JP3875288B2 - カートリッジ濾過装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、濾過や脱気に使用する支持体を配置した多孔質膜エレメントに関し、特に超純水をはじめとした半導体用ウエハ処理液や製薬その他の各種薬液中の微粒子の除去に用いる多孔質濾過膜やそれら液中に溶存している溶解気体を膜を介して脱気するために用いる脱気膜を積層等して稠密に配するにおいて、当該濾過膜等に面する有効な流体流路を確保するために配されるスペーサないし支持体を有してなる多孔質膜稠密エレメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
液体中に含有される様々な大きさの粒子を除去するため、あるいは液中の溶存気体を減圧下に脱気するために、多孔質膜は広く適用されてきている。しかし、これらの多孔質膜は概して厚みが薄く機械的強度が不足するために種々の支持体を添えて使われてきた。さらに、このような多孔質膜による上記適用を考えた場合には単位空間当たりできる限り大面積を供することができるように、即ちより稠密な多孔質膜の装着を考えて、例えば多孔質膜をスパイラル状に巻いて使用したり、たくさんのプリーツを形成させることにより、前記大面積確保の目的を達成する数多くの試みがなされてきた。また同時に、稠密に装着された多孔質膜表面同士が触れ合い有効面積を損なわないように適宜空間を保持するためのスペーサが併用されてきた。その上更に多孔質膜が取り付けられた装置内を種々の液体や固液混相流が淀みなく流れるようにするために多孔質膜面と各種流体との接触を促進するため多孔質膜間に種々の形態の充填物が配置されてきた。このような提案として多孔質濾過膜に関して具体例を挙げるなら、特公昭57−26804号や特公平5−41284号には、多孔質濾過膜や不織布濾過膜をプリーツ状に折り畳みハウジング内に装着して濾過装置とすることが開示され、単にハウジングの中に一本の筒状のフィルタエレメントを装着する濾過装置に比較して容積当たりの濾過面積を大きくすることも行われてきた。一方、脱気膜に関して具体例を挙げると例えば公開特許公報平3−278805号には内部にスペーサを有する袋状脱気膜と乱流促進材とを重ね合わせてセンターシャフトに巻き付け、かつ袋状脱気膜の内部とセンターシャフトの内部とを連通状態としたスパイラル状脱気膜モジュールが示されている。また、公開特許公報平5−131122号においても同様な封筒状の疎水性気体透過膜をネット状流路材とともに多孔質中心管のまわりに巻き付けるスパイラル型気体透過膜エレメントを提案している。あるいはまた、公開特許公報昭63−59305号に記載のように多孔質膜をサンドイッチあるいはプリーツ状に折り曲げて中央開口部を有する形状にし端部を液密に結合せしめた大径側の低圧部と小径側の通液部とに区画されるエレメントをこれを収容する通液出入口と低圧系への接続口を備えた円筒状容器に液密、気密に結合した脱気装置が提案されてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来技術においては多孔質膜の支持体、スペーサ、乱流促進材などが用いられそれなりの効果を上げてはきたが、稠密なエレメントを組み立てるに当たり部品点数が多く各組み立て工程での思わぬミスが高い製品不良率に結びつくので、部品点数を少なくし、組み立てにおける不良率を低下させ、組み立ての効率をも向上させることを課題とした。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以上のような背景から、多孔質膜の支持、多孔質膜間のスペース確保、多孔質膜と流体間の接触促進などのための部品点数を少なくしても濾過や脱気に適用性の高い稠密に多孔質膜を装着し得るエレメントを完成することを目指して検討を重ねた。その結果、経と緯のいずれか一方もしくは両方に所定間隔毎に異なる径を有する糸を織り込んだ織布ネットをスペーサないし支持体として配置する多孔質膜稠密エレメントは、多孔質膜を強度的に補強支持するとともに、多孔質膜の前後に流体流路となる層状空間を提供する、特に多孔質膜を稠密に配置した場合であっても多孔質膜に適切な膜面間隔を提供し、その結果、流体の流れを適当に混合し液と多孔質膜間の接触状況を随時更新し課題を達成し得ることを見いだし本願発明を完成するに至った。
【0005】
したがって、多孔質膜エレメントの組み立てにおいては多孔質膜の片面もしくは両面に、本願発明になる異径の糸を一定間隔で経もしくは緯さらには経緯に織り込んだ織布ネットを配置し、必要に応じ事前に多孔質膜と部分的に結合して、例えばロール状やプリーツ状に仕上げ、即ち稠密な多孔質膜のエレメントとすることにより一挙に多孔質膜が支持され、多孔質膜に面する流体流路(層状空間)ないし多孔質膜間のスペースが確保され流量をより大きくとれ、多孔質膜と流体間の接触が促進されることとなる。即ち、濾過装置への当該多孔質膜エレメントの適用においては、固液混相流は多孔質膜間あるいはハウジングと多孔質膜間に確保されたスペース(層状空間)を流れるとともに異径の存在のため液膜接触状況が更新され有効に確保された多孔質膜の大きな濾過面積を介して濾過される。さらに、脱気装置への本願発明の多孔質膜エレメントの適用においては、液体は確保された多孔質膜間あるいはハウジングと多孔質膜間のスペースを流れ、その流れと多孔質膜との接触が促進され、有効に確保された大きな脱気面積の多孔質膜を介して液側の溶存気体が円滑に取り除かれる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に具体的な実施の形態を挙げて詳しく本発明内容を説明する。
【0007】
本発明における織布ネットは通常の織布とは異なり経緯とも多孔質膜を支持する機能はもたせつつも、寒冷紗のように疎な間隔を有し流体や固液混相流が多孔質膜表面へ容易に接触させ得ることが肝要であるので、多孔質膜の強度や経緯の糸径に応じてこのような疎な間隔は種々設定されねばならない。各糸間の隙間間隔として概ね0.1mm前後から2mmを選択し得、特に0.2mmから0.5mmが好ましい。糸径としては0.05mmないし0.5mmが好ましい。ここに所定間隔で織り込んだ異径の糸径とは経だけを対象として、もしくは緯だけを対象として、更には経緯とも対象として、前記糸径に比較して4分の1から1未満の倍率あるいは1倍を越えて4倍程度までが適当であるが、好ましくは2分の1から1未満の倍率あるいは1倍を越えて2倍程度までが好ましい。以下に記述を簡単にするため太い径を有する糸を異径の糸として記載するが、これらの異径糸の存在割合は全体の3分の1から6分の1程度で所定間隔で繰り返し織り込まれ、経緯の一方もしくは両方に織り込むことにより課題が達成し得た。これらの異径糸を織り込んだ織布はその構造を保持するために必要最小限、経緯の交点において例えば、エポキシ系、アクリル系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、エチレン共重合樹脂系などといった各種バインダーで結合したり、公知の結合方法例えば加熱ロールを通過せしめる高周波を適用するなどといった熱融着の技法を適用して結合してもよい。織布の材料は接触する流体や固液混相流により損傷されないものを選択することは当然ながら使用するバインダーも使用条件下で結合力が充分に得られるように選択することも不可欠である。また、熱融着を行う場合には融点が高く融解する前に分解する材料は採用し難い。なお、後述するように織布を多孔質膜に直接必要な個所だけバインダーや熱融着により結合してもよい。かくして織布の材料としては様々な天然繊維や合成繊維が採用し得、特に合成繊維は熱融着が採用できるので好ましい。具体的に記載するなら、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアクリロニトリルなどの代表的合成繊維の他にポリオレフィン、そのアルコキシ誘導体さらにはそれらの一部もしくは全ての水素を塩素やフッ素などのハロゲン元素で置換してなる合成繊維が採用し得る。適切なバインダーが存在しない場合は専ら前記加熱により融着し、結合されるが、融点を有せずに分解する繊維は対象とはなし難い。前述した多孔質膜の装着に当たり稠密とは単位体積当たりに沢山の多孔質膜を装着することを意味し、換言するなら単位体積当たり可能な限り大きな濾過面積や脱気面積を確保することを意味し、具体的には長尺な多孔質膜をロール状に巻いて装着するとか、折り畳んでプリーツ状にして装着することあるいは複数枚の多孔質膜を積層することが知られておりさらにはプリーツ状に折り畳まれたものをロール状に形作るなどの装着を挙げ得、さらには適切なエレメントの存在下、多孔質膜を積層して装着して単位体積当たりの多孔質膜面積を広く確保することと言える。なお、本発明の多孔質エレメントとしては前記したような異径糸を織り込んだ織布ネットを有するものであればこのような稠密エレメントに限定されず、単純な一層のみの多孔質膜を有するエレメントも当然に含まれるものである。
【0008】
ここに多孔質膜とは例えば10μmないし200μmの膜厚を有し、孔径において0.01μmないし10μm前後の膜を意味し更に開孔率に言及するなら大きい場合で80%前後、小さい場合で10%前後であり、材質としては各種セルロース誘導体、ポリオレフィン、アルコキシポリオレフィン、あるいはこれらのハロゲン置換ポリオレフィン誘導体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、その他の市販されている多孔質膜を列挙し適用し得る。当然ながらこれらの材料選定は前記異径繊維からなる織布におけると同様使用場面を想定し化学的にも、機械的にも損傷を来さないものを選定することは当然当業者の知るところである。
【0009】
多孔質膜と前記織布ネットは重ね合わせて、必要に応じて多孔質膜の両面に前記織布ネットを配置し、ロール状やプリーツ状に加工するがこれら加工に先立ち両者を所々点状もしくは線状にバインダーもしくは熱融着し前記形状加工工程に供してもよい。特に織布が予め結合されていない場合には作業性を確保する意味からも上記多孔質膜とネットとの結合は好ましい。上記の熱融着においては多孔質膜の融点とネットの融点の関係は後者が低いことが膜の損傷を回避する上から好ましくネットの部分融解物が多孔質膜の孔の内部に侵入しいわゆるアンカー効果により両者を強固に結合し得るところとなる。
【0010】
例えばポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜と所々熱融着された四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体製異径織布の組み合わせはそのまま、もしくは互いに上述した熱融着を適用しプリーツ状のカートリッジとなし得、耐薬品性の優れた濾過膜なり脱気膜を提供するところとなる。
【0011】
また、上述の本願発明の適用は単に平膜状の多孔質膜だけを対象としたものではなく、同様の機能を有する不織布膜などにも適用し得ることを含み、換言するなら前記多孔質膜は不織布などからなる同様機能を有する膜状構造物、さらにはそれらの複合物をも含めて用いている。
【0012】
図1は本願発明に係る多孔質膜エレメントの一形態としてのプリーツ型カートリッジフィルタの切断面にフィルタと織布ネットの装着状況をわかりやすく示したもので流体は入口1から流入し、ハウジングと円筒状のプリーツの隙間から中心部に向かって移動する間に粒子が取り除かれ濾液は円筒状のプリーツの内径部分にある多孔のコア3を通過し出口2へと流れる構造になっており、プリーツは多孔質濾過膜5の両面に本願発明になる織布ネット6で挟持されている様子を明示している。図2にはこのうち織布ネット6だけを拡大して示した。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を具体的実施例に基づきより詳細に説明する。
【0014】
[実施例1] 異径の繊維を含む織布ネットの通水性試験
本通水試験に用いた装置の主要構成部分を簡単に図3に示した。即ち、直径142mmの円形に切りとった種々の織布サンプル6、その上面に外径142mm、内径40mmのドーナツ型の厚さ0.3mmの塩化ビニール樹脂製シート8およびその下面に直径90mmの円形の厚さ0.3mmの塩化ビニール樹脂製シート8をそれぞれ中心の位置を同じくして配置し更にこれらシートの両外面をやはり中心の位置を同じにした周辺を外径142mmの平滑な金属製ドーナツ型円盤で縁どりされた直径111mmの50メッシュの円形の金網7で挟み、これら織布、2枚のシートおよび2枚の縁どりされた金網の円周空隙部には適宜充填物などを挟み込み直径142mmφ用ディスクフィルタ試験装置(図示は略)に液密に収納した。ついで、一定水頭(実験では0.5m)のもとに繊維交点を熱融着した四フッ化エチレン−パーフルオロエトキシポリエチレン共重合体製の織布の上面金網側から大気開放されている下面金網側に向けて一定量(実験では200ml)の水を流しその所要時間を測定した。測定結果を表1に記載した。なお、比較のために異径を織り込まない織布ネットを標準ネットと呼称して同様の試験を行い併せて結果を表1に記載した。
【0015】
【表1】
【0016】
これらの結果から、本願発明の織布ネットの通水性が良好なことが明らかである。
【0017】
[実施例2] プリーツ状多孔質膜収納カートリッジ濾過装置の通水性試験
長方形のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる公称孔径0.05μm、膜厚20μm、開孔率75%の多孔質膜の両面にほぼ同じ大きさの本願発明になる四フッ化エチレン−パーフルオロエトキシポリエチレン共重合体製織布ネットをそわせ、長尺部分を所定長さに折り畳みプリーツを形成し、全体として円筒状とし、短尺部分の両端プリーツでほぼ等寸法の四フッ化エチレン−パーフルオロエトキシポリエチレン共重合体製フィルムを挟持し熱融着し、更にハウジング内に液密に装着した。ハウジング入口に一定圧力(0.2kgf/cm2 )下に純水を供給し大気開放端の出口で流速を測定し表2に示した。比較のために前記標準ネットを使用したプリーツ状多孔質膜収納カートリッジ濾過装置の通水性試験結果をも表2中に示した。
【0018】
【表2】
【0019】
以上の結果から本願発明になるプリーツ状多孔質膜収納カートリッジ濾過装置は通水性の高いことが判る。
【0020】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、多孔質膜エレメントの組み立てにおいて多孔質膜の片面もしくは両面に、本願発明に係る異径の糸を一定間隔で経もしくは緯さらには経緯に織り込んだ織布ネットを配置するだけで多孔質膜の支持、多孔質膜間のスペース確保、多孔質膜と流体間の接触促進などの効果を一挙に確保し得、従って多孔質膜エレメント、特に多孔質膜を稠密に配してなる多孔質膜稠密エレメントの組み立てが極めて単純化されその結果製品の不良率を著しく低下させることができた。また多孔質膜稠密エレメントを組み立て濾過や脱気に用いることにより多孔質膜の支持、多孔質膜間のスペース確保、多孔質膜と流体間の接触促進をはたした上で単位体積当たりに多大なる多孔質膜の有効膜面積が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態に係るプリーツ型カートリッジフィルタの縦断面図で、フィルタの一部を展開して示す。
【図2】本発明に用いられる織布ネットの一例を拡大して示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例において用いた織布ネット通水試験装置の主要構成部分を示す説明図である。
【符号の説明】
1 混相体入口
2 濾過流体出口
3 コア
4 ドレン
5 多孔質濾過膜
6 織布ネット
7 円形金網
8 ビニールシート
Claims (2)
- 0.1mm〜2mmの所定間隔で配置されている0.05〜0.5mmの糸径を有する経糸と緯糸のいずれか一方もしくは両方に、前記糸径の1.4倍〜4倍の範囲で異なる径を有する異径の糸を織り込んだ織布ネットを多孔質膜に対するスペーサないし支持体として配置した多孔質膜エレメントを、プリーツ状に折り込んで円筒状に形成し、ハウジング内に収納したカートリッジ濾過装置。
- 他の糸は前記経糸または緯糸に対して6分の1ないし3分の1の割合で存在する請求項1に記載のカートリッジ濾過装置。
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