JP3873349B2 - 自動変速機油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機油に関し、トルク容量が大きく、耐ジャダー性に優れるとともに、耐ピッチング性が大幅に改善された自動変速機油組成物を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用自動変速機油は、燃費を向上させるという観点から低粘度化し、また、エンジンの高出力化に伴って負荷が増大することから、耐ピッチング性すなわち自動変速機を構成する金属部品の表面の劣化に対する耐久性を、一層向上させることが望まれている。
【0003】
出願人はさきに、特定のシクロペンタジエン系石油樹脂と、特定の合成油から成るトラクションドライブ用流体を開発し、すでに開示した(特開平5−140574号)。 しかし、トラクションドライブ用流体に関しては、耐ピッチング性は問題にされない。 トラクションドライブは動力伝達装置であり、自動変速機に用いられるものの、その機構は無段変速機である。 一方、有段の自動変速機は、トラクションドライブ等の無段変速機とは異なった機構の装置であり、従ってトラクションドライブ用流体と自動変速機油とでは、要求される性能が異なる。 自動変速機油に対して従来から要求されている性能として、ロックアップ機構を作動させるときの変速ショック防止性能(これを「耐ジャダー性」という)があり、耐ジャダー性を高くするには、自動変速機油の動摩擦係数比(μ0/μd)が小さいことが望ましい。 また、有段の自動変速機に装着されている湿式クラッチは、静摩擦係数が低いと滑りが発生しやすくなり、伝達トルクのロスが大きくなる。 ロスを小さくするためには、湿式クラッチにおける静摩擦係数(μs)の大きな自動変速機油が望ましい。 トラクションドライブ用流体に関するその後の研究の成果として、出願人は、α−アルキルスチレン二量体の水素化物と特定のシクロペンタジエン系石油樹脂とからなる基油に、特定のリン化合物およびN系またはエステル系の摩擦調節剤を添加してなるトラクションドライブ用流体を開発し、これも開示した(特願平8−180954号)。 さきに開示したトラクションドライブ用流体に関連して、発明者等は最近、耐ピッチング性に優れた潤滑油基油組成物を確立し、これについても提案した(特願平8−353794号)。 この潤滑油基油組成物は、特定のシクロペンタジエン系石油樹脂と、特定の鉱油または合成油から成ることを特徴とする。 さらに研究を重ね、この潤滑油基油が自動変速機油の基油としても有用であって、自動変速機油に用いたときにもその耐ピッチング性を発揮すること、また、後の開示にかかるトラクションドライブ用流体の添加剤が、自動変速機油の添加剤としても好適であることを見出した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、発明者らが得た上記の新しい知見を活用し、前記した要望にこたえ得る自動変速機油、すなわち従来の自動変速機油と同様に動摩擦係数比が小さく耐ジャダー性が良好であり、かつ静摩擦係数が大きくトルク伝達容量を大きく維持した上で、耐ピッチング性を向上させた自動変速機油組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動変速機油組成物は、下記のA,BおよびCの成分
(A)シクロペンタジエン類とα−オレフィン類もしくはモノビニル芳香族炭化水素類との熱共重合物またはこの熱共重合物の水素化物であって、軟化点が40℃以上および重量平均分子量が250以上の条件の少なくともひとつを満たすシクロペンタジエン系石油樹脂:2〜17質量%、
(B)重量平均分子量が100〜1,000である、分枝を有するポリα−オレフィン:20〜45質量%、および
(C)100℃における粘度が2〜50mm2/Sである鉱油:38〜78質量%からなる潤滑油組成物を基油として使用し、これに、下記のDおよびEの成分
(D)一般式1〜3のリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび酸性亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種のリン化合物0.01〜5質量%、
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】
【化3】
【0009】
[上記三つの式において、R1〜R3は水素原子、C1〜C30の炭化水素基またはイオウ原子含有炭化水素基をあらわし、XおよびYは1または2である。]
および
(E)N系およびエステル系の化合物から選ばれる少なくとも1種の摩擦調整剤:0.01〜3質量%
を添加して成る自動変速機油組成物である。
【0010】
本発明の組成物を構成するA成分のシクロペンタジエン系石油樹脂は、シクロペンタジエン類とα−オレフィン類またはモノビニル芳香族炭化水素類とを熱共重合させ、さらに必要に応じて水素化することによって得られる。
【0011】
原料とするシクロペンタジエン類には、シクロペンタジエン、その多量体、それらのアルキル置換体およびそれらの混合物が包含される。 工業的には、ナフサ等のスチームクラッキングにより得られる、シクロペンタジエン類を約30質量%以上、好ましくは約50質量%以上含有するシクロペンタジエン留分(CPD留分)を用いることが有利である。 一般にCPD留分中には、これら脂環式ジエンと共重合可能なオレフィン性単量体が含まれている。 それらは、たとえば、イソプレン、ピペリレンあるいはブタジエン等の脂肪族ジオレフィンや、シクロペンテン等の脂環式オレフィンである。 これらオレフィン類の濃度は低い方が好ましいが、シクロペンタジエン類に対し約10質量%以下であれば許容される。
【0012】
このシクロペンタジエン類と共重合させるいまひとつの原料であるα−オレフィン類の例としては、C4〜C14、好ましくはC4〜C10のα−オレフィンおよびそれらの混合物が挙げられ、エチレン、プロピレンまたは1−ブテン等からの誘導体、あるいはパラフィンワックスの分解物等が好ましく用いられる。 このα−オレフィン類は、シクロペンタジエン類1モルあたり4モル未満を反応させることが好ましい。
【0013】
α−オレフィンに代えてシクロペンタジエンと共重合させる、もうひとつの原料であるモノビニル芳香族炭化水素類としては、スチレン、o,m,p−ビニルトルエン、α,β−メチルスチレン等が挙げられる。 これらの原料は、インデン、メチルインデンあるいはエチルインデン等のインデン類を含有していてもよく、工業的には、ナフサ等のスチームクラッキングより得られる、いわゆる C9留分を用いることが有利である。 このモノビニル芳香族炭化水素類は、シクロペンタジエン類1モルあたり3モル未満を反応させるのが適切である。
【0014】
シクロペンタジエン類としてシクロペンタジエン等の単量体を用いる場合には1モルを1当量として、二量体を用いる場合には1モルを2当量として、それぞれ計算する。
【0015】
シクロペンタジエン系石油樹脂を得る熱共重合方法のひとつの例を示せば、下記の方法がある。 すなわち、上記のシクロペンタジエン類とα−オレフィン類またはモノビニル芳香族炭化水素類とを、溶媒中で、または無溶媒で、好ましくは窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下に、約160〜300℃、好ましくは約180〜280℃の範囲の温度において、約0.1〜10時間、好ましくは約0.5〜6時間、原料系を液相に保持し得る圧力の下に反応させることにより、第一段の熱共重合を行なう。 続いて、第一段の重合反応液から常圧下または加圧下に原料中の不活性成分、未反応原料、さらに必要ならば溶剤を蒸留等の操作により留去した後、減圧下で、約160〜280℃の温度において、約0.5〜4時間、第二段の重合を行なって、所望のシクロペンタジエン系石油樹脂を得る。
【0016】
上述した熱共重合の条件を守れば、軟化点が約40℃以上および重量平均分子量が約250以上の条件の少なくともひとつを、おおむね満たすシクロペンタジエン系石油樹脂が得られる。 最適の反応条件は、上記範囲内で容易に決定できるであろう。
このようにして得たシクロペンタジエン系石油樹脂は、水素化処理の有無にかかわらず優れた配合効果を示す。 しかし、臭気や安定性を改善するために、また色相を改善するために、水素化処理を施すことが好ましい。 水素化処理は、通常の方法で行なうことができる。 たとえば、ニッケル、パラジウム、白金等の水素化触媒を用い、溶媒中で、または無溶媒で、約70〜300℃、好ましくは約100〜250℃の範囲の温度において、圧力約10〜200Kg/cm2(G)、好ましくは約20〜120Kg/cm2(G)の水素圧力下に、約0.5〜20時間、好ましくは約1〜10時間置けば、水素化処理ができる。 水素化処理後は、触媒を、またさらに必要ならば溶剤を除去することにより、目的とする水素化シクロペンタジエン系石油樹脂が得られる。
【0017】
本発明の組成物を構成するシクロペンタジエン系石油樹脂は、前記のように、軟化点約40℃以上および平均分子量約250以上の条件の、少なくともひとつを満たす必要がある。 軟化点の好ましい値は、約80〜180℃であり、平均分子量の好ましい値は、約400〜2,000である。
【0018】
シクロペンタジエン系石油樹脂の配合量は、A〜C成分からなる基油の全量を基準として2〜17質量%、好ましくは2〜12質量%、より好ましくは3〜8質量%、とくに好ましくは4〜6質量%である。 少な過ぎると耐ピッチング性の向上がほとんど認められず、一方、多過ぎると低温粘度が大きくなり過ぎる。
【0019】
本発明の組成物のB成分を構成する、分枝を有するポリα−オレフィンは、四級または三級炭素原子を主鎖にもつポリオレフィンである。 その合成原料は炭素数3以上のオレフィンであればとくに制限はないが、とくにイソブチレンの1〜4量体やプロピレンの1〜5量体が好適に用いられる。 これらのα−オレフィンは、1種類単独で重合させてもよいし、2種類以上混合して重合させてもよい。
【0020】
分枝を有するポリα−オレフィンは、前記のように、分子量が100〜1,000の範囲にあることを要する。 好ましいのは、分子量150〜500の範囲のものである。 分子量が100より小さいと、ポリα−オレフィンが蒸発性をもってくるとともに油膜保持能力が低下して不適切であり、分子量が1,000より大きいと、粘度上昇により低温流動性が低下して、やはり不都合である。
【0021】
分枝を有するポリα−オレフィンの粘度については、とくに制限はないが、100℃における粘度が2〜50mm2/Sのものを使用することが望ましい。 好ましい粘度は2〜20mm2/Sであり、さらに好ましいのは2〜12mm2/S、とくに好ましいのは2〜7mm2/Sである。
【0022】
B成分中のポリα−オレフィンの配合量は、A〜C成分からなる基油を基準として20〜45質量%とする。 配合量が20質量%に満たないと、耐ピッチング性や低温流動性が悪くなる。 好ましい配合量は25〜45質量%、さらに好ましいのは30〜40質量%である。
【0023】
本発明の組成物のC成分である鉱油としては、高度に精製されたパラフィン系鉱油、たとえば水素化精製基油、触媒異性化基油を用いることが好ましい。 C成分としての鉱油は、100℃における粘度が2〜50mm2/Sの範囲になければならない。 好ましい粘度は2〜20mm2/S、さらに好ましくは2〜12mm2/S、とくに好ましくは2〜7mm2/Sである。
【0024】
この鉱油は、イオウ分が少ないことが望ましい。 許容されるイオウ分の含有量は、1.0質量%までである。 イオウ分が1.0質量%を超えて存在すると、高温の使用条件下でスラッジの生成が促進されやすくなるからである。 好ましくはイオウ分0.6質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下である。可能であれば0.3質量%以下、とくに0.25質量%以下にしたい。
【0025】
鉱油の流動点は−15℃以下であることが好ましく、−35℃以下であることがとくに好ましい。 流動点が−15℃以上になると、低温粘度特性が悪くなる傾向が見られる。
【0026】
とりわけ好ましい鉱油は、粘度が100℃において2〜50mm2/S、流動点が−15℃以下、イオウ分が1.0質量%以下のものである。
【0027】
C成分である鉱油の配合割合は、基油すなわちA〜C成分の合計を基準として、38〜78質量%である。 好ましい配合割合は40〜72質量%、さらに好ましくは55〜70質量%である。
【0028】
上述のA〜C成分からなる基油に添加するD成分は、前記の一般式1〜3で表されるリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび酸性亜リン酸エステルなどのリン化合物である。
【0029】
リン酸エステルの具体例には、トリアリールホスフェート、トリアルキルホスフェート等があり、たとえば、ベンジルジフェニルホスフェート、アリルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジブチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、エチルフェニルジフェニルホスフェート、ジエチルフェニルフェニルホスフェート、プロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリエチルフェニルホスフェート、トリプロピルフェニルホスフェート、ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジブチルフェニルフェニルホスフェートおよびトリブチルフェニルホスフェート等の化合物を挙げることができる。
【0030】
酸性リン酸エステルとしては、たとえば、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)アシッドホスフェート等が挙げられる。
【0031】
亜リン酸エステルとしては、たとえば、トリフェニルホスファイト、トリ(p−クレジル)ホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリオレイルホスファイト等が挙げられる。
【0032】
酸性亜リン酸エステルとしては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)ハイドロジエンホスファイト、ジラウリルハイドロジエンホスファイト、ジオレイルハイドロジエンホスファイト等が挙げられる。
【0033】
D成分であるリン化合物は、A〜C成分からなる基油を基準として、0.01〜5質量%を添加する。 添加量が0.01質量%より少ないと耐摩耗性および摩擦特性が悪く、5質量%より多くなると、再び摩擦特性が悪化する。 好ましい添加量は0.03〜3質量%であり、さらに好ましくは0.05〜1質量%、とくに好ましくは、0.1〜0.6質量%である。
【0034】
本発明の組成物は、上述のD成分に加えて、E成分としてN系摩擦調整剤またはエステル系摩擦調整剤から選ばれる少なくとも1種を添加する。
【0035】
N系摩擦調整剤の代表的なものには、−(CO)NH−(アミド結合)、−NH−、および−N<を有する化合物がある。 −(CO)NH−を有するものとしては、エチルヘキシルアミド、ブチルヘキシルアミド、ブチルデシルアミド、ブチルエイコシルアミド、エチルヘキサデシルアミド、ブチルエイコシルアミド、ジヘキサデシルアミドのような、一般式 R9−CONH−R10であらわされる化合物を挙げることができ、これらの中でも、ブチルデシルアミド、エチルヘキサデシルアミド、ブチルエイコシルアミドなどが好ましい。 上記一般式中、R9 およびR10は、各々炭素数3〜20および2〜20の炭化水素基であり、好ましい炭化水素基は、アルキル基およびアルケニル基である。 −NH−を有するものとしては、エチルヘキシルアミン、エチルデシルアミン、ブチルデシルアミン、エチルヘキサデシルアミン、ブチルエイコシルアミンなどを挙げることができ、これらの中でも、エチルデシルアミン、ブチルデシルアミン、ブチルエイコシルアミンなどが好ましい。
【0036】
−N<を有するものとしては、C14H37−N(C8H16−COOH)2のように、一般式 R13−N(R14−COOH)2であらわされる化合物を挙げることができる。 C18H37−N(C8H16−COOH)2などは、カルボキシル基と−N<結合の両方を含む化合物である。
【0037】
エステル系摩擦調整剤の代表的なものは、−COO−を有する化合物であって、ヘキサン酸メチル、ウンデカン酸メチル、テトラデカン酸メチル、オクタデカン酸メチル、エイコサン酸ブチル、酢酸オクタデシル、こはく酸ジテトラデシルなどを挙げることができ、これらの中でも、テトラデカン酸メチル、オクタデカン酸メチルなどが好ましい。
【0038】
本発明の組成物において、E成分である摩擦調整剤は、A〜C成分からなる基油を基準として、0.01〜3質量%の範囲の量を添加する。 0.01質量%より少ないと耐ジャダー性能(μ−V特性)の改善効果が小さく、多すぎると静摩擦係数が低くなって、伝達トルク容量の低下による湿式クラッチの滑りが生じる。 好ましい添加量の範囲は0.03〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%、とくに好ましくは0.1〜0.3質量%である。
【0039】
以上説明したA〜E成分からなる本発明の自動変速機油組成物は、各成分の共同作用により、大きな伝達トルク容量、優れた耐ジャダー性および耐ピッチング性を発揮する。
【0040】
本発明の自動変速機油組成物には、必要に応じて、摩耗防止剤、無灰型分散剤、金属型清浄剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤および消泡剤などを添加してもよい。
【0041】
金属型清浄剤の例としてはアルカリ土類金属スルフォネート、アルカリ土類金属フェネート等が、無灰型分散剤としてはアルケニルコハク酸イミド、アルケニルコハク酸エステル、長鎖脂肪酸とポリアミンのアミド(アミノアミド型)等が、摩耗防止剤としてはジアルキルジチオリン酸亜鉛等が、酸化防止剤としてはアミン系、フェノール系の酸化防止剤等が、金属不活性剤としてはベンゾトリアゾール、チアジアゾール、防錆剤としてはアルケニルコハク酸エステルまたはその部分エステル等が、流動点降下剤としてはポリメタクリレート等が、消泡剤としてはシリコン化合物、エステル系消泡剤等が、それぞれ挙げられる。
【0042】
本発明自動変速機油組成物は、耐ピッチング性が要求される自動変速機油のすべてに好適に使用できるが、有段自動変速機に使用したときに、その意義が十分に発揮される。 とくに自動車用の有段自動変速機に好適である。
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。 ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
【実施例】
[製造例1] シクロペンタジエン系石油樹脂の製造(その1)
ナフサのスチームクラッキングより得られたCPD留分であって、ジシクロペンタジエン75.0質量%およびオレフィン5.4質量%を含有し、残余の大部分が飽和炭化水素からなるもの500g(シクロペンタジエン5.7モル)と、ナフサのスチームクラッキングより得られ、スチレン、ビニルトルエン、α,β−メチルスチレンおよびインデンの含有量の合計が26.5質量%(平均分子量118)であって残りの大部分が不活性な芳香族炭化水素からなるC9 系芳香族留分500g(反応性成分1.1モル)とを、窒素雰囲気下に圧力18Kg/cm2(G)、温度260℃において3時間、熱共重合させた。 この第一段の熱共重合反応液から、原料中の不活性留分および未反応原料を、最初は加圧下に、ついで減圧下に252℃で留去し、第二段の重合を行ないながら50Torr.の減圧下に同じ温度に1時間保持し、シクロペンタジエン系樹脂409gを得た。 この樹脂の軟化点は120℃。
【0045】
ついでニッケル系触媒を2質量%添加し、水素圧60Kg/cm2(G)、反応温度250℃において12時間水素化処理し、目的とするシクロペンタジエン−モノビニル芳香族共重合樹脂水素化物を得た。 この樹脂の軟化点は125℃、重量平均分子量は640。
【0046】
[製造例2] シクロペンタジエン系石油樹脂の製造(その2)
製造例1で用いたCPD留分750g(シクロペンタジエン8.5モル)と、デセン−1を96.5質量%含み残部がα−オレフィン以外の留分から成るC10留分250g(α−オレフィンとして1.7モル)とを、製造例1と同じ条件で2時間熱共重合させた。 熱共重合反応液から、原料中の不活性留分および未反応原料を、最初は加圧下に、ついで減圧下に、200℃において留去し、シクロペンタジエン系樹脂380gを得た。 引き続き、製造例1と同じ触媒および水素圧力の条件下に220℃において4時間水素化し、目的とするシクロペンタジエン−α−オレフィン共重合樹脂水素化物を得た。 この樹脂の軟化点は32℃、重量平均分子量は486。
【0047】
[実施例1〜6,比較例1〜5]
上記製造例1および2で得たシクロペンタジエン系石油樹脂を用いて、表1に示す組成の自動変速機油組成物を製造した。 実施例は本発明に従った組成を有するものであり、比較例は本発明の範囲外の組成のものである。 表1において、原料の符号はそれぞれ下記の意味をあらわす:
A−1:シクロペンタジエン−モノビニル芳香族共重合樹脂水素化物(製造例1)A−2:シクロペンタジエン−α−オレフィン共重合樹脂水素化物(製造例2)B−1:ポリジイソブチレン水素化物(重量平均分子量:350、100℃における粘度:2.71mm2/S)
B−2:ポリジイソブチレン水素化物(重量平均分子量:200、100℃における粘度:2.35mm2/S)
C :パラフィン系鉱油(100℃における粘度:4.02mm2/S、流動点:−17.5℃、イオウ分:0.15質量%)
D−1:トリイソオクチルホスファイト
D−2:2−エチルヘキシルアシッドホスフェイト
D−3:ジ−2−エチルヘキシルハイドロゼンホスファイト
E−1:(N系)ブチルデシルアミド
E−2:(N系)ブチルデシルアミン
E−3:(エステル系)ミリスチン酸メチル
E−4:(エステル系)ステアリン酸メチル
表1に示したA〜C成分の配合量ならびにDおよびE成分の添加量は、基油を100質量%としたものである。 実施例および比較例を通じて、自動変速機油に、酸化防止剤、無灰型分散剤、金属型清浄剤、摩耗防止剤および金属不活性剤を、合計10質量%添加した。
【0048】
上記各組成の自動変速機油を、下記の試験法で評価した。
【0049】
(耐ピッチング性試験)
耐ピッチング性の評価法として、ユニスチールころがり疲労試験を採用した。ユニスチールころがり疲労試験の試験条件および疲労寿命判定法は、次のとおりとした:
<試験条件>
回 転 数 :1500rpm
押しつけ荷重:3340N
油 温 :60℃
加速度計 :4G
試験球数 :6個
繰り返し数 :6回
テストベアリング:51110 P5(NSK製)
テストピース:SUJ−2
<疲労寿命判定法>
疲労寿命をワイブル統計処理し、L10(hr)により評価した。 この試験においては、L10(hr)が7.0hr以上のものを合格とした。
【0050】
(摩擦特性試験)
湿式クラッチにおける摩擦特性は、SAE No.2 試験機および低速滑り試験機により評価した。
【0051】
<SAE No.2試験>
ディスク :国産自動変速機用ペーパー系ディスク(2枚)
プレート :国産自動変速機用鋼製プレート(4枚)
モーター回転数:ダイナミックサイクル:3000rpm
スタティックサイクル:0.7rpm
押しつけ圧 :2.81kg/cm2
油 温 :120℃
サイクル数 :500サイクル
以上の評価条件により、ダイナミックサイクルを500サイクル運転した後のスタティックサイクルにおける静摩擦係数を測定した。 静摩擦係数が0.120以上あれば、伝達トルク容量が十分であるとした。
【0052】
<低速滑り試験>
ディスク:国産自動変速機用ペーパー系ディスク(1枚)
プレート:国産自動変速機用鋼製プレート(1枚)
回転数 :1〜150rpm
油 温 :40℃
面 圧 :10kg/cm2
以上の評価条件における回転数1rpmのときの摩擦係数をμ1、回転数50rpmのときの摩擦係数をμ50として測定し、μ1/μ50を算出した。 μ1/μ50が1より小さければ、実際に自動車用自動変速機に使用したときにジャダーを発生しない。
【0053】
<BF(ブルックフィールド)粘度試験>
ASTM D 2983に従って、−40℃のBF粘度を測定した。 −40℃におけるBF粘度が20000を超えないこと、を合格基準とした。
【0054】
A成分およびB成分の重量平均分子量は、標準物質としてポリスチレンを用い、通常のゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを行ない、その結果をポリスチレン換算値で表示した値である。 装置としては東ソー(株)製HLC−802型を用い、以下の分析条件で測定した:
カラム :テトラヒドロフラン(THF)
カラム恒温槽温度:40℃
流 速 :1.2ml/min
資料濃度 :0.005g/1ml THF
検出器 :示差屈折計
結果を、表2に示す。 この表において、* 印を付したデータは、上記の基準を満たしていないものである。
【0055】
【0056】
【発明の効果】
本発明の自動変速機油組成物は、トルク伝達容量が大きく、耐ジャダー性に優れるとともに耐ピッチング性にも優れ、かつ長い疲労寿命を有する。 したがって本発明の組成物は、燃費向上に伴う自動変速機油の低粘度化傾向、エンジンの高出力化に伴う負荷の増大に応えることができ、耐ピッチング性の要求される自動変速機油として好適である。
Claims (2)
- 下記のA,BおよびCの成分
(A)シクロペンタジエン類とα−オレフィン類もしくはモノビニル芳香族炭化水素類との熱共重合物、またはこの熱共重合物の水素化物であって、軟化点が40℃以上および重量平均分子量が250以上の条件の少なくともひとつを満たすシクロペンタジエン系石油樹脂:2〜17質量%、
(B)重量平均分子量が100〜1,000である、分枝を有するポリα−オレフィン:20〜45質量%、および
(C)100℃における粘度が2〜50mm2/Sである鉱油:38〜78質量%からなる潤滑油組成物を基油として使用し、これに、下記のDおよびEの成分
(D)一般式1〜3のリン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステルおよび酸性亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種のリン化合物0.01〜5質量%、
および
(E)N系およびエステル系の化合物から選ばれる少なくとも1種の摩擦調整剤:0.01〜3質量%
を添加して成る自動変速機油組成物。 - C成分として、100℃における粘度が2〜50mm2/S、流動点が−15℃以下、イオウ分が0.5質量%以下である鉱油を使用した請求項1の自動変速機油組成物。
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