)の構成例を示している。
同図は、原子炉圧力容器1が原子炉建屋の原子炉格納容器2内に設置されている状態を示している。TIP検出器3が牽引機構4により駆動可能になっている。索引機構4をペネ5及びバルブ(玉形弁、切断弁、パージ弁)6等を介してTIP駆動機構7から制御することによりTIP検出器3を炉心内へ挿入して上下方向に移動させることができる。TIP駆動機構7は中操(中央操作室)にケーブルを介して接続されており、中操の計算機に対して測定データを伝送したり、中操の計算機から各種の指令を受信する。中操の計算機は、TIP検出器3による原子炉の上下方向の中性子分布の測定データを現場から収集し、収集データを炉心内の中性子分布測定や局部出力領域モニタ(LPRM:Local Power Range Monitoring System )の感度校正に使用している。
【0003】
ところで、上記した可動式炉内計測装置では、TIP検出器3を炉心平面のある位置へ挿入して上下方向に移動させることにより1チャンネルの中性子分布データを取得することができる。原子炉全体をモニタするためには、原子炉圧力容器1の下部においてチャンネルを切換えて他の炉心平面位置について同様の測定動作を繰り返すことになる。即ち、炉心平面について走査する必要がある。
【0004】
しかしながら、上記した可動式炉内計測装置は、TIP検出器をチャンネル切換え及び上下移動するための駆動部分(索引機構4、TIP駆動機構7、索引ケーブル)に関する操作が複雑であり、操作が複雑な分だけ中操のマンマシン・インターフェイスを簡単なものに改善しなければならなかった。
【0005】
また、TIP検出器3を駆動するための装置(索引機構4、バルブ6、TIP駆動機構7等)を現場に設置しなければならないので原子炉建屋内にこれらの装置を収納するためのスペースを確保する必要があった。
【0006】
さらに、TIP検出器出力で原子炉内の中性子束分布を測定するためにはTIP検出器による炉心平面方向の走査が必要であり、原子炉内での実際の測定時間以外にチャンネル切換えによる走査時間に時間を費やしていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の可動式炉内計測装置は、LPRMの感度校正等のために可動式検出器を使用しているので、TIP検出器の操作が複雑、チャンネル切換えによる走査時間が長い、駆動装置用のスペースを原子炉建屋内に確保する必要がある、といった解決すべき課題があった。
【0008】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、操作の簡素化及びスペースファクターの向上を実現すると共に、原子炉建屋内の保守性の向上が図られ、原子炉建屋内の機器の信頼性の向上を図り得る固定式原子炉内計装装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために以下のような手段を講じた。
本発明は、中性子束レベルを検出する検出器と共に原子炉内に固定した複数の固定式センサにより放射線吸収による発熱を測定し、前記固定式センサから出力される測定信号を使用して原子炉内の中性子束分布測定及び前記検出器の感度校正を行う固定式原子炉内計装装置であり、複数の固定式センサから出力された測定信号を選択的に取り込んで所定形式の伝送データに変換する複数のマルチプレクサ処理部と、前記固定式センサの校正のために前記原子炉内に設置した複数のヒータの温度制御を行う複数のヒータ制御部とを原子炉建屋内に設け、前記マルチプレクサ処理部から伝送データを受け取り前記固定式センサの測定信号を監視する信号処理部を前記原子炉建屋外の中操側に設けた構成をしている。
【0010】
本発明の固定式原子炉内計装装置によれば、中性子束レベルを検出する検出器と共に原子炉内に固定した複数の固定式センサにより放射線吸収による発熱を測定し、中性子束分布測定及び検出器の感度校正を行うので、従来システムで必要であったTIP検出器の駆動部分を除去できる。
【0011】
従って、運転員を駆動部分の複雑な操作から解放でき、また原子炉建屋内のスペースファクターを改善でき、保守性の改善も図ることができる。
また、固定式センサからの測定データを収集するだけで良いため、従来システムで行われていたTIP検出器の走査動作が不要となり走査時間を削減できる。
【0012】
さらに、アナログ回路が低減したので部品点数が低減され、信頼性の向上を図ることができる。
また、信号処理部とヒータ制御部とが分離されたことからノイズの低減による信頼性の向上を図ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に実施の形態に係る原子炉内計装装置のシステム構成を示す。
この原子炉内計装装置は、原子炉内に所定間隔で配置している中性子束レベルを検出する検出器に対応して、差動型熱電対で構成される固定式センサのガンマサーモメータを設置し、ガンマサーモメータで原子炉内の中性子束をガンマヒーティングによる電圧信号として測定するように構成している。
【0014】
原子炉平面に対して均等に配置されたLPRMストリングスに中性子束レベルを検出する検出器が上下方向に複数設置され、各LPRMストリングスに複数のガンマサーモメータ10が上下方向に配列して設置されている。例えば1350MWe級のプラントでは、52本のLPRMストリングスがあり、一つのLPRMストリングスについて9個または8個のガンマサーモメータ10が設置されることになる。LPRMストリングスには感度校正時にガンマサーモメータ10の基準となるヒータ11が設置される。1本のヒータ11が1本のストリングスに含まれる複数個のガンマサーモメータ10を制御する構成となっている。
【0015】
複数本のストリングスの中から測定対象とすべきストリングスをマルチピンコネクタ12で選択する。マルチピンコネクタ12で選択されたストリングス中に含まれるガンマサーモメータ10から出力されたガンマヒーティングによる電圧信号が、原子炉格納容器2に設けられた測定用ケーブル・ペネ5−1を通した測定用信号ケーブル20を通って原子炉建屋内に設置したマルチプレクサ処理部13に入力される。
【0016】
ここで、この実施の形態では3台のマルチプレクサ処理部13を装備しているが、1本のストリングスに含まれる全てのガンマサーモメータ10の出力は1台のマルチプレクサ処理部13で処理する。
【0017】
図2はマルチプレクサ処理部13の内部構成を示す図である。
マルチプレクサ処理部13は、10枚のガンマ線信号処理モジュール14と1枚のアナログ信号処理モジュール15とを備えている。ガンマ線信号処理モジュール14は、少なくとも1ストリングスに含まれるガンマサーモメータ数に対応した数の熱電対信号処理回路16を備えている。これら熱電対信号処理回路16の出力信号であるガンマ線測定信号をマルチプレクサ17で切換えることにより、マルチピンコネクタ12で選択したストリングス中の全てのガンマサーモメータ10のガンマ線測定信号を後段のアナログ信号処理モジュール15へ入力する。
【0018】
アナログ信号処理モジュール15は、複数のガンマ線信号処理モジュール14の出力をマルチプレクスするマルチプレクサ18、マルチプレクサ18で選択したガンマ線測定信号をA/D変換してデジタル信号に変換するA/D変換器19、A/D変換器19の出力に対してデジタルフィルタリング処理を施すDSP21、デジタル信号処理が施されたガンマ線測定データを記憶するメモリ22を備えている。DSP21及びメモリ22がシステムバス23を介してメインCPU24に接続されている。メインCPU24は、中操との間で光伝送を行う電気/光変換回路(E/O)25、所定の情報を表示する表示部26、制御プログラムが格納されたメモリ27がシステムバス23を介して接続されている。また、メインCPU24がメモリ27の所定のプログラムを実行することによりセンサ劣化診断機能、ノイズ解析機能を実現している。
【0019】
原子炉建屋内には、マルチプレクサ処理部13と同数のヒータ制御部30が設置されている。ヒータ制御部30は、校正用信号ケーブル31を介して原子炉格納容器に設けられた校正用ケーブル・ペネ5−2に接続されている。測定用信号ケーブル20と校正用信号ケーブル31とでケーブル・ペネを分離して使い分けている。校正用信号ケーブル31はマルチピンコネクタ12で選択されたストリングスに設置されたヒータ11に接続されるものとなる。
【0020】
ヒータ制御部27の内部は、メインCPU32、別置きの電源33から入力される電圧の出力先ストリングス(ヒータ)を切替える切替えスイッチ34、メインCPU32からの指令で出力電圧を制御する電圧制御部35、ノイズ低減のためのフィルタ処理を行うフィルタ部36等から構成されている。1台のヒータ制御部30で複数本のヒータを制御するようにしており、それぞれのヒータ制御部30は独立して動作できるようにしている。また、ヒータ制御部30は同時に複数本のヒータを制御可能に構成されている。
【0021】
マルチプレクサ処理部13に光ケーブル37を介して接続される中操に信号処理部40が設置されている。信号処理部40は、メインCPU41にシステムバス42を介してメモリ43、光/電気変換回路(O/E)44、表示部45及び外部インターフェース46が接続されている。外部インターフェース46を介してプロセス計算機47が接続される。
【0022】
なお、マルチプレクサ処理部13から出力された炉心内中性子束分布データは、例えばFDDI(Fiber Distributed Data Interface)等の光伝送で中操内の信号処理部40へ送られる。
【0023】
図3に信号処理部40の機能ブロックを示している。
信号処理部40は、システム運用監視及び警報出力のための処理を行う信号処理部48、ヒータ制御部30に指令を与えてヒータの制御を行うヒータ制御部49、保守ツールを制御する保守ツール制御部50を備える。これらの機能はメインCPU41がプログラムを実行することにより実現される。また、信号処理部40と同一の盤内に保守ツールを収納している。
【0024】
図4、図5はこの実施の形態のシステム構成を概念的に示している。
図4に示すように、原子炉格納容器の内部と外部とをつなぐケーブル・ペネが測定用信号ケーブル20を通すための測定用ケーブルペネ5−1と、校正用信号ケーブル31を通すための校正用ケーブルペネ5−2とに分離されている。またケーブルペネは他の測定系とも分離させている。このようにケーブルペネを測定系別及び測定用と校正用とで分離することにより耐ノイズ性を向上することができる。
【0025】
図5は従来のTIPシステムと本実施の形態に係る固定式炉内計装装置との機器配置を比較して示す図である。同図に示すように、従来システムは中操にTIP制御盤が配置され現場の原子炉建屋内にその駆動装置部分が配置されるのに対して、実施の形態に係る固定式炉内計装装置は中操に信号処理部40を備えた中央制御盤が設置され、現場の原子炉建屋内にマルチプレクサ処理部13を備えた現場制御盤とヒータ制御部30等を備えたヒータ制御盤が配置されている。すなわち、現場の原子炉建屋内に従来システムで配置されていた駆動装置部分に相当する機器が排除されている。また、マルチプレクサ処理部13とヒータ制御部30とが物理的に分離されている。
【0026】
以上のように構成された実施の形態におけるデータの処理内容について以下に説明する。
原子炉内に固定配置された各ガンマサーモメータ10は、原子炉内の中性子束をガンマヒーティングによる電圧信号として測定している。マルチプレクサ処理部13は、複数本のストリングスの中から所定の順番でストリングスを選択するようにマルチピンコネクタ12を制御する。選択された1本のストリングスに含まれる全てのガンマサーモメータ10の電圧信号はそれぞれの測定用信号ケーブル20を通り、測定用ケーブルペネ5−1を介して一つのガンマ信号処理モジュール14に入力される。
【0027】
図6に示すように、ガンマ信号処理モジュール14はコネクタ50を介して複数本の測定用ケーブル20の端部に接続される信号処理基板51を備えている。1枚のガンマ信号処理モジュール14に1本または複数本のストリングスが割り振られ、1枚の信号処理基板51には1本のストリングスに含まれる全てのガンマサーモメータ10が接続される。信号処理基板51は1ストリングスに含まれる全ガンマサーモメータ10の冷接点(Cold)をコモンとしている。1本のストリングスに含まれるガンマサーモメータ10は同一のヒータ11で制御されることから冷接点(Cold)をコモンとすることができる。冷接点をコモンにすることにより基板を簡素化できる利点がある。
【0028】
ガンマ信号処理モジュール14に入力したガンマサーモメータ10の電圧信号はマルチプレクサ17で順に選択されて全ガンマサーモメータ10の電圧信号がアナログ信号処理部15へ入力される。アナログ信号処理部15は、他のガンマ信号処理モジュール14から入力するガンマサーモメータ10の電圧信号と合わせてマルチプレクサ18で順に選択して取り込み、デジタル信号に変換してからDSP21へ供給してデジタルフィルタ処理を行う。DSP21でのデジタルフィルタ処理により測定データに外部機器から混入するノイズを除去することになる。DSP21でデジタルフィルタ処理された測定データはメモリ22に格納される。
【0029】
ここで、マルチプレクサ処理部13のノイズ解析機能、センサ劣化診断機能について説明する。
図7は、マルチプレクサ処理部13におけるノイズ解析のためのフローチャートを示している。マルチプレクサ処理部13のメインCPU24はノイズ解析処理の実行開始のための条件が成立すると、メモリ22から測定データを読出し、ノイズ検知のための所定のデータ処理を測定データに加えて測定データに混入しているノイズを検出する。
【0030】
メインCPU24は、このノイズ検出処理でノイズ発生を検知したならば、メモリ27に予め保存しているフィルタリング周波数データを読出して表示部26に表示させる。予め、メモリ27に各種のノイズ成分に対応した複数のフィルタ周波数データを格納している。操作員は、表示部26に表示されたフィルタ周波数データが現在発生しているノイズを除去するのに適したフィルタ周波数であるか否か判断する。このとき、発生したノイズの種類を解析し、その解析結果を表示部26に同時に表示させることにより、現在発生しているノイズを除去するのに適したフィルタ周波数を容易に選択することがでる。フィルタ周波数データは操作員からの次候補要求によって順次周波数の異なるフィルタ周波数データが表示されることになる。
【0031】
メインCPU24は、操作員が表示部26の表示画面上で選択したフィルタ周波数をDSP21に設定する。これにより現在発生しているノイズを測定データから除去することができるようになる。
【0032】
図8は、マルチプレクサ処理部13におけるセンサ劣化診断のためのフローチャートを示している。マルチプレクサ処理部13のメインCPU24は、センサ劣化診断を実行するためのトリガとなる一定の条件が成立すると、全ストリングスの中から対称位置に配置された一対または複数対のストリングスを指定して、それらストリングスに収納されたセンサの感度データの取り込みを実施する。対称ストリングスの同一高さ位置に設置されたガンマサーモメータ10の測定値は一般的に互いに等しくなるので、これらの測定値を感度データとして使用する。
【0033】
対称ストリングスに含まれたガンマサーモメータ10の感度データがメモリ22に記憶されたならば、その中から上下方向の同一位置に配置されたそれぞれのガンマサーモメータ10の測定値を感度データとして読出して表示部26に表示させる。
【0034】
操作員は、対称ストリングスの同一高さ位置に設置されたガンマサーモメータ10の測定値は互いに等しいであろうという前提の下で比較して、センサ劣化を判断する。例えば、3個のガンマサーモメータ10を比較したとすれば、その中の一つだけ他の2つから所定値以上離れていれば、その一つのガンマサーモメータ10の感度が劣化していると判断できる。ここでは、定格運転中のプラント特性に応じた特定の値(例えば2%)以上の突変に対するセンサ機能の劣化具合を診断するものとする。なお、ノイズの影響による誤診断を防止するため同様の処理を複数回繰り返す。
【0035】
メインCPU24は、マルチプレクサ処理部13のメモリ22に記憶した測定データを周期的に読出してガンマサーモメータ10によって測定した中性子束分布データとして信号処理部40へ伝送する。このとき、メインCPU24は伝送信号に故障診断機能を持たせるために故障診断情報を該伝送信号に付加して伝送するようにしている。E/O変換回路25は故障診断情報が付加された伝送信号を光パルスに変換して光ケーブル37に送出する。
【0036】
原子炉内に固定配置したガンマサーモメータ10に対する感度校正を実施する場合は、ヒータ制御部30からガンマサーモメータ10の基準となるヒータ11にヒータ電流が流される。
【0037】
ヒータ制御部30は、校正対象となるストリングスに対応した校正用ケーブル31を切替えスイッチ34で選択する。同時にマルチピンコネクタ12で校正対象のストリングに切換えを行う。切替えスイッチ34で選択されたストリングスに対応するチャンネルの校正用ケーブル31に電源33から電源電圧が供給され、その校正用ケーブル31を介して接続されたヒータ11に印加電圧に応じた大きさのヒータ電流が流れる。
【0038】
ここで、感度校正を複数の校正点で行う場合は、図9に示すように段階的に電流値(校正点)の異なる電流がヒータ11に流れるようにヒータ制御部30からヒータ11を制御する。電源制御部35が電源33から供給される電源電圧を調整することによりヒータ11に流れる電流値を段階的に変化させている。
【0039】
1つのストリングスについて(1チャンネル)、ヒータ11を使用した校正動作が終了したら、切替えスイッチ34によって校正対象を他のチャンネルとなるストリングスに対応した校正用ケーブル31に接続切換えする。
【0040】
図10はヒータ電流制御及びチャンネル切換え処理に関するフローチャートを示している。
ヒータ制御部30のメインCPU32は、チャンネルを切り換えると電源制御部35に指示を与えて、図9に示す如く階段状のヒータ電流が流れるようにヒータ11の電流制御を実施する。最後の校正点での校正動作が終了したら、当該ヒータ11に対する印加電圧をヒータ電流が0(A)になるように印加電圧値を0Vまで戻す。そして印加電圧値=0Vの状態でチャンネル切換えを実施する。従って、最後の校正点が大きな電流(例えば2.8A)であれば、大電流が流れているときには切換えは行われない。チャンネル切換え時のスイッチングによるノイズ発生を防止できる。
【0041】
しかも、実施の形態では、ヒータ制御部30の校正信号出力部に設けたフィルタ部36においてもノイズ低減のためのフィルタ処理を実施している。上記したチャンネル切換えポイントの制御によってスイッチ切換えの際のノイズは低減することができるが、校正信号出力部のフィルタ部36においてフィルタリング処理することにより上記処理では除去しきれないノイズ成分までも確実に除去することができるものとなる。また、チャンネル切換えポイントの制御によるノイズ低減処理を行わない場合には、フィルタ部36にスイッチ切換えの際に発生するノイズ成分に対応したフィルタ係数を設定しておくことにより、同様なノイズ低減機能を実現できる。
【0042】
ヒータ11に段階的にレベルの異なる電流を流して感度校正を行うことは上記した通りであるが、実際のヒータ温度が校正点として想定した温度に到達した後にガンマサーモメータの出力を収集する必要がある。
【0043】
この実施の形態では、図11に示すフローチャートに基づいてヒータの電流制御及びデータ収集を行う。図9に示す例では、あるチャンネルでの最初の校正点が1.0Aであり、最初の校正点(1.0A)に対応した電圧を印加してから時間T01経過後にヒータ電流が最初の校正点(1.0A)に到達している。ヒータ11に校正点(1.0A)の電流が流れてからヒータ温度が現実に校正電流に対応した目標温度になるまでの時間はヒータ11の温度時定数に依存している。従って、ヒータ電流が最初の校正点に達したらヒータ11の温度時定数を考慮した一定時間が経過してからガンマ測定信号のデータ収集を開始する。データ収集自体はマルチプレクサ処理部13で行われるので、所定の手段でマルチプレクサ処理部13に温度時定数を考慮したデータ収集開始タイミングを知らせることになる。例えば、温度時定数を考慮した一定時間が経過した時点でヒータ制御部30からマルチプレクサ処理部13へデータ収集開始タイミング信号を送ることにより知らせる。
【0044】
ヒータ制御部30は、校正点を切換える度に上記同様にして当該校正点でのデータ収集開始タイミングをマルチプレクサ処理部13へ通知して、マルチプレクサ処理部13にヒータ11の温度時定数を考慮したデータ収集タイミングを与える。
【0045】
データ収集の開始タイミングは時間条件だけで決定するのではなく、ヒータ電流の安定性も条件に加えることができる。又は、ヒータ電流の安定性を監視することにより、ヒータ電流の安定度に基づいてデータ収集の開始タイミングを発生することができる。
【0046】
図12に示すフローチャートはヒータ電流が安定してからデータ収集を行うようにした例である。このフローチャートによれば、ヒータ制御部30で検出したヒータ電流値を時間微分し、その微分値に基づいてヒータ電流の安定性を判断する。ヒータ電流が安定していないときは傾きが大きくなるので微分値が大きくなる。そこで、微分値と所定値kとを比較し、微分値≦kの条件が成立していればヒータ電流が、図9のフラットな部分(各校正点レベル)に安定したと判断してデータ収集を開始させる。
【0047】
ヒータ電流が校正点で安定したならば、当該チャンネルのヒータ11に対応した各ガンマサーモメータ10から校正点でのγ線測定信号(校正結果)を収集する。この校正結果は感度校正データの基準となるデータであるので、種々の要因でガンマサーモメータ10の感度を正確に示していない校正結果が含まれていれば正確な感度校正ができないので取り直しする必要がある。
【0048】
実施の形態では、図13に示すフローチャートに従って信頼性の低い校正結果を除外してデータの取り直しを実行する。すなわち、現在選択しているチャンネルについて各ガンマサーモメータ10から各校正点でのγ線測定信号(校正結果)を収集したら、図14に示すように校正結果を表示出力する。例えば、マルチプレクサ処理部13の表示部26に接続された別置きの表示器に判断基準のガイドと共に表示する。上限設定値レベルと下限設定値レベルとで挟まれる範囲内に校正結果が入っていなければデータの取り直しを行うものとする。校正結果を採用するか否かの判断は、ガイド(上限設定値レベルと下限設定値レベル)を参照して人間系で行うものとする。表示器に表示した校正結果を確認して採用となれば、チャンネルを変えて校正対象ストリングスを切り換える。
【0049】
また、ヒータ制御部40では、校正時にマルチプレクサ処理部13からガンマサーモメータ10の感度校正データを取り込んでヒータの劣化診断に使用する。過去の複数回に渡って実施された感度校正における感度校正データを記憶しておき、又は同様のデータを外部記憶装置から取り出してきて、メインCPU32が、それらの時系列データに基づいて1本のストリングスに収納された複数個のガンマサーモメータ10の信号変化を調べて、ヒータ11の健全性を検査する。ガンマサーモメータ10の信号変化からヒータ11の劣化具合を判断することができる。
【0050】
一方、中操の信号処理部40では、光ケーブル37を通って送られてくる光信号をO/E変換回路44で光/電気変換して電気信号に変換しシステムバス42上に出す。信号処理部40のメインCPU41は、システムバス42を制御することにより受信データ(中性子束分布測定データ又は感度校正データ)をメモリ43に保存すると共に、所定のデータに関しては外部インターフェース46を介してプロセス計算機47へ伝送する。
【0051】
中操の信号処理部40では、マルチプレクサ処理部13から受信した中性子束分布測定データ又は感度校正データを使用して種々の処理を実行している。
信号処理部40のメインCPU41は、マルチプレクサ処理部13から伝送信号を受け取ると、該伝送信号に付加されている故障診断情報を取り出してマルチプレクサ処理部13の故障診断を実施する。伝送信号に正常に故障診断情報が設定されていればマルチプレクサ処理部13が正常であると判断し、伝送信号に正常な故障診断情報が設定されていなければマルチプレクサ処理部13に異常が生じていると判断する。マルチプレクサ処理部13に異常が生じている場合は、その異常部を待機冗長系に切り換える。なお、待機冗長系はマルチプレクサ処理部13に対して光ケーブル37を介してスターカップラ等の光分岐器により接続されている。
【0052】
メモリ43にはガンマサーモメータ10の測定値が格納される。メインCPU41は、図15に示すフローチャートに基づいてシステムの運用の可否を運転員に知らせる処理を実行する。すなわち、メモリ43からガンマサーモメータ10のガンマ線測定値を読出してガンマサーモメータ10のガンマ出力値が安定しているかどうか判断する。ガンマ出力値が安定していればシステムが運用可能な状態になっていると判断して「システム運用可能」である旨の情報を運転員にアナウンスする。また、ガンマ出力値が安定していなければ、システムが運用できないと判断して「システム運用不可」である旨の情報を運転員にアナウンスする。この結果、運転員はシステムの運用可否情報を取得することができ、システムが不安定な状態で測定を行うようなミスを防止できる。
【0053】
また、信号処理部40において、メモリ43に記憶されたガンマサーモメータ10の測定データからガンマサーモメータ10及びマルチプレクサ処理部13の故障診断を実施して故障した部の切り離しを行う。例えば、マルチプレクサ処理部13に接続されているj本の全ガンマサーモメータ10のうち異常を示しているガンマサーモメータがk本に達したならば、そのマルチプレクサ処理部13を切り離す。又は、マルチプレクサ処理部13に接続されている全10枚のガンマ線信号処理モジュール14のうちn枚が故障していることを検知した場合にはそのマルチプレクサ処理部13を切り離す。
【0054】
以上のように構成された実施の形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)炉心内の中性子束の測定に固定式のガンマサーモメータ10を使用したことにより、可動検出器を使用している従来型システムで必要であった駆動部分を原子炉建屋内から除去することができるので、原子炉建屋内の保守性を改善でき、原子炉建屋内のスペースファクターを向上でき、さらに原子炉建屋内に設置される機器の信頼性を向上できる。
(2)大量かつ高速にデータ伝送を行う必要があることから伝送にFDDI等の光伝送を適用し、かつ光信号の分岐にスターカップラ等の光分岐器を使用したことにより、ノイズレスのケーブル接続を実現できる。また、マルチプレクサ処理部から信号処理部への信号伝送に故障診断機能を持たせることで、待機冗長系を適切に適用することができ、これにより冗長系の数を低減し、システムの信頼性と耐ノイズ性が向上する。
(3)原子炉建屋内にマルチプレクサ処理部13を設置し、マルチプレクサ処理部13に持たせたノイズ解析機能によってノイズ発生検知時にメモリに記憶しておいたフィルタ周波数データをフィルタの周波数の決定に使用するようにしたのでシステムの信頼性を向上できる。また、一つの炉内ストリングスに含まれるガンマサーモメータから発するガンマヒーティングによる電圧信号を任意の1台のマルチプレクサ処理部13で処理することにより、原子炉と原子炉建屋内の部との間のケーブルの分岐数を削減することができ、ケーブル量を削減できる。
(4)原子炉建屋内にヒータ制御部30を設置し、ヒータ制御部30にチャンネル切換えポイントの0電圧制御機能、データ収集開始時期の検知機能、校正結果の確認機能を持たせたことによりシステムの信頼性を向上することができる。
(5)ガンマヒーティングによる電圧信号をマルチプレクサ処理部でデジタル的に処理し、その処理データを光アイソレータを通してデータ伝送するようにしたので、配線の簡略化が図られ、保守点検の容易化を図ることができる。従来システムでは別置であった保守ツールを信号処理部と同一盤内に収納することで保守性の向上が図られている。
(6)原子炉内の中性子束分布に固定式で交換不要なガンマサーモメータを使用しているので、従来システムで可動検出器の走査(差し替え)に要していた走査し時間を削減することができる。
【0055】
なお、以上の説明ではDSP21にノイズカットのためのフィルタリング機能を持たせる場合について説明したが、アナログフィルタで代替することもできる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施可能である。
【0056】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、操作の簡素化及びスペースファクターの向上を実現すると共に、原子炉建屋内の保守性の向上が図られ、原子炉建屋内の機器の信頼性の向上を図り得る固定式原子炉内計装装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る固定式原子炉内計装装置の全体構成図である。
【図2】図1に示す固定式原子炉内計装装置に備えたマルチプレクサ処理部の構成図である。
【図3】図1に示す固定式原子炉内計装装置に備えた信号処理部の機能構成を示す図である。
【図4】図1に示す固定式原子炉内計装装置の概略図である。
【図5】従来システムと実施の形態との盤構成を示す図である。
【図6】図1に示す固定式原子炉内計装装置に備えた信号処理基板とガンマサーモメータの関係を示す図である。
【図7】マルチプレクサ処理部におけるノイズ解析機能を実現するフローチャートである。
【図8】マルチプレクサ処理部におけるセンサ劣化診断機能を実現するフローチャートである。
【図9】階段状のヒータ電流値及びチャンネル切換えポイントを示す図である。
【図10】図1に示す固定式原子炉内計装装置におけるヒータ電流値及びチャンネル切換えのフローチャートである。
【図11】図1に示す固定式原子炉内計装装置におけるヒータ電流制御及びデータ収集開始指示のフローチャートである。
【図12】図1に示す固定式原子炉内計装装置におけるヒータ電流制御及びデータ収集開始指示の他のフローチャートである。
【図13】図1に示す固定式原子炉内計装装置における校正データの更新処理のためのフローチャートである。
【図14】校正データの更新処理時の表示画面の例を示す図である。
【図15】システム運用時におけるガンマ出力の監視処理のフローチャートである。
【図16】従来システムである可動式炉内計装装置の構成図である。
【符号の説明】
1…原子炉圧力容器
2…原子炉格納容器
10…ガンマサーモメータ
11…ヒータ
13…マルチプレクサ処理部
14…ガンマ線信号処理モジュール
15…アナログ信号処理モジュール
20…測定用ケーブル
21…DSP
22…メモリ
30…ヒータ制御部
31…校正用ケーブル
33…電源
40…信号処理部
Claims (16)
- 中性子束レベルを検出する検出器と共に原子炉内に固定した複数の固定式センサにより放射線吸収による発熱を測定し、前記固定式センサから出力される測定信号を使用して原子炉内の中性子束分布測定及び前記検出器の感度校正を行う固定式原子炉内計装装置であり、
複数の固定式センサから出力された測定信号を選択的に取り込んで所定形式の伝送データに変換する複数のマルチプレクサ処理部と、前記固定式センサの校正のために前記原子炉内に設置した複数のヒータの温度制御を行う複数のヒータ制御部とを原子炉建屋内に設け、
前記マルチプレクサ処理部から伝送データを受け取り前記固定式センサの測定信号を監視する信号処理部を前記原子炉建屋外の中操側に設け、
前記固定式センサの測定信号を前記マルチプレクサ処理部へ伝送するケーブルと前記ヒータ制御部から前記原子炉内のヒータに校正信号を送るケーブルとを分離し、前記測定信号のケーブルを通す測定用ケーブルペネと前記校正信号のケーブルを通す校正用ケーブルペネとを原子炉格納容器に別々に設けたことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
複数の前記マルチプレクサ処理部を前記原子炉建屋内に設置した現場制御盤に配置し、
複数の前記ヒータ制御部及びヒータ電源を前記原子炉建屋内に設置したヒータ制御盤に配置し、
前記信号処理部を中操の中央制御盤に配置したことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記マルチプレクサ処理部は、中性子束データを含む伝送信号に故障診断情報を付加して前記信号処理部へ伝送し、
前記信号処理部は、前記マルチプレクサ処理部から受取った伝送信号の故障診断情報をチェックして前記マルチプレクサ処理部の故障診断を行うことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記マルチプレクサ処理部は、固定式センサから選択的に取り込んだ測定信号をデジタル信号に変換した後、デジタルフィルタ処理してノイズ成分を除去することを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記マルチプレクサ処理部は、原子炉内で対称位置に配置されている固定式センサの感度データを対比させることにより当該固定式センサの劣化診断作業を支援することを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記固定式センサに熱電対を使用し各熱電対を前記検出器が収納されたストリングス内に固定し、
前記熱電対の検出信号を処理する複数の信号処理基板を前記マルチプレクサ処理部に設け、前記熱電対の検出信号をストリングス毎に同じ信号処理基板に振り分け、各信号処理基板において熱電対の冷接点をコモンとしたことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記固定式センサを前記検出器が収納されたストリングス内に固定し、1つのストリングスに含まれる全ての固定式センサを、同一のマルチプレクサ処理部で処理することを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記ヒータ制御部は、前記ヒータの印加電圧を0Vまで戻した後にヒータ制御チャンネルを切替えることを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記ヒータ制御部がヒータ制御チャンネルを切替えてから前記ヒータの温度時定数に基づいて定めた所定時間経過後に前記固定式センサの測定信号を取り込むことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記ヒータ制御部がヒータ制御チャンネルを切替えたならば制御対象となる当該ヒータのヒータ電流の電流値が安定してから前記固定式センサの測定信号を取り込むことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記ヒータ制御部がヒータ制御チャンネルについて校正を行い校正結果が得られる度にその校正結果を表示し、更新指示を受けてからヒータ制御チャンネルを更新することを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
ストリングスに収納された1つのヒータを当該ストリングスに収納された複数の固定式センサの校正用に使用し、これら複数の固定式センサからの測定信号を使用して当該ヒータの健全性を判断する機能を備えたことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記ヒータ制御部は、k本のヒータを制御可能で、かつその中のn本(k>n)のヒータを同時に制御可能なことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記ヒータ制御部は、校正信号を出力する出力部に制御対象チャンネルを切替える際に発生するノイズを除去するためのフィルタを設けたことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記信号処理部は、前記マルチプレクサ処理部から伝送されてきた測定データを格納するメモリと、このメモリから取り出した測定データに基づいて前記固定式センサの出力安定度を判断すると共に固定式センサの出力が安定していなければシステム運用不可を運転員に知らせる報知手段とを具備したことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。 - 請求項1記載の固定式原子炉内計装装置において、
前記信号処理部は、前記マルチプレクサ処理部から伝送されてきた測定データに基づいて前記マルチプレクサ処理部の動作状態を監視し、当該マルチプレクサ処理部に接続されている固定式センサ中の所定本数以上が異常したことを検知したときそのマルチプレクサ処理部を切り離すことを特徴とする固定式原子炉内計装装置。
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