JP3875737B2 - アルミニウム光輝材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種競技場のナイター照明灯、店舗照明、舞台照明、住宅照明、道路照明等の各種照明器具において、光源を取り囲んで配置されるドーム状ないし円錐状の反射鏡や、光輝表面を必要とする電気部品、構造部材等に使用されるアルミニウム光輝材料及びその製造方法、並びにアルミニウム光輝材料を用いた構造部材、照明器具用反射板、照明反射鏡、電機部品に関する。
【0002】
【従来の技術及び解決しようとする課題】
上記のようなアルミニウム光輝材料は、一般に、圧延により板材に仕上げられて使用される。そして、実製品への製作に際してはへら絞り等の成形加工を施して所定形状となされる。このため、良好な成形加工性を保有させるべく、アルミニウム光輝材料を圧延後の最終焼鈍により十分に軟化させることが行われていた。
【0003】
しかしながら、最終焼鈍で軟化したアルミニウム材料の組織は再結晶組織となっているために、肌荒れを生じて圧延による表面光沢が失われてしまうという欠点があった。このため、一般には、成形加工後において化学研磨や電解研磨による光輝処理が必須工程として実施されているが、このような光輝処理は煩雑であり、生産性の向上を妨げることから、光輝処理を省略することが強く望まれている。
【0004】
この発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたものであって、へら絞り等の成形加工が容易でありながら、かつ表面光沢を得るための化学研磨や電解研磨による光輝処理を不要となし得るアルミニウム光輝材料及びその製造方法、並びにアルミニウム光輝材料を用いた構造部材、照明器具用反射板、照明反射鏡、電機部品の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明に係るアルミニウム光輝材料は、図1に示されるように、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる芯材(1)の少なくとも片面に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる皮材(2)が、クラッド率5〜20%の割合で圧延によりクラッドされるとともに、前記芯材(1)は50〜100%の再結晶組織を有し、前記皮材(2)は30〜100%の加工組織を有するものとなされていることを特徴とするものである。
【0006】
前記芯材(1)は、へら絞り等の主に絞りによる成形加工性を付与する役割を果たす。このために、成形加工に追随させるべく、芯材の強度はある程度低下している必要があり、従って芯材は50〜100%の再結晶組織を有することが必要である。50%未満の再結晶組織では、強度が高すぎて成形加工に追随できず、割れ等の不具合を生じる。好ましくは、80%以上の再結晶組織を有するものとなすのが良い。
【0007】
一方、皮材(2)は圧延によって光沢のある表面を現出させる役割を果たす。而して、皮材(2)の再結晶組織が増加すると肌荒れを生じて圧延による表面光沢が失われることから、皮材(2)は30〜100%の圧延加工組織を有することが必要である。特に好ましくは、50%以上の加工組織を残存させるのが良い。しかし、加工組織が100%近く残存していると、強度が高くなって成形加工時に割れ等を発生する場合があることから、加工組織は80%以下に抑制するのが好ましい。
【0008】
上記皮材(2)は、芯材(1)の片面にクラッドしても良いし、両面にクラッドしても良い。照明器具の反射板等に用いられる場合には、片面のみ反射面が存在すれば良いことから、一般には片面のみにクラッドされる場合が多い。皮材(2)のクラッド率(両面クラッドの場合は両面合計)は、5〜20%に設定する必要がある。皮材(2)のクラッド率が5%未満の場合には、へら絞り等の成形加工時に芯材(1)の変形に皮材が追随できず、割れを生じて部分的に芯材が露出する不具合がある。また、20%を超える場合も、やはり成形加工時に割れを生じる恐れがある。特に好ましい皮材(2)のクラッド率の下限値は6%、上限値は17%である。
【0009】
上記のようなアルミニウム光輝材料の好ましい製造方法として、この発明に係る製造方法を挙げ得る。これを説明すると、次のとおりである。
【0010】
即ち、まず、芯材(1)として、FeとSiの合計:0.5〜1.5wt%含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金、またはFeとSiの合計:0.5〜1.5wt%、Mn:1.0〜1.5wt%、Cu:0.05〜0.20wt%を含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を用意する。上記において、FeとSiとは共に芯材の軟化温度を低下させて再結晶を促進するのに有効な元素である。しかし、FeとSiの合計が0.5wt%未満ではその効果に乏しく、逆に1.5wt%を超えると、孔食が発生しやすくなり、耐食性が劣化する。FeとSiの合計含有量の特に好ましい下限値は0.6wt%であり、上限値は1.0wt%である。なお、FeとSiは共に含有されなければならないが、その配合割合は限定されることはない。しかし、Feの方が固溶量が少ないため微細析出物として存在し、ひいては再結晶促進効果が大きいことから、Feを0.7〜0.9wt%、Siを0.1〜0.3wt%の範囲で含有させるのが望ましい。
【0011】
また、上記Mn及びCuはそれぞれ所定の範囲で含有されることにより耐熱性の向上に寄与するものであり、従って、照明器具の反射板のように、温度が200℃を超えるような用途に適用する場合には、Mn、Cuを含む芯材を用いれば良い。しかし、Mnが1.0wt%未満、Cuが0.05wt%未満では、耐熱性の向上効果に乏しく、一方Mnが1.5wt%を超え、Cuが0.2wt%を超えると成形性の悪化を派生する。
【0012】
一方、皮材(2)として、純アルミニウムか、またはZr:0.05〜0.6wt%、Mn:0.1〜5wt%の少なくともいずれかを含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を用意する。ただし、いずれの場合も、再結晶を芯材(1)よりも抑制するために、不純物としてのFeとSiの合計量を芯材のそれよりも少なくする必要がある。好適には0.6wt%以下に規制するのが良い。皮材(2)に任意的に含まれるZr、Mnは、共に溶質原子として存在し高温においても固溶体硬化の役目を果たし、ひいては皮材(2)の再結晶を抑制するのに有効である。かかる作用効果の点でZr、Mnは共に均等物として評価されるものであり、いずれか一方が含有されることによりその効果を発揮するが、Zrが0.05wt%未満、Mnが0.1wt%未満では該効果に乏しい。一方、Zrが0.6wt%を超え、Mnが5wt%を超えると成形性の悪化をもたらす。Zr、Mnを含有する場合の特に好ましい下限値はZr:0.1wt%、Mn:0.3wt%であり、好ましい上限値はZr:0.5wt%、Mn:2wt%である。
【0013】
次いで、芯材(1)、皮材(2)を圧延により所定厚さにクラッドする。クラッドは常法に従い熱間圧延により行えば良く、一般的には熱間圧延後さらに冷間圧延を行う。望ましくはさらに表面粗度の小さい光輝圧延ロールを用いて、皮材(2)の表面粗度を小さくし、光沢を増しても良い。なお、常法に従い圧延途中に中間焼鈍を実施しても良い。
【0014】
圧延後においては、芯材(1)、皮材(2)ともにその組織は圧延加工組織となっている。そこで、クラッド材を最終焼鈍して、芯材(1)の組織を50%以上の再結晶組織とし、皮材(2)の組織に30%以上の加工組織を残存させる。芯材(1)には所定量のFeとSiが存在する一方、皮材(2)のFeとSi量は抑制されているから、図2に示されるように、加熱温度に対する芯材(1)と皮材(2)の軟化特性が相違し、加熱温度を選択することによって上記組織状態を実現することができる。具体的には、220〜280℃の温度範囲とする。加熱温度が220℃未満では、芯材(1)の再結晶化が促進せず、50%以上の再結晶組織を実現できない。一方、加熱温度が280℃を超えると、皮材(2)の再結晶化が促進され、30%以上の加工組織を残存させることができない。最終焼鈍における特に好ましい加熱温度の下限値は230℃、上限値は260℃である。加熱時間は特に限定されないが、短すぎると芯材(1)の再結晶化が促進されず、長すぎると皮材(2)の再結晶化が必要以上に促進されることから、加熱時間は0.5〜5時間が望ましく、特に1〜3時間が最も望ましい。
【0015】
こうして製造されたアルミニウム光輝材料は、皮材(2)に30%以上の圧延加工組織が残存されているため、圧延による表面の光沢がそのまま維持される。従って、電解研磨、化学研磨等による光輝処理はもはや不要となる。
【0016】
反射板等の実製品への適用に際しては、上記アルミニウム光輝材料にへら絞り等の主に絞りによる成形加工を施して所定形状とする。成形加工に際して、アルミニウム光輝材料の表面光沢を維持しあるいはさらなる光沢を現出するために、金型の表面は鏡面またはこれに近い状態に仕上げるのが望ましい。また、金型表面に、アルミニウムとの親和力の小さい硬質クロムメッキや、タングステンカーバイドの溶射コーティングを施すことも推奨される。さらに、成形加工時の潤滑油も低粘度のものを用いるのが望ましい。
【0017】
成形加工後、要すれば表面保護のために塗装を行って製品とする。
【0018】
【実施例】
表1の試料No1〜13に示す組成の芯材(1)と皮材(2)とを用意し、芯材(1)の片面に皮材(2)を圧延によりクラッドしたのち、さらに最終厚さ1mmまで圧延した。圧延は常法により行い、皮材(2)のクラッド率は表1に示すとおりとした。また、圧延の最終工程で光輝ロールを使用して光沢圧延を行った。
【0019】
圧延後、各クラッド材を表1に示す加熱条件で最終焼鈍して、本発明に係るアルミニウム光輝材料を製造した。
【0020】
【表1】
【0021】
次に、得られた各アルミニウム光輝材料につき、芯材(1)の再結晶組織と皮材(2)の加工組織の割合を調べた。その結果を表2に示す。
【0022】
その後、各アルミニウム光輝材料に対してへら絞りを行い、皮材表面が内面側に位置する態様で、図3に示されるようなサーチライト用のドーム状の反射板(3)に成形した。そして、へら絞り時のワレの有無を調査した。その結果を表2に示す。
【0023】
また、得られた反射板(3)の銀鏡面に対する全反射率を測定したところ、表2のとおりであった。
【0024】
一方、従来例として試料No14のアルミニウムを用意した。そして、このアルミニウムを圧延により1mmの板としたのち、370℃×3時間で最終焼鈍した。その後、上記と同様の条件でへら絞りを行って反射板に成形したのち、反射面をバフ研磨し、さらに化学研磨した。この反射板の全反射率を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
上記表2からわかるように、本発明に係るアルミニウム光輝材料を用いた反射板は反射率が高く、化学研磨や電解研磨等の光輝処理を行わなくても、従来品と同程度であることを確認し得た。
【0027】
【発明の効果】
本発明に係るアルミニウム光輝材料によれば、芯材によりへら絞り等の成形加工性を良好に保持できるとともに、皮材により圧延による表面光沢を維持できる。その結果、へら絞り等の成形加工が容易でありながら、かつ表面光沢を得るための化学研磨、電解研磨等の光輝処理を不要となしえ、生産性を増大できる。
【0028】
また、本発明に係る製造方法によれば、芯材が50〜100%の再結晶組織を有し、皮材が30〜100%の加工組織を有するアルミニウム光輝材料を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るアルミニウム光輝材料の縦断面図である。
【図2】芯材と皮材の加熱温度に対する軟化特性を示すグラフである。
【図3】へら絞り成形後の反射板の斜視図である。
【符号の説明】
1…芯材
2…皮材
Claims (6)
- FeとSiの合計:0.5〜1.5 wt %含有し、残部がアルミニウム及び不可避不純物からなる芯材(1)、またはFeとSiの合計:0.5〜1.5 wt %、Mn:1.0〜1.5 wt %、Cu:0.05〜0.20 wt %を含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物からなる芯材(1)の少なくとも片面に、
不可避不純物を含有し、不可避不純物としてのFeとSiの合計含有量が前記芯材よりも少なく抑制された純アルミニウムからなる皮材(2)、またはZr:0.05〜0.6 wt %、Mn:0.1〜5 wt %の少なくともいずれかを含有し、残部アルミニウム及び不可避不純物からなり、不可避不純物としてのFeとSiの合計含有量が前記芯材よりも少なく抑制された皮材(2)を、クラッド率5〜20%の割合で圧延によりクラッドしたのち、220〜280℃の温度で0.5〜5時間最終焼鈍を実施することを特徴とするアルミニウム光輝材料の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法により製造されたアルミニウム光輝材料。
- 請求項2に記載されたアルミニウム光輝材料を使用された構造部材。
- 請求項2に記載されたアルミニウム光輝材料に成形加工を施して製造された照明器具用反射板。
- 請求項2に記載されたアルミニウム光輝材料に成形加工を施して製造された照明反射鏡。
- 請求項2に記載されたアルミニウム光輝材料、請求項4に記載された照明器具用反射板、請求項5に記載された照明反射鏡のうちのいずれかが使用されている電気部品。
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