JP3846362B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、圧縮行程等の高圧の気筒内へ燃料を供給するために、複数気筒共通の蓄圧室を設け、この蓄圧室内で加圧された燃料を各気筒に配置された燃料噴射弁により噴射する燃料噴射制御装置が公知である。
【0003】
各燃料噴射弁においては、弁体により噴孔が開放されると燃料噴射が開始され、弁体により噴孔が閉鎖されると燃料噴射が停止される。こうして燃料噴射が実施されると、燃料噴射弁内の燃料圧力が低下し、この圧力低下は負圧波として蓄圧室へ伝播される。蓄圧室へ伝播した負圧波は、蓄圧室を開放端として反射するために、正圧波となって燃料噴射弁へ伝播される。燃料噴射弁へ伝播された正圧波は、燃料噴射弁を閉鎖端として反射するために、正圧波のまま蓄圧室へ伝播される。次いで、蓄圧室へ伝播した正圧波は、蓄圧室を開放端として反射し、負圧波となって燃料噴射弁へ伝播される。燃料噴射弁へ伝播された負圧波は、燃料噴射弁を閉鎖端として反射し、負圧波のまま蓄圧室へ伝播される。このような圧力波の伝播は、圧力波が減衰によって消滅するまで繰り返されることとなる。
【0004】
一般的に、各燃料噴射弁の開弁時間は、蓄圧室内の燃料圧力に応じて制御されるが、実際的に燃料噴射量に影響するのは、燃料噴射弁内の燃料圧力である。燃料噴射弁内の燃料圧力は、蓄圧室からの反射波が正圧波として到来する時には蓄圧室内の燃料圧力より高まり、負圧波として到来する時には蓄圧室内の燃料圧力より低くなる。しかしながら、圧力波は次回サイクルにおける燃料噴射までには減衰によって消滅するために、次回サイクルの燃料噴射時点において、燃料噴射弁内の燃料圧力は圧力波の到来によって殆ど変動することはなくほぼ蓄圧室内の燃料圧力に一致する。それにより、一回のサイクルで各燃料噴射弁が一回の燃料噴射を実施する場合には、燃料噴射に際して、蓄圧室内の燃料圧力に応じて開弁時間を制御しても特に問題とはならない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−18074号公報に開示されているように各燃料噴射弁においてパイロット燃料噴射と主燃料噴射とを実施する場合、又は、主燃料噴射とポスト燃料噴射とを実施する場合等のように、同一サイクルにおいて、同じ燃料噴射弁により少なくとも二回の燃料噴射が実施される場合には、先の燃料噴射(パイロット燃料噴射と主燃料噴射との関係においてはパイロット燃料噴射であり、主燃料噴射とポスト燃料噴射との関係においては主燃料噴射である。)により発生した圧力波は、後の燃料噴射(パイロット燃料噴射と主燃料噴射との関係においては主燃料噴射であり、主燃料噴射とポスト燃料噴射との関係においてはポスト燃料噴射である。)までの短時間では消滅せず、後の燃料噴射時点において、圧力波が到来して燃料噴射弁内の燃料圧力を大きく変動させることがある。このような場合に、蓄圧室内の燃料圧力に応じて開弁時間を制御しても、所望量の燃料を噴射させることはできない。
【0006】
従って、本発明の目的は、蓄圧室と、配管により蓄圧室へ接続された燃料噴射弁とを具備する燃料噴射制御装置において、同一サイクルで同じ燃料噴射弁により少なくとも二回の燃料噴射が実施される場合に、先の燃料噴射による圧力波の影響によって後の燃料噴射時における燃料噴射弁内の燃料圧力が変動することを抑制して、蓄圧室内の燃料圧力に応じて後の燃料噴射における開弁時間を制御しても所望量の燃料を噴射可能とすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置は、蓄圧室と、配管により前記蓄圧室へ接続された燃料噴射弁とを具備し、同一サイクルで同じ前記燃料噴射弁により少なくとも二回の燃料噴射が実施される場合に、前記少なくとも二回の燃料噴射における先の燃料噴射と後の燃料噴射との間において、前記先の燃料噴射の影響によって前記燃料噴射弁内の燃料圧力が前記蓄圧室内の燃料圧力より高まった時に、燃料を噴射することなく前記燃料噴射弁内の燃料を消費することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射弁は、制御弁体を開弁して前記制御室内の燃料圧力を低下させることにより噴孔弁体が噴孔を開放して燃料を噴射するものであり、前記制御弁体は電歪アクチュエータによって開度自在に制御可能であり、前記燃料噴射弁内の燃料を消費するために、前記制御弁体は、前記制御室内の燃料圧力を前記噴孔弁体が前記噴孔を開放しない程度に低下させるように、設定開度に制御されて前記制御室から燃料を流出させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明による請求項3に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置は、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置において、前記燃料噴射弁は、制御室内の燃料圧力を低下させることにより噴孔弁体が噴孔を開放して燃料を噴射するものであり、前記制御室には少なくとも二つの燃料流出通路が接続され、前記燃料噴射弁内の燃料を消費するために、前記制御室内の燃料圧力を前記噴孔弁体が前記噴孔を開放しない程度に低下させるように、前記二つの燃料流出通路における燃料流出流量の少ない方を使用して前記制御室から燃料を流出させることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による燃料噴射制御装置を示す概略図である。1は気筒毎に配置された燃料噴射弁であり、2は蓄圧室である。各燃料噴射弁1と蓄圧室2とは配管3によって接続されている。各燃料噴射弁1は、例えば、ディーゼルエンジン又は筒内噴射式火花点火内燃機関の気筒内へ直接的に燃料を噴射するために、各気筒共通の蓄圧室2において加圧された高圧燃料を噴射するものである。もちろん、燃料噴射弁1は気筒内以外の例えば吸気ポートへ燃料を噴射するのにも使用可能である。
【0011】
蓄圧室2には、蓄圧室2内を所望の高燃料圧力に維持するための高圧ポンプ(図示せず)が接続されている。高圧ポンプは、一般的に、機関駆動式であり、例えば、二つの燃料噴射弁が燃料噴射を完了する毎に、それにより消費された燃料量を蓄圧室2へ圧送するようになっている。また、蓄圧室2には、蓄圧室2内の燃料圧力を検出するための圧力センサ4が配置されている。5は蓄圧室2内の燃料温度を検出するための温度センサである。
【0012】
燃料噴射弁1は、例えば、軸線方向に摺動可能な噴孔弁体11を具備し、噴孔弁体11の先端部が噴孔12を開閉するようになっている。噴孔弁体11の先端側には噴孔12に連通する先端側空間13内の燃料圧力が作用し、噴孔弁体11の基端側には基端側空間14内の燃料圧力が作用するようになっている。また、燃料噴射弁1内には高圧燃料通路15が形成され、この高圧燃料通路15は、基端側空間14とオリフィス16を介して連通しており、先端側空間13とはオリフィスを介することなく連通している。前述した蓄圧室2へ通じる配管3は、基端側空間14の近傍において高圧燃料通路15へ接続されている。
【0013】
基端側空間14内には、噴孔弁体11を閉弁方向に付勢する閉弁スプリング17が配置されている。また、基端側空間14の近傍には、制御弁体18が位置する制御弁体室19が設けられ、制御弁体室19は、低圧燃料通路20を介して燃料タンクへ通じている。制御弁体室19と基端側空間14とは、オリフィス21を有する連通路22を介して連通しており、制御弁体18は、アクチュエータ(図示せず)によって、この連通路22を開閉可能に制御される。
【0014】
制御弁体18によって連通路22が閉鎖されれば、基端側空間14内は、高圧燃料通路15からオリフィス16を介して供給される高圧燃料によって、高圧燃料通路15と同じ高燃料圧力となる。この時、開弁方向の受圧面積(基端側空間14の対向面積)と閉弁方向の受圧面積(先端側空間13の対向面積)とは、それぞれA1(斜視として一点鎖線で示す)であり互いに等しく、また、先端側空間13の燃料圧力は高圧燃料通路15と同じ高燃料圧力であるために、基端側空間14の燃料圧力によって噴孔弁体11に作用する閉弁方向の押圧力と、先端側空間13の燃料圧力によって噴孔弁体11に作用する開弁方向の押圧力とは等しくなって互いに相殺され、噴孔弁体11は閉弁スプリング17による閉弁方向の押圧力によっては閉弁される。
【0015】
こうして、噴孔弁体11が閉弁されると、噴孔弁体11のシート部より先端側には、先端側空間13の燃料圧力が作用せず、噴孔弁体11の先端側の受圧面積、すなわち、開弁方向の受圧面積がA1からドーナツ状のA2(斜視として一点鎖線で示す)へ減少する。これに対して、噴孔弁体11の基端側における閉弁方向の受圧面積は依然としてA1であり、先端側空間13及び基端側空間14における燃料圧力Pは等しいが、噴孔弁体11には(A1−A2)P=P1だけ大きな閉弁方向の押圧力が作用し、さらに閉弁スプリング17による閉弁方向の押圧力P2を加えて確実な閉弁が保証される。
【0016】
制御弁体18によって連通路22が開放されれば、基端側空間14内の高圧燃料は、オリフィス21を有する連通路22を介して制御弁体室19へ流出して消費され、制御弁体室19から低圧燃料通路20を介して燃料タンクへ戻される。こうして、基端側空間14内の燃料圧力が低下してP’=(A2・P−P2)/A1となると、噴孔弁体11に作用する閉弁方向の押圧力PC(A1・P’+P2)と開弁方向の押圧力PO(A2・P)が等しくなり、さらに僅かに燃料圧力が低下すれば、開弁方向の押圧力が閉弁方向の押圧力に勝って噴孔弁体11は開弁され、噴孔12を介して先端側空間13内の高圧燃料が噴射される。
【0017】
噴孔弁体11が開弁されれば、開弁方向の受圧面積は閉弁方向の受圧面積と等しくなり、制御弁体18によって連通路22が閉鎖されて基端側空間14内の燃料圧力が先端側空間13内の高燃料圧力と等しくなると、噴孔弁体11は閉弁されて燃料噴射が停止される。こうして、基端側空間14は、制御弁体18によって開閉されて燃料流出が制御されることにより、燃料圧力の低下に伴って噴孔弁体11を開弁させ、また、燃料圧力の増加に伴って噴孔弁体11を閉弁させる制御室として機能する。
【0018】
図2は、燃料噴射弁1の先端側空間13内における燃料圧力の変化を示すタイムチャートである。燃料圧力Pは、先の燃料噴射が開始される前における当初の先端側空間13内の燃料圧力であり、蓄圧室2内の高燃料圧力とほぼ等しい。時刻t0において噴孔弁体11を開弁させて燃料噴射が開始し、時刻t1において噴孔弁体11を閉弁させて燃料噴射を停止する。それにより、先端側空間13内の燃料圧力は低下して負圧波を発生する。この負圧波は蓄圧室2で反射して正圧波として時刻t2において燃料噴射弁へ戻り、時刻t3まで先端側空間13内の燃料圧力を蓄圧室2内の燃料圧力より高める。
【0019】
次いで、こうして時刻t3において発生した正圧波が、蓄圧室で反射して負圧波として時刻t4において燃料噴射弁へ戻り、時刻t5まで先端側空間13内の燃料圧力を蓄圧室2内の燃料圧力より低くする。次いで、時刻t5において発生した負圧波が、蓄圧室で反射して正圧波として時刻t6において燃料噴射弁へ戻り、時刻t7まで先端側空間13内の燃料圧力を蓄圧室2内の燃料圧力より高くする。このように、燃料噴射直後において、圧力波が減衰により消滅するまで、燃料噴射弁には正圧波及び負圧波が交互に到来して、燃料噴射弁内の燃料圧力を蓄圧室内の燃料圧力より交互に高めたり低くしたりする。
【0020】
一般的に、各燃料噴射弁1の噴孔弁体11の開弁時間は、蓄圧室2内の燃料圧力に応じて制御されるが、実際的に燃料噴射量に影響するのは、燃料噴射弁内の燃料圧力、厳密には、先端側空間13内の燃料圧力である。前述したように、先端側空間13内の燃料圧力は圧力波の到来により変動する。図2に実線で示すように、先端側空間13へ到来する圧力波は、到来毎に減衰によって徐々に小さくなり、次回サイクルにおける燃料噴射までには消滅する。それにより、各燃料噴射弁1によって主燃料噴射だけを行うのであれば、この時に、先端側空間13内の燃料圧力がほぼ蓄圧室2内の燃料圧力に一致しているとして、蓄圧室2内の燃料圧力に基づき開弁期間を設定しても、それほど問題とはならない。
【0021】
主燃料噴射に加えて、パイロット燃料噴射又はポスト燃料噴射を実施する場合のように、同一サイクルで同一燃料噴射弁が少なくとも二回の燃料噴射を実施する場合には、先の燃料噴射直後に発生した圧力波が、消滅せずに配管3内を往復している間に、後の燃料噴射が実施されることがある。もし、この圧力波によって先端側空間13の燃料圧力が変動している時に、後の燃料噴射を実施することとなれば、蓄圧室2内の燃料圧力に基づき開弁期間を設定しても意図する燃料噴射量を実現することはできない。また、先端側空間13内の燃料圧力を何らかの方法によって把握したとしても、燃料圧力は大きく変動しているために、意図する燃料噴射量を実現するように開弁時間を設定することは難しい。
【0022】
本実施形態の燃料噴射制御装置は、先の燃料噴射による圧力波の影響によって後の燃料噴射時における先端側空間13内の燃料圧力が変動することを抑制して、蓄圧室内の燃料圧力に応じて後の燃料噴射における開弁時間を制御しても所望量の燃料を噴射可能とすることを意図するものである。実際的には、蓄圧室2内の燃料圧力は、各燃料噴射弁1の燃料噴射によって発生する圧力波によって常に変動しているために、蓄圧室2内の燃料圧力としては、平均値を採用することとなる。
【0023】
先端側空間13内の燃料圧力が変動することを抑制するために、本実施形態では、先の燃料噴射と後の燃料噴射との間において、先の燃料噴射による影響によって燃料噴射弁内の燃料圧力が蓄圧室内の燃料圧力より高まる時、すなわち、燃料噴射弁に正圧波が到来した時に、燃料噴射弁において燃料を噴射することなく燃料噴射弁内の燃料を消費するようになっている。すなわち、この時に、僅かな時間だけ制御弁体18を開弁させ、基端側空間14から燃料を流出させて高圧燃料を消費するようになっている。僅かな時間だけ制御弁体18を開弁させても、基端側空間14内の燃料圧力は、前述したP’=(A2・P−P2)/A1より低下することはなく、噴孔弁体11が開弁して燃料が噴射されることはない。
【0024】
こうして基端側空間14の燃料圧力を低下させれば、オリフィス16を介して高圧燃料通路15から基端側空間14内へ高圧燃料の一部が流入することとなるために、燃料噴射弁1内の燃料圧力を低下させ、図2に点線で示すように、到来した正圧波を抑制することができる。こうして正圧波を抑制することができれば、それ以降、配管3内を往復する圧力波は短時間で消滅し、また、完全に消滅せずに、もし、後の燃料噴射時点において圧力波が燃料噴射弁1に到来したとしても、図2に点線で示すように、この圧力波はかなり小さなものとすることができる。それにより、先端側空間13内の燃料圧力が大きく変動して蓄圧室2内の燃料圧力から懸け離れたものとなるようなことはなく、蓄圧室2内の燃料圧力に応じて開弁時間を制御しても、後の燃料噴射において所望量の燃料を噴射させることができる。
【0025】
本実施形態においては、図2に示すように、蓄圧室2からの最初の反射波が正圧波として燃料噴射弁に到来した時に、燃料噴射弁1内で燃料を消費するようにしている。このような制御を実現するためには、燃料噴射弁1内の燃料圧力が正圧波によって蓄圧室2内の燃料圧力より高まったことを判断しなければならない。そのために、燃料噴射弁1の先端側空間13内、燃料噴射弁1内、又は、配管3における燃料噴射弁1の近傍に圧力センサを設けて、燃料噴射弁1内の燃料圧力を検出し又は検出した圧力に基づき推定すれば良い。圧力センサを配管3に設ける場合には、圧力センサとして配管の歪みを検出する歪みゲージ等を使用することができるが、燃料噴射弁1に圧力センサを設けることは一般的に困難である。
【0026】
燃料噴射弁及びその近傍に圧力センサを設けることなく、燃料噴射弁1内の燃料圧力が蓄圧室2内の燃料圧力より高まったことを判断するためには、燃料中を圧力が伝播する速度、すなわち、圧力伝播速度Vに基づき、先の燃料噴射により発生した圧力波が蓄圧室2へ伝播して反射により再び燃料噴射弁1へ到来していることを推定すれば良い。燃料噴射弁1の先端側空間13から蓄圧室2までの距離は、図1に示すように、L1+L2であり、先の燃料噴射終了から反射負圧波が燃料噴射弁1の先端側空間13へ到来するまでの時間Tは、2(L1+L2)/Vによって算出することができる。この時間Tは、図2において時刻t1から時刻t2までの時間である。こうして、先の燃料噴射終了からT時間後には、燃料噴射弁1へ正圧波が到達するために、この時に、燃料噴射弁1の基端側空間14において燃料を消費すれば良い。圧力伝播速度は、燃料の温度、圧力、及び、燃料の性状によって変化するために、これらに基づいて決定することが好ましい。
【0027】
また、燃料噴射弁1において正圧波の燃料を消費するのは、実際には基端側空間14であるために、燃料噴射弁1の高圧燃料通路15におけるオリフィス16近傍の燃料圧力が蓄圧室2内の燃料圧力より高まっている時に制御弁体18を開弁させることが好ましい。この時期は、先端側空間13へ正圧波が到来する直前と直後である。また、抑制する正圧波は、蓄圧室2からの最初の反射波に限定されず、後の燃料噴射を実施する以前であれば、蓄圧室2からの次回以降の反射波でも良く、正圧波が到来する毎に制御弁体18を開弁させても良い。
【0028】
制御弁体18のアクチュエータは、一般的に電磁式であり、連通路22を完全に開放する開放位置と連通路22を完全に閉鎖する閉鎖位置との二段階に制御弁体18を制御することは容易であるが、制御弁体18を任意の位置に制御して連通路22の開度を可変とさせることは困難である。それにより、制御弁体18のアクチュエータとして電磁式等のアクチュエータが使用される場合には、前述したように燃料噴射弁1内の燃料を消費する際に、連通路22を完全に開放する開放位置にするしかなく、比較的速く基端側空間14内の燃料圧力が低下することとなる。
【0029】
基端側空間14内の燃料圧力は、噴孔弁体11が開弁されるほど低下させないようにしなければならず、そのためには、制御弁体18を僅かな時間しか開弁させることができない。実際的には、制御誤差が考慮されて開弁時間は非常に短時間としなければならず、基端側空間14内の燃料圧力を燃料が噴射されない前述の圧力近傍まで低下させることはできない。こうして、燃料噴射弁1において正圧波をある程度は抑制することはできても、十分に抑制したり又は消滅させることはできない。
【0030】
図3は、制御弁体18のアクチュエータとして電歪アクチュエータ30を使用した場合を示しており、この場合においては、制御弁体18の位置は、電歪アクチュエータへ印加する電圧を制御することにより正確に制御可能であり、すなわち、連通路22の開度を自由に制御することができる。それにより、連通路22を完全に開放せずに設定開度で開放して、流量を低下させて燃料を流出させることができる。こうして、燃料噴射弁1内の燃料圧力が蓄圧室2内の燃料圧力より高まっている間に渡って燃料を流出させて、基端側空間13内の燃料圧力を燃料が噴射されない前述の圧力近傍へ十分に低下させることができる。それにより、燃料噴射弁1内において正圧波を十分に抑制又は消滅させることができる。
【0031】
ここで、燃料噴射弁1の先端側空間13内の燃料圧力が蓄圧室2内の燃料圧力より高まっている時は、正圧波が到来して反射するまでの時刻t2から時刻t3又は時刻t6から時刻t7の間の時間である。この時間は、燃料噴射弁へ到来する圧力波が先の燃料噴射によるものであるために、燃料噴射時間t0からt1にほぼ等しい。この間を燃料噴射弁内の燃料圧力が蓄圧室内の燃料圧力より高められているとして、この間に渡って制御弁体18を開弁させるようにすれば良い。
【0032】
また、前述したように、正圧波の燃料を消費するのは、基端側空間14であるために、先端側空間13の燃料圧力が正圧波の到来によって高められる直前及び直後を含めて、燃料噴射弁内の燃料圧力が蓄圧室内の燃料圧力より高められているとして、この間に渡って制御弁体18を開弁させるようにしても良い。
【0033】
図3では、電歪アクチュエータ30に最大電圧を印加した時に制御弁体18が連通路22を閉鎖し、印加する電圧を減少させるほど制御弁体18は連通路22を大きく開放するように構成されている。もちろん、電歪アクチュエータ30へ電圧を印加しない時に制御弁体18が連通路22を閉鎖し、印加する電圧を増加させるほど制御弁体18が連通路22を大きく開放するように構成しても良い。
【0034】
図4は、制御弁体18’のアクチュエータとして、制御弁体18’の位置を三段階に制御可能なものを使用した場合を示している。図4に示す構成において、制御弁体室19’は、第一オリフィス21’を有する第一連通路22’と、第一オリフィス21’より小径の第二オリフィス23’を有する第二連通路24’とによって基端側空間14に連通されている。また、低圧燃料通路20’は、第一連通路22’と対向して制御弁体室19に開口している。
【0035】
制御弁体18’は、低圧燃料通路20’を閉鎖する第一位置(実線)と、第一連通路22’を閉鎖する第二位置(一点鎖線)と、低圧燃料通路20’及び第一連通路22’のいずれも閉鎖しない第三位置(点線)との三段階に制御可能とされる。制御弁体18’を第一位置とすることで、基端側空間14内の燃料は、第一オリフィス21’及び第二オリフィス23’を介して流出することはなく、基端側空間14内の燃料圧力が先端側空間13内の燃料圧力と等しくなって噴孔弁体11が閉弁される。また、制御弁体18’を第三位置とすることで、基端側空間14内の燃料は、第一オリフィス21’及び第二オリフィス23’を介して制御弁体室19’を通り低圧燃料通路20’へ流出するために、基端側空間14内の燃料圧力が低下して噴孔弁体11が開弁される。
【0036】
こうして、図4に示す構成では、図1及び図3に示す構成と異なり、噴孔弁体11の閉弁時において、制御弁体室19’内は、大気圧ではなく、基端側空間14と同じ圧力となっており、こうして、噴孔弁体11を開閉させるための制御室は、制御弁体室19’を含めた基端側空間14となる。
【0037】
制御弁体19’を第二位置とすれば、基端側空間14内の燃料は、第二オリフィス23’だけを介して制御弁体室19’を通り低圧燃料通路20’へ流出することとなるために、第三位置として第一オリフィス21’及び第二オリフィス23’の両方を介して燃料を流出させる場合と比較して、基端側空間14内の燃料の低下速度を遅くすることができる。それにより、噴孔弁体11は開弁するが、その開弁速度を遅くすることができる。
【0038】
こうして開弁速度が遅くなれば、燃料噴射開始時における燃料噴射率が低下するために、高負荷時等の主燃料噴射において、噴射開始時に多量の燃料が噴射されて、これが一度に着火燃焼することによって大きな騒音が発生することを防止するができる。
【0039】
このように必要に応じて噴孔弁体11の開弁速度を低下させることを可能とするように、基端側空間14から燃料を流出させるための第一及び第二連通路22’,24’が設けられている場合には、前述したように燃料噴射弁1内の燃料を消費する際に、制御弁体18’を第二位置として第二連通路24’により燃料を流出させることにより、図3の構成のように、流量を低下させて燃料を流出させることができる。こうして、燃料噴射弁1内の燃料圧力が蓄圧室2内の燃料圧力より高まっている間に渡って燃料を流出させて、基端側空間13内の燃料圧力を燃料が噴射されない前述の圧力近傍へ十分に低下させることができる。それにより、このような構成によっても燃料噴射弁1内において正圧波を十分に抑制又は消滅させることができる。
【0040】
特に、先の燃料噴射がパイロット燃料噴射であり、後の燃料噴射が主燃料噴射である場合において、燃焼騒音を十分に低減するために比較的多量のパイロット燃料噴射を実施することがあり、この時には、パイロット燃料噴射によるシリンダボアへの燃料付着を防止するために、パイロット燃料噴射は二回に分けて実施される。この二回のパイロット燃料噴射においては、一回目のパイロット燃料噴射量を少なくして二回目のパイロット燃料噴射量を多くするほうが、さらに確実にシリンダボアへの燃料付着を防止することができる。
【0041】
このように二回のパイロット燃料噴射を実施する場合には、一回目のパイロット燃料噴射によって発生した負圧波が蓄圧室2を介して反射して正圧波として燃料噴射弁に戻って燃料噴射弁内の燃料圧力を蓄圧室内の燃料圧力より高める時に、二回目次のパイロット燃料噴射を実施するようにすれば、二回目のパイロット燃料噴射量を意図するように多くすることができると共に、それによって燃料噴射弁において到来して正圧波を十分に抑制することができ、前述同様に、次の主燃料噴射時においては圧力波による燃料噴射弁内の燃料圧力の変動を十分に抑制することが可能となる。
【0042】
【発明の効果】
このように、本発明による内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、少なくとも二回の燃料噴射における先の燃料噴射と後の燃料噴射との間において、先の燃料噴射の影響によって燃料噴射弁内の燃料圧力が蓄圧室内の燃料圧力より高まった時に、燃料を噴射することなく燃料噴射弁内の燃料を消費するようになっている。それにより、先の燃料噴射の影響によって燃料噴射弁に到来した正圧波を抑制することができ、この正圧波が蓄圧室を介して反射して燃料噴射弁へ戻る際において、燃料噴射弁内の燃料圧力の変動が抑制され、蓄圧室内の燃料圧力に応じて後の燃料噴射における開弁時間を制御しても所望量の燃料を噴射することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による燃料噴射制御装置の概略図である。
【図2】燃料噴射弁の先端側空間内における燃料圧力の概略的な変動を示すタイムチャートである。
【図3】燃料噴射弁における制御弁体室近傍の概略図である。
【図4】燃料噴射弁におけるもう一つの制御弁体室近傍の概略図である。
【符号の説明】
1…燃料噴射弁
2…蓄圧室
3…配管
11…噴孔弁体
12…噴孔
13…先端側空間
14…基端側空間
15…高圧燃料通路
18,18’…制御弁体
19,19’…制御弁体室
20…低圧燃料通路
Claims (3)
- 蓄圧室と、配管により前記蓄圧室へ接続された燃料噴射弁とを具備し、同一サイクルで同じ前記燃料噴射弁により少なくとも二回の燃料噴射が実施される場合に、前記少なくとも二回の燃料噴射における先の燃料噴射と後の燃料噴射との間において、前記先の燃料噴射の影響によって前記燃料噴射弁内の燃料圧力が前記蓄圧室内の燃料圧力より高まった時に、燃料を噴射することなく前記燃料噴射弁内の燃料を消費することを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記燃料噴射弁は、制御弁体を開弁して前記制御室内の燃料圧力を低下させることにより噴孔弁体が噴孔を開放して燃料を噴射するものであり、前記制御弁体は電歪アクチュエータによって開度自在に制御可能であり、前記燃料噴射弁内の燃料を消費するために、前記制御弁体は、前記制御室内の燃料圧力を前記噴孔弁体が前記噴孔を開放しない程度に低下させるように、設定開度に制御されて前記制御室から燃料を流出させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記燃料噴射弁は、制御室内の燃料圧力を低下させることにより噴孔弁体が噴孔を開放して燃料を噴射するものであり、前記制御室には少なくとも二つの燃料流出通路が接続され、前記燃料噴射弁内の燃料を消費するために、前記制御室内の燃料圧力を前記噴孔弁体が前記噴孔を開放しない程度に低下させるように、前記二つの燃料流出通路における燃料流出流量の少ない方を使用して前記制御室から燃料を流出させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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