JP3876489B2 - 廃水処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リンと窒素を含む廃水の処理装置に係り、特に廃水中のリンと窒素の除去を行うと共に、これらを結晶として回収することができる廃水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な生物脱リン処理装置は、図5に示す如く、嫌気槽1、好気槽2及び沈殿槽3から構成されている。この処理装置では、リンを含む有機廃水を嫌気槽1に流入させて活性汚泥中のリンを放出させた後、好気槽2に流入させてBOD除去を行う際に活性汚泥中にリンを過剰摂取させてリンを除去する。
【0003】
また、従来の一般的な生物脱リン脱窒素処理装置は、図6に示す如く、嫌気槽1、脱窒素槽4、硝化槽5及び沈殿槽3から構成されている。この処理装置では、リンと窒素を含む有機廃水を嫌気槽1に流入させて活性汚泥中のリンを放出させた後、脱窒素槽4に流入させて廃水中のBODを利用した脱窒素を行わせ、更に硝化反応を行わせた液の一部を脱窒素槽4に返送する。硝化槽5では好気条件で活性汚泥中にリンが過剰摂取される。
【0004】
リン含有廃水の処理方法としては、リン含有廃水にマグネシウム(Mg)塩を添加した後生物処理を行う方法も提案されており、この方法では、廃水中のリンをリン酸マグネシウムアンモニウム6水塩(MAP)として除去し、回収したMAPをリン及びアンモニアを含む肥料等として有効に再利用することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図5,6に示す従来の処理装置は、廃水中のリンを活性汚泥中に過剰摂取することでリンを除去することはできるが、リンの固定法としては不安定であり、余剰汚泥を汚泥濃縮槽などの嫌気条件に置くと、再びリンを放出してしまうという欠点があった。また、この方法では、廃水から除去したリンをMAPとして有効利用することはできない。
【0006】
一方、廃水中にマグネシウム塩を添加してリンをMAPとして回収する方法では、通常の廃水中に含まれるリンには、MAPとして回収可能な正リン酸以外の形態のものも多いために、MAPの生成効率及び回収効率が悪いという欠点がある。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決し、廃水中のリンと窒素を効率的に除去すると共に、その一部をMAPとして効率的に回収することができる廃水処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
求項の廃水処理装置は、脱窒素処理槽と、該脱窒素処理槽の処理液が導入されるMAP反応槽と、該MAP反応槽の処理液が導入される硝化処理槽とを備えてなることを特徴とする
【0009】
求項の廃水処理装置では、脱窒素処理槽(以下「脱窒素槽」と称す。)に、リン及び窒素を含む廃水と後段の硝化処理槽(以下「硝化槽」と称す。)からの循環液を流入させて、窒素を除去する。
【0010】
この脱窒素槽において、廃水中のリンの大部分は生物処理を受けて正リン酸の形態となる。また、廃水中の有機性窒素の大部分も生物処理を受けてアンモニアの形態となる。
【0011】
従って、MAP反応槽には、正リン酸とアンモニアを含有する脱窒素処理液が導入されるため、MAP反応槽でのMAP生成効率が高い。
【0012】
MAP反応槽の処理液は硝化槽で硝化処理される。
【0013】
このように、請求項1の廃水処理装置では、リン及び窒素の除去が可能であり、しかも、MAP反応槽に、生物処理を受けて正リン酸の形態となったリンが導入されるため、リンを効率的にMAPとして回収できる。特に、脱窒素槽の後段にMAP反応槽を設けたため、生物処理を受けたリンを直ちにMAP化することができることからも、MAP生成効率はより一層高められる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
まず、図7を参照して本発明に好適なMAP反応槽の構成を説明する。
【0016】
このMAP反応槽6は、下部に被処理水の導入管11、上部に処理水の取出管12を有し、頂部が開放した反応槽である。この反応槽6は小径部6A、拡径部6B及び大径部6Cで構成され、小径部6AはMAPの造粒反応部、大径部6Cは沈殿部、拡径部6Bは移行部とされている。小径部6Aの下部には散気管13が設けられ、反応槽6内に空気を散気するように構成されている。また、小径部6Aの下部にはMgCl2等のマグネシウム塩溶液(マグネシウム塩を含有するものであれば良く、海水であっても良い。)の供給管14及び上部にはNaOH等のアルカリ剤の供給管19が設けられている。10はMAP粒子である。
【0017】
大径部6Cにはドラフト管15が設けられており、散気管13より曝気された空気が沈殿部の液を乱すことがないように、その排気を案内するよう構成されている。また、大径部6Cには、処理水を抜き出して反応槽6下部の導入口2に循環するためのポンプPを備える配管16が設けられている。17は溢流堰、18はMAP結晶の排出管である。
【0018】
MAP反応槽6においては、MAPが析出するpH条件、即ちpH7.7〜9.0、好ましくはpH8.3〜8.5となるように、供給管15よりNaOH等のアルカリ剤が注入されている。また、MAPの析出にマグネシウムが不足する場合には、供給管14よりMgCl2等のマグネシウム塩溶液が注入される。
【0019】
小径部6A、即ちMAP造粒反応部では、既に析出しているMAP粒子10を種晶として被処理水中のリン、アンモニア及びマグネシウムイオンの反応でMAPが造粒される。即ち、散気管13からの曝気と導入管11からの被処理水の流入によりMAP粒子10が流動状態となり、このMAP粒子10の表面に新たなMAPが析出して、大粒のMAP粒子が造粒される。
【0020】
このMAPの析出において、被処理水のリン濃度が過度に高いと、種晶の不存在下でMAPの微小結晶が自己析出し、大粒のMAP粒子が得られない場合があるが、図7のMAP反応槽6の如く、処理液を大径部6Cから配管16及びポンプPにより抜き出して循環することにより、反応槽6内のMAP造粒反応部のリン濃度を低下させることができる。これにより反応槽内のMAPの過飽和度が低下し、MAPは微小結晶として自己析出することなく、種晶のMAP粒子10の表面でのみ析出するようになりMAP粒子の大粒子化を促進することかできる。
【0021】
この処理水の循環は、反応槽6内のMAP造粒反応部のリン濃度をリン酸塩濃度100mg/L以下、特に40〜80mg/Lとなるように行うのが望ましい。ただし、この処理水の循環は必須ではなく、汚泥は流出するがMAP粒子は流出しないような条件下でMAP反応処理液を取り出すと共に、MAP結晶の引き抜き量を制御すれば良く、これにより、結晶の大きさを制御することができる。
【0022】
MAPの析出により、リン濃度が低下した液は反応槽6内を上昇して取出管12より排出される。この際、MAP粒子は大粒子化しているため、多量の汚泥固形物を含む原水を処理する場合においても、MAP粒子が固形物と共に排出されることなく、良好に沈殿分離される。即ち、MAP粒子は、汚泥固形物よりも十分に大きい比重、粒度であるため、良好な分離性にて沈殿分離し、汚泥固形物のみが処理水中に含有されて溢流堰17を越流して排出される。
【0023】
なお、散気管13による曝気で生じた気泡20は、ドラフト管15に案内されて、大径部6Cの沈殿部の液を乱すことなく、液中から分離排気される。
【0024】
一方、小径部6Aの反応造粒部で粗大化したMAP粒子は、反応槽6下部の排出管18より間欠的に取り出される。
【0025】
次に、図1〜3を参照して参考例に係る廃水処理装置の実施の形態を説明する。なお、図1〜3及び後述の図4において、MAP反応槽6は構成を簡略化して示してあり、一部の配管等の図示は省略されている。
【0026】
図1の廃水処理装置は、嫌気槽1、MAP反応槽6、好気槽2及び沈殿槽3で構成され、廃水は、後段の沈殿槽3からの返送汚泥と共に嫌気槽1に導入される。嫌気槽1では、嫌気条件下、返送汚泥中のリンが液側へ放出される。この嫌気処理液はMAP反応槽6に導入される。
【0027】
MAP反応槽6では、嫌気槽1で放出されたリン(このリンは、後段の好気槽2で生物処理を受けたものであり、殆どのものがMAPの生成に有利な正リン酸の形態となっている。)及び廃水由来のリンと、廃水由来のアンモニアと、廃水由来のMg化合物及びMAP反応槽6に添加されたMg化合物とが前述のpH条件下に反応してMAPが生成する。
【0028】
MAP反応槽6におけるMAPの生成により、リン及びアンモニアが除去されたMAP反応処理液は、次いで好気槽2に導入され、曝気下BODの除去が行われる。また、この好気槽2では好気条件下にリンの過剰摂取が行われ、液中のリン濃度は更に低減される。
【0029】
好気処理液は次いで沈殿槽3に導入され、固液分離され、分離液は処理水として系外へ排出される。この処理水は、MAP反応槽6でのMAP生成でリン及び窒素が除去され、更に好気槽2での生物処理でBODが除去されると共にリンが除去された、良好な水質の処理水である。
【0030】
一方、生物処理により正リン酸の形態としてリンを取り込んだ分離汚泥は、返送汚泥として嫌気槽1に返送される。
【0031】
図2の廃水処理装置は、嫌気槽1、MAP反応槽6、脱窒素槽4、硝化槽5及び沈殿槽3で構成され、廃水は後段の沈殿槽3からの返送汚泥と共に嫌気槽1に導入される。嫌気槽1では、嫌気条件下、返送汚泥中のリン(このリンは、生物処理により殆どのものがMAP生成に有利な正リン酸の形態となっている。)が液側へ放出される。この嫌気処理液はMAP反応槽6に導入される。
【0032】
MAP反応槽6では、図1の廃水処理装置と同様にMAPの生成によりリン及びアンモニアが除去される。
【0033】
MAP反応処理液は、次いで脱窒素槽4に導入される。この脱窒素槽4では、廃水中のBODを利用して硝化循環液中のNO3やNO2が脱窒素される。
【0034】
脱窒素処理液は硝化槽5に導入され、曝気により、液中のアンモニアがNO3やNO2に酸化される。また、好気条件下でリンの活性汚泥への取り込みが行われ、液中のリン濃度が低減される。
【0035】
この硝化処理液の一部は、NO3,NO2を供給するために脱窒素槽4に返送され、残部は沈殿槽3に送給され固液分離される。
【0036】
沈殿槽3の分離液は処理水として系外へ排出される。この処理水は、MAP反応槽6でのMAP生成でリン及び窒素が除去され、更に脱窒素槽4で窒素が除去され、硝化槽でリンが除去された、良好な水質の処理水である。
【0037】
一方、分離汚泥は、返送汚泥として嫌気槽1に返送される。
【0038】
図2に示す廃水処理装置は、高い窒素除去率が要求されない場合の例であって、NO3やNO2を含む硝化処理液をそのまま沈殿槽3で固液分離して処理水を得るが、高い窒素除去率が要求される場合には、図3に示す如く、脱窒素槽を2槽設け、更に仕上げの脱窒素を行う。
【0039】
図3の廃水処理装置は、嫌気槽1、MAP反応槽6、第1脱窒素槽4A、硝化槽5、第2脱窒素槽4B、再曝気槽7及び沈殿槽3で構成され、硝化槽5までは、上記図2に示す廃水処理装置と同様に処理が行われる。
【0040】
この硝化槽5の硝化処理液の一部は第1脱窒素槽4Aに返送され、残部は第2脱窒素槽4Bに導入される。この第2脱窒素槽4Bではメタノールなどを添加して更に窒素除去を行うことで、液中の窒素濃度を低減する。第2脱窒素槽4Bの処理液は再曝気槽7で再びリンの取り込みが行われた後、上記と同様に沈殿槽3で固液分離される。
【0041】
次に、図4を参照して請求項の廃水処理装置の実施の形態を説明する。
【0042】
図4の廃水処理装置は、第1脱窒素槽4A、MAP反応槽6、硝化槽5、第2脱窒素槽4B、再曝気槽7及び沈殿槽3で構成される。
【0043】
廃水は、後段の硝化槽5からの硝化循環液及び沈殿槽3からの返送汚泥と共に、第1脱窒素槽4Aに導入される。第1脱窒素槽4Aでは、嫌気条件下、廃水中のBODを利用して硝化循環液中のNO3やNO2が脱窒素される。また、廃水中のリン酸以外のリンの大部分は生物処理を受けて正リン酸の形態となると共に、廃水中の有機性窒素の大部分も生物処理を受けてアンモニアの形態となる。
【0044】
第1脱窒素槽4Aの脱窒素処理液はMAP反応槽6に導入されてMAP生成により、リン及び窒素の除去が行われるが、第1脱窒素槽4Aの脱窒素処理液中には、リンはその大部分が正リン酸の形態として存在し、また、窒素はその大部分がアンモニアの形態として存在するため、このMAP反応槽6におけるMAP生成反応効率は非常に高いものとなり、リン及び窒素の除去効率が高い。しかも、脱窒素反応はアルカリ放出反応でもあるため、脱窒素処理液のpHは若干上昇し、MAP生成に好適なpH条件に容易に調整可能となる。
【0045】
MAP反応槽6のMAP反応処理液は、硝化槽5、第2脱窒素槽4B、再曝気槽7及び沈殿槽3に順次送給され、前述の図3の廃水処理装置と同様に、処理が行われる。
【0046】
なお、この廃水処理装置において、高い窒素除去率が要求されない場合は、第2脱窒素槽4B及び再曝気槽7を省略して、硝化槽5の硝化処理液を、図2の廃水処理装置と同様に直接沈殿槽3に送給して固液分離するようにしても良い。
【0047】
なお、図4に示す廃水処理装置は本発明の廃水処理装置の一実施例であって、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示のものに限定されるものではない。
【0048】
例えば、MAP反応槽は、図7に示すような、MAP結晶の取り出しを行う晶析槽に限らず、微小なMAP粒子を含む液をそのまま後段の槽に送給するものであっても良い。この場合でも、微小なMAP粒子を含んだ液が最終的に沈殿槽で固液分離されることで、MAPの分離が行われる。
【0049】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する
【0050】
施例
図4に示す廃水処理装置により表に示す水質の廃水を下記条件で処理した。
【0051】
処理条件
MAP反応槽でのMg塩添加量:塩化マグネシウムをPO4−Pに対して
モル比で1.2倍
MAP反応槽のpH:8.2〜8.7
硝化循環液量:200m3/日
返送汚泥量:100m3/日
各槽の処理液の水質及び流量を表に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003876489
【0053】
より明らかなように、全体での除去率はT−N99.4%、T−P87.5%、BOD99.3%と高い値であった。
【0054】
特にMAP反応槽でのリン除去率が高く、MAP結晶(リン酸マグネシウムアンモニウム6水塩)が85kg/日回収された
【0055】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の廃水処理装置によれば、廃水中のリンと窒素の一部とをMAPとして効率的に回収し、処理水のリン濃度或いは更に窒素濃度を低減することができる。
【0056】
本発明では、MAP反応槽の前段に脱窒素槽を設け、嫌気性生物処理により正リン酸の形態とされたリンをMAP反応槽に導入するため、廃水を直接MAP反応に供する場合に比べて、MAP生成効率が高く、従って、リン及び窒素の除去効率が高く、良好な水質の処理水を得ることができると共に、MAP回収効率も向上する。
【0057】
特に、MAP反応槽の前段に脱窒素槽を設けた場合には、廃水中の窒素及びリンをそれぞれアンモニア及び正リン酸の形態でMAP反応槽に送給することができ、MAP生成反応に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例の廃水処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【図2】 参考例の廃水処理装置の他の実施の形態を示す系統図である。
【図3】 参考例の廃水処理装置の別の実施の形態を示す系統図である。
【図4】 請求項の廃水処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【図5】 従来の生物脱リン処理装置を示す系統図である。
【図6】 従来の生物脱リン脱窒素処理装置を示す系統図である。
【図7】 MAP反応槽の構成を示す系統図である。
【符号の説明】
1 嫌気槽
2 好気槽
3 沈殿槽
4 脱窒素槽
4A 第1脱窒素槽
4B 第2脱窒素槽
5 硝化槽
6 MAP反応槽
7 再曝気槽

Claims (1)

  1. 脱窒素処理槽と、該脱窒素処理槽の処理液が導入されるMAP反応槽と、該MAP反応槽の処理液が導入される硝化処理槽とを備えてなることを特徴とする廃水処理装置。
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