JP3873358B2 - ギヤ油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両とくに自動車に使用して好適なギヤ油に関し、詳しくは、極圧性、酸化安定性に優れるとともに、耐ピッチング性が大幅に改善された自動車用のギヤ油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用ギヤ油は、燃費の向上とシフト操作性の向上をはかって低粘度化する傾向にある。 また、エンジンの高出力化に伴って負荷が増大することから、耐ピッチング性すなわちギヤを構成する金属部品の表面の劣化に対する耐久性を、耐熱性、極圧性とともに、一層向上させることが望まれている。
【0003】
発明者等は最近、耐ピッチング性に優れた潤滑油基油組成物を確立し、すでに提案した(特願平8−353794号)。 この潤滑油基油組成物は、特定のシクロペンタジエン系石油樹脂と、特定の鉱油または合成油から成ることを特徴とする。 さらに研究を重ね、この潤滑油基油が自動車用ギヤ油の基油としても有用であって、基油のもつ耐ピッチング性は、自動車用ギヤ油の基油として使用したときにも発揮されることを見出した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発明者等が得た上記の新しい知見を活用し、前記した要望にこたえ得るギヤ油、すなわち耐熱性、極圧性に優れるとともに耐ピッチング性を大幅に向上させたギヤ油組成物、とくに自動車用のギヤ油組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のギヤ油組成物は、下記A,BおよびCの成分
(A)シクロペンタジエン類とα−オレフィン類またはモノビニル芳香族炭化水素類との熱共重合物、またはこの熱共重合物の水素化物であって、軟化点が40℃以上および重量平均分子量が250以上の条件の少なくともひとつを満たすシクロペンタジエン系石油樹脂:2〜17重量%
(B)重量平均分子量が100〜1,000である、分枝を有するポリα−オレフィン:20〜45重量%
(C)100℃における粘度が2〜50mm2/s である鉱油:38〜78質量%からなる潤滑油組成物を基油として使用し、これに下記のDおよびEの成分
(D)一般式1であらわされる炭化硫化水素硫化物、
R1−Sy−(R2−Sy)n−R3 1
[式中、R1およびR3は一価の炭化水素基をあらわし、同一であっても異なっていてもよく、R2 は二価の炭化水素基をあらわす。 yは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。]
硫化テルペンおよび油脂とイオウとの反応生成物である硫化油脂から選んだ少なくとも1種のイオウ化合物:0.05〜8質量%
(E)一般式2であらわされる酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、酸性ジチオリン酸エステルおよびこれらのアルキルアミン塩から選ばれた少なくとも1種のリン化合物:0.1〜10質量%
(R4)aH3-aX3PXb 2
[式中、R4 は一価の炭化水素基をあらわし、Xは酸素原子またはイオウ原子をあらわす。 aは1または2または3であり、bは0または1である。]
を添加して成るギヤ油組成物である。
【0006】
本発明の組成物を構成するA成分のシクロペンタジエン系石油樹脂は、シクロペンタジエン類とα−オレフィン類またはモノビニル芳香族炭化水素類とを熱共重合させ、さらに必要に応じて水素化することによって得られる。
【0007】
原料とするシクロペンタジエン類には、シクロペンタジエン、その多量体、それらのアルキル置換体およびそれらの混合物が包含される。 工業的には、ナフサ等のスチームクラッキングにより得られる、シクロペンタジエン類を約30質量%以上、好ましくは約50質量%以上含有するシクロペンタジエン留分(CPD留分)を用いることが有利である。
【0008】
一般にCPD留分中には、これら脂環式ジエンと共重合可能なオレフィン性単量体が含まれている。 それらは、たとえば、イソプレン、ピペリレンあるいはブタジエン等の脂肪族ジオレフィンや、シクロペンテン等の脂環式オレフィンである。 これらオレフィン類の濃度は低い方が好ましいが、シクロペンタジエン類に対し約10質量%以下であれば許容される。
【0009】
このシクロペンタジエン類と共重合させるいまひとつの原料であるα−オレフィン類の例としては、C4〜C14、好ましくはC4〜C10のα−オレフィンおよびそれらの混合物が挙げられ、エチレン、プロピレンまたは1−ブテン等からの誘導体、あるいはパラフィンワックスの分解物等が好ましく用いられる。 このα−オレフィン類は、シクロペンタジエン類1モルあたり4モル未満を反応させることが好ましい。
【0010】
α−オレフィンとともに、またはそれに代えてシクロペンタジエンと共重合させる、もうひとつの原料であるモノビニル芳香族炭化水素類としては、スチレン、o,m,p−ビニルトルエン、α,β−メチルスチレン等が挙げられる。 これらの原料は、シクロペンタジエン類1モルあたり3モル未満を反応させるのが適切である。 このモノビニル芳香族炭化水素類は、インデン、メチルインデンあるいはエチルインデン等のインデン類を含有していてもよく、工業的には、ナフサ等のスチームクラッキングにより得られる、いわゆるC9 留分を用いることが有利である。
【0011】
シクロペンタジエン類としてシクロペンタジエン等の単量体を用いる場合には1モルを1当量として、二量体を用いる場合には1モルを2当量として、それぞれ計算する。
【0012】
シクロペンタジエン系石油樹脂を得る熱共重合方法のひとつの例を示せば、下記の方法がある。 すなわち、上記のシクロペンタジエン類とα−オレフィン類またはモノビニル芳香族炭化水素類とを、溶媒中で、または無溶媒で、好ましくは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下に、約160〜300℃、好ましくは約180〜280℃の範囲の温度において、約0.1〜10時間、好ましくは約0.5〜6時間、原料系を液相に保持し得る圧力の下に反応させることにより、第一段の熱共重合を行なう。 続いて、第一段の重合反応液から常圧下または加圧下に原料中の不活性成分、未反応原料、さらに必要ならば溶剤を蒸留等の操作により留去した後、減圧下で、約160〜280℃の温度において、約0.5〜4時間、第二段の重合を行なって、所望のシクロペンタジエン系石油樹脂を得る。
【0013】
上述した熱共重合の条件を守れば、軟化点が約40℃以上および重量平均分子量が約250以上の条件の少なくともひとつを、おおむね満たすシクロペンタジエン系石油樹脂が得られる。 最適の反応条件は、上記範囲内で容易に決定できるであろう。 このようにして得たシクロペンタジエン系石油樹脂は、水素化処理の有無にかかわらず優れた配合効果を示す。 しかし、臭気や安定性を改善するために、また色相を改善するために、水素化処理を施すことが好ましい。
【0014】
水素化処理は、通常の方法で行なうことができる。 たとえば、ニッケル、パラジウム、白金等の水素化触媒を用い、溶媒中で、または無溶媒で、約70〜300℃、好ましくは約100〜250℃の範囲の温度において、圧力約10〜200Kg/cm2(G)、好ましくは約20〜120Kg/cm2(G)の水素圧力下に、約0.5〜20時間、好ましくは約1〜10時間置けば、水素化処理ができる。 水素化処理後は、触媒を、またさらに必要ならば溶剤を除去することにより、目的とする水素化シクロペンタジエン系石油樹脂が得られる。
【0015】
本発明の組成物を構成するシクロペンタジエン系石油樹脂は、前記のように、軟化点約40℃以上および平均分子量約250以上の条件の、少なくともひとつを満たす必要がある。 軟化点の好ましい範囲は、約80〜180℃であり、平均分子量の好ましい範囲は、約400〜2,000である。
【0016】
シクロペンタジエン系石油樹脂の配合量は、A〜C成分からなる基油の全量を基準として2〜17質量%、好ましくは2〜12質量%、より好ましくは3〜8質量%、とくに好ましくは4〜6質量%である。 少な過ぎると耐ピッチング性の向上がほとんど認められず、一方、多過ぎると低温粘度が大きくなり過ぎる。
【0017】
本発明の組成物のB成分を構成する、分枝を有するポリα−オレフィンは、四級または三級炭素原子を主鎖にもつポリオレフィンである。 その合成原料は炭素数3以上のオレフィンであればとくに制限はないが、とくにイソブチレンの1〜4量体やプロピレンの1〜5量体が好適に用いられる。 これらのα−オレフィンは、1種類単独で重合させてもよいし、2種類以上混合して重合させてもよい。
【0018】
分枝を有するポリα−オレフィンは、前記のように、分子量が100〜1,000の範囲にあることを要する。 好ましいのは、分子量150〜500の範囲のものである。 分子量が100より小さいと、ポリα−オレフィンが蒸発性をもってくるとともに油膜保持能力が低下して不適切であり、分子量が1,000より大きいと、粘度上昇により低温流動性が低下して、やはり不都合である。
【0019】
分枝を有するポリα−オレフィンの粘度については、とくに制限はないが、100℃における粘度が2〜50mm2/s のものを使用することが望ましい。 好ましい粘度は2〜20mm2/sであり、さらに好ましいのは2〜12mm2/s、とくに好ましいのは2〜7mm2/sである。
【0020】
B成分中のポリα−オレフィンの配合量は、A〜C成分からなる基油を基準として20〜45質量%とする。 配合量が20質量%に満たないと、耐ピッチング性や低温流動性が悪くなる。 好ましい配合量は25〜45質量%、さらに好ましいのは30〜40質量%である。
【0021】
本発明の組成物のC成分である鉱油としては、高度に精製されたパラフィン系鉱油、たとえば水素化精製基油、触媒異性化基油を用いることが好ましい。 C成分としての鉱油は、100℃における粘度が2〜50mm2/s の範囲になければならない。 好ましい粘度は2〜20mm2/s、さらに好ましくは2〜12mm2/s、とくに好ましくは2〜7mm2/sである。
【0022】
この鉱油は、イオウ分が少ないことが望ましい。 許容されるイオウ分の含有量は、1.0質量%までである。 イオウ分が1.0質量%を超えて存在すると、高温の使用条件下でスラッジの生成が促進されやすくなるからである。 好ましくはイオウ分0.6質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下である。可能であれば0.3質量%以下、とくに0.25質量%以下にしたい。
【0023】
鉱油の流動点は−15℃以下であることが好ましく、−35℃以下であることがとくに好ましい。 流動点が−15℃以上になると、低温粘度特性が悪くなる傾向が見られる。
【0024】
とりわけ好ましい鉱油は、粘度が100℃において2〜50mm2/s 、流動点が−15℃以下、イオウ分が1.0質量%以下のものである。
【0025】
C成分である鉱油の配合割合は、基油すなわちA〜C成分の合計を基準として、38〜78質量%である。 好ましい配合割合は40〜72質量%、さらに好ましくは55〜70質量%である。
【0026】
上述のA〜C成分からなる基油に添加するD成分は、一般式1であらわされる炭化水素硫化物、
R1−Sy−(R2−Sy)n−R3 1
[式中、R1およびR3は一価の炭化水素基をあらわし、同一であっても異なっていてもよく、R2 は二価の炭化水素基をあらわす。 yは1以上の整数、好ましくは1〜8であり、繰り返し単位中においてそれぞれのyが同一であっても異なっていてもよい。 nは0または1以上の整数である。]
硫化テルペンおよび油脂とイオウとの反応生成物である硫化油脂から選んだ少なくとも1種のイオウ化合物である。
【0027】
上記のR1およびR2であらわされる一価の炭化水素基は、炭素数2〜20の直鎖または分枝の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、たとえばアルキル基およびアルケニル基、ならびに炭素数6〜26の芳香族炭化水素基であり、具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ノニル基、ドデシル基、プロペニル基、ブテニル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、ヘキシルフェニル基などが挙げられる。
【0028】
上記したR3 であらわされる二価の炭化水素基としても、炭素数2〜20の直鎖または分枝の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、炭素数2〜26の芳香族炭化水素基が適当であって、その具体例は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基などである。
【0029】
したがって、一般式1であらわされる炭化水素硫化物の代表的なものは、硫化オレフィン、および一般式 R5−Sy−R6(R5およびR6は一価の炭化水素基であり、yはこの場合は2以上の整数)であらわされるポリサルファイドである。硫化オレフィンの具体例としては、ポリイソブチレンやテルペンのようなオレフィン類を硫化剤で硫化したものが挙げられる。 ポリサルファイドの具体例としては、ジイソブチルサルファイド、ジオクチルポリサルファイド、ジターシャリーノニルポリサルファイド、ジターシャリーブチルポリサルファイドおよびジターシャリーベンジルポリサルファイドが挙げられる。
【0030】
油脂とイオウとの反応生成物である硫化油脂は、油脂としてラード、牛脂、鯨油、パーム油、やし油、なたね油などの動植物油脂を使用したものである。 この反応生成物は、単一の化学式であらわせない種々の化合物が混合したものであって、化学構造そのものは明確ではない。
【0031】
D成分であるイオウ化合物は、前記のA〜C成分からなる基油を基準として、0.05〜8質量%を添加する。 添加量が0.05質量%より少ないと極圧性が悪く、8質量%より多くなると耐熱性が低くなる。 好ましい添加量は0.05〜6質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%、とくに好ましくは1〜4質量%である。
【0032】
D成分とともに基油に添加するE成分は、一般式2であらわされる酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、酸性ジチオリン酸エステル
(R4)aH3-aX3PXb 2
[式中、R4 は一価の炭化水素基をあらわし、Xは酸素原子またはイオウ原子をあらわす。 aは1または2または3であり、bは0または1である。]
およびこれらのアルキルアミン塩から選ばれた少なくとも1種のリン化合物である。
【0033】
R4 の代表的なものは、炭素数5〜20の直鎖または分枝の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基たとえば、アルキル基、アルケニル基、炭素数6〜26の芳香族炭化水素基およびシクロアルキル基である。
【0034】
リン酸エステルの具体例には、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート等があり、たとえば、ベンジルジフェニルホスフェート、アリルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェートおよびトリブチルフェニルホスフェート等の化合物を挙げることができる。
【0035】
酸性リン酸エステルとしては、たとえば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)アシッドホスフェート等が挙げられる。
【0036】
亜リン酸エステルとしては、たとえば、トリフェニルホスファイト、トリ(p−クレジル)ホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト等が挙げられる。
【0037】
酸性亜リン酸エステルとしては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジオレイルハイドロジエンホスファイト等が挙げられる。
【0038】
このほかリン化合物として、一般式2であらわされる酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性チオリン酸エステルおよび酸性ジチオリン酸エステルの、アルキルアミン塩も使用することができる。
【0039】
そのようなアルキルアミン塩を形成する酸の具体例としては、ブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)アシッドホスフェート等が挙げられ、これらの酸を中和して塩を形成するアルキルアミンは、下記の一般式3であらわされるものであって:
R7(R8)N−R9 3
[式中、R7,R8およびR9 は一価の炭化水素基または水素原子であり、そのうち少なくとも1箇は炭化水素基である。]
具体的には、ジブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ラウリルアミン、ジラウリルアミン、ココナッツアミン、牛脂アミンなどである。
【0040】
E成分であるリン化合物は、A〜C成分からなる基油を基準として、0.1〜10質量%を添加する。 添加量が0.1質量%より少ないと極圧性が劣り、10質量%より多くなると耐熱性が悪くなる。 好ましい添加量は0.1〜5質量%であり、さらに好ましくは0.5〜3質量%である。
【0041】
以上説明したA〜E成分からなる本発明のギヤ油組成物は、各成分の共同作用により、すぐれた耐熱性、極圧性および耐ピッチング性を発揮する。
【0042】
本発明のギヤ油組成物には、必要に応じて、摩耗防止剤、無灰型分散剤、金属型清浄剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤および消泡剤などを添加してもよい。
【0043】
金属型清浄剤の例としてはアルカリ土類金属スルフォネート、アルカリ土類金属フェネート等が、無灰型分散剤の例としてはアルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル、長鎖脂肪酸とポリアミンとのアミド(アミノアミド型)等が、摩耗防止剤の例としてはジアルキルジチオリン酸亜鉛等が、酸化防止剤の例としてはアミン系、フェノール系の酸化防止剤等が、金属不活性剤の例としてはベンゾトリアゾール、チアジアゾール、防錆剤の例としてはアルケニルコハク酸エステルまたはその部分エステル等が、流動点降下剤の例としてはポリメタクリレート等が、消泡剤の例としてはシリコン化合物、エステル系消泡剤等が、それぞれ挙げられる。
【0044】
本発明のギヤ油組成物は、自動車のトランスミッション機構を構成するギヤの潤滑用のほか、各種産業機械のギヤの潤滑用など種々の用途に向けることができるが、とくに自動車用のギヤ油として用いたとき、その特性を発揮する。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により、本発明が制約されるものではない。
【0046】
[製造例1] シクロペンタジエン系石油樹脂の製造例(その1)
ナフサのスチームクラッキングにより得られた、ジシクロペンタジエン75.0質量%およびオレフィン5.4質量%を含有し残余の大部分が飽和炭化水素からなるCPD留分500g(シクロペンタジエン5.7モル)と、やはりナフサのスチームクラッキングより得られ、スチレン、ビニルトルエン、α,β−メチルスチレンおよびインデンの合計含有量が26.5質量%(平均分子量118)であって残余の大部分が不活性な芳香族炭化水素からなるC9 系芳香族留分500g(反応性成分1.1モル)とを、窒素雰囲気下に圧力18Kg/cm2(G)、温度260℃で3時間熱共重合した。 この熱共重合液から、原料中の不活性留分および未反応原料を、最初は加圧下に、続いて減圧下に、252℃において留去した。 第二段の重合を行ないながら、50Torrの減圧下で同じ温度252℃に1時間保持し、軟化点120℃のシクロペンタジエン系樹脂409gを得た。
【0047】
得られたシクロペンタジエン系樹脂にニッケル系触媒を2質量%添加し、水素圧60Kg/cm2(G)、反応温度250℃で12時間水素化し、目的とする軟化点125℃、重量平均分子量640のシクロペンタジエン−モノビニル芳香族共重合体水素化樹脂を得た。
【0048】
[製造例2] シクロペンタジエン系石油樹脂の製造例(その2)
製造例1で用いたCPD留分750g(シクロペンタジエン8.5モル)と、デセン−1を96.5質量%含有し残余がα−オレフィン以外の留分から成るC10 留分250g(α−オレフィンとして1.7モル)とを、製造例1と同じ条件で2時間熱共重合した。 この熱共重合液から、原料中の不活性留分および未反応原料を、最初は加圧下で、続いて減圧下に、200℃において留去し、シクロペンタジエン系樹脂380gを得た。
【0049】
次いで、製造例1と同様の条件で、ただし、温度は220℃で時間は4時間、水素化を行ない、目的とするシクロペンタジエン−α−オレフィン共重合体水素化樹脂を得た。 この樹脂の軟化点は32℃、重量平均分子量は486。
【0050】
[実施例1〜4および比較例1〜5]
上記製造例1および2で得たシクロペンタジエン系石油樹脂を用いて、表1に示す組成の自動車用ギヤ油組成物を製造した。 実施例は本発明に従った組成のものであり、比較例は本発明の範囲外の組成のものである。
【0051】
表1および表2において、原料の符号はそれぞれ下記の意味をもつ:
A−1:シクロペンタジエン−モノビニル芳香族重合樹脂水素化物(製造例1)A−2:シクロペンタジエン−α−オレフィン共重合水素化樹脂(製造例2)
B−1:ポリイソブチレン水素化物(重量平均分子量:350、100℃における粘度:2.71mm2/s)
B−2:ポリイソブチレン水素化物(重量平均分子量:200、100℃における粘度:2.35mm2/s)
C:パラフィン系鉱物油(100℃における粘度:4.02mm2/s 、流動点:−17.5℃
D−1:硫化オレフィン
D−2:ポリサルファイド
E−1:2−エチルヘキシルアシッドホスフェート
E−2:ラウリルアシッドホスフェート
E−3:2−エチルヘキシルアシッドホスフェートのオレイルアミン塩
表1および表2に示したA〜C成分の配合量、ならびにDおよびE成分の添加量は、基油を100質量%としたものである。 実施例および比較例を通じて、調製したギヤ油には、金属型清浄剤、無灰型分散剤および摩耗防止剤を、合計で2.0質量%添加した。
【0052】
実施例および比較例で得たギヤ油の評価は、下記の方法で行った:
(耐ピッチング性試験)
耐ピッチング性の評価として、ユニスチールころがり疲労試験を行なった。 ユニスチールころがり疲労試験の試験条件および疲労寿命判定法は、次のとおりとした。
【0053】
<試験条件>
回転数:1500rpm
押しつけ荷重:3340N
油温:60℃
加速度計:4G
試験球数:6個
繰り返し数:6回
テストベアリング:51110 P5(NSK製)
テストピース:SUJ−2
<疲労寿命判定法>
疲労寿命をワイブル統計処理し、L10(hr)により評価した。 この実施例の試験においては、L10(hr)が7.0hr以上を合格とした。
【0054】
(極圧性試験)
極圧性を評価するため、IAEギヤ試験を行なった。 IAEギヤ試験は、IP(イギリス石油協会規定)法のIP166/68に従って行ない、焼き付き限界荷重を測定した。
【0055】
〈ギヤ試験の試験条件〉
小歯車回転数:6000rpm
給油方法:強制給油
給油温度:110℃
給油量:0.56リットル/分
運転方法:5分間毎のステップ荷重増加法(10ポンドの荷重で運転を開始し、5分間毎に5ポンドづつ荷重を増加させた。)
合格荷重をもって評価し、150ポンド以上を合格とした。
【0056】
<酸化安定性試験>
内燃機関潤滑油安定度試験法(JIS K 2541)に準拠し、150℃、96hrの条件で行なった。 全酸価増加およびスラッジの有無で評価した。 全酸価増加は2.0以下のものを、スラッジは「なし」を、それぞれ合格とした。 A成分およびB成分の重量平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用いて通常のゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを行ない、その結果をポリスチレン換算値で表示した値である。 試験装置としては東ソー(株)製HLC−802型を用い、以下の分析条件で測定した:
カラム :テトラヒドロフラン
カラム恒温槽温度:40℃
流速 :1.2 ml/min
資料濃度 :0.005 g/1ml THF
検出器 :示差屈折計。
【0057】
【0058】
【発明の効果】
本発明のギヤ油組成物は、耐熱性、極圧性に優れるとともに高い耐ピッチング性を有する。 したがって本発明のギヤ油組成物は、自動車用ギヤ油における燃費向上、シフト操作性向上の要請にこたえるための低粘度化傾向と、エンジンの高出力化に伴う負荷の増大とに対応することができ、耐ピッチング性の要求される自動車用ギヤ油として好適である。
Claims (2)
- 下記A,BおよびCの成分
(A)シクロペンタジエン類とα−オレフィン類またはモノビニル芳香族炭化水素類との熱共重合物、またはこの熱共重合物の水素化物であって、軟化点が40℃以上および重量平均分子量が250以上の条件の少なくともひとつを満たすシクロペンタジエン系石油樹脂:2〜17重量%
(B)重量平均分子量が100〜1,000である、分枝を有するポリα−オレフィン:20〜45重量%
(C)100℃における粘度が2〜50mm2/s である鉱油:38〜78質量%からなる潤滑油組成物を基油として使用し、これに下記のDおよびEの成分
(D)一般式1であらわされる炭化水素硫化物、
R1−Sy−(R2−Sy)n−R3 1
[式中、R1およびR3は一価の炭化水素基をあらわし、同一であっても異なっていてもよく、R2 は二価の炭化水素基をあらわす。 yは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。]
硫化テルペンおよび油脂とイオウとの反応生成物である硫化油脂から選んだ少なくとも1種のイオウ化合物:0.05〜8質量%
(E)一般式2であらわされる酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、酸性ジチオリン酸エステルおよびこれらのアルキルアミン塩から選ばれた少なくとも1種のリン化合物:0.1〜10質量%
(R4)aH3-aX3PXb 2
[式中、R4 は一価の炭化水素基をあらわし、Xは酸素原子またはイオウ原子をあらわす。 aは1または2または3であり、bは0または1である。]
を添加して成るギヤ油組成物。 - C成分として、100℃における粘度が2〜50mm2/s 、流動点が−15℃以下、イオウ分が0.5質量%以下である鉱油を使用した請求項1のギヤ油組成物。
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