JP3873562B2 - 弁構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弁構造体の製造方法に関するものであり、特に、インクカートリッジに組み込まれている弁構造体として好適な弁構造体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばインクカートリッジなどに組み込まれている弁構造体は、弁座と、この弁座に対して開閉可能に対応する弁体と、弁体を弁座に対する閉鎖方向へ付勢するバネとを備えている。そして、通常は弁体が弁座に当接して閉弁され、外部装置の供給針等により弁体が移動されると開弁される構造となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、弁構造体を容器に組み付ける際には、弁体や弁座が傾いて組み付けられてしまうことがあり、この際には、弁体や弁座とのシール性が十分に保たれない。従って、インクカートリッジなど、流体を収容している容器にこの弁構造体が組みつけられる場合には、長期使用により、弁体と弁座との間、弁座と容器との間から流体が洩れ出るなどの問題が生じていた。
【0004】
このため、このようにシール性が不十分な弁構造体をそのまま完成品とすることは、その品質を落とすことに繋がるため、製造工程においてシール性の確認が行われている。しかし、このシール性を容易に行える方法がほとんど具体化されておらず、そのため弁構造体の組付段階においてシール性の確保を達成できる製造方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する課題に着目してなされたものである。従って、その目的とするところは、前述したシール性が確保できる弁構造体の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、流体を外部装置に供給する容器の供給部に、外部装置の供給針と嵌合する弁座と、バネによって常時弁座側に押圧される弁体とを設けてなる弁構造体の製造方法において、供給部にバネと弁体とを挿入した後、弁体を弁座に対する着座位置よりも前進しない位置に配置した状態で、弁座を供給部に挿入させるものであって、前記弁座が略円筒形状を呈し、その中心の孔に軸状治具の先端部を嵌合して、その状態で弁座を搬送して、前記供給部に挿入するとともに、前記弁座を保持した前記軸状治具の先端部にて弁体を着座位置から後退するように押圧するものである。
【0007】
従って、弁体が弁座に対する着座位置より前進してない位置で、弁座を挿入するので、弁体をその軸方向に沿って傾くことなく規定の位置に配置した状態で組み付けを行うことができる。また、弁座が弁体と接触せずに、弁座を挿入できるので、弁体は、その傾きに追従せずに、軸方向にのみ移動して弁座に着座する。従って、弁体と弁座との間のシール性を確保できる。また、弁体が着座する弁座の座部と、容器とシールをなす弁座の外周部とが、搬送のために他の部材と接触しないので、それら座部及び外周部が傷つくことがなく、弁座を挿入する際に、容易に弁体を押圧することができる。さらに、軸状治具は弁体のシール領域を押圧することがないため、良好なシール性を確保できる。さらに、弁座を保持した軸状治具の先端部で弁体を着座位置から後退するように押圧すれば、弁座を搬送して挿入する製造工程を一連の工程として行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の弁構造体の製造方法において、弁体を弁座に対する着座位置から後退した位置に配置して弁座を供給部に挿入させるものである。従って、より確実に弁体を弁座に着座できるので、弁体と弁座との間のシール性をより確実に確保することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の弁構造体の製造方法において、前記弁座が、自身と前記容器との間をシールするものである。従って、弁座自身が容器との間のシール性を確保するので、容器と弁体との間をシールする部材を別に設けずとも、高いシール性が得られる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の弁構造体の製造方法において、前記弁体のシール面を吸着して搬送し、前記供給部に挿入させるものである。従って、弁体を取り付ける際に、搬送手段は弁体の直径分のスペースを有するだけでよく、弁体を取り付ける供給部として搬送手段のための余分なスペースを設ける必要がなく、供給部を小さくすることができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の弁構造体の製造方法において、弁体の吸着における吸着部材の接触領域が、シール面のシール領域から外れたところにあるものである。従って、シール領域が損傷しないので、良好なシール性を確保できる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、流体を外部装置に供給する容器の供給部に、外部装置の供給針と嵌合し、弾性材料でなる弁座と、バネによって常時弁座側に押圧される弁体とを設けてなる弁構造体の製造方法において、供給部にバネと弁体とを挿入した後に弁座を挿入し、この弁座の複数位置を順に挿入方向に押圧するものである。従って、弁座を押圧したときに、弁座全体が傾いて供給部に挿入された場合であっても、弁座の複数位置を順に挿入方向に押圧することで、その傾きが補正されて、供給部にほぼ水平状態で挿入される。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記弁座の複数位置を順に挿入方向に押圧することに代えて、前記弁座の上面の一部分を押圧するとともに、その押圧位置を移動させるようにしたものである。従って、弁座を押圧したときに、弁座全体が傾いて供給部に挿入された場合であっても、上面の一部分を押圧するとともに、その押圧位置を移動させることで、その傾きが補正されて、供給部にほぼ水平状態で挿入される。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に載の発明において、前記押圧位置の移動が連続的に行われるようにしたものである。従って、その傾きがより均一に補正されることができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8の何れかに記載の弁構造体の製造方法において、前記流体がインクであり、前記容器がインクカートリッジであるものである。
従って、流体がインクであり、容器がインクカートリッジである場合には、本発明を適用すると、特にその効果が有効に得られるものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を、インクカートリッジに適応した弁構造体の製造方法として具体化した一実施形態を図1乃至図7に従って説明する。
【0026】
図1に示すように、外部装置であるプリンタ30に交換可能に備えられるインクカートリッジ10は、例えばプラスチックなどの合成樹脂によって、全体としてほぼ箱形をなすように、カートリッジ本体10bと、このカートリッジ本体10bの上面開口を閉塞する蓋部材11とにより構成されている。この蓋部材11には、その上面の細溝11bを介して大気と連通している大気孔11aと、インク注入口11cとが設けられている。そして、蓋部材11の上面には、インクの水分蒸発防止のためのフィルム25が被覆されている。なお、このフィルム25は実際には薄いものであるが、説明し易いように図1では、その厚みを誇張して表示している。
【0027】
このインクカートリッジ10の図1の左方の下部には、カートリッジ本体10bの内側及び外側に突出するボス部10aが設けられ、このボス部10aには、供給部である段付孔12が下方へ向かって形成されている。図2,図3に示すように段付孔12の上部(図2〜図7においては上下が反転している)には、2つの対向するスリット13aを有したコップ形状の突部13が下方に向かって突設されており、この突部13の下端には、下方に向かって拡開する斜状の内周面を有する孔13bが形成されている。また、突部13の周囲における突部13の下面は、バネ16の一方のバネ座となっている。なお、カートリッジ本体10bの内部14には、図示していないがインクを保持している公知の多孔質部材が配設されている。
【0028】
段付孔12内には、例えばゴムなどの弾性部材からなりほぼ円筒形状を呈している弁座18と、弁体17とを有した弁構造体15が配設されている。弁座18の外周には、段付孔12の内周面との間でシールをする環状突部18bが一体形成され、その内周には、プリンタ30の供給針31に嵌合される中心孔18aが形成されている。弁座18の中心孔18aの上端周縁は外方に若干突出しており座部18cを形成している。他方、弁体17は、弁座18側の端部17bが拡径されて、座部18cに対して開閉可能に対向している。この端部17bはバネ16の他方のバネ座となっており、このバネ16によって弁体17が常時弁座18側に付勢されている。弁体17は、端部17bの下面が、座部18cに当接するシール面17cとなっており、その反対側は孔13bに貫通して、その先端には孔13bの縁部に係合し抜け止め17aが形成されている。また、この抜け止め17aはその外周面が下方に向かって傾斜する斜状に形成されている。
【0029】
なお、プリンタ30にインクカートリッジ10が備え付けられると、この弁構造体15の弁座18の中心孔18aには、プリンタ30に備え付けられた供給針31が下方から嵌合する。そして、この供給針31が弁体17を押圧して、弁体17を弁座18から上方へ離座させ、内部14に保持されているインクをプリンタ30に供給する。
【0030】
次に、本実施例における弁構造体15の製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、成形されたカートリッジ本体10bの上下を反転させる。次に、図3に示すように、段付孔12の周囲のバネ座に、バネ16を配置する。
【0031】
次に、図4に示すように、弁体17が、例えばエア吸引装置などに接続された管20により、そのシール面17cを吸着されて搬送される。この場合、管20はその外径がシール面17cの直径とほぼ同じで、管20に対するシール面17cの接触領域は、座部18cに対するシール面17cの接触領域の外方にある。そして、管20に吸着された状態の弁体17を降下させると、弁体17の端部17bはバネ16を押圧し、かつ弁体17の抜け止め17aは孔13b及び抜け止め17aの両斜面の作用により、孔13bを押し広げる。そして、図4に示すように、バネ16の付勢力を受けて抜け止め17aが突部13に係合した状態で、弁体17が配設される。
【0032】
次に、弁座18の中心孔18aに治具21の軸部21aを嵌合させて、図5に示すように弁座18を搬送する。そして、図6に示すように、弁座18よりも下方に突出している治具21の軸部21aの先端部21bにより、弁体17を弁座18に対する着座位置から下方後退側に押圧しながら、弁座18を段付孔12に装着させる。そして、治具21を弁座18の中心孔18aから抜くと、弁体17は、バネ16の付勢力により図の上方に移動し、図7に示すように、弁座18の座部18cに着座する。なお、治具21は、本実施の形態では、加圧手段であり、かつ第1及び第2の軸状治具である。
【0033】
次に、組み上がった弁構造体15のシール性のチェックを行う。まず、段付孔12の上流側、すなわちカートリッジ本体10bの内部14側をエアにより加圧する。このとき弁体17のシール面17cが弁座18の座部18cに正座していない場合には、弁構造体15の上流側から下流側へと流れる空気が、予想される所定量より大きくなる。従って、この流量を測定することで、弁座18とカートリッジ本体10bとのシール性及び弁座18と弁体17とのシール性を確認する。次に、段付孔12の上流側を減圧すると、今度は、弁体17のシール面17cが弁座18の座部18cから離座した状態となり、このとき弁体17が傾いて、そのシール面17cが弁座18の座部18cから確実に離座していない場合には、下流側から上流側へと流れる空気量が、予想される所定量より少なくなる。従って、この流量を測定することで、カートリッジ本体10bとのシール性及び弁座18と弁体17とのシール性を確認する。
【0034】
このようにしてシール性を確認して、不具合がないと判断できたら、カートリッジ本体10bの内部14に多孔質部材を挿入するとともに、カートリッジ本体10bの上部開口に対して蓋部材11を、例えば振動溶着などで固着する。次いで、インク注入口11cからインクを多孔質部材に充填する。このとき、弁体17と弁座18との間から段付孔12の下流側へのインクの漏洩の有無によっても、弁座18とカートリッジ本体10bとのシール性及び弁座18と弁体17とのシール性を確認する。
【0035】
次に、インクを多孔質部材全体に安定して保持するために、図示しないエア吸引装置などによりインクカートリッジ10の内部14を減圧し、蓋部材11の上にフィルム25を封止する。このとき、弁座18とカートリッジ本体10bとの間で、シール性が保たれていれば、図1の二点鎖線で示すように、フィルム25は大気孔11a及びインク注入口11cの部分が、大気孔11a、インク注入口11c内に引っ張られるように変形する。この変形をレーザ光の照射等により確認すれば、弁座18とカートリッジ本体10bとのシール性が確認されて、インクカートリッジ10が完成する。
【0036】
次に、上述の実施形態によって期待できる効果について、以下に記載する。
(a) 本実施の形態においては、弁座18ではなく、治具21で弁体17を押圧しながら、弁座18を挿入しているので、弁座18が仮に傾いて挿入されたとしても、弁体17は、その傾きに追従せずに、軸方向にのみ移動して弁座18に着座する。従って、弁体17には、軸線方向以外にほとんど力が加わることがなく、弁体17のこじれを防止して、弁体17と弁座18との間のシール性を向上させることができる。また、治具21によって弁体17を押圧しているので、弾性材料である弁座18を介して押圧するよりも容易にかつより確実に弁を押圧することができる。そして、治具21で弁座18を保持して組み付けるので、弁座18の形状不良によるシール性の低下や弁座18の挿入時の傾きを少なくすることができ、シール性を向上させた弁構造体を容易に製造することができる。
【0037】
(b) 本実施の形態においては、管20により弁体17のシール面17cを吸着して搬送したので、弁体17を取り付ける際に、その必要スペースは、弁体17の直径だけの大きさだけでよく、供給部を小さくすることができる。このため、カートリッジ本体10bの内部14のスペースを大きくでき、インクの収容量を多くすることができる。また、外部装置との接続構造部を小さくすることができ、内部14のスペース拡大に寄与できる。
【0038】
(c) 本実施の形態においては、シール面17cの直径とほぼ同径の管20によって弁体17を吸着して搬送したので、弁体17のシール面17cの外周側のみが管20に接触することになり、実際のシール領域に、傷をつけることなく搬送することができる。従って、シール面17cが傷つくことによるシール性の低下を防止することができる。
【0039】
(d) 本実施の形態においては、弁座18の中心孔18aに治具21に嵌合して弁座18を搬送した。そのため、治具21は、カートリッジ本体10bとシールをする弁座18の外周に接触することがないので、弁座18の外周がほとんど傷つく可能性がほとんどなく、よりシール性を向上させることができる。
【0040】
(e) 本実施の形態においては、治具21が弁座18を搬送し、弁座18を段付孔12に挿入する際に治具21が弁体17を押圧するようにしたので、弁座18を搬送して挿入する製造工程を一連の工程として行うことができる。従って、シール性を向上させた弁構造体を製造しても、その製造時間が余分にかかることがない。
【0041】
(f) 本実施の形態においては、弁構造体15を組み立てた後に、段付孔12の上流側であるインクカートリッジ10の内部14を減圧して、シールの確認を行うので、ほぼ確実、かつ容易に、シール性の確認を行うことができる。
【0042】
(g) 本実施の形態においては、弁構造体15を組立て後、インクカートリッジ10にインクを注入した直後に、そのインクが漏洩するか否かによって、弁座18と段付孔12及び弁体17とのシール性の確認を行うようにした。従って、容易に、確実性をもって、シール性の確認を行うことができる。
【0043】
(h) 本実施の形態においては、弁構造体15を組立た後、インクカートリッジ10の蓋部材11を固定し、更に蓋部材11にフィルム25を封止した後に、もう一度、フィルム25の変形によりシールの確認を行った。従って、容易に、確実性をもって、シール性の確認を行うことができる。
【0044】
(i) 本実施の形態においては、蓋部材11に被覆したフィルム25の変化量によりシール性の確認を行う際にインクカートリッジ10の内部14を減圧したが、この減圧は、内部14のインクを安定して保持するために行われる作業であるので、余分な工程を増やすことなく、シール性の確認を容易に行える。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について、上記第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
【0045】
本実施の形態においても、上記第1実施例と同様に、図4に示すように段付孔12にバネ16と弁体17とを装着する。そして、次に、従来と同様に、弁体17がバネ16に抗するように弁座18で押圧しながら、弁座18を段付孔12に挿入する。このとき、仮に、図8で示すように弁座18が斜めに入り、弁体17が傾斜した状態となることがある。そこで次に、弁座18の外周を例えば4分割の領域A,B,C,Dとして、これを順次、例えば、領域Aを押圧した後、領域B、領域C、領域D、領域A・・・というように、全周にわたって順に連続的に再押圧する。すると、弾性体からなる弁座18は、ほぼ水平となり、図7で示す状態に収まる。勿論、このとき弁体17は、弁座18の座部18cに当接するが、弁体17がほぼ水平となるので、弁体17のシール面17cが弁座18の座部18cに正座する。
【0046】
そして、上記第1の実施の形態と同様に、組み上がった弁構造体15のシール性のチェックまでを行う。そして、このチェックによってシール性に不具合がないと判断されると、カートリッジ本体10bの内部14に多孔質部材を挿入するとともに、カートリッジ本体10bの上部開口に対して蓋部材11を、例えば振動溶着などで固着する。次いで、この弁構造体15を減圧室に挿入し、インク注入口11cからインクを多孔質部材に充填するとともに、インクカートリッジ10を減圧室内に位置させて、大気孔11aから多孔質部材全体を減圧する。そして、多孔質部材が減圧された状態で、蓋部材11の上にフィルム25を封止する。そして、インクカートリッジ10を減圧室から取り出す。このとき、弁座18とカートリッジ本体10bとの間で、シール性が保たれていれば、上記第1実施例と同様に、図1の二点鎖線で示すようにフィルム25は大気孔11a及びインク注入口11cの部分が、大気圧と内部14との間の圧力差により大気孔11a、インク注入口11c内に引っ張られるように変形する。この変形をレーザ光の照射等により確認すれば、弁座18とカートリッジ本体10bとのシール性が確認されて、インクカートリッジ10が完成する。
【0047】
従って、この第2の実施形態においては、前述した第1の実施形態における(b),(c),(g)〜(i)に記載の効果に加えて、次のような効果を得ることができる。
【0048】
(j) 本実施の形態においては、弁座18が斜めに挿入されたとしても、弁座18の外周を4分割に分け、その全周にわたって順に連続的に再押圧したので、弁座18が有する弾性力により、その傾きがほとんど補正されて、弁座18が段付孔12にほぼ水平の状態で挿入される。従って、弁体17もほぼ水平の状態で配設されることになるので、17のシール面17cが弁座18の座部18cにより確実に着座する。そのため、弁体17と弁座18との間のシール性を向上させることができる。
【0049】
(k) 本実施の形態においては、減圧室にてフィルムを封止した後、それを減圧室より出して、大気圧によりフィルムを変形させて、そのシール性を確認するようにしたので、上記第1実施の形態よりも容易にシール性の確認をすることができる。
(変形例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 上記第1の実施の形態においては、加圧手段である治具21によって弁体17を押圧しながら弁座18を挿入したが、例えば、機械的な引き下げ装置などで、弁体17の抜け止め17aを引き下げながら、弁座18を挿入するようにしてもよい。すなわち、弁座18の挿入時に何らかの手段で弁体17を弁座18に対する着座位置から前進しないように、着座位置あるいは着座位置から後退する位置に移動配置すればよい。
【0050】
・ 上記第1の実施の形態においては、弁構造体15が組み上がった段階で、段付孔12の上流側を加圧又は減圧して、そのシール性の確認を行った。しかしながら、供給部である段付孔12の上流側と下流側とで圧力差を設ければ、容易にかつある程度の確実性で、弁構造体15のシールを確認できる。従って、段付孔12の下流側を加圧又は減圧して、そのシール性の確認を行ってもよい。
【0051】
・ 上記第1の実施の形態においては、段付孔12の上流側を加圧又は減圧して、注入されたインクの漏洩の有無によって、及びフィルム25の変化量によってと、弁座18と弁体17及び弁座18とカートリッジ本体10bとのシール性の確認を3回行ったが、これは全て行う必要は勿論なく、どれか1つ又は2つにより、シール性の確認を行うようにしてもよい。
【0052】
・ 上記第1の実施の形態においては、蓋部材11に封止されたフィルム25の変形により、弁構造体15のシール性を確認した。しかしながら、突部13の下端開口にフィルム26を被覆して、このフィルム26の変形により、シール性の確認を行うようにしてもよい。
【0053】
・ 上記第2の実施の形態においては、弁座18の上面部を4分割として全周にわたって順に連続的に再押圧するとして説明したが、この分割はいくつであってもよい。また、上記第2の実施の形態では、最も挿入量が少ない領域Aから複数箇所を順に押圧したが、最も挿入量が多い領域Dから複数箇所を順に押圧しても、同様な効果が得られる。また、その順番は、時計回りであっても反時計回りであってもよいが、複数箇所を順に、または弁座18の上面部の一部分の押圧位置を連続的に移動することが必要である。
【0054】
上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
・ 弁座と、バネによって常時、前記弁座側に押圧される弁体とを具備し、前記弁座に前記弁体が離着座する弁構造体の製造方法において、バネと弁体とを配設した後、押圧手段により前記弁体を押圧しながら、前記弁座を挿入することを特徴とした弁構造体の製造方法。
【0055】
すなわち、弁構造体の弁座が、外部装置の供給針と嵌合するものでなくても、このようにして弁構造体を製造すれば、弁座と弁体とのシール性を向上させることができる。
【0056】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、次のような優れた効果を奏するものである。
【0057】
請求項1の発明によれば、弁体を押圧するので、より容易にかつより確実に、弁体を押圧することができる。また、弁座が弁体と接触せずに、弁座を挿入できるので、弁体は、その傾きに追従せずに、軸方向にのみ移動して弁座に正座する。従って、弁座には、軸線方向以外にほとんど力が加わることがなく弁座に着座できるので、弁体と弁座との間のシール性を確保した弁構造体を製造することができる。
また、弁体が着座する弁座の座部及び容器とシールをなす弁座の外周部が、搬送のために他の部材と接触しないので、それら座部及び外周部が傷つくことがない。従って、シール性の低下を防止することができ、シール性を向上させた弁構造体を製造することができる。
さらに、弁座を挿入する際に、容易に弁体を押圧することができるとともに、軸状治具は弁体のシール領域を押圧することがないため、良好なシール性を確保できる。また、弁座を保持した軸状治具の先端部で弁体を着座位置から後退するように押圧すれば、弁座を搬送して挿入する製造工程を一連の工程として行うことができる。従って、シール性を向上させた弁構造体を製造しても、その製造時間が余分にかかる必要がない。
【0058】
請求項2の発明によれば、より確実に弁体を弁座に着座できるので、弁体と弁座との間のシールをより確実に行うことができる。
請求項3の発明によれば、シール性を向上させることができるので、容器と弁体との間をシールする部材を別に設けずとも、高いシール性が得られる弁構造体を製造することができる。
【0059】
請求項4の発明によれば、弁体を取り付ける際に、搬送手段は弁体の直径分のスペースを有するだけでよく、弁体を取り付ける供給部として搬送手段のための余分スペースを設ける必要がなく、供給部を小さくすることができる。
【0060】
請求項5の発明によれば、シール領域が損傷しないので、良好なシール性を確保することができる。
【0062】
請求項6〜請求項8の記載の発明によれば、弁座を押圧したときに、弁座全体が傾いて供給部に挿入された場合であっても、弁座の複数位置を順に連続的に押圧すること又は弁座の上面の一部分を押圧するとともに、その押圧位置を移動させることで、その傾きが補正されて、供給部にほぼ水平で挿入された状態になる。そのため、弁体を押圧しながら弁座が供給部に挿入されても、弁体は、ほとんど傾かず、弁座にしっかりと着座する。従って、弁体と弁座との間のシール性を向上させた弁構造体を製造することができる。
【0063】
請求項9の発明によれば、本発明を適用すると、特にその効果が有効に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態において製造された弁構造体を有するインクカートリッジ及び外部装置の一部分の正面断面図。
【図2】第1の実施の形態における弁構造体の第1の製造工程の要部の正面断面図。
【図3】第1の実施の形態における弁構造体の第2の製造工程の要部の正面断面図。
【図4】第1の実施の形態における弁構造体の第3の製造工程の要部の正面断面図。
【図5】第1の実施の形態における弁構造体の第4の製造工程の要部の正面断面図。
【図6】第1の実施の形態における弁構造体の第5の製造工程の要部の正面断面図。
【図7】第1の実施の形態における弁構造体の第6の製造工程の要部の正面断面図。
【図8】第2の実施の形態における弁構造体の上記第1の実施の形態と異なる製造工程の要部の正面断面図。
【符号の説明】
10…インクカートリッジ
12…供給部である段付孔
15…弁構造体
16…バネ
17…弁体
17c…シール面
18…弁座
18a…円筒形状の中心の孔である中心孔
21…加圧手段、第1の軸状治具及び第2の治具である治具
21a…第1の軸状治具の先端部である軸部
21b…第2の軸状治具の先端部である先端部
25,26…フィルム
30…外部装置であるプリンタ
31…供給針

Claims (6)

  1. 流体を外部装置に供給する容器の供給部に、外部装置の供給針と嵌合する弁座と、バネによって常時弁座側に押圧される弁体とを設けてなる弁構造体の製造方法において、
    前記弁体は、一端が拡径して前記弁座に対して開閉可能に対向するとともに、他端には抜け止めが形成されており、
    供給部にバネと弁体とを挿入し、前記抜け止めを供給部に設けられた孔に貫通し、孔の縁部と係合した後、弁体を弁座に対する着座位置よりも前進しない位置に配置した状態で、弁座を供給部に挿入させる弁構造体の製造方法であって、
    前記弁座が略円筒形状を呈し、その中心の孔に軸状治具の先端部を嵌合して、その状態で弁座を搬送して、前記供給部に挿入するとともに、
    前記弁座を保持した前記軸状治具の先端部にて弁体を着座位置から後退するように押圧することを特徴とする弁構造体の製造方法。
  2. 弁体を弁座に対する着座位置から後退した位置まで押圧して弁座を供給部に挿入させる請求項1に記載の弁構造体の製造方法。
  3. 前記弁座が、自身と前記容器との間をシールする請求項1又は請求項2に記載の弁構造体の製造方法。
  4. 前記弁体のシール面を吸着して搬送し、前記供給部に挿入させる請求項1乃至請求項3の何れかに記載の弁構造体の製造方法。
  5. 弁体の吸着における吸着部材の接触領域が、シール面のシール領域から外れたところにある請求項4に記載の弁構造体の製造方法。
  6. 前記流体がインクであり、前記容器がインクカートリッジである請求項1乃至請求項5の何れかに記載の弁構造体の製造方法。
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