JP3875414B2 - ポリカーボネート系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。より詳細には、特定割合のポリカーボネート系樹脂及び熱可塑性ポリエステル系樹脂に、特定のポリオルガノシルセスキオキサン化合物を添加することで流動性に優れ、耐衝撃性を改善されたポリカーボネート系樹脂組成物を製造し、使用する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート系樹脂は、エンジニアリングプラスチックの中でも最高の耐衝撃性を有し、耐熱変形性も良好な樹脂として知られており、これらの特徴を生かし、電気電子など種々の分野に利用されているが、耐溶剤性、成形流動性等の欠点を有している。ポリカーボネート系樹脂の成形加工性などを改良する目的として、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂などのポリカーボネート系アロイが提案されている。一般的にポリカーボネート系樹脂とポリエステル系樹脂とのアロイ化は,ポリカーボネート系樹脂の成形加工性などを改良する反面、耐衝撃性を損なうため、耐衝撃性改良剤としてジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン−プロピレン系ゴム、これらゴム状弾性体を用いたグラフトゴムなどの複合ゴムを添加する必要がある。これら耐衝撃性改良剤のうちジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン−プロピレン系ゴムなどのゴム状弾性体は、加工時に酸化劣化を受けやすく、樹脂組成物をリサイクルし使用する際、物性劣化を引き起こすなどの問題がある。このため比較的熱安定性に優れたポリオルガノシロキサン系ゴムに代表されるケイ素系化合物が着目されている。しかしながら、ポリオルガノシロキサン系ゴムは、樹脂との親和性に乏しい場合が多く、耐衝撃性改善効果が十分得られなかったり、成形不良を起こすなどの問題がある。樹脂との親和性を改善する目的でアクリル系樹脂等をグラフトした耐衝撃性改良などが市販されているが、熱安定性が不十分であったり、難燃化する場合、難燃性悪化の原因となる。一方、ケイ素系化合物を配合した樹脂組成物としては、特公昭62−60421号公報では、熱可塑性非シリコーンポリマーに式SiO1.5で示されるT単位を80重量%以上含むポリシロキサン樹脂(ポリシロキサン樹脂の分子量が2,000以上6,000以下で、フェニル基80%以下,残りがメチル基であることがポリマー組成物の耐燃化には好ましいと記載)を配合した樹脂組成物、特開平10−139964では、芳香環を含有する非シリコーン樹脂に式;SiO1.0で示される単位と式;SiO1.5で示される単位を持つシリコーン樹脂(重量平均分子量が10,000以上270,000以下。)を配合した難燃性樹脂組成物が挙げられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなポリカーボネート系樹脂組成物を用いる分野においては(例えばOA機器等の筺体や自動車外装部品などに用いられる場合には)、難燃性,耐薬品性などの物性の他、優れた耐衝撃性が要求される。特公昭62−60421号公報,特開平10−139964で挙げられるようなケイ素系化合物をポリカーボネート系樹脂及びポリエステル系樹脂のアロイ樹脂にただ単に添加混合しただけでは、難燃性は得られるものの耐衝撃性が得られず工業的価値の低いものであった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は優れた耐衝撃性を有するポリカーボネート系樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定割合のポリカーボネート系樹脂と熱可塑性ポリエステル系樹脂からなる樹脂組成物に対し特定のポリオルガノシルセスキオキサン化合物を添加することにより驚くべきことに優れた耐衝撃性を有するポリカーボネート系樹脂組成物が得られることを見い出し本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート系樹脂および(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂を95/5〜60/40の重量比で含有する樹脂100重量部と、(C)下記一般式(1),(2),(3)で表される単位が以下の割合で構成されてなるポリオルガノシルセスキオキサン化合物1〜30重量部を含有し、前記(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の重量平均分子量が1,000〜10,000であり、前記(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物に含まれる全R及びR’中、水酸基及びアルコキシル基の割合がモル比で10%未満であることを特徴とする流動性に優れ、耐衝撃性の改善された熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0007】
【化4】
【0008】
【化5】
【0009】
【化6】
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する(A)ポリカーボネート系樹脂とは、具体的には、2価以上のフェノール化合物と、ホスゲン、ジフェニルカーボネートのような炭酸ジエステルとを反応させて得られるものである。
【0011】
2価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。ビスフェノールA以外の2価フェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−イソプロピルフェニル)メタン;ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン;4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン;4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン;1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル;ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン;3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシアリールフルオレン類などが挙げられる。また、二価フェノール類以外に、ヒドロキノン,レゾルシノール,メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、1,5−ジヒドロキシナフタレン;2,6−ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などが挙げられる。これらの二価フェノール等は、それぞれ一種で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。また、炭酸ジエステル化合物としては、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートや、ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートが挙げられる。機械的強度と成形性のバランスの点から、好ましいポリカーボネート系樹脂としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとジフェニルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート系樹脂,2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート系樹脂,2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとジエチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート系樹脂,ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンとジフェニルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート系樹脂,ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタンとジフェニルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
【0012】
本発明においては、(A)成分のポリカーボネート系樹脂には、必要に応じて、分岐ポリカーボネートを含有させることができる。上記分岐ポリカーボネートを得るために用いられる分岐剤としては、例えば、フロログルシン,メリト酸,トリメリト酸,トリメリト酸クロリド,無水トリメリト酸,プロトカテク酸,ピロメリト酸,ピロメリト酸二無水物,α−レゾルシン酸,β−レゾルシン酸,レゾルシンアルデヒド,トリメチルクロリド,イサチンビス(o−クレゾール),トリメチルトリクロリド,4−クロロホルミルフタル酸無水物,ベンゾフェノンテトラカルボン酸;2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン;2,4,4’−トリヒドロキシフェニルエーテル;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシフェニルエーテル;2,4,4’−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン;2,2’−ビス(2,4−ジヒドロキシ)プロパン;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタン;2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン;1−〔α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル〕−3−〔α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;1−〔α−メチル−α−(4’−ジヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α’,α’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール;4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン;4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプタン;1,3,5−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス〔4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン;2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール;ビス〔2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−5−メチルフェニル〕メタン;ビス〔2−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシ−5’−イソプロピルベンジル)−5−メチルフェニル〕メタン;テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン;2,4,4−トリメチル−2’,4’,7−トリヒドロキシフラバン;1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン;トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−アミル−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0013】
また、場合によっては、(A)成分のポリカーボネート系樹脂としては、ポリカーボネート部と、ポリオルガノシロキサン部とからなるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を用いてもよい。この際ポリオルガノシロキサン部の重合度は5以上が好ましい。
【0014】
この他、(A)成分のポリカーボネート系樹脂としては、例えば、アジピン酸,ピメリン酸,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸などの直鎖状脂肪族二価カルボン酸を共重合モノマーとする共重合体を用いることもできる。
【0015】
なお、ポリカーボネート系樹脂の重合時の末端停止剤としては、公知の各種のものを使用することができる。具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール,p−クレゾール,p−t−ブチルフェノール,p−t−オクチルフェノール,p−クミルフェノール,ブロモフェノール,トリブロモフェノール,ノニルフェノールなどが挙げられる。
【0016】
難燃性を付与するためには、リン化合物との共重合体、あるいは、リン系化合物で末端封止したポリマーを使用することもできる。さらに、耐候性を高めるためには、ベンゾトリアゾール基を有する二価フェノールとの共重合体を使用することもできる。
【0017】
本発明に用いられる(A)ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは10000〜60000であり、さらに好ましくは15000〜45000、最も好ましくは18000〜35000である。粘度平均分子量が10000未満では得られる樹脂組成物の強度や耐熱性などが不充分である場合が多い。粘度平均分子量が60000を越えると、成形加工性が不充分である場合が多い。
【0018】
このようなポリカーボネート系樹脂は、1種あるいは、2種以上を組み合わせて使用される。2種以上組み合わせて使用する場合には、組み合わせは限定されない。例えば、モノマー単位が異なるもの、共重合モル比が異なるもの、および/または、分子量が異なるものが任意に組み合わせられる。
【0019】
本発明で用いられる、(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂は、2価以上のカルボン酸成分、2価以上のアルコールおよび/またはフェノール成分とを公知の方法で重縮合することにより得られる熱可塑性ポリエステルである。熱可塑性ポリエステル系樹脂の具体的としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられる。これら熱可塑性ポリエステルのうち、耐熱性,成型加工性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0020】
2価以上の芳香族カルボン酸成分としては、炭素数8〜22の2価以上の芳香族カルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体が用いられる。これらの具体例としては、テレフタル酸やイソフタル酸等のフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボシフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4−4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、等のカルボン酸、ならびにこれらのエステル形成能を有する誘導体が挙げられる。これらは一種あるいは2種以上を併用して用いられる。好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸である。取り扱い易さ、反応の容易さ、得られた樹脂の物性、などに優れるからである。
【0021】
2価以上のアルコール及び/又はフェノール成分としては、炭素数2〜15の脂肪族化合物、炭素数6〜20の脂環式化合物、炭素数6〜40の芳香族化合物であって分子内に2個以上の水酸基を有する化合物類、ならびにこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。このようなアルコールおよび/またはフェノール成分の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール、などの化合物または、そのエステル形成能を有する誘導体が挙げられる。好ましいアルコールおよび/またはフェノール成分は、エチレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、である。取り扱い易さ、反応の容易さ、得られた樹脂の物性、などが優れるからである。
【0022】
(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂には、上記の酸成分ならびにアルコールおよび/またはフェノール成分以外に、所望の特性を損なわない範囲で、公知の共重合可能な成分が共重合されていても良い。このような共重合可能な成分としては、炭素数4〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、炭素数8〜15の2価以上の脂環式カルボン酸、などのカルボン酸類およびこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの具体例としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、などのジカルボン酸または、そのエステル形成能を有する誘導体、が挙げられる。
【0023】
また、p−オキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸のようなオキシ酸およびこれらのエステル形成性誘導体、ε−カプロラクトンのような環状エステル、等も共重合成分として使用可能である。さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよびまたは、ランダム共重合体、ビスフェノールA共重合ポリエチレンオキシド付加重合体、同プロピレンオキシド付加重合体、同テトラヒドロフラン付加重合体、ポリテトラメチレングリコール、等のポリアルキレングリコール単位を高分子鎖中に一部共重合させたものを用いることもできる。上記成分の共重合量としては、概ね20重量%以下であり、好ましくは、15重量%以下、さらに好ましくは、10重量%以下である。
【0024】
(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂は、アルキレンテレフタレート単位を、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、最も好ましくは90重量%以上有するポリアルキレンテレフタレートである。得られた組成物の物性バランス(例えば成形性,機械的特性)に優れるためである。
【0025】
(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂の、フェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で測定したときの対数粘度(IV)は、好ましくは0.30〜2.00dl/g以上であり、好ましくは0.40〜1.80dl/g、さらに好ましくは0.50〜1.60dl/gである。対数粘度が0.30未満では、成形体の機械的強度が不充分である場合が多く、2.00dl/gを越えると成形加工性が低下する傾向がある。(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂は、一種で、あるいは、2種以上組み合わせて使用されうる。2種以上組み合わせて使用する場合には、組み合わせは限定されない。例えば、共重合成分やモル比が異なるもの、および/または、分子量が異なるものが、任意に組み合わせられる。
【0026】
本発明においては、(A)ポリカーボネート系樹脂と(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂との混合比は、重量比で95/5〜60/40であり、好ましくは、93/7〜63/37、さらに好ましくは、90/10〜65/35の範囲である。(A)ポリカーボネート系樹脂と(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂との混合物中での重量比が、95/5を越えると得られた成形品の成形流動性が不充分であり、また60/40未満であると耐熱性などが低下し、さらに耐衝撃性改良効果が得られない場合がある。本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物は、下記一般式(1),(2),(3)
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
RおよびR'として用いられる炭素数が1〜12の炭化水素基としては、例えば、メチル,エチル,n−プロピル,イソ−プロピル,n−ブチル,イソ−ブチル,t−ブチルなどのアルキル基、フェニル,トリル,キシリルなどのアリール基、β−フェニルエチル,β−フェニルプロピルなどのアリールアルキル基などが挙げられる。成形体中への分散性の点から、全R及びR'中50モル%以上がメチル基及び/またはフェニル基であることが好ましく、さらに60モル%であることがさらに好ましい。
【0030】
耐熱性を保持する上で、全R及びR'中の水酸基及びアルコキシル基の割合は、10モル%未満であることが好ましく、6モル%未満であることがさらに好ましい。10モル%以上であると、耐熱性が低下する場合がある。本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物は、一般式(1)で表されるオルガノシルセスキオキサン単位(T単位)を90〜40モル%有するが、好ましくは85〜45モル%であり、90モル%を越えるか40モル%未満であると耐衝撃性改良効果が得られなかったり、成形品外観不良の原因となる場合がある。本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物は、一般式(2)で表されるオルガノシロキサン単位(D単位及び反応不完全なT単位)が50モル%以下であるが、好ましくは47モル%以下であり、50モル%を越えると耐衝撃性改良効果が得られなかったり、分散性が悪化し成形品外観不良の原因となる場合がある。本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物は、一般式(3)で表される単位が10〜60モル%であるが、(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の合成時に反応させようとするT単位と官能度によってほぼ決まる量であり、10%未満であると耐衝撃性改良効果が得られない場合がある。(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の重合時、反応させようとするT単位に対して0.1〜1の割合で末端封鎖するのが特に好ましい。本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物を構成する単位(1)と(2)の割合は、成形加工性,得られた成形体の表面性の点から、モル比((1)のモル数/(2)のモル数)で5/6以上さらには1/1以上であることが好ましい。本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の分子量は、耐衝撃性を効果的に改良する点から、重量平均分子量が1,000〜100,000が好ましく、更に重量平均分子量が2,000〜10,000の範囲の重合体であることが好ましい。本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の製造方法は、工業的に知られたものであり、公知の種々の方法によって製造してかまわない。例えば、メチルトリアルコキシシラン,ジメチルジアルコキシシラン,トリメチルアルコキシシラン,フェニルトリアルコキシシラン,ジフェニルジアルコキシシラン,トリフェニルアルコキシシラン、メチルフェニルジアルコキシシランなどのアルコキシシランの加水分解に続く脱水縮合反応やメチルトリクロロシラン,ジメチルジクロロシラン,トリメチルクロロシラン,フェニルトリクロロシラン,ジフェニルジクロロシラン,トリフェニルクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン,ジメチルフェニルクロロシランなどのクロロシランの加水分解に続く脱水縮合反応,によるような任意の方法によって製造できる。
【0031】
本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物は、一種で、あるいは、2種以上組み合わせて使用されうる。2種以上組み合わせて使用する場合には、組み合わせは限定されない。例えば、本発明の請求範囲を満たしている限り、重合成分やモル比が異なるもの、および/または、分子量が異なるものが、任意に組み合わせられる。本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の形状には特に制限はなく、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状、等の任意のものが利用可能である。
【0032】
本発明に用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の添加量は、(A)ポリカーボネート樹脂および(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂の合計量100重量部に対して、1〜30重量部であるが、好ましくは1.5〜25重量部、さらに好ましくは2〜20重量部である。添加量が1重量部未満では耐衝撃性改良の効果が十分得られず、30重量部を越えると成形品外観や表面性に悪影響を及ぼしたり成形不良となる傾向にある。本発明では、本発明の特性(耐衝撃性,流動性,耐熱性,リサイクル性等)を損なわない範囲で、得られた成形体の衝撃強度、靭性等をより高めるために、ゴム弾性体を併用添加してもよい。ゴム弾性体としては、グラフト重合体及び/又はオレフィン系樹脂、から選ばれた軟質樹脂1種以上を添加することが好ましい。該ゴム弾性体は、ガラス転移温度が0℃以下、さらには、−20℃以下のものが、得られた樹脂の衝撃強度がさら向上するため好ましい。
【0033】
ゴム弾性体の内、グラフトゴムとは、ゴム状弾性体に対してビニル系単量体をグラフト共重合させたゴムである。
【0034】
ゴム状弾性体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル−ブタジエンゴム、等のジエン系ゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、シロキサンゴム、等が挙げられる。
【0035】
ビニル系単量体とは、芳香族ビニル系化合物、シアン化ビニル系化合物、 (メタ)アクリル酸アルキルエステル、その他ゴム状弾性体にグラフト重合させることが可能なビニル系化合物である。
【0036】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、等が挙げられる。
【0037】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、等が挙げられる。
【0039】
その他のビニル系化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、等の不飽和酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、等の(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、等が挙げられる。
【0040】
ゴム状弾性体とビニル化合物を共重合する際の共重合割合には特に制限はないが、衝撃強度をより高めるために好ましい割合としては、重量比で10/90〜90/10、さらには、30/70〜80/20である。ゴム状弾性体の重量比が10未満では耐衝撃性の向上効果が少なくなる。また90を越えると(A)と(B)との樹脂との相溶性が低下する傾向がある。
【0041】
ゴム弾性体の内、オレフィン系樹脂とは、狭義のポリオレフィンの他に、ポリジエン、およびそれら2種以上からなる混合物、オレフィンモノマーとジエンモノマー2種以上からなる共重合体、オレフィンモノマーとオレフィンに共重合可能な他のビニル系モノマー1種以上からなる共重合体、等を包含する広義の概念として用いられる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロピレン、フェニルプロパジエン、シクロペンタジエン、1,5−ノルボルナジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、α,ω−非共役ジエン類、等のモノマー群から1種あるいは2種以上の組み合わせで選ばれる一種重合体あるいは共重合体、更に、これらの一種重合体、共重合体2種以上からなる混合物からなる混合物が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、等が、得られた組成物の耐薬品性が向上するため好ましく用いられる。
【0042】
また、これらオレフィン成分と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、一酸化炭素、等のオレフィンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体であっても良い。これら共重合体の具体例としては、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート・一酸化炭素3元共重合体、エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン・グリシジルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸・N−フェニルマレイミド共重合体、等が挙げられる。
【0043】
これらポリオレフィン系樹脂の重合方法には特に制限はなく、種々の方法で重合可能である。ポリエチレンであれば、重合方法により高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、等が得られるが、いずれも好ましく用いることができる。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに成形流動性を高めるために、本発明の特性(耐衝撃性,耐熱性等)を損なわない範囲で、本発明で用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物以外のシリコーンなどを用いることができる。本発明で用いられる(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物以外のシリコーンとは、(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物以外の広義のポリオルガノシロキサン,(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物と同一構造を有し分子量が請求項範囲外のものを指し、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン、等のジオルガノシロキサン化合物、トリメチルシルヘミオキサン,トリフェニルシルヘミオキサン、等のトリオルガノシルヘミオキサン化合物、及びこれらを重合して得られる共重合体、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、等が挙げられる。オルガノポリシロキサンである場合には、分子末端がエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、エーテル、等により置換された変性シリコーンも有用である。シリコーンの形状には特に制限はなく、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状、等の任意のものが利用可能である。
【0045】
さらに本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、本発明の特性(耐衝撃性,流動性,耐熱性等)を損なわない範囲で、強化充填剤を組み合わせで強化材料としてもよい。強化充填剤を添加することで、さらに耐熱性,機械的強度などの向上をはかることができる。強化充填剤の具体例としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、などの繊維状充填剤、ガラスビーズ、ガラスフレーク、タルク,マイカ,カオリン、ワラストナイト、スメクタイト、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。強化充填剤として特に好ましくは、珪酸塩化合物および/または繊維状強化剤である。
【0046】
珪酸塩化合物としては、化学組成にしてSiO2単位を含む粉体状、粒状、針状、板状などの形状を持つ化合物であって、例えば、タルク,マイカ,珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、珪藻土、スメクタイトなどが挙げられ、天然であっても合成されたものであってもよい。なかでもタルク、マイカ、スメクタイトが好ましい。該珪酸塩化合物の平均径[顕微鏡写真を画像処理することにより求められる円に換算した場合の粒径]には特に制限はないが、好ましい平均径としては、0.01〜100μmであり、さらに好ましくは、0.1〜50μm、さらに好ましくは0.3〜40μmである。平均粒径が0.01μm未満では強度改善効果が十分でなく、100μmを越えると、靭性が低下する傾向がある。
【0047】
さらに該珪酸塩化合物はシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などの表面処理剤で処理されていてもよい。該シラン系カップリング剤としては例えばエポキシ系シラン、アミノ系シラン、ビニル系シランなどが挙げられ、チタネート系カップリング剤としては、例えばモノアルコキシ型、キレート型、コーディネート型などのものが挙げられる。
【0048】
珪酸塩化合物を表面処理剤で処理する方法には特に限定はなく、通常の方法で実施しうる。例えば、層状珪酸塩に該表面処理剤を添加し、溶液中であるいは加熱しながら撹拌あるいは混合することで行える。
【0049】
繊維状強化剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維が挙げられる。繊維状強化剤を用いる場合、作業性の面から、集束剤にて処理されたチョップドストランドガラス繊維を用いるのが好ましい。また、樹脂と繊維状強化剤との密着性を高めるため、繊維状強化剤の表面をカップリング剤で処理したものが好ましく、バインダーを用いたものであってもよい。カップリング剤としては、上記と同様の化合物を挙げることができる。
【0050】
該強化充填剤にガラス繊維を用いる場合、直径1〜20μm、長さ0.01〜50mm程度が好ましい。繊維長が短すぎると強化の効果が十分でなく、逆に、長すぎると成形品の表面性や押出加工性、成形加工性が悪くなるので好ましくない。
【0051】
強化充填剤は一種あるいは2種以上混合して用いることができる。2種以上混合して用いる場合は特に制限はないが、好ましい組み合わせとしては、カオリン,スメクタイトおよび、ガラス繊維から選ばれる2種以上の強化充填剤である。
【0052】
強化充填剤の添加量は、本発明の特性(耐衝撃性,耐熱性等)を損なわない限り制限はないが、(A)ポリカーボネート樹脂および(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂又は熱可塑性ポリスチレン系樹脂の合計量100重量部に対して、0.5〜100重量部が好ましく、さらに好ましくは、1〜60重量部、特に2〜40重量部が好ましい。添加量が0.5重量部未満では機械的強度向上効果が小さく、100重量部を越えると、加工性や耐衝撃性などの特性を損なう傾向にある。
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明を損なわない範囲でさらに他の任意の熱可塑性あるいは熱硬化性の樹脂、例えば液晶ポリエステル系樹脂、ポリエステルエステルエラストマー系樹脂、ポリエステルエーテルエラストマー系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリサルホン系樹脂、等を一種あるいは2種以上あわせて添加しても良い。
【0054】
また本発明の熱可塑性樹脂組成物をより高性能な物にするため、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、等の酸化防止剤、リン系安定剤、等の熱安定剤、等を1種または2種類以上併せて使用することが好ましい。さらに必要に応じて、通常良く知られた、滑剤、離型剤、可塑剤、リン化合物などの難燃剤、難燃助剤、ドリッピング防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤、等の添加剤を1種または2種類以上併せて使用することが出来る。
【0055】
本発明の組成物の製造方法は特に限定されるものではない。例えば上記成分、及び他の添加剤、樹脂、等を必要に応じて乾燥後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて、溶融混練する方法等により製造することができる。また、配合剤が液体である場合は、液体供給ポンプなどを用いて2軸押出機に途中添加して製造することもできる。
【0056】
本発明で製造された熱可塑性樹脂組成物の成形加工法は特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、例えば射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形、等が適用できる。
【0057】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、種々の用途に好適に使用される。好ましい用途としては、家電、OA機器部品、自動車部品などの射出成形品、ブロー成形品、押出成形品、発泡成形品、などが挙げられる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下では特にことわりがない限り、「部」は重量部を、「%」は重量%を意味する。
【0059】
なお、樹脂組成物の評価は下記の方法で行った。
評価方法
得られたペレットを100℃にて5時間乾燥後、35t射出成形機を用い、シリンダー温度280℃、金型温度50℃にて厚み3.2mmバー及び6.4mmバーの試験片を作成した。
耐衝撃性:厚み3.2mmバーを用いASTM D−256に従って、23℃にてノッチ付きアイゾット衝撃強度の測定を行い、耐衝撃性を評価した。
耐熱性:厚み6.4mmバーを用いASTM D−648に従って、荷重0.45MPaにて荷重たわみ温度の測定を行い、耐熱性を評価した。
流動性:ペレットを120℃にて5時間乾燥後、JIS K6730に従い280℃,荷重2160gのメルトインデックス(MI)の測定を行い流動性を評価した。
実施例1ポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−1)の製造
メチルトリクロロシラン200ml,ジフェニルジクロロシラン15ml,トリフェニルクロロシラン15mlをフラスコ内にて15〜20℃のイオン交換水600mlに攪拌しながら徐々に添加した。添加終了後、水分を減圧除去しながら徐々に120℃に加熱し、4時間反応を行った。なお、反応終了時に過剰量のトリメチルクロロシランを添加し末端を封鎖した。得られた反応物を冷却してポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−1)を得た。Varian社製XL−300装置を用いNMRスペクトルを測定した結果、一般式(1),(2),(3)で表される構造単位の構成比率が85:3:12、全R及びR'中残存しているアルコキシル基及び水酸基の割合はモル比で2.6%であった。また、ゲル浸透グロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量は8200であった。
【0060】
粘度平均分子量が約22000のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A−1)70重量部と、対数粘度が約0.75dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂(B−1)30重量部、ポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−1)7重量部、燐系安定剤としてアデカスタブHP−10(旭電化製商品名)0.3重量部,を予めドライブレンドした後、シリンダー温度を280℃に設定したベント付き2軸押出機[TEX44:日本製鋼所株式会社製商品名]のホッパーに供給し溶融押出することにより、樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
実施例2〜6:各配合剤を表1及び2に示した組成に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。さらに、配合剤は以下のものを用いた。評価結果を表1及び2に示す。
【0061】
(A)ポリカーボネート系樹脂として
・粘度平均分子量が約28800であるビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂(A−2)
(B)熱可塑性ポリエステル系樹脂、または熱可塑性ポリスチレン系樹脂として
・対数粘度が0.8dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂(B−2)
(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物として
・ポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−2):メチルトリメトキシシラン,ジフェニルジメトキシシラン,トリフェニルエトキシシランとの反応により、一般式(1),(2),(3)で表される構造単位の構成比率が65:10:25,全R及びR'中残存しているアルコキシル基及び水酸基の割合は、モル比で1.3%、分子量4800であるポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−2)を得た。
・ポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−3):フェニルトリメトキシシラン,トリメチルメトキシシラン及びトリフェニルメトキシシランとの反応により一般式(1),(2),(3)で表される構造単位の構成比率が42:0:58,全R及びR'中残存しているアルコキシル基及び水酸基の割合は、モル比で4.1%、分子量2400であるポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−3)を得た。
・ポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−4):フェニルトリメトキシシラン,ジメチルジメトキシシラン,トリメチルメトキシシランとの反応により一般式(1),(2),(3)で表される構造単位の構成比率が67:5:28,全R及びR'中残存しているアルコキシル基及び水酸基の割合は、モル比で0.2%、分子量7800であるポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−4)を得た。
・ポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−7):メチルトリクロロシラン,ジフェニルジクロロシランとの反応により一般式(1),(2),(3)で表される構造単位の構成比率が30:70:0,全R及びR'中残存しているアルコキシル基及び水酸基の割合は、モル比で4.6%、分子量8,000であるポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−7)を得た。
・ポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−8):メチルトリメトキシシランの反応により一般式(1),(2),(3)で表される構造単位の構成比率が70:28:2,全R及びR'中残存しているアルコキシル基及び水酸基の割合は、モル比で19%、分子量9600であるポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−8)を得た。
・ポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−9):メチルトリメトキシシラン,トリメチルメトキシシランとの反応により一般式(1),(2),(3)で表される構造単位の構成比率が97:0:3,全R及びR'中残存しているアルコキシル基及び水酸基の割合は、モル比で9%分子量6800であるポリオルガノシルセスキオキサン化合物(C−9)を得た。
・ポリオルガノシロキサン化合物(C“−10):分子量8800であるポリジフェニルシロキサン(一般式(1),(2),(3)で表される構造単位の構成比率が,0:98:2)
比較例1〜10
各配合剤を表1及び2に示した量に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。評価結果を表2に示す。比較例1、2では、ポリオルガノシルセスキオキサン化合物を添加しないため、耐衝撃性が実施例に比べ劣る。比較例3,4では、ポリカ−ボネート系樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂の配合割合が本発明の請求範囲外であるため流動性あるいは耐衝撃性が実施例に比べ劣る。比較例5、6では、ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の添加量が本発明の請求範囲外であるため、成形加工性が不良となり成形不可能あるいは、耐衝撃性が実施例に比べ劣る。比較例7,8,9,10では、ポリオルガノシルセスキオキサン化合物が本発明の請求範囲外であったり、ポリオルガノシロキサン化合物を用いたため、耐衝撃性が実施例に比べ劣る。
【0062】
以上から明らかであるように、本発明の組成物は、流動性、耐衝撃性のいずれにおいても優れていることがわかる。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた流動性を有し、耐衝撃性の改善された樹脂組成物が得られる。これらは工業的に非常に有用である。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
Claims (3)
- 前記(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物を構成する単位(1)と(2)の割合がモル比((1)のモル数/(2)のモル数)で5/6以上であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
- 前記(C)ポリオルガノシルセスキオキサン化合物の重量平均分子量が1,000〜8,200であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
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