JP3873235B2 - フローリミッタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、燃料等の物質を流動させる流路中に設けられ、この物質の圧力(流量)が所定値以上となった場合に、この物質の流動を停止させるフローリミッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
図5(a),(b)及び(c)において、従来のフローリミッタ50が示されている。このフローリミッタ50は、例えば内燃機関用燃料噴射システムにおけるインジェクタの上流側等に設けられ、燃料等の流動的物質の圧力(流量)が所定値以上となった場合に、この物質の流通を停止させるものであり、ケーシング51、流入口52、流出口53、収納空間54、弁体55、弁座56、弁体を弁座56から遠ざける方向に押圧する弾性部材57、ケーシング51に固定され流入口52と収納空間54とを連通させる連通路58を形成するスペーサ59等を具備して構成されている。
【0003】
上記構成のフローリミッタ50によれば、物質が流入口52に流入すると、この物質は、連通路58を通り収納空間54に進入し、弁体55を弾性部材57の押圧力に抗して弁座56方向に移動させ、弁体55に形成された中空部60及び連通孔65を通り収納空間54を経て流出口53から流出する。この時、流入口52から流入する物質の圧力が適正な範囲であるならば、弁体55は、連通孔65の上流側と下流側の圧力差によって受ける力と弾性部材57の押圧力とのバランスにより、スペーサ59と弁座56との中間位置に存することになる。
【0004】
また、上記フローリミッタ50においては、流入口52からの物質の流入がないか又はほとんどない時には、図5(b)に示すように、弾性部材57の押圧力により弁体55の後端部62がスペーサ59に接した状態となる。また、図示しないが、流入口52から流入する物質の圧力が所定値以上となった時には、弁体55の先端部63が弁座56に嵌合し、物質の流通が停止される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のフローリミッタ50においては、流入口52からの物質の流入が停止すると、弁体55は弾性部材57の押圧力により図5(b)に示す初期位置に復帰しようとするが、この途中過程の図5(c)において、インジェクタの閉弁時に発生し逆方向に伝播する圧力(逆圧力)Prが流出口53から収納空間54を経て弁体55に作用すると、弁体55は瞬時にスペーサ59方向に移動するので、逆圧力がなんら減衰せずにコモンレール内に達し、コモンレール内の圧力が変動するという不具合があった。またこの時、弁体55の後端部62がスペーサ59に衝突する場合があり、スペーサ59の保持強度や接触面の磨耗の面でも問題であった。
【0006】
弾性部材57の初期力やばね定数は、流入口52から流入する物質の流量が所定値以上になった時に、弁体55の先端部63が弁座56に嵌合するように選定されるので、弁体55の後端部62のスペーサ59への衝突を防止するように弁体55が初期位置に戻る時期と逆圧力が到達する時期の関係を選ぶことは困難であった。
【0007】
そこで、この発明は、通常の物質の流動方向とは逆方向に発生する圧力を吸収することができるフローリミッタを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、中空状に形成されたケーシング、前記ケーシング内に所定の物質を流入させる流入口、前記ケーシング内に流入した物質を外部に流出させる流出口、前記ケーシング内に流入した物質の圧力を受けて摺動する弁体、前記流入口及び前記流出口を連通するように前記ケーシング内に形成され前記弁体が摺動可能に収納される収納空間、前記収納空間と前記流出口との間に設けられ前記弁体が着座可能に形成された弁座、前記弁体を前記弁座から遠ざける方向に押圧する弾性部材を含んで構成され、前記流入口から流入した物質の圧力が所定値以上となった場合に、前記弁体が前記弾性部材の押圧力にうちかって前記弁座に着座し前記流出口からの前記物質の流出を停止させ、その後前記弁体が初期位置に復帰するフローリミッタにおいて、前記物質の圧力を受けて前記弁座方向に移動した前記弁体が初期位置に復帰する時の動作を制限する復帰制限手段を備え、この復帰制限手段を前記流入口と前記収納空間との間に形成された通路の通路面積を絞るオリフィス状部により構成したものである。
【0009】
これによれば、物質の流動(噴射)が停止した際に発生する通常時とは逆方向への圧力(逆圧力)がインジェクタからフローリミッタ内に伝播してきた時に、弁体が初期位置に戻っていない場合には、収納空間等のフローリミッタ内の空間に残留する燃料を緩衝材として作用させることができるので、弁体がスペーサ側に移動する速度を緩慢にし、コモンレール内への圧力伝播を小さくすることができる。また、物質の流動量が比較的少なく、弁体が初期位置に戻った後に逆圧力Prが伝播してきた場合には、弁体に設けられた連通孔と弁体の復帰制限手段が直列に作用し、逆圧力Prがコモンレール内へ伝播するのを緩和することができる。これによって機関の全運転域において、安定した制御性を確保することが可能になる。
【0010】
また、復帰制限手段を流入口と収納空間との間に形成された通路の通路面積を絞るオリフィス状部により構成したので、収納空間から流入口へ向かう流通抵抗が大きくなり、弁体が初期位置に戻る前に、弾性部材以外の大きな外力(ここでは逆圧力)により初期位置方向に押された場合でも戻る速度を緩慢にすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図2に示す第1の実施の形態に係るフローリミッタ1は、図1に示す内燃機関用燃料噴射システム40において用いられるものである。この内燃機関用燃料噴射システム40は、燃料タンク41、高圧燃料供給装置42、コモンレール43、フローリミッタ1、インジェクタ44、スイッチ・センサ類45、電子式コントロールユニット(ECU)46等を備えて構成される。
【0014】
高圧燃料供給装置42は、燃料タンク41から汲み上げた燃料油を高圧化してコモンレール43に供給し、コモンレール43は、高圧燃料供給装置42から供給された高圧燃料を蓄えインジェクションパイプを介して複数のインジェクタ44へ分配し、インジェクタ44は、高圧燃料を所定のタイミングで燃料機関の燃焼室に噴射する。ECU46は、スイッチ・センサ類45により検出されたアクセル開度、エンジン回転数、コモンレール43内の圧力等のフィードバック情報に基づいて、燃料噴射量、噴射タイミング等の目標値を決定し、インジェクタ44等に対して制御信号を出力する。
【0015】
そして、フローリミッタ1は、コモンレール43とインジェクタ44とを連結するインジェクションパイプ47からの燃料漏れや、インジェクタ44からの過大な燃料噴射等が発生した場合に、燃料通路を遮断し、燃料の流出を停止するものである。この実施の形態に係るフローリミッタ1は、図2に示すように、ケーシング2、ケーシング2に形成され前記コモンレール43内の燃料を内部に導く流入口3、ケーシング2に形成され内部の燃料を前記インジェクションパイプ47へ導く流出口4、ケーシング2内に画成される収納空間5、収納空間5内に収納され前記流入口3から流入する燃料の圧力を受けて摺動する弁体6、前記収納空間5と前記流出口4との間に形成され前記弁体6が着座可能な形状を有する弁座7、前記収納空間5内に配され前記弁体6を前記弁座7から遠ざける方向に押圧するコイルばね8、前記流入口3と前記収納空間5とを連通させる連通路9を形成するスペーサ10を具備して構成されている。
【0016】
前記弁体6は、その先端部11が前記弁座7に嵌合可能な形状に形成され、その後端部12には、開口部13が形成されている。また、前記弁体6の中間部には、一端側が前記開口部13と連通すると共に他端側が前記先端部11の近傍まで延びる中空部14が形成され、この中空部14の先端部11寄りの部分には、この中空部14と収納空間5とを連通させる連通孔15が穿設されている。
【0017】
上記構成のフローリミッタ1によれば、前記コモンレール43からの燃料が流入口3に流入すると、この燃料は、連通路9を通り収納空間5及び中空部14に進入し、弁体6をコイルばね8の押圧力に抗して弁座7方向に移動させ、中空部14から連通孔15を通り収納空間5及び流出口4を経て前記インジェクタ44に流入する。この時、流入口3から流入する燃料の圧力が適正な範囲であるならば、弁体6は、連通孔15の上流側と下流側の圧力差によって受ける力とコイルばね8の押圧力とのバランスにより、スペーサ10と弁座7との中間位置に存することになる。
【0018】
また、上記フローリミッタ1においては、前記コモンレール43からの燃料供給がないか又はほとんどない時には、図3(a)に示すように、前記コイルばね8の押圧力により前記弁体6の後端部12が前記スペーサ10に接した状態となり、また前記コモンレール43から供給される燃料の圧力が所定値以上となった時には、図3(b)に示すように、前記弁体6の先端部11が前記弁座7に嵌合し、前記インジェクタ44への燃料供給が停止される。尚、本明細書中においては、上記図3(a)の状態を弁体6の初期位置とする。
【0019】
そして、この実施の形態においては、図2乃至図4に示すように、前記スペーサ10により、前記連通路9の前記収納空間5と連通する部分に、通路面積を絞るオリフィス状部20が形成されている。このオリフィス状部20により、図2に示すように、弁体6がコモンレール43からの燃料の圧力を受けて弁座7方向に移動した後、コモンレール43からの燃料供給が停止し、弁体6が図3(a)に示す初期位置に復帰する際の動作が制限される。
【0020】
インジェクタ44からの燃料噴射が終了した時には、コモンレール43からインジェクタ44への燃料の流れが急に停止することにより、瞬間的にインジェクタ44側からフローリミッタ1側への圧力、即ち通常の燃料の流通方向とは逆方向にかかる圧力(逆圧力Pr)が発生する(図5(c)参照)。この逆圧力Prがフローリミッタ1からコモンレール43に伝播されることにより、コモンレール43内の圧力に脈動等の変動が生じる場合がある。コモンレール43内の圧力は、上述したように、フィードバック情報の1つとして前記ECU46に入力され、各構成要素(例えば高圧燃料供給装置42やインジェクタ44)に対する制御信号を生成するために利用されるため、上記逆圧力Prのコモンレール43内への伝播は、インジェクタ44の燃料噴射量や噴射タイミング等の制御を阻害する要因となり得る。
【0021】
そこで、この発明の実施の形態に係るフローリミッタ1においては、上述したように、前記流入口3と前記収納空間5とを連通させる連通路9にオリフィス状部20が形成されていることにより、収納空間5から流入口3へ向かう燃料の流通抵抗が大きくなり、弁座7方向へ移動した弁体6が初期位置に戻る速度が制限されるので、図4に示すように、前記逆圧力Prがフローリミッタ1内に伝播してきた時に、まだ弁体6が初期位置にない場合には、スペーサ10と弁体6との間の空間、及び弁体6の中空部14内に存在する燃料が緩衝材の役目を果たし、前記逆圧力Prを吸収し、この逆圧力Prがコモンレール43内に伝播することを低減させることができる。これにより、コモンレール43内の圧力の不要な変動を防ぐことができるので、ECU46による制御の正確性を向上させることができると共に、フローリミッタ1そのものの寿命(弁体6とスペーサ10の接触面の磨耗低減等)を延ばすことができる。尚、噴射量が比較的少なく、弁体6が初期位置に戻った状態で逆圧力Prが伝播してきた場合には、弁体6に設けられた連通孔15とスペーサ10に設けられたオリフィス状部20が直列の絞りとして作用し、逆圧力Prがコモンレール43内へ伝播するのを緩和するので、機関の全運転域において、安定した制御性を確保することができる。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、弁座方向に移動した弁体が初期位置に復帰する時の動作を制限する復帰制限手段(オリフィス状部)を設けたことにより、フローリミッタ内に残留する燃料を緩衝材として作用させることができるので、流出口から伝播する圧力(逆圧力)を吸収することができる。このため、この発明に係るフローリミッタをインジェクタの上流側に設けた場合には、インジェクタによる燃料噴射後に瞬間的に発生するインジェクタからの逆圧力を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の実施の形態に係るフローリミッタが使用される一例である内燃機関用燃料噴射システムの概要を示す図である。
【図2】図2は、この発明の実施の形態に係るフローリミッタの構造を示す断面図である。
【図3】図3(a)は、この発明の実施の形態に係るフローリミッタにおける弁体の初期位置を示す断面図であり、図3(b)は、この発明の実施の形態に係るフローリミッタにおいて燃料の流通を停止させた場合の状態を示す断面図である。
【図4】図4は、この発明の実施の形態に係るフローリミッタのオリフィス状部の構造を示す拡大断面図である。
【図5】図5(a),(b)及び(c)は、従来のフローリミッタの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 フローリミッタ
2 ケーシング
3 流入口
4 流出口
5 収納空間
6 弁体
7 弁座
8 コイルばね
9 連通路
10 スペーサ
13 開口部
14 中空部
15 連通孔
20 オリフィス状部
Pr 逆圧力

Claims (1)

  1. 中空状に形成されたケーシング、前記ケーシング内に所定の物質を流入させる流入口、前記ケーシング内に流入した物質を外部に流出させる流出口、前記ケーシング内に流入した物質の圧力を受けて摺動する弁体、前記流入口及び前記流出口を連通するように前記ケーシング内に形成され前記弁体が摺動可能に収納される収納空間、前記収納空間と前記流出口との間に設けられ前記弁体が着座可能に形成された弁座、前記弁体を前記弁座から遠ざける方向に押圧する弾性部材を含んで構成され、前記流入口から流入した物質の圧力が所定値以上となった場合に、前記弁体が前記弾性部材の押圧力にうちかって前記弁座に着座し前記流出口からの前記物質の流出を停止させ、その後前記弁体が初期位置に復帰するフローリミッタにおいて、
    前記物質の圧力を受けて前記弁座方向に移動した前記弁体が初期位置に復帰する時の動作を制限する復帰制限手段を備え、この復帰制限手段を前記流入口と前記収納空間との間に形成された通路の通路面積を絞るオリフィス状部により構成
    したことを特徴とするフローリミッタ。
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