JP3872396B2 - 把手付き合成樹脂製壜体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、把手付き合成樹脂製壜体、特には合成樹脂性の把手をインサート材としてポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETと記す)製の壜本体を2軸延伸ブロー成形することにより、壜本体に把手を強固に組付け固定した大型の把手付き合成樹脂製壜体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
予め一定形状に射出成形された把手をインサート材として、PET製壜本体を2軸延伸ブロー成形して構成される把手付き合成樹脂製壜体が、取扱いの便利な大型壜体として知られているが、この種の把手付き合成樹脂製壜体に使用される把手としては、特許第2998820号公報に示された把手、あるいはこの把手を改良した特開2001−328636号公報に示された把手が、壜本体との安定して強固な組付きが確実に得られること、インサート材としての取扱いが容易であること等の理由によって、多数利用されている。
【0003】
この特開2001−328636号公報に示された把手は、(以下、図1および図7〜図10参照)縦長板状の把手板11’の前方の先端面に嵌合突片15’を突設すると共に、相互に対向した側面に縦条状の係合突条16’を設けることにより、壜本体1’との係合組付き機能部を形成した縦棒状の一対の組付き梁片12’を平行に配置し、把手板11’の上下端間に、両組付き梁片12’を、湾曲棒状の連結脚片12a’により、それぞれ架設状に連結した構成となっている。
【0004】
この図示した把手10’は、一対の組付き梁片12’が、壜本体1’の凹部3’に形成された縦突部5’を挟持するので、壜本体1’に対する把手10’の組付きが、安定して強固にそして確実に達成される。
【0005】
上記したような把手付き壜体はPETを射出成形したプリフォームP’をブロー成形型により壜本体1’にブロー成形する際に、予め射出成形により別体として成形された、たとえばポリプロピレン、PET等からなる把手10’を壜本体1’の胴部2’上部側壁面に形成される把手取り付け用の凹部3’に同時にインサート成形を行って取り付けることにより得ることができる。
【0006】
上記インサート成形に際し、加熱により軟化したプリフォームP’を形成するPETを、特には把手10’のインサート部であり、壜本体1’との組み付き強度を発揮する嵌合突片15’および係合突条16’の形状に沿ってスムーズに変形させ、このインサート部の外周に沿って隙間なく回り込むようさせることにより、壜本体1’と把手10’との高い組み付き強度が得られる。
【0007】
またここで、プリフォームP’をかなり延伸した段階ではPETにはかなり高い応力が発生し、上記したスムーズな変形がし難くなるので、インサート部をプリフォームのできる限り近傍に配置して、延伸の初期段階で壜本体1’へのインサートを達成するようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、酒、ジュースその他清涼飲料水等の分野では、より大型の容器へのニーズが高くなってきており、数リッター程度の大型容器で、落下衝撃等の厳しい条件下においても破損することがないように、把手構造のさらなる高強度化が課題となっている。
【0009】
一方、壜本体の容量が大きくてなっても、注出性の面から、口部の口径を一定にする、従ってブロー成形に際してプリフォームの径も大きくすることなく一定にすることが多く、その結果、プリフォームからより離れた位置に把手のインサート部を配置することになり、インサート部外周へのPETの回り込みが不足するという、成形上の問題の解決も併せて課題となっている。
【0010】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、把手のインサート性の向上、およびPET製の壜本体と把手との嵌合構造による高強度化を技術的課題とし、もって、容量が数リッターに達する大形の容器に関しても安全性、取り扱い性に優れた、PET製2軸延伸ブロー成形壜体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項1記載の発明の手段は、
合成樹脂製の射出成形品である把手をインサート材として、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の壜本体を2軸延伸ブロー成形して、前記把手を壜本体に組付け固定する把手付き合成樹脂製壜体であること、
壜本体を胴部の後部に陥没設された凹部を有し、この凹部の凹部底面の中央部に縦突部を突出設した形状とすること、
把手を、起立姿勢で平行に配置された一対の組付き梁片の上下端間に把手板を一体設し、この一対の組付き梁片の対向側面と先端面とで形成されるコーナー部近傍に、断面が略直角3角形状の嵌合突条を、直角を形成する一方の辺が対向側面から略垂直に、他方の辺が先端面から略垂直に突出するように突設した形状とすること、
組み付き梁片の一部と嵌合突条で、壜本体の縦突部側近の凹部底面部分へのインサート部を構成すること、
にある。
【0012】
請求項1記載の上記構成における嵌合突条は、従来の把手において前後方向の組み付き固定を達成するための係合突条と横方向の組み付き固定を達成する嵌合突片を一つに合体し、その断面を、略直角3角形状という樹脂が回り込みが容易な形状としたものであり、また、ブロー成形時には、この嵌合突状の直角3角形の斜辺に相当する先端面を突き出すようにプリフォームの外周面近傍に対向して位置させることが可能となる。
【0013】
エアブローにより膨張したプリフォームはまずこの嵌合突条の先端面に当接し、先端面を覆い、両角部で曲がり込み、一方では組付き梁片の対向面から略垂直に形成された突条側面に沿って変形し、組付き梁片の対向面に至り、また他方では組付き梁片の先端面から略垂直に形成された突条側面および組付き梁片の先端面に沿って変形して把手のインサートが達成されるが、断面形状を略直角三角形としたので、この嵌合突条外周面にPETを隙間なく回り込ませることが可能となる。
【0014】
また、嵌合突条を上記したような形状にしたことにより、ブロー成形過程にある壜本体のPETがこの嵌合突条に引っ掛かって破裂することがない。
【0015】
また、この嵌合突状の断面は略直角三角形であるが、基端から先端に向けて広がった形状であり、上記したPETの回り込みが確実に達成される効果と相俟って壜本体との組み付き強度を高くすることができる。
【0016】
請求項2記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、嵌合突条の略直角3角形の断面において、斜辺を緩やかな円弧状に形成することにある。
【0017】
上記請求項2記載の上記構成により、エアブロー工程の初期段階において、プリフォームの外周面がまず嵌合突条の先端面の凸部に接触するので、先端面でのPETの移動が容易となり、突条側面へのPETの回り込みをよりスムーズに確実に達成することが可能となる。
【0018】
請求項3記載の発明の手段は、請求項1または2記載の発明において、嵌合突条を高さ方向に2山状に形成すること、にある。
【0019】
請求項3記載の上記構成により、2つの山の間の谷部に壜本体のPETが回りこむので上下方向にもより確実に固定することができる。
【0020】
請求項4記載の発明の手段は、請求項1、2または3記載の発明において、把手をPET製とすることにある。
【0021】
請求項4記載の上記構成により、廃棄時における分別回収の取り扱いを容易とすることができる。
【0022】
請求項5記載の発明の手段は、請求項4記載の発明において、嵌合突条の外周面に多数の横細溝を刻設すること、にある。
【0023】
PET製の把手は壜本体のPETとの滑り性が、ポリプロピレン製のものに比較して良くないが、請求項5記載の上記構成により、把手のインサート部と壜本体のPETとの滑り性が向上するので、よりスムーズに壜本体のブロー成形および、嵌合突条の外周へのPETの回り込みを達成することができる。
【0024】
請求項6記載の発明の手段は、請求項4または5記載の発明において、ブロー成形時に壜本体に接触する把手のインサート部の表面の略全体を予め粗面化すること、にある。
【0025】
請求項6記載の上記構成により、PET製の把手と壜本体のPETとの滑り性が良好になり、よりスムーズに壜本体のブロー成形および、嵌合突条の外周へのPETの回り込みを充分に達成することができる
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を、図面(図1〜図6)を参照しながら説明する。
本一実施例による壜体は、大型(1リットル以上)なPET製2軸延伸ブロー成形品である壜本体1と、この壜本体1の有底円筒形状をした胴部2の後部に陥没形成された凹部3に、インサート成形手段により組付け固定された、PET製射出成形品である把手10とから構成されている。
【0027】
この壜本体1の凹部3は、その上下両端部を除く中央部分を直立した平坦面とした凹部底面4の中央に、上下方向に沿って比較的幅広な突条状の縦突部5を、ほぼ一定した高さで、凹部3の全高さ範囲にわたって膨出状に突設して構成されている。(図2参照)
【0028】
把手10は、縦板状の把手板11の上下両端間に、上下両端部を湾曲させた
連結脚片12aを介して、直線棒状の一対の組付き梁片12を平行に架設状に設け、この一対の組付き梁片12の対向側面14aと先端面13とで形成されるコーナー部近傍に、断面が略直角3角形状の嵌合突条17を、直角を形成する一方の辺が対向側面14aから略垂直に、他方の辺が組付き梁片12の先端面13から略垂直に突出するように突設している。(図6(a)参照)
【0029】
また、嵌合突条17の断面形状の斜辺に相当する突条先端面19は緩やかな円弧状に形成し、インサート部の表面の略全体を粗面化し、さらに嵌合突条17の外周面に多数の横細溝25を刻設することにより、ブロー成形時における壜本体1のPETの滑り性を良好にしている。
【0030】
また、本一実施例では嵌合突片17を二山状に形成しており、中間に形成された谷部18ではインサート部を嵌合突条17から、組付き梁片12の先端面13に垂直な方向の突出部分を削った係合突条16としている。(図6(b)参照)この2山状の形状は、把手の軽量化と、成形時における壜本体1のPETをこの谷部18に回り込ませることによる、さらなる組み付き強度の向上を目的としたものである。なお、谷間18のない形状でも充分な組み付き強度を有するので、2山状にするかどうかは成形性等も考慮して選択して、設計することができる。さらに、この嵌合突片17の形状は目的に応じて、3山以上の形状とすることもできる。
【0031】
把手10の壜本体1に対する組付きは、把手10をインサート材として、壜本体1を2軸延伸ブロー成形することにより達成されるが、ブロー成形時には、嵌合突状17の突条先端面19突き出すようにプリフォームPの外周面近傍に対向して位置させる。(図2参照)
【0032】
エアブローにより膨張したプリフォームPを形成するPETは、まずこの緩やかに円弧状に形成された突条先端面19に当接し、この突条先端面19を覆い、両角部(21a、21b)で曲り込み、一方では突条側面20aに沿って変形し、対向側面14aに至り、また他方では突条側面20bおよび先端面13に沿って変形し外側側面14b先端部に至り、壜本体1への把手10のインサートが達成されるが、断面形状が略直角3角形であり、この嵌合突条17の外周面沿ってPETを隙間なく回り込ませることができる。(図6(a)参照)
【0033】
上記のような把手10をインサートしたブロー成形により、嵌合突片17および組付き梁片12の一部は壜本体1の縦突部5の両側縁の凹部底面4に陥没するようにインサートされ、把手10と壜本体1との組み付き固定が確実に達成される。(図2参照)
【0034】
把手10をインサートした部分の強度を確認するために、4リッターの壜体をブロー成形して、把手部分を引っ張る方法で強度を測定しが、本一実施例の壜体は61Kgfあり、図1(図1は本願発明の一実施例と共通)および図7〜図10に示した従来例の25Kgfに比較して倍以上の強度を示し、本願発明の効果が確認された。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、嵌合突条の断面を略直角3角形とすることにより、ブロー成形において壜本体のPETが容易に隙間なく回り込み、把手と壜本体との組み付き固定を確実に達成することができる。
【0036】
また、嵌合突状の断面は略直角三角形であるが、基端から先端に向けて広がった形状であり、上記したPETの回り込みが確実に達成される効果と相俟って壜本体との組み付き強度を高くすることができる。
【0037】
請求項2の発明にあっては、嵌合突条の先端面を緩やかな円弧状に形成することにより、エアブロー工程の初期段階において、プリフォームの外周面がまず嵌合突条の先端面の凸部に接触するので、先端面状でのPETの移動が容易となり、突条側面へのPETの回り込みをよりスムーズに確実に達成することができる。
【0038】
請求項3の発明により、嵌合突条を高さ方向に2山状に形成することにより、2つの山の間の谷部に壜本体のPETが回りこむので上下方向にもより確実に固定することができる。
【0039】
請求項4の発明にあっては、把手をPET製とすることにより、廃棄時における分別回収の取り扱いを容易とすることができる。
【0040】
請求項5の発明にあっては、嵌合突条の外周面に多数の横細溝を刻設することにより、PET製の把手においてもインサート部と壜本体のPETとの滑り性を確保することができ、よりスムーズに壜本体のブロー成形および、嵌合突条の外周へのPETの回り込みを達成することができる。
【0041】
請求項6の発明にあっては、インサート部の表面の略全体を予め粗面化することにより、PET製の把手と壜本体のPETとの滑り性を確保することができ、よりスムーズに壜本体のブロー成形および、嵌合突条の外周へのPETの回り込みを充分に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の把手付き合成樹脂製壜体の一実施例を示す、全体側面図。
【図2】図1中、A−A線に沿って切断矢視した、横断平面図。
【図3】図1に示した実施例に使用した把手の、背面図。
【図4】図1に示した実施例に使用した把手の、正面図。
【図5】図2中のB−B線に沿って切断矢視した、図1に示した実施例に使用した把手の、全縦断側面図。
【図6】図5中、C−C線およびD−D線に沿って切断矢視した、要部横断平面図。
【図7】把手付き合成樹脂製壜体の従来例を、図1中のA−A線に沿って切断矢視した、横断平面図。
【図8】図7中に示した従来例に使用した把手の、背面図。
【図9】図7中に示した従来例に使用した把手の、正面図。
【図10】図7中のE−E線に沿って切断矢視した、図7中に示した把手の、全縦断側面図。
【符号の説明】
1、1’ ; 壜本体
2、2’ ; 胴部
3、3’ ; 凹部
4、4’ ; 凹部底面
5、5’ ; 縦突部
10、10’ ; 把手
11、11’ ; 把手板
12、12’ ; 組付き梁片
12a、12a’; 連結脚片
13、13’ ; 先端面
14a ; 対向側面
14b ; 外側側面
15’ ; 嵌合突片
16、16’ ; 係合突条
17 ; 嵌合突条
18 ; 谷部
19 ; 突条先端面
20a ; 突条側面
20b ; 突条側面
21a ; 角部
21b ; 角部
25 ; 横細溝
26 ; 粗面
P、P’ ;プリフォーム
Claims (6)
- 合成樹脂製の射出成形品である把手(10)をインサート材として、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の壜本体(1)を2軸延伸ブロー成形して、前記把手(10)を壜本体(1)に組付け固定する把手付き合成樹脂製壜体であって、
前記壜本体(1)を胴部(2)の後部に陥没設された凹部(3)を有し、該凹部(3)の凹部底面(4)の中央部に縦突部(5)を突出設した形状とし、前記把手(10)を、起立姿勢で平行に配置された一対の組付き梁片 (12)の上下端間に把手板(11)を一体設し、前記一対の組付き梁片(12)の対向側面(14a)と先端面(13)とで形成されるコーナー部近傍に、断面が略直角3角形状の嵌合突条(17)を、直角を形成する一方の辺が前記対向側面(14a)から略垂直に、他方の辺が前記先端面(13)から略垂直に突出するように突設した形状とし、前記組み付き梁片(12)の一部と嵌合突条(17)で、前記壜本体(1)の縦突部(5)側近の凹部底面(4)部分へのインサート部を構成した、把手付き合成樹脂製壜体。 - 嵌合突条(17)の略直角3角形の断面において、斜辺を緩やかな円弧状に形成した、請求項1記載の把手付き合成樹脂製壜体。
- 嵌合突条(17)を高さ方向に2山状に形成した、請求項1または2記載の把手付き合成樹脂製壜体。
- 把手(10)をポリエチレンテレフタレート樹脂製とした、請求項1、2または3記載の把手付き合成樹脂製壜体。
- 嵌合突条(17)の外周面に多数の横細溝(25)を刻設した、請求項4記載の把手付き合成樹脂製壜体。
- ブロー成形時に壜本体(1)に接触する把手(10)のインサート部の表面の略全体を予め粗面化した、請求項4または5記載の把手付き合成樹脂製壜体。
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